説明

フィルタ装置、送信装置、受信装置、通信システム、フィルタ方法、送信方法、受信方法、ならびに、プログラム

【課題】CDMA環境下において通信品質を向上させるのに好適な拡散符号ならびに逆拡散符号を生成するフィルタ装置等を提供する。
【解決手段】フィルタ装置201の複素計算部203は、入力受付部202で受け付けられた複素擬似乱数系列からFIRフィルタまたはIIRフィルタを用いて生成された複素数列を出力部204から出力し、当該FIRフィルタまたはIIRフィルタは複素相関パラメータを乗数することを特徴とし、当該フィルタ装置の複素数列出力を送信装置の拡散符号と受信装置の逆拡散符号に用いることによって、符号分割多重伝送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複素擬似乱数列の出力装置、受信フィルタ装置、送信フィルタ装置、受信方法、送信方法、ならびに、これらをコンピュータ上にて実現するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直交符号系列(M系列、Gold符号、ウォルシュ関数から得られる直交符号系列、チェビチェフ多項式から得られる直交実数符号系列、チェビチェフ多項式から得られるパワー一定の直交複素符号系列など)を拡散符号として用いる符号分割多元接続(CDMA:Code Devision Multiple Access)技術が提案されている。たとえばW−CDMAシステムおよびCDMA2000システムなどの携帯無線通信技術、IEEE802.11bなどの無線LAN技術である。
【0003】
このほか、乱数列に適切なFIR(Finite Impulse Responce)フィルタを適用して自己相関を調整した数列を拡散符号として採用する技術が知られている。以下の文献には、このような技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3314181号公報
【特許文献2】特許第3531869号公報
【特許文献3】特許第3556190号公報
【特許文献4】特開2005−136685号公報
【0005】
[特許文献1][特許文献2][特許文献3]に開示されている技術で用いられるFIRフィルタは、所定の遅延時間定数Tと所定の実相関パラメータr(−1<r<1)とを用いて、公差Tの等差数列である遅延時間列D[i]、公比rの等比数列である増幅率列A[i]を持つ。
【0006】
そして、複数の送受信系において同じT,r、異なる初期値を使って生成した実数および複素数の擬似乱数列に対して上記のFIRフィルタを適用し、実数および複素数の擬似乱数列出力を得て、当該数列を拡散符号として利用した場合、ビット誤り率が向上することがわかっている。
【0007】
また、[特許文献4]においては、異なるrを採用した複数の送受信系(ヘテロシステム)において、最適なrを決定する手段が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなFIRフィルタを用いる技術は、同期CDMA環境下においては効果を発揮できない。同期CDMA環境は、非同期CDMA環境における評価の基準となる環境であり、同期CDMA環境下においても通信品質を向上させる技術が求められている。
【0009】
本発明は、このような同期CDMA環境においても好適な拡散を行えるフィルタ装置、送信装置、受信装置、通信システム、フィルタ方法、送信方法、受信方法、ならびに、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するため、本発明の原理にしたがって、下記の発明を開示する。
【0011】
本発明の第1の観点にかかわるフィルタ装置は、所定の複素定数r(0<|r|≦1)と所定の実数定数a(a≠0)と所定の遅延時間定数Dとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理するフィルタ装置であって、複素数の系列の入力を受け付ける入力受付部と、前記入力受付部により入力を受け付けられた複素数の系列のうち、それぞれ0,D,2D,3D,…,(N−1)D(Nは所定の正整数)だけ遅延させた複数の系列を出力する複素遅延部と、前記複素遅延部により遅延されて出力された複数の系列のそれぞれを、当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−T/Dを乗算する系列を出力する複素計算部と、前記複素計算部により複素乗算されて出力された系列の総和を出力する出力部と、を備える。
【0012】
また本発明のフィルタ装置において、複素遅延部は、「それぞれ0,D,2D,3D,…,(N−1)Dだけ遅延させる」のにかえて、それぞれD,2D,3D,…,(N−1)D,NDだけ遅延させ、前記複素計算部は、「当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−T/Dを乗算」するのにかえて当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−(T−1)/Dを乗算することを特徴とする様に構成できる。
【0013】
また本発明のフィルタ装置において、複素計算部は、「当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−T/Dを乗算」するのにかえて当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)1+T/Dを乗算することを特徴とする様に構成できる。
【0014】
また本発明のフィルタ装置において、複素遅延部は、「それぞれ0,D,2D,3D,…,(N−1)Dだけ遅延させる」のにかえて、それぞれD,2D,3D,…,(N−1)D,NDだけ遅延させ、前記複素計算部は、「当該遅延時間がTである場合、a(−r)N−T/D倍して増幅」するのにかえて当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)T/Dを乗算することを特徴とする様に構成できる。
【0015】
また本発明のフィルタ装置において、複素定数r(0<|r|≦1)と所定の遅延時間定数Dとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理するフィルタ装置であって、複素数の系列の入力を受け付ける入力受付部と、前記入力受付部により入力を受け付けられた複素数の系列のうち、複素数の系列を入力として受け付けてフィルタ処理した系列を出力する複素計算部とし、複素計算部により出力された複素数の系列を出力する出力部と、を備え、複素計算部は、入力された系列を1種類以上遅延させた複数の遅延系列のそれぞれに複素乗算し、当該複素乗算された系列の総和を出力し、当該系列の遅延時間は公差Dの等差数列をなし、これらのそれぞれに対する乗算する複素数は公比−rもしくは公比−1/rの等比数列をなすことを特徴とする様に構成できる。
【0016】
また本発明のフィルタ装置において、所定の複素定数rは、所定の自然数定数Kに対して、その複素平面上の位相が、2π/Kの自然数倍に等しいことを特徴とする様に構成できる。
【0017】
また本発明のフィルタ装置において、前記複素遅延部、前記複素計算部、および、前記出力部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、もしくは、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成される様に構成できる。
【0018】
本発明の他の観点に係わる送信装置は、上記のフィルタ装置を用いる送信装置であって、複素数の伝送信号を入力として受け付ける信号受付部と、チップレート1/Dの所定の複素PN系列を前記フィルタ装置に入力し、前記フィルタ装置が出力する複素系列をチップレート1/Dで出力する系列出力部と、前記系列出力部により出力される複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、信号受付部に入力された複素伝送信号をスペクトル拡散変調する拡散部と、を備える様に構成できる。
【0019】
また、本発明の送信装置において、拡散部の拡散変調は、IMT 2000 W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、TDS−CDMA規格に従うことを特徴とする様に構成できる。
【0020】
また、本発明の送信装置において、フィルタ装置に入力される複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とする様に構成できる。
【0021】
また、本発明の送信装置において、フィルタ装置に入力される複素PN系列は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とする様に構成できる。
【0022】
また、本発明の送信装置において、前記エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とする様に構成できる。
【0023】
また本発明の他の観点に係わる受信装置は、上記のフィルタ装置を用いる受信装置であって、複素数の受信信号を入力として受け付ける受信部と、複素PN系列をフィルタ装置に入力し、フィルタ装置が出力する複素系列をチップレート1/Dで出力する系列出力部と、前記系列出力部により出力される複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、前記受信部に入力された複素受信信号を逆拡散変調する逆拡散部と、を備えることを特徴とする様に構成できる。
【0024】
また、本発明の受信装置において、逆拡散部による逆拡散変調は、IMT 2000 W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、TDS−CDMA規格に従うことを特徴とする様に構成できる。
【0025】
また、本発明の受信装置において、フィルタ装置に入力される複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とする様に構成できる。
【0026】
また、本発明の受信装置において、フィルタ装置に入力される複素PN系列は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とする様に構成できる。
【0027】
また、本発明の受信装置において、エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とする様に構成できる。
【0028】
本発明の他の観点に係わる通信システムは、複数の送信装置と少なくとも一つの受信装置から構成される通信システムであって、少なくとも一つの送信装置が、上記の送信装置であり、少なくとも一つの受信装置が、上記の受信装置であって、当該送信装置より送信された信号を受信する受信装置と、を備えることを特徴とする通信システムであるように構成できる。
【0029】
即ち、本発明の他の観点にかかわる通信システムは、少なくとも1つの受信装置と、K(K>1)個の送信装置と、を有し、当該K個の送信装置のそれぞれについて、i(i=0,…,K−1)番目の送信装置には、複素相関パラメータrが(|r|<1)割りあてられ、次のように構成される。
【0030】
すなわち、i番目の送信装置から受信装置へ情報が伝送される場合、当該受信装置と当該i番目の送信装置とは、所定の絶対値R(0≦R<1)と、[数1]により与えられる偏角ρ(0≦ρ≦2π)から、jを虚数単位として[数2]によって計算される複素相関パラメータrと、複素系列Cとから、当該逆拡散符号系列C’を計算する。逆拡散部は、計算された逆拡散符号C’により、当該i番目の送信装置から伝送された信号を、受信された拡散信号の総和から逆拡散する。
【0031】
複素PN系列C[t]を与える場合(tは整数)、所定の正数Mにより[数3]と[数4]から計算される複素擬似乱数系列C’[t]を計算するフィルタ装置の出力列を拡散符号として用いて拡散を行い、符号分割接続通信により伝送を行う。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【0032】
とくにMを正無限大としたとき、[数3]と[数4]は、それぞれ[数5]と[数6]に置き換えられる。
【数5】

【数6】

【0033】
本発明の通信システムにおいて、当該受信装置は、受信部と、系列出力部と、逆拡散部と、を備え、以下のように構成することができる。
【0034】
すなわち、受信部は、K個の送信装置から送信された拡散信号の総和を受信する。系列出力部は、与えられた複素相関パラメータrと、当該複素擬似乱数系列Cの共役複素系列Cとから、当該逆拡散符号系列C’を計算する。逆拡散部は、計算された逆拡散符号C’により、当該i番目の送信装置から伝送された信号を、受信された拡散信号の総和から逆拡散する。
【0035】
また、本発明の通信システムにおいて、当該i番目の送信装置は、信号受付部と系列出力部と、拡散部と、送信部と、を備え、以下のように構成することができる。
【0036】
すなわち、信号受信部は、当該受信装置に伝送すべき信号を受け付ける。系列出力部は、与えられた複素相関パラメータrと、当該複素擬似乱数系列Cとから、当該拡散符号系列C’を計算する。拡散部は、計算された拡散符号C’により、受け付けられた信号と拡散する。そして、送信部は、当該拡散済信号を当該受信装置に送信する。
【0037】
本発明の他の観点に係わるフィルタ方法は、所定の複素定数r(0<r≦1)と所定の遅延時間定数Dとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理するフィルタ方法であって、複素数の系列の入力を受け付ける入力受付工程と、前記入力受付工程にて入力を受け付けられた複素数の系列のうち、複素数の系列を入力として受け付けてフィルタ処理した系列を出力する複素計算工程と、前記複素計算工程にて出力された複素数の系列を出力する出力工程と、を備え、前記複素計算工程、は、入力された系列を1種類以上遅延させた遅延系列のそれぞれに複素乗算し、当該複素乗算された系列の総和を出力し、当該複系列の遅延時間は公差Dの等差数列をなし、これらのそれぞれに対する増幅率は公比−rもしくは公比−1/rの等比数列をなすことを特徴とする様に構成する。
【0038】
また、本発明のフィルタ方法は、上記のフィルタ方法であって、前記所定の複素定数rは、所定の自然数定数Kに対して、その複素平面上の位相が、2π/Kの自然数倍に等しいことを特徴とする様に構成できる。
【0039】
また、本発明のフィルタ方法は、入力受付工程、複素計算工程、および、出力工程は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、もしくは、FPGA(Field Programmable Gate Array)において実行されることを特徴とする様に構成できる。
【0040】
本発明の他の観点に係わる送信方法は、上記のフィルタ方法を用いる送信方法であって、 複数の伝送信号を入力として受け付ける信号受付工程と、チップレート1/Dの所定の複素PN系列を前記フィルタ方法に入力し、フィルタ方法により出力される複素系列をチップレート1/Dで出力する出力工程と、系列出力工程により出力された複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、信号受付工程に入力された複素伝送信号を拡散変調する拡散工程と、を備えることを特徴とする様に構成する。
【0041】
また、本発明の送信方法は、上記の拡散工程における拡散変調は、IMT 2000 W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、もしくは、TDS−CDMA規格に従うことを特徴とする様に構成できる。
【0042】
また、本発明の送信方法は、上記の拡散工程に用いる複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とする様に構成できる。
【0043】
また、本発明の送信方法は、上記の拡散工程に用いる複素PN系列は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とする様に構成できる。
【0044】
また、本発明の送信方法であって、前記エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とする様に構成できる。
【0045】
本発明の他の観点に係わる受信方法は、上記のフィルタ方法を用いる受信方法であって、複素数の受信信号を入力として受け付ける受信工程と、複素PN系列を前記フィルタ方法に入力し、前記フィルタ方法により出力される複素系列をチップレート1/Dで出力する系列出力工程と、前記フィルタ方法が出力される複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、前記受信工程に入力された複素受信信号を拡散符号を複素数として出力する系列出力工程と、前記系列出力工程により出力された複素数を逆拡散変調する逆拡散工程と、を備えることを特徴とする様に構成する。
【0046】
また本発明の受信方法であって、逆拡散工程による逆拡散変調は、IMT 2000 W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、TDS−CTDS−CDMA規格に従うことを特徴とする様に構成できる。
【0047】
また本発明の受信方法であって、逆拡散工程に用いる複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とする様に構成できる。
【0048】
また本発明の受信方法であって、逆拡散工程で用いる複素PN符号は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とする様に構成できる。
【0049】
また本発明の受信方法であって、エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とする様に構成できる。
【0050】
また、本発明の他の観点に係わるプログラムは、コンピュータ(ASIC、DSP,FPGAを含む)を、上記のフィルタ装置、送信装置、もしくは、受信装置として機能させ、または、コンピュータに上記のフィルタ方法、送信方法、もしくは受信方法を実行させる様に構成する。
【0051】
本発明の他の観点に係わるプログラムは、コンピュータ(ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digtal Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、その他各種のソフトウェア無線機を含む。)を、上記のフィルタ装置、送信装置、もしくは受信装置として機能させ、または、コンピュータに、上記のフィルタ方法、送信方法、もしくは受信方法を実行させるように構成する。
【0052】
また、本発明のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な情報記録媒体(コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、ブルーレイディスク、磁気テープ、または、半導体メモリを含む。)に記録することができる。
【0053】
本発明のプログラムを、記憶装置、計算装置、出力装置、通信装置などを備える汎用コンピュータ、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)装置、ゲーム装置などの携帯端末、並列計算機などの情報処理装置、ASIC、DSP、FPGAなどで実行することにより、上記のフィルタ装置、送信装置、受信装置、通信システム、フィルタ方法、送信方法、ならびに、受信方法を実現することができる。
【0054】
また、これらの装置とは独立して、本発明の情報記録媒体を店舗等で配布、販売したり、本発明のプログラムそのものをコンピュータ通信網を介して配布、販売したりすることができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明により、複数の送受信系が同時に存在するCDMA環境下であっても、全ての送信装置の通信品質を向上させるのに好適な複素擬似乱数列の出力装置、受信フィルタ装置、送信フィルタ装置、受信方法、送信方法、ならびに、これらをコンピュータ上で実現するプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係わる通信システムの概要構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるフィルタ装置の概要構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係わるフィルタ装置で用いるFIRフィルタの概要構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係わるフィルタ装置で用いるIIRフィルタの概要構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係わるi番目の送信装置の概要構成を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係わるi番目の送信装置から伝送される情報を受信する受信装置の概要構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係わる複素相関パラメータの最適配置の例を示す模式図である。
【図8】本発明の原理の幾何表現を描いたグラフを示す説明図である。
【図9】本発明の原理に対して数値計算実験を行って描いたグラフを示す説明図である。
【図10】本発明の原理に対してその効果を描いたグラフを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、以下にあげる実施形態は、説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素または全要素を、これと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も、本発明の範囲に含まれる。以下では、まず、本発明の理論的背景について説明し、ついで、詳細な実施形態について説明する。
【0058】
(理論的背景)
複数のユーザが存在する環境下でCDMAによる通信を行っているとする。相関検出器を通して受信する信号は、所望信号と他の全てのユーザからの信号の和に、逆拡散符号を乗算し、拡散率Nの長さだけ和算したものになる。このとき、他ユーザからの信号の寄与分を相互干渉と呼び、その干渉量<σ>は、ユーザ数Kと拡散率Nの積に比例し、[数9]で与えられる。[数9]における係数Δを干渉増加率と呼ぶ。
【数9】

【0059】
通信品質をはかる指標のひとつである信号対雑音比(SIR:Signal to Interference Ratio)は、熱ノイズやフェージング熱ノイズの影響を考えない場合には相互干渉のみに依存し、ユーザ数Kと拡散率N、干渉増加率Δを用いて[数10]で与えられる。したがって、干渉増加率Δが小さいほど干渉が少なく好適な通信品質が得られることを意味する。
【数10】

【0060】
干渉増加率Δは、M系列、Gold符号、などの直交符号系列を拡散符号に用いるとき、同期CDMAにおいてはΔ=1になる。
【0061】
(実相関を与えた場合)
一方で、[特許文献1][特許文献2][特許文献3]に開示されているFIRフィルタを適用した拡散符号と逆拡散符号の組み合わせでは、実相関パラメータをr(−1<r<1)として、同期CDMAにおける干渉増加率Δは[数11]となることが知られている。したがって、実相関では、Δ≧1である。
【数11】

【0062】
(複素相関を与えた場合)
複素相関パラメータを用いた場合を考える。i番目の送信装置におけるフィルタ装置において、絶対値R(0≦R<1)と、偏角ρ(0≦ρ≦2π)とを用いて[数2]であらわされる複素相関パラメータrを適用するものとする。
【0063】
送信装置が2つの場合(K=2)、拡散率Nが1に比べて十分に大きいときに、0番目と1番目の送信装置のそれぞれが適用する複素相関パラメータの偏角ρ,ρの位相差ρ(ρ=ρ−ρ)を用いて、干渉増加率Δは[数12]であらわされる。
【数12】

【0064】
これは幾何的には、長辺a、短辺b、離心率eが[数13]で与えられる楕円上の点の、ひとつの焦点からの距離Δと中心方向に見込む角ρの関係[数14]にあると解釈することができる。
【数13】

【数14】

【0065】
図8は [数13][数14]の楕円を示す説明図である。
【0066】
したがって、干渉増加率の最大値Δと最小値Δは、それぞれ焦点からの遠点と近点に対応して[数15]であらわさる。
【数15】

【0067】
[数15]から、送信装置が2つの場合、互いに位相が真逆になる偏角を持つヘテロな複素相関パラメータを採用したときに、干渉増加率Δは最も低くなる。反対に位相が等しいとき干渉増加率は最も高くなり、実相関パラメータの場合[数11]と等しくなる。
【0067】
[数12]のρまわりの積分は[数16]となる。したがって、任意の偏角が与えられた場合の平均<Δ>は[数17]であり、一般の直交符号系列の場合に等しい。
【数16】

【数17】

【0068】
図9は実際に数値計算実験を行って描いたグラフを示す説明図である。
【0069】
数値計算実験は、拡散率Nが1よりも十分に長い場合ものとし、K=2、R=0.6で行ったものである。横軸は位相差ρに対応し、縦軸が干渉増加率Δに対応する。実線は[数12]をあらわし、丸は数値計算実験値をあらわす。
【0070】
Δは偏角の位相差ρ=0で最大値となり、位相差の絶対値|ρ|が広がる程に単調減少する。したがって、3つ以上の送信装置がある場合、[数1]であらわされるように各偏角ρが円周上等間隔に配置されることで、各送信装置の干渉増加率の平均は最小になる。この最小値は[数18]であらわされる。
【数18】

【0071】
したがって、複素相関を適用した同期CDMAにおいては、各ユーザの偏角を円周上に等間隔に配置したときに最適となり、[数18]からΔ≦1である。
【0072】
図7はK=12における上記の最適な複素相関パラメータの配置例をガウス平面上に示した説明図である。
【0073】
図10は上記の最適な複素相関パラメータを適用したときのSIRの向上効果を描いたグラフを示す説明図である。
【0074】
図10では、拡散率Nは1よりも十分に長いものとし、複素相関パラメータの絶対値はR=0〜0.9まで0.1刻みでプロットしている。横軸はユーザ数をあらわし、縦軸は[数18]を[数10]に代入して求めたSIRと、一般の直交符号系列の場合のSIRとの比をdB単位であらわしている。たとえば、R=0.8、K=10のとき、各送信装置に最適な偏角を割り当てた場合、平均しておよそ2dBのSIRの向上を見込むことができる。
【0075】
このように、同期CDMA環境下であっても、上記原理にしたがって各送信装置に最適な複素相関パラメータを振り分けることで、従来よりも相互干渉を減少させ、SIRを向上させることができる。
【実施例1】
【0076】
図1は本発明の第1の実施形態に係わる通信システムの概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0077】
通信システム101は、K(K>1)個の送信装置102と、少なくとも1つの受信装置103と、からなる。複数の送信装置102は、それぞれ、与えられた複素相関パラメータをもつフィルタ装置を適用して拡散符号を生成し、符号分割多重通信を行っている。そして、受信装置103は、各送信装置102が発する無線信号が電波伝送路を経て到達したものの総和を、受信信号として受信することとなる。
【0078】
このような環境下で、各送信装置102から伝送される情報を受信装置103で受信する場合に、干渉の平均をできるだけ小さくしたい、という場合に、本発明の原理を適用することができる。
【0079】
(送信およびフィルタ装置)
図2は、送信装置102および受信装置103において適用されるフィルタ装置201の概要構成を示す模式図である。
【0080】
本実施形態のi番目の送信装置102と、それから伝送される情報を受信する受信装置103において適用されるフィルタ装置201は、入力受付部202と、複素計算部203と、出力部204と、を備え、
所定の絶対値R(0≦R<1)と偏角ρ(0≦ρ≦2π)とを用いて[数2]であらわさられる複素パラメータrと、
所定の遅延時間定数Tとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理する。ここで、複素パラメータrの偏角ρは、送信装置102の数Kに応じて[数1]で与えることが望ましい。
【0081】
まず、入力受付部202は、複素数の系列の入力を受け付ける。
【0082】
次に、複素計算部203は、入力部202により入力を受け付けられた複素数の系列に対しフィルタ処理し、出力部204により複素数の系列を出力する。
【0083】
ここで、複素計算部203は、入力された系列を遅延させた複数の系列を出力し、当該複素数の系列のそれぞれを複素乗算し、当該乗算された系列の総和を出力し、当該複素数の系列の遅延時間は交差Tの等差数列をなし、これらのそれぞれに対する乗数は公比rの等比数列をなす。
【0084】
(複素擬似乱数列の出力装置)
図3は、フィルタ装置201を構成するFIR(Finite Impulse Response)型フィルタの概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0085】
FIRフィルタ301は、複数の遅延部302と、複数の複素乗算部303と、複素加算部304と、を備える。
【0086】
複数の遅延部302は、いずれも所定の遅延時間Tだけ入力された系列を時間遅延させて出力する。したがって、複数の複素乗算部303のそれぞれには、0、T、2T、…、MTだけ遅延された系列が入力される。ここで、Mは配置する遅延部202の数である。
【0087】
複数の複素乗算部303のそれぞれの増幅率は、a,ar,ar,…,arとなっている。ここでaは出力系列の分散を正規化するための所定の実定数であって、[数4]とすることが望ましい。
【0088】
複素加算部304は、複数の複素乗算部303の出力を加算する。
【0089】
したがって、入力される系列が順に、C[0],C[1],…,であった場合、FIRフィルタ301の出力C’[0],C’[1],…,は以下のようになる。
【0090】
C’[0]=a(C[0]+C[−1]r+…+C[−M]r),
C’[1]=a(C[1]+C[0]r+…+C[−M+1]r),

【0091】
上記演算は[数3]に等しい。
【0092】
(送信装置)
図5は本実施形態のi番目の送信装置102の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0093】
送信装置102は、信号受付部501と、系列出力部502と、拡散部503と、送信部504と、を備え、以下のように構成する。
【0094】
信号受付部501は、当該受信装置に伝送すべき信号を受け付ける。
【0095】
系列出力部502は、当該複素相関パラメータrと複素擬似乱数系列Cとから、拡散符号系列C’を計算する。
【0096】
拡散部503は、当該伝送信号と、当該拡散符号系列と、から拡散された複素数信号を出力する。
【0097】
最後に、送信部504は、当該複素数信号を当該受信装置に送信する。
【0098】
(受信装置)
図6は本実施形態のi番目の送信装置102から伝送される情報を受信する受信装置103の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0099】
受信装置103は、受信部601と、系列出力部602と、逆拡散部603と、を備え、以下のように構成することができる。
【0100】
受信部601は、K個の送信装置から送信された信号が電波伝搬路の影響を受けて当該受信装置103に到達したものの総和を受信する。
【0101】
系列出力部602は、当該複素相関パラメータr複素擬似乱数系列の共役系列Cとから、拡散符号系列C’を計算し、出力する。
【0102】
逆拡散部603は、計算された逆拡散符号C’により、当該k番目の送信装置から伝送された信号を、受信された信号の総和から逆拡散する。
【実施例2】
【0103】
(複素擬似乱数列の出力装置)
本発明の第2の実施形態は、フィルタ装置201をIIR(Infinite Impulse Responce)型フィルタを用いて処理するものである。
【0104】
図4は、フィルタ装置201を構成するIIR型フィルタの概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0105】
IIRフィルタ401は、遅延部402と、複素乗算部403と、複素加算部404と、増幅部405と、を備える。
【0106】
遅延部402は、所定の遅延時間Tだけ入力された系列を時間遅延させて出力する。
【0107】
複素乗算部403は、所定の係数rを乗算する。
【0108】
複素加算部404は、入力系列と上記遅延された入力にrを乗算された数の和を計算する。
【0109】
最後に、増幅部405は複素系列を増幅率aだけ増幅して出力する。ここでaは出力系列の分散を正規化するための所定の実定数であって、[数6]とすることが望ましい。
【0110】
したがって、入力される系列が順に、C[0],C[1],…,であった場合、IIRフィルタ401の出力C’[0],C’[1],…,は以下のように無限級数となる。
【0111】
C’[0]=a(C[0]+C[−1]r+…+C[−N]r+…),
C’[1]=a(C[1]+C[0]r+…+C[−N+1]r+…),

【0112】
上記演算は[数5]に等しい。
【0113】
本実施形態における送信装置および受信装置は、本発明の第1の実施形態における送信装置および受信装置と同様に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明により、複数の送受信系が同時に存在する環境下で、通信品質向上に好適な複素擬似乱数列の出力装置、受信フィルタ装置、送信フィルタ装置、受信方法、送信方法、ならびに、これらをコンピュータ上にて実現するプログラムを提供することができ、通信技術の分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
101 通信システム
102 送信装置
103 受信装置
201 フィルタ装置
202 入力受付部
203 複素計算部
204 出力部
301 FIRフィルタ
302 遅延部
303 複素乗算部
304 複素加算部
401 IIRフィルタ
402 遅延部
403 複素乗算部
404 複素加算部
405 増幅部
501 信号受付部
502 系列出力部
503 拡散部
504 送信部
601 受信部
602 系列出力部
603 逆拡散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の複素定数r(0<|r|≦1)と所定の実数定数a(a≠0)と所定の遅延時間定数Dとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理するフィルタ装置であって、複素数の系列の入力を受け付ける入力受付部と、前記入力受付部により入力を受け付けられた複素数の系列のうち、それぞれ0,D,2D,3D,…,(N−1)D(Nは所定の正整数)だけ遅延させた複数の系列を出力する複素遅延部と、前記複素遅延部により遅延されて出力された複数の系列のそれぞれを、当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−T/Dを乗算する系列を出力する複素計算部と、前記複素計算部により複素乗算されて出力された系列の総和を出力する出力部と、を備えることを特徴とするもの。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ装置であって、前記複素遅延部は、「それぞれ0,D,2D,3D,…,(N−1)Dだけ遅延させる」のにかえて、それぞれD,2D,3D,…,(N−1)D,NDだけ遅延させ、前記複素計算部は、「当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−T/Dを乗算」するのにかえて当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−(T−1)/Dを乗算することを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタ装置であって、前記複素計算部は、「当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)N−T/Dを乗算」するのにかえて当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)1+T/Dを乗算することを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタ装置であって、前記複素遅延部は、「それぞれ0,D,2D,3D,…,(N−1)Dだけ遅延させる」のにかえて、それぞれD,2D,3D,…,(N−1)D,NDだけ遅延させ、前記複素計算部は、「当該遅延時間がTである場合、a(−r)N−T/D倍して増幅」するのにかえて当該遅延時間がTである場合、複素数a(−r)T/Dを乗算することを特徴とするもの。
【請求項5】
所定の複素定数r(0<|r|≦1)と所定の遅延時間定数Dとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理するフィルタ装置であって、複素数の系列の入力を受け付ける入力受付部と、前記入力受付部により入力を受け付けられた複素数の系列のうち、複素数の系列を入力として受け付けてフィルタ処理した系列を出力する複素計算部とし、前記複素計算部により出力された複素数の系列を出力する出力部と、を備え、前記複素計算部は、入力された系列を1種類以上遅延させた複数の遅延系列のそれぞれに複素乗算し、当該複素乗算された系列の総和を出力し、当該系列の遅延時間は公差Dの等差数列をなし、これらのそれぞれに対する乗算する複素数は公比−rもしくは公比−1/rの等比数列をなすことを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ装置であって、前記所定の複素定数rは、所定の自然数定数Kに対して、その複素平面上の位相が、2π/Kの自然数倍に等しいことを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルタ装置であって、前記複素遅延部、前記複素計算部、および、前記出力部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、もしくは、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ装置を用いる送信装置であって、複素数の伝送信号を入力として受け付ける信号受付部と、チップレート1/Dの所定の複素PN系列を前記フィルタ装置に入力し、前記フィルタ装置が出力する複素系列をチップレート1/Dで出力する系列出力部と、前記系列出力部により出力される複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、信号受付部に入力された複素伝送信号をスペクトル拡散変調する拡散部と、を備えることを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項8に記載の送信装置であって、前記拡散部の拡散変調は、IMT2000W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、TDS−CDMA規格に従うことを特徴とするもの。
【請求項10】
請求項8に記載の送信装置であって、前記フィルタ装置に入力される複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項10に記載の送信装置であって、前記フィルタ装置に入力される複素PN系列は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とするもの。
【請求項12】
請求項11に記載の送信装置であって、前記エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とするもの。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ装置を用いる受信装置であって、複素数の受信信号を入力として受け付ける受信部と、複素PN系列を前記フィルタ装置に入力し、前記フィルタ装置が出力する複素系列をチップレート1/Dで出力する系列出力部と、前記系列出力部により出力される複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、前記受信部に入力された複素受信信号を逆拡散変調する逆拡散部と、を備えることを特徴とするもの。
【請求項14】
請求項13に記載の受信装置であって、前記逆拡散部による逆拡散変調は、IMT2000W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、TDS−CDMA規格に従うことを特徴とするもの。
【請求項15】
請求項13に記載の受信装置であって、前記フィルタ装置に入力される複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とするもの。
【請求項16】
請求項13に記載の受信装置であって、前記フィルタ装置に入力される複素PN系列は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とするもの。
【請求項17】
請求項16に記載の受信装置であって、前記エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とするもの。
【請求項18】
複数の送信装置と少なくとも一つの受信装置から構成される通信システムであって、少なくとも一つの請求項8に記載の送信装置と、少なくとも一つの請求項13に記載の受信装置であって、当該送信装置より送信された信号を受信する受信装置と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項19】
複数の送信装置と少なくとも一つの受信装置から構成される通信システムであって、少なくとも一つの請求項9に記載の送信装置と、少なくとも一つの請求項14に記載の受信装置であって、当該送信装置より送信された信号を受信する受信装置と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項20】
複数の送信装置と少なくとも一つの受信装置から構成される通信システムであって、少なくとも一つの請求項10に記載の送信装置と、少なくとも一つの請求項15に記載の受信装置であって、当該送信装置より送信された信号を受信する受信装置と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項21】
複数の送信装置と少なくとも一つの受信装置から構成される通信システムであって、少なくとも一つの請求項11に記載の送信装置と、少なくとも一つの請求項16に記載の受信装置であって、当該送信装置より送信された信号を受信する受信装置と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項22】
複数の送信装置と少なくとも一つの受信装置から構成される通信システムであって、少なくとも一つの請求項12に記載の送信装置と、少なくとも一つの請求項17に記載の受信装置であって、当該送信装置より送信された信号を受信する受信装置と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項23】
所定の複素定数r(0<r≦1)と所定の遅延時間定数Dとを用いて、複素数の系列をフィルタ処理するフィルタ方法であって、複素数の系列の入力を受け付ける入力受付工程と、前記入力受付工程にて入力を受け付けられた複素数の系列のうち、複素数の系列を入力として受け付けてフィルタ処理した系列を出力する複素計算工程と、前記複素計算工程にて出力された複素数の系列を出力する出力工程と、を備え、前記複素計算工程、は、入力された系列を1種類以上遅延させた遅延系列のそれぞれに複素乗算し、当該複素乗算された系列の総和を出力し、当該複系列の遅延時間は公差Dの等差数列をなし、これらのそれぞれに対する増幅率は公比−rもしくは公比−1/rの等比数列をなすことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載のフィルタ方法であって、前記所定の複素定数rは、所定の自然数定数Kに対して、その複素平面上の位相が、2π/Kの自然数倍に等しいことを特徴とするもの。
【請求項25】
請求項23または24に記載のフィルタ方法であって、前記入力受付工程、前記複素計算工程、および、前記出力工程は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、もしくは、FPGA(Field Programmable Gate Array)において実行されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか1項に記載のフィルタ方法を用いる送信方法であって、 複数の伝送信号を入力として受け付ける信号受付工程と、チップレート1/Dの所定の複素PN系列を前記フィルタ方法に入力し、前記フィルタ方法により出力される複素系列をチップレート1/Dで出力する出力工程と、前記系列出力工程により出力された複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、信号受付工程に入力された複素伝送信号を拡散変調する拡散工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の送信方法であって、前記拡散工程における拡散変調は、IMT 2000 W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、もしくは、TDS−CDMA規格に従うことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の送信方法であって、前記拡散工程に用いる複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項26に記載の送信方法であって、前記拡散工程に用いる複素PN系列は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の送信方法であって、前記エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ方法を用いる受信方法であって、複素数の受信信号を入力として受け付ける受信工程と、複素PN系列を前記フィルタ方法に入力し、前記フィルタ方法により出力される複素系列をチップレート1/Dで出力する系列出力工程と、前記フィルタ方法が出力される複素系列をチップレート1/Dの複素拡散符号として用いることにより、前記受信工程に入力された複素受信信号を拡散符号を複素数として出力する系列出力工程と、前記系列出力工程により出力された複素数を逆拡散変調する逆拡散工程と、を備えることを特徴とするもの。
【請求項32】
請求項31に記載の受信方法であって、前記逆拡散工程による逆拡散変調は、IMT 2000 W−CDMAシステム規格、CDMA2000システム規格、TDS−CTDS−CDMA規格に従うことを特徴とするもの。
【請求項33】
請求項31に記載の受信方法であって、前記逆拡散工程に用いる複素PN系列は、ゴールド符号、嵩符号、もしくは、OVSF符号のいずれか1つを用いて生成されることを特徴とするもの。
【請求項34】
請求項31に記載の受信方法であって、前記逆拡散工程で用いる複素PN符号は、エルゴード性を持つ複素写像力学系の軌道の各点で与えられることを特徴とするもの。
【請求項35】
請求項34に記載の受信方法であって、前記エルゴード性を持つ複素写像力学系は、所定の複素平面上の円を保存する複素写像力学系であることを特徴とするもの。
【請求項36】
コンピュータを、請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項37】
コンピュータを、請求項8から12のいずれか1項に記載の送信装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項38】
コンピュータを、請求項13から17のいずれか1項に記載の受信装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項39】
コンピュータに、請求項23から25のいずれか1項に記載のフィルタ方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項40】
コンピュータに、請求項26から30のいずれか1項に記載の送信方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項41】
コンピュータに、請求項31から35のいずれか1項に記載の受信方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項42】
請求項36から41のいずれか1項に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読取可能な情報記録媒体(コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、または、半導体メモリを含む。)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−166536(P2010−166536A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26731(P2009−26731)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(304001545)株式会社カオスウェア (28)
【Fターム(参考)】