説明

フィルター用ネットの作製装置とフィルター

【課題】 従来のフィルター用ネット及びフィルターの作製工程においては、糸状部材懸架作業、該糸状部材の各交点での溶接等の接合作業、各交点列での屈曲作業、及び多数重ね合わされたフィルター用ネットの接合作業等の作業が全て人手による手作業で行われていたので、フィルターの作製に多大な時間と労力とを要することとなっていた。
【解決手段】 給糸部1とバイアス作製部2と接合部3と整形部4とを備えたフィルター用ネットの作製装置を構成し、該フィルター用ネットの作製装置により作製されたネット部材21にて構成されるフィルター用ネットを多数重ね合わせ、重ね合わせたフィルター用ネットを互いに接合してフィルターを構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィルター用ネットを多数重ね合わせて構成されるフィルター、該フィルター用ネットを作製するための作製装置、及び該フィルターを作製するための作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、流体中の不純物等を捕捉して除去するためのフィルターとして、網状部材により構成されるフィルター用ネットを多数重ね合わせて構成したフィルターは知られている。このフィルター用ネットは、銅線やニッケル線等の金属糸状部材、又はナイロン糸やポリエステル繊維等の非金属糸状部材等により構成されており、例えば次のような手順にて形成されている。図8に示すように、まず、板状部材101の対向する二辺にそれぞれ多数のピン102・102・・・を立設し、二辺間の各ピン102・102に例えば金属製の糸状部材111をバイアス状に懸架して、各糸状部材111の交点111aを溶接により接合する。各交点111aを接合してバイアス状の網部材となった糸状部材111は板状部材101から取り外された後に、各交点列Lc・Ldを交互に山折り・谷折りに屈曲する。例えば、交点列Lcを山折りとして交点列Ldを谷折りとする。このように波板状に屈曲された網部材をフィルター用ネットとして用いるのである。そして、該フィルター用ネットを多数重ね合わせ、隣接するフィルター用ネットの交点列Lcと交点列Ldとを、又は交点列Ldと交点列Lcとを接合することにより、三次元網目構造の繊維組織体を構成してフィルターとして用いていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の如く構成されるフィルター用ネット及びフィルターの作製工程においては、前記糸状部材111の板状部材101への懸架作業、各交点111aでの溶接等の接合作業、各交点列Lc・Ldでの屈曲作業、及び多数重ね合わされたフィルター用ネットの接合作業等、全ての工程での作業が人手による手作業で行われていたので、フィルターの作製に多大な時間と労力とを要することとなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上のような課題を解決すべく、次のような手段を用いるものである。即ち、請求項1においては、フィルターを構成するフィルター用ネットの作製装置に、給糸部とバイアス作製部と接合部と整形部とを備える。
【0005】また、請求項2においては、請求項1に記載のフィルター用ネットの作製装置により作製されたフィルター用ネットを多数重ね合わせ、重ね合わせたフィルター用ネットを互いに接合して構成した。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付の図面より説明する。図1は本発明のフィルター用ネットの作製装置を示す斜視図、図2はバイアス作製機により屈曲された後の上糸及び下糸の状態を示す平面図、図3は同じく側面図、図4は整形ローラにより屈曲される状態のネット部材を示す側面図、図5は整形部にて整形された後のネット部材を示す側面図、図6は重ね合わされるフィルター用ネットの位置関係を示す斜視図、図7は互いに接合された状態のフィルター用ネットを示す側面図、図8は従来のフィルター用ネットの作製状態を示す斜視図である。
【0007】本発明のフィルター用ネットの作製装置及び該作製装置により作製されるフィルター用ネットの構造について図1により説明する。まず、給糸部1からは、テンサー13により略一定のテンションがかけられた上下2段の上糸11及び下糸12が繰り出されている。上糸11及び下糸12は、略同一間隔で複数設けられており、本例においてはステンレスワイヤや銅線やニッケル線等の金属製の糸状部材を用いている。尚、上糸11及び下糸12は、ナイロン糸やポリエステル繊維といった化学繊維等の非金属製の糸状部材を用いてもよい。
【0008】給糸部1から繰り出される上糸11及び下糸12は、バイアス作製部2のバイアス作製機14によりジグザグ状に屈曲され、バイアス状の網目構造に形成される。即ち、上糸11及び下糸12は、左右方向に往復移動するバイアス作製機14により、略一定間隔毎に同じタイミングで左右逆方向に屈曲され、該上糸11の屈曲方向と下糸12の屈曲方向とは互いに逆方向となっている。
【0009】このように、バイアス作製機14によりジグザグ状に屈曲された上糸11及び下糸12は、図2に示すように、左右一方向に山となるように屈曲された上糸11の屈曲部11aと、左右他方向に山となるように屈曲された下糸12の屈曲部12bとがオーバーラップし、左右他方向に山となるように屈曲された上糸11の屈曲部11bと、左右一方向に山となるように屈曲された下糸12の屈曲部12aとがオーバーラップしており、平面視においてバイアス状の網目構造となっている。
【0010】前述の如くバイアス作製部2で屈曲された上糸11及び下糸12は、図2、図3に示す上糸11の屈曲部11aと下糸12の屈曲部12bとの交点P1、及び上糸11の屈曲部11bと下糸12の屈曲部12aとの交点P2において、接合部3のスポット溶接機15により互いに溶接して接合される。このように、スポット溶接機15により接合された上糸11及び下糸12は、バイアス状の網目構造に形成されるネット部材21となる。
【0011】接合部3にて上糸11及び下糸12を接合して形成されたネット部材21は、送りローラ16により下流側の整形部4へ搬送される。整形部4へ搬送されたネット部材21は、上下二本の整形ローラ17・17に挟持されながら下流側へ送られて整形される。上下の整形ローラ17・17の外周は、互いにかみ合う凹凸形状に形成されており、図4に示すように、ネット部材21は、整形ローラ17・17間を通過する際に、該整形ローラ17・17外周の凹凸形状に沿って上下方向に屈曲されて整形される。
【0012】ネット部材21が整形ローラ17・17により屈曲される場合、図2、図4に示すように、例えば上糸11の屈曲部11aと下糸12の屈曲部12bとの交点P1が左右方向へ一列に並ぶ交点列Laが谷折りされるとともに、上糸11の屈曲部11bと下糸12の屈曲部12aとの交点P2が左右方向へ一列に並ぶ交点列Lbが山折りされ、整形ローラ17外周の凹凸の間隔は交点列Laと交点列Lbとの間隔に合わせて形成されている。そして、ネット部材21は整形部4において波板状に整形され、フィルター用ネットに形成された後、下流側の巻取ローラ18に巻き取られる。
【0013】以上の如く、給糸部1から供給される上糸11及び下糸12は、給糸部1、バイアス作製部2、接合部3、及び整形部4を備えた作製装置によって、自動的にバイアス状の網目構造を有するネット部材21を波板状に整形したフィルター用ネットに形成されるのである。また、該フィルター用ネットを作製する作製装置を前述の如く構成することにより、フィルター用ネットの作製工程を自動化することが可能となり、フィルター用ネットの作製作業の省力化・迅速化を図るとともに、上糸11と下糸12との接合ミス等を無くしてフィルター用ネットの品質向上を図ることができる。
【0014】次に、前記フィルター用ネットを用いて構成されるフィルターについて説明する。該フィルターは、フィルター用ネットを多数重ね合わせて構成されるが、重ね合わされた多数のフィルター用ネットのうち、隣接するフィルター用ネットにおける一方のネットの交点P1と他方のネットの交点P2とを接合して作製される。例えば、図6、図7に示すように、上方のフィルター用ネットの交点P1と下方のフィルター用ネットの交点P2との位置を合わせて、溶接等により両者を接合するのである。このように、積層した多数のフィルター用ネットを互いに接合して一体的に形成することで、上糸11及び下糸12から成る三次元網目構造の繊維組織体を構成し、大きな表面積を有するとともに繊維同士間に空間を有する該繊維組織体を、例えば蒸留装置用のフィルター等、流体用のフィルターとして用いるのである。尚、該フィルターは、板状や円柱状等、重ね合わせるフィルター用ネットの形状や大きさによって様々な形状に形成することが可能である。
【0015】また、前述の如く形成されたフィルター用ネットを多数重ね合わせて接合することによりフィルターを作製することで、該フィルターを、大きな表面積を有するとともに繊維同士間に空間を有する三次元網目構造の繊維組織体に構成することができ、流体中の不純物等を効率よく捕捉して除去することが可能となって、高性能のフィルターに構成することができる。また、該フィルターを構成する糸状部材に、触媒作用を有する糸状部材を用いることにより、該フィルターを高効率の作用効果を奏する触媒として利用することが可能となる。さらに、重ね合わせるフィルター用ネットの形状・大きさを変化させることにより、様々な形状のフィルターを形成することができる。
【0016】
【発明の効果】本発明は、以上のような構成とすることで、次のような効果を奏する。まず、請求項1の如く、フィルター用ネットの作製装置を、給糸部とバイアス作製部と接合部と整形部とを備える作製装置に構成したので、フィルター用ネットの作製工程を自動化することが可能となり、フィルター用ネットの作製作業の省力化・迅速化を図るとともに、該フィルター用ネットを構成する糸状部材の接合ミス等を無くしてフィルター用ネットの品質向上を図ることができる。
【0017】更に、請求項2の如く、前記フィルター用ネットの作製装置により作製されたフィルター用ネットを多数重ね合わせ、重ね合わせたフィルター用ネットを互いに接合して構成したので、該フィルターを、大きな表面積を有するとともに繊維同士間に空間を有する三次元網目構造の繊維組織体に構成することができ、流体中の不純物等を効率よく捕捉して除去することが可能となって、高性能のフィルターに構成することができる。また、該フィルターを構成する糸状部材に、触媒作用を有する糸状部材を用いることにより、該フィルターを高効率の作用効果を奏する触媒として利用することが可能となる。さらに、重ね合わせるフィルター用ネットの形状・大きさを変化させることにより、様々な形状のフィルターを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィルター用ネットの作製装置を示す斜視図である。
【図2】バイアス作製機により屈曲された後の上糸及び下糸の状態を示す平面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】整形ローラにより屈曲される状態のネット部材を示す側面図である。
【図5】整形部にて整形された後のネット部材を示す側面図である。
【図6】重ね合わされるフィルター用ネットの位置関係を示す斜視図である。
【図7】互いに接合された状態のフィルター用ネットを示す側面図である。
【図8】従来のフィルター用ネットの作製状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 給糸部
2 バイアス作製部
3 接合部
4 整形部
11 上糸
12 下糸
14 バイアス作製機
15 スポット溶接機
17 整形ローラ
21 ネット部材
La・Lb 交点列
P1・P2 交点
O 接合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルターを構成するフィルター用ネットの作製装置であって、給糸部とバイアス作製部と接合部と整形部とを備えることを特徴とするフィルター用ネットの作製装置。
【請求項2】 請求項1に記載のフィルター用ネットの作製装置により作製されたフィルター用ネットを多数重ね合わせ、重ね合わせたフィルター用ネットを互いに接合して構成したことを特徴とするフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−9219(P2001−9219A)
【公開日】平成13年1月16日(2001.1.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−188579
【出願日】平成11年7月2日(1999.7.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】