説明

フィルタ

【課題】部品数が少なく、管理を簡素化することができるとともに、組み立てを容易に行うことができるフィルタを提供する。
【解決手段】フィルタ21は、襞折りされた濾過部22と、その濾過部22の襞幅方向D1の両側に設けられた端板23A,23Bとより構成する。端板23A,23Bは、濾過部22の襞列設方向D2の端部22aから連結部29を介して延設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用空調装置において空調エア濾過のために用いられるフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタとしては、例えば襞折りされた濾過部の襞幅方向の両側に、一対の細長平板状の端板を貼り付けた構成が知られている。しかしながら、この従来構成においては、濾過部と一対の細長平板状の端板とが必要になる。そのため、部品数が多くなって、組み立てが面倒になったり、部品管理に手間がかかったりするという問題があった。
【0003】
このような問題に対応するため、例えば、特許文献1に開示されるような構成も従来から提案されている。この従来構成では、襞折りされた濾過部における襞幅方向の両側に、端板を構成する複数の端片が一体に突出形成されている。そして、これらの各端片が折り曲げられて、接着剤等を用いて重ねた状態で接合されることにより、各襞折り部の両側縁が閉鎖される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1に記載の従来構成においては、襞部ごとに突出形成された端片を各別に折り曲げたり、接着したりする必要がある。このため、組み立てがきわめて煩雑になるものであった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、部品数が少なくなるとともに、組み立てを容易に行うことができるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、襞折りされた濾過部と、その濾過部の襞幅方向の両側に立設して固着された端板とよりなるフィルタにおいて、前記端板を前記濾過部の襞列設方向における少なくとも一方の端部から連結部を介して延設したことを特徴としている。
【0008】
従って、この発明のフィルタにおいては、濾過部と、一対の端板とを別々に形成する必要がなく、濾過部と端板とを1つの部材で構成することができる。よって、部品数が少なくなって、部品管理を容易化することができるとともに、組み立てを簡単に行うことができる。
【0009】
前記の構成において、前記端板を濾過部の襞列設方向の両端部から襞幅方向の両側に沿って延設するとよい。
前記の構成において、前記端板を、濾過部を取り巻くように延設するとよい。
【0010】
前記の構成において、前記濾過部と端板とを熱溶着するとよい。
前記の構成において、前記端板の剛性を前記濾過部の剛性より高くするとよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、部品数が少なくなって、組み立てを容易に行うことができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のフィルタを示す斜視図。
【図2】(a)及び(b)は図1のフィルタの製造方法を順に示す斜視図。
【図3】第2実施形態のフィルタを示す斜視図。
【図4】(a)及び(b)は図3のフィルタの製造方法を順に示す斜視図。
【図5】第3実施形態のフィルタを示す斜視図。
【図6】(a)及び(b)は図5のフィルタの製造方法を順に示す斜視図。
【図7】第1実施形態のフィルタの変形例を展開状態で示す斜視図。
【図8】第2実施形態のフィルタの変形例を展開状態で示す斜視図。
【図9】第1実施形態のフィルタの別の変形例を展開状態で示す斜視図。
【図10】第2実施形態のフィルタの別の変形例を展開状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したフィルタの第1実施形態を、図1及び図2に従って説明する。
【0014】
図1に示すように、この実施形態のポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の不織布よりなるフィルタ21は、襞折りされた中央の濾過部22の襞幅方向D1の両側に一対の細長平板状の端板23A,23Bを立設して固着している。濾過部22の襞幅方向D1の中間部には、形状保持板24が固定されている。図2(a)(b)に示すように、端板23A,23Bは、濾過部22の襞列設方向D2の一端部22aから連結部29を介して襞幅方向D1の両側に沿って延設され、その襞幅方向D1の両側縁に対して熱溶着により固定されている。形状保持板24は、その鋸歯状の凹凸部24aを濾過部22の各襞に係合させている。この端板23A,23B及び形状保持板24によって、濾過部22の襞形状が保持されている。なお、濾過部22の一端部22aは、襞形状ではなく、平板状をなしている。
【0015】
図2(a)に示すように、前記フィルタ21の濾過部22、端板23A,23B及び形状保持板24は、メルトブロー方式にて成形された不織布よりなる長尺状の濾材シート25を、所要形状に裁断することによって形成されている。この場合、濾過部22は濾材シート25の幅方向の中間部に形成されるとともに、一対の端板23A,23Bは濾過部22の両側に形成される。また、形状保持板24は一方の端板23Aの延長上に形成された後に分断される。
【0016】
前記濾材シート25は、その幅方向の両側部分25aが中央部分25bに比較して、高剛性で低融点となるように形成されている。これは、濾材シート25をメルトブロー方式にて成形する際に、幅方向の両側部分25aを中央部分25bより、繊維の目付量を多くしたり、あるいは繊維を太くしたりすることによって高剛性が実現されている。また、両側部分25aの繊維の分子量を中央部分25bの繊維の分子量に対して変化させることにより両側部分の低融点が実現されている。そして、この濾材シート25からフィルタ21の各部を形成することにより、両端板23A,23B及び形状保持板24の部分が濾過部22の大部分の領域よりも高剛性で低融点となるように構成されている。
【0017】
次に、前記のような構成のフィルタ21の組み立て方法について説明する。
第1工程においては、図2(a)に示すように、濾材シート25が所要形状に裁断されることにより、フィルタ21の濾過部22、端板23A,23B及び形状保持板24が展開状態で形成される。次の第2工程では、図2(a)に示す状態から形状保持板24が切り離されるとともに、図2(b)に示すように、濾過部22が一端部22aを残して複数の山折り線26及び谷折り線27において襞折りされる。
【0018】
続く第3工程においては、両端板23A,23Bが同端板23A,23Bと濾過部22の一端部22aとの間の連結部29の谷折り線28に沿って直角に折り曲げられて、濾過部22の襞幅方向D1の両側縁に接近配置される。そして、この両端板23A,23Bが濾過部22の襞幅方向D1の両側縁に対して、熱溶着により固定される。この場合、両端板23A,23Bが濾過部22よりも高剛性となるように構成されているため、濾過部22の襞幅方向D1の両側縁が高剛性の端板23A,23Bにより襞折り状態に適切に形状保持される。また、両端板23A,23Bが濾過部22よりも低融点となるように構成されているため、溶着が有効に行われる。
【0019】
さらに、図1に示すように、必要に応じて濾過部22の襞幅方向D1の中間部に形状保持板24が取り付けられて熱溶着されることにより、濾過部22の中間部が襞折り状態に形状保持される。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このフィルタにおいては、襞折りされた濾過部22の襞幅方向D1の両側に設けられる端板23A,23Bが、濾過部22の襞列設方向D2の端部22aから連結部29を介して延設されている。このため、襞折り状の濾過部22と、その両側に設けられる一対の端板23A,23Bとを別々に形成する必要がなく、濾過部22と端板23A,23Bとを1つの部材で構成することができる。よって、部品数が少なくなって、部品管理が容易になる。また、前記のように、端板23A,23Bが濾過部22の襞列設方向D2の端部22aから連結部29を介して延設されているため、構造が簡単であるとともに、組み立てを容易に行うことができる。
【0021】
(2) このフィルタにおいては、一対の端板23A,23Bが濾過部22の襞列設方向D2の端部22aから、襞幅方向D1の両側に沿って延設されている。このため、濾過部22を襞折りするとともに、一対の端板23A,23Bを濾過部22の襞幅方向D1の両側縁と対応する位置に折り曲げて、その両側縁に固定することにより、フィルタ21を容易に組み立てることができる。
【0022】
(3) このフィルタにおいては、濾過部22と端板23A,23Bとが熱溶着により固定されている。このため、接着剤を用いることなく、端板23A,23Bを濾過部22の両側縁に対して容易に固定することができる。
【0023】
(4) このフィルタにおいては、端板23A,23Bの部分が濾過部22の部分よりも剛性の高い材料で形成されている。このため、高剛性の端板23A,23Bにより、濾過部22を襞折り状態に適切に形状保持することができる。
【0024】
(5) このフィルタにおいては、端板23A,23Bの部分が濾過部22の部分よりも融点の低い材料で形成されている。このため、濾過部22と端板23A,23Bとの熱溶着が適切に行なわれる。
【0025】
(6) このフィルタにおいては、端板23Aまたは23Bと一体に形成される部分を利用して形状保持板24を形成し、その形状保持板24により、濾過部22の中央部の襞の形状保持をするようにした。このため、部品数を増やすことなく、濾過部22の襞を適切に形状保持できる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0027】
さて、この第2実施形態においては、図3に示すように、両端板23A,23Bの縁部に沿って鋸歯状の凹凸部23aが形成されている。そして、この端板23A,23Bの凹凸部23aが濾過部22の襞幅方向D1の両側において襞部に係合された状態で、両端板23A,23Bが濾過部22に対して熱溶着により固定されている。
【0028】
よって、この第2実施形態においても、前記第1実施形態の場合と同様な方法により、フィルタ21を製造することができる。すなわち、図4(a)に示すように、フィルタ21の濾過部22及びその濾過部22と連結部29を介した端板23A,23B、さらに形状保持板24を展開状態で形成する。その後、図4(b)に示すように、濾過部22を襞折りし、端板23A,23Bを折り曲げて濾過部22の襞幅方向D1の両側の襞部に係合させるとともに、その係合状態で熱溶着することにより、フィルタ21が製造される。
【0029】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(6)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
さて、この第3実施形態においては、図5及び図6に示すように、1枚の端板23が濾過部22の襞列設方向D2の一端部22aから、連結部29を介して延設されて、襞幅方向D1の一側,襞列設方向D2の他端部22b及び襞幅方向D1の他側を取り巻いている。すなわち、端板23には、濾過部22の襞幅方向D1の一側に対応する第1包囲部31A、襞列設方向D2の他端部22bに対応する第2包囲部31B、及び襞幅方向D1の他側に対応する第3包囲部31Cが設けられている。第1包囲部31A及び第3包囲部31Cの縁部には、濾過部22の襞部に係合可能な鋸歯状の凹凸部23aが形成されている。
【0031】
そして、この第3実施形態のフィルタ21の製造時には、図6(a)に示すように、濾材シート25から濾過部22及び端板23が展開状態で形成される。その後、図6(b)に示すように、濾過部22が複数の山折り線26及び谷折り線27において襞折りされるとともに、端板23が濾過部22の一端部22aとの間の連結部29の谷折り線28に沿って直角に折り曲げられる。続いて、端板23が第1包囲部31Aと第2包囲部31Bとの間の谷折り線32、及び第2包囲部31Bと第3包囲部31Cとの間の谷折り線33に沿って直角に折り曲げられる。
【0032】
以上の折り曲げによって、端板23の各包囲部31A〜31Cが濾過部22の襞幅方向D1の両側及び襞列設方向D2の他端部22bを取り巻くように配置される。このとき、端板23における第1包囲部31A及び第3包囲部31Cの下端縁の凹凸部23aが、濾過部22の襞幅方向D1の両側において襞部に係合される。そして、この状態で端板23の各包囲部31A〜31Cが濾過部22の対応部分に対して熱溶着によって固定されることにより、図5に示すように、フィルタ21が製造される。
【0033】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(3)〜(6)に記載の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
(7) このフィルタにおいては、端板23が濾材シート25に一側のみに形成されている。従って、濾材シート25の幅を狭くすることができ、材料の節約が可能となる。
【0034】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図7に示すように、一対の端板23A,23Bのうちで、一方の端板23Aを濾過部22の襞列設方向D2の一端部22aから延設させるとともに、他方の端板23Bを濾過部22の襞列設方向D2の他端部22bから延設させること。
【0035】
・ 図8に示すように、凹凸部23aが形成された一方の端板23Aを濾過部22の襞列設方向D2の一端部22aから延設させるとともに、同じく凹凸部23aが形成された他方の端板23Bを濾過部22の襞列設方向D2の他端部22bから延設させること。
【0036】
・ 図9及び図10に示すように、一対の端板23A,23Bの先端に折り返し部34A,34Bを延長形成し、端板23A,23Bを谷折り線28に沿って矢印方向に折り曲げるとともに、折り返し部34A,34Bを端板23A,23Bとの間の山折り線35に沿って折り返すように構成すること。折り返し部34A,34Bは端板23A,23Bに熱溶着される。このように構成した場合には、端板23A,23Bが折り返し部34A,34Bにより二重構造となって、剛性が高められる。よって、第1実施形態の場合とは異なり、濾材シート25の幅方向の両側部に高剛性の部分を設ける必要がなくなる。
【0037】
・ 図5に2点鎖線で示すように、前記第3実施形態において、端板23の先端に第4包囲部31Dを延長形成し、この第4包囲部31Dを含む4つの包囲部31A〜31Dにより、濾過部22の襞幅方向D1の両側及び襞列設方向D2の両端部22a,22bを包囲するように構成すること。
【0038】
・ 前記各実施形態において、濾過部22と端板23,23A,23Bとを接着剤により固定するように構成すること。
・ 前記図9及び図10に示す実施形態では、端板23A,23Bを二重構造としたが、三重以上の構造とすること。
【0039】
・ 前記各実施形態における形状保持板24を設けないこと。
・ 端板23の部分の剛性を濾過部22の剛性と等しくすること。
・ 端板23の部分を複数層にメルトブローして剛性を向上させること。
【0040】
・ 前記第1〜第3実施形態において、低融点の樹脂を用いないようにすること。
【符号の説明】
【0041】
21…フィルタ、22…濾過部、22a…一端部、22b…他端部、23,23A,23B…端板、25…濾材シート、29…連結部、31A〜31D…包囲部、D1…襞幅方向、D2…襞列設方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
襞折りされた濾過部と、その濾過部の襞幅方向の両側に立設して固着された端板とよりなるフィルタにおいて、
前記端板を前記濾過部の襞列設方向における少なくとも一方の端部から連結部を介して延設したことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記端板を濾過部の襞列設方向の両端部から襞幅方向の両側に沿って延設したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記端板を、濾過部を取り巻くように延設したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記濾過部と端板とを熱溶着したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記端板の剛性を前記濾過部の剛性より高くしたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−110848(P2012−110848A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262658(P2010−262658)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】