説明

フィルター及びフィルター製造方法

【課題】粒子状又は粉末状の吸着剤を繊維からなるバインダーにて結合して保持するフィルターであって、圧縮成型や抄造といった製造法によって板状又はシート状に形成することで密度が高い状態となってしまい、密度を低くしたり調節することができず、例えば油をフィルターを通過させるのに時間がかかってしまう、といったことのないフィルターを提供する。
【解決手段】粒子状又は粉末状の吸着剤と、前記吸着剤を結合して保持するバインダーとしての繊維と、で主体が構成されるフィルターである。前記吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルター複数からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの食用油や、臭気を含む空気といったような、汚染物質を含む液体、気体を浄化するためのフィルター及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの食用油や、臭気を含む空気といったような、汚染物質を含む液体、気体を浄化するため、活性炭のような吸着剤を備えたフィルターが用いられている。吸着剤は、浄化対象となる前記汚染物資を含む液体や気体(単に浄化対象という)の流路中に配置して、浄化対象内に含まれる汚染物質を吸着させてろ過するもので、粒状又は粉状の吸着剤を充填したケースを配置したり(例えば特許文献1参照)、粒状又は粉状の吸着剤をバインダーで結合して成形したものを配置したりしている(例えば特許文献2、特許文献3)。粒状又は粉状の吸着剤をバインダーで結合せずに充填するような場合、粉状活性炭を使用したものでは、粉末であるため表面積が広く浄化対象物に対しての接触性は高いが、液体の浄化対象を流すと泥状となって浸透し難く(つまり圧力損失が高い)、また、粒状活性炭を使用したものでは、粉末の場合と比べて粒間に大きな空間があるため、浸透速度は速い(つまり圧力損失が低い)ものの、粒状であるため表面積は粉末活性炭と比べて小さく接触性が低いものであり、接触性を上げるには量を増加させなければならない。
【0003】
粒状や粉状の吸着剤を結合するバインダーとしては、前記吸着剤を接着する接着剤がよく用いられていたが、これに対し、接着剤を用いずに済むようパルプ等の繊維をバインダーとして用いるものが上記特許文献2、特許文献3に示されている。
【0004】
特許文献2には、新聞紙やコピー用紙等の紙片を水の中で解繊し、これに籾殻炭や木炭等の粒状の炭化物を混合し、これを型枠内に流入して板状に成形するフィルターが示されている。
【0005】
特許文献3には、離解したパルプに活性炭を混入して、モールド成形したものが示されている。
【0006】
また、吸着剤ではなく光触媒活性を有する無機微粒子をバインダーで結合するものが特許文献4に示されている。これは、光触媒活性を有する無機微粒子と、紙繊維やパルプと、水と、を造粒機に投入して混合することで、前記無機微粒子とパルプと水とからなる光触媒パルプ組成物のスラリーを生成し、これを抄紙して光触媒含有シ−トを製造するものである。
【0007】
この特許文献2乃至特許文献4に示されるものは、上述のようにパルプ等の繊維をバインダーとして、粒状又は粉状の粒子を結合して保持するものであり、型にて圧縮成型したり抄造したりして、フィルターを板状やシート状に形成するものである。
【0008】
ところで、板状やシート状に形成されたフィルターは、圧縮成型や抄造といった製造法で製造するため、その密度(吸着剤及び繊維の密度)を低くすることは困難であり、密度を低い状態から高い状態までで変えることも難しいものである。このため、浄化対象の流体がフィルターを通過する際の抵抗、圧力損失を調節することは困難であり、例えば、使用済みの油がフィルターを通過するのに時間がかかってしまう、といった問題が生じていた。
【特許文献1】特開平8−10539号公報
【特許文献2】特開2002−219314号公報
【特許文献3】特開2001−212413号公報
【特許文献4】特開2002−61098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒子状又は粉末状の吸着剤を繊維からなるバインダーにて結合して保持するフィルターであって、圧縮成型や抄造といった製造法によって板状又はシート状に形成することで密度が高い状態となってしまい、密度を低くしたり調節することができず、例えば油がフィルターを通過するのに時間がかかってしまう、といったことのないフィルターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係るフィルターは、粒子状又は粉末状の吸着剤と、前記吸着剤を結合して保持するバインダーとしての繊維と、で主体が構成されるフィルターであって、前記吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルター複数からなることを特徴とするものである。
【0011】
絡まった繊維間には隙間があると共に繊維は弾力を有しており、繊維が粒子状に絡まった複数の造粒フィルターは、造粒フィルターが占める容積及び造粒フィルター同士の間の空間の容積が大きかったり小さかったり様々であり、特に圧縮したりせずに集めただけであれば、シート状のフィルターよりも密度は小さいが、圧縮すると、繊維が変形して造粒フィルターが占める容積及び、造粒フィルター同士の間の空間の容積が変化して小さくなり、密度が大きくなる。これにより、フィルターの密度を調節することが可能となる。
【0012】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係るフィルターにおいて、バインダーとしての繊維をパルプ又は/及び化学繊維1種類以上で形成すると共に、吸着剤を活性炭及びその他の吸着剤1種類以上で形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、パルプや活性炭をといった一般的な材料をはじめ様々な材料にてフィルターを形成することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明にあっては、請求項1又は2に係るフィルターにおいて、吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルターの粒径が0.3〜20mmであることを特徴とするものである。
【0015】
このような構成とすることで、造粒フィルターの粒径が10mmを越えてしまう場合のように、油のような浄化対象を流した際に造粒フィルターの間の隙間を通り易くて、フィルターによる汚染物質の吸着、ろ過の効率が低下してしまう、といったことを防止することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明にあっては、請求項1乃至3のいずれかに係るフィルターにおいて、複数の造粒フィルターを繊維からなるフィルターケース内に収容して成ることを特徴とするものである。
【0017】
このような構成とすることで、造粒フィルターの取り扱いが容易となる上に、繊維からなるフィルターケースによるろ過の効果も期待できる。
【0018】
また、請求項5に係るフィルター製造方法は、粒子状又は粉末状の吸着剤と、前記吸着剤を結合して保持するバインダーとしての繊維と、水と、を混合した混合物を攪拌混合手段を備えた攪拌混合容器内に投入し、前記攪拌混合容器内で攪拌混合手段により混合物を攪拌混合し、前記攪拌混合しながら同時に又は攪拌混合をした後で、混合物の水分を蒸発させることで、吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルターを複数形成することを特徴とするものである。
【0019】
このような構成とすることで、攪拌混合手段、攪拌混合容器、を備えた攪拌機や造粒機のような汎用の機械を用いて、容易にフィルターを為す造粒フィルターを製造することが可能となる。
【0020】
また、請求項6に係る発明にあっては、請求項5に係るフィルター製造方法において、混合物に、吸着剤、繊維、水に加えて脱酸剤として酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、苛性ソーダ、ソーダ灰のうちから1種類以上を混合したことを特徴とするものである。
【0021】
このような構成とすることで、フィルターに、脱酸剤による酸化した油の再生機能を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、吸着剤を保持した繊維が粒子状に絡まった造粒フィルターにてフィルターを構成するため、フィルターの密度を低いものから高いものへと調節することが可能となり、例えば油がフィルターを通過するのに時間がかかってしまう、といったことがなく、圧力損失、フィルターの通過時間を調節したりすることが可能となる。
【0023】
また、粉末状吸着剤を繊維で保持して粒子状の造粒フィルターとしたものにあっては、粉状吸着剤の利点である接触性の高さと、粒状吸着剤の利点である浸透速度の速さとを併せ持つことが可能となる。
【0024】
また、攪拌混合手段、攪拌混合容器、を備えた一般的な機械、例えば攪拌機や造粒機のような機械を用いて、容易にフィルターを為す造粒フィルターを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明について実施形態に基づいて説明する。本発明に係るフィルターは、粒子状又は粉末状の吸着剤と、この吸着剤を結合して保持するバインダーとしての繊維とで主体が構成される。
【0026】
吸着剤としては、例えば、ゼオライト、アモルファスシリカ、ベントナイト、活性アルミナ、活性白土などが挙げられ、これらを使用用途に応じ、単独で又は二種以上組み合わせて使用可能である。油の脱色について好ましい吸着剤は活性炭である。
【0027】
活性炭としては、竹活性炭の他、例えば、他の植物系活性炭(例えばヤシ殻、木粉、素灰などを原料とする活性炭)、鉱物系活性炭(例えばピート炭、レキ炭、ピッチ、コークスなどを原料とする活性炭)、樹脂系活性炭(例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂などを原料とする活性炭)などが挙げられ、これらを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
吸着剤の比表面積は、300〜3000m/g(好ましくは700〜2500m/g)程度で、その平均細孔径は、吸着させる汚染物質に応じて、1〜100Å(好ましくは5〜20Å)程度とする。なお1Å=0.1nmである。
【0029】
この吸着剤は、粒子状又は粉末状としたものを用い、その平均粒径は、5〜500μm(好ましくは30〜40μm)程度である。平均粒径が上記範囲を逸脱すると、吸着剤の均一分散性が低下し、吸着効率が低下し、上記範囲内であると、以下に述べるバインダーとしての繊維に均一に絡まって保持され、吸着効率が高い。
【0030】
繊維としては、パルプをはじめ、種々の天然繊維及び化学繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば羊毛、絹などの動物繊維や、例えば木綿、麻、ヤシ殻繊維などの植物のセルロース繊維、岩綿などの鉱物繊維でもよい。化学繊維としては、ビスコース人造絹糸(例えばレーヨン)などの再生繊維、アセテート人絹などの半合成繊維、6−ナイロンなどポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル繊維、ビニロンなどのポリビニルアルコール系繊維などが挙げられる。さらに、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維であってもよく、これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
パルプとしては、例えば、木材パルプ、リンターパルプ、ワラパルプ、コウゾ、三椏などが挙げられ、これらのパルプは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、パルプと化学繊維とを組み合わせると、フィルター強度及び成形性を向上でき、その配合割合(重量比)は、例えば、パルプ:化学繊維=100:0〜50:50(好ましくは100:0〜70:30)程度である。
【0032】
繊維の平均径は、0.1〜20μm(好ましくは1〜10μm)程度で、平均長さは、100μm〜30mm(好ましくは500μm〜10mm)程度である。
【0033】
上記吸着剤を繊維に絡ませたフィルターは、従来は圧縮成型や抄造といった製造法によって板状又はシート状に成形するものであるが、これに対して本発明では、吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルター(即ち後述する攪拌機や造粒機等による被造粒物のフィルターであり、粒状をしたフィルター片)を複数形成し、この造粒フィルターを適当な密度で密集させてフィルターとするもので、以下に説明する。
【0034】
フィルターをなす造粒フィルターを多数製造するには、攪拌機や造粒機のように、攪拌混合手段、攪拌混合容器、を備えた機械(以下、製造装置という)で行うことができる。
【0035】
製造装置は、図示はしないが、内部に攪拌混合する混合物を収容する攪拌混合容器と、この攪拌混合容器内の混合物を攪拌混合する攪拌混合手段とを備えている。攪拌混合容器は、開閉蓋により開閉可能な投入口及び排出口を備えており、投入口及び排出口により内外が連通される。
【0036】
攪拌混合手段は、前記攪拌混合容器内の混合物を攪拌混合するもので、攪拌翼を備えて回転自在となった攪拌軸を攪拌混合容器内に配設し、攪拌軸をモータ等の駆動手段により回転駆動させるものである。攪拌軸と攪拌翼の形態は特に限定されず、例えば、攪拌軸を攪拌混合容器の内壁の対向する位置に枢支して架け渡した状態としたり、攪拌混合容器の内部に向けて片持ち状に突出したりしてもよく、攪拌翼も攪拌軸の回転に伴って内部の混合物を攪拌混合できるものであればよい。また、いわゆるミキサーといった造粒機の場合のように、混合槽(すなわち攪拌混合容器)を回転させて混合を促進させてもよい。
【0037】
また、製造装置は、攪拌混合容器内の湿気を含んだ空気の排出を可能とする排出手段を備えている。また、特に通気手段を備えていない場合、投入口が攪拌混合容器内の混合物よりも高い位置に形成してあれば、投入口を介して攪拌混合容器内の湿気を含んだ空気を排出するようにしてもよい。
【0038】
この製造装置は、上述したように攪拌混合手段、攪拌混合容器、を備えた機械であればよく、例えば生ごみ処理機や造粒機のような一般的な機械を利用することができる。
【0039】
次に、この製造装置を用いてフィルター(造粒フィルター)を製造する製造方法について説明する。
【0040】
攪拌混合容器内に、粒子状又は粉末状の吸着剤と、繊維と、水と、を混合した混合物を投入する。投入する際はこれらを別々に投入してもよく、内部に収容された際に混合された状態となればよい。繊維と吸着剤の配合比は、繊維と吸着剤の種類にもより、後述するが、繊維にパルプ、吸着剤に活性炭を用いる場合、パルプ:活性炭=9:1〜1:2、好ましくは4:1〜2:1とする。また水は、混合する媒体として使用するのみで、出来上がった造粒フィルターには殆ど残存しないため、充分に攪拌混合がなされる量の水を混合させれば特に配合比を調整する必要はない。
【0041】
なお、フィルターが使用済みの食用油のろ過に用いられる場合、上記混合物に更に脱酸剤として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム(焼成貝)、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、苛性ソーダ、ソーダ灰のうちから1種類以上を添加して混合するのが好ましい。これにより、フィルターに、脱酸剤による酸化した油の再生機能を付与することができる。またなお、その他の目的に応じて、他の添加物を適宜添加してもよいものである。
【0042】
次に、攪拌混合手段による混合物の攪拌混合を行う。これにより、混合物中で繊維が攪拌混合されて、充分に解繊して絡み合うと共に、粒子状又は粉末状の吸着剤も充分混合される。そして、攪拌混合しながら同時に又は攪拌混合をした後で、排出手段により攪拌混合容器中の湿気を含む空気を排出し、混合物中の水分を減らしていく。この時、攪拌混合容器にヒーター等の加熱手段を設け、混合物を加熱して混合物中の水分の蒸発を促進させるようにしてもよい。生ごみ処理装置等には、通常、攪拌槽(攪拌混合容器)を加熱して分解菌の作業に適した温度とするための加熱手段を装備しているため、この加熱手段を用いて攪拌混合容器を加熱することができる。
【0043】
攪拌混合しながら同時に又は攪拌混合をした後で混合物の水分を蒸発させて混合物の脱水を行うことで、粒子状又は粉末状の吸着剤が付着して、吸着剤が繊維によって結合されて保持された状態となる。本発明においては、この時、圧縮成型や抄造による場合のように吸着剤を結合して保持した繊維が板状やシート状にはならない。すなわち、攪拌混合しながら混合物の脱水を行うため、板状やシート状のように全体で一つに成形されず、細かい粒子状に絡まった造粒フィルターが多数形成される。造粒フィルターの粒径は、繊維の種類や量によって調整することができるが、通常は1〜5mm程度の径の造粒フィルターで殆ど占められる。
【0044】
造粒フィルターは、所定の容積内に所定の数を密集させてフィルターとして用いられる。図1(a)にフィルターFを、図1(b)に造粒フィルターFを示す。本発明の造粒フィルターFが密集してなるフィルターFにおいては、造粒フィルターF同士の間に空間が介在し、従来のような板状やシート状のフィルターと比較すると、フィルター全体の密度、すなわち、密集した造粒フィルターFの外郭により占められる容積に対する吸着剤および繊維(場合によっては更に酸化マグネシウム)の密度は低い。ただし、これは攪拌混合容器から取り出した状態であり、圧縮すれば、もっと高い密度とすることができる。
【0045】
本実施形態では、造粒フィルターFはパルプの繊維で構成されるフィルターケースに収容される。フィルターケース1は、図2に示すように、上方に開口する有底筒20にフランジ21を形成したケース本体2と、ケース本体2の上開口を閉塞する略板状(略シート状)をしたケース蓋3とからなる。ケース蓋3の外形はケース本体2のフランジ21の外形と略同じに形成してある。ケース蓋3のケース本体2への接着は、ケース本体2内に造粒フィルターFを充填した状態で、ケース蓋3をフランジ21に重ね、この重ねた部分を接着剤4により接着する。接着剤4としては、食品添加物として使用されるでんぷん、コーンスターチ等が用いられ、該フィルターFにて吸着、ろ過した食用油を再使用しても問題ない。
【0046】
本実施形態のように、ケース蓋3を接着剤4によりケース本体2に接着することで、乾燥状態を維持しながら製造する乾式法により製造することができ、製造性が向上する。すなわち、従来より、パルプの繊維からなる部材同士を結合するのに、接着剤を用いずに、解繊したパルプを絡ませて両方の部材を結合する湿式法が行われている。この場合、解繊したパルプを分散するのに多くの水を用い、結合する部材が水分で浸って、水分を乾燥させる乾燥工程に多大な時間がかかってしまい、製造性が悪いが、接着剤を用いるようにしたことで、接着剤の乾燥のみで済むため、乾燥工程が大幅に短縮されて製造性が向上するものである。
【0047】
本発明においては、フィルターを、吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルター複数を密集させて構成したことで、造粒フィルター同士の間に空間が介在して従来の板状やシート状のフィルターより密度が低くなるが、圧縮すればもっと高い密度とすることができる。これにより、フィルターの密度を調節することができ、例えば、従来の板状やシート状のフィルターでは密度が高くてフィルターを通過するのに要する時間が長い場合、前記板状やシート状のフィルターに替えて本発明の造粒フィルター複数を低い密度で充填したフィルターを用いると、抵抗が減少して通過するのに要する時間が短縮される。
【0048】
このように、フィルターの密度(造粒フィルターの充填密度)を所望の密度として抵抗、圧力損失を調節することができ、また、造粒フィルターの充填密度を一定にして、フィルターの厚みを変えることでも抵抗、圧力損失を調節することができる。
【0049】
また、従来の板状やシート状に形成したフィルターの場合、密度が高くてフィルターを通過する際の抵抗が大きいと、浄化対象を流した際、フィルターを通過せずに、フィルターと該フィルターを収容するフィルター容器の内壁との間の間隙を通過する量が増加して、吸着、ろ過性能が設計通りに発揮されないといった問題があるが、本発明においては、造粒フィルターとフィルター容器の内壁との間の間隙は、造粒フィルター同士の間の間隙と略同様となるため、特にこのような問題は発生しない。
【0050】
また、吸着剤に活性炭を用いると、浄化対象中の汚染物質の吸着により脱臭および脱色効果が得られ、吸着剤のバインダーに繊維を用いたことで、吸着剤に吸着されない不純物のろ過を行うことができる。
【0051】
上記本発明の製造方法においては、攪拌混合手段、攪拌混合容器、を備えた製造装置にて製造するようにすれば、例えば生ごみ処理機や造粒機のような汎用の機械を用いて、容易にフィルターを為す造粒フィルターを製造することが可能となる。また、乾式法により造粒フィルターをフィルターケースに充填したフィルターを製造することで、湿式法に比べて乾燥工程が要らず製造製が向上する。
【0052】
フィルターとしては、例えば10Lの油を浄化可能な造粒フィルターを充填した10L用のフィルターを製造し、20Lの油を浄化するにあたっては2個のフィルターを要し、3Lの油を浄化するにあたっては1個のフィルターで3回の浄化を行う、といったようにすることで、一度に処理する油の量が異なっても1種類のフィルターで対応可能となる。
【0053】
また、従来のように圧縮成型や抄造により製造する場合には、吸着剤と繊維と水との混合物(スラリー)の水分が型から溢出したりサクションしたりする際に、水分中に含まれる酸化マグネシウム等の添加物や粉末状の吸着剤が水分と共に失われて歩留まりが悪いものであるが、本発明のように混合物を攪拌混合しながら混合物の水分を蒸発させて脱水を行うことで、水分が蒸発しても酸化マグネシウム等の添加物や粉末状の吸着剤は殆ど失われず、歩留まりが非常に向上する。またこの時、使用する水の量も、圧縮成型や抄造により製造する場合と比べて大幅に(80〜90%程)削減することができる。
【0054】
また、他の実施形態として、図3に、空調用のフィルターFを示す。図3(a)に示すものは、流入口、流出口を形成したケーシング5a内に造粒フィルターFを充填してフィルターFの主体を構成し、前記ケーシング5の流入口、流出口にフィルターF内に保持されている粉末状又は粒子状の吸着剤が漏出しないように、該吸着剤より細かい目の漏出防止フィルター6を設けたものである。
【0055】
また、図3(b)に示すものは、ハニカム構造7を有するケーシング5b内のハニカム構造7の孔内に造粒フィルターFを充填してフィルターFを構成したものである。このものにあっても、前記ケーシング5bの流入口、流出口に吸着剤が漏出しないように吸着剤より細かい目の漏出防止フィルター(図示せず)を設けてもよい。
【0056】
これにより、空調用のフィルターFにあっても上述した効果が得られ、吸着剤との接触性が高く、且つ、浸透速度の速いフィルターFを得ることができる。
【0057】
以下、フィルターの性能の評価を行うための試験について説明する。
<比較試験1>
繊維としてのパルプと、吸着剤としての活性炭の配合比を変えてフィルターを複数種類製造し、各フィルターについて性能試験を行った。フィルターは、造粒フィルター層が厚み30mmとなるように設定し、これに原臭として酢酸エチルを400ppm含む空気を流し、残存の酢酸エチル濃度(ppm)を測定して脱臭効率(%)を評価した。フィルターの配合比および評価結果について表1に示し、グラフにしたものを図4に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1および図4のグラフより、パルプと活性炭の合計量に対する活性炭比(単に活性炭比という)が0では脱臭能力なし、活性炭比が0.166では脱臭効率が80%、活性炭比が0.2を超えると脱臭効率は軒並み90%を超えて良好な吸着力を示すことが分かる。経済性を考えると、好ましい範囲は活性炭比0.2〜0.33となる。
<比較試験2>
次に、本発明のフィルターを用いた場合と、フィルターとして破砕活性炭を用いた場合(比較例)とで、脱臭効率の比較を行った。本発明でのフィルターは、繊維としてのパルプと、吸着剤としての活性炭の配合比が4:1(活性炭比0.2)とし、両フィルター中の活性炭量が10g、20g、30gの三通りについて上記と同様の酢酸エチルの脱臭効率(%)の評価を行った。フィルターの活性炭量および評価結果について表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2より、活性炭量が10gで脱臭効率15%、20gで12.5%、30gで7.5%の差が認められ、いずれも本発明のフィルターが優れていることが分かる。同重量では、破砕活性炭よりも粒径の小さい粒子状又は粉末状の活性炭の方が吸着面積が広いため、高い脱臭効率を示す。
<比較試験3>
次に、比較試験2で用いた破砕活性炭(比較例)と本発明のフィルターとを用い、臭気濃度が平衡に達するまで吸着を行った。本発明でのフィルターは、比較試験2と同様にパルプと活性炭の配合比が4:1(活性炭比0.2)で、両フィルター中の活性炭量が1gとなるようにそれぞれ容積10Lの臭い袋中に入れ、原臭として酢酸エチルを11400ppm含む空気を充填し、残存の酢酸エチル濃度(ppm)が平衡状態となった際の濃度を測定して評価した。各フィルターの配合比および評価結果について表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3より、本発明のフィルターが平衡状態となった濃度が低く、吸着力が優れていることが分かる。
【0064】
なお、本発明のフィルターは、空調用等、種々の気体の浄化用として、あるいは水や油等の様々な液体の浄化用として、あるいは介護用品(ベットマットの吸着材)、ペットのトイレ助剤(臭い吸着、パルプ繊維による尿の吸収等のいわゆる「ねこ砂」)、その他様々な用途が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)はフィルターを、(b)はフィルターを構成する造粒フィルターを示す図である。
【図2】フィルターケースに造粒フィルターを収容したフィルターの断面図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】比較試験1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
F フィルター
造粒フィルター
1 フィルターケース
2 ケース本体
20 有底筒
21 フランジ
3 ケース蓋
4 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状又は粉末状の吸着剤と、前記吸着剤を結合して保持するバインダーとしての繊維と、で主体が構成されるフィルターであって、前記吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルター複数からなることを特徴とするフィルター。
【請求項2】
バインダーとしての繊維をパルプ又は/及び化学繊維1種類以上で形成すると共に、吸着剤を活性炭及びその他の吸着剤1種類以上で形成して成ることを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルターの粒径が0.3〜20mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルター。
【請求項4】
複数の造粒フィルターを繊維からなるフィルターケース内に収容して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルター。
【請求項5】
粒子状又は粉末状の吸着剤と、前記吸着剤を結合して保持するバインダーとしての繊維と、水と、を混合した混合物を攪拌混合手段を備えた攪拌混合容器内に投入し、前記攪拌混合容器内で攪拌混合手段により混合物を攪拌混合し、前記攪拌混合しながら同時に又は攪拌混合をした後で、混合物の水分を蒸発させることで、吸着剤を結合して保持した繊維が粒子状に絡まってなる造粒フィルターを複数形成することを特徴とするフィルター製造方法。
【請求項6】
混合物に、吸着剤、繊維、水に加えて脱酸剤として酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、苛性ソーダ、ソーダ灰のうちから1種類以上を混合したことを特徴とする請求項5記載のフィルター製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−86865(P2008−86865A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268294(P2006−268294)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(593196861)ヤマトヨ産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】