説明

フィルター

【課題】光活性型の色変化反応を行うことが可能な少なくとも一種のジアセチレンを基材に塗布するステップと、基材を光に曝露し、それによって基材の曝露領域に色変化を生じさせるステップとを含む、カラーフィルターを製造する方法。また、本発明は、液晶ディスプレイなど、カラーフィルターを備える装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター、その製造方法およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、写真および液晶ディスプレイ装置に広く使用されている。一般的に、フィルターは、異なる3色、典型的には赤、緑および青のフィルター成分を含む。別に選別された明暗度(separate filtered intensities)が、光の色についての情報を含むように、カラーフィルターは、波長範囲によって光を選別する。
【0003】
フォトレジスト、有機色素の真空蒸着後の従来のフォトリソグラフ式リフトオフ技術の使用、内部色分極フィルターを形成するために染色し模様付けした延伸したフィルム材の使用、および従来のハロゲン化銀感光層の使用を含む多数の技術が、カラーフィルターを形成するために使用されてきた。カラーフィルターを形成するための従来技術は、例えば、特許文献1(米国特許第4,743,098号明細書)および特許文献2(米国特許第5,578,404号明細書)に記載されている。これらの技術のいくつかは、高価で時間もかかり、カラーフィルターを形成するための改善された方法の提供が依然として望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1観点では、
光活性型の色変化反応を行うことが可能な少なくとも一種のジアセチレンを基材に塗布するステップ、および
基材を光に曝露し、それによって基材の曝露領域の色を変化させるステップ
を含むカラーフィルターを製造する方法が提供される。
【0005】
本発明の第2観点では、本発明の第1観点に記載されているカラーフィルターを有する装置が提供される。一般的に、そのカラーフィルターは、本発明の第1観点に記載の方法によって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のカラーフィルターは、光に曝露すると色変化反応を行うことが可能な少なくとも一種のジアセチレンを基材に塗布し、基材を光に曝露し、それによって曝露された領域に色変化を起こさせることによって生成される。
【0007】
―色変化―
この反応の結果として、どのような色変化も実現可能である。しかし、好ましい色変化反応は、第一に、無色を有色にするものである。しかし、光にさらに曝露することで、その有色の領域をさらに色変化させ、得られた第一の色とは異なる色を付与することができる。得られた色は、カラーフィルターの使用に応じて、不透明または透明であってよい。
【0008】
―光源―
色変化反応を開始させるために使用する光は、レーザーまたは非干渉性光であってよい。
【0009】
光活性型の色変化反応を開始させるために使用するレーザーは、紫外、可視、近赤外または中赤外から遠赤外レーザーであってよい。そのレーザーは、ファイバーレーザー、COレーザーなどのガスレーザー、ダイオードレーザーまたはダイオードアレイレーザーであってよい。レーザーは、ビームステアリング(steered beam)システムまたは検流計システムであってよい。
【0010】
光活性型の色変化反応を開始させるために使用する非干渉性光源は、ランプ、電球、発光ダイオードまたは発光ダイオードアレイであってよい。
【0011】
光は、単色光または広帯域光であってよい。レーザーは、単色光を生成するのに特に有用であり、非干渉性光源は、広帯域光を生成するのに特に有用である。
【0012】
好ましい光の波長範囲は、200nm〜20μmである。
【0013】
レーザーは、高分解能画像をもたらすコンピューター制御型画像処理システムによって、基材の正確な領域で光活性型の色変化を開始させるのに特に有用である。レーザーは、また、非常に小さい画像の生成またはマイクロ画像処理(micro−imaging)に特に好ましい。レーザーは、高速画像処理工程にも使用することができる。
【0014】
非干渉性光は、マスクと組み合せて使用すれば、基材の特定の領域で色変化反応を開始させるのに使用することができる。
【0015】
―色変化化学―
本発明では、任意のジアセチレン、またはジアセチレンと、光に曝露すると色変化反応を行うことが可能な他の物質との組合せを使用してもよい。
【0016】
ジアセチレン化合物は、少なくとも一種のジアセチレン基、すなわち−C≡C−C≡C−を含む物質である。特に好ましいものは、ポリクロム色変化反応を示すジアセチレン化合物である。これらの化合物は、最初は無色であるが、紫外光などの好適な光に曝露されると、色変化反応を経て青色を生成する。次いで、青形態のある種のジアセチレン類を、さらに近赤外光などの光に曝露し、それにより青形態をマゼンタ、赤、黄および緑形態に転換することができる。
【0017】
本発明で使用してよいジアセチレン化合物の具体例は、公開特許出願の国際公開第2006/018640号パンフレットに示されている。
【0018】
ジアセチレン化合物のさらなる例には、以下の一般構造式によって表されるものが含まれる。
【0019】
【化1】


または、
【0020】
【化2】


または、
【0021】
【化3】


または、
【0022】
【化4】

【0023】
式中、
XおよびYは、二価の直鎖もしくは分枝アルキレン型基(−CH−)(n=0〜24)、または二価のフェニレン型基(−C−)(n=0,1)、またはこれら両方の型の組合せであり、
QおよびVは、存在する場合は、二価の架橋基、例えば、−S−、−O−、−NHR’−であり、その際、R’は水素、アルキル、アミド、エステル、チオエステル基、カルボニルまたはカルバメートであり、
R1およびR2は、Hまたはアルキルであり、
AおよびTは、二価の基であって、XもしくはYなどのアルキレン型もしくはフェニレン型、またはQもしくはVなどの架橋型、またはこれら両方の型の組み合わせであり、その際、XもしくはYは、Q基もしくはV基をさらに含み、
Zは、XもしくはQなどの二価の基、または両方の基の組合せであり、その際、XはQ基をさらに含んでよく、またはZは無くてもよく、nは、2〜20,000,000である。
【0024】
基XおよびYは、任意に、そのジアセチレン基に関して、好ましくはα、βまたはγ位で置換されている。例えば、下式に示されるα−ヒドロキシ基であってもよい。
【0025】
【化5】

【0026】
ジアセチレンは、対称的であっても、または非対称的であってもよい。
【0027】
QおよびVは、アミン、アルコール、チオールまたはカルボン酸などの基によって任意に置換されている。QおよびVの両方が存在してもよいが、その代わりに、Qだけ存在してもよい。
【0028】
上記化合物中のR1およびR2がアルキルである場合、それらは直鎖もしくは分枝鎖であり、かつ有機化学で既知の他の官能基、例えば、アルコール、アミン、カルボン酸、芳香環系、およびアルケン類およびアルキン類などの不飽和基をさらに含んでもよい。
【0029】
基R1、R2、Q、V、XおよびYは、イオン基を含んでもよく、それはアニオン性またはカチオン性であってもよい。例としては、硫酸イオン基(−SO−)およびアンモニウム基が含まれる。これらのイオン基は、任意の好適な対イオンを有してもよい。
【0030】
ジアセチレン化合物のさらなる例は、ジアセチレンカルボン酸類およびその誘導体である。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ペンタコサジイン酸および10,12−ドコサジイン二酸、およびそれらの誘導体である。別の例には、5,7−ドデカジイン二酸、4,6−ドデカジイン酸、5,7−エイコサジイン酸、6,8−ヘンエイコサジイン酸、8,10−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘプタコサジイン酸、12,14−ヘプタコサジイン酸、2,4−ヘプタデカジイン酸、4,6−ヘプタデカジイン酸、5,7−ヘキサデカジイン酸、6,8−ノナデカジイン酸、5,7−オクタデカジイン酸、10,12−オクタデカジイン酸、12,14−ペンタコサジイン酸、2,4−ペンタデカジイン酸、5,7−テトラデカジイン酸、10,12−トリコサジイン酸2,4−トリコサジイン酸、およびこれらの誘導体が含まれる。ジアセチレンアルコール類およびジオール化合物類、およびそれらの誘導体も好ましく、例としては、5,7−ドデカジイン−1,12−ジオール、5,7−エイコサジイン−1−オール、2,4−ヘプタデカジイン−1−オール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、3,5−オクタジイン−1,8−ジオール、4,6−デカジイン−1,10−ジオール、2,7−ジメチル−3,5−オクタジイン−2,7−ジオール、14−ヒドロキシ−10,12−テトラデカジイン酸が含まれる。他には、1,6−ジフェノキシ−2,4−ヘキサジイン、1,4−ジフェニルブタジイン、1,3−ヘプタジイン、1,3−ヘキサジインおよび2,4−ヘキサジインが含まれる。
【0031】
異なるジアセチレンの組合せも使用することができる。特に好ましい組合せは、10,12−ペンタコサジイン酸または10,12−ドコサジイン二酸およびそれらの誘導体と、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールとの組合せである。10,12−ペンタコサジイン酸は、青、赤および黄を生成することができる。2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールは、シアン色を生成することができる。同時に、10,12−ペンタコサジイン酸を黄に、そして2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールをシアンに活性化させると、緑が得られる。
【0032】
「活性化可能」である、すなわち光に対して比較的不活性な第1の固体形態を有するが、「活性化」されると、光に対して比較的反応性を有し、従って色変化反応して可視画像を生成することが可能な第2の形態に転換されるジアセチレン化合物は、本発明では特定の有用性を有する。理論により制限されることなく、活性化とは、再結晶化、結晶形態の変更、共結晶の組合せ、または溶融/再固化過程であり得る。
【0033】
特に好ましいジアセチレン類は、初期溶融および再固化活性化後は無色であるが、光、特にUV光に曝露されると青色になるジアセチレンである。最も好ましいジアセチレン化合物は、カルボン酸類およびその誘導体であり、
R−C≡C−C≡C−R’
である。式中、Rおよび/またはR’は、COX基(Xは、−NHY、−OY、−SYであり、Yは、H、または少なくとも一個の炭素原子を含む任意の基である。)である。
【0034】
さらに特に好ましいものは、カルボン酸基がアミド、エステルまたはチオエステルに官能基化されている誘導体である。これらは、ジアセチレンカルボン酸と、塩化オキサリルなどの塩素化剤とを反応させるステップ、次いでそのジアセチレン酸塩化物と、アミン、アルコールまたはチオールなどの求核性化合物とを反応させるステップにより容易に製造することができる。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ドコサジイン二酸およびその誘導体、例えば、アミド類、エステル類、チオエステル類などである。さらに特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸の誘導体はアミド類である。さらに特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸のアミド誘導体は、以下に示されるような、少なくとも一個のカルボン酸基、好ましくは両方のカルボン酸基が、プロパルギルアミドに転換されているプロパルギルアミドである。
【0035】
【化6】

【0036】
プロパルギルアミドは、カルボン酸類とプロパルギルアミンとの反応によって製造される。好適なアミド類を生成するために使用できる他の好ましいアミン類には、ジプロパルギルアミンおよび1,1−ジメチルプロパルギルアミンが含まれる。
【0037】
一般的に、活性型ジアセチレンは、NIR光吸収剤と一緒に使用されるが、これは、700〜2500nmの波長範囲の光を吸収する化合物である。
【0038】
NIRファイバーレーザーなどのNIR光源を使用して、画像を必要とする領域のコーティングのみを加熱する。次に、殺菌灯などのUV光源を使用して、UV光によりコーティングをあふれさせる(flood)。しかし、ジアセチレン化合物のみが、色変化反応を受けて、最初にNIR光に曝露された領域中に画像を形成する。NIR光に曝露されていないコーティング領域は、無視できる程度の色変化反応を経て、実質的に無色のままであり、バックグラウンド照射に対して安定している。熱に基づく事前の活性化ステップを開始させるために、熱式プリントヘッドを使用してよい。
【0039】
NIR光吸収剤の具体例には、以下のものが含まれる。
i.有機NIR吸収剤
ii.NIR吸収「導電性」ポリマー
iii.無機NIR吸収剤
iv.非化学量論の無機吸収剤
【0040】
特に好ましいNIR吸収剤は、スペクトル(400〜700nm)の可視領域では基本的に吸収性を持たす、従って、見かけ上無色に見えるコーティングが得られる吸収剤である。
【0041】
有機NIR吸収剤は、NIR染料/色素として知られている。例としては、それだけには限らないが、メタロ−ポルフィリン類、メタロ−チオレン類およびポリチオレン類のファミリー、メタロ−フタロシアニン類、これらのアザ変異体、これらの環付加(annellated)変異体、ピリリウム塩類、スクアリリウム類、クロコニウム類、アンミニウム類、ジイモニウム類、シアニン類およびインドレニンシアニン類が含まれる。
【0042】
本発明で使用可能な有機化合物の例は、米国特許第6,911,262号明細書に教示されており、Developments in the Chemistry and Technology of Organic dyes(J Griffiths編)、Oxford: Blackwell Scientific(1984)、およびInfrared Absorbing Dyes(M Matsuoka編)、New York: Plenum Press(1990)に示されている。本発明のNIR染料または色素の別の例は、米国ニュージャージー州Newark在Epolin社製Epolight(商標)シリーズ、カナダ国ケベック州American Dye Source社製ADSシリーズ、米国フロリダ州Jupiter在HW Sands社製SDAおよびSDBシリーズ、ドイツ国BASF社製Lumogen(商標)シリーズ、特にLumogen(商標)IR765およびIR788、および英国マンチェスター市Blackley在FujiFilm Imaging Colorants社製Pro―Jet(商標)染料シリーズ、特にPro―Jet(商標)830NP、900NP、825LDIおよび830LDIに見られる。別の例は、国際公開第08/050153号パンフレットに教示されている。
【0043】
NIR吸収「導電性」ポリマーの例には、HC Starck社製Baytron(登録商標)PなどのPEDOTが含まれる。別の例は、国際公開第05/12442号パンフレットに教示されている。
【0044】
無機NIR吸収剤の例には、銅(II)塩が含まれる。ヒドロキシルリン酸銅(II)(CHP)が特に好ましい。別の例は、国際公開第05/068207号パンフレットに教示されている。
【0045】
非化学量論の無機吸収剤の例には、還元された酸化インジウムスズ、還元された酸化アンチモンスズおよび還元された硝酸チタンが含まれる。別の例は、国際公開第05/095516号パンフレットに教示されている。1550nm〜2500nmレーザーと組み合せた還元された酸化インジウムスズが特に好ましい。
【0046】
NIR吸収剤の吸収プロファイルが、使用するNIR光源の発光波長とほぼ合致するならば、特に好ましい。
【0047】
NIR吸収剤の代わりに使用可能な他の光吸収剤には、UV(200〜400nm)、可視(400〜700nm)および中赤外(〜10.6μm)光吸収剤が含まれる。例としては、染料/色素、UV吸収体およびIriodin型化学物質が含まれる。
【0048】
本発明では、ジアセチレンと一緒に電荷移動剤を使用してよい。これらは、最初は無色であるが、プロトン(H)と反応させると有色形態になる物質である。本発明の一部を形成する電荷移動剤には、カルバゾール類として知られている化合物が含まれ、好適な例は、国際公開第2006/051309号パンフレットに記載されている。ロイコ染料など、当業者には公知である他の電荷移動剤も使用することができる。通常、電荷移動剤は、他の物質、例えば、特定の波長に対する光吸収剤、熱発生剤、酸発生剤などと組み合せて使用する。
【0049】
本発明での使用に特に好ましい組合せは、青色および赤色を生じさせる10,12−ペンタコサイジイン酸、または10,12−ドコサジイン二酸(またはその誘導体)などのジアセチレンと、緑色を発色させる電荷移動剤である。
【0050】
―色変化化学の適用―
光活性型化合物は、基材表面へのコーティングという形で基材に塗布することができる。これは、通常、インク調合物に光活性型化合物を調合して、次に基材表面にそのインクをコーティングすることによって実施される。任意のコーティングまたはインク塗布技法も使用できるであろう。コーティングは、基材の表面全体、または特定の領域のみに塗布することもできる。インク調合物には、他の物質、例えば、結合剤、溶媒などを含めることもできる。光活性型化合物は、基材のバルク(bulk)内の基材に施用することもできる。基材が熱可塑性フィルムの場合、フィルム生成に使用される熱可塑性体中に、光活性型化合物を同時成形(co−moulded)し、または同時押出し(co−extruded)することができる。
【0051】
基材は、用途に応じてカラーフィルターを製造するために使用される、任意の不透明材料または透明材料であってもよい。ガラスおよび熱可塑性フィルムが特に好ましい。
【0052】
―カラーフィルターの使用法―
本発明のカラーフィルターは、従来のカラーフィルターと同様に、例えば、舞台照明、特殊効果、光学式記録装置、写真、天文学および顕微鏡に使用することができる。
【0053】
しかし、本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)で使用されるカラーフィルターの製造に、特に有利である。LCDは、通常、フォトリソグラフィまたはインクジェット印刷技術を使用して製造される。本発明の光活性型物質は、LCDに必要な高度に透明な色を生成するために使用することができる。本発明はまた、最先端の技術よりもはるかに単純であり、高い処理能力が得られる。本発明のカラーフィルターを備えるLCDディスプレイは、テレビ、ラップトップコンピューター、移動電話などの装置、またはLCDディスプレイを必要とするあらゆる装置に使用することができる。本発明のカラーフィルターは、プラズマスクリーンおよび電気泳動ディスプレイの製造にも使用することができる。
【0054】
本発明のカラーフィルターは、カラーフィルターアレイの製造にも使用でき、その一つの例として、センサー、カメラ、ビデオカメラ、およびスキャナで使用されるベイヤ配列がある。本発明のカラーフィルターの適用例には、他にも、パンクロマティックなセル、Foveon社製の垂直カラーフィルターおよびKodak Color Filter Array 2.0が含まれる。
【0055】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【実施例1】
【0056】
a.カルバゾールインク
N−エチルカルバゾール(例えば、Aldrich社製,5g)を、ニトロセルロースDLX3―5(例えば、Nobel Enterprises社製)の15%MEK溶液(95g)に溶解した。
【0057】
次に、上記N−エチルカルバゾール/NC溶液(9.62g)に、トリフル酸銅(II)(例えば、Aldrich社製,0.38g)を溶解した。
【0058】
b.ジアセチレンインク
酢酸エチル(2g)に、10,12−ペンタコサジイン酸(例えば、GFS Chemicals社製、0.5g)を溶解した。次に、Durotak 180−1197接着剤(例えば、オランダ国Zutphen在Delft National Chemie社製)にこの溶液を加え、振動させながら暖めて透明な溶液を生成した。
【0059】
―インクの塗布―
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明なPETフィルムに、カルバゾールインクをコーティングし、乾燥させた。
【0060】
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、ジアセチレン/Durotakインクをコーティングし、乾燥させた。
【0061】
コーティングした2枚の基材を一緒にプレスして、積層構造体を形成した。
【0062】
積層体のポリプロピレンフィルム層を通して無色ジアセチレンを青色に変化させる反応を開始させるために、広帯域UV殺菌灯を使用した。次に、ホットエアガンを使用し加熱することによって、ポリアセチレンの青色を赤色に変化させた。
【0063】
次に、130℃で作動するヒートシーラーを使用して適用される接触熱を利用して、無色カルバゾールを緑色に変化させる反応を活性化することにより、無色積層体を緑色に変化させた。
【0064】
【表1】

【0065】
表中、
=明度(0〜100)
=+ve赤色度〜−ve緑色度
=+ve黄色度〜−ve青色度
である。
【0066】
上表に示す色座標L、aおよびbは、視覚的に異なる3色相、すなわち青色、赤色および緑色が、本発明を使用して得られることを明確に示している。従って、本発明のカラーフィルターは、これらの組合せを相加的に混合することによって、全ての可能な色を発色させることができる。
【0067】
結果として得られた三色(trichromatic)積層構造は、カラーフィルターの製造に有用であった。
【実施例2】
【0068】
―単一インク―
a.カルバゾール部分
N−エチルカルバゾール(例えば、Aldrich社製,1g)を、ニトロセルロースDLX3―5(例えば、Nobel Enterprises社製)の15%MEK溶液(9g)に溶解した。
【0069】
次に、上記N−エチルカルバゾール/NC溶液(9.38g)に、トリフル酸銅(II)(例えば、Aldrich社製,0.72g)を溶解した。
【0070】
b.ジアセチレン部分
Elvacite 2028の15%酢酸エチル(9.0g)溶液に、10,12−ペンタコサジイン酸(例えば、GFS Chemicals社製,1g)を溶解した。
【0071】
次に、カルバゾールインク(5g)とジアセチレンインク(5g)とを混合して、単一インクを生成した。
【0072】
―インクの塗布―
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、単一インクをコーティングした。
【0073】
酢酸エチル(2.5g)に、Durotak 180−1197接着剤(例えば、オランダ国Zutphen在Delft National Chemie社製,7.5g)を溶解した。
【0074】
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明なPETフィルムに、Durotakをコーティングした。
【0075】
2枚のフィルムを組み合わせて、積層構造体を製造した。
【0076】
無色ジアセチレンを青色に変化させる反応を開始させるために、広帯域UV殺菌灯を使用した。次に、ホットエアガンを使用し加熱することによって、ポリアセチレンの青色を赤色に変化させた。
【0077】
次に、130℃で作動するヒートシーラーを使用して適用される接触熱を利用して、無色カルバゾールを緑色に変化させる反応を活性化することにより、無色積層体を緑色に変化させた。
【0078】
【表2】

【0079】
上表に示す色座標L、aおよびbは、視覚的に異なる3色相、すなわち青色、赤色および緑色が、本発明を使用して得られることを明確に示している。従って、本発明のカラーフィルターは、これらの組合せを相加的に混合することによって、全ての可能な色を発色させることができる。
【0080】
結果として得られた三色(trichromatic)積層構造は、カラーフィルターの製造に有用であった。
【実施例3】
【0081】
a.ジアセチレンインク
10,12−ペンタコサジイン酸(1g)、Durotak 180−1197(19g)および酢酸エチル(4g)を一緒に混合して、インク溶液を生成した。
【0082】
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、そのインクをコーティングした。
【0083】
b.ロイコ染料インク
Pergascript Blue SRB―P(例えば、Ciba社製,1.7g)、Yamada Yellow Y―726(例えば、Yamada社製,2.8g)、Tinuvin 770DF(0.6g)、Sericol Polyplast PY―383(例えば、Sericol社製,56g)、Sericol Thinner ZV―557(例えば、Sericol社製,35.5g)およびCyracure UVI光開始剤UVI―6992(例えば、Dow社製,3.4g)を含むインクを調合した。
【0084】
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、そのインクをコーティングした。
【0085】
コーティングした2枚のBOPPフィルムを組み合わせて、積層体を形成した。
【0086】
ジアセチレン層は無色から青色に変化し、次いでCoherent Avia社製266nmUVレーザーから発せられたUV光、またはJenton Acticure 4000によって得られる照射など、266nmの照射を含む好適な広帯域光源に曝露させることによって、赤色に変化した。
【0087】
Coherent Avia社製355nmUVレーザーもしくは好適な355nm超の光源から発せられるようなUV光、または、355nm超の光のみを透過させる好適な帯域フィルターを使用するが、例えばJenton Acticure 4000などの355nmの照射を含む広帯域UV光源に曝露させることによって、ロイコ染料層は無色から緑色に変化した。
【0088】
生成されたCIE L色は、以下の通りであった。
【0089】
【表3】

【0090】
上表に示す色座標L、aおよびbは、視覚的に異なる3色相、すなわち青色、赤色および緑色が、本発明を使用して得られることを明確に示している。従って、本発明のカラーフィルターは、これらの組合せを相加的に混合することによって、全ての可能な色を発色させることができる。
【0091】
ジアセチレン層は、約310nm超の波長に曝露されても、色が変化しない。この技術によって、純粋色の生成に不可欠である青色変化および赤色変化とは独立して、緑色変化を開始させることができる。
【0092】
代わりに、青色および赤色は、積層構造体のジアセチレン側から得られ、逆(ロイコ染料)側からは緑色が得られる。
【実施例4】
【0093】
a.ジアセチレンインク
10,12−ドコサジイン二酸をその酸塩化物を介してプロパルギルアミンと反応させることによって製造した10,12−ドコサジイン二酸プロパルギルジアミド(1g)、Durotak 180−1197(19g)、N,N,N,N−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン(0.1g)およびアセトン(4g)を一緒に混合して、インク溶液を生成した。
【0094】
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、そのインクをコーティングした。
【0095】
b.ロイコ染料インク
Pergascript Blue SRB―P(例えば、Ciba社製,1.7g)、Yamada Yellow Y―726(例えば、Yamada社製,2.8g)、Tinuvin 770DF(0.6g)、Sericol Polyplast PY―383(例えば、Sericol社製,56g)、Sericol Thinner ZV―557(例えば、Sericol社製,35.5g)およびCyracure UVI光開始剤UVI―6992(例えば、Dow社製,3.4g)を含むインクを調合した。
【0096】
30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、そのインクをコーティングした。
【0097】
コーティングした2枚のBOPPフィルムを組み合わせて、積層体を形成した。
【0098】
1070nmの波長で作動するNIRファイバーレーザーを使用し事前に活性化し、次に、例えばCoherent Avia社製266nmUVレーザーから発せられたUV光、または、例えばJenton Acticure 4000によって得られるような266nmの照射を含む好適な広帯域光源に曝露されるまでは、ジアセチレン層は不活性であった。NIR光で事前に活性化した領域でのみ、無色から青色へ変化する反応が生じる。非NIR曝露領域は、UV光に曝露されても無色のままであった。
【0099】
Coherent Avia社製355nmUVレーザーもしくは好適な355nm超の光源から発せられるようなUV光、または、355nm超の光のみを透過させる好適な帯域フィルターを使用するが、例えばJenton Acticure 4000などの355nmの照射を含む広帯域UV光源に曝露させることによって、ロイコ染料層は無色から緑色に変化した。
【実施例5】
【0100】
―混合ジアセチレンインク―
10,12−ペンタコサジイン酸(1g)、1,6−ジオール−2,4−ヘキサジイン(1g)、Durotak 180−1197(19g)および酢酸エチル(4g)を一緒に混合して、インク溶液を生成した。30μmのK―barおよびRK―Prooferプリンターを使用し、50μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、そのインクをコーティングした。
【0101】
次に、別の1枚のBOPPを用いて、インクを積層化した。
【0102】
低出力UVレーザーを使用して青色および赤色が形成された。より高いフルエンス(fluence)のUV光で青色領域を照射すると、黄色を形成する1,6−ジオール−2,4−ヘキサジインが緑色を呈し始めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】米国特許第4,743,098号明細書
【特許文献2】米国特許第5,578,404号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光活性型の色変化反応を行うことが可能な少なくとも一種のジアセチレンを基材に塗布するステップ、および
前記基材を光に曝露し、それによって前記基材の曝露された領域の色を変化させるステップを含むカラーフィルターを製造する方法。
【請求項2】
前記色変化反応は、無色から有色に変化する反応である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光は、レーザー光である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザー光の波長は、200nm〜20μmの範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザー光は、ビームステアリング(steered beam)レーザーシステム、ダイオードレーザー、ダイオードアレイレーザー、またはファイバーレーザーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光は、非干渉性光である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記非干渉性光は、ランプ、電球、発光ダイオード、または発光ダイオードアレイによって得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアセチレンは、電荷移動剤と一緒に前記基材に塗布される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電荷移動剤は、ロイコ染料またはカルバゾールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアセチレンは、10,12−ドコサジイン二酸およびその誘導体、好ましくは10,12−ドコサジイン二酸のモノプロパルギルアミドまたはジプロパルギルアミドである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ジアセチレンは、光吸収剤と一緒に前記基材に塗布され、前記ジアセチレンは、最初は不活性であるが活性化によって反応性を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ジアセチレンは、前記基材の表面にコーティングされる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ジアセチレンは、前記基材の内部に組み込まれる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のカラーフィルターを備える装置。
【請求項15】
ディスプレイ装置、好ましくは液晶ディスプレイ装置である、請求項14に記載のカラーフィルターを備える装置。

【公表番号】特表2011−526702(P2011−526702A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515633(P2011−515633)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050776
【国際公開番号】WO2010/001172
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(507055925)データレース リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
【Fターム(参考)】