説明

フィルタ装置

【課題】複数の使用場所(テナント)に設置されるフィルタ装置において、一種類のフィルタ部材を用いてそれぞれの使用場所に対応する汚れ具合を判定することのできるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置10は、濾紙や不織布などのシート状の濾材を積層し、表面積を多くするために交互に折り曲げて多数のひだ部が形成されたフィルタ部材12と、フィルタ部材を保持する木枠11と、を有する。木枠は、フィルタ装置を4分割するように均等に分割した領域を形成し、各領域にそれぞれ共通のフィルタ部材が収納されている。フィルタ部材12には、空調機の設置場所や濾過すべき塵埃に合わせた判定パターンとなる模様13〜16を設け、場所又は用途ごとに色の濃さや色の種類を設定した模様13〜16が消えていくことにより汚れ具合を判断することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内環境における温度、湿度または空気清浄度などを調整する空調機の空気吸い込み側または排出側に配置されたフィルタ装置に関し、特に、事務所、店舗や飲食店等で共通に使用できるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の塵や埃など除去するフィルタ装置において、一般的にフィルタ部材の汚れ具合を目視や運転時間を目安にして交換することが行われている。しかしながら、運転時間が多くてもフィルタ部材の汚れが少なく継続使用が可能なフィルタ部材もある一方、運転時間が少ないにもかかわらずフィルタ部材の汚れがひどく、交換が必要な場合もある。そこで、特許文献1には、フィルタ部材の交換時期を客観的な方法で知ることができる集塵装置が開示されている。
【0003】
図7には、パチンコ玉研磨装置から排出される塵埃を除去する従来の集塵装置100を示している。集塵装置100は、吸気口106と排気口107とを備える集塵ボックス104と、そのボックス内に収容されるフィルタ部材101と、集塵ボックス104を密閉するために集塵ボックス104にヒンジによって取り付けられた密閉ドア105と、を有している。集塵ボックス104には、フィルタ部材101を着脱自在に設置可能な支持レール110と、その集塵ボックス内に収納されたフィルタ部材101の吸引側フィルタ102を目視可能とするのぞき窓111と、が設けられている。集塵ボックス104は、支持レール110に沿ってフィルタ部材101を集塵ボックス104に挿入することにより、集塵ボックス内を吸気室108と排気室109に仕切ることができる。なお、吸気室108は吸気口106と連通し、排気室109は排気口107と連通し、排気口107は空気吸い込み機器に接続されている。
【0004】
フィルタ部材101の吸気側には、複数の帯状の判定パターン103が斜めに並んで配置されている。この判定パターン103は、吸引側フィルタ102の汚れ度合いを判定できるようにするためのものである。判定パターン103は、吸引側フィルタ102の汚れが進み、それ以上の使用は濾過効率が低下するため交換時期になった状態の汚れと同一または近似の色彩を施してある。
【0005】
このように、集塵装置100は、フィルタ部材自体に交換時期を知らせるための客観的判断基準となるものを有し、この機能を利用することにより適切な交換時期を知ることができるものである。吸引側フィルタ102の表面には、パチンコ玉研磨装置から排出された塵埃がフィルタ装置の表面に付着し、これにより、排出エアーから塵埃が除去される。フィルタ装置の空気導入側面は塵埃付着により汚れ、使用時間が長くなればなるほど汚れ度合が増すことになる。汚れが増すことにより、判定パターンの部分とそれ以外の部分との間のコントラストが低下する。このコントラストの変化により、フィルタ装置のよごれ度合いを客観的な基準に基づいて知ることができる。
【0006】
また、特許文献2には、床面を拭くためのいわゆる「ワイパー」と称される清掃具に使用するシート基材に関し、シート基材に部分的かつ模様状に着塵性物質を担持させることにより、他の部分よりも塵埃の付着し易い部分を形成したものが開示されている。このシート基材は、清掃により所定の部分に塵埃が付着したときに、文字や図形等の模様が浮き出るように構成したものであり、塵埃の付着具合を観察することで、清掃対象部位の汚れの落ち具合やシート基材の交換時期等を判断できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−346197号公報
【特許文献2】特開2007−252649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1では、パチンコ玉研磨装置から排出される塵埃を対象にしているため、判定パターンはフィルタの交換時期となった状態の汚れと同一または近似の色彩を施している。判定パターンの色彩としては、フィルタ部材の地色や付着する塵埃の種類などによって多少異なるが、経験則的には濃い灰色が挙げられている。
【0009】
しかしながら、事務所、店舗や飲食店等で使用される空調機は、使用される場所(例えば、テナントなど。)により塵埃の種類が異なる。例えば、事務所では綿状の埃、飲食店では油汚れ、パチンコ店等の店舗では綿状の埃に加えタバコ等のヤニ、工場では工作油,塗装粉,土埃,煤塵などである。このような塵埃に対して、それぞれ対応するフィルタ部材を使用することはコスト高になることから、共通で使用できる一種類のフィルタ部材で対応することが望ましい。しかしながら、一種類のフィルタ部材を用いる場合において、フィルタ部材に形成された単一の判定パターンでは汚れ具合を目視で判定することが難しく、交換時期を過ぎているにもかかわらず交換せず使用続ける場合や、フィルタ部材の目詰まりによる空調機の風量低下や空調機の冷熱性能が低下する場合がある。
【0010】
そこで、本発明では複数の使用場所(テナント)に設置されるフィルタ装置において、一種類のフィルタ部材を用いてそれぞれの使用場所に対応する汚れ具合を判定することのできるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような目的を達成するために、本発明に係るフィルタ装置は、空調機の空気導入側に配置されたフィルタ装置において、空気導入側表面を均等に区分けする境界線と、空調機の設置場所に対応する絵文字の変化により汚れ度合いを表示する複数の表示手段と、を有し、境界線によって区切られた複数の領域に表示手段をそれぞれ配置したことを特徴とする。このような構成により、複数の表示手段を大きく描くことで広い範囲の汚れ具合の判断が容易となるばかりでなく、共通のフィルタ装置にて複数のテナントに対応できるという利点を有する。
【0012】
また、本発明に係るフィルタ装置において、表示手段は、設置場所を文字もしくは図形または模様で表示する絵文字であり、色濃度の変化または色の変化により空気導入側表面に形成された絵文字が消えることで汚れ度合いを示すものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るフィルタ装置において、空調機の設置場所に対応した化学物質の吸着度合いを検出する検出手段を有し、検出手段は、設置場所に対応する表示手段では表示することができない化学物質に反応して色濃度の変化または色の変化により化学物質の吸着度合いを示すものであることを特徴とするフィルタ装置。
【0014】
また、本発明に係るフィルタ装置において、空気導入側表面を均等に区分けする境界線は、放射状に区分けした境界線または格子状に区分けした境界線であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るフィルタ装置において、区分けされた領域の初期状態を保持するため、境界線の交差部に空気導入側表面の一部を覆う取り外し自在のフィルタ層を配置したことを特徴とする。このようなフィルタ層を有することにより、フィルタ層直下に形成された比較用の模様が汚れることを防止すると共に汚れによる色の濃度又は色の種類が大幅に異なることを防止できる。
【0016】
さらに、本発明に係るフィルタ装置において、空気導入側表面を均等に区分けする境界線は、予め決められた幅を有する線または枠体で形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るフィルタ装置を用いることにより、一種類のフィルタ部材を用いる場合において、場所又は用途ごとに色の濃さや色の種類を設定した模様が消えていくことで汚れを判断できるという効果がある。別の効果として、フィルタ部材の中央部に配置した剥離自在なフィルタ層の下に形成された汚れの比較手段又は検出手段により、濾材の汚れ具合を判断できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の斜視図である。
【図2】図1に示したフィルタ装置の正面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るフィルタ装置の正面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るフィルタ装置の正面図である。
【図5】本発明のその他の実施形態に係るフィルタ装置の中心部を拡大した拡大図である。
【図6】本発明の格子状、放射状、丸形状等のフィルタ装置の正面図である。
【図7】従来の集塵装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0020】
図1は、室内環境における温度、湿度または空気清浄度などを調整する空調機の空気吸い込み側または排出側に配置されたフィルタ装置10の第1の実施形態を示している。フィルタ装置10は、濾紙や不織布などのシート状の濾材を積層し、表面積を多くするために交互に折り曲げて多数のひだ部が形成されたフィルタ部材12と、フィルタ部材を保持する木枠11と、を有する。木枠11は、フィルタ装置を4分割するように均等に分割した領域を形成し、各領域にそれぞれ共通のフィルタ部材が収納されている。
【0021】
また、フィルタ部材12には、空調機の設置場所(使用場所)や濾過すべき塵埃(使用用途)に合わせた判定パターンとなる模様13〜16を設け、場所又は用途ごとに色の濃さや色の種類を設定した模様13〜16が消えていくことにより汚れ具合を判断することが可能である。空気は図1のフィルタ装置10に対して右から左方向に流れる(風の流れ)ことで判定パターンとなる模様13〜16の各表面に均等に流れ、フィルタ部材の反対側面へと濾材を通過することで濾過され、清浄化される。なお、本実施形態では4分割された領域に共通のフィルタ部材12を収容したが、これに限定せずそれぞれ特性の異なるフィルタを収納しても良い。
【0022】
図2は図1に示したフィルタ装置10の正面図である。第1の実施形態では、予め決められた線幅を有する三角形の模様13、星形の模様14、四角形の模様15及び渦巻き形の模様16を設けている。特に、三角形の模様13は飲食店などで多く使われる油や埃などに対するものであり、星形の模様14は喫煙可能なパチンコ店などで多く排出されるタバコのヤニや埃などに対するものであり、四角形の模様15は事務所などの主に埃に対するものであり、渦巻き模様16は、工場等の工作油,塗装粉,土埃,煤塵及び埃などに対するものである。第1の実施形態に係るフィルタ装置10は、共通で使用される一種類のフィルタ部材であっても、飲食店、パチンコ店、事務所、又は工場等に対応することができ、それぞれの設置場所に応じた汚れ具合を判断することが可能であり、汚れの種類も判別することも可能となる。
【0023】
次に、第1の改良形の実施形態である第2の実施形態について概説する。図3に示す第2の実施形態は、木枠11による分割の代わりに境界線23によって等分されている。また、第1の実施形態の模様13〜16を具体的な図形18〜21にすると共に、中央部に各領域の汚れ具合を判定する際、比較手段17となる汚れレベルを示す模様を設け、その比較手段17を覆うように着脱可能なフィルタ層31が設けられている。なお、第2の実施形態では、当該フィルタ装置20の設置場所として使用される頻度が多い順に模様を配置することで、フィルタ装置の汚れに対する関心度を高めている。
【0024】
第2の実施形態では、例えば、オフィース(事務所)の模様18は埃の色である灰色で描かれ、タバコの喫煙が多いパチンコ(店舗)の模様19は埃の色とタバコのヤニの色を考慮して褐色で描かれ、食用油の揮発により油汚れが目立つ飲食店の模様21は黄土色で描かれ、工作油,塗装粉,土埃,煤塵及び埃などの汚れが目立つ工場の模様22は黒色で描かれている。なお、いずれの模様18〜22の色の濃さや色の種類は、フィルタ装置の交換時の色調に合わせてあるため、交換時には模様が隠れてしまうように考慮してある。
【0025】
しかしながら、模様が完全に隠れていない場合には判断が難しいため、第2の実施形態ではフィルタ部材12の中央部にフィルタ層31で覆われた比較手段17を設けている。フィルタ層31にはめくり用持ち手32が設けられており、めくり用持ち手32を持ってフィルタ層31をめくると図3の拡大図に示す比較手段17が表れる。フィルタ層31は大部分の汚れを吸収するため、フィルタ層31で覆われた比較手段17の色の濃さや色の種類はさほど変化せず、汚れ区合いを示す3段階の基準色18a〜22aによって汚れ具合を判断することが可能となる。なお、本実施形態では比較手段17をフィルタ層で覆うようにしたのは、真新しい色に対して、実際の汚れによる色の濃さや色の種類との差異を少なくするためである。
【0026】
次に、境界線を格子状から放射状に変更した実施形態について説明する。図4は境界線を放射状に設けることで上下左右に4等分した第3の実施形態に係るフィルタ装置の正面図である。第3の実施形態では四角形の木枠11の例を示しているが、円形状のパイプに取り付けるフィルタ装置の場合には格子状の等分割は困難であるため、放射状のフィルタ装置のような放射状の分割が不可欠である。なお、図6には、図6(A)格子状フィルタ装置,図6(B)放射状フィルタ装置及び図6(C)丸形フィルタ装置を示している。このように、フィルタ領域を等分割して判定パターンをそれぞれに配置することで、共通のフィルタ装置による様々な汚れの判定をすることが可能となる。
【0027】
次に、フィルタ装置として汚れを除去する以外に、空気導入側に導入される空気に含まれる化学物質をモニタすることのできるフィルタ装置について説明する。図5はその他の実施形態に係るフィルタ装置40の中心部を拡大した拡大図である。上述したフィルタ装置の中心部には、汚れ具合を判定するための比較手段を有していたが、この比較手段の代わりに区分け部26〜28に化学物質に反応して色濃度の変化または色の変化により化学物質の吸着度合いを検出する検出手段25を設けたものである。
【0028】
検出手段25には、化学物質としてホルムアルデヒド、トルエン、キシレンに反応して発色する試薬を配置している。例えば、ホルムアルデヒド試薬には、アルデヒド類とアミン類との化学反応や、アルデヒド類の酸化力を利用してそれらの反応による生成物を直接的又は間接的に検出することにより、ホルムアルデヒドを検出するものがある。(詳細は、特開2006−275817号を参照のこと。)しかしながら、試薬は比較的高額なものが多いため、検出手段25を有するフィルタ装置は、テナント改修直後から建築用材料から揮発する化学物質の有無を検出する初期段階で用いることが望ましい。なお、本実施形態は上記3種類の化学物質の検出を行ったが、これに限定するものではなく、例えば、エチルベンゼン、スチレン等に反応して発色する試薬を設けても良い。
【0029】
以上、上述したように、本発明に係るフィルタ装置を使用することにより、一種類のフィルタ部材を用いる場合において、場所又は用途ごとに色の濃さや色の種類を設定した模様が消えていくことで汚れ具合を判断可能となる。また、フィルタ部材の中央部に配置した剥離自在なフィルタ層の下に形成された汚れ具合の比較手段又は化学物質の検出手段により、環境の汚れ具合を判断可能となる。なお、本実施形態では、フィルタ装置の枠体に木材を用いたが、これに限定するものではなく、例えば、アルミニウム製の枠体、枠体を複数個結合可能な枠体等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10,20,30,40 フィルタ装置、11 木枠、12,101 フィルタ部材、13,14,15,16,18,19,21,22 模様、17 比較手段、18a,19a,21a,22a 基準色、23 境界線、25 検出手段、26,27,28 区分け部、31 フィルタ層、32 めくり用持ち手、100 集塵装置、102 吸引側フィルタ、103 判定パターン、104 集塵ボックス、105 密閉ドア、106 吸気口、107 排気口、108 吸気室、109 排気室、110 支持レール、111 のぞき窓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機の空気導入側に配置されたフィルタ装置において、
空気導入側表面を均等に区分けする境界線と、
空調機の設置場所に対応する絵文字の変化により汚れ度合いを表示する複数の表示手段と、
を有し、
境界線によって区切られた複数の領域に表示手段をそれぞれ配置したことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ装置において、
表示手段は、設置場所を文字もしくは図形または模様で表示する絵文字であり、色濃度の変化または色の変化により空気導入側表面に形成された絵文字が消えることで汚れ度合いを示すものであることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタ装置において、
空調機の設置場所に対応した化学物質の吸着度合いを検出する検出手段を有し、
検出手段は、設置場所に対応する表示手段では表示することができない化学物質に反応して色濃度の変化または色の変化により化学物質の吸着度合いを示すものであることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタ装置において、
空気導入側表面を均等に区分けする境界線は、放射状に区分けした境界線または格子状に区分けした境界線であることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルタ装置において、
区分けされた領域の初期状態を保持するため、境界線の交差部に空気導入側表面の一部を覆う取り外し自在のフィルタ層を配置したことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のフィルタ装置において、
空気導入側表面を均等に区分けする境界線は、予め決められた幅を有する線または枠体で形成されたものであることを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate