説明

フィルム状のガス吸着・徐放材

【課題】高効率で、使い勝手がよく、安価で、廃棄が容易で、簡便な方法で生産でき、脱臭、内装・寝装、家庭雑貨あるいは包装・流通関連に適したガス吸着・徐放材及びそれを利用した基材を提供すること。
【解決手段】ジビニルベンゼン系重合体微粒子、ハロゲン酸塩とハイドロタルサイトとの複合体微粒子あるいはヒノキチオール、ヒバ油、精油、アリルイソチオシアネート、エタノールを含有するジビニルベンゼン系重合体微粒子から選ばれる1種以上の微粒子および紙、布、不織布あるいは多孔多質プラスティックフィルムのような透気性材料を用いて、製紙段階で、該微粒子を漉き込んだりして製造したガス吸着・徐放材を用いて、有害ガスを吸着・分解せしめて、野菜・花卉などの鮮度を保持したり、トルエン、シンナーなどによるシックハウス症候群の発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム状のガス吸着・徐放材及びそれを用いた各種基材に関するものである。詳しくは脱臭、内装・寝装、家庭雑貨あるいは流通関連基材などに用いるフィルム状のガス吸着・徐放材に関するするものである。
【背景技術】
【0002】
収穫後の農産物の鮮度を良好に保持したまま貯蔵・輸送することは非常に重要な技術である。とりわけ、エチレンガスによる、追熟を抑制するため、薫蒸処理設備や、冷蔵設備が整備されつつあるが、有害なガスを用いたり、大掛かりな装置を用いるため、コストがかかること、あるいは少量では難しいこと、さらにはどこででも出来るわけではないことなど制約も多い。一方、エチレンガスを吸着するため、竹由来の物質を用いたり、大谷石、珪藻土や、活性炭を用いる方法が提案されているが、効果が不十分である。また、架橋ポリスチレンに金属塩を配位させたもの(たとえば、特許文献1,2,3参照)が提案されているが、重金属を用いることは、該吸着材が輸送対象である食物などに接触する懸念があり、食物輸送に用いることに対しては、問題であるばかりか、基材の廃棄処分時、2次公害を招きかねないと言う欠点を有している。また、家屋の密閉性が高まったため、居住空間内に微量存在する、トルエンなどの有害ガスによる所謂シックハウス(スクール)症候群に対する対策も重要である。最近では、使用する原材料を規制することによって、有害ガスの濃度は、かなり抑制されるようになってきたが、それでも、しばしば、問題が起きていることが報道されている。珪藻土や活性炭、竹炭などを用いる方法が提案されているが、効果が不十分である他、色が濃いため、好みの色に着色することが難しかったり、塗料や、ボードのような形でしか商品化が難しく、商品形態に自由度が乏しい。
【0003】
【特許文献1】特公平3―79971号公報
【特許文献2】特許番号第2553878号公報
【特許文献3】特許番号第2589499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高効率で、白色(着色が容易)で、低価格で、安全かつ簡便に使用でき、廃棄処理に際して低公害なガス吸着・徐放材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、特許文献1,2,3について、考察したところ、該特許に記載されているような、架橋ポリスチレンに、いったん吸着したエチレンガスが、外気の温度上昇により、再び外部へ放出されるということは、有効な吸着材が十分あれば、通常の室温レベル(例えば、10〜35℃)では、起きにくいことを見いだした。該特許の実施例では、見かけの数量的には、吸着材が十分ある。しかし、エチレンガスが吸着すると思われるベンゼン環部位に、金属塩が錯化しているため、エチレンガスが吸着出来る部位が少なくなっていると考えられる。また、吸着材は、粒子内部のミクロな表面積とともに、粒子外層の表面積も重要な要素となる。該特許の、吸着材の固定方法では、たとえば、接着剤で、吸着材の表面が覆われてしまったり、塊の状態で固定されたりして、吸着材の機能が十分発現できそうにないことも、一因となっていると考えられる。また、吸着剤は、その包装系内に、固定され、万一、包装が破れた場合でも、吸着剤が輸送対象に直接触れないようにすることも重要である。該特許の実施例にあるような塊の状態で固定されている場合、包装が破れた場合、吸着剤がこぼれ、輸送対象に触れる恐れが大である。そこで、本発明者は、ジビニルベンゼン系重合体微粒子を、金属塩を錯化することなく用い、かつ、その外表面を最大化し、かつ、吸着剤が、いかなる場合にも輸送対象に接触することのないように、フィルム状材料に固定する方法について研究し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガス吸着・徐放材及びそれを用いた各種基材は、脱臭、内装・寝装、家庭雑貨あるいは包装・流通関連基材に好適で、高効率で、安価で、使い勝手がよく、廃棄が容易で、簡便な方法で生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。本発明において用いる、ジビニルベンゼン系重合体微粒子としては三菱化学(株)から市販されているダイヤイオンHP20,21あるいはセパビーズSP825,850などが利用できる。これらは水不溶性微粒子で疎水性の微細孔を多数有しており、炭化水素類あるいは、有機性の高い物質を吸着する能力が高い。粒子径分布は250ミクロン以上が90%、比表面積が500〜1000m2/g、最頻孔径は30〜300Å、細孔容積が1.0〜1.5ml/gである。
【0008】
本発明に於て用いる、ハイドロタルサイトとしては、協和化学工業(株)から市販されているキョーワード200,300,500,1000などが利用できる。あるいは富田製薬(株)から市販されている、トミタAD100,500なども利用できる。これらは、20〜500ミクロンの微粒子であるが、必要に応じて、粉砕して凝集体を微粒化することも可能である。
【0009】
上記したようなジビニルベンゼン系重合体あるいはハイドロタルサイト微粒子(以下微粒子と略す)は、その特質状、粒子の表面が何らかの形で覆われてしまったり、粒子同士が塊ってしまうと、その能力を十分に発現できないため、粒子の表面が暴露されるよう工夫する必要がある。たとえば、以下のような方法が有効である。
製紙段階で、微粒子を漉き込む。
上下2枚の紙、布、不織布あるいは多孔質プラスティックフィルムを、分画し、かつ該分画に各々、微粒子が挟持されるように縫い合わす。
厚さ100ミクロン以下に、粘(接)着剤を予め塗布した紙、布あるいは多孔質プラスティックフィルムの上に、微粒子を振りかけ、さらにその上に、紙、布あるいは多孔質プラスティックフィルムを重ねて挟む。
熱圧着性の多孔質プラスティックフィルムあるいは不織布の上に、微粒子を振りかけ、更にその上に、熱圧着性の多孔質プラスティックフィルムあるいは不織布を重ねて、熱圧着する。
【0010】
本発明に於て用いる、紙の原料としては、木材パルプ、ケナフ、リサイクル紙など通常用いられるものであれば、なんでも用いることが出来る。紙の坪量としては、20〜100g/m2が好ましい。20より小さいと、強度が不十分であり、100より大きいとコスト高となる。紙の強度を特に高めるために、プラスティックファイバーを添加したり、難燃性を得るために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを添加することも可能である。抄紙については、通常の方法で可能である。また縫い合わす場合は、ミシンなどを用いて通常の方法で可能であり、分画のサイズは、対象作物あるいは包装のサイズに合わせて、適宜選択が出来る。
【0011】
本発明に於て用いる、布としては、木綿布、ポリエステル布、ナイロン布、アクリル布など市販されている布が用いられる。
【0012】
本発明に於て用いる、不織布としては、レーヨン系、キュプラ系、ポリエステル系、ポリオレフィン系など市販されているものが、用いられる。目付としては、20〜80g/m2が好ましい。20より小さいと、微粒子が、目漏れしやすくなる。80g/m2より大きいと、コスト高となる。熱圧着性を要する場合は、ポリオレフィン系が好ましい。120℃程度の加熱で圧着が可能である。
【0013】
本発明に於て用いる、熱圧着性多孔質プラスティックフィルムとしては、市販されているポリオレフィン系透湿防水フィルムが用いられる。120℃程度の加熱で圧着が可能である。
【0014】
本発明に於て用いる、粘着剤あるいは接着剤としては、それぞれの基材に対応して、アクリル系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系など市販されているものが、用いられる。吸着剤に対する影響を勘案して、水性ベースのものが好ましい。
【0015】
本発明において、加える微粒子の量としては、上記透気性材料の面積に対して、5〜70g/m2があげられる。5より少ないと、絶対的に効果に乏しく、70より多いとコストパフォーマンスが低下する。
【0016】
本発明に於て用いる、ハロゲン酸塩としては、次亜塩素酸ソーダ、ヨーソ酸カリなどが用いられる。これらのアニオン根は、酸化力が高く、自らが不安定であったり、支持体を分解したりするので、ハイドロタルサイトの層間に取り込むことによって複合化し安定化される。具体的には、ハロゲン酸塩の水溶液に、ハイドロタルサイトの微粉を添加し、アニオン交換することによって複合体が得られる。次亜塩素酸ソーダは、殺菌力が高く、野菜の輸送時に有効であり、ヨーソ酸カリは、エチレンの酸化分解に有効である。ハロゲン酸塩に対して、ハイドロタルサイトの使用量としては、2〜20重量比があげられる。2より少ないと、不安定であり、20より多いと、酸化力が低下する。
上記複合体は、そのまま、あるいは必要に応じて粉砕して、微粒子として、前記したジビニルベンゼン系重合体微粒子と同様、フィルム状に固定される。
【0017】
本発明に於て用いる、スチレンー(無水)マレイン酸共重合物としてはアーコケミカル社のSMA1000,2000、3000、あるいは、ハーフエステルであるSMA1440,2625などを利用することができる。なかではスチレン含有量の多い、SMA2000,3000,2625などが有利である。スチレンー(メタ)アクリル酸(エステル)共重合物としては広範に市販されているものが利用でき、やはりスチレン含有量の高いものが有利である。アビエチン酸、大豆油、オレイン酸、アルファオレフィンスルフォン酸のような長鎖不飽和脂肪族酸については広範に市販されているものが利用できる。これらは、エチレン、トルエン、シンナーあるいは有機有害ガスなどの吸着に有効である。これらの化合物は、そのまま、あるいは必要に応じて粉砕して、微粒子として、前記したジビニルベンゼン系重合体微粒子と同様、フィルム状に固定される。
【0018】
本発明に於て用いる、木粉としては、青森ひば、台湾ひのきあるいはチークの木粉があげられ、葉粉としては、ひばあるいはひのきの葉粉があげられ、これらは抗菌、抗カビ、抗ダニあるいはごきぶりなどの害虫忌避に有効である。木粉は、そのまま、あるいは必要に応じて粉砕して、微粒子として、前記したジビニルベンゼン系重合体微粒子と同様、フィルム状に固定される。
【0019】
本発明に於て用いる、ヒノキチオール、ヒバ油、精油(リモネン、リナロール、シトロネロール、シト
ラール、シトロネラール、ユーカリ油、ハーブ油など)、アリルイソチオシアネート、エタノールなど
は、そのままでは液状で取り扱いが難しかったり、揮発性が高すぎたりするので、ジビニルベンゼン
系重合体微粒子にそのまま、あるいは必要に応じて、グリセリン、プロピレングリコールなどの溶媒に
溶解した溶液を含浸させて使用するのが好ましい。ヒノキチオールなどに対して、ジビニルベンゼン
系重合体微粒子の使用量としては、2〜10重量比があげられる。2より少ないと、揮発性の抑
制が不十分であり、10より多いと、コスト高となる。これらは抗菌、抗カビ、抗ダニあるいは、
しろありやごきぶりなどの害虫忌避に有効である。
また、ホー酸、カプリン酸はしろありやごきぶりなどの害虫駆除・忌避に有効である。
これらは、そのまま、あるいは必要に応じて粉砕して、微粒子として、前記したジビニルベンゼ
ン系重合体微粒子と同様、フィルム状に固定される。
【0020】
本発明に於て用いる、トリポリリン酸二水素アルミニウムあるいはその誘導体としては、K−FRESH#100P,MZO,ZAなどの商品名でテイカ(株)より市販されているものが使用できる。脱臭などに有効である。これらは、そのまま、あるいは必要に応じて粉砕して、微粒子として、前記したジビニルベンゼン系重合体微粒子と同様、フィルム状に固定される。
【0021】
なお、本発明の基材が人の目に触れるような状況で使用される場合には、商品として、着色も重要な要素となる。本発明の基材では、活性炭、竹炭、珪藻土などを用いないため、殆ど白色であり、必要に応じて、着色することが容易である。特に天然色素を用いて着色することはエコロジー適性が高く商品として有利である。
【0022】
本発明の、フィルム状ガス吸着材は、リンゴ、柿、メロン、ぶどう、カーネーション、カスミソウ、デルフィニウムなどエチレンガスにより追熟する果物や花卉の包装時、たとえば段ボール内の積載段ごとに、敷くことにより、あるいは果物などを個別に包んだりして、その鮮度保持に有効である。特に薄いフィルム状であり、微粒子類が均一に分散しているため、効果が広範囲に及び、かつ、スペースを取らないほか、クッションとしても利用できるという長所がある。特に柿の場合、ヘタ部からエチレン生成が起こり、順次全体から生成することが確認されており、本発明のフィルム状エチレンガス吸着材を、ヘタ部に密接して設置することにより、追熟を効果的に防止できる。
【0023】
本発明の、フィルム状ガス吸着・徐放材は、家庭内における野菜や果物などの貯蔵場所、とりわけ冷蔵庫などの野菜室にセットしたり、野菜などをくるむことにより、野菜などの鮮度保持に有効である。
【0024】
本発明の、フィルム状ガス吸着材は、トルエン、シンナー、クロルピリフォスのような有機溶剤あるいは有機有害ガスを吸着し、シックハウス(スクール)対策に有効である。薄いフィルム状であるので、天井、壁、障子、ふすま、パーテーション、床上、床下、畳下、カーペット下などに、広い面積に容易に設置することが可能であるほか、彩色、印刷、デザインなどの自由度が高く、ポスター、壁紙などの形でも利用できるので、一般家庭はもとより、オフィス、学校、病院など公共施設での利用に有効である。また、交換、撤去も容易である。
【0025】
本発明の、フィルム状ガス吸着・徐放材は、カット野菜、みかん、バラ、ガーベラなどのエチレンにより追熟しやすい、あるいは菌、カビにより腐敗しやすい作物の、輸送時あるいは貯蔵時腐敗防止に有効である。
【0026】
本発明の、フィルム状ガス吸着・徐放材は、脱臭材として、おむつカバーに用いたり、床下のごきぶりや白蟻の忌避に用いることも可能である。
【実施例】
【0027】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えないかぎりこれらの実施例に限定されるものではない。なお部は重量部の意味を表すものとする。
【0028】
実施例1
(ガス吸着材の調整)市販のトイレットペーパー50部およびHP−20(ジビニルベンゼン系重合体微粒子、三菱化学(株)製)20部を、水500部に加え、ミキサーを利用してスラリー化した。このスラリーを1m2の網戸用網の上に、厚さがほぼ均一となるよう乗せ、乾燥した。
(評価)前記ガス吸着材の20cmX20cmを切り取り、リンゴ1個をくるんで、25〜30℃で2週間保存したところ、色、硬さとも保存前と同様で、鮮度が保持された事を確認した。
【0029】
比較例1 HP−20を用いず、それ以外は実施例1と同様にしてリンゴを保存したところ、色が赤みを著しく増し、一部柔らかくなった。
【0030】
実施例2
(ガス徐放剤の調整)次亜塩素酸ソーダ溶液(有効塩素濃度5%、東京化成試薬)40部にキョーワード2000(ハイドロタルサイト、協和化学工業(株)製)40部を加え、攪拌した。半ば乾燥した微粉となった。
(ガス徐放材の調整)市販の梱包用粘着テープ(布製)5cmX1mの上に、前記ガス徐放剤4部を振りかけた。その上に、クラフト紙を乗せて、粘着したのち、20cm長に切った。
(評価)ポリプロピレン製の内容量1リットルの容器(フタ付き)に前記ガス徐放材を敷き、およそ幅1cmにカットしたキャベツ1kgを入れ、フタをして、25〜30℃で、2日間放置した。腐敗臭はなく、硬さも維持され、鮮度が保持された。
【0031】
比較例2 前記ガス徐放材を用いず、それ以外は実施例2と同様にしてカットキャベツを保存したところ、わずかに腐敗臭がし、一部柔らかくなった。
【0032】
実施例3
(ガス吸着材の調整)エクセポール(透湿防水フィルム、三菱樹脂(株)製)20cmX20cmの上に、SP−850(ジビニルベンゼン系重合体微粒子、三菱化学(株)製)4部を、ふりかけ、その上に、同じエクセポールを乗せた。表面温度130℃のテフロン(登録商標)コートされた、アイロンで、15分間、圧熱したところ、2枚のエクセポールが接着した。
(評価)内容量約3リットルのデシケーターの底に、トルエン1ミリリットルを加えた。該デシケーターの中空部に、前記ガス吸着材を置き、室温下、1週間密閉放置した。1週間後、デシケーターのフタを開けたところ、トルエン臭は認められなかった。
【0033】
比較例3 SP−850を用いず、それ以外は実施例3と同様にして評価したところ、トルエン臭がきつかった。
【0034】
実施例4
(ガス吸着材の調整)ストラテック(ポリプロピレン製不織布、出光ユニテック(株)製)20cmX20cmの上に、HPK−25(ジビニルベンゼン系重合体微粒子、三菱化学(株)製)3部及びSMA3000(スチレンー無水マレイン酸共重合物、アーコケミカル社製)1部を、ふりかけ、その上に、同じストラテックを乗せた。表面温度130℃のテフロン(登録商標)コートされた、アイロンで、15分間、圧熱したところ、2枚のストラテックが接着した。
(評価)内容量約3リットルのデシケーターの底に、トルエン1ミリリットルを加えた。該デシケーターの中空部に、前記ガス吸着材を置き、室温下、1週間密閉放置した。1週間後、デシケーターのフタを開けたところ、トルエン臭は認められなかった。
【0035】
比較例4 HPK−25及びSMA3000を用いず、それ以外は実施例4と同様にして評価したところ、トルエン臭がきつかった。
【0036】
実施例5
(ガス吸着材の調整)坪量40g/m2のコピー用普通紙20cmX20cmの上に、HP−20(ジビニルベンゼン系重合体微粒子、三菱化学(株)製)2部及びK−FRESH ZC(トリポリリン酸2水素アルミニウム誘導体、テイカ(株)製)2部を、ふりかけ、その上に、同じ紙を乗せ、家庭用ミシンで、3cm間隔に縫い合わせた。
(評価)内容量約3リットルのデシケーターの底に、トルエン0.5ミリリットル、トリエチルアミン、硫化ソーダ、フォルムアルデヒド、酪酸の各0.1%水溶液2ミリリットルを加えた。該デシケーターの中空部に、前記ガス吸着材を置き、室温下、1週間密閉放置した。1週間後、デシケーターのフタを開けたところ、トルエン臭他悪臭は認められなかった。
【0037】
比較例5 HP−20及びK−FRESH ZCを用いず、それ以外は実施例5と同様にして評価したところ、トルエン臭ほか悪臭がきつかった。
【0038】
実施例6
(ガス徐放剤の調整)ヒノキチオール5部をHP−20 40部に加え、攪拌した。ヒノキチオールは吸収されさらさらの微粉となった。
(ガス吸着材の調整)坪量40g/m2のコピー用普通紙20cmX20cmの上に、前記ガス徐放剤2部及び青森ひばの微粒2部を、ふりかけ、その上に、同じ紙を乗せ、家庭用ミシンで、3cm間隔に縫い合わせた。
(評価)壁に掛けたところ、森林浴をしているような爽快感を得た。
【0039】
実施例7
(ガス吸着剤の調整)ヨーソ酸カリ5部を水40部に溶解し、これにキョーワード1000(ハイドロタルサイト、協和化学工業(株)製)40部を加え、攪拌した。半ば乾燥した微粉となった。
(ガス吸着材の調整)市販の梱包用粘着テープ(布製)5cmX1mの上に、前記ガス吸着剤4部を振りかけた。その上に、クラフト紙を乗せて、粘着したのち、20cm長に切った。
(評価)内容量約3リットルのデシケーターの底に、トリメチルアミン、硫化ソーダの各0.1%水溶液2ミリリットルを加えた。該デシケーターの中空部に、前記ガス吸着材を置き、室温下、2週間密閉放置した。2週間後、デシケーターのフタを開けたところ、悪臭は認められなかった。
【0040】
比較例7 ガス吸着材を用いず、それ以外は実施例7と同様にして評価したところ、悪臭がきつかった。
【0041】
実施例8
(ガス徐放剤の調整)ひば油1部をHP−20 40部に加え、攪拌した。ひば油は吸収されさらさらの微粉となった。
(ガス吸着・徐放材の調整)坪量50g/m2のコピー用普通紙20cmX30cmの上に、前記ガス徐放剤1部及びSP825 3部を、ふりかけ、その上に、同じ紙を乗せ、家庭用ミシンで、3cm間隔に縫い合わせた。4枚調整した。
(評価)段ボール箱に、みかんを入れ、段毎に1枚、前記ガス吸着・徐放材を敷いた。15〜25℃で、3週間保存した後、賞味した結果、みかんの鮮度は保たれ、腐敗したみかんは認められなかった。
【0042】
比較例8 ガス吸着・徐放材を用いず、それ以外は実施例8と同様にして評価したところ、新鮮味が低下し、腐敗したみかんが、7%発生した。
【0043】
実施例9
(ガス吸着・徐放材の調整)坪量50g/m2のコピー用普通紙20cmX30cmの上に、実施例2で調整したガス徐放剤1部及びHP21 3部を、ふりかけ、その上に、同じ紙を乗せ、家庭用ミシンで、3cm間隔に縫い合わせた。3枚調整した。
(評価)段ボール箱に、りんごを入れ、段毎に1枚、前記ガス吸着・徐放材を敷いた。25〜30℃で、6週間保存した後、賞味した結果、りんごの鮮度は保たれ、腐敗したりんごは認められなかった。
【0044】
比較例9 ガス吸着・徐放材を用いず、それ以外は実施例9と同様にして評価したところ、新鮮味が低下し、腐敗したりんごが、5%発生した。
【0045】
実施例10
(ガス徐放剤の調整)エタノール70部にSP825 50部を加え、攪拌した。半ば乾燥した微粉となった。
(ガス徐放材の調整)市販の梱包用粘着テープ(布製)5cmX1mの上に、前記ガス徐放剤2部及び実施例2で調整したガス徐放材2部をを振りかけた。その上に、クラフト紙を乗せて、粘着したのち、20cm長に切った。
(評価)ポリプロピレン製の内容量1リットルの容器(フタ付き)に前記ガス徐放材を敷き、およそ幅1cmにカットしたレタス1kgを入れ、フタをして、25〜30℃で、2日間放置した。腐敗臭はなく、硬さも維持され、鮮度が保持された。
【0046】
比較例10 前記ガス徐放材を用いず、それ以外は実施例10と同様にしてカットレタスを保存したところ、腐敗臭がし、かなりの部分が柔らかくなった。
【0047】
実施例11
(ガス吸着材の調整)エクセポール(透湿防水フィルム、三菱樹脂(株)製)60cmX30cmの上に、SP−850 5部及び実施例7で調整したガス吸着剤3部を、ふりかけ、その上に、同じエクセポールを乗せた。表面温度130℃のテフロン(登録商標)コートされた、アイロンで、15分間、圧熱したところ、2枚のエクセポールが接着した。
(評価)市販の大人用紙おむつに、尿500ミリリットルを吸わせ、これを前記ガス吸着材で覆ったところ、尿臭は漏れなかった。
【0048】
比較例11 前記ガス吸着材を用いず、それ以外は実施例11と同様にして評価したところ、尿臭がわずかにした。
【0049】
実施例12
実施例1において、HP20の代わりに、実施例7において調整した、ガス吸着剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、ガス吸着材を調整した。該ガス吸着材を用いて、実施例7と同様にして評価したところ良好な結果を得た。
【0050】
実施例13
実施例1において、HP20の半量の代わりに、カプリン酸5部及びホー酸5部を用いる以外は、実施例1と同様にして、ガス吸着・徐放材を調整した。
【0051】
実施例14
実施例1において、HP20の半量の代わりに、リポランPB800(長鎖不飽和脂肪族スルフォン酸、ライオン(株)製)10部を用いる以外は、実施例1と同様にして、ガス吸着材を調整した。
【0052】
実施例15
(ガス吸着・徐放材の調整)実施例2において、調整したガス徐放剤の一部をHP20 1部、実施例6で調整したガス徐放剤1部に置き換えて用いる以外は、実施例2と同様にして、ガス吸着・徐放材を調整した。
(評価)ポリプロピレン製の内容量1リットルの容器(フタ付き)に前記ガス吸着・徐放材を敷き、およそ幅1cmにカットしたキャベツ1kgを入れ、フタをして、25〜30℃で、3日間放置した。腐敗臭はなく、硬さも維持され、鮮度が保持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記から選ばれる1種以上の微粒子および透気性材料からなる、フィルム状のガス吸着・徐放材。
*ジビニルベンゼン系重合体微粒子
*ハロゲン酸塩とハイドロタルサイトとの複合体微粒子
*ヒノキチオール、ヒバ油、精油類、アリルイソチオシアネート、エタノールを含有するジビニルベンゼン系重合体微粒子
【請求項2】
請求項1記載のフィルム状のエチレンガス吸着材。
【請求項3】
請求項1記載のフィルム状のトルエン、シンナー、有機溶剤あるいは有機有害ガス吸着材。
【請求項4】
請求項1記載のフィルム状のガス徐放材。
【請求項5】
ジビニルベンゼン系重合体微粒子がジビニルベンゼンおよびスチレンの架橋重合体微粒子である請求項1〜4のガス吸着・徐放材。
【請求項6】
透気性材料が紙であり、製紙段階で、請求項1記載の微粒子が漉き込まれた請求項1〜5のガス吸着・徐放材。
【請求項7】
透気性材料が紙、布、不織布あるいは多孔質プラスティックフィルムであり、上下2枚の
紙、布、不織布あるいは多孔質プラスティックフィルムを重ね、分画し、かつ該分画に各々、請求項1
記載の微粒子が挟持されるように縫い合わされた請求項1〜5のガス吸着・徐放材。
【請求項8】
透気性材料が、粘(接)着剤を有する紙、布、不織布あるいは多孔質プラスティックフィ
ルムである請求項1〜5のガス吸着・徐放材。
【請求項9】
透気性材料が、熱圧着性多孔質プラスティックフィルムあるいは熱圧着性不織布である請求項1〜5のガス吸着・徐放材。
【請求項10】
ハロゲン酸塩が次亜塩素酸塩あるいはヨーソ酸塩である請求項1〜9のガス吸着・徐放材。
【請求項11】
下記から選ばれる物質をさらに1種以上有する請求項1〜10のガス吸着・徐放材。
*ケイヒ酸、シクロデキストリン、スチレンー(無水)マレイン酸(塩)、スチレンーアクリル酸
(塩)、長鎖不飽和脂肪族スルフォン酸(塩)、 長鎖不飽和脂肪族カルボン酸(塩)
*木粉、葉粉、鉱物粉
*ホー酸、カプリン酸
*トリポリリン酸二水素アルミニウムあるいはその誘導体微粒子
【請求項12】
木粉が青森ひば、台湾ひのき、チークの木粉であり、葉粉が、ひばあるいはひのきの葉粉である請求項11のガス吸着・徐放材。
【請求項13】
鉱物粉がバーミキュライト、セピオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン、タルク粉である、請求項11のガス吸着・徐放材。
【請求項14】
請求項1〜13のガス吸着・徐放材を用いた、脱臭剤、ペットの排泄物用基材、おむつ用基材、建築用基材、内装・寝装用基材、家庭雑貨用基材あるいは物流用基材。

【公開番号】特開2006−26566(P2006−26566A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211006(P2004−211006)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(300036095)
【Fターム(参考)】