説明

フィルム巻き取り方法、フィルム製造方法および偏光板の製造方法

【課題】 黒帯不良と巻きズレ不良の両方を低減する。
【解決手段】前記巻き取り軸に巻き掛けられたフィルムを前記巻き取り軸に巻き取る巻き取りステップと、前記巻き取りステップ中に前記巻き取り軸を前記フィルムの幅方向に往復スライドさせるスライドステップとを備え、前記スライドステップにおいて、前記巻き取り軸を一往復スライドさせる間に前記巻き取り軸に巻き取られるフィルムの厚みを周期とすると、前記巻き取り軸にフィルム巻き取り始めたときから前記所定の厚さの半分の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の周期の平均値よりも、前記所定の厚さの半分の厚さから所定の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の周期の平均値が大きくなるように、前記巻き取り軸のスライド速度と前記巻き取り軸の回転速度のうち少なくとも一方が制御されるフィルム巻き取り方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム巻き取り方法、フィルム製造方法および偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光学フィルム等の様々なフィルムが使用されている。これらのフィルムの製造方法として、例えば、長尺支持体に塗布液を塗布し塗膜を製膜することによって様々な機能をもったフィルムを形成する方法がある。また、長尺状支持体自体も、フィルムの一種といえる。
【0003】
これらフィルムは、いずれも巻き取られてフィルムロールの形で一次保管され、次の工程に回されることになる。
【0004】
このように、フィルムの巻き取りは必ず発生するものであり、フィルム巻き取り工程はフィルムの製造において必要不可欠の工程である。
【0005】
このようなフィルム巻き取り方法として、特許文献1には、フィルムの側縁が揃うように前記フィルムを巻芯に巻き取るストレート巻き工程と、前記ストレート巻き工程の後に、前記側縁が前記フィルムの幅方向に対して一定範囲で周期的にずれるように、前記フィルムの幅方向に前記フィルムまたは前記巻芯を周期的に振動させて前記フィルムを前記巻芯に巻き取るオシレート巻き工程とを有するフィルムの巻き取り方法について記載されている。
【0006】
これにより、巻き取り後のフィルムロールに耳伸びおよび巻きズレが生じないように巻き取ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−150041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたフィルムの巻き取り方法では、フィルムロールにおいて、フィルムの凸部同士が密着し付着することにより発生するブロッキングまたはブラックバンドと称される不良を解消することができない。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み、ブラックバンド不良も巻きズレ不良もその両方を同時に低減できるフィルム巻き取り方法およびフィルム製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
【0011】
即ち、本発明のフィルム巻き取り方法は、所定の厚さまで巻き取り軸にフィルムを巻き取るフィルム巻き取り方法であって、前記巻き取り軸を回転させることにより、前記巻き取り軸に巻き掛けられたフィルムを前記巻き取り軸に巻き取る巻き取りステップと、前記巻き取りステップ中に、巻き取る直前の前記フィルムに対して前記巻き取り軸を前記フィルムの幅方向に相対的に往復スライドさせるスライドステップと、を備え、前記スライドステップにおいて、前記巻き取り軸を一往復スライドさせる間に前記巻き取り軸に巻き取られるフィルムの厚みを周期とすると、前記巻き取り軸にフィルム巻き取り始めたときから前記所定の厚さの半分の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の周期の平均値よりも、前記所定の厚さの半分の厚さから所定の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の周期の平均値が大きくなるように、巻き取り直前の前記フィルムに対する前記巻き取り軸の相対的なスライド速度である相対スライド速度と前記巻き取り軸の回転速度のうち少なくとも一方が制御されることを主要な特徴にしている。
【0012】
これにより、ブラックバンド不良と巻きズレ不良との両方を低減することができる。
【0013】
また、本発明のフィルム巻き取り方法は、前記スライドステップでは、前記巻き取り軸にフィルムを巻き取り始めるときから前記所定の厚さまでフィルムを巻き取るまで、前記周期が漸増するように、前記相対スライド速度と前記巻き取り軸の回転速度のうち少なくとも一方が制御されることを主要な特徴にしている。
【0014】
これにより、より一層ブラックバンド不良と巻きズレ不良との両方を低減することができる。
【0015】
更に、本発明のフィルム巻き取り方法は、所定の厚さまで巻き取り軸にフィルムを巻き取るフィルム巻き取り方法であって、前記巻き取り軸を回転させることにより、前記巻き取り軸に巻き掛けられたフィルムを前記巻き取り軸に巻き取る巻き取りステップと、前記巻き取りステップ中に、巻き取る直前の前記フィルムに対して前記巻き取り軸を前記フィルムの幅方向に相対的に往復スライドさせるスライドステップと、を備え、前記スライドステップにおいて、前記巻き取り軸を一往復移動させた距離の半分の距離を振幅とすると、前記巻き取り軸にフィルム巻き取り始めたときから前記所定の厚さの半分の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の振幅の平均値よりも、前記所定の厚さの半分の厚さから所定の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の振幅の平均値が小さくなるように、巻き取り直前の前記フィルムに対する前記巻き取り軸の相対的なスライド量である相対スライド量が制御されることを主要な特徴にしている。
【0016】
これにより、ブラックバンド不良と巻きズレ不良との両方を低減することができる。
【0017】
更にまた、本発明のフィルム巻き取り方法は、前記スライドステップでは、前記巻き取り軸にフィルムを巻き取り始めるときから前記所定の厚さまでフィルムを巻き取るまで、前記振幅が漸減するように、前記相対スライド量が制御されることを主要な特徴にしている。
【0018】
これにより、更に一層ブラックバンド不良と巻きズレ不良との両方を低減することができる。
【0019】
また、本発明のフィルム製造方法は、塗膜付きフィルムを製造するフィルム製造方法であって、長尺支持体に塗布液を塗布するステップと、塗布された塗布液を乾燥させて塗膜付きフィルムを形成するステップと、上記いずれか一つの巻き取り方法により前記塗膜付きフィルムを巻き取るステップと、を備えたことを主要な特徴にしている。
【0020】
これにより、ブラックバンド不良と巻きズレ不良との両方を低減したフィルムを製造することができる。
【0021】
更に、本発明の偏光板製造方法は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムが接着された偏光板の製造方法であって、上記いずれか一つの巻き取り方法で保護フィルムをロール状に巻き取る巻き取りステップと、巻き取られた前記保護フィルムを巻き出し、巻き出した前記保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に接着する接着ステップと、前記保護フィルムが接着された前記偏光子を所定の寸法に切断する切断工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0022】
ブラックバンド不良と巻きズレ不良との両方を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】フィルム製造ラインを表す概略図である。
【図2】巻き取り軸に巻き取られたフィルムの幅方向の断面概略図である。
【図3】巻き取られたフィルムの一部の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0025】
<フィルム製造ライン>
本発明に係るフィルム製造ラインについて図1を参照して説明する。図1はフィルム製造ラインを表す概略図である。図1に示すように、本発明に係るフィルム製造ライン10は、フィルム製造装置20と、巻き取り装置30とを主に備えて構成される。
【0026】
図1では、フィルム製造装置20は、極めて簡略化し単なるボックスとして記載しているが、これは、フィルム製造装置20として様々な装置が考えられるからである。例えば、フィルム製造装置20は、溶融製膜方法や溶液製膜方法などにより支持体を製造するものであっても良いし、塗布液を支持体上に塗布することによりフィルムを製造する装置などであってもよいが、それらに限定されるものではなく、最終的に巻き取り装置によって巻かれるフィルム(または支持体)であればどのようなフィルム(または支持体)を製造する装置であってもよい。
【0027】
ここでは、フィルム製造装置20がスロットダイ方式の塗布装置であった場合を例にとって説明する。スロットダイ塗布装置であるフィルム製造装置20は、塗布液をスロットから走行する支持体に供給し塗布を行う。支持体上に供給された塗布液は、支持体上で薄膜を形成し、その後乾燥させられることにより、塗布液中の溶媒成分が蒸発して固体成分だけの塗膜が形成される。
【0028】
ここで、支持体の両側端部には、予め微小な凹凸が形成された部分であるナーリング部42が形成されている。スロットダイ塗布装置は、このナーリング部42上にも塗布液の塗布を行い、塗膜を形成する。
【0029】
次に巻き取り装置30について説明する。巻き取り装置30は、巻き取り軸60と、一対のアーム70と、モータ(不図示)と、オシレート部62と、制御部(不図示)とを主に備えて構成される。
【0030】
巻き取り軸60は、ガイドローラ50によりフィルム製造装置20から供給されたフィルム40を回転することにより巻き取る。アーム70は、巻き取り軸60を長手方向両側から挟持する。モータは、巻き取り軸60を回転させる。オシレート部は、記号90の矢印で示す方向(フィルム40の幅方向)に往復スライドさせる。
【0031】
オシレート部62は、例えば、オシレートモータ61、偏心カム64、バネ66によって構成されても良い。この場合、オシレートモータ61が偏心カム64を回転させ、偏心カム64が、バネ66によって偏心カム64の方向に付勢されたアーム70を押し込むことによって、アーム70が往復スライドさせられる。なお、ここで示したオシレート部は、あくまで一例であり、往復スライドしながら巻き取る構造、方式についてはどのようなものを採用しても良い。
【0032】
更に、図1ではオシレート部62は、アーム70を往復スライドさせることによって巻き取り軸60を往復スライドさせる方式を示しているが、これに限定されるものではなく、巻き取り軸60を直接往復スライドさせる方式を採用しても良い。
【0033】
ここでは、巻き取り軸を往復スライドさせるオシレート部について示しているが、これに限定されるものではなく、フィルム40の搬送位置を往復スライドさせる方式を採用しても良い。即ち、巻き取り軸60が、巻き取られる直前のフィルム40に対して相対的に往復スライドする方式を採用することができる。この場合オシレート部は、巻き取り軸60に巻き取られる直前のフィルム40を往復スライドさせる。
【0034】
なお、本発明において、このように巻き取り軸が巻き取られる直前のフィルムに対して相対的に往復スライドすることをオシレートすると称する。制御部は、巻き取り軸60の回転速度とオシレート速度、オシレート移動量(往復スライド量)を制御する。
【0035】
<フィルム巻き取り方法>
本発明のフィルム巻き取り方法の特徴は、フィルム40の巻き取り時にオシレートすることにあり、特にそのオシレート方法に特徴がある。そこで、本発明に係るオシレート方法について図2、図3を参照して更に詳しく説明する。図2は、巻き取り軸に巻き取られたフィルムの幅方向の断面概略図である。図3は、巻き取られたフィルムの一部の断面概略図である。
【0036】
巻き取り軸60にフィルム40を巻き取ってゆく際に、オシレートしながら巻き取ってゆくので、巻き取られたフィルム40の幅方向の断面の両端は、図2に示すように、ジグザグ形状を有している。ここで、フィルム40の幅は同じなので、ジグザグ形状の山部と谷部とにおいて、右端が山部の時は、左端は谷部になり、右端が谷部の時は、左端は山部になる。
【0037】
図2に示すように、本発明においては、上下に隣接する山部の頂点と頂点の幅を周期と称し、谷部の底と山部の頂点との幅(谷部の底を通り、巻き取り軸60の回転軸に垂直な直線と、当該谷部に隣接する山部の頂点を通り、巻き取り軸60に垂直な直線との最短距離)を振幅と称する。
【0038】
別の言い方をすれば、周期は巻き取り軸60を一往復スライドさせる間に巻き取り軸60に巻き取られたフィルムの厚みであり、振幅は巻き取り軸60を一往復移動させた距離の半分の距離、即ち往復ではなく片道スライドの距離のことである。
【0039】
ここで周期の制御は、巻き取り軸60の巻き取られる直前のフィルムに対する相対的なスライド速度(これ以降、単にスライド速度と称する)と巻き取り軸60の巻き取り速度(回転速度)とのうち少なくとも一方を制御することによって成し遂げられる。また、振幅の制御は、巻き取り軸60の巻き取られる直前のフィルムに対する相対的なスライド量(これ以降単にスライド量と称する)を制御することによって成し遂げることができる。
【0040】
本発明では、巻き取り軸60に近い側では、遠い側よりも、少なくとも周期が小さいか、振幅が大きいかのいずれかまたはその両方になるようにオシレートされる。周期が小さい場合は、巻き取り軸60に近い側から、外側に行くに従って、だんだん周期が大きくなることが好ましく、振幅が大きいときは、巻き取り軸60に近い側から外側に行くに従って、だんだん振幅が小さくなることが好ましい。
【0041】
これにより、ブロッキングまたはブラックバンドと称される不良(本発明では黒帯不良と称する)と、巻きズレ不良との両方を低減させることができる。ここで黒帯不良と巻きズレ不良とについて以下に説明する。
【0042】
図3の(A)、(B)は、フィルム40巻いたときのフィルム数層の概略断面を示したものである。フィルム40を巻き取り軸60に巻いていったとき、図3の(A)に示すように、フィルム40内の凸部100が同じ位置で重なる場合がある。この場合、何重にも巻いて行くに従って、凸部100の部分には圧力が強く掛かり、この部分が付着してしまったり、圧力のために延びが発生したりして製品の品質が落ちることになる。また、この部分を外から見ると黒い帯のように見える。これが黒帯不良である。
【0043】
そこで、図3の(B)に示すように、フィルム40を巻き取るときにオシレートさせながら巻き取ることにより、凸部100がずれるので黒帯不良の発生を防ぐことができる。ところが、オシレートさせながら巻き取ることにより、密着性が悪くなるので、巻きズレ不良が発生しやすくなる。巻きズレ不良とは、フィルムを巻いたものであるフィルムロールの両側端の位置が、巻き終わった後の状態である初期状態の位置から一部ずれた状態になる不良のことを言う。
【0044】
この巻きズレ不良と黒帯不良とは、それらを低減させる方法が相反する関係にあるので、一方の不良を低減させると、もう一方の不良が増加してしまい両方の不良を同時に低減させることは困難であった。つまり、より密着させて巻き取るほど巻きズレ不良は防止できるが、黒帯不良になりやすく、密着されずに巻き取れば黒帯不良にはなりにくいが巻きズレ不良になりやすくなる。
【0045】
本発明者は、鋭意研究の結果、オシレートの周期、振幅を特定の方法で変化させることにより、巻きズレ不良と黒帯不良の両方を同時に低減できることを見いだした。
【0046】
<評価>
オシレートを変化させてフィルムを巻き取り、フィルムロールを作製する評価を行った。比較例1〜4ではオシレートの周期も振幅も変化させずにフィルムロールを作製した。実施例1〜4では、周期または振幅を変化させてフィルムロールを作製した。
【0047】
作製したフィルムロールの黒帯不良と巻きズレ不良の発生を調べた。黒帯不良は、フィルムに残る密着後の強さを◎(なし)、○(ごく弱い)、△(弱い)、×(強い)の4段階で表した。巻きズレ不良は、フィルムロールの軸方向にフィルムロールを動かして、フィルムロールを急停止させることにより、巻きズレが発生するか調べた。巻きズレの発生は、巻きズレしにくさの順つまり巻きズレ耐性が強い順番に、◎(強い)、○(やや強い)、△(やや弱い)、×(弱い)の4段階で表した。ここで、◎から△までは、いずれの場合においても良品の範囲であり不良ではない。不良になるのは×のみである。評価内容、評価結果については表1に、評価結果の記号の意味については表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1を参照して、実施例1の周期「5→15」は、備考に記載しているように、フィルムロールの厚みの中央よりも巻き芯側のオシレート周期の平均値、即ちフィルムロールの厚み方向において、最も巻き芯に近い部分と最外側の部分との中間から最も巻き芯に近い部分の間(以下、単に中央−巻き芯部と称する)のオシレート周期の平均値が5mmで、フィルムロールの厚みの中央よりも外周側のオシレート周期の平均値、即ち、フィルムロールの厚み方向において、最も巻き芯に近い部分と最外側の部分との中間から最外側部分の間(以下、単に中央−外側部と称する)のオシレート周期の平均値が15mmであり、かつ、フィルムロールの厚み方向において、巻き芯側から最外側に向かってオシレート周期が徐々に大きくなっていることを示している。
【0051】
実施例3の周期「2→15」は、数値が異なっているだけで、実施例1の周期「5→15」と同じ意味を示す。
【0052】
また、実施例4の振幅の「15→5」は、中央−巻き芯部のオシレート振幅の平均値が15mmで、中央−外側部のオシレート振幅の平均値が5mmであり、かつ、フィルムロールの厚み方向において、巻き芯側から最外側に向かってオシレート振幅が徐々に小さくなっていることを示している。
【0053】
また、実施例2の「5/15」は、備考に記載しているように、中央−巻き芯部のオシレート周期が5mmで一定であり、中央−外側部のオシレート周期が15mmで一定であることを示している。
【0054】
同様に、実施例5の「15/5」は、中央−巻き芯部のオシレート振幅が15mmで一定であり、中央−外側部のオシレート振幅が5mmで一定であることを示している。
【0055】
黒帯不良は巻き取りテンションが大きいほど発生しやすく、巻きズレ不良は巻き取りテンションが小さいほど発生しやすい。表1の比較例1〜4を見ると、巻き取りテンションが400Nと大きいときは黒帯不良が×であり、350Nの時は△になっており、300Nの時は○になっている。
【0056】
これに対して、オシレートの周期または振幅を変化させている実施例1〜4では巻き取りテンションが500Nと大きいにもかかわらず、黒帯不良は◎または△である。
【0057】
また、巻きズレ不良は、比較例1〜4では、巻き取りテンションが小さい300Nの時は×になっており、350Nの時は△になっている。これに対して、実施例1〜4では、すべて、◎か○である。
【0058】
実施例1を参照すると、黒帯不良も◎、巻きズレ不良も◎になり、良好な結果が得られた。実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1では、巻きズレ不良も◎であるのに対して、実施例2では巻きズレ不良が○になっている。よって、オシレート周期を徐々に変化させることにより、更に巻きズレ不良を低減できることが分かる。
【0059】
実施例1と実施例3とを比較すると、実施例1ではオシレートの周期が5→15で黒帯不良が◎であるのに対して、実施例3では周期が2→15で黒帯不良が△になっている。よって、中央−巻き芯部のオシレート周期は、2mm(フィルム厚の約33倍)よりも5mm(フィルム厚の約83倍)の方が、黒帯不良の低減効果が大きいことが分かる。
【0060】
実施例1と実施例4とを比較すると、どちらも黒帯不良◎、巻きズレ不良◎である。よって、オシレート周期の平均値を5mm(中央−巻き芯部)から15mm(中央−外側部)に変化させても、オシレート振幅の平均値を15mm(中央−巻き芯部)から5mm(中央−外側部)に変化させても、どちらでも黒帯不良、巻きズレ不良の両方を低減できることが分かる。これらより、オシレート周期と振幅の両方を同時に変化させても、良好な結果が得られることは明かである。
【0061】
実施例4と実施例5とを比較すると、実施例4では、巻きズレ不良も◎であるのに対して、実施例5では巻きズレ不良が○になっている。よって、オシレート振幅を徐々に変化させることにより、更に巻きズレ不良を低減できることが分かる。
【0062】
以上より、中央−巻き芯部のオシレート周期の平均値よりも中央−外側部のオシレート周期の平均値を大きくすることにより黒帯不良も巻きズレ不良も低減できることが分かった。このとき、オシレート周期を巻き芯側から外側に向かって徐々に大きくしてゆくことにより、更に黒帯不良、巻きズレ不良を低減できることが分かった。
【0063】
また、中央−巻き芯部のオシレート振幅の平均値よりも中央−外側部のオシレート振幅の平均値を小さくすることにより黒帯不良も巻きズレ不良も低減できることが分かった。このとき、オシレート振幅を巻き芯側から外側に向かって徐々に小さくしてゆくことにより、更に黒帯不良、巻きズレ不良を低減できることが分かった。
【0064】
また、本発明者の研究により、中央−巻き芯部の平均オシレート周期がフィルム厚の40〜250倍であり、中央−外側部の平均オシレート周期がフィルム厚の80〜1000倍が好ましいことが分かった。この時、中央−外側部の平均オシレート周期は、中央−巻き芯部の平均オシレート周期よりも3%以上大きいことがより好ましいことも分かった。更に、この際、巻き芯側から外側にかけてオシレート周期が徐々に変化していることが最も好ましいことも分かった。
【0065】
同様に、平均オシレート振幅についても、中央−巻き芯部の平均オシレート振幅が、フィルム端部のナーリング幅またはナーリング上に製膜された膜の幅の1.5〜4倍であり、中央−外側部の平均オシレート振幅が、フィルム端部のナーリング幅またはナーリング上に製膜された膜の幅の0.01〜2倍であることが好ましいことが分かった。この時、中央−外側部の平均オシレート振幅は、中央−巻き芯部の平均オシレート振幅よりも3%以上小さいことがより好ましいことも分かった。更に、この際、巻き芯側から外側にかけてオシレート周期が徐々に変化していることが最も好ましいことも分かった。
【0066】
<偏光板の製造方法>
次に、本発明に係るフィルム巻き取り方法を用いた偏光板の製造方法について説明する。偏光板とは、偏向子の片面または両面に保護フィルムが積層されているもののことである。
【0067】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好ましい。
【0068】
偏向子の片面又は両面に積層される保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。
【0069】
保護フィルムを形成する材料として、上記にあげたものが考えられるが、偏向特性や耐久性などの点を考慮すると、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系ポリマーが好ましく、特にTACフィルムが好ましい。
【0070】
また保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層を設け、または、反射防止処理、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施しても良い。
【0071】
本発明に係るフィルム巻き取り方法を用いた偏光板の製造方法について説明すると、上述したフィルム製造ラインにおいて保護フィルムを製造し本発明の巻き取り方法を用いて保護フィルムをロール状に巻き取る。
【0072】
次に、ロール状に巻き取られた保護フィルムと、ロール状に巻き取られた偏光子とは、それぞれ巻き出されて、偏光子の片面または両面に保護フィルムが接着される。偏光子の両面に保護フィルムを接着するときは、ロール状に巻き取られた保護フィルムを2ロール使用し、偏光子の両面に同時に保護フィルムを接着することができる。
【0073】
偏光子と保護フィルムとの接着には、水系粘着剤等を使用することができる。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等がある。
【0074】
次に、保護フィルムが接着された偏光子は、所定のサイズに切断される。このようにして、所定のサイズに切断された偏光板を製造することができる。
【符号の説明】
【0075】
10…フィルム製造ライン、20…フィルム製造装置、30…装置、40…フィルム、42…ナーリング部、50…ガイドローラ、60…巻き取り軸、61…オシレートモータ、62…オシレート部、64…偏心カム、66…バネ、70…アーム、100…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さまで巻き取り軸にフィルムを巻き取るフィルム巻き取り方法であって、
前記巻き取り軸を回転させることにより、前記巻き取り軸に巻き掛けられたフィルムを前記巻き取り軸に巻き取る巻き取りステップと、
前記巻き取りステップ中に、巻き取る直前の前記フィルムに対して前記巻き取り軸を前記フィルムの幅方向に相対的に往復スライドさせるスライドステップと、を備え、
前記スライドステップにおいて、前記巻き取り軸を一往復スライドさせる間に前記巻き取り軸に巻き取られるフィルムの厚みを周期とすると、前記巻き取り軸にフィルム巻き取り始めたときから前記所定の厚さの半分の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の周期の平均値よりも、前記所定の厚さの半分の厚さから所定の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の周期の平均値が大きくなるように、巻き取り直前の前記フィルムに対する前記巻き取り軸の相対的なスライド速度である相対スライド速度と前記巻き取り軸の回転速度のうち少なくとも一方が制御されるフィルム巻き取り方法。
【請求項2】
前記スライドステップでは、前記巻き取り軸にフィルムを巻き取り始めるときから前記所定の厚さまでフィルムを巻き取るまで、前記周期が漸増するように、前記相対スライド速度と前記巻き取り軸の回転速度のうち少なくとも一方が制御される請求項1に記載のフィルム巻き取り方法。
【請求項3】
所定の厚さまで巻き取り軸にフィルムを巻き取るフィルム巻き取り方法であって、
前記巻き取り軸を回転させることにより、前記巻き取り軸に巻き掛けられたフィルムを前記巻き取り軸に巻き取る巻き取りステップと、
前記巻き取りステップ中に、巻き取る直前の前記フィルムに対して前記巻き取り軸を前記フィルムの幅方向に相対的に往復スライドさせるスライドステップと、を備え、
前記スライドステップにおいて、前記巻き取り軸を一往復移動させた距離の半分の距離を振幅とすると、前記巻き取り軸にフィルム巻き取り始めたときから前記所定の厚さの半分の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の振幅の平均値よりも、前記所定の厚さの半分の厚さから所定の厚さまで前記フィルムを巻き取るまでの間の振幅の平均値が小さくなるように、巻き取り直前の前記フィルムに対する前記巻き取り軸の相対的なスライド量である相対スライド量が制御されるフィルム巻き取り方法。
【請求項4】
前記スライドステップでは、前記巻き取り軸にフィルムを巻き取り始めるときから前記所定の厚さまでフィルムを巻き取るまで、前記振幅が漸減するように、前記相対スライド量が制御される請求項3に記載のフィルム巻き取り方法。
【請求項5】
塗膜付きフィルムを製造するフィルム製造方法であって、
長尺支持体に塗布液を塗布するステップと、
塗布された塗布液を乾燥させて塗膜付きフィルムを形成するステップと、
請求項1から4のいずれか一つに記載のフィルム巻き取り方法により前記塗膜付きフィルムを巻き取るステップと、
を備えたフィルム製造方法。
【請求項6】
偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムが接着された偏光板の製造方法であって、
請求項1〜4のいずれか一つに記載のフィルム巻き取り方法で保護フィルムをロール状に巻き取る巻き取りステップと、
巻き取られた前記保護フィルムを巻き出し、巻き出した前記保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に接着する接着ステップと、
前記保護フィルムが接着された前記偏光子を所定の寸法に切断する切断工程と、
を備えた偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−100146(P2013−100146A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243558(P2011−243558)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】