説明

フィルタ製造装置およびフィルタ製造方法

【課題】インクジェットヘッドを傾ける角度を低減してフィルタを製造する。
【解決手段】
ノズルピッチより高解像度で印刷可能なマルチパス方式のインクジェット印刷によりフィルタを製造するフィルタ製造装置1において、予め定められたノズルピッチでノズルが配置されているヘッドと、基材91の搬送方向と垂直な方向において、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出する印刷ピッチ算出部と、前記印刷ピッチ算出部により算出された印刷ピッチの余弦と前記フィルタピッチとを一致させる前記ヘッドの回転角度を算出する回転角度算出部と、前記ヘッドを前記回転角度回転させる回転機構19とを備えるフィルタ製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタ製造装置およびフィルタ製造方法に係り、特に、インクジェット印刷により液晶表示装置または電子ペーパに用いられるカラーフィルタを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶のカラーフィルタの製造方法として、フォトリソグラフィー法による製造方法がある。フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタを製造すると、位置精度の高い品質の良いフィルタを得ることができる。しかしながら、フィルタ色ごとにマスク焼き付け、洗浄および化学処理等の多数の工程を必要とする。
【0003】
そこで、近年インクジェット印刷によるカラーフィルタの製造方法が研究されている。インクジェット印刷によればフォトリソグラフィー法よりも、製造工程を減らすことができ、安価にフィルタを製造することができる。たとえば、特許文献1には、ワンパス方式でのインクジェット装置を用いたカラーフィルタの製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−138306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。すなわち、ワンパス方式でのインクジェットプリンタ装置を用いる場合、フィルタの配列ピッチに対してインクジェットヘッドのノズルピッチを等しく配置するか、整数倍に配置する必要がある。インクジェットヘッドのノズルピッチは業界で規格化されており、通常、フィルタの配列ピッチと合致しない。そこで、インクジェットヘッドを傾けてノズルピッチの搬送方向と垂直な方向の距離成分をフィルタの配列ピッチに合わせている。フィルタピッチとノズルピッチとの差が大きい場合、インクジェットヘッドの傾き角度が大きくなる。インクジェットヘッドの傾き角度が大きいとインクジェットヘッドの構成が巨大化する。また、ヘッドを傾けると各ノズルからのインクの吐出を同一クロックではなく個別に制御する必要があり、制御が複雑化する。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インクジェットヘッドの傾きを低減したフィルタ製造装置およびフィルタ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明における第1の発明は、ノズルピッチより高解像度で印刷可能なマルチパス方式のインクジェット印刷によりフィルタを製造するフィルタ製造装置において、予め定められたノズルピッチでノズルが配置されているヘッドと、印刷物の搬送方向と垂直な方向において、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出する印刷ピッチ算出部と、前記印刷ピッチ算出部により算出された印刷ピッチの余弦と前記フィルタピッチとを一致させる前記ヘッドの回転角度を算出する回転角度算出部と、前記ヘッドを前記回転角度回転させる回転機構とを備えるフィルタ製造装置である。
【0008】
上記記載の発明によれば、マルチパス方式のインクジェット印刷を用いたフィルタ製造装置であるので、ノズルピッチよりも高分解能で印刷することができる。最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出することで、フィルタピッチと最もズレが小さい印刷ピッチが求まる。このズレ量がゼロとなるように、ヘッドを回転させる回転角度を算出する。算出された回転角度の分だけヘッドを回転させることで、印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させてフィルタを製造することができる。
【0009】
この構成によれば、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチとフィルタピッチとの差が最小となる印刷ピッチとフィルタピッチとのズレ量分だけをヘッドを回転させることで印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させているので、ヘッドの回転量を低減することができる。また、印刷物によって異なるフィルタピッチに対しても適切に印刷ピッチを調節することができるので、様々なフィルタピッチに対応することができる。
【0010】
また、フィルタ製造装置の好ましい一例は、前記フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出されるフィルタ製造装置である。ヘッドの回転角度が低減されているので、フィルタピッチに対応する印刷パターンを予め定めておいても、ヘッドの回転による印刷パターンの変形も低減することができる。フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出することで、最小印刷ピッチを越えてインク量を吐出することができ、吐出回数を減らすことができる。
【0011】
また、フィルタ製造装置の好ましい一例は、前記印刷パターンは、その対角線上に吐出ドット領域を有するフィルタ製造装置である。印刷パターンとしてその印刷パターンにおける対角線上に吐出ドット領域を有するので、吐出されたインクを効率良く拡散することができる。
【0012】
また、本発明における第2の発明は、ノズルピッチより高解像度で印刷可能なマルチパス方式のインクジェット印刷によりフィルタを製造するフィルタ製造方法において、印刷物の搬送方向と垂直な方向において、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出する印刷ピッチ算出ステップと、前記印刷ピッチステップにより算出された印刷ピッチの余弦と前記フィルタピッチとを一致させるヘッドの回転角度を算出する回転角度算出ステップと、前記ヘッドを前記回転角度回転させる回転ステップとを備えるフィルタ製造方法である。
【0013】
上記方法によれば、マルチパス方式のインクジェット印刷を用いたフィルタ製造方法であるので、ノズルピッチよりも高分解能で印刷することができる。最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出することで、フィルタピッチと最もズレが小さい印刷ピッチが求まる。このズレ量がゼロとなるように、ヘッドを回転させる回転角度を算出する。算出された回転角度の分だけヘッドを回転させることで、印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させてフィルタを製造することができる。
【0014】
最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチとフィルタピッチとの差が最小となる印刷ピッチとフィルタピッチとのズレ量分だけをヘッドを回転させることで印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させているので、ヘッドの回転量を低減することができる。また、印刷物によって異なるフィルタピッチに対しても適切に印刷ピッチを調節することができるので、様々なフィルタピッチに対応することができる。
【0015】
また、フィルタ製造方法の好ましい一例は、前記フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出されるフィルタ製造方法である。上記方法によれば、ヘッドの回転角度が低減されているので、フィルタピッチに対応する印刷パターンを予め定めておいても、ヘッドの回転による印刷パターンの変形も低減することができる。フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出することで、最小印刷ピッチを越えてインク量を吐出することができ、吐出回数を減らすことができる。
【0016】
また、フィルタ製造方法の好ましい一例は、前記印刷パターンは、その対角線上に吐出ドット領域を有するフィルタ製造方法である。この方法によれば、印刷パターンとしてその印刷パターンにおける対角線上に吐出ドット領域を有するので、吐出されたインクを効率良く拡散することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るフィルタ製造装置およびフィルタ製造方法によれば、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチとフィルタピッチとの差が最小となる印刷ピッチとフィルタピッチとのズレ量分だけをヘッドを回転させることで印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させているので、ヘッドの回転量を低減することができる。また、印刷物によって異なるフィルタピッチに対しても適切に印刷ピッチを調節することができるので、様々なフィルタピッチに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例に係るフィルタ製造装置の全体斜視図である。
【図2】実施例に係る吐出部の底面図である。
【図3】実施例に係る回転角度算出部の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例に係るカラーフィルタの配列を示す説明図である。
【図5】実施例に係るフィルタピッチに対するノズルピッチを示す説明図である。
【図6】実施例に係る印刷ピッチの余弦とフィルタピッチとの関係を示す説明図である。
【図7】実施例に係る回転されたヘッドとフィルタピッチとの関係を示す説明図である。
【図8】実施例に係るた印刷パターンの配置を示す説明図である。
【図9】実施例に係るた印刷パターンの配置を示す説明図である。
【図10】実施例に係るた印刷パターンの配置を示す説明図である。
【図11】実施例に係るフィルタを製造する流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例に係るフィルタ製造装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1は、フィルタ製造装置1の全体外観図である。
【0020】
1.フィルタ製造装置
フィルタ製造装置1は、基材91上にインクジェット方式によりカラーフィルタを製造する。本実施例では、マルチパス方式のインクジェット印刷機を採用する。基材91は、ガラス基板でもよいし、コーティング剤を塗布した紙でもよい。
【0021】
フィルタ製造装置1は、基材91を搬送する搬送機構2と、搬送途上の基材91上にUV硬化性インクを吐出する印刷ヘッド3と、基材91の搬送タイミングと印刷ヘッド3のインクの吐出タイミングとを制御する制御部4と、フィルタピッチに対応してヘッドの回転角度を算出するヘッド回転角度算出部5と、予め種々の条件設定を入力する入力部6と、フィルタピッチに対応して印刷パターンを設定する印刷パターン設定部7とを備える。
【0022】
搬送機構2は、基材91を保持するステージ11と、ステージ11が載置される基台12と、基台12上に設けられ基台12に対するステージ11の位置を検出する位置検出器13と、ステージ11を搬送方向の順方向または逆方向に移動させるステージ駆動装置14とを有する。
【0023】
印刷ヘッド3は、インクを吐出する吐出部21と、吐出部21を基材91の搬送方向と垂直な方向に移動させる吐出部搬送機構23と、ヘッド26を回転させる回転機構19とを有する。
【0024】
次に、図2を参照する。図2は吐出部21の底面図である。吐出部21はそれぞれが互いに異なる色成分のインクを吐出する複数のヘッド26を備え、複数のヘッド26は基材91の逆搬送方向である(+Y)方向に配列されて吐出部21の本体25に所定方向に回転可能に固定される。図2中の最も(+Y)側のヘッド26から(−Y)側のヘッド26に向かって順に、ヘッド26はR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)のインクを吐出する。各インクは紫外線硬化剤を含んでおり、紫外線硬化性を有する。なお、本実施例では吐出部21に複数のヘッド26を搭載しているが、吐出部21に搭載するヘッド26が各色分について1つの場合であってもよい。
【0025】
各ヘッド26は、例えば、ピエゾ駆動方式のヘッドが採用され、各ヘッド26の下面にはインクの微小液滴を吐出する複数のノズル27が幅方向に配列される。ヘッド26は、幅方向に複数のノズル27が一定のピッチにて配列され、基材91上において走査方向の各位置にて、幅方向に一列に並ぶ複数のドットの形成が可能とされる。
【0026】
吐出部21には、紫外線を発生させる光源に接続される照射部28が複数のヘッド26の(+Y)側に設けられる。光源は吐出部21の後方に備えられている。照射部28では、複数の光ファイバがX方向に配列されており、基材91上においてX方向に伸びる線状の領域に照射部28により紫外線が照射される。なお、本実施例ではUV硬化型インクを採用しているが、これに限らず、溶剤インクであってもよい。溶剤インクを採用する場合、自然乾燥または、ヒータを用いて乾燥させる。
【0027】
回転機構19は、ヘッド回転角度算出部5が算出したヘッド回転角度に基づいて、各ヘッド26を対応する回転軸19a〜19cを中心に回転させる。各ヘッド26は基材91の搬送方向と垂直な方向に平行に位置している初期位置から、回転位置へと回転される。回転機構19は、たとえば、各ヘッド26に接続されるステッピングモータと歯車機構により構成される。本実施例では各ヘッド26は個別に回転可能な構成であるが、一括して回転させる構成でもよい。また、本実施例ではヘッド26のX方向における中心を回転中心としているが、ヘッド26の端部を回転中心としてもよい。ヘッド26は回転された状態で、吐出部移動機構23に沿ってX方向に走査する。吐出部移動機構23は本発明における走査機構部に相当する。
【0028】
印刷は、吐出部21に対して基材91を(−Y)方向に移動しつつUV硬化性インクの吐出が行われ、インクに照射部28からの紫外線が照射されることにより、吐出直後のインクが基材91上にて硬化される。このように、フィルタ製造装置1では、光源部22および照射部28がインクを硬化させる硬化部となっている。印刷時には、基材91の移動が繰り返される毎に吐出部21がX方向に移動する。すなわち、搬送機構2および吐出部移動機構23は、吐出部21からのインクの吐出に並行して吐出部21を基材91に対して相対的に移動する機構となっている。印刷はインタレース方式にて行われる。一度、インクの吐出が行われた位置にインクの吐出を繰り返して有色インクによる印刷濃度が向上されてもよい。
【0029】
また、もう1つの照射部28が複数のヘッド26の最も(−Y)側に設けられ、インクの液滴を吐出しつつ基材91がY方向に往復移動することにより印刷が行われてもよい。
【0030】
2.回転角度算出部
次に図3および図4を参照して、ヘッド回転角度算出部5の構成を説明する。図3はヘッド回転角度算出部の構成を示すブロック図であり、図4は製造されるカラーフィルタの配列を示す説明図である。図4において、Rは赤色フィルタ、Gは緑色フィルタ、Bは青色フィルタを意味し、各R、G、Bフィルタは正方形である。各R、G、Bフィルタは正方形でなく、長方形であってもよい。
【0031】
ヘッド回転角度算出部5は、カラーフィルタの配列ピッチとノズル27のピッチとを基に、フィルタピッチとノズルピッチの余弦とが一致するヘッドの回転角度を算出する。ヘッド回転角度算出部5は、印刷ピッチ算出部35と、回転角度算出部36とを備える。ヘッド回転角度算出部5はマイクロプロセッサで構成されるが、制御部4のCPUの一部であってもよい。
【0032】
印刷ピッチ算出部35は、基材91の搬送方向と垂直な方向(X方向)において、最小印刷ピッチPmの整数倍の印刷ピッチであって、X方向のフィルタピッチFpxとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチFpxよりも大きい印刷ピッチPtを算出する。算出された印刷ピッチPtは制御部4および回転角度算出部36へ出力される。
【0033】
最小印刷ピッチPmとはノズル26が回転していない初期位置でのヘッド解像度のことであり、本実施例では1200dpiである。たとえば、ノズルピッチNpが150dpiの場合、ノズルピッチNp=169μmであるが、マルチパス方式で8回幅方向に走査印刷することで1200dpiを達成することができる。すなわち、本実施例における最小印刷ピッチPmは21.12μmである。また、最小印刷ピッチPmで形成される領域をドット領域とする。本実施例では、21.12μm四方の領域をドット領域とする。
【0034】
次に図5を参照して印刷ピッチPtの算出方法を説明する。図5は、フィルタピッチに対するノズルピッチNpを示す説明図である。図5において、Pa1、Pa2、Pa3…は1回目の走査におけるノズルの位置を示しており、Pb1、Pb2、Pb3…は、2回目の走査におけるノズルの位置を示しており、Pc1、Pc2、Pc3…は、3回目の走査におけるノズルの位置を示している。同様に、Pd1、Pd2、Pd3…は4回目の、Pe1、Pe2、Pe3…は5回目の、Pf1、Pf2、Pf3…は6回目の、Pg1、Pg2、Pg3…は7回目の、Ph1、Ph2、Ph3…は8回目の走査におけるノズルの位置を示している。各ノズルPa1〜Ph1の間隔は最小ピッチPmで等しく配置される。
【0035】
印刷ピッチPtは、最小印刷ピッチPmの自然数倍の大きさであって、フィルタピッチFpxよりも大きい最小の値を印刷ピッチPtとして算出する。本実施例の場合、フィルタピッチFpx=123μmとすると、Pt=126.72μmである。この印刷ピッチPtの値は、ノズルPa1とノズルPf6との距離である。
【0036】
回転角度算出部36は、印刷ピッチ算出部35が算出した印刷ピッチPtの余弦とフィルタピッチFpxとを一致させるへッド26の回転角度αを算出する。図6には印刷ピッチPtと回転角度αとフィルタピッチFpxとの関係が示されている。印刷ピッチPtの余弦がフィルタピッチFpxと一致することは、次の関係式で表わされる。
Pt・cosα=Fpx …(1)
【0037】
(1)式より下式が導かれる。
α=cos−1(Fpx/Pt) …(2)
【0038】
回転角度算出部36は(2)式によりヘッドの回転角度αを算出し、回転機構19および制御部4へ出力する。本実施例の場合、α=13.92°となる。ノズルピッチNp=169μmのワンパス式インクジェット印刷器の場合、α=43.3°であり、従来よりも回転角度が格段に低減している。
【0039】
さらに、本実施例ではグレースケールヘッドを用いているので、ノズル27からの1回のインクの吐出量を複数段階に調節することができる。すなわち、1個のドット領域上に位置する1個のノズル27から複数のドット領域に拡散するインク量を塗布することができる。これを実現するために、印刷パターン設定部7はフィルタピッチFpxの大きさに対応してたとえば図8〜図10に示されるような印刷パターンを設定する。これらの印刷パターンは、メモリ39に予め複数種類記憶されている。図8〜図10は、5dot×5dotで構成される印刷パターンPp〜Ppを示すパターン図である。吐出領域46を中心に吐出されたインクが塗布領域47へ拡がる。印刷パターン設定部7はメモリ39とパターン設定部40とを有しマイクロプロセッサとメモリとで構成されるが、制御部4のCPUの一部であってもよい。
【0040】
パターン設定部40は、メモリ39からフィルタピッチFpxの大きさに対応する印刷パターンPpを読み出して設定する。印刷パターンPpが複数ある場合は、複数の印刷パターンPpの中からランダムに1つのパターンを選択して設定する。Y方向において1行目に配置されるフィルタに対して各印刷パターンが設定されるので、2行目以降に関しては1行目と同様の印刷パターンを設定すればよい。
【0041】
3.フィルタ製造
次に、図11を参照して上述したフィルタ製造装置1を用いたフィルタ製造を説明する。図11はフィルタ製造の流れを示すフローチャートである。
【0042】
まず、操作者は、入力部6に製造するフィルタのX方向のピッチFpxおよびY方向のピッチFpyを入力する。入力されたデータは制御部4を介してヘッド回転角度算出部5へ送られる。ヘッド回転角度算出部5内の印刷ピッチ算出部35にて、X方向における、最小印刷ピッチPmの整数倍の印刷ピッチであって、X方向のフィルタピッチFpxとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチFpxよりも大きい印刷ピッチPtを算出する(ステップS1)。次に、回転角度算出部36が、ステップS1で算出された印刷ピッチPtの余弦とフィルタピッチFpxとを一致させるへッド26の回転角度αを算出する(ステップS2)。
【0043】
回転機構19は、図12に示すように、ヘッド26を初期位置からステップS2で算出された回転角度α回転させる(ステップS3)。吐出部21は、制御部4によりフィルタピッチFpxに合わせて吐出部21の走査スピードおよびインクの吐出スピードを調節されて吐出部移動機構23によりX方向に走査され(ステップS4)、基材91へフィルタピッチFpxでフィルタを印刷製造する。図7に角度α回転されたヘッド26とフィルタピッチとの関係が示されている。本実施例では3色のカラーフィルタをX方向に順に印刷する。Rのインクを吐出するヘッド26は、1回目の走査によりノズルPa1からインクを吐出し、8回目の走査によりノズルPh2からインクを吐出する。Gのインクを吐出するヘッド26は6回目の走査によりノズルPf1からインクを吐出し、5回目の走査によりノズルPe3からインクを吐出する。Bのインクを吐出するヘッド26は3回目の走査によりノズルPc2からインクを吐出する。このインクの吐出タイミングの制御は、制御部4が入力される印刷ピッチPtと回転角度αとを基に実施する。また、基材91へのインクの吐出は、メモリ30に記憶されている印刷パターンPpから印刷パターン設定部31が最適な印刷パターンPpを設定し、この印刷パターンPpを基に実施される。たとえば、フィルタピッチFpxと合致するノズル27と印刷パターンPpのX方向における中心とを合わせて印刷する。なお、本実施例において印刷物の搬送方向と垂直な方向(ノズル列方向)の印刷方法のみを説明したが、印刷物搬送方向のフィルターピッチは、ヘッドの駆動周波数に合わせて印刷物搬送スピードを調節することにより、決められたピッチで印刷することが可能である。
【0044】
上述したフィルタ製造装置およびフィルタ製造方法によれば、マルチパス方式のインクジェット印刷を用いたフィルタ製造装置であるので、ノズルピッチよりも高分解能で印刷することができる。最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出することで、フィルタピッチと最もズレが小さい印刷ピッチが求まる。このズレ量がゼロとなるように、ヘッドを回転させる回転角度を算出する。算出された回転角度の分だけヘッドを回転し、ヘッドをX方向に走査させることで、印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させてフィルタを製造することができる。
【0045】
この構成によれば、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチとフィルタピッチとの差が最小となる印刷ピッチとフィルタピッチとのズレ量分だけをヘッドを回転させることで印刷ピッチとフィルタピッチとを一致させているので、ヘッドの回転量を低減することができる。また、印刷物によって異なるフィルタピッチに対しても適切に印刷ピッチを調節することができるので、様々なフィルタピッチに対応することができる。
【0046】
また、フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出されるので、最小印刷ピッチを越えてインク量を吐出することができ、吐出回数を減らすことができる。また、印刷パターンとしてその印刷パターンにおける対角線上に吐出ドット領域を有するので、吐出されたインクを効率良く拡散することができる。
【0047】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0048】
(1)上述した実施例では、ヘッド解像度が1200dpiであったがこれに限らず、これよりも低い解像度でもよいし、高い解像度でもよい。高い解像度であればあるほど、フィルタピッチFpと印刷ピッチPtとのズレを小さくすることができる。たとえば、同色のインクのヘッドをY方向に2段構成とすることで、さらにヘッド解像度を向上することができる。
【0049】
(2)上述した実施例では、ヘッド回転角度算出部5の算出する回転角度に基づいてヘッド26を回転させていたがこれに限らず、吐出部21の本体25を回転させてもよい。この場合、吐出部21は傾いた状態でX方向を走査する。
【符号の説明】
【0050】
1 … フィルタ製造装置
19… 吐出部回転機構
26 … ヘッド
35 … 印刷ピッチ算出部
36 … 回転角度算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルピッチより高解像度で印刷可能なマルチパス方式のインクジェット印刷によりフィルタを製造するフィルタ製造装置において、
予め定められたノズルピッチでノズルが配置されているヘッドと、
印刷物の搬送方向と垂直な方向において、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出する印刷ピッチ算出部と、
前記印刷ピッチ算出部により算出された印刷ピッチの余弦と前記フィルタピッチとを一致させる前記ヘッドの回転角度を算出する回転角度算出部と、
前記ヘッドを前記回転角度回転させる回転機構と
を備えるフィルタ製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ製造装置において、
前記フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出される
フィルタ製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタ製造装置において、
前記印刷パターンは、その対角線上に吐出ドット領域を有する
フィルタ製造装置。
【請求項4】
ノズルピッチより高解像度で印刷可能なマルチパス方式のインクジェット印刷によりフィルタを製造するフィルタ製造方法において、
印刷物の搬送方向と垂直な方向において、最小印刷ピッチの整数倍の印刷ピッチであって、フィルタピッチとの差が最小であり、かつ、フィルタピッチよりも大きい印刷ピッチを算出する印刷ピッチ算出ステップと、
前記印刷ピッチステップにより算出された印刷ピッチの余弦と前記フィルタピッチとを一致させるヘッドの回転角度を算出する回転角度算出ステップと、
前記ヘッドを前記回転角度回転させる回転ステップと
を備えるフィルタ製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルタ製造方法において、
前記フィルタピッチに対応する予め定められた印刷パターンに基づいてインクが吐出される
フィルタ製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルタ製造方法において、
前記印刷パターンは、その対角線上に吐出ドット領域を有する
フィルタ製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−215654(P2012−215654A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79627(P2011−79627)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】