説明

フィルムコーティング方法

【課題】吸湿性物質を配合した錠剤を、水系または水−有機溶媒系の溶媒を用いたフィルムコーティング液により1段階でフィルムコーティングできる方法およびその方法により得られるコーティング錠を提供する。
【解決手段】吸湿性物質が配合された錠剤にフィルムコーティングを施す際に、錠剤の平衡相対湿度を30%相対湿度以下に保ち、かつコーティング液の液滴径を30μm以下としてフィルムコーティング行なうことにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性物質が配合された錠剤のフィルムコーティング方法およびその方法により得られるコーティング錠に関するものである。
さらに詳しくは、本発明は、吸湿性物質が配合された錠剤の水系または水−有機溶媒系のフィルムコーティング液によるフィルムコーティング方法およびその方法により得られるコーティング錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、錠剤に吸湿性物質が配合されている場合には、被膜物質を有機溶媒中に溶解もしくは懸濁したフィルムコーティング液を用いてフィルムコーティングを行ない、フィルムコーティング作業中に錠剤同士が接着(スティッキング)したり、表面に引っかき傷(ピッキング)が発生したりすることを抑制している。
一方、フィルムコーティング液に水系または水−有機溶媒系の溶媒を使用すると、有機溶媒の量を削減できて、製造コストを抑えることができる。
【0003】
ところが、錠剤に吸湿性がある場合、被膜物質を水系または水−有機溶媒系の溶媒に溶解もしくは懸濁したフィルムコーティング液を用いてフィルムコーティングを行なうと、フィルムコーティング中に錠剤が吸湿して平衡相対湿度(ERH)が高くなることによって、経時的に着色が進行したり、薬物の含量が低下したりすることが多い。
【0004】
したがって、例えば、特許文献1では、水を溶媒として用いるために、フィルムコーティング層を2層以上施し、1層目に有機溶媒のみを用いたフィルムコーティング層を設けることによって、2層目以降に水を溶媒としたコーティング液を用いても、得られる錠剤の経時的な着色変化を抑制できるようにしている。
この方法によれば、水系の溶媒を使用できる反面、2段階以上のコーティングを行なわなければならず、製造コストを抑えることができない。
【特許文献1】特開2006−342126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、吸湿性物質を配合した錠剤であっても、変色を伴わないで、水系または水−有機溶媒系の溶媒を用いたフィルムコーティング液により1段階でフィルムコーティングできる方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、錠剤に吸湿性物質が配合されていても、フィルムコーティング中の錠剤の平衡相対湿度(ERH)を30%相対湿度(RH)以下に保ち、かつフィルムコーティング液の液滴径を30μm以下に設定することにより、水系または水−有機溶媒系の溶媒を用いたフィルムコーティング液を使用して1段階でコーティングしても、スティッキングやピッキングの障害を伴わないで、しかも着色が経時的に進行したり薬物の含量が低下したりしないフィルムコーティング錠が得られることをことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、吸湿性物質が配合された錠剤にフィルムコーティングを施す際に、錠剤のERHを30%RH以下に保ち、かつコーティング液の液滴径が30μm以下とするフィルムコーティング方法、および該方法により得られるコーティング錠が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、錠剤に吸湿性物質が配合されている場合に、水系または水−有機溶媒系の溶媒を用いたフィルムコーティング液により1段階でフィルムコーティングを行なっても、スティッキングやピッキングの障害を伴わず、しかも着色が経時的に進行したり薬物の含量が低下したりしないフィルムコーティング錠が得られるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、吸湿性物質とは、25℃-60%RH開放の条件下で24時間放置したとき、水分増加率が5質量%以上の物質をいう。ここで、水分増加率=((吸湿後の質量−吸湿前の質量)/吸湿前の質量)×100である。
【0010】
本発明におけるフィルムコーティングは、セルロース系、アクリル系もしくはビニル系のポリマーによるコーティングおよび糖もしくは糖アルコールによるコーティング、ならびに上記ポリマーと糖もしくは糖アルコールによるコーティングを含む。
【0011】
本発明における「錠剤」とは、フィルムコーティングが施されるべき錠剤をいう。
本発明の錠剤に含まれる吸湿性物質としては、アカルボース、コンドロイチン硫酸またはその塩(例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム)、銅クロロフィリンナトリウム、ダイオウ、ショウキョウ等の生薬類、バルプロ酸ナトリウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0012】
本発明における錠剤は、上記のような薬理活性成分のほかに、錠剤の製法に通常用いられるその他の成分を含んでなる。その他の成分としては、クロスポビドン、クロスカルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロース、イオン交換樹脂、寒天、軽質無水ケイ酸などの崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびアルファー化デンプン等の高分子ポリマーが挙げられる。
本発明の錠剤中の吸湿性物質の配合割合は、錠剤の1〜90質量%であり、通常、20〜70質量%である。
【0013】
コーティング液中に配合されるセルロース系のポリマーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。これらのうちヒドロキシプロピルセルロースを配合したフィルムコーティング用組成物としては、例えば、HA「三共」(MFCライフテック株式会社)が挙げられる。
【0014】
コーティング液中に配合されるアクリル系のポリマーとしては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーエマルジョン等が挙げられる。
【0015】
コーティング液中に配合されるビニル系のポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを配合したフィルムコーティング用組成物としては、例えばOPA DRY AMBやOPA DRY II(日本カラコン)が挙げられ、ポリビニルアルコールグラフトコポリマーを配合したフィルムコーティング用組成物としては、例えばコリコートIR(BASF)やPOVACOAT(日新化成)が挙げられる。
【0016】
コーティング液中に配合される糖としては、乳糖、ショ糖(白糖、精製白糖)、ブドウ糖、果糖等が挙げられる。
コーティング液中に配合される糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース等が挙げられる。
【0017】
コーティング液中のポリマーおよび/または糖もしくは糖アルコールの配合割合、すなわち、ポリマー、糖もしくは糖アルコール、またはポリマーと糖もしくは糖アルコールとの配合割合は、通常、1〜90質量%であり、好ましくは3〜80質量%である。
【0018】
本発明のフィルムコーティングは、1層で十分であるが、2層以上のコーティングを施してもよい。
【0019】
本発明のフィルムコーティング液は、前記のようなポリマー、糖および糖アルコールの他に、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ポリソルベート80、アラビアゴム、プルラン、沈降炭酸カルシウム、大豆レシチン等をさらに含んでいてもよい。
【0020】
ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200、300、400、600、1000、1500、1540、4000、6000、20000、35000等が挙げられるが、これらの中でもポリエチレングリコール6000が特に好ましい。
【0021】
本発明のフィルムコーティング液は、着色剤として、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、水溶性食用タール色素(例えば、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号)、水不溶性レーキ色素(上記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩等)、天然色素(例えば、β-カロチン、クロロフィル等)等をさらに含んでいてもよい。
また、香料として、レモン油、オレンジ、dl-またはl-メントール等を含んでいてもよい。
【0022】
フィルムコーティング液の溶媒としては、水、または水と有機溶媒との混液が用いられる。
上記の有機溶媒としては、水に混和性の有機溶媒、すなわち、使用される量の水と均一に混和し得る有機溶媒が挙げられ、それらの中でも、エタノールが特に好ましい。
【0023】
本発明のフィルムコーティング方法は、コーティング液の液滴径が30μm以下で行なわれる。液滴径が30μmより大きいと、コーティング液が錠剤表面の局部にかかり、スティッキングやピッキングの原因となりやすく、しかも錠剤のERHが上昇して、得られるフィルムコーティング錠が経時的に変色したり、薬物の含量が低下したりする原因となりやすい。
【0024】
コーティング液の液滴径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(LDSA-2400A型、東日コンピューターアプリケーションズ)を用いたレーザー回折法により測定することができる。例えば、フィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-200、パウレック)を用いて、後記の表8に示すコーティング液の噴霧速度を3g/分とし、内径0.8mmのノズルチップ(キャップ開度1)で噴霧圧を1.5kg/cm2としたとき、平均液滴径が21μmとなる。一般に、平均液滴径は噴霧圧により調節することができ、噴霧圧を高くすると平均液滴径は小さくなる。
【0025】
また、コーティング中の錠剤のERHが30%RH以上になると、スティッキングやピッキングの原因となりやすく、また得られるフィルムコーティング錠が経時的に変色したり、薬物の含量が低下したりする原因となりやすい。
【0026】
コーティング中の錠剤のERHは、水分活性測定装置(Novasina AW SPRINT、日本シイベルヘグナー)を用いて測定することができる。例えば、フィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-200、パウレック)を用いて、給気温度85℃、風量40m3/時で、後記の表8に示すコーティング液の噴霧速度を3g/分としたとき、ERHは30%RH以下となる。一般に、ERHは給気温度と風量とコーティング液の噴霧速度の少なくとも一つにより調節することができ、給気温度を高くするか、風量を多くするか、またはコーティング液の噴霧速度を遅くするかの少なくとも一つによりERHは低くなる。
【0027】
フィルムコーティングの方法は、特に限定されず、それ自体公知のコーティング方法、例えば、パンコーティング法、流動コーティング法等で行なうことができる。
コーティング量は、錠剤100質量部に対して、2〜20質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0029】
測定方法
錠剤の硬度:硬度計(PTP 311E、ジャパンマシナリー)を用いて測定した。
ERH:水分活性測定装置(Novasina AW SPRINT、日本シイベルヘグナー)を用いて測定した。
コーティング液の液滴径の測定:レーザー回折式粒度分布測定装置(LDSA-2400A型、東日コンピューターアプリケーションズ)を用いて測定した。
【0030】
製造例1
コンドロイチン硫酸ナトリウム、塩酸グルコサミンおよび結晶セルロースを42メッシュの篩で篩過後、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック)に投入し、ポリビニルアルコール10%水溶液を噴霧して造粒した。得られた顆粒とクロスカルメロースナトリウム、結晶セルロースをV型混合機(Vl-10、徳工作所)で10分間混合した後、さらにステアリン酸マグネシウムを投入して2分間混合し、得られた打錠末を打錠機(VIRGO、菊水製作所)で打錠した。
錠剤の処方を表1に示す。部は質量部を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例1
上記で得られた錠剤(直径9.5mm、質量400mg、硬度50N)をフィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-500、パウレック)に投入し、錠剤のERHを30%RH以下に保ち、ポリビニルアルコールを配合したフィルムコーティング剤OPA DRY AMB(日本カラコン)の15%水溶液を用いて、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下にし、1錠当たりのコーティング量が20mgに達するまでフィルムコーティングを行なった。
【0033】
比較例1
コーティング液の平均液滴径が約50μmで行なった以外は、実施例1と同様に行なった。
【0034】
結果
得られたフィルムコーティング錠の表面を目視で観察し、表2に従ってスティッキングおよびピッキングの発生度合を評価した。
【表2】

【0035】
結果を表3に示す。
【表3】

【0036】
上記の結果から明らかなように、錠剤のERHを30%RH以下に保ち、フィルムコーティング液の平均液滴径を約20μm以下でフィルムコーティングすると、錠剤中に吸湿性の高いコンドロイチン硫酸ナトリウムが配合されていても、スティッキングやピッキングが発生しなかった。
【0037】
製造例2
コンドロイチン硫酸ナトリウム、塩酸グルコサミンおよび結晶セルロースを42メッシュの篩で篩過後、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック)に投入し、ポリビニルアルコール10%水溶液を噴霧して造粒した。得られた顆粒とクロスカルメロースナトリウム、結晶セルロースをV型混合機(Vl-10、徳工作所)で10分間混合した後、さらにステアリン酸マグネシウムを投入して2分間混合し、得られた打錠末を打錠機(VIRGO、菊水製作所)で打錠した。
錠剤の処方を表4に示す。部は質量部を示す。
【0038】
【表4】

【0039】
実施例2
得られた錠剤(直径9.5mm、質量400mg、硬度50N)をフィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-500、パウレック)に投入し、錠剤のERHを30%RH以下に保ち、ポリビニルアルコールを配合したフィルムコーティング剤OPA DRY AMB(日本カラコン)の15%水溶液を用いて、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下にして、1錠当たりのコーティング量が20mgに達するまでフィルムコーティングを行なった。
【0040】
比較例2
錠剤のERHが約50%RHで行なった以外は、実施例2と同様に行なった。
【0041】
結果
得られたフィルムコーティング錠の表面を目視で観察し、前記と同様にしてスティッキングおよびピッキングの発生度合を評価した。結果を表5に示す。
【表5】

【0042】
上記の結果から明らかなように、フィルムコーティング液の平均液滴径を約20μm以下とし、かつ錠剤のERHを30%RH以下に保ってフィルムコーティングすると、錠剤中に吸湿性の高いコンドロイチン硫酸ナトリウムが配合されていても、スティッキングやピッキングが発生しなかった。
【0043】
製造例3
アカルボース、トウモロコシデンプン、結晶セルロースおよび軽質無水ケイ酸を42メッシュの篩で篩過後、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック)に投入し、精製水を噴霧して造粒した。得られた顆粒とステアリン酸マグネシウムをV型混合機(VB-S、日和混合機工業)で5分間混合し、得られた打錠末を打錠機(VIRGO、菊水製作所)で打錠した。
錠剤の処方を表6に示す。部は質量部を示す。
【0044】
【表6】

【0045】
実施例3
上記で得られた錠剤(直径9.0mm、質量250mg、硬度60N)をフィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-200、パウレック)に投入し、精製白糖を配合したシロップ処方(表7)を用いて、錠剤のERHを約10%RH以下に保ち、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下にして、1錠当たりのコーティング量が10mgに達するまでフィルムコーティングを行なった後に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合した処方(表8)で、上記と同様に錠剤のERHを約10%RH以下に保ち、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下にして、1錠当たりのコーティング量が5mgに達するまでフィルムコーティングを行なった。表7および8中の部は質量部を示す。
【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
比較例3
錠剤のERHが約50%RHで行なった以外は、実施例3と同様に行なった。
【0049】
結果
フィルムコーティング前の錠剤および得られたフィルムコーティング錠を60℃密栓の条件で1週間保存し、表9の基準にしたがって外観変化を評価した。
【表9】

【0050】
結果を表10に示す。
【表10】

【0051】
上記の結果から明らかなように、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下とし、錠剤のERHを約10%RH以下に保ってコーティングすると、錠剤中に吸湿性の高いアカルボースが配合されていても、得られたコーティング錠に経時的な着色が発生しなかった。
【0052】
実施例4
製造例3で得られた錠剤(直径9.0mm、質量250mg、硬度60N)をフィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-200、パウレック)に投入し、錠剤のERHを約20%RH以下に保ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび精製白糖を配合したフィルムコーティング処方(表11)を用いて、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下にして、1錠当たりのコーティング量が15mgに達するまでフィルムコーティングを行なった。表11中の部は質量部を示す。
【0053】
【表11】

比較例4
錠剤のERHが約50%RHで行なった以外は、実施例4と同様に行なった。
【0054】
結果
フィルムコーティング前の錠剤および得られたフィルムコーティング錠を60℃密栓の条件で1週間保存し、前記の表9の基準にしたがって外観変化を評価した。結果を表12に示す。
【表12】

【0055】
上記の結果から明らかなように、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下とし、錠剤のERHを約20%RH以下に保ってフィルムコーティングすると、錠剤中に吸湿性の高いアカルボースが配合されていても、得られたコーティング錠に経時的な着色が発生しなかった。
【0056】
実施例5
製造例3で得られた錠剤(直径9.0mm、質量250mg、硬度60N)をフィルムコーティング機・ドリアコーター(DRC-200、パウレック)に投入し、錠剤のERHを約10%RH以下に保ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したフィルムコーティング処方(実施例3中の表8)を用いて、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下にして、1錠当たりのコーティング量が15mgに達するまでフィルムコーティングを行なった。
【0057】
結果
フィルムコーティング前の錠剤および得られたフィルムコーティング錠を60℃密栓の条件で1週間保存ならびに錠剤自動包装機によりポリラミネートセロファン紙で1包化を行なった状態で25℃-75%RH開放の条件で4週間保存し、前記の表9の基準にしたがって外観変化を評価した。結果を表13および14に示す。1包化後の錠剤については、錠剤表面の状態(べた付きあり:+、べた付きなし:−)についても評価し、その結果も合わせて表14に示す。
【0058】
【表13】

【0059】
【表14】

【0060】
上記の結果から明らかなように、コーティング液の平均液滴径を約20μm以下とし、錠剤のERHを約10%RH以下に保ってフィルムコーティングすると、錠剤中に吸湿性の高いアカルボースが配合されていても、得られたコーティング錠に経時的な着色が発生しなかった。
また、得られたフィルムコーティング錠は、1包化包装後25℃-75%RH、4週間後でも着色が発生せず、さらに、フィルムコーティング錠の表面にべた付きも発生しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性物質が配合された錠剤にフィルムコーティングを施す際の錠剤の平衡相対湿度が30%相対湿度以下であり、かつコーティング液の液滴径が30μm以下である、錠剤のフィルムコーティング方法。
【請求項2】
吸湿性物質の配合割合が錠剤の1〜90質量%である、請求項1に記載のフィルムコーティング方法。
【請求項3】
コーティング液の溶媒が水である、請求項1または2に記載のフィルムコーティング方法。
【請求項4】
コーティング液の溶媒が、有機溶媒をさらに含む、請求項3に記載のフィルムコーティング方法。
【請求項5】
有機溶媒がエタノールである、請求項4に記載のフィルムコーティング方法。
【請求項6】
コーティング液中に、セルロース系、アクリル系またはビニル系のポリマーが配合されている、請求項1〜5のいずれか一つに記載のフィルムコーティング方法。
【請求項7】
コーティング液中に、糖または糖アルコールが配合されている、請求項1〜6のいずれか一つに記載のフィルムコーティング方法。
【請求項8】
コーティング液中のポリマーおよび/または糖もしくは糖アルコールの配合割合が1〜90質量%である、請求項1〜7のいずれか一つに記載のフィルムコーティング方法。
【請求項9】
フィルムコーティング量が錠剤100質量部に対して2〜20質量部である、請求項1〜8のいずれか一つに記載のフィルムコーティング方法。
【請求項10】
吸湿性物質がアカルボースである、請求項1〜9のいずれか一つに記載のフィルムコーティング方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法でフィルムコーティングして得られるコーティング錠。

【公開番号】特開2009−23943(P2009−23943A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188413(P2007−188413)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000161965)京都薬品工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】