説明

フィルム状製剤及びその製造方法

【課題】口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を持ち、かつ、外観及び触感に優れるフィルム状製剤を提供すること。
【解決手段】水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有するフィルム状製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内において速やかに溶解するフィルム状製剤(フィルム状薬剤)に関するものであり、更に詳しくは、口腔内において速やかに溶解することにより、消化器官又は口腔粘膜により薬物を吸収せしめることを目的とした経口投与用の薬物粒子が分散されたフィルム状製剤、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在経口的に投与される薬剤としては裸錠剤、被覆錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、液剤などが市場に出されている。
また、口腔内で崩壊し、消化管で吸収される製剤としては口腔内崩壊錠、速溶解型口腔内フィルム製剤が既に市場に出されており、これらのうち、速溶解性の観点からフィルム状製剤が有用である。
【0003】
このようなフィルム状製剤として、これまで種々の研究がなされており、例えば、特許文献1には、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースとポリビニルピロリドンの混合物、タンニン物質、及び、薬物を含むフィルム状製剤が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、薬物と、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含むフィルム状製剤が開示されている。
また、例えば、特許文献3には、薬物と、ヒドロキシプロピルセルロースとを含む、フィルム状製剤が開示されている。
また、例えば、特許文献4には、薬物と、ヒドロキシプロピルセルロースとを含む、フィルム状製剤が開示されている。
また、例えば、特許文献5には、薬物とポリビニルピロリドンを、有機溶媒に溶解および分散させた懸濁液を、乾燥させて得られた錠剤が開示されている。
また、例えば、特許文献6には、薬物を含むフィルム状製剤において、該製剤が水溶性、水膨潤性、水不溶性、又は、それらの組み合わせであるポリマーを含んでもよいことが記載されている。
更に、例えば、特許文献7には、薬物粒子を有するフィルム状製剤が開示されている。
【0004】
しかしながら、上述の従来のフィルム状製剤は、製剤中のほとんどの薬物が、溶解形態で存在するか、又は、固体形態で存在するとしても一旦溶解された後に、製剤中で再結晶された固体形態で存在するため、フィルム状製剤の外観及び触感等の物理特性が満足いくものではなかった。また、固体形態で薬物が製剤中に存在するものにおいても、製造工程中で薬物が一旦溶解されるため、粒子状の薬物を製剤中に含有させること、まして粒子径を制御することはきわめて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3496727号公報
【特許文献2】特開2008−169138号公報
【特許文献3】特開2004−43450号公報
【特許文献4】特表2007−528876号公報
【特許文献5】特開平11−116465号公報
【特許文献6】国際公開第2004/066986号
【特許文献7】特表2002−523359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記現状に鑑み、本発明は、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を持ち、かつ、外観及び触感に優れるフィルム状製剤、及び、該フィルム状製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、薬物粒子が不溶性である溶媒を用い、その溶媒に可溶な可食性高分子を選択して薬物粒子を含むフィルム状製剤を調製することにより、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を持ち、かつ、外観及び触感に優れるフィルム状製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有するフィルム状製剤である。
本発明のフィルム状製剤において、上記薬物粒子の平均粒子径が0.1〜60μmであることが好ましい。
また、上記可食性高分子は、常温で固体であることが好ましい。
また、上記可食性高分子は、ポリビニルピロリドン及び/又はヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。
また、上記ポリビニルピロリドンは、分子量が2500〜300万であることが好ましい。
また、上記ヒドロキシプロピルセルロースは、分子量が1万〜115万であることが好ましい。
また、上記ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が50〜100%であることが好ましい。
また、上記極性有機溶媒は、溶解パラメーターが9.7以上であるものであることが好ましい。
また、本発明は、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有するフィルム状製剤の製造方法であって、上記可食性高分子、上記薬物粒子及び極性有機溶媒を含有する薬物分散液を調製し、上記薬物分散溶液の薄層を形成して該薄層を乾燥させるフィルム状製剤の製造方法である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のフィルム状製剤は、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有するものである。
ここで、本明細書では、「水及び極性有機溶媒に可溶性である」とは、20℃下において1gの溶質を溶かす水及び極性有機溶媒の量が5mL未満である場合をいい、「極性有機溶媒に不溶性である」とは、20℃下において1gの溶質を溶かす極性有機溶媒の量が100mL以上必要である場合をいう。なお、20℃下において1gの溶質を溶かす極性有機溶媒又は水の量が3mL未満であれば「易溶性である」という表現を用いる。
【0010】
図1は、本発明のフィルム状製剤の実施態様の1例を示す模式図であり、図1に示すように、有機溶媒に不溶性である薬物粒子1aが、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子を含む基材1b中に分散されている。
【0011】
上記薬物粒子は、基材表面上に又は基材内の特定部位に局在化していることができるが、基材内に均一に分散されていることが好ましい。上記薬物粒子が基材内に均一に分散されることで、口腔内での迅速な薬物の放出が可能となり、また、フィルム状製剤の物理的特性が良好となる。したがって、本発明のフィルム状製剤では、薬物粒子は、被覆、例えばマイクロカプセルで被覆される必要性がなく、薬物粒子の所望の薬物放出能を達成することができる。
【0012】
本発明のフィルム状製剤の厚みとしては特に限定されないが、例えば、30〜300μmであることが好ましい。30μm未満であると、本発明のフィルム状製剤のフィルム強度及び製品の取り扱い性の観点から問題となる可能性があり、300μmを超えると、本発明のフィルム状製剤の口腔内での溶解に時間がかかり、容易に溶解しない可能性がある。
なお、本発明のフィルム状製剤の平面形状としては特に限定されず、例えば、長方形、正方形、円形等の任意の形状が挙げられる。
【0013】
本発明で使用する薬物粒子は、極性有機溶媒に不溶性である溶解特性を持つものである。
本発明のフィルム状製剤は、上記薬物粒子として上記溶解特性を有するものを用いる一方で、該薬物粒子を分散させる可食性高分子として、後述するように水及び極性有機溶媒に対して可溶性であるものを用いる。このような溶解特性を持つ薬物粒子と可食性高分子とを組み合わせて用い、製造時の溶媒として極性有機溶媒を用いることで、本発明のフィルム状製剤は、上記薬物粒子を粒子状で含有させることができ、薬物粒子の粒子径の制御も容易にすることができる。なお、フィルム状製剤中で再結晶した状態で含まれる薬物粒子と、粒子の状態で含まれる薬物粒子とは、当業者であれば、例えば、次の基準に従って、顕微鏡観察により容易に、かつ、明確に見分けることができる。
すなわち、フィルム状製剤中で粒子の状態で含まれる薬物粒子は、かかる粒子が、フィルム状製剤中で自然発生的に形成されることから、無定形と呼ばれることもある不規則かつ不均一な形状及びサイズを有する。これに対し、フィルム状製剤中で再結晶した状態で含まれる薬物粒子は、製造者が製造時に粒径を制御することから、人為的な形状及びサイズを有する。
【0014】
また、上記薬物粒子は、常温にて固体であるものが好ましい。上記薬物粒子が常温で固体であると、本発明のフィルム状製剤中で上記薬物粒子は、粒子としての形態を容易に形成することができる。なお、上記「常温で固体である」とは、20℃で流動性を有しないことを意味する。
【0015】
本発明のフィルム状製剤において、上記薬物粒子の平均粒子径は、0.1〜60μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、各薬物粒子が凝集する可能性があり、フィルム状製剤の柔軟性が部位により不均一となる可能性がある。また、平均粒子径が60μmを超えると、実用的な厚さのフィルム状製剤に含有させた際、製剤の柔軟性がやはり部位により不均一となる可能性がある。
上記薬物粒子の平均粒子径は、0.1〜30μmであることがより好ましい。この範囲にあることで、実用上の厚みにおいて強度及び柔軟性が均一なフィルム状製剤を調製することが可能である。
ここにいう平均粒子径とは、その円相当径の50容量%平均粒子径を意味する。また、上記円相当径とは、投影面積円相当経を意味し、より具体的には、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径であり、Heywood径とも呼ばれるものである。
上記薬物粒子の平均粒子径が上記の範囲外の場合には、平均粒子径を上記の範囲となるように整粒したものを用いることができる。なお、平均粒子径の調整は、粉砕、乾式粉砕法、湿式造粒法等による造粒、篩や分級機等を用いた分級等により行うことができる。
【0016】
また、薬物粒子、製剤の物理特性及び外観の観点から、上記薬物粒子は、整粒されたものが好ましい。なお、整粒するための技術的手段は公知の手段が挙げられ、例えば、スプレードライング、ジェットミリング等が挙げられる。
また、上記薬物粒子は、製剤の物理特性及び外観の観点からは、マイクロカプセル化される必要性がないものである。マイクロカプセル化されていない薬物粒子は、速溶性の観点から好ましい。
【0017】
本発明において、上記薬物粒子とは、固体薬物塊を意味する。
このような薬物粒子としては、上述した極性有機溶媒に不溶性である溶解特性を有し、経口投与できるものであれば特に限定はない。具体的に挙げるならば、例えば、鎮静剤、去痰剤、下剤、抗癌剤、糖尿病薬、抗パーキンソン病薬、抗鬱薬、精神安定剤、痴呆症薬、降圧剤、高脂血漿薬、片頭痛薬、骨粗鬆治療薬、低血圧治療薬、鎮咳剤、消化性潰瘍用剤、頻尿・排尿障害薬、尿失禁薬、抗潰瘍薬、アレルギー薬、5−HT3受容体拮抗薬(制吐薬)等が挙げられる。
【0018】
上記薬物粒子として、より具体的には、グアヤコールスルホン酸カリウム粒子、グルタチオン(還元型)粒子、アミノフィリン粒子等が挙げられる。
【0019】
また、上記薬物粒子は、苦味のないものが好適ではあるが、苦味のあるものであっても、苦味マスキング技術、例えば、マイクロカプセル化、苦味遮蔽剤、甘味剤、嬌味剤及び芳香剤添加等により好適に使用できる。
【0020】
上記薬物粒子の配合量は、使用する薬物粒子の性質等によっても異なるが、本発明のフィルム状製剤に含まれる固形分の全重量中、0.1〜80重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を得ることができないことがある。なお、口腔内における水溶性ポリマー依存のネバネバ感、指で触った際の触感において薬物を溶解してフィルムを調製した場合と比較しても明らかな向上は見られなくなることがあるが、実用上は問題ない。一方、80重量%を超えると、上記薬物粒子の粒子径をかなり小さくしない限り、製品の保型性等の問題が出てくることがある。より好ましい上限は60重量%である。60重量%以下であることで、本発明の上記効果をより好適に得ることができる。
【0021】
上記可食性高分子は、本発明のフィルム状製剤の基材を構成する成分であり、フィルム形成能を有するものである。
上記可食性高分子は、水及び極性有機溶媒の双方に可溶性であり、可食性を有するものであれば特に限定されないが、常温で固体であることが好ましい。
このような可食性高分子は、分子量が好ましくは2000〜400万である。2000未満であると、フィルム成型性が乏しく、フィルム状製剤の形状を維持することが困難となる可能性がある。一方、400万を超えると、フィルム状製剤の溶解性が乏しくなり、実用上問題となる可能性がある。より好ましくは2500〜300万である。
【0022】
上記可食性高分子としては、具体的には、ポリビニルピロリドン(以下“PVP”と記す)及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(以下“HPC”と記す)が好適に用いられる。
これらの可食性高分子は、水及び極性有機溶媒に充分に可溶性を示すものであり、フィルム状製剤に用いた場合、口腔内において迅速に溶解するということと、製造時に薬物粒子が不溶性である有機溶媒を用いることが可能であることという双方の条件を満たす。それにより、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子を粒子状態でフィルム状製剤の基材中に均一分散担持させることが可能となる。
上記可食性高分子のなかでも、より好ましいのはHPCである。これは、相対湿度に対する吸湿性が、PVPと比較してHPCの方が低く、実用上の観点から好ましいと考えられるからである。
【0023】
上記PVPは、分子量が2500〜300万であることが好ましい。2500未満であると、安定性及び吸湿性が悪くなる恐れがあり、逆に300万を超えると、溶解性が悪くなる恐れがある。より好ましくは2500〜120万であり、更に好ましくは2500〜100万である。
なお、本明細書において、分子量とは重量平均分子量を意味し、ゲル浸透クロマトグラフ分析により得られる。
【0024】
上記HPCは、分子量が1万〜115万であることが好ましい。1万未満であると、吸湿性及び安定性が悪くなる恐れがあり、115万を超えると、溶解性が悪くなる恐れがある。より好ましくは1万〜37万である。
【0025】
上記HPCは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が50〜100%であることが好ましい。50%未満であると、水及び有機溶媒への溶解性が悪くなる恐れがある。なお、上記ヒドロキシプロポキシル基の置換度の測定方法は、第十五改正日本薬局法・医薬品化各条・ヒドロキシプロピルセルロース・定量法に従う。上記HPCのヒドロキシプロポキシル基の置換度は、53.4%以上であることがより好ましい。
【0026】
本発明のフィルム状製剤は、上述した可食性高分子以外に、例えば、水にのみ可溶である可食性高分子又は水にも極性有機溶媒にも不溶性である可食性高分子を適量組み合わせて用いることもできる。このような可食性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、結晶セルロース等の合成高分子化合物、アルギン酸ソーダ、デキストラン、カゼイン、プルラン、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、トラガンカントガム、アカシアガム、アラビアガム、澱粉等の天然物より得られる高分子化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明のフィルム状製剤において、上記可食性高分子の配合量は、フィルム状製剤に含まれる固形分重量全体に対して、1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、本発明のフィルム状製剤中の上述した薬物粒子の配合量が多くなり過ぎることがあり、該薬物粒子の粒子径をかなり小さくしない限り、製品の保型性等の問題が出てくることがある。一方、80重量%を超えると、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を得ることができないことがある。より好適には、10〜70重量%である。
【0028】
本発明のフィルム状製剤は、上述した各物質以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、可塑剤(ポリエチレングリコール(PEG)等)等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜使用して差支えない。
【0029】
また、本発明のフィルム状製剤は、所望により、単糖〜六糖の糖及びこれらの糖アルコールの粒子を含むことができる。
本発明のフィルム状製剤は、上記薬物粒子を一旦溶解させるものではないため、これらの糖又は糖アルコールを整粒された形態で含有することができ、フィルム状製剤の物理的特性及び外観を低下させるリスクを低減しつつ、フィルム状製剤に甘味や保湿性を付与することができる。
【0030】
上記単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。
また、二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース等のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)等が挙げられる。
また、三糖類としては、例えば、ラフィノースを挙げることができ、三糖〜六糖のオリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
【0031】
また、単糖の糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。
また、二糖の糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖としては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴などが挙げられる。
【0032】
本発明のフィルム状製剤に口腔内における易溶解性を付与する観点からは、単糖類〜三糖類、及び、それらの糖アルコールが好ましく用いられる。更には、吸湿性の低いラクトース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、還元パラチノース(イソマルト)がより好ましい。
【0033】
上記単糖〜六糖の糖及びこれらの糖アルコールからとしては、0.1〜60μmの平均粒子径を有する粒子を含むものを用いることが好ましい。0.1μm未満であると、各粒子が凝集する可能性があり、本発明のフィルム状製剤の柔軟性が部位により不均一となる可能性がある。一方、60μmを超えると、実用的な厚さのフィルム状製剤に含有させた際、フィルム状製剤の柔軟性がやはり部位により不均一となる可能性がある。上記糖及び糖アルコールは、0.1〜30μmの平均粒子径を有することがより好ましい。
なお、上記糖及び糖アルコールの平均粒子径は、以下のように、レーザー散乱式粒度分布測定装置により測定した50容量%平均粒子径をいう。
すなわち、0.2重量%のポリオキシエチレンモノラウリン酸エステルのクロロホルム溶液3mL中に、10mgの糖又は糖アルコール粒子を添加し、超音波により充分に分散させた分散液を、レーザー散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−950)における透過率が75〜85%を示すようにクロロホルムに添加し、湿式法により50容量%平均粒子径を測定する。
【0034】
上記糖及び糖アルコールの配合量としては、本発明のフィルム状製剤の固形分全重量に対して1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、実用的な厚さのフィルム状製剤において、口腔内における溶解プロファイル、フィルム強度、口腔内における水溶性高分子に由来するネバネバ感、手指に取った際の触感において充分な改善が見られず、80重量%を超えると、糖及び糖アルコール粒子の平均粒子径をかなり小さくしない限り、フィルム状製剤の保型性等が低下するおそれがある。上記糖及び糖アルコールの配合量は、10〜60重量%であることがより好ましい。
【0035】
なお、上記糖及び糖アルコールとしては、医薬品用として提供されている市販品を利用するのが便利であり、平均粒子径を上記の範囲となるように整粒したものを利用することもでき、また市販品を平均粒子径が上記の範囲となるように整粒して用いることもできる。なお、平均粒子径の調整は、粉砕、乾式造粒法、湿式造粒法等による造粒、篩や分級機等を用いた分級などにより、行うことができる。
【0036】
上記極性有機溶媒としては、上記可食性高分子を溶解させるが、上記薬物粒子は溶解させないものであればよく、例えば、溶解パラメーターが9.7以上の有機溶媒が好適に用いられる。このような溶解パラメーターを満たす有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、塩化メチレン、アセトン等が挙げられ、より好ましくはエタノールである。これらの極性有機溶媒は、単一溶媒であってもよく、2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
本明細書において「溶解パラメーター」とは、1mol容量の液体が蒸発するために必要な蒸発熱(cal/cm)の平方根(SP値)をいう。本発明のフィルム状製剤を製造する際に用い得る有機溶媒の溶解パラメーター及び水の溶解パラメーター値を表1に示した。
なお、本発明において用い得る有機溶媒の溶解パラメーターは、9.7〜20であることが好ましく、9.7〜15であることがより好ましい。溶解パラメーターが9.7未満であると、上記可食性高分子、例えば、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロースが溶解しない可能性がある。
一方、溶解パラメーターが20を超えると、薬物粒子の種類によっては溶解するおそれがあるため、本発明の目的には好ましくない。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明のフィルム状製剤は、例えば次の方法によって製造することができる。
すなわち、まず、所定量の可食性高分子、及び、粉砕、造粒、分級装置等で粒子径を調整した薬物粒子を、上記可食性高分子に対して可溶性の極性有機溶媒、例えばエタノール、プロパノール、アセトン等添加して薬物分散液を調製する。そして、この薬物分散液を、剥離フィルム上に適当量展延乾燥して薄膜を形成し、該薄膜を乾燥させることで、本発明のフィルム状製剤を製造することができる。更に、乾燥させた薄膜は、所望の大きさに裁断し、必要により密封包装し、製品とする。
このような本発明のフィルム状製剤を製造する方法もまた、本発明の1つである。
なお、本発明のフィルム状製剤の製造方法において、薬物分散溶液を調製する際、可食性高分子全量を極性有機溶媒に溶解させた後に薬物粒子を添加すると、その粘性により薬物粒子を充分に分散させることが困難となることがある。このため、本発明のフィルム状製剤の製造方法では、まず、薬物粒子を極性有機溶媒に分散させた後、可食性高分子を溶解させて薬物分散溶液を調製することが好ましい。
【0039】
上記薬物分散液の調製時に溶液中に泡が発生した場合は、一夜放置とか真空脱泡を行うことが好ましい。また、薬物分散溶液の調製に用いられる溶媒は、上記極性有機溶媒のみが好ましいが、微量であれば精製水を加えても差し支えない。
【発明の効果】
【0040】
本発明のフィルム状製剤は、薬物粒子が粒子の状態で分散されていることで、口腔内における迅速な溶解プロファイルを実現する充分量の薬物を、フィルム状製剤中に安定に含有しつつ、充分なフィルム強度、良好な指で触った際の触感、フィルム外観等を有することができる。
また、本発明のフィルム状製剤の製造方法によれば、薬物粒子を溶液にいったん溶解させる必要性がなく、フィルム状製剤内に、分散、担持させることが可能であるので、粒子状の薬物を製剤中に含有する上記フィルム状製剤を効率よく製造することができ、その粒子径、粒子形態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のフィルム状製剤の実施態様の1例を示す模式図である。
【図2】タック持続時間試験の様子を示す模式図である。
【図3】グアヤコールスルホン酸カリウム粒子のSEM画像である。
【図4】グアヤコールスルホン酸カリウム粒子AのSEM画像である。
【図5】グアヤコールスルホン酸カリウム粒子BのSEM画像である。
【図6】グアヤコールスルホン酸カリウム粒子CのSEM画像である。
【図7】グルタチオン(還元型)粒子のSEM画像である。
【図8】アミノフィリン粒子のSEM画像である。
【図9】実施例1のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図10】実施例2のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図11】実施例3のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図12】実施例4のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図13】実施例5のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図14】実施例6のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図15】実施例7のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図16】実施例8のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図17】実施例9のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図18】実施例10のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図19】実施例11のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図20】実施例12のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図21】実施例13のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図22】比較例1のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図23】比較例2のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図24】比較例3のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図25】比較例4のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図26】比較例5のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図27】比較例6のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【図28】比較例7のフィルム状製剤表面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例で用いた各薬物粒子は、粉砕後、32μm、53μm、90μmの篩いで篩ったもの、ジェットミル(ホソカワミクロン社製、スパイラルジェットミル50AS)及びスプレードライヤー(BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB−290)により微粒子化したものを用いた。これらの各薬物粒子を電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、TM−1000)で測定し、200個の粒子径結果より50容量%平均粒子径を算出した。この値を各粒子の粒子径の指標として用いた。
表2に用いた各薬物粒子の50容量%平均粒子径及びその標準偏差を示す。これら粒子の画像を図3〜8に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
(実施例1)
エタノール12.0重量部にポリエチレングリコール(PEG400)0.35重量部を加えよく攪拌した後、分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(日本曹達製、商品名;日曹HPC SSL)6.65重量部を加えてローリングミキサーで攪拌溶解させた。ここに、予め粒子径を制御したグアヤコールスルホン酸カリウム粒子3.0重量部を加え超音波により分散させて薬物分散溶液を調製した。この薬物分散溶液を充分に脱泡後、これをポリエステル剥離フィルム上に延伸乾燥して厚さ約70μmのフィルムを製造した。得られたフィルムをポリエステル剥離フィルムから剥離させ4cmの長方形に裁断し、実施例1のフィルム状製剤を得た。
【0046】
(実施例2)
HPCに代えて、分子量105万〜120万のPVP(和光純薬製、試薬名;ポリビニルピロリドンK90)を用い、表3に示した組成とした以外は、実施例1と同様の手順で実施例2のフィルム状製剤を得た。
【0047】
(実施例3)
エタノールに代えて、アセトンを用い、表3に示した組成とした以外は、実施例1と同様の手順で実施例3のフィルム状製剤を得た。
【0048】
(実施例4)
エタノールに代えて、アセトンを用い、表3に示した組成とした以外は、実施例2と同様の手順で実施例4のフィルム状製剤を得た。
【0049】
(実施例5)
グアヤコールスルホン酸カリウム粒子に代えて、予め粒子径を制御したグルタチオン(還元型)粒子を用い、表3に示した組成とした以外は、実施例1と同様の手順で実施例5のフィルム状製剤を得た。
【0050】
(実施例6)
グアヤコールスルホン酸カリウム粒子に代えて、予め粒子径を制御したアミノフィリン粒子を用い、表3に示した組成とした以外は、実施例1と同様の手順で実施例6のフィルム状製剤を得た。
【0051】
(実施例7)
HPCに代えて、分子量105万〜120万のPVP(和光純薬製、試薬名;ポリビニルピロリドンK90)を用い、表3に示した組成とした以外は、実施例6と同様の手順で実施例7のフィルム状製剤を得た。
【0052】
【表3】

【0053】
(実施例8)
エタノール12.0重量部にポリエチレングリコール(PEG400)0.35重量部を加えよく攪拌した後、分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(日本曹達製、商品名;日曹HPC SSL)6.65重量部を加えてローリングミキサーで攪拌溶解させた。ここに、予め粒子径を制御したグアヤコールスルホン酸カリウム粒子A3.0重量部を加え超音波により分散させて薬物分散溶液を調製した。この薬物分散溶液を充分に脱泡後、これをポリエステル剥離フィルム上に延伸乾燥して厚さ約70μmのフィルムを製造した。このフィルムをポリエステル剥離フィルムから剥離させ4cmの長方形に裁断し、実施例8のフィルム状製剤を得た。
【0054】
(実施例9、10)
グアヤコールスルホン酸カリウム粒子Aに代えて、予め粒子径を制御したグアヤコールスルホン酸カリウム粒子B及びCを用い、表4に示した組成とした以外は、実施例8と同様の手順で実施例9及び実施例10のフィルム状製剤を得た。
【0055】
(実施例11〜13)
表4に示した組成とした以外は、実施例8と同様の手順で実施例11〜13のフィルム状製剤を得た。
【0056】
【表4】

【0057】
(比較例1)
分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(日本曹達製、商品名;日曹HPC SSL)6.65重量部に、ポリエチレングリコール(PEG400)0.35重量部、予め粒子径を制御したグアヤコールスルホン酸カリウム粒子3.0重量部及び蒸留水15.0重量部を加え、ローリングミキサーで攪拌溶解させて溶液を調製した。この溶液を充分に脱泡後、これをポリエステル剥離フィルム上に延伸乾燥して厚さ約70μmのフィルムを製造した。このフィルムをポリエステル剥離フィルムから剥離させて4cmの長方形に裁断し、比較例1のフィルム状製剤を得た。
【0058】
(比較例2〜4)
HPCに代えて、分子量105万〜120万のPVP(和光純薬製、試薬名;ポリビニルピロリドンK90)(比較例2)、重量平均分子量16000でメトキシ基の置換度が28.0〜30.0%かつヒドロキシプロポキシ基の置換度が7.0〜12.0%であるHPMC(信越化学工業製、商品名;TC−5E)(比較例3)、及び、重量平均分子量20万のプルラン(林原商事製、商品名;食品添加物プルラン)(比較例4)を、それぞれ用い、表5に示した組成とした以外は、比較例1と同様の手順で比較例2〜4のフィルム状製剤を得た。
【0059】
(比較例5)
グアヤコールスルホン酸カリウム粒子に代えて、予め粒子径を制御したグルタチオン(還元型)粒子を用い、表5に示した組成とした以外は、比較例1と同様の手順で比較例5のフィルム状製剤を得た。
【0060】
(比較例6)
グアヤコールスルホン酸カリウム粒子に代えて、予め粒子径を制御したアミノフィリン粒子を用い、表5に示した組成とした以外は、比較例1と同様の手順で比較例6のフィルム状製剤を得た。
【0061】
(比較例7)
HPCに代えて、分子量105万〜120万のPVP(和光純薬製、試薬名;ポリビニルピロリドンK90)を用い、表5に示した組成とした以外は、比較例6と同様の手順で比較例7のフィルム状製剤を得た。
【0062】
【表5】

【0063】
[試験方法]
各実施例及び比較例で得られたフィルム状製剤の製造時の剥離性、フィルムの柔軟性、フィルム強度、口腔内におけるネバネバ感、口腔内における溶解プロファイル、指で触った際の触感、外観に関して、それぞれ剥離性試験、剛軟度試験、引張強度試験、タック持続試験、口腔内崩壊性試験、官能試験(触感)及び目視により測定及び評価を行った。また、フィルム状製剤中に分散された薬物粒子、又は、フィルム状製剤中に析出した薬物結晶に関してマイクロスコープを用いて撮影を行った。それぞれの試験方法を次に示す。
【0064】
(1)剥離性試験
各フィルム状製剤製造時に、ポリエステル剥離フィルムからサンプルを剥離させるが、その際の剥離性に関して評価を行った。評価基準は次の通りである。
4:容易に剥離できる
3:剥離できる
2:何とか剥離できる
1:何とか剥離できるが破れる
0:全く剥離できない
【0065】
(2)剛軟度試験
本試験法は、“JIS L1096 一般織物試験法、8.19剛軟性、8.19.1 A法(45°カンチレバー法)”の試験方法に準拠したものである。20mm×150mmの試験片を5枚採取し、一端が45°の斜面を持つ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケールの基線に合わせて置く。次に適当な方法によって試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央点が斜面Aと接したとき多端の位置をスケールによって読む。剛軟度は試験片が移動した時の長さ(mm)で示され、それぞれ5枚の表裏、前後逆を測定し、それぞれの平均値を算出し、剛軟度として求めた。
評価基準は、各実施例及び比較例に係るフィルム状製剤に対して、薬剤微粒子を添加しない評価用フィルム(下記参考例1〜6)をそれぞれ作製し、各参考例に係るフィルムの剛軟度を基準値として考え、次の通り設定する。
4:基準値±10mm
3:基準値±20mm
2:基準値±30mm
1:基準値±40mm以上
また、(1)剥離性試験において全く剥離できないと評価されたサンプルに関しては、試験を実施することができないため、0として評価した。
【0066】
(参考例1)
分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(日本曹達製、商品名;日曹HPC SSL)9.5重量部に、ポリエチレングリコール(PEG400)0.5重量部及びエタノール(99.5)15.0重量部を加え、ローリングミキサーで攪拌溶解した。この溶液を充分に脱泡後、これをポリエステル剥離フィルム上に延伸乾燥して厚さ約70μmのフィルムを製造した。得られたフィルムをポリエステル剥離フィルムから剥離させて4cmの長方形に裁断して評価用フィルム(1)を得た。
【0067】
(参考例2〜6)
表6に示した組成とした以外は参考例1と同様の手順で各評価用フィルム(2)〜(6)を得た。なお、表6中、PVP、HPMC及びプルランは、上述したものと同様のものを使用した。
【0068】
【表6】

【0069】
(3)引張強度試験
小型卓上引張試験機(島津製作所製、EZ TEST−100M)を用い、“JIS K7127 プラスチックフィルム及びシートの引張試験方法”に準拠し、試験片としてフィルム状製剤を12mm×50mmに断裁して用い、デシケーターで充分に乾燥させた後、試験を行った。試験速度として毎分60mmを用いた。試験片はほとんど伸びが見られなかったために、測定により得られた引張降伏強さを引張強度として求める。
それぞれのサンプルを3回繰り返し測定し、その平均値を引張強度とした。この引張強度を次の評価基準にあてはめスコア化した。
4:10〜20N
3:5〜10N
2:2〜5N
1:0〜2N
また、(1)剥離性試験において全く剥離できないと評価されたサンプルに関しては、試験を実施することができないため、0として評価した。
【0070】
(4)タック持続試験
レオメーター(SUN SCIENTIFIC,CR−2000)を用い、図2に示す環境下で試験を行った。Φ12mmのプローブ2a上に両面テープ2bでΦ12mmの試験片2cを貼付する。別途、試験台2fの上にはゴム2eを載せ、その上に水で浸したコラーゲンフィルム2dを設置する。試験片に200μLの精製水を添加し、この試験片2cが貼付されたプローブ2aを下降させ、コラーゲンフィルム2dに接触させ、その後、上昇させる。この際に、プローブ2aがコラーゲンフィルム2dから離れる時に得られる初期タック後のタック持続時間を記録紙よりノギスを使い測定した。評価基準は次の通りである。
4:0〜10mm
3:10〜15mm
2:15〜20mm
1:20mm以上
また、(1)剥離性試験において全く剥離できないと評価されたサンプルに関しては、剥離フィルムごと断裁し、剥離フィルム側をプローブの両面テープに貼付し、同様に測定した。
【0071】
(5)口腔内崩壊性試験
1000mLのガラスシャーレにpH6.8リン酸塩緩衝液900mLを入れ、この中にステンレス製篩い(Φ4mm)を上下反転させて沈め、スターラーで撹拌(300rpm)する。この溶液の温度は、恒温水循環装置を用いて37±2℃で管理し、この中に試験片(4cm)を沈め、同時に上から3cm×3cmのステンレス製金網(網目サイズ5mm)を重しとして載せた。試験片を沈めた時間から、試験片が崩壊し終えるまでの時間を目視で確認し、ストップウォッチで測定する。
それぞれのサンプルを3回繰り返し測定し、その平均値を口腔内崩壊時間とした。この口腔内崩壊時間を次の評価基準にあてはめスコア化した。
4:0〜10秒
3:10〜15秒
2:15〜20秒
1:20秒以上
また、(1)剥離性試験において全く剥離できないと評価されたサンプルに関しては、試験を実施することができないため、0として評価した。
【0072】
(6)官能試験(触感)
実施例及び比較例により断裁したフィルム状製剤を、実際に指で5秒間円を描くように触り、表面がネバネバするかどうかの違和感を評価した。評価基準は次の通りである。
4:ネバネバしない
3:気にならない程度のネバネバ感である
2:ネバネバ感に違和感を覚える
1:かなりネバネバし指にフィルムが残る
【0073】
(7)外観(目視)
実施例及び比較例により断裁したフィルム状製剤を、目視により、均一なフィルムかどうかを評価した。評価基準は次の通りである。
4:均一なフィルムである
3:一部分微細な結晶の析出又は粒子の微細な凝集物がみられる
2:一部分大きな結晶の析出又は粒子の大きな凝集物がみられる
1:大部分で結晶の析出又は粒子の凝集物がみられる
【0074】
また、比較例1〜7及び実施例1〜13について、それぞれのフィルム状製剤をマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−600)を用い、フィルム中の薬物粒子又は析出した薬物結晶を撮影した。それぞれの結果を図9〜28に示した。
【0075】
表7に実施例及び比較例のフィルム状製剤の剥離性試験、剛軟度試験、引張強度試験、タック持続試験、口腔内崩壊性試験、官能試験(触感)及び外観(目視)の結果を示した。これら7項目の評価を合計し、合計点により実施例及び比較例のフィルム状製剤の相対的な評価を行った。
【0076】
【表7】

【0077】
表7に示したように、実施例のフィルム状製剤は、いずれも薬物粒子が粒子の状態で含まれており、ほとんどの薬物粒子は、粒子径1〜60μmの範囲内の整粒された形態で存在していた。また、評価の合計点は25〜28であった。
一方、比較例のフィルム状製剤は、薬物粒子がフィルム状製剤中で溶解又は再結晶した状態で含まれており、評価の合計点は6〜18であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のフィルム状製剤は、薬物粒子が粒子の状態で分散されていることで、口腔内における迅速な溶解プロファイルを実現する充分量の薬物を、フィルム状製剤中に安定に含有しつつ、充分なフィルム強度、良好な指で触った際の触感、フィルム外観等を有することができる。
また、本発明のフィルム状製剤の製造方法によれば、薬物粒子を溶液にいったん溶解させる必要性がなく、フィルム状製剤内に、分散、担持させることが可能であるので、粒子状の薬物を製剤中に含有する上記フィルム状製剤を効率よく製造することができ、その粒子径、粒子形態を制御することができる。
【符号の説明】
【0079】
1a 薬物粒子
1b 基材
2a プローブ
2b 両面テープ
2c 試験片
2d コラーゲンフィルム
2e ゴム
2f 試験台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有することを特徴とするフィルム状製剤。
【請求項2】
薬物粒子の平均粒子径が0.1〜60μmである請求項1記載のフィルム状製剤。
【請求項3】
可食性高分子は、常温で固体である請求項1又は2記載のフィルム状製剤。
【請求項4】
可食性高分子は、ポリビニルピロリドン及び/又はヒドロキシプロピルセルロースである請求項1、2又は3記載のフィルム状製剤。
【請求項5】
ポリビニルピロリドンは、分子量が2500〜300万である請求項4記載のフィルム状製剤。
【請求項6】
ヒドロキシプロピルセルロースは、分子量が1万〜115万である請求項4記載のフィルム状製剤。
【請求項7】
ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が50〜100%である請求項4記載のフィルム状製剤。
【請求項8】
極性有機溶媒は、溶解パラメーターが9.7以上であるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のフィルム状製剤。
【請求項9】
水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有するフィルム状製剤の製造方法であって、
前記可食性高分子、前記薬物粒子及び極性有機溶媒を含有する薬物分散溶液を調製し、前記薬物分散溶液の薄層を形成して該薄層を乾燥させる
ことを特徴とするフィルム状製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−225532(P2011−225532A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49504(P2011−49504)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】