説明

フィルム搬送装置

【課題】形状及び寸法の精度の良好な領域を備えたパターン位相差フィルムを製造しうるフィルム搬送装置を提供する。
【解決手段】液晶組成物層を備える長尺のフィルム材を搬送しつつ、液晶組成物層の所定の領域に光を照射しうるフィルム搬送装置であって、フィルム材に下方から気体を噴出しうる噴出口を備え、噴出口から気体を噴出することによりフィルム材を浮上させうる浮上搬送装置と、マスクを介して、浮上した前記フィルム材の前記液晶組成物層に光を照射しうる露光装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン位相差フィルムの製造に用いるフィルム搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進む立体画像表示装置における表示方式のうち、代表的な方式の一つに、パッシブ方式と呼ばれる方式がある。パッシブ方式の立体画像表示装置では、通常、同一画面内に右目用の画像と左目用の画像とを表示させ、これらの画像を専用のメガネを用いて左右の目それぞれに振り分けるようにしている。そのため、パッシブ方式の立体表示装置には、左右の目それぞれに対応した画像を、それぞれ異なる位置に異なる偏光状態で表示させるため、異なる面内位相差(面内レターデーション)を有する2種類以上の領域を面内の異なる位置に有する位相差フィルム(すなわち、「パターン位相差フィルム」)が設けられることがある。
【0003】
前記のパターン位相差フィルムは、例えばフォトリソグラフィを利用して製造される。フォトリソグラフィでは、通常、所定のパターンを有するマスク(「フォトマスク」ともいう。)を介して対象物に光を照射することにより、マスクのパターンをその対象物に写し取るようになっている。例えば、特許文献1には、マスクを介して液晶層に紫外線を照射することを含む、パターン位相差フィルムの製造方法が記載されている(特許文献1の段落[0047]〜[0049]、図11参照)。
【0004】
また、特許文献2〜8のような技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−152296号公報
【特許文献2】特開2005−212954号公報
【特許文献3】特開平01−209256号公報
【特許文献4】特開2004−284751号公報
【特許文献5】特開2010−195558号公報
【特許文献6】実公平01−038115号公報
【特許文献7】特開2010−269889号公報
【特許文献8】特開平04−354751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造効率を高める観点から、パターン位相差フィルムは、長尺のフィルム材を用いて連続的に製造されることが好ましい。通常は、長尺のフィルム材を搬送用のロールで搬送しつつ、パターン位相差フィルムを製造する。しかし、フォトリソグラフィを用いる製造方法においては、ロールでフィルム材を搬送しつつパターン位相差フィルムを製造すると、パターン位相差フィルムに形成される各領域の形状及び寸法の精度が低くなることがあった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、形状及び寸法の精度の良好な領域を備えたパターン位相差フィルムを製造しうるフィルム搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、液晶組成物層を備える長尺のフィルム材を搬送しつつ、液晶組成物層の所定の領域に光を照射してパターン位相差フィルムを製造するときに、フィルム材に下方から気体を噴出することによってフィルム材を浮上させることにより、製造されるパターン位相差フィルムにおいて各領域の形状及び寸法の精度を高められることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕 液晶組成物層を備える長尺のフィルム材を搬送しつつ、前記液晶組成物層の所定の領域に光を照射しうるフィルム搬送装置であって、
前記フィルム材に下方から気体を噴出しうる噴出口を備え、前記噴出口から気体を噴出することにより前記フィルム材を浮上させうる浮上搬送装置と、
マスクを介して、浮上した前記フィルム材の前記液晶組成物層に光を照射しうる露光装置とを備える、フィルム搬送装置。
〔2〕 前記浮上搬送装置が、前記噴出口から噴出する気体の流量を調整することにより、前記フィルム材と前記マスクとの距離を制御して、前記露光装置による光の照射幅を調整しうる、〔1〕記載のフィルム搬送装置。
〔3〕 光を照射される時の、前記フィルム材と前記マスクとの距離が、0mmより大きく5mm以下である、〔1〕又は〔2〕記載のフィルム搬送装置。
〔4〕 前記搬送装置は、前記露光装置よりも上流にロールを備え、
前記浮上搬送装置は、前記フィルム材の搬送方向において、前記ロールと前記露光装置との間に配置されている、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のフィルム搬送装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルム搬送装置によれば、形状及び寸法の精度の良好な領域を備えたパターン位相差フィルムを製造しうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係るフィルム搬送装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態に係るフィルム搬送装置を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、マスクの近傍においてマスクとフィルム材とを、搬送方向に垂直な平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、立体表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。
【図5】図5は、実施例1において用いたフィルム搬送装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図6】図6は、パターン位相差フィルムの面内ばらつきを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
【図7】図7は、実施例6において用いたフィルム搬送装置の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0013】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
また、「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0014】
また、「位相差」とは、別に断らない限り、面内位相差(面内レターデーション)のことを意味する。フィルムの面内位相差は、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率nx、前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率ny、フィルムの膜厚dを用いて、(nx−ny)×dで表される値である。面内位相差は、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製、「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
【0015】
また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」のことを意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」のことを意味する。
また、「紫外線」とは、波長が1nm以上400nm以下の光のことを意味する。
【0016】
また、構成要素の方向が「平行」又は「垂直」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、ある方向に「沿って」とは、ある方向に「平行に」との意味である。
【0017】
[1.フィルム搬送装置]
図1は、本発明の第一実施形態に係るフィルム搬送装置を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の第一実施形態に係るフィルム搬送装置を模式的に示す正面図である。図1及び図2では、部材の区別を容易にするべく第一の浮上搬送装置、露光装置及び第二の浮上搬送装置の間に空隙を開けて図示しているが、本発明の効果を著しく損なわない限り、この空隙は無くしてもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように、フィルム搬送装置100は、長尺のフィルム材200を搬送しうる装置であって、フィルム材200の搬送方向の上流から順に、第一のガイドロール110と、第一の浮上搬送装置120と、露光装置130と、第二の浮上搬送装置140と、第二のガイドロール150とを備える。また、本実施形態においては、フィルム材200は、露光装置130の光源131が出す光を透過させうる基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた液晶組成物層とを備える複層フィルムを例に挙げて説明する。ただし、液晶組成物層を備える限り、フィルム材200の構成は任意である。
【0019】
第一のガイドロール110及び第二のガイドロール150は、フィルム材200を案内するロールである。フィルム搬送装置100へと供給されるフィルム材200は、第一のガイドロール110を経由して、第一の浮上搬送装置120へと送り出されるようになっている。また、第二の浮上搬送装置140から送り出されたフィルム材200は、第二のガイドロール150を経由して、フィルム搬送装置100の外へと送り出されるようになっている。
【0020】
図1に示すように、第一の浮上搬送装置120は、気体を噴出しうる噴出口としてスリット121を備える。スリット121はフィルム材200の下に配置され、フィルム材200に下方から気体を噴出しうるようになっている。スリット121から気体を噴出することにより、フィルム材200の下に気体の層160が形成される(図2参照)。この気体の層160がフィルム材200を支持するので、搬送されるフィルム材200を浮上させうるようになっている。また、スリット121から噴射された気体は露光装置130へと流れるようになっているので、第一の浮上搬送装置120とフィルム材200との間だけでなく、露光装置130とフィルム材200との間にも気体の層160が形成される。このため、フィルム材200は、第一の浮上搬送装置120を通過するときだけでなく、露光装置130を通過するときにも気体の層160により支持されるようになっている。
【0021】
第一の浮上搬送装置120では、スリット121が噴出する気体の流量(特に、単位時間当たりの流量)を適切に設定することにより、フィルム材200の下に形成される気体の層160の厚みを変動させることなく、時間的に安定させられる。このため、フィルム搬送装置100では、搬送されるフィルム材200が通過する位置を一定に維持することが可能となっている。特に、露光装置130を通過するときのマスク132とフィルム材200との距離(以下、適宜「フィルム高さ」という。)hを一定に保つことが可能であるため、光を照射される領域の幅(以下、適宜「照射幅」という。ここでは、TD方向の寸法。)が変動することを防止できるので、液晶組成物層に形成される領域の形状及び寸法の精度を高めることができる。通常は、スリット121が噴出する気体の単位時間当たりの流量を一定にすることにより、フィルム高さhを一定に保つことができる。
【0022】
また、本実施形態において、スリット121は、図1に示すように、フィルム材200の幅方向に沿って設けられている。このため、気体は幅方向の全体に供給されるので、フィルム材200の全体を気体の層160によって支持できる。したがって、フィルム材200を幅方向の全体に亘って安定して浮上させることができるようになっている。
【0023】
さらに、第一の浮上搬送装置120では、スリット121が噴出する気体の流量(特に、単位時間当たりの流量)は変更可能となっている。そのため、フィルム材200の搬送の際には、スリット121から噴出する気体の流量を調整することにより、フィルム高さhを制御できるようになっている。具体的には、気体の流量が多くなれば気体の層160の厚みが厚くなってフィルム高さhが大きくなり、気体の流量が小さくなれば気体の層160の厚みが薄くなってフィルム高さhが小さくなるようになっている。
ここで使用される気体は、コスト等を考えて、空気(エアー)が好ましいが、窒素等の不活性ガス等を使用してもよい。
【0024】
図1に示すように、露光装置130は、光源131と、着脱可能に設けられたマスク132とを備え、マスク132を介して、浮上したフィルム材200の液晶組成物層に光を照射しうるようになっている。したがって、フィルム搬送装置100は、この露光装置130により、搬送されているフィルム材200の液晶組成物層の所定の領域に光を照射しうるようになっている。本実施形態では露光装置130はフィルム材200の下に配設されているが、必要に応じて、露光装置130はフィルム材200の上に配設してもよい。
【0025】
光源131としては、所望の光を発するものを任意に用いてもよい。通常は、液晶組成物層を硬化させうる波長の光を出す光源を用いる。このような光の例としては紫外線が挙げられる。また、光源131の例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0026】
照射強度(照度)は、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1mW/cm〜100mW/cmであることが好ましい。光の照射強度が0.1mW/cm未満であると、反応時間が長くなりすぎ、100mW/cmを超えると、光源からの輻射熱、重合反応熱等により、液晶組成物が黄変したり、フィルム材自体が変形する恐れがある。
光の照射時間は、硬化状況に応じて適宜選択されるものであって、特に限定されないが、照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10mJ/cm〜10,000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。
【0027】
光源131として、複数の光源を用いてもよい。また、光源131は、光を平行光化する部材を備えていてもよい。そのような部材としては、例えば、フライアイレンズ、レンチキュラーレンズなどが挙げられる。また、光源131は、フィルターを備えていてもよい。そのようなフィルターの例を挙げると、バンドパスフィルター、減光フィルターなどが挙げられる。
【0028】
マスク132は、光源131が出した光を透過させうる透光部133と遮断しうる遮光部134とを備え、光源131とフィルム材200との間に設置されている。光源131が出した光は、マスク132を介して、マスク132の上に浮上したフィルム材200の液晶組成物層に照射されるようになっている。このため、液晶組成物層の領域のうち、遮光部134に相当する領域には光は照射されず、透光部133に相当する領域には透光部133を透過した光が照射される。すなわち、透光部133に相当する液晶組成物層の領域に選択的に光が照射されるようになっている。
【0029】
マスク132において透光部133及び遮光部134の位置、形状及び寸法は、パターン位相差フィルムにおいて形成したい領域の位置、形状及び寸法に応じて設定される。
本実施形態では、透光部133及び遮光部134は、いずれもフィルム材200の搬送方向に延在する、帯状の部分となっている。また、透光部133及び遮光部134は、それぞれ幅が一定になっている。さらに、透光部133及び遮光部134は、フィルム材200の幅方向において交互に並んでおり、全体としてストライプ状となるように配置されている。
【0030】
また、透光部133及び遮光部134の幅は、用いる液晶パネル中の画素の寸法や横縦の解像度に適合させて適宜設定してもよい。例えば20インチ、解像度(横1600×縦1200ピクセル)では、幅は200μm〜260μmにしてもよく、また、例えば27インチ、解像度(横1920×縦1200ピクセル)では、幅は280μm〜340μmにしてもよい。通常、透光部133及び遮光部134の幅は立体画像装置の1画素と同等の幅であり、画面サイズに応じて適宜変化しうるが、一般的に800μm以下である。透光部133及び遮光部134の幅はこのように狭いので、形状及び寸法の精度が低下は品質に大きな影響を及ぼす傾向がある。しかし、フィルム搬送装置100を用いれば、このように透光部133及び遮光部134の幅が狭い場合でも、透光部133及び遮光部134を精度良く液晶組成物層に写し取ることが可能である。
【0031】
露光装置130におけるフィルム高さ(即ち、マスク132と、露光装置130を通過するフィルム材200との距離)hは、露光装置130による光の照射幅(即ち、各透光部133を透過した光が照射される液晶組成物層の領域それぞれの幅)と相関がある。また、光の照射幅は、パターン位相差フィルムに形成される領域の幅に対応している。したがって、フィルム高さhを調整することにより、パターン位相差フィルムの領域の幅を調整することができる。以下、この点について図面を用いて説明する。
【0032】
図3は、マスク132の近傍においてマスク132とフィルム材210及び220とを、搬送方向に垂直な平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。ここで、基材フィルム211及び液晶組成物層212を備えたフィルム材210は、マスク132までの距離(フィルム高さ)h210が小さく、また、基材フィルム221及び液晶組成物層222を備えたフィルム材220は、マスク132までの距離(フィルム高さ)h220が大きいものとする。
【0033】
図3に示すように、光源131(図1及び図2参照。)から出た光がマスク132の透光部133を透過すると、回折を生じる。このため、マスク132を透過した後の光Aは広がるように進むので、通常は、露光装置130におけるフィルム高さhが大きくなるほど光の照射幅も大きくなる。したがって、図3に示す例では、この光Aが近いフィルム材210に照射される際の照射幅W210よりも、遠いフィルム材220に照射される際の照射幅W220が広くなる。
【0034】
よって、この回折による光の広がりを利用すれば、光の照射幅を容易に調整することができる。具体的には、光の照射幅を広くしたい場合には露光装置130におけるフィルム高さhを大きし、光の照射幅を狭くしたい場合には露光装置130におけるフィルム高さhを小さくする。前述したように、フィルム高さhは、第一の浮上搬送装置120のスリット121が噴出する気体の流量を調整することにより制御可能である。したがって、フィルム搬送装置100においては、スリット121が噴出する気体の流量を調整することにより、容易に光の照射幅を調整でき、ひいてはパターン位相差フィルムの領域の幅を調整することができる。
【0035】
ただし、フィルム高さhがあまりに大きすぎると回折の影響が大きくなり、光が照射される領域と照射されない領域との境界が不鮮明となる可能性がある。したがって、露光装置130におけるフィルム高さhは過度に大きくしないことが好ましい。具体的な範囲は、光源131が出す光の波長、透光部133の寸法、パターン位相差フィルムに要求される品質の程度などに応じて設定しうる。例えば、立体画像表示装置用のパターン位相差フィルムを製造する場合、光を照射される時のフィルム高さhは、通常0mmより大きく、また、通常5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。
【0036】
図1に示すように、第二の浮上搬送装置140は、第一の浮上搬送装置120を補助するものであり、気体を噴出しうる噴出口としてスリット141を備える。スリット141は、第一の浮上搬送装置120のスリット121と同様に、フィルム材200の下に配置され、フィルム材200に下方から気体を噴出しうるようになっている。したがって、フィルム材200を支持する気体の層160には、第一の浮上搬送装置120のスリット121からだけではなく、第二の浮上搬送装置140のスリット141からも気体が供給されるようになっている。
【0037】
このため、露光装置130の上流から下流にかけての広い範囲で安定した気体の層160が形成されるので、第一の浮上搬送装置120だけを用いる場合に比べて、露光装置130を通過する際のフィルム材200の変動を更に小さくして、フィルム高さhを時間的に更に安定させることができる。したがって、第一の浮上搬送装置120及び第二の浮上搬送装置140の両方を備えていることにより、フィルム搬送装置100は、より確実に光の照射幅を経時的に変動しないようにできるので、パターン位相差フィルムの領域の形状及び寸法の精度を更に高めることができる。
【0038】
また、第二の浮上搬送装置140は、第一の浮上搬送装置120と同様に、スリット141が噴出する気体の流量を適切に設定することによって、搬送されるフィルム材200が通過する位置を一定に維持することができる。また、第一の浮上搬送装置120と同様に、スリット141が噴出する気体の流量を調整することにより、露光装置130におけるフィルム高さhを制御することができる。
【0039】
本発明の第一実施形態に係るフィルム搬送装置は上述したように構成されている。このため、使用時には、露光装置130の光源131を光らせた状態で、液晶組成物層を備えたフィルム材200をフィルム搬送装置100に供給する。供給されたフィルム材200は、所定のテンションを与えられた状態で、第一のガイドロール110、第一の浮上搬送装置120、露光装置130、第二の浮上搬送装置140及び第二のガイドロール150をこの順に通過するように、搬送される。
【0040】
この際、フィルム材200は、第一のガイドロール110及び第二のガイドロール150には接触するが、第一の浮上搬送装置120、露光装置130及び第二の浮上搬送装置140には接触しない。第一の浮上搬送装置120のスリット121及び第二の浮上搬送装置140のスリット141から噴出する気体の層160によって支持されて、浮上状態で搬送されるからである。
【0041】
また、フィルム材200は、搬送されつつ、露光装置130によって光を照射される。具体的には、光源131から出された光が、マスク132を介してフィルム材200に入射し、基材フィルムを透過して液晶組成物層に照射される。マスク132の透光部133は光を透過させるが、遮光部134では光を透過させないので、液晶組成物層には、マスク132の透光部133を透過した光だけが照射される。こうして、液晶組成物層には、透光部133と同様の領域が写し取られる。
【0042】
このとき、第一の浮上搬送装置120のスリット121及び第二の浮上搬送装置140のスリット141が噴出する気体の流量を適切に設定することにより、搬送されるフィルム材200が通過する位置を、時間的に安定にすることができる。したがって、露光装置130におけるフィルム高さhを一定に保つことが可能であるため、液晶組成物層において光が照射される領域の形状及び寸法の精度を高めることができる。
【0043】
仮に第一の浮上搬送装置120及び第二の浮上搬送装置140が無い場合、フィルム材200は、第一のガイドロール110と第二のガイドロール150との間で自重によって撓む。そうすると、僅かな振動によってもフィルム材200は高さ方向で容易に動き、位置が変動することがある。また、第一のガイドロール110及び第二のガイドロール150の傾き、真円度などの精度が低下すると、第一のガイドロール110及び第二のガイドロール150だけで支持されたフィルム材200へのテンションの係り具合が一様でなくなる。そうすると、これによってもフィルム材200は動き、設計どおりの位置に留まれなくなることがある。これらの現象が生じると、露光装置130を通過するときのフィルム材200の位置が、高さ方向及び幅方向で変動するので、パターン位相差フィルムに形成される各領域の形状及び寸法の精度が低くなることがあった。
【0044】
これに対し、本実施形態に係るフィルム搬送装置100では、少なくとも第一の浮上搬送装置120を用い、また好ましくは第二の浮上搬送装置140を組み合わせて用いることにより、気体の層160によってフィルム材200を支持している。このため、振動によるフィルム材200の高さ方向の動きを抑制することができるので、パターン位相差フィルムに形成される各領域の形状及び寸法の精度を改善することができる。また、気体の層160によって支持されるため、フィルム材200のフィルム高さhは、第一のガイドロール110及び第二のガイドロール150の傾き、真円度などの影響は受け難くなるので、これによっても、パターン位相差フィルムに形成される各領域の形状及び寸法の精度を改善することができる。
【0045】
フィルム材200の挙動を安定させて、フィルム高さhをより確実に一定に保つために第一のガイドロール110と第二のガイドロール150との間において、フィルム材200が、第一のガイドロール110及び第二のガイドロール150よりも鉛直方向において上になるようにすることが好ましい。したがって、スリット121及び141から噴出する気体の流量を多くして、フィルム材200が上側に反るようにすることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係るフィルム搬送装置100によれば、スリット121又は141から噴出する気体の流量を調整することにより、露光装置130におけるフィルム材200のフィルム高さhを制御して、光の照射幅を調整することができる。このため、スリット121又は141から噴出する気体の流量を調整という簡単な制御により、パターン位相差フィルムに形成される各領域の形状及び寸法を制御することが可能である。
【0047】
本発明の第一実施形態に係るフィルム搬送装置100は上述したように構成されたが、更に変更して実施してもよい。
例えば、第一実施形態では露光装置130はフィルム材200の下側から光を照射するようにしたが、上側から光を照射するようにしてもよい。
また、例えば、噴出口の形状はスリット状以外の形状にしてもよい。さらに、噴出口の数、位置なども、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
また、少なくともフィルム材の搬送方向において第一のガイドロールと露光装置との間に浮上搬送装置が設けられていれば、パターン位相差フィルムの領域の形状及び寸法の精度を良好にできる。したがって、前記の実施形態においては、第二の浮上搬送装置を設けなくても、パターン位相差フィルムの領域の形状及び寸法の精度を高めることは可能である。
さらに、例えば、フィルム搬送装置には、第一実施形態で説明したものに加え、更に別の構成要素を設けてもよい。具体例を挙げると、紫外線露光の開口度を調整できるアパーチャー、系内の雰囲気を制御するチャンバー、フィルム材200を加熱するヒーター、フィルム高さhを測定するセンサー、搬送ゆらぎを測定するセンサーなどを設けてもよい。
【0048】
[2.パターン位相差フィルム]
本発明のフィルム搬送装置を用いた、パターン位相差フィルムの製造方法の一例を説明する。この製造方法では、液晶組成物層として、露光装置による光の照射によって硬化しうるものを用いて、以下の工程を行う。通常、以下の工程はいずれも、インラインでフィルムを連続的に搬送しながら実施する。
i.基材フィルム上に、液晶組成物層を形成して、長尺のフィルム材を得る工程。
ii.本発明のフィルム搬送装置でフィルム材を搬送しつつ、液晶組成物層の所定の領域に光を照射して、液晶組成物層の一部の領域を硬化させる工程。
iii.液晶組成物層の未硬化状態の領域の配向状態を変化させる工程。
iv.パターン位相差フィルムに光を照射して、液晶組成物層の未硬化状態の領域を硬化させる工程。
【0049】
さらに、必要に応じて、適切な時期に、以下の工程を行ってもよい。
v.基材フィルム上に配向膜を形成する工程。
vi.液晶組成物層に含まれる液晶化合物を配向させる工程。
vii.液晶組成物層を乾燥させる工程。
所望のパターン位相差フィルムが得られる限り、前記の工程の順番は任意である。
【0050】
〔2−1.基材フィルムの用意〕
基材フィルムは、パターン位相差フィルムを製造する際に使用される長尺のフィルムである。
基材フィルムの材料としては、通常は樹脂を用いる。未硬化状態の液晶組成物層を硬化させる工程において基材フィルムを介して液晶組成物層に光を照射する場合は、液晶組成物を硬化させられる程度に光を透過させられる材料を用いることが好ましい。通常は、1mm厚で全光線透過率(JIS K7361−1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いて測定)が80%以上である材料が好適である。
【0051】
さらに、基材フィルムの材料としては、熱及び張力に強く、ライン搬送時の揺れの小さくする観点から、弾性率の高い材料を用いることが好ましい。
【0052】
基材フィルムの材料の例を挙げると、鎖状オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィンポリマー及びシクロオレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィンポリマーが特に好ましい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、基材フィルムの材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。好適な材料の具体例を挙げると、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」を挙げることができる。
【0053】
基材フィルムの厚みは、製造時のハンドリング性、材料のコストの観点からは薄くしてもよいが、熱及び張力に強く、ライン搬送時の揺れを小さくする観点から厚くしてもよい。基材フィルムは、液晶組成物層から剥がされて最終的にはパターン位相差フィルムには残らない場合もありえるので、基材フィルムの厚みを厚くしてもパターン位相差フィルムの薄膜化を妨げないことも可能である。具体的な範囲としては、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
【0054】
基材フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。また、等方なフィルムであっても、異方性を有するフィルムであってもよい。さらに、基材フィルムは、一層のみからなる単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層からなる複層構造のフィルムであってもよい。通常は、生産性及びコストの観点から、単層構造のフィルムを用いる。
【0055】
基材フィルムの液晶組成物層を形成する面には、ラビング処理を施してもよい。ラビング処理を施すことにより、配向膜を形成しなくても、液晶組成物層において液晶化合物を配向させることができる。通常、基材フィルムの搬送方向とラビング方向は平行になる。
基材フィルムの表面のラビング処理は、基材フィルムの表面に未硬化状態の液晶組成物層を設ける工程の前に行う。
【0056】
基材フィルムは、片面又は両面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を施すことにより、基材フィルムの表面に直接形成される他の層と基材フィルムとの密着性を向上させることができる。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。
【0057】
〔2−2.配向膜の形成工程〕
液晶組成物層は、基材フィルムの表面に直接に形成してもよいが、基材フィルムの表面に例えば配向膜等を介して間接的に塗布してもよい。配向膜を用いれば、液晶組成物層において液晶化合物を容易に配向させることができる。配向膜の形成工程は、基材フィルムの表面に未硬化状態の液晶組成物層を設ける工程の前に行う。
【0058】
配向膜は、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いて形成してもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
配向膜の厚みは、所望する液晶組成物層の配向均一性が得られる厚みにする。具体的な厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。さらに、例えば、特開平6−289374号公報、特表2002−507782号公報、特許4022985号公報、特許4267080号公報、特許4647782号公報、米国特許5389698号明細書などに示されるような光配向膜と偏光紫外線を用いる方法によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。
【0060】
〔2−3.液晶組成物層の形成工程〕
基材フィルムを用意し、必要に応じて配向膜を形成した後で、基材フィルム上に、直接又は配向膜等を介して、液晶組成物層を形成する。
【0061】
液晶組成物としては、液晶化合物を含む組成物を用いうる。前記の液晶化合物としては、例えば、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0062】
液晶化合物の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下である。屈折率異方性Δnが0.05未満では所望の光学的機能を得るために液晶組成物層の厚さが厚くなって配向均一性が低下する可能性があり、また経済コスト的にも不利である。屈折率異方性Δnが0.30より大きいと所望の光学的機能を得るために液晶組成物層の厚さが薄くなり、厚さ精度に対して不利である。屈折率異方性Δnが0.30より大きい場合、液晶組成物層の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合がありえるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。液晶組成物が液晶化合物を1種類だけ含む場合には、当該液晶化合物の屈折率異方性を、そのまま液晶組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。また、液晶組成物が液晶化合物を2種類以上含む場合には、各液晶化合物それぞれの屈折率異方性Δnの値と各液晶化合物の含有比率とから求めた加重平均値を、液晶組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。屈折率異方性Δnの値は、セナルモン法により測定しうる。
【0063】
さらに、液晶組成物は、製造方法や最終的な性能に対して適正な物性を付与するために、液晶化合物以外に任意の成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、有機溶媒、界面活性剤、キラル剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
有機溶媒のうち好適な例を挙げると、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、環状ケトン類、環状エーテル類が、液晶化合物を溶解させやすいために好ましい。環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3−ジオキソランが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよく、液晶組成物としての相溶性や粘性、表面張力の観点などから最適化されることが好ましい。
有機溶媒の含有割合は、有機溶媒以外の固形分全量に対する割合として、通常は30重量%以上95重量%以下である。
【0065】
界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することが好ましい。好ましい界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン及びフッ化アルキル基等を含有するノニオン系界面活性剤などが挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の例を製品名で挙げると、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社サーフロンのKH−40等が挙げられる。界面活性剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0066】
界面活性剤の配合割合は、硬化後の液晶組成物層における界面活性剤の濃度が0.05重量%以上3重量%以下となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合を0.05重量%以上にすることにより、空気界面における配向規制力を高くして配向欠陥を生じ難くすることができる。逆に3重量%以下とすることにより、過剰の界面活性剤が液晶化合物の分子間に入り込まないようにして、配向均一性を高くすることができる。
【0067】
キラル剤は、重合性化合物であってもよく、非重合性化合物であってもよい。キラル剤としては、通常、分子内にキラルな炭素原子を有し、液晶化合物の配向を乱さない化合物を使用する。キラル剤の例を挙げると、重合性のキラル剤としてはBASF社製「LC756」等が挙げられる。また、例えば、特開平11−193287号公報、特開2003−137887号公報などに記載されているものも挙げられる。キラル剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。キラル剤は、通常、ツイステッドネマチック相を有する領域を形成する場合に、重合性を有する液晶化合物と併用して用いられる。
【0068】
重合開始剤は、例えば熱重合開始剤を用いてもよいが、通常は光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる化合物を使用しうる。光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。重合開始剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて液晶組成物に、例えば三級アミン化合物等の光増感剤又は重合促進剤を含ませて、液晶組成物の硬化性をコントロールしてもよい。光重合効率を向上させるためには、液晶化合物及び光重合開始剤などの平均モル吸光係数を適切に選定することが好ましい。
【0069】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系;などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、所望する耐光性を付与するために、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0070】
紫外線吸収剤の配合割合は、液晶化合物100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。紫外線吸収剤の配合割合を、0.001重量部以上にすることにより紫外線吸収能を十分に高くして耐光性を高くすることができ、5重量部以下とすることにより液晶組成物を紫外線等の光で硬化させる際に十分に硬化を進行させて、液晶組成物層の機械的強度及び耐熱性を高くできる。
【0071】
液晶組成物には、所望する機械的強度に応じて架橋剤を含ませてもよい。架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、液晶組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
【0072】
前記架橋剤の配合割合は、硬化後の液晶組成物層における架橋剤の濃度が0.1重量%以上20重量%以下となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合を0.1重量%以上とすることにより架橋密度を安定して向上させることができ、20重量%以下とすることにより硬化後の液晶組成物層の安定性を高くすることができる。
【0073】
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の配合量は、粘着層の透明性や粘着力が低下しない範囲としうる。
【0074】
液晶組成物層を形成する方法としては、通常は、塗布法を用いる。液晶組成物の塗布方法としては、例えば、リバースグラビアコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等の方法が挙げられる。
液晶組成物を基材フィルムに塗布することにより、塗膜として未硬化状態の液晶組成物層が形成され、基材フィルムと未硬化状態の液晶組成物層とを備え、更に必要に応じて配向膜を備えるフィルム材が得られる。
【0075】
〔2−4.配向工程〕
未硬化状態の液晶組成物層を形成する工程を行った後で、液晶組成物層に含まれる液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程における具体的な操作としては、例えば、オーブン内で未硬化状態の液晶組成物層を所定の温度に加熱する操作を挙げることができる。
【0076】
配向工程において液晶組成物層を加熱する温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは140℃以下である。また、加熱処理における処理時間は、通常1秒以上、好ましくは5秒以上であり、通常3分以下、好ましくは120秒以下である。これにより、液晶組成物層中の液晶化合物が配向しうる。
また、液晶組成物に溶媒が含まれていた場合、前記の加熱によって通常は溶媒が乾燥するので、液晶組成物層から溶媒が除去される。したがって、配向工程を行うと、通常は液晶組成物層を乾燥させる乾燥工程も同時に進行する。
通常、液晶組成物層の配向軸はラビング方向と平行となり、配向軸が遅相軸となる。
【0077】
〔2−5.フィルム搬送装置を用いた硬化工程(第一の硬化工程)〕
未硬化状態の液晶組成物層を形成する工程を行った後で、また、必要に応じて配向工程を行った後で、フィルム材は、本発明のフィルム搬送装置に送られる。フィルム搬送装置では、フィルム材を搬送しつつ、液晶組成物層の所定の領域に光を照射して、液晶組成物層の一部の領域を硬化させる工程を行う。
露光装置の光源から照射された光はマスクの遮光部では遮断される。このため、液晶樹脂層において、遮光部の光源とは反対側の位置の領域へは光が照射されないので、液晶樹脂層は硬化しない。
他方、光源から照射された光はマスクの透光部を透光する。このため、液晶樹脂層において、透光部の光源とは反対側の位置の領域へは透光部を透過した光が進入するので、この領域には光が照射され、液晶樹脂層は硬化する。この際、光を照射された領域では配向状態を維持したまま液晶組成物が硬化するので、この光を照射された領域に、所定の面内位相差を有する領域(以下、適宜「異方性領域」という。)が形成される。
【0078】
この製造方法では、本発明のフィルム搬送装置を用いているので、露光装置におけるフィルム高さhを一定に保つことが可能である。また、このため、液晶組成物層において光が照射される領域の形状及び幅を精密に制御することが可能であるので、異方性領域の形状及び寸法の精度を高くすることができる。
また、本発明のフィルム搬送装置によれば、浮上搬送装置のスリットから噴出する気体の流量を調整することにより、露光装置におけるフィルム高さhを制御して、光の照射幅を調整することができる。このため、異方性領域の形状及び寸法を、容易に制御することが可能である。
【0079】
第一の硬化工程における光の照射時間、積算光量、及びその他の条件は、液晶組成物の組成及び液晶組成物層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。照射時間は通常0.01秒から3分の範囲であり、積算光量は通常0.01mJ/cmから50mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
異方性領域を形成した後、フィルム材はフィルム搬送装置から次の工程へと送り出される。
【0080】
〔2−6.配向変化工程〕
フィルム搬送装置を用いた硬化工程の後で、液晶組成物層の光を照射されなかった領域(即ち、液晶組成物層の未硬化状態の領域)における配向状態を変化させる工程を行う。
【0081】
この工程において、どのような配向状態に変化させるかはパターン位相差フィルムの用途に応じて設定しうる。本例では、ヒーターにより、液晶組成物層を、液晶組成物の透明点(NI点)以上に加熱する。これにより、液晶化合物の配向状態が変化してランダムになるので、液晶組成物層の未硬化状態の領域は等方相の領域(以下、適宜「等方性領域」という。)となり、その等方性領域の面内位相差はゼロに近くなる。また、このように加熱した場合でも、異方性領域は硬化しているために配向状態が維持されるので、異方性領域における面内位相差が変化しない。
ただし、液晶組成物層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる手段は、加熱以外の方法を採用してもよい。
【0082】
〔2−7.第二の硬化工程〕
未硬化状態の領域の配向状態を変化させて等方性領域とした後で、その等方性領域を硬化させる第二の硬化工程を行う。この際、等方性領域では液晶組成物において重合反応が進行し、液晶化合物分子は配向状態がランダム状態を維持したまま固定化される。
【0083】
第二の硬化工程は、光の照射により行ってもよい。例えば、本発明のフィルム搬送装置において異方性領域を硬化させるために用いた光と同様の光を用いてもよい。当該光の照射時間、積算光量などは、液晶組成物の組成及び液晶組成物層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。光の積算光量は、通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。照射に際して、必要に応じてヒーターによる加熱を継続して、未硬化状態の液晶組成物層の配向状態(例えば、等方相)を維持した状態で照射を行ってもよい。
【0084】
上述した製造方法により、基材フィルム上に、異方性領域と等方性領域とを有する液晶組成物層を備えたパターン位相差フィルムが得られる。これらの異方性領域及び等方性領域は、マスクの透光部及び遮光部を精度よく写し取った形状及び寸法を有している。したがって、例えば上述した第一実施形態のように透光部及び遮光部がストライプ状に並んだマスクを用いた場合には、複数の異方性領域及び等方性領域が幅方向において交互に並んで全体としてストライプ状の配置を有するパターン位相差フィルムが得られる。
【0085】
得られたパターン位相差フィルムにおいては、パターン位相差フィルムに形成される異方性領域及び等方性領域の形状及び寸法の精度が高い。本例の場合、異方性領域及び等方性領域は、いずれも蛇行したり屈曲したりせず、直線状に延びる帯状の領域となる。また、異方性領域及び等方性領域の幅が高度に均一となり、面内ばらつきが小さくなる。
【0086】
また、こうして得られたパターン位相差フィルムにおいては、異なる位相差を有する異方性領域と等方性領域との間には、物質的な連続性がある。したがって、本例の製造方法で製造されたパターン位相差フィルムは、異方性領域と等方性領域と間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、異方性領域と等方性領域と間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
【0087】
パターン位相差フィルムの異方性領域が有する位相差Reの大きさは、通常、透過光の略1/2波長である。すなわち、異方性領域は、1/2波長板として機能しうる領域となっている。具体的には、異方性領域の位相差Reは、通常240nm以上、好ましくは245nm以上、より好ましくは250nm以上であり、通常280nm以下、好ましくは275nm以下、より好ましくは270nm以下である。ここで、位相差Reの測定波長は546nmとする。
【0088】
他方、パターン位相差フィルムの等方性領域は位相差Reを有さない。ここで位相差Reを有さないとは、位相差がゼロである場合だけでなく、用途に応じて実質的に位相差がゼロと見なせる程度に小さい位相差Reを有することも含む。具体的な位相差Reの範囲を挙げると、測定波長546nmにおいて、位相差Reが、通常0〜65nm、好ましくは0〜30nm、より好ましくは0〜10nmの範囲である場合に、等方性領域は位相差Reを有さない。
【0089】
〔2−8.その他の工程〕
必要に応じて、上述した工程以外の工程を行うようにしてもよい。
例えば、パターン位相差フィルムの基材フィルムとは反対側に、保護層等の別の層を設ける工程を行ってもよい。
また、例えば、液晶組成物層と基材フィルムとを剥がす工程を行ってもよい。
【0090】
[3.立体画像表示装置]
本発明のフィルム搬送装置を用いて製造したパターン位相差フィルムは、例えば、立体画像表示装置の構成部材として用いてもよい。以下、その立体表示装置の具体的な例について図面を示して説明する。以下の例において、透過軸、遅相軸等の光学軸の角度のプラス及びマイナスの向きは、偏光メガネをかけて画像を見る向きにおいて、反時計回りの角度をプラスの角度、時計回りの角度をマイナスの角度として表記する。
【0091】
図4は、立体表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。また図4は、観察者が立体表示装置の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を、上側から観察した例を示している。立体表示装置は、図中左側に縦置きされ(即ち、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれ)、従って図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向と平行になる。図4に示すように、立体表示装置300は、液晶パネル310と、1/4波長板である位相差フィルム320と、パターン位相差フィルム330とを、この順に備える。使用の態様において、液晶パネル310、位相差フィルム320及びパターン位相差フィルム330は、通常は貼付された状態とされるが、図4では図示のためこれらを分解して示している。
【0092】
液晶パネル310は、光源側から順に、直線偏光板である光源側偏光板311と、液晶セル312と、直線偏光板である視認側偏光板313とを備える。これらにより、液晶パネル310を透過した光は、直線偏光となっている。視認側偏光板313の透過軸は、矢印A313で示す通り鉛直方向に平行であり、したがって視認側偏光板313から出射する光の偏光方向も矢印A313で示される鉛直方向となる。
【0093】
液晶パネル310には、厚み方向から見てそれぞれ異なる位置に、右目用画像を表示する画素領域314と左目用画像を表示する画素領域315とが設定されている。これらの画素領域314及び315はいずれも水平方向に延在する帯状の領域となっている。また、右目用画像を表示する画素領域314及び左目用画像を表示する画素領域315は幅が一定の領域となっていて、それらの配置は、右目用画像を表示する画素領域314と左目用画像を表示する画素領域315とが鉛直方向において交互となるように並んだストライプ状の配置となっている。
【0094】
位相差フィルム320は、透過光に対して略1/4波長板として機能しうるフィルムであって、面内に一様な面内位相差を有する。具体的には、位相差フィルム320の位相差が、透過光の波長範囲の中心値において、中心値の1/4の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲である場合に、透過光に対して略1/4波長として機能しうるといえる。通常、画像表示に用いられる光は可視光であるので、可視光の波長範囲の中心値である波長546nmに対して前記の要件を満たせば、略1/4波長板として機能しうることになる。
位相差フィルム320の遅相軸は、矢印A320で示す通り、視認側偏光板313の偏光透過軸に対して−45°の角度をなす方向である。視認側偏光板313を透過した直線偏光は、この位相差フィルム320を透過することにより、矢印A340で示す回転方向を有する円偏光に変換される。
【0095】
位相差フィルム320は、例えば、樹脂により形成された延伸フィルムを用いてもよい。通常、樹脂はポリマー(重合体)を含む。位相差フィルム320の材料となる樹脂が含むポリマーの例を挙げると、鎖状オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィンポリマー及びシクロオレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィンポリマーが特に好ましい。
【0096】
なお、樹脂は、1種類のポリマーを単独で含むものを用いてもよく、2種類以上のポリマーを任意の比率で組み合わせて含むものを用いてもよい。また、樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。
さらに、位相差フィルム320としては、単層構造のフィルムを用いてもよく、複層構造のフィルムを用いてもよい。
好適な位相差フィルム320の例を挙げると、市販の長尺の斜め延伸フィルム、横延伸フィルム、例えば、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」、「横延伸ゼオノアフィルム」を挙げることができる。
【0097】
パターン位相差フィルム330は、水平方向に対して平行且つ均一に設けられた帯状の異方性領域331と帯状の等方性領域332とを有する。異方性領域331及び等方性領域332は、鉛直方向において交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、厚み方向から見ると、異方性領域331は液晶パネル310の左目用画像を表示する画素領域315に重なり、等方性領域332は液晶パネルの右目用画像を表示する画素領域314に重なるようになっている。
【0098】
異方性領域331の面内位相差は透過光の略1/2波長である。異方性領域331の遅相軸は、矢印A331で示す通り、視認側偏光板313の偏光透過軸に対して垂直な方向(即ち水平方向)である。これにより、位相差フィルム320を透過した円偏光のうち、異方性領域331を透過した光は、矢印A351で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換される。他方、等方性領域332の面内位相差は略ゼロであり、したがって、位相差フィルム320を透過した円偏光のうち等方性領域332を透過した光は、矢印A352で示す通り、透過前と同じ回転方向を有する円偏光となっている。
【0099】
この例において、観察者は、偏光メガネ400を通して立体表示装置300の表示面を観察する。偏光メガネ400は、1/2波長板410、1/4波長板420及び直線偏光板430をこの順に備える。1/2波長板410の遅相軸は、矢印A410で示す通り、パターン位相差フィルム330の異方性領域331の遅相軸に対して垂直である(即ち、鉛直方向に平行である。)。1/4波長板420の遅相軸は、矢印A420で示す通り、立体表示装置の位相差フィルム320の遅相軸に対して垂直である。直線偏光板430の偏光透過軸は、矢印A430で示す通り、立体表示装置300の視認側偏光板313の偏光透過軸に垂直な方向(即ち水平方向)である。また、1/2波長板410は、偏光メガネ400の、右目に対応する部分に設けられているが、左目に対応する部分には設けられない。
【0100】
偏光メガネ400の波長板の配置をこのようにすることで、右目に到達する光Rと左目に到達する光Lが通過してきた波長板の構成は、立体表示装置300と偏光メガネ400との間を境にして対称となる。これにより、各々の波長板で発生する波長分散を解消して、右目に到達する光Rと左目に到達する光Lの波長分散は同じになり、右目と左目で見る映像の色味に差異が生じることはない。
【0101】
異方性領域331を透過した光Lが、偏光メガネ400の左目に対応する部分に入射すると、その光Lは、1/4波長板420に入射する。1/4波長板420を透過した光は、水平方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板430を透過することができる。したがって、異方性領域331を透過した光Lは、使用者の左目で視認される。
【0102】
一方、異方性領域331を透過した光Lが、偏光メガネ400の右目に対応する部分に入射すると、その光Lは、1/2波長板410を透過し、反転した回転方向(即ち、矢印A440と反対方向)を有する円偏光に変換され、1/4波長板420に入射する。1/4波長板420を透過した光は、鉛直方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板430を透過することができない。したがって、異方性領域331を透過した光Lは、使用者の右目で視認されない。
【0103】
また、等方性領域332を透過した光Rが、偏光メガネ400の右目に対応する部分に入射すると、その光Rは、1/2波長板410を透過し、矢印A440で示すように、反転した回転方向を有する円偏光に変換され、1/4波長板420に入射する。1/4波長板420を透過した光は、水平方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板430を透過することができる。したがって、等方性領域332を透過した光Rは、使用者の右目で視認される。
【0104】
一方、等方性領域332を透過した光Rが、偏光メガネ400の左目に対応する部分に入射すると、その光Rは、1/4波長板420に入射する。1/4波長板420を透過した光は、鉛直方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板430を透過することができない。したがって、等方性領域332を透過した光Rは、使用者の左目で視認されない。
【0105】
このように、使用者は、異方性領域331を透過した光を左目で視て、また、等方性領域332を透過した光を右目で視ることになる。したがって、液晶パネル310の異方性領域331に対応する領域で左目用の画像を表示し、液晶パネル310の等方性領域332に対応する領域で右目用の画像を表示することにより、使用者は、立体画像を視認できる。
【0106】
また、立体表示装置300のパターン位相差フィルム330は、本発明のフィルム搬送装置を用いて製造されたものであるので、異方性領域331及び等方性領域332の形状及び寸法の精度が良好である。したがって、立体画像表示装置300は、画質を向上させたり、立体表示装置を見る位置、角度によって表示すべき画像が部分的に表示されなくなることを防止したりできる。
【0107】
なお、上記の立体表示装置300は、更に変更して実施してもよい。
例えば、位相差フィルム320とパターン位相差フィルム330との順番を入れ替えて、位相差フィルム320をパターン位相差フィルム330よりも視認側に設けてもよい。
また、例えば、立体表示装置300に、反射防止フィルム、ギラツキ防止フィルム、アンチグレアフィルム、ハードコートフィルム、輝度向上フィルム、接着層、粘着層、ハードコート層、反射防止膜、保護層などを設けてもよい。
また、偏光メガネ400の右目に対応する部分と左目に対応する部分の構成を入れ替えて、且つ、液晶パネル310の異方性領域331に対応する領域の画像と等方性領域332に対応する領域の画像とを入れ替えて実施してもよい。
さらに、立体画像を適切に表示できる限り、各光学要素の遅相軸、透過軸等の光軸の方向は変更して実施してもよい。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。さらに、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0109】
[実施例1]
〔液晶組成物の製造〕
(A)重合性液晶化合物であるLC242(BASF社製)76部と、(B)重合性非液晶モノマーである下記化合物1を15部及びATMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業社製)9部と、(C)光重合開始剤であるIrgacure379(BASF社製)3部と、フッ素を含む(D)界面活性剤であるメガファックF−477(DIC社製)0.1部と、(E)溶剤であるメチルエチルケトン200部とを混合し、パターン位相差フィルム用の液晶組成物を製造した。
【0110】
【化1】

【0111】
〔パターン位相差フィルムの製造〕
基材フィルムとして、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「PETフィルムA4100」;幅1350mm、厚み100μm)を用意した。この基材フィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該基材フィルムを搬送しながら搬送方向と平行な長尺方向にラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に、前記にて用意した液晶組成物をダイコーターを使用して塗布した。これにより、基材フィルムの片面に、塗膜として未硬化状態の液晶組成物層を形成した。こうして得られた基材フィルム及び液晶組成物層を備える複層フィルムを、フィルム材と呼ぶ。
【0112】
搬送を続けながら、前記の液晶組成物層に対して、40℃で2分間、配向処理を施した。これにより、液晶組成物層中の(A)重合性液晶化合物を配向させた。
【0113】
図5に、実施例1において用いたフィルム搬送装置の構成を模式的に示す。図5に示すように、フィルム材の搬送方向上流側から、ガイドロール510、浮上搬送装置520、露光装置530及びガイドロール540をこの順に備えたフィルム搬送装置500を用意した。浮上搬送装置520は、図示しないスリットからエアーを噴出する装置であり、エアーの噴出量を調整可能となっている。また、露光装置530は光源装置531及びマスク532を備え、光源装置531からの光を、マスク532を介してフィルム材550に照射できるようになっている。
【0114】
実施例1においては、マスク532として、遮光部が320μmピッチでストライプ状のパターンを形成するように印刷されたフォトマスクを用いた。したがって、このマスク532においては、フィルム材550の搬送方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されており、透光部及び遮光部の幅はいずれも320μmであった。
【0115】
配向処理を施したフィルム材550を、前記のフィルム搬送装置500に供給した。この際、フィルム材550の向きは、液晶組成物層側が上向きとなるようにした。供給されたフィルム材550は、ガイドロール510及び540から搬送方向に張力を与えられた状態で、ガイドロール510、浮上搬送装置520、露光装置530及びガイドロール540の順に搬送された。
【0116】
フィルム搬送装置500をフィルム550が通過する際、浮上搬送装置520から連続的にエアーを噴出させることにより、フィルム材550は浮上搬送装置520及び露光装置530に接触しないよう、浮上した状態を維持させた。この際、浮上搬送装置520からのエアーの噴出流量を調整し、露光装置530におけるフィルム高さhを0.2mmとなるようにした。
【0117】
また、露光装置530を通過する際、フィルム材550にはマスク532を介して光源装置531から紫外線を照射した。紫外線の積算光量は、15.0mJ/cmであった。マスク532の遮光部に相当する位置では紫外線が照射されなかったために液晶組成物層は未硬化状態のままであるが、マスク532の透光部に相当する位置では紫外線を照射されたために液晶組成物層が硬化した。
【0118】
その後、フィルム材はオーブンへと搬送された。オーブンを通過する間に、液晶組成物層を90℃で3秒間加温処理して、液晶組成物層の未硬化状態の部分(マスクの遮光部に相当した部分)の液晶相を等方相に転移させた。
【0119】
次いで、フィルム材を別の露光装置へと搬送した。この露光装置では、フィルム材の液晶組成物層側から窒素雰囲気下で液晶組成物層の全体に対して積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物層の未硬化部分を硬化させた。
【0120】
このようにして、基材フィルム上に、1/2波長板として機能しうる面内位相差Reを有する異方性領域と、面内位相差Reが小さい等方性領域とを、同一面内に有する液晶組成物層を形成した。
【0121】
〔パターンの面内ばらつきの評価〕
図6は、パターン位相差フィルムの面内ばらつきを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。図6において、各フィルムは縁をずらせて示しているが、実際のサンプルでは各フィルムの縁は揃えて重ねられている。
【0122】
図6に示すように、直線偏光板である光源側偏光板610及び観察側偏光板640を用意した。この際、光源側偏光板610の透過軸A610と、観察側偏光板640の透過軸A620とは垂直にして、クロスニコル状態となるようにした。これらの光源側偏光板610と観察側偏光板640との間に、1/4波長板620と、異方性領域631及び等方性領域632を備えるパターン位相差フィルム630とを挿入した。これにより、光源側偏光板610、1/4波長板620、パターン位相差フィルム630及び観察側偏光板640をこの順で備えるサンプルを作製した。この際、観察側偏光板640側から光源側偏光板610へ向かって見る向きにおいて、観察側偏光板640の透過軸A640に対してパターン位相差フィルム630の異方性領域の遅相軸A630は、反時計回りに45°の角度をなすようにした。また、同様の向きにおいて、観察側偏光板640の透過軸A640に対して1/4波長板620の遅相軸A620は、直交もしくは平行となるようにした。なお、図6では観察側偏光板640の透過軸A640に対して1/4波長板620の遅相軸A620が反時計周りに90°の角度をなすように設置したが、同様の偏光状態が得られるのであれば別の態様でも問題ない。
【0123】
用意したサンプルを、偏光顕微鏡(Nikon社製)にて透過観察した。観察地点としては、パターン位相差フィルムの搬送方向においては50mmピッチで12箇所を選択し、また、これらの各箇所で幅位置において300mm、700mm及び1200mmの3箇所を選択し、合計36箇所の観察地点を観察した。観察の際、パターン位相差フィルムの異方性領域に相当する部分は光が透過し、等方性領域に相当する部分は光が遮光される。
【0124】
各観察地点において、光が透過する領域の幅を異方性領域の幅として測定した。そして、全観察地点の平均値を算出し、平均値と最大値との差、及び平均値と最小値との差を求めた。これらの差をパターンの面内ばらつきとし、以下の区分で評価した。本明細書記載の実施例及び比較例ではいずれも「平均値と最大値との差」と「平均値と最小値との差」とは同じ区分に入ったが、もし「平均値と最大値との差」と「平均値と最小値との差」とが異なる区分に入る場合、差の絶対値が大きい方の結果を参照して評価する。
極小:平均値と最大値又は最小値との差が±10μm未満。
小:平均値と最大値又は最小値との差が±10μm以上±20μm未満。
大:平均値と最大値又は最小値との差が±20μm以上。
【0125】
また、観察した像において、異方性領域と等方性領域との境界(パターン境界)の明瞭性も評価した。
【0126】
その結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は320μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきはほとんど無く、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0127】
[実施例2]
実施例2では、浮上搬送装置からのエアーの噴出流量を調整してフィルム高さhを1mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてパターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は328μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきはほとんど無く、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0128】
[実施例3]
実施例3では、浮上搬送装置からのエアーの噴出流量を調整してフィルム高さhを2mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてパターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は336μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきはほとんど無く、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0129】
[実施例4]
実施例4では、浮上搬送装置からのエアーの噴出流量を調整してフィルム高さhを3mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてパターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は344μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきはほとんど無く、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0130】
[実施例5]
実施例5では、浮上搬送装置からのエアーの噴出流量を調整してフィルム高さhを5mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてパターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は360μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきはほとんど無く、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0131】
[実施例6]
図7に、実施例6において用いたフィルム搬送装置の構成を模式的に示す。図7に示すように、実施例6では、実施例1で用いたフィルム搬送装置500(図5参照)に代えて、別のフィルム搬送装置501を用いた。このフィルム搬送装置501は、露光装置530と下流のガイドロール540との間にも浮上搬送装置560を設けたこと以外は、実施例1で用いたフィルム搬送装置500と同様である。
【0132】
実施例6では、この事項以外は実施例1と同様にしてパターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は320μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきは実施例1と比べて更に減少し、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0133】
[実施例7]
実施例7では、浮上搬送装置からのエアーの噴出流量を調整してフィルム高さhを6mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてパターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は368μmであった。さらに、観察された像において、パターンの面内ばらつきはほとんど無かった。しかし、異方性領域と等方性領域との境界はぼやけ、明瞭に識別することはできなかった。
【0134】
[比較例1]
比較例1では、浮上搬送装置を設けずに、フィルム材に加わる張力を調整してフィルム高さhを0mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、パターン位相差フィルムを製造し、評価した。ここで、フィルム高さhを0mmにした、とは、フィルム材がマスクに接触することを表すのではなく、フィルム材とマスクとを可能な限り接近させながら接触させていないことを表す。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。全観察地点の異方性領域の幅の平均値は320μmであったが、観察された像において、パターンの面内ばらつきは大きかった。また、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0135】
[比較例2]
比較例2では、浮上搬送装置を設けずに、フィルム材に加わる張力を調整してフィルム高さhを2mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、パターン位相差フィルムを製造し、評価した。
観察の結果、光を透過する異方性領域と、光を遮断する等方性領域とが、互いに平行に並んだ帯状の領域となり、全体としてストライプ状のパターンを形成している様子が観察された。また、全観察地点の異方性領域の幅の平均値は336μmであったが、観察された像において、パターンの面内ばらつきは大きかった。また、異方性領域と等方性領域との境界は明瞭に識別することができた。
【0136】
【表1】

【0137】
[検討]
実施例においては面内ばらつきが小さいパターン位相差フィルムが得られる一方で、比較例においては面内ばらつきが大きいパターン位相差フィルムが得られた。この結果から、本発明のフィルム搬送装置を用いることにより、形状及び寸法の精度の良好な領域を備えたパターン位相差フィルムを製造しうることが確認された。
【0138】
また、実施例及び比較例の結果から、フィルム高さhを変更が大きくなるほど、異方性領域の幅の平均値も大きくなることが分かる。このことから、浮上搬送装置からのエアーの噴出量を調整してフィルム高さhを制御することにより、露光装置による光の照射幅を調整でき、ひいては異方性領域及び等方性領域の幅を調整することができることが確認された。
【0139】
さらに、実施例7においては他の実施例よりもパターン境界がぼやけていることから、フィルム高さhには、パターン位相差フィルムの品質を高める上で好適な範囲があることが確認された。
【符号の説明】
【0140】
100 フィルム搬送装置
110 第一のガイドロール
120 第一の浮上搬送装置
121 スリット
130 露光装置
131 光源
132 マスク
133 透光部
134 遮光部
140 第二の浮上搬送装置
141 スリット
150 第二のガイドロール
160 気体の層
200、210、220 フィルム材
211、221 基材フィルム
212、222 液晶組成物層
300 立体表示装置
310 液晶パネル
311 光源側偏光板
312 液晶セル
313 視認側偏光板
314 右目用画像を表示する画素領域
315 左目用画像を表示する画素領域
320 位相差フィルム
330 パターン位相差フィルム
331 異方性領域
332 等方性領域
400 偏光メガネ
410 1/2波長板
420 1/4波長板
430 直線偏光板
500、501 フィルム搬送装置
510、540 ガイドロール
520、560 浮上搬送装置
530 露光装置
531 光源装置
532 マスク
550 フィルム材
610 光源側偏光板
620 1/4波長板
630 パターン位相差フィルム
631 異方性領域
632 等方性領域
640 観察側偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶組成物層を備える長尺のフィルム材を搬送しつつ、前記液晶組成物層の所定の領域に光を照射しうるフィルム搬送装置であって、
前記フィルム材に下方から気体を噴出しうる噴出口を備え、前記噴出口から気体を噴出することにより前記フィルム材を浮上させうる浮上搬送装置と、
マスクを介して、浮上した前記フィルム材の前記液晶組成物層に光を照射しうる露光装置とを備える、フィルム搬送装置。
【請求項2】
前記浮上搬送装置が、前記噴出口から噴出する気体の流量を調整することにより、前記フィルム材と前記マスクとの距離を制御して、前記露光装置による光の照射幅を調整しうる、請求項1記載のフィルム搬送装置。
【請求項3】
光を照射される時の、前記フィルム材と前記マスクとの距離が、0mmより大きく5mm以下である、請求項1又は2記載のフィルム搬送装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記露光装置よりも上流にロールを備え、
前記浮上搬送装置は、前記フィルム材の搬送方向において、前記ロールと前記露光装置との間に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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