フィルタ装置
【課題】異物を取り除く機能を低下させることなく水抜きを円滑且つ確実に行うことができるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ部材2と、フィルタ部材2を移動自在に収容するフィルタ室3とを設ける。フィルタ部材2は、通水時の流水圧によりフィルタ室3の下流側に移動し、水抜き時にフィルタ室3の上流側に移動する。フィルタ室3に、下流側に移動したフィルタ部材2を停止させる下流側ストッパ7と、上流側に移動したフィルタ部材2を停止させる上流側ストッパ9とを設ける。下流側ストッパ7によりフィルタ部材2が停止しているとき、フィルタ部材2がフィルタ室3の下流端を覆って通過する水から異物を取り除く。フィルタ部材2が上流側ストッパ9により停止されたとき、水抜き通路10がフィルタ室3の上流端に形成され、水抜き通路10を通して水抜きされる。
【解決手段】フィルタ部材2と、フィルタ部材2を移動自在に収容するフィルタ室3とを設ける。フィルタ部材2は、通水時の流水圧によりフィルタ室3の下流側に移動し、水抜き時にフィルタ室3の上流側に移動する。フィルタ室3に、下流側に移動したフィルタ部材2を停止させる下流側ストッパ7と、上流側に移動したフィルタ部材2を停止させる上流側ストッパ9とを設ける。下流側ストッパ7によりフィルタ部材2が停止しているとき、フィルタ部材2がフィルタ室3の下流端を覆って通過する水から異物を取り除く。フィルタ部材2が上流側ストッパ9により停止されたとき、水抜き通路10がフィルタ室3の上流端に形成され、水抜き通路10を通して水抜きされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に強制的に通水される水流路に設けて該水流路を流動する水内の異物を取り除くフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器や食器洗浄機が備える通水管には電磁弁等の弁装置が設けられ、弁装置の上流側にはフィルタが設けられる。フィルタは、通過する水から固体粒子等の異物を取り除き、弁装置に異物が侵入して弁装置が作動不良となることを防止している。
【0003】
フィルタは、目の細かい多孔状或いは網状であり、異物の捕捉性能に反して水が通過し難い。即ち、弁装置が開弁し、流水圧をもって強制的に通水される場合には、水は容易にフィルターを通過する。しかし、弁装置が閉弁して水流が停止した場合には、フィルタの表面に対する水の表面張力により、フィルタの通水方向下流側の管内に水が封止されることがある。このときには、フィルタの通水方向上流側の管内の水を排出しても、フィルタの通水方向下流側の管内からは水が抜けず、管内に残留した水の凍結や腐敗といった不都合が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、従来、毛細管現象が発生するように溝状又は孔状に形成された排水路をフィルタの一部に繋げて設け、フィルタの通水方向下流側の管内に残留する水を排水路の毛細管現象を利用してフィルタの通水方向上流側(水抜き方向)に向って案内するようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−336914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のフィルタに採用された排水路は、毛細管現象を利用して水を導くために、排水路を構成する溝状又は孔状は比較的狭くする必要がある。このため、排水路により排水される水の流量が少なく、水抜きに長い時間を要するために排水効率が悪い。また、排水路に異物が侵入すると詰まりが生じるおそれがある。これを防止するために排水路を構成する溝状又は孔状を広くすると、フィルタとしての異物の捕捉機能が低下する。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、異物を取り除く機能を低下させることなく水抜きを円滑且つ確実に行うことができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、一方向に強制的に通水される水流路に設けるフィルタ装置において、通過する水から異物を取り除く機能を有するフィルタ部材と、該フィルタ部材を水流方向に沿って移動自在に収容するフィルタ室とを備え、前記フィルタ部材は、通水時の流水圧により前記フィルタ室の通水方向下流側に移動し、通水時と逆方向に排水する水抜き時に前記フィルタ室の通水方向上流側に移動するように設けられており、前記フィルタ室は、該フィルタ室の通水方向下流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向下流端で停止させる下流側ストッパと、該フィルタ室の通水方向上流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向上流端で停止させる上流側ストッパとを備え、前記下流側ストッパにより前記フィルタ部材が停止しているとき、該フィルタ部材が前記フィルタ室の通水方向下流端を覆って該フィルタ部材を全水流が通過し、前記フィルタ部材が前記上流側ストッパにより停止されたとき、該フィルタ部材の通水方向下流側に残留する残留水を通過させる水抜き通路が、前記フィルタ室の通水方向上流端に形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明のフィルタ装置は、通水時にはフィルタ部材がフィルタ室の通水方向下流端まで移動し、水抜き時にはフィルタ部材がフィルタ室の通水方向上流端まで移動する。そして、フィルタ部材がフィルタ室の上流側ストッパにより停止されたとき、水抜き通路が形成される。
【0010】
これにより、通水時には、下流側ストッパにより停止したフィルタ部材がフィルタ室の通水方向下流端を覆うので、フィルタ部材を全水流が通過し、その通過する水から確実に異物を取り除くことができる。
【0011】
一方、水抜き時には、フィルタ部材がフィルタ室の通水方向下流端から離れてフィルタ室の通水方向上流端に移動するので、フィルタ部材による通水方向下流側への水の封止状態が解除されると共に、前記水抜き通路から円滑に排水することができる。
【0012】
従って、本発明のフィルタ装置によれば、異物を取り除く機能を低下させることなく水抜きを円滑且つ確実に行うことができる。
【0013】
なお、フィルタ部材を、通水時の流水圧によりフィルタ室の通水方向下流側に移動し、水抜き時にフィルタ室の通水方向上流側に移動するように設けるためには、例えば、フィルタ部材を、フィルタ室の通水方向上流側に向って付勢するバネ等の付勢手段を設けることが挙げられる。この場合には、フィルタ部材の通水時の流水圧による通水方向下流側への移動を阻害しないように付勢手段の付勢力を設定する必要がある。また、バネ等の付勢手段を設けるために部品点数が増加する。
【0014】
そこで、前記フィルタ室は、通水方向上流側が下方を向き、通水方向下流側が上方を向く姿勢に設けられ、前記フィルタ部材は、前記フィルタ室内で上下方向に移動自在とされて、通水時の流水圧により上昇し、水抜き時に自重により下降することが好ましい。こうすることにより、フィルタ室を上下方向に向けた姿勢に設けるだけで、フィルタ部材を、水抜き時には前記フィルタ室の上流側に移動するように設けることができる。従って、フィルタ部材をフィルタ室の上流側に移動させるためのバネ等の付勢手段を不要として、部品点数を少なくすることができるので、製造効率が良くコストの増加を抑えたフィルタ装置を得ることができる。
【0015】
また、本発明において、前記水抜き通路は、前記フィルタ室の内側壁に形成することができる。この場合には、例えば、前記フィルタ室の内壁面に水抜き通路として溝等を形成することで、構造簡単に水抜き通路を設けることができる。
【0016】
また、本発明において、前記水抜き通路は、前記フィルタ部材の一部に形成することもできる。そして、前記下流側ストッパに、前記フィルタ室の通水方向下流端で前記フィルタ部材を停止させたときに該フィルタ部材の水抜き通路を閉塞する閉塞部を設ける。この場合には、例えば、前記フィルタ部材に、水抜き通路として切欠き或いは孔を形成し、前記上流側ストッパがフィルタ部材を停止させたときに、水抜き通路としての切欠き或いは孔を上流側ストッパが閉塞しない位置に設けることで、構造簡単に水抜き通路を設けることができる。一方、下流側ストッパに前記閉塞部を設けることにより、下流側ストッパがフィルタ部材を停止させたときにフィルタ部材の一部に形成した水抜き通路が閉塞され、フィルタ部材によって水から確実に異物を取り除くことができる。
【0017】
なお、前記水抜き通路は、前記フィルタ室の内側壁と前記フィルタ部材との両方に設けておくこともできる。これによれば、水抜き通路における水の流量を大とすることができるので、水抜きを一層迅速に且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態のフィルタ装置を断面視した説明図。
【図2】第1の実施形態におけるフィルタ部材の平面図。
【図3】第1の実施形態における下流側ストッパを示す説明図。
【図4】第1の実施形態における上流側ストッパを示す説明図。
【図5】第1の実施形態のフィルタ装置の作動説明図。
【図6】フィルタ装置が設けられる水回路の一部を模式的に示す説明図。
【図7】第1の実施形態のフィルタ装置における変形例を示す説明図。
【図8】第2の実施形態のフィルタ装置を断面視した説明図。
【図9】第2の実施形態におけるフィルタ部材の平面図。
【図10】第2の実施形態における下流側ストッパを示す説明図。
【図11】第2の実施形態における上流側ストッパを示す説明図。
【図12】第2の実施形態のフィルタ装置の作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、第1の実施形態のフィルタ装置1は、フィルタ部材2と、これを収容するフィルタ室3とを備えている。
【0020】
図2に示すように、フィルタ部材2は、円盤状に形成されたフィルタ機能部4とその周縁を囲う枠部5とを備えている。フィルタ機能部4は、メッシュ状或いは多孔状に形成されて、通過する水から異物を取り除く機能を有しており、枠部5と共に合成樹脂により形成されている。フィルタ部材2は、フィルタ機能部4と枠部5とが一体に形成されていてもよく、フィルタ機能部4と枠部5とを別体とし、枠部5の内側にフィルタ機能部4を組み付けることによって形成されていてもよい。
【0021】
図1に示すように、フィルタ室3は、通水管6(水流路)において、下方から上方に向って強制的に通水される位置に設けられている。これにより、フィルタ室3は、通水方向下流側が上向きとされ、通水方向上流側が下向きとされた姿勢に設けられている。なお、図1においては通水時の水流の方向を矢印により示している。
【0022】
フィルタ室3の内部には、前記フィルタ部材2が上下方向に移動自在に収容されている。前記フィルタ部材2は、通水管6への通水時に流水圧によりフィルタ室3の通水方向下流側に向って上昇し、通水管6への通水が停止されて水流が停止すると、フィルタ部材2の自重でフィルタ室3の通水方向上流側に向って下降する。
【0023】
フィルタ機能部4及び枠部5を形成する合成樹脂材料としては、温度変化に影響され難く耐衝撃性の高いものが好ましく、例えば、ポリフェニレンエーテルを主成分とした熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、材料の選択等により、フィルタ部材2を、比重が1より僅かに大きく(例えば1.05〜1.1程度に)なるように形成することが好ましい。これによれば、通水停止時に即座に水中のフィルタ部材2を自重で下降させることができ、しかも、比重が僅かに大きいだけなので、通水時の流水圧によるフィルタ部材2の上昇が阻害されない。なお、流水圧による上昇時の上昇速度を向上させる場合には、フィルタ部材2を、比重が1以下となるように形成してもよい。
【0024】
フィルタ室3には、上昇したフィルタ部材2を停止させる下流側ストッパ7が設けられている。下流側ストッパ7は、フィルタ室3の通水方向下流側の受け部8に嵌合された環状部材であり、図3に示すように、この環状部材の下面全周がフィルタ部材2の枠部5の上面全周に当接してフィルタ部材2を停止させる。
【0025】
また、フィルタ室3には、下降したフィルタ部材2を停止させる上流側ストッパ9が設けられている。上流側ストッパ9は、フィルタ室3の通水方向上流端に形成された内方に突出する複数の突起であり、図4に示すように、この突起の上面がフィルタ部材2の枠部5の下面の一部に当接してフィルタ部材2を停止させる。更に、図1に示すように、フィルタ室3の内側壁には、上方に延びる縦溝10が形成されている。
【0026】
下流側ストッパ7は、図5(a)に示すように、フィルタ部材2の枠部5の上面全周に当接することにより、通水時の通水管6における全水流をフィルタ部材2のフィルタ機能部4を通過させる。このとき、フィルタ機能部4によって水から異物が取り除かれる。
【0027】
上流側ストッパ9は、図5(b)に示すように、フィルタ部材2の枠部5の一部に当接する。このとき、フィルタ部材2の枠部5の外側には、フィルタ室3の縦溝10が位置する。そして、縦溝10は、フィルタ部材2の上流側と下流側とで連通し、フィルタ機能部4を介すことなく水を通過させる。フィルタ部材2が上流側ストッパ9により停止された状態のとき、縦溝10は水抜き通路として機能する。
【0028】
以上の構成のフィルタ装置1は、例えば、図6に一部を模式的に示すように、給湯器等の水回路に好適に設けることができる。通水管6の始端は水道に接続され、通水管6の途中位置には水量センサ11、電磁弁12、及び逆止弁13等の弁装置類が設けられる。フィルタ装置1は、これらの弁装置類の上流側に設けられる。これにより、水道水に混じって通水管6に侵入した固体粒子等の異物が弁装置類に侵入することを防止している。
【0029】
即ち、通水管6に水道水が供給されると、フィルタ装置1においては、先ず、フィルタ室3の下側(通水方向上流側)からの流水圧によりフィルタ部材2が押し上げられて移動する。そして、図5(a)に示すように、フィルタ室3の上端(通水方向下流端)に上昇したフィルタ部材2は、下流側ストッパ7に当接して停止され、フィルタ室3の上端を覆う。これにより、フィルタ装置1の通水時の全水流がフィルタ部材2のフィルタ機能部4を通過し、フィルタ機能部4によって異物が除去される。
【0030】
また、冬期のように外気が低温になると、通水管6の凍結を防止するため、フィルタ装置1の上流側に設けられた水抜き栓14(図6参照)を開栓して通水管6の水抜きが行われる。
【0031】
第1の実施形態におけるフィルタ部材2は、前述した通り比重が1より僅かに大きい場合、通水管6への通水停止時に即座に自重により下降する。下降したフィルタ部材2は、フィルタ室3の下端(通水方向上流端)で上流側ストッパ9に当接して停止する。この状態で、水抜き栓14が開栓されると、フィルタ部材2の下方(通水方向上流側)の通水管6内の水が逆流して排出される。
【0032】
更に、図5(b)に示すように、上流側ストッパ9により停止されているフィルタ部材2の外側には、水抜き通路として前記縦溝10が形成される。これによって、フィルタ部材2の上方(通水方向下流側)の通水管6内の水は、縦溝10を介してフィルタ部材2の下方(通水方向上流側)に抜ける。このように、本実施形態のフィルタ装置1によれば、フィルタ部材2の上方(通水方向下流側)に残留してフィルタ機能部4に接する水が、その表面張力によりフィルタ機能部4を逆流方向に通過できなくても、縦溝10によって円滑に下方に流動案内されるので、水抜きを確実に行うことができる。
【0033】
第1の実施形態においては、その基本構成を有する変形例として、図7に示すように、フィルタ室3にバネ等の付勢部材15を設けておくこともできる。付勢部材15は、その付勢力が、通水時の流水圧よりも弱く設定されており、フィルタ部材2を下流側ストッパ7から離反させる方向に付勢するように設けられる。これによれば、通水時以外はフィルタ部材2が上流側ストッパ9に当接した状態となって水抜き通路である縦溝10が開放されるので、フィルタ部材2の下流側からの水抜きを迅速に行うことができる。しかも、通水停止時にフィルタ部材2を下流側ストッパ7から強制的に離反させることができるので、フィルタ室3の通水方向上流端と下流端とが水平に対向するような横向き姿勢でフィルタ装置1を設けても、フィルタ部材2の下流側からの水抜きを支障なく行うことができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8に示すように、第2の実施形態のフィルタ装置20は、フィルタ部材21と、これを収容するフィルタ室22とを備えている。
【0035】
図9に示すように、フィルタ部材21は、円盤状に形成されたフィルタ機能部23とその周縁の枠部24とを備えている。枠部24には複数の切欠き部25が形成されており、後述するように、この切欠き部25が本発明の水抜き通路として機能する。
【0036】
フィルタ機能部23は、第1の実施形態と同様である。また、フィルタ機能部23及び枠部24を形成する材料も第1の実施形態と同じ合成樹脂材料を採用することができる。
【0037】
図8に示すように、フィルタ室22は、下方から上方に向って強制的に通水される通水管26(水流路)に設けられている。これにより、フィルタ室22は、通水方向下流側が上向きとされ、通水方向上流側が下向きとされた姿勢に設けられている。
【0038】
フィルタ室22の内部には、前記フィルタ部材21が上下方向に移動自在に収容されている。前記フィルタ部材21は、通水管26への通水時に流水圧によりフィルタ室22の通水方向下流側に向って上昇し、通水管26への通水が停止されて水流が停止すると、フィルタ部材21の自重でフィルタ室22の通水方向上流側に向って下降する。
【0039】
フィルタ室22には、フィルタ室22内を上昇したフィルタ部材21を停止させる下流側ストッパ27が設けられている。下流側ストッパ27は、フィルタ室22の通水方向下流側の受け部28に嵌合された環状部材であり、図10に示すように、この環状部材の下面がフィルタ部材21の枠部24の上面に当接してフィルタ部材21を停止させると同時に切欠き部25を閉塞する。よって、本実施形態においては、切欠き部25に対応する位置の下流側ストッパ27の下面が、本発明における閉塞部に相当する。
【0040】
また、図8に示すように、フィルタ室22には、フィルタ室22内を下降したフィルタ部材21を停止させる上流側ストッパ29が設けられている。上流側ストッパ29は、図11に示すように、フィルタ室22の通水方向上流端に形成された内方に突出する複数の突起であり、この突起の上面がフィルタ部材21の枠部24の下面に当接してフィルタ部材21を停止させる。なお、フィルタ室22内においてフィルタ部材21はその周方向への回転が規制されていないが、フィルタ部材21がその周方向に回転して上流側ストッパ29の何れかの突起がフィルタ部材21の切欠き部25と対向しても、他の突起がフィルタ部材21の枠部24に当接してフィルタ部材21を確実に停止させることができる。また、図11に示すように、フィルタ部材21の切欠き部25の周方向の長さ寸法よりも上流側ストッパ29の突起が小さく形成されているので、上流側ストッパ29の何れかの突起がフィルタ部材21の切欠き部25と対向しても、その突起は切欠き部25を閉塞することはない。
【0041】
図12(a)に示すように、下流側ストッパ27は、フィルタ部材21の枠部24の上面全周に当接し、フィルタ部材21の切欠き部25を閉塞する。これにより、通水時の通水管26における全水流はフィルタ部材21のフィルタ機能部23を通過して、フィルタ機能部23により異物が取り除かれる。
【0042】
図12(b)に示すように、上流側ストッパ29は、フィルタ部材21の枠部24の一部に当接する。このとき、フィルタ部材21の切欠き部25がフィルタ室22の内壁面との間に間隙を形成する。そして、この間隙がフィルタ部材21の上流側と下流側とで連通し、フィルタ機能部23を介すことなく水を通過させる。
【0043】
以上の構成のフィルタ装置20は、第1の実施形態と同様に、図6に模式的に示す給湯器等の通水管26に好適に設けることができる。第2の実施形態によるフィルタ装置20の作動を説明すれば、通水管26に水道水が供給されると、先ず、フィルタ室22の下側(通水方向上流側)からの流水圧によりフィルタ部材21が押し上げられて移動する。そして、図12(a)に示すように、フィルタ室22の上端(通水方向下流端)に上昇したフィルタ部材21は、下流側ストッパ27に当接して停止され、下流側ストッパ27に切欠き部25が閉塞されて、フィルタ室22の上端を覆う。これにより、フィルタ装置20の下流に向う全水流がフィルタ部材21のフィルタ機能部23を通過し、フィルタ機能部23によって異物が除去される。
【0044】
また、冬期等に通水管26の凍結を防止する場合には図示しない水抜き栓を開栓して通水管26の水抜きが行われる。先ず、通水管26への通水が停止されると、フィルタ部材21は自重により下降する。下降したフィルタ部材21は、フィルタ室22の下端(通水方向上流端)で上流側ストッパ29に当接して停止する。次いで、この状態で、水抜き栓が開栓されると、フィルタ部材21の下方(通水方向上流側)の通水管26内の水が逆流して排出される。一方、図12(b)に示すように、上流側ストッパ29により停止されているフィルタ部材21には、切欠き部25が水抜き通路として形成されている。これにより、フィルタ部材21の上方(通水方向下流側)の通水管26内の水は、切欠き部25を介してフィルタ部材21の下方(通水方向上流側)に抜け、水抜きを確実に行うことができる。
【0045】
なお、図示しないが、第2の実施形態においても、第1の実施形態の変形例と同様にしてフィルタ室22にバネ等の付勢部材を設けておくことができる。これにより、フィルタ室22の通水方向上流端と通水方向下流端とが水平に対向するような横向き姿勢でフィルタ装置20を設けても、フィルタ部材21の通水方向下流側からの水抜きを支障なく行うことができる。
【0046】
また、第2の実施形態においては、図示しないが、第1の実施形態で説明した縦溝10(図1)をフィルタ室22に設けて、フィルタ室22の縦溝10とフィルタ部材21の切欠き部25とで本発明の水抜き通路を構成してもよい。これによれば、水抜きの際に水抜き通路における水の通過流量を比較的大として効率良く水抜きすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,20…フィルタ装置、2,21…フィルタ部材、3,22…フィルタ室、6,26…通水管(水流路)、7,27…下流側ストッパ、9,29…上流側ストッパ、10…縦溝(水抜き通路)、25…切欠き部(水抜き通路)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に強制的に通水される水流路に設けて該水流路を流動する水内の異物を取り除くフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器や食器洗浄機が備える通水管には電磁弁等の弁装置が設けられ、弁装置の上流側にはフィルタが設けられる。フィルタは、通過する水から固体粒子等の異物を取り除き、弁装置に異物が侵入して弁装置が作動不良となることを防止している。
【0003】
フィルタは、目の細かい多孔状或いは網状であり、異物の捕捉性能に反して水が通過し難い。即ち、弁装置が開弁し、流水圧をもって強制的に通水される場合には、水は容易にフィルターを通過する。しかし、弁装置が閉弁して水流が停止した場合には、フィルタの表面に対する水の表面張力により、フィルタの通水方向下流側の管内に水が封止されることがある。このときには、フィルタの通水方向上流側の管内の水を排出しても、フィルタの通水方向下流側の管内からは水が抜けず、管内に残留した水の凍結や腐敗といった不都合が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、従来、毛細管現象が発生するように溝状又は孔状に形成された排水路をフィルタの一部に繋げて設け、フィルタの通水方向下流側の管内に残留する水を排水路の毛細管現象を利用してフィルタの通水方向上流側(水抜き方向)に向って案内するようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−336914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のフィルタに採用された排水路は、毛細管現象を利用して水を導くために、排水路を構成する溝状又は孔状は比較的狭くする必要がある。このため、排水路により排水される水の流量が少なく、水抜きに長い時間を要するために排水効率が悪い。また、排水路に異物が侵入すると詰まりが生じるおそれがある。これを防止するために排水路を構成する溝状又は孔状を広くすると、フィルタとしての異物の捕捉機能が低下する。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、異物を取り除く機能を低下させることなく水抜きを円滑且つ確実に行うことができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、一方向に強制的に通水される水流路に設けるフィルタ装置において、通過する水から異物を取り除く機能を有するフィルタ部材と、該フィルタ部材を水流方向に沿って移動自在に収容するフィルタ室とを備え、前記フィルタ部材は、通水時の流水圧により前記フィルタ室の通水方向下流側に移動し、通水時と逆方向に排水する水抜き時に前記フィルタ室の通水方向上流側に移動するように設けられており、前記フィルタ室は、該フィルタ室の通水方向下流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向下流端で停止させる下流側ストッパと、該フィルタ室の通水方向上流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向上流端で停止させる上流側ストッパとを備え、前記下流側ストッパにより前記フィルタ部材が停止しているとき、該フィルタ部材が前記フィルタ室の通水方向下流端を覆って該フィルタ部材を全水流が通過し、前記フィルタ部材が前記上流側ストッパにより停止されたとき、該フィルタ部材の通水方向下流側に残留する残留水を通過させる水抜き通路が、前記フィルタ室の通水方向上流端に形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明のフィルタ装置は、通水時にはフィルタ部材がフィルタ室の通水方向下流端まで移動し、水抜き時にはフィルタ部材がフィルタ室の通水方向上流端まで移動する。そして、フィルタ部材がフィルタ室の上流側ストッパにより停止されたとき、水抜き通路が形成される。
【0010】
これにより、通水時には、下流側ストッパにより停止したフィルタ部材がフィルタ室の通水方向下流端を覆うので、フィルタ部材を全水流が通過し、その通過する水から確実に異物を取り除くことができる。
【0011】
一方、水抜き時には、フィルタ部材がフィルタ室の通水方向下流端から離れてフィルタ室の通水方向上流端に移動するので、フィルタ部材による通水方向下流側への水の封止状態が解除されると共に、前記水抜き通路から円滑に排水することができる。
【0012】
従って、本発明のフィルタ装置によれば、異物を取り除く機能を低下させることなく水抜きを円滑且つ確実に行うことができる。
【0013】
なお、フィルタ部材を、通水時の流水圧によりフィルタ室の通水方向下流側に移動し、水抜き時にフィルタ室の通水方向上流側に移動するように設けるためには、例えば、フィルタ部材を、フィルタ室の通水方向上流側に向って付勢するバネ等の付勢手段を設けることが挙げられる。この場合には、フィルタ部材の通水時の流水圧による通水方向下流側への移動を阻害しないように付勢手段の付勢力を設定する必要がある。また、バネ等の付勢手段を設けるために部品点数が増加する。
【0014】
そこで、前記フィルタ室は、通水方向上流側が下方を向き、通水方向下流側が上方を向く姿勢に設けられ、前記フィルタ部材は、前記フィルタ室内で上下方向に移動自在とされて、通水時の流水圧により上昇し、水抜き時に自重により下降することが好ましい。こうすることにより、フィルタ室を上下方向に向けた姿勢に設けるだけで、フィルタ部材を、水抜き時には前記フィルタ室の上流側に移動するように設けることができる。従って、フィルタ部材をフィルタ室の上流側に移動させるためのバネ等の付勢手段を不要として、部品点数を少なくすることができるので、製造効率が良くコストの増加を抑えたフィルタ装置を得ることができる。
【0015】
また、本発明において、前記水抜き通路は、前記フィルタ室の内側壁に形成することができる。この場合には、例えば、前記フィルタ室の内壁面に水抜き通路として溝等を形成することで、構造簡単に水抜き通路を設けることができる。
【0016】
また、本発明において、前記水抜き通路は、前記フィルタ部材の一部に形成することもできる。そして、前記下流側ストッパに、前記フィルタ室の通水方向下流端で前記フィルタ部材を停止させたときに該フィルタ部材の水抜き通路を閉塞する閉塞部を設ける。この場合には、例えば、前記フィルタ部材に、水抜き通路として切欠き或いは孔を形成し、前記上流側ストッパがフィルタ部材を停止させたときに、水抜き通路としての切欠き或いは孔を上流側ストッパが閉塞しない位置に設けることで、構造簡単に水抜き通路を設けることができる。一方、下流側ストッパに前記閉塞部を設けることにより、下流側ストッパがフィルタ部材を停止させたときにフィルタ部材の一部に形成した水抜き通路が閉塞され、フィルタ部材によって水から確実に異物を取り除くことができる。
【0017】
なお、前記水抜き通路は、前記フィルタ室の内側壁と前記フィルタ部材との両方に設けておくこともできる。これによれば、水抜き通路における水の流量を大とすることができるので、水抜きを一層迅速に且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態のフィルタ装置を断面視した説明図。
【図2】第1の実施形態におけるフィルタ部材の平面図。
【図3】第1の実施形態における下流側ストッパを示す説明図。
【図4】第1の実施形態における上流側ストッパを示す説明図。
【図5】第1の実施形態のフィルタ装置の作動説明図。
【図6】フィルタ装置が設けられる水回路の一部を模式的に示す説明図。
【図7】第1の実施形態のフィルタ装置における変形例を示す説明図。
【図8】第2の実施形態のフィルタ装置を断面視した説明図。
【図9】第2の実施形態におけるフィルタ部材の平面図。
【図10】第2の実施形態における下流側ストッパを示す説明図。
【図11】第2の実施形態における上流側ストッパを示す説明図。
【図12】第2の実施形態のフィルタ装置の作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、第1の実施形態のフィルタ装置1は、フィルタ部材2と、これを収容するフィルタ室3とを備えている。
【0020】
図2に示すように、フィルタ部材2は、円盤状に形成されたフィルタ機能部4とその周縁を囲う枠部5とを備えている。フィルタ機能部4は、メッシュ状或いは多孔状に形成されて、通過する水から異物を取り除く機能を有しており、枠部5と共に合成樹脂により形成されている。フィルタ部材2は、フィルタ機能部4と枠部5とが一体に形成されていてもよく、フィルタ機能部4と枠部5とを別体とし、枠部5の内側にフィルタ機能部4を組み付けることによって形成されていてもよい。
【0021】
図1に示すように、フィルタ室3は、通水管6(水流路)において、下方から上方に向って強制的に通水される位置に設けられている。これにより、フィルタ室3は、通水方向下流側が上向きとされ、通水方向上流側が下向きとされた姿勢に設けられている。なお、図1においては通水時の水流の方向を矢印により示している。
【0022】
フィルタ室3の内部には、前記フィルタ部材2が上下方向に移動自在に収容されている。前記フィルタ部材2は、通水管6への通水時に流水圧によりフィルタ室3の通水方向下流側に向って上昇し、通水管6への通水が停止されて水流が停止すると、フィルタ部材2の自重でフィルタ室3の通水方向上流側に向って下降する。
【0023】
フィルタ機能部4及び枠部5を形成する合成樹脂材料としては、温度変化に影響され難く耐衝撃性の高いものが好ましく、例えば、ポリフェニレンエーテルを主成分とした熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、材料の選択等により、フィルタ部材2を、比重が1より僅かに大きく(例えば1.05〜1.1程度に)なるように形成することが好ましい。これによれば、通水停止時に即座に水中のフィルタ部材2を自重で下降させることができ、しかも、比重が僅かに大きいだけなので、通水時の流水圧によるフィルタ部材2の上昇が阻害されない。なお、流水圧による上昇時の上昇速度を向上させる場合には、フィルタ部材2を、比重が1以下となるように形成してもよい。
【0024】
フィルタ室3には、上昇したフィルタ部材2を停止させる下流側ストッパ7が設けられている。下流側ストッパ7は、フィルタ室3の通水方向下流側の受け部8に嵌合された環状部材であり、図3に示すように、この環状部材の下面全周がフィルタ部材2の枠部5の上面全周に当接してフィルタ部材2を停止させる。
【0025】
また、フィルタ室3には、下降したフィルタ部材2を停止させる上流側ストッパ9が設けられている。上流側ストッパ9は、フィルタ室3の通水方向上流端に形成された内方に突出する複数の突起であり、図4に示すように、この突起の上面がフィルタ部材2の枠部5の下面の一部に当接してフィルタ部材2を停止させる。更に、図1に示すように、フィルタ室3の内側壁には、上方に延びる縦溝10が形成されている。
【0026】
下流側ストッパ7は、図5(a)に示すように、フィルタ部材2の枠部5の上面全周に当接することにより、通水時の通水管6における全水流をフィルタ部材2のフィルタ機能部4を通過させる。このとき、フィルタ機能部4によって水から異物が取り除かれる。
【0027】
上流側ストッパ9は、図5(b)に示すように、フィルタ部材2の枠部5の一部に当接する。このとき、フィルタ部材2の枠部5の外側には、フィルタ室3の縦溝10が位置する。そして、縦溝10は、フィルタ部材2の上流側と下流側とで連通し、フィルタ機能部4を介すことなく水を通過させる。フィルタ部材2が上流側ストッパ9により停止された状態のとき、縦溝10は水抜き通路として機能する。
【0028】
以上の構成のフィルタ装置1は、例えば、図6に一部を模式的に示すように、給湯器等の水回路に好適に設けることができる。通水管6の始端は水道に接続され、通水管6の途中位置には水量センサ11、電磁弁12、及び逆止弁13等の弁装置類が設けられる。フィルタ装置1は、これらの弁装置類の上流側に設けられる。これにより、水道水に混じって通水管6に侵入した固体粒子等の異物が弁装置類に侵入することを防止している。
【0029】
即ち、通水管6に水道水が供給されると、フィルタ装置1においては、先ず、フィルタ室3の下側(通水方向上流側)からの流水圧によりフィルタ部材2が押し上げられて移動する。そして、図5(a)に示すように、フィルタ室3の上端(通水方向下流端)に上昇したフィルタ部材2は、下流側ストッパ7に当接して停止され、フィルタ室3の上端を覆う。これにより、フィルタ装置1の通水時の全水流がフィルタ部材2のフィルタ機能部4を通過し、フィルタ機能部4によって異物が除去される。
【0030】
また、冬期のように外気が低温になると、通水管6の凍結を防止するため、フィルタ装置1の上流側に設けられた水抜き栓14(図6参照)を開栓して通水管6の水抜きが行われる。
【0031】
第1の実施形態におけるフィルタ部材2は、前述した通り比重が1より僅かに大きい場合、通水管6への通水停止時に即座に自重により下降する。下降したフィルタ部材2は、フィルタ室3の下端(通水方向上流端)で上流側ストッパ9に当接して停止する。この状態で、水抜き栓14が開栓されると、フィルタ部材2の下方(通水方向上流側)の通水管6内の水が逆流して排出される。
【0032】
更に、図5(b)に示すように、上流側ストッパ9により停止されているフィルタ部材2の外側には、水抜き通路として前記縦溝10が形成される。これによって、フィルタ部材2の上方(通水方向下流側)の通水管6内の水は、縦溝10を介してフィルタ部材2の下方(通水方向上流側)に抜ける。このように、本実施形態のフィルタ装置1によれば、フィルタ部材2の上方(通水方向下流側)に残留してフィルタ機能部4に接する水が、その表面張力によりフィルタ機能部4を逆流方向に通過できなくても、縦溝10によって円滑に下方に流動案内されるので、水抜きを確実に行うことができる。
【0033】
第1の実施形態においては、その基本構成を有する変形例として、図7に示すように、フィルタ室3にバネ等の付勢部材15を設けておくこともできる。付勢部材15は、その付勢力が、通水時の流水圧よりも弱く設定されており、フィルタ部材2を下流側ストッパ7から離反させる方向に付勢するように設けられる。これによれば、通水時以外はフィルタ部材2が上流側ストッパ9に当接した状態となって水抜き通路である縦溝10が開放されるので、フィルタ部材2の下流側からの水抜きを迅速に行うことができる。しかも、通水停止時にフィルタ部材2を下流側ストッパ7から強制的に離反させることができるので、フィルタ室3の通水方向上流端と下流端とが水平に対向するような横向き姿勢でフィルタ装置1を設けても、フィルタ部材2の下流側からの水抜きを支障なく行うことができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8に示すように、第2の実施形態のフィルタ装置20は、フィルタ部材21と、これを収容するフィルタ室22とを備えている。
【0035】
図9に示すように、フィルタ部材21は、円盤状に形成されたフィルタ機能部23とその周縁の枠部24とを備えている。枠部24には複数の切欠き部25が形成されており、後述するように、この切欠き部25が本発明の水抜き通路として機能する。
【0036】
フィルタ機能部23は、第1の実施形態と同様である。また、フィルタ機能部23及び枠部24を形成する材料も第1の実施形態と同じ合成樹脂材料を採用することができる。
【0037】
図8に示すように、フィルタ室22は、下方から上方に向って強制的に通水される通水管26(水流路)に設けられている。これにより、フィルタ室22は、通水方向下流側が上向きとされ、通水方向上流側が下向きとされた姿勢に設けられている。
【0038】
フィルタ室22の内部には、前記フィルタ部材21が上下方向に移動自在に収容されている。前記フィルタ部材21は、通水管26への通水時に流水圧によりフィルタ室22の通水方向下流側に向って上昇し、通水管26への通水が停止されて水流が停止すると、フィルタ部材21の自重でフィルタ室22の通水方向上流側に向って下降する。
【0039】
フィルタ室22には、フィルタ室22内を上昇したフィルタ部材21を停止させる下流側ストッパ27が設けられている。下流側ストッパ27は、フィルタ室22の通水方向下流側の受け部28に嵌合された環状部材であり、図10に示すように、この環状部材の下面がフィルタ部材21の枠部24の上面に当接してフィルタ部材21を停止させると同時に切欠き部25を閉塞する。よって、本実施形態においては、切欠き部25に対応する位置の下流側ストッパ27の下面が、本発明における閉塞部に相当する。
【0040】
また、図8に示すように、フィルタ室22には、フィルタ室22内を下降したフィルタ部材21を停止させる上流側ストッパ29が設けられている。上流側ストッパ29は、図11に示すように、フィルタ室22の通水方向上流端に形成された内方に突出する複数の突起であり、この突起の上面がフィルタ部材21の枠部24の下面に当接してフィルタ部材21を停止させる。なお、フィルタ室22内においてフィルタ部材21はその周方向への回転が規制されていないが、フィルタ部材21がその周方向に回転して上流側ストッパ29の何れかの突起がフィルタ部材21の切欠き部25と対向しても、他の突起がフィルタ部材21の枠部24に当接してフィルタ部材21を確実に停止させることができる。また、図11に示すように、フィルタ部材21の切欠き部25の周方向の長さ寸法よりも上流側ストッパ29の突起が小さく形成されているので、上流側ストッパ29の何れかの突起がフィルタ部材21の切欠き部25と対向しても、その突起は切欠き部25を閉塞することはない。
【0041】
図12(a)に示すように、下流側ストッパ27は、フィルタ部材21の枠部24の上面全周に当接し、フィルタ部材21の切欠き部25を閉塞する。これにより、通水時の通水管26における全水流はフィルタ部材21のフィルタ機能部23を通過して、フィルタ機能部23により異物が取り除かれる。
【0042】
図12(b)に示すように、上流側ストッパ29は、フィルタ部材21の枠部24の一部に当接する。このとき、フィルタ部材21の切欠き部25がフィルタ室22の内壁面との間に間隙を形成する。そして、この間隙がフィルタ部材21の上流側と下流側とで連通し、フィルタ機能部23を介すことなく水を通過させる。
【0043】
以上の構成のフィルタ装置20は、第1の実施形態と同様に、図6に模式的に示す給湯器等の通水管26に好適に設けることができる。第2の実施形態によるフィルタ装置20の作動を説明すれば、通水管26に水道水が供給されると、先ず、フィルタ室22の下側(通水方向上流側)からの流水圧によりフィルタ部材21が押し上げられて移動する。そして、図12(a)に示すように、フィルタ室22の上端(通水方向下流端)に上昇したフィルタ部材21は、下流側ストッパ27に当接して停止され、下流側ストッパ27に切欠き部25が閉塞されて、フィルタ室22の上端を覆う。これにより、フィルタ装置20の下流に向う全水流がフィルタ部材21のフィルタ機能部23を通過し、フィルタ機能部23によって異物が除去される。
【0044】
また、冬期等に通水管26の凍結を防止する場合には図示しない水抜き栓を開栓して通水管26の水抜きが行われる。先ず、通水管26への通水が停止されると、フィルタ部材21は自重により下降する。下降したフィルタ部材21は、フィルタ室22の下端(通水方向上流端)で上流側ストッパ29に当接して停止する。次いで、この状態で、水抜き栓が開栓されると、フィルタ部材21の下方(通水方向上流側)の通水管26内の水が逆流して排出される。一方、図12(b)に示すように、上流側ストッパ29により停止されているフィルタ部材21には、切欠き部25が水抜き通路として形成されている。これにより、フィルタ部材21の上方(通水方向下流側)の通水管26内の水は、切欠き部25を介してフィルタ部材21の下方(通水方向上流側)に抜け、水抜きを確実に行うことができる。
【0045】
なお、図示しないが、第2の実施形態においても、第1の実施形態の変形例と同様にしてフィルタ室22にバネ等の付勢部材を設けておくことができる。これにより、フィルタ室22の通水方向上流端と通水方向下流端とが水平に対向するような横向き姿勢でフィルタ装置20を設けても、フィルタ部材21の通水方向下流側からの水抜きを支障なく行うことができる。
【0046】
また、第2の実施形態においては、図示しないが、第1の実施形態で説明した縦溝10(図1)をフィルタ室22に設けて、フィルタ室22の縦溝10とフィルタ部材21の切欠き部25とで本発明の水抜き通路を構成してもよい。これによれば、水抜きの際に水抜き通路における水の通過流量を比較的大として効率良く水抜きすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,20…フィルタ装置、2,21…フィルタ部材、3,22…フィルタ室、6,26…通水管(水流路)、7,27…下流側ストッパ、9,29…上流側ストッパ、10…縦溝(水抜き通路)、25…切欠き部(水抜き通路)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に強制的に通水される水流路に設けるフィルタ装置において、
通過する水から異物を取り除く機能を有するフィルタ部材と、該フィルタ部材を水流方向に沿って移動自在に収容するフィルタ室とを備え、
前記フィルタ部材は、通水時の流水圧により前記フィルタ室の通水方向下流側に移動し、通水時と逆方向に排水する水抜き時に前記フィルタ室の通水方向上流側に移動するように設けられており、
前記フィルタ室は、該フィルタ室の通水方向下流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向下流端で停止させる下流側ストッパと、該フィルタ室の通水方向上流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向上流端で停止させる上流側ストッパとを備え、
前記下流側ストッパにより前記フィルタ部材が停止しているとき、該フィルタ部材が前記フィルタ室の通水方向下流端を覆って該フィルタ部材を全水流が通過し、
前記フィルタ部材が前記上流側ストッパにより停止されたとき、該フィルタ部材の通水方向下流側に残留する残留水を通過させる水抜き通路が、前記フィルタ室の通水方向上流端に形成されることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ室は、通水方向上流側が下方を向き、通水方向下流側が上方を向く姿勢に設けられ、
前記フィルタ部材は、前記フィルタ室内で上下方向に移動自在とされて、通水時の流水圧により上昇し、水抜き時に自重により下降することを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記水抜き通路は、前記フィルタ室の内側壁に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記水抜き通路は、前記フィルタ部材の一部に形成されており、
前記下流側ストッパは、前記フィルタ室の通水方向下流端で前記フィルタ部材を停止させると同時に該フィルタ部材の水抜き通路を閉塞する閉塞部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のフィルタ装置。
【請求項1】
一方向に強制的に通水される水流路に設けるフィルタ装置において、
通過する水から異物を取り除く機能を有するフィルタ部材と、該フィルタ部材を水流方向に沿って移動自在に収容するフィルタ室とを備え、
前記フィルタ部材は、通水時の流水圧により前記フィルタ室の通水方向下流側に移動し、通水時と逆方向に排水する水抜き時に前記フィルタ室の通水方向上流側に移動するように設けられており、
前記フィルタ室は、該フィルタ室の通水方向下流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向下流端で停止させる下流側ストッパと、該フィルタ室の通水方向上流側に移動する前記フィルタ部材を該フィルタ室の通水方向上流端で停止させる上流側ストッパとを備え、
前記下流側ストッパにより前記フィルタ部材が停止しているとき、該フィルタ部材が前記フィルタ室の通水方向下流端を覆って該フィルタ部材を全水流が通過し、
前記フィルタ部材が前記上流側ストッパにより停止されたとき、該フィルタ部材の通水方向下流側に残留する残留水を通過させる水抜き通路が、前記フィルタ室の通水方向上流端に形成されることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ室は、通水方向上流側が下方を向き、通水方向下流側が上方を向く姿勢に設けられ、
前記フィルタ部材は、前記フィルタ室内で上下方向に移動自在とされて、通水時の流水圧により上昇し、水抜き時に自重により下降することを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記水抜き通路は、前記フィルタ室の内側壁に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記水抜き通路は、前記フィルタ部材の一部に形成されており、
前記下流側ストッパは、前記フィルタ室の通水方向下流端で前記フィルタ部材を停止させると同時に該フィルタ部材の水抜き通路を閉塞する閉塞部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のフィルタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−607(P2013−607A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130629(P2011−130629)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
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