説明

フィルムコーティング錠

【課題】
口腔内崩壊錠としての特長を維持しつつ、薬剤の製造、運搬、保管、分包、調剤作業時等において、摩損や衝撃に対して安定な高い強度を有するフィルムコーティング錠の提供。
【解決手段】
ある一定以上の硬度を有し口腔内崩壊性を有する錠芯に水溶性高分子を含むフィルムコーティング層を施すことで、従来の口腔内崩壊錠としての特性を維持しつつ、摩損や衝撃に対して安定な高い強度を有したフィルムコーティング錠を得ることを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内崩壊性を有するフィルムコーティング錠に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎え、錠剤を嚥下するのが困難な高齢者の患者にも服用しやすい口腔内崩壊錠の開発が要望され、現在までに様々な口腔内崩壊錠が開発され市販されている。しかしながら、従来の口腔内崩壊錠は口腔内で速やかに崩壊するという特性上、製造時や流通時、医療現場における分包時や調剤時に、摩損し易い、又は割れ欠けが発生し易いという問題があった。また、製剤内に光に対して不安定な薬物を含む場合、薬物に直接コーティングする等の工程を要し、工程が複雑になることがあった。
【0003】
一方、薬剤の製剤として一般的に広く採用されているフィルムコーティング錠は、通常錠芯にフィルムコーティングを施すことにより、錠芯内の薬物の安定化、薬物の苦味等のマスキング、徐放性製剤としての機能付与等の工夫がされている。
【0004】
従来の口腔内崩壊錠は、その特性から水を含み易く、フィルムコーティングを施すことは考えられていなかった。すなわち、フィルムコーティング用の成分を含む水溶液等を吹き付ける際に、口腔内崩壊性の錠芯は物理的にその形を保持することが困難であると考えられていた。また、口腔内崩壊型製剤の錠剤全体をコーティングすると、速崩壊性が損なわれる旨の開示がある(特許文献1の段落番号0004)。あるいは、錠芯の膨張によってフィルムコーティング層にひび割れが発生する等が懸念されるために、これまでフィルムコーティングの試みがされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−273870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、口腔内崩壊錠としての特長を維持しつつ、薬剤の製造、運搬、保管、分包、調剤作業時等において、摩損や衝撃に対して安定な高い強度を有するフィルムコーティング錠の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、口腔内崩壊錠を錠芯としてフィルムコーティングすることは、錠芯の形状が容易に崩れる問題、フィルムコーティング層を被覆することによる口腔内における崩壊時間(以下、口腔内崩壊時間という)の遅延、錠芯の膨張によるフィルムコーティング層のひび割れ等が想定され、実現には解決すべき課題が多いと考えられていた。本発明者らは、鋭意検討を行った結果、口腔内崩壊錠にもフィルムコーティングすることが可能であることを見出した。特に高い硬度を有した口腔内崩壊性を有する錠芯に、水溶性高分子等を含有するフィルムコーティングを施すことにより、さらに錠剤の強度(摩損や衝撃に対する安定性)が高い製剤を製造できることを見出した。さらに驚くべきことに、このようにして得られた製剤は、ヒトの口腔内崩壊試験において60秒以内に崩壊するという通常の口腔内崩壊錠として利用可能な優れた性質を有していた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠を提供するものである。
[1]口腔内崩壊性を有する錠芯(以下、「錠芯」という)とフィルムコーティング層を含む口腔内崩壊性フィルムコーティング錠。
[2]錠芯の絶対硬度が1.5N/mm以上である項1に記載のフィルムコーティング錠。
[3]ヒトの口腔内崩壊試験において、口腔内崩壊時間が60秒以内である項1又は2に記載のフィルムコーティング錠。
[4]第十五改正日本薬局方の参考情報「錠剤の摩損度試験法」の記載に従い、試料錠剤20錠を用いた摩損度が0.4%以下である項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[5]底面が平面である直径30cmのステンレス製ビーカーを床面に置き、ビーカー底面から1.5mの高さから試料25錠をビーカー内に落下させるとき、割れた錠剤数及び0.5mm以上の欠けが発生した錠剤数の和を試料錠剤数で除した値の百分率で表す落下時欠損度が35%以下である項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[6]口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の口腔内崩壊時間と錠芯の口腔内崩壊時間との差が40秒以内である項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[7]絶対硬度が2.5N/mm以上である項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[8]錠芯が、(1)薬物、(2)賦形剤及び(3)崩壊剤を含有する項1〜7のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[9]フィルムコーティング層が、錠芯の単位表面積あたり3〜110μg/mmの割合である項1〜8のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[10]フィルムコーティング層が、(4)水溶性高分子を含有する項1〜9のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[11]フィルムコーティング層中の水溶性高分子(4)が、錠芯の単位表面積あたり1〜100μg/mmの割合である項10に記載のフィルムコーティング錠。
[12]水溶性高分子(4)が、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ビニル誘導体及びデンプン類からなる群から選ばれる1種又は2種以上である項10又は項11に記載のフィルムコーティング錠。
[13]フィルムコーティング層が、さらに(5)可塑剤を含有する項10〜12のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
[14]可塑剤(5)が、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、プロピレングリコール、トリアセチン及びクエン酸トリエチルからなる群から選ばれる1種又は2種以上である項13に記載のフィルムコーティング錠。
〔15〕錠芯100重量%中の(1)薬物が0.01〜20重量%、(2)賦形剤が60〜80重量%及び(3)崩壊剤が0.1〜15重量%であり、フィルムコーティング層中錠芯の単位表面積あたり(4)水溶性高分子が1〜45μg/mm、水溶性高分子100重量%に対する割合として(5)可塑剤が5〜50重量%である項13又は14に記載のフィルムコーティング錠。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠は、通常の口腔内崩壊性を有し、かつ、摩損や割れ欠け等が極めて少ない高い強度を有する製剤を提供することができ、光安定化等の機能を付与することを容易にする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明につき、さらに詳しく説明する。
本発明における錠剤等の口腔内崩壊時間は、ヒトの口腔内崩壊試験における崩壊時間を意味し、錠剤1錠を口に含み、錠剤を舌と上顎でゆっくりと転がしながら、口腔内に分泌される唾液により完全に崩壊させたときの崩壊時間である。また、崩壊時間は、口腔内崩壊試験機(口腔内崩壊試験機ODT-101(富山産業製)や口腔内崩壊錠崩壊試験機トリコープテスタ(岡田精工製)等)を用いて測定することもできる。
【0011】
本発明における錠剤等の破損や摩損に耐えうる錠剤の「強度」は、錠剤の摩損性や割れ欠けに対する機械的強度をいい、本明細書の中では錠剤の「硬度」と区別して用い、摩損度及び落下時欠損度で表す。「摩損度」は、第十五改正日本薬局方の参考情報「錠剤の摩損度試験法」に記載の装置を用い、試料錠剤数を20錠に変更し、ドラム回転速度25rpmで4分間回転させたときの質量減少率で表される。加湿後の摩損度については、25℃75%RH雰囲気下で開放系にて1日保存した試料について、25℃70%RH雰囲気下に設置された装置及び天秤を使用して評価を行う。「落下時欠損度」は、底面が平面である直径30cmのステンレス製ビーカーを床面に置き、ビーカー底面から1.5mの高さから試料25錠をビーカー内に落下させるとき、割れた錠剤数及び0.5mm以上の欠けが発生した錠剤数の和を試料錠剤数で除した値の百分率で表される。なお、本落下時欠損度の試験は、本発明の錠剤の高い強度を明らかにするために通常の強度の試験よりも過酷な条件に設定している。
【0012】
本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠及び錠芯の「絶対硬度」は、錠剤硬度計(富山産業製)等を用いて測定された硬度を錠剤の破断面積で除した値を用いて表される。
【0013】
口腔内崩壊性を有する錠芯
本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠に用いられる錠芯の口腔内崩壊時間は、通常60秒以内、好ましくは45秒以内、より好ましくは30秒以内である。本発明の錠芯の錠剤硬度は、絶対硬度で表すと1.5N/mm以上、好ましくは2.0N/mm以上、より好ましくは2.5N/mm以上であり、また、加湿後の膨潤率が低いものが用いられる。かかる錠芯としては、上記の物性を有する錠剤であれば、処方や製法を問わず広く使用することができるが、本発明で用いられる好ましい錠芯の構成成分としては、(1)薬物、(2)賦形剤及び(3)崩壊剤を含む錠芯が挙げられる。
【0014】
(1)本発明に適応できる「薬物」としては、内服薬として使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、抗不安剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、鎮暈剤等の神経系及び感覚器官用医薬品;強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗脂血症用剤等の循環器官用薬;呼吸促進剤、鎮咳剤、去たん剤、気管支拡張剤等の呼吸器官用薬;止しゃ剤、整腸剤、消化性潰瘍用剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤等の消化器官用薬;ホルモン剤及び抗ホルモン剤;泌尿生殖器官及び肛門用薬;ビタミン剤、滋養強壮薬、血液凝固阻止剤、糖尿病用剤等の代謝性医薬品;腫瘍用薬;アレルギー用薬;生薬及び漢方製剤;抗生物質、化学療法剤及び抗原虫剤、駆虫剤といった病原生物に対する医薬品;麻薬;禁煙補助剤等の薬効群の薬物が挙げられる。これらの薬物は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。薬物の錠芯中含量は、薬物の必要量及び薬物の特性により異なるが、通常、錠芯100重量%中0.01〜50重量%であり、好ましくは0.01〜40重量%であり、さらに好ましくは0.01〜30重量%であり、さらにより好ましくは0.01〜20重量%である。また、これらの薬物は、苦味マスキング、溶出制御、安定化等の目的でその表面の一部又は全部を水不溶性高分子又は水溶性高分子等のコーティング剤で被覆した被覆粒子として用いることもできる。
【0015】
(2)本発明に適応できる錠芯中の「賦形剤」は、糖類、糖アルコール類、無機賦形剤及び結晶セルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上の賦形剤である。例えば、糖類は乳糖(乳糖水和物、無水乳糖)、白糖、ショ糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ブドウ糖、マルトース、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、還元乳糖等が挙げられ、糖アルコール類はエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール等が挙げられ、無機賦形剤は無水リン酸水素カルシウムが挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、乳糖、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム及び結晶セルロースが挙げられる。錠芯100重量%中の賦形剤の含量は特に限定されないが、通常20〜90重量%であり、好ましくは40〜85重量%であり、より好ましくは60〜80重量%である。賦形剤を2種以上使用する場合の賦形剤全量の錠芯中含量も上記と同量である。
【0016】
(3)本発明に適応できる錠芯中の「崩壊剤」は、天然デンプン類、デンプン誘導体、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びカルメロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上の賦形剤である。例えば、天然デンプン類はトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等が挙げられ、デンプン誘導体は天然デンプンを加工して得られるヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはトウモロコシデンプン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びカルメロースが挙げられる。錠芯100重量%中の崩壊剤の含量は特に限定されないが、通常0.1〜25重量%であり、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%である。崩壊剤を2種以上使用する場合の崩壊剤全量の錠芯中含量も上記と同量である。
【0017】
また、本発明の錠芯中には結合剤を含んでもよく、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、寒天、ゼラチン等が挙げられ、該結合剤は1種又は2種以上を組合せて用いることができる。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられ、錠芯中に結合剤を含むとき、錠芯100重量%中の結合剤の含量は、通常0.1〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%である。
【0018】
本発明の錠芯中の薬物以外の好ましい製剤成分の組み合わせは、(2)賦形剤として乳糖、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム及び結晶セルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上、(3)崩壊剤としてトウモロコシデンプン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びカルメロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである。
【0019】
また、本発明の錠芯には滑沢剤を配合しても良く、例えば、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、タルク、カルナウバロウ、L−ロイシン、マクロゴール等が挙げられる。好ましくは、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。錠芯100重量%中の滑沢剤の含量は特に限定されないが、通常0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜4重量%である。滑沢剤を2種以上使用する場合の滑沢剤全量の錠芯中の含量も上記と同量である。
【0020】
本発明の錠芯には、口腔内での良好な服用性を持たせるために、甘味料及び/又は着香剤・香料を添加することが好ましい。甘味料としては、例えばグリチルリチン酸二カリウム、サッカリンナトリウム、サッカリン、ステビア、アスパルテーム、スクラロース、タウマチン、アセスルファムK、ネオテーム等が挙げられる。着香剤・香料としては、例えばレモン、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘系香料、ペパーミント、スペアミント、メントール、パイン、チェリー、フルーツ、ヨーグルト、コーヒー等が挙げられる。
【0021】
錠芯においては、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性なその他の添加剤を添加することもできる。使用する添加剤としては、例えば、界面活性剤、矯味剤、有機酸、流動化剤、着色剤、安定化剤等が挙げられる。
【0022】
かかる錠芯の製造方法については特に限定されないが、フローコーター(大川原/フロイント産業製)やGPCG(Glatt Powder Coater Granulator)、WSG(Wirbel Schicht Granulator)及びマルチプレックス(GLATT/パウレック製)等に代表される流動層造粒機や、バーチカルグラニュレーター(パウレック製)等に代表される攪拌造粒機等を用いて製造された顆粒を成形する湿式造粒打錠法、各種原料を適切に混合しその混合粉末を成形する直接打錠法、あるいは、乾式造粒打錠法が用いられる。その成形方法については、特に限定されないが、商業的に製造する場合はロータリー式打錠機等を用いた圧縮成形法が用いられる。なお、本発明の錠芯は、外部滑沢法を用いても成型可能である。この場合には、滑沢剤を除く成分を混合した後、滑沢剤を杵臼に噴霧しながら打錠を行うか、あるいは、滑沢剤の一部をあらかじめ混合した後、残りの滑沢剤を杵臼に噴霧しながら打錠を行う。また、本発明の錠芯は、有核打錠機、二層打錠機、三層打錠機といった特殊な打錠機によっても、製造することができる。
【0023】
本発明における口腔内崩壊性フィルムコーティング錠に用いられる錠芯は上記のような崩壊時間と硬度をバランスよく保持するために、錠芯を製造する際に適当な打錠圧が選択される。通常2kN(約200kgf)以上が挙げられ、好ましくは4kN(約400kgf)以上が挙げられ、さらに好ましくは6kN(約600kgf)以上が挙げられる。本発明で得られる錠芯の形状は、円形錠又は楕円形錠、オブロング形状、ひし形錠等の異形錠及びそれらの分割性錠剤等が挙げられ特に限定されないが、フィルムコーティングに適した錠剤形状であることが好ましい。具体的には、両凸面R錠、両凸面隅角R錠、両凸面二段R錠、片面又は両凹面錠等が挙げられ、好ましくは両凸面R錠、両凸面隅角R錠及び両凸面二段R錠が挙げられる。
【0024】
フィルムコーティング層
本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠に被覆するフィルムコーティング層の量は、口腔内で速やかに溶解又は崩壊し、かつ、錠剤強度を付与するために必要な量が用いられる。本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠のフィルムコーティング層の量は、錠芯表面の単位表面積あたり、例えば3〜110μg/mm2が挙げられ、好ましくは4〜100μg/mm2が挙げられ、より好ましくは7〜80μg/mm 2が挙げられ、さらにより好ましくは7〜65μg/mm2が挙げられる。
【0025】
(4)本発明のフィルムコーティング層の水溶性高分子とは、例えば、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等のセルロース系誘導体、デンプン、プルラン等のデンプン類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性ビニル誘導体、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム末、ゼラチン等が挙げられ、好ましくはヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ビニル誘導体及びデンプン類が挙げられ、さらに好ましくはヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び水溶性ビニル誘導体が挙げられ、最も好ましくはヒプロメロース及びヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。また、水溶性高分子の他に、腸溶性高分子又は水不溶性高分子と崩壊補助剤との混合物を含有してもよい。腸溶性高分子としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(例えば、商品名:信越AQOAT、信越化学工業)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート等の腸溶性セルロースエステル類、メタクリル酸コポリマーL(例えば、商品名:オイドラギットL、エボニックデグサジャパン製)メタクリル酸コポリマーLD(例えば、商品名:オイドラギットL30D-55、エボニックデグサジャパン製、商品名:ポリキッドPA30、ポリキッドPA30-S、三洋化成社製、商品名:コリコートMAE30DP、BASF社製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、商品名:オイドラギットS、オイドラギットS100、オイドラギットFS30D、エボニックデグサジャパン製)等の腸溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。これらの高分子は、1種あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。本発明の水溶性高分子の量は固形分量として、錠芯表面の単位表面積あたりで表すとき、例えば1〜100μg/mm2が挙げられ、好ましくは1.5〜45μg/mm2が挙げられ、最も好ましくは2.5〜40μg/mm2が挙げられる。
【0026】
(5)本発明のフィルムコーティング層には適宜可塑剤を加えることが好ましい。かかる可塑剤としては、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール;ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80等のポリソルベート類;トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド、プロピレングリコール等が挙げられる。中でも口腔内でフィルムコーティング層を溶解又は崩壊させて服用するという観点からは、不快な味が少ない可塑剤が好ましく、例えばポリエチレングリコール、ポリソルベート類、プロピレングリコール等が挙げられる。また、吸湿による錠剤の膨張によりフィルムコーティング層のひび割れ防止という観点からは、可塑効果の高い可塑剤が好ましく、ポリエチレングリコール、ポリソルベート類、トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド等が挙げられる。本発明の可塑剤の量は、フィルムコーティング層の可塑性が十分得られる量であればよく、フィルムコーティング層の水溶性高分子に対する割合で表すとき、例えば2〜100重量%が挙げられ、好ましくは3〜70重量%が挙げられ、より好ましくは5〜50重量%が挙げられる。
【0027】
本発明において、錠芯内に光に不安定な薬物を含有する場合には、フィルムコーティング層に光安定化剤を含有させることが好ましい。光の波長の違い等による薬物の分解機構によって選択される光安定化剤は変化しうるが、例えば酸化チタン、酸化鉄(黒色酸化鉄)、三二酸化鉄(赤色酸化鉄)、黄色三二酸化鉄、水溶性食用タール色素(食用黄色5号、食用青色2号等)、水不溶性レーキ色素(水溶性タール色素の塩類)、リボフラビン、クロロフィル、タルク、酸化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。特に、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、タルク、水溶性食用タール色素及び水不溶性レーキ色素が好ましく、さらに好ましくは、酸化チタン、三二酸化鉄及び黄色三二酸化鉄、最も好ましくは、酸化チタン及び三二酸化鉄が挙げられる。錠芯の単位表面積あたりの光安定化剤の添加量は、例えば0.1〜70μg/mm2が挙げられ、好ましくは0.5〜50μg/mm2が挙げられ、より好ましくは1〜40μg/mm2が挙げられる。
【0028】
本発明において、錠芯に不快な味を呈する薬物を含有する場合には、その苦味マスキングを目的として、フィルムコーティング層にpH調整剤や味覚マスキング剤を添加することができる。pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸等の有機酸及びその塩類、水酸化ナトリウム等が挙げられる。味覚マスキング剤としては、グルタミン酸やグリシン等のアミノ酸類、大豆レシチンや乳清、大豆レシチン分解物(ベネコートBMIシリーズ等)等のタンパク/タンパク分解物類、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸、アスコルビン酸等の有機酸及びその塩類、グリチルリチン酸二カリウム、サッカリンナトリウム、サッカリン、ステビア、アスパルテーム、スクラロース、タウマチン、アセスルファムK、ネオテーム等の甘味剤、ラウリル硫酸ナトリウム、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0029】
本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠のフィルムコーティング層においては、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。使用する添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、着香剤・香料、流動化剤、着色剤、その他の安定化剤等が挙げられる。
【0030】
かかる錠芯にフィルムコーティング層を形成させる方法は特に限定されないが、ハイコーター、ニューハイコーター、アクアコーター(フロイント産業製)、ドリアコーター、パウレックコーター(パウレック製)等に代表されるコーティング機や、糖衣パン、ワースター型コーティング機等を用いて製造される。また、フィルムコーティング層を形成後、加湿等して口腔内崩壊性をさらに向上させることもできる。
【0031】
口腔内崩壊性フィルムコーティング錠
このようにして得られた本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠は、高い錠剤強度と良好な口腔内崩壊性を有する。本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の摩損度は、通常0.15%以下であり、好ましくは0.1%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。また、本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の落下時欠損度は、通常25%以下であり、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。さらに、本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の口腔内崩壊時間は、通常60秒以内、好ましくは50秒以内、さらに好ましくは40秒以内である。また、本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の口腔内崩壊時間から錠芯の口腔内崩壊時間を減じた差は、40秒以内であり、好ましくは30秒以内であり、最も好ましくは20秒以内である。
【0032】
本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の絶対硬度は、通常1.5N/mm2以上であり、好ましくは2.0N/mm2以上であり、より好ましくは2.5N/mm2以上であり、さらにより好ましくは3.0N/mm2以上である。
【0033】
さらに、本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠は、75%RH等の高湿度下にて吸湿した場合にも、分包時や調剤時の摩損による粉の発生や割れ欠け等に耐えうる錠剤強度を有する。このような錠剤強度を有する本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠を25℃75%RH雰囲気下で1日放置したときの摩損度は、通常0.40%以下であり、好ましくは0.30%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠を25℃75%RH雰囲気下で1日放置したときの落下時欠損度は、通常35%以下であり、好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。また、本発明の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠を25℃75%RH雰囲気下で1日以上放置したときの錠剤表面はフィルムコーティング層の割れ等を生じず、高湿度下であってもフィルムコーティングの効果を十分に有するものである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明を限定するものではない。
【0035】
比較例1及び実施例1〜4
口腔内崩壊性を有する錠芯Aの製造
光に不安定な薬物である3-[(1S)-1-(2-フルオロビフェニル-4-イル)エチル]-5-{[アミノ(モルフォリン-4-イル)メチレン]アミノ}イソキサゾール(一般名:rimacalib)200gを、D−マンニトール(PEARLITOL 50C/ROQUETTE製)837g、トウモロコシデンプン(日食コーンスターチXX16/日本食品化工製)92g及びクロスポビドン(POLYPLASDONE XL-10/ISP製)30gと混合して流動層造粒機(マルチプレックスMP-01/パウレック製)に仕込み、2重量%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L/日本曹達製)溶液240gを噴霧し造粒した。上記造粒物に、軽質無水ケイ酸(AEROSIL 200/日本アエロジル製)12g及びフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV/JRS Pharma製)24gを混合して打錠用顆粒Aとし、打錠機HT-AP18SS-II(畑鉄工所製)を用い、直径7mm・曲率半径10mmの円形錠金型にて、圧縮力600kgfで成型し、表1に示す処方の錠芯Aを得た。
【0036】
【表1】

【0037】
口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造
ヒプロメロース(ヒプロメロース2910、表示粘度3mPa・s;TC-5E/信越化学工業製)、マクロゴール400(松垣薬品工業製)及び酸化チタン(精製脱砒酸化チタン/東邦産業製)を表2に記載の比率で精製水に溶解・分散し、コーティング液aを得た。錠芯A750gを錠剤コーティング機(ハイコーターHCT-30N/フロイント産業製)に仕込み、給気温度80℃、給気風量0.6m/min、回転速度15回転/min、送液速度2〜4g/min、スプレーエア圧力0.15MPa、排気温度39〜46.5℃でフィルムコーティングを行った。コーティング液aを各々総量66g、132g、330g及び658gを噴霧したフィルムコーティング錠を、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4とした。コーティング液aを噴霧したサンプル及びコーティング前の錠芯Aについて錠剤質量及び乾燥減量を測定し、錠芯Aからの重量変化からコーティング率を算出し、各実施例のフィルムコーティング量を求めた。
【0038】
【表2】

【0039】
試験例1
実施例1〜4の口腔内崩壊性フィルムコーティング錠及び錠芯A(比較例1)について、表3に記載の評価を実施した。光安定性試験については、25℃60%RH雰囲気下において3900lxの白色蛍光灯を用い、総曝光量が60万lx・hrとなるよう曝光し、光分解生成物X(rimacalib原薬を曝光した際に光分解物として産生され、高速液体クロマトグラフィー(条件:移動相:50mMリン酸緩衝液(pH7.0)/アセトニトリル混液(62:38)、カラム:Discovery RP Amide C16、液速度:0.95mL/min)で測定するとき、その保持時間が17.3分(rimacalibに対する相対保持時間:0.75)である化合物)の量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0040】
表3に示すように、実施例1〜4はいずれも良好な崩壊性を有していた。また、実施例1〜4の摩損度は0.3%以下であり、比較例1に比べて高い強度を有していた。また、落下時欠損度についても、実施例1〜4はいずれも35%以下であり、比較例1に比べ高い強度を有していた。さらに、25℃75%RH条件下で1日間開栓保存したサンプルにおいては、実施例1〜4の摩損度はいずれも0.4%以下であり、比較例1と比較して高い強度を有しており、落下時欠損度も35%以下で比較例1に比べて高い強度を有していた。なお、25℃75%RH条件下で3日間保存したサンプルのフィルムコーティング層には破断等を生じない優れた耐吸湿性を有していた。また、光安定性試験後の実施例1〜4の光分解物X量はいずれも比較例1より少なく、光に対する安定性がさらに向上していた。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例5〜8
口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造
実施例1〜4で用いた錠芯Aを打錠する前の打錠用顆粒を、打錠圧縮力400kgf、700kgf及び800kgfにて打錠し、それぞれ錠芯B、C及びDを得た。錠芯の絶対硬度はいずれも2N/mm以上であった。これらの錠芯B〜D及び実施例1〜4で用いた錠芯Aを用いて、表2に示した処方のコーティング液aを実施例1〜4と同様の条件で700g噴霧してフィルムコーティングを施した(錠芯表面積あたりの皮膜総量:37.4μg/mm)。製造された口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の外観を評価した結果、表4に示すように、実施例5〜8はいずれも摩損や欠け等がなく良好な強度を有していた。また、実施例5〜8の摩損度・落下時欠損度ともに良好であった。
【0043】
【表4】

【0044】
実施例9〜12
錠芯Eの製造
以下の手順で錠芯Eの製造を実施した。ニフェジピンの秤量、造粒、混合及び打錠工程は、暗所にて実施した。ニフェジピン(ダイト製)100g、D−マンニトール(PEARLITOL 50C/ROQUETTE製)927g、トウモロコシデンプン(日食コーンスターチXX16/日本食品化工製)102g及びクロスポビドン(POLYPLASDONE XL-10/ISP製)30gを混合して流動層造粒機(マルチプレックスMP-01/パウレック製)に仕込み、2重量%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L/日本曹達製)溶液240gを噴霧し造粒した。上記造粒物に、軽質無水ケイ酸(AEROSIL 200/日本アエロジル製)12g及びフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV/JRS Pharma製)24gを混合して打錠用顆粒とし、打錠機HT-AP18SS-II(畑鉄工所製)を用い、直径7mm・曲率半径10mmの円形錠金型にて圧縮力900kgfで成型し、表5の錠芯Eを得た。
【0045】
【表5】

【0046】
口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造
以下の手順で錠芯Eを用いて口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造を実施した。フィルムコーティング操作は、暗所にて実施した。ヒプロメロース(TC-5E/信越化学工業製)、マクロゴール6000(マクロゴール6000P/三洋化成製)及び三二酸化鉄(赤色酸化鉄;癸巳化成製)を表6及び表7に記載した比率で精製水に溶解・分散し、コーティング液b及びcを得た。錠芯E750gを錠剤コーティング機(ハイコーターHCT-30N/フロイント産業製)に仕込み、給気温度80℃、給気風量0.6m/min、回転速度10〜20回転/min、送液速度2〜6g/min、スプレーエア圧力0.15MPa、排気温度43〜48℃でコーティングを行った。コーティング液bの噴霧量が25gとなったところで実施例9を得、コーティング液bの噴霧量が60gとなったところでコーティング液cに切り替えた。その後、コーティング液cの噴霧量が、各々総量26g、130g及び235gとなったところで、それぞれ実施例10、実施例11及び実施例12を得た。錠芯Eとフィルムコーティング後のサンプルの錠剤質量及び乾燥減量を測定し、錠芯Eからの重量変化からコーティング率を算出し、各実施例のフィルムコーティング量を求めた。
【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
実施例13〜16
口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造
以下の手順で錠芯Eを用いて口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造を実施した。フィルムコーティング操作は、暗所にて実施した。ヒプロメロース(TC-5E/信越化学工業製)、マクロゴール6000(マクロゴール6000P/三洋化成製)、酸化チタン(精製脱砒酸化チタン/東邦産業製)及び三二酸化鉄(赤色酸化鉄;癸巳化成製)を表8に記載した比率で精製水に溶解・分散し、コーティング液dを得た。錠芯E750gを錠剤コーティング機(ハイコーターHCT-30N/フロイント産業製)に仕込み、給気温度80℃、給気風量0.6m/min、回転速度10〜20回転/min、送液速度2〜6g/min、スプレーエア圧力0.15MPa、排気温度45〜50℃で下記の要領でフィルムコーティングを行った。コーティング液dの総噴霧量が各々113g、169g、225g及び328gとなったところで、それぞれ実施例13、実施例14、実施例15及び実施例16を得た。錠芯Eとフィルムコーティング後のサンプルの錠剤質量及び乾燥減量を測定し、錠芯Eからの重量変化からコーティング率を算出し、各実施例のフィルムコーティング量を求めた。
【0050】
【表8】

【0051】
実施例17〜20
口腔内崩壊性フィルムコーティング錠の製造
実施例13〜16のヒプロメロース(TC-5E)を、表示粘度6mPa・sのヒプロメロース2910(TC-5R/信越化学工業製)に置き換えてコーティング液eとし、実施例13〜16と同様の条件で錠芯Eをコーティングした。コーティング液eの総噴霧量が各々113g、169g、225g及び328gとなったところでサンプリングを行い、それぞれ実施例17、実施例18、実施例19及び実施例20を得た。錠芯Eとフィルムコーティング後のサンプルの錠剤質量及び乾燥減量を測定し、錠芯Eからの重量変化からコーティング率を算出し、各実施例のフィルムコーティング量を求めた。
【0052】
試験例2
実施例9〜20及び比較例2(錠芯E)について、表9〜11に記載の評価を実施した。実施例9〜20はいずれも比較例2と比べ良好な崩壊性を有していた。実施例9〜20の摩損度は0.02%以下であり、また、実施例9〜20の落下時欠損度はいずれも35%以下で高い強度を有していた。さらに、25℃75%RH条件下で1日間開栓保存後においても、実施例9〜20のいずれも摩損度が0.2%以下であり、比較例2と比較して強度が強く、落下時欠損度も35%以下であり、比較例2に比べて強度が強かった。また、光安定性試験において、ニフェジピンの光分解物Yを高速液体クロマトグラフィー(条件:移動相:メタノール/水(5:3)、カラム:Supercosil 3μm LC-18-DB (150 ×4.6mm)、カラム温度:40℃(光分解物Y:相対保持時間 0.91)(International Journal of Pharmaceutics, 54(1989)211-221, 『Comparative evaluation of photostability of solid-state nifedipine under ordinary and intensive light irradiation conditions』参照))により測定した結果、実施例9〜20の光分解物Y量はいずれも比較例2に比べて少なかった。
【0053】
【表9】

【0054】
【表10】

【0055】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明により、口腔内での崩壊性と、薬剤の製造、運搬、保管、分包、調剤作業時等において、摩損や衝撃に対して安定な高い強度を有する口腔内崩壊性フィルムコーティング錠が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内崩壊性を有する錠芯とフィルムコーティング層を含む口腔内崩壊性フィルムコーティング錠。
【請求項2】
錠芯の絶対硬度が1.5N/mm以上である請求項1に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項3】
ヒトの口腔内崩壊試験において、口腔内崩壊時間が60秒以内である請求項1又は2に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項4】
第十五改正日本薬局方の参考情報「錠剤の摩損度試験法」の記載に従い、試料錠剤20錠を用いた摩損度が0.4%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項5】
底面が平面である直径30cmのステンレス製ビーカーを床面に置き、ビーカー底面から1.5mの高さから試料25錠をビーカー内に落下させるとき、割れた錠剤数及び0.5mm以上の欠けが発生した錠剤数の和を試料錠剤数で除した値の百分率で表す落下時欠損度が35%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項6】
錠芯が、(1)薬物、(2)賦形剤及び(3)崩壊剤を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項7】
フィルムコーティング層が、錠芯の単位表面積あたり3〜110μg/mmの割合である請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項8】
フィルムコーティング層が、(4)水溶性高分子を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項9】
水溶性高分子(4)が、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ビニル誘導体及びデンプン類からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項8に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項10】
フィルムコーティング層が、さらに(5)可塑剤を含有する請求項8又は9に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項11】
可塑剤(5)が、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、プロピレングリコール、トリアセチン及びクエン酸トリエチルからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項10に記載のフィルムコーティング錠。

【公開番号】特開2010−248106(P2010−248106A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98089(P2009−98089)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】