説明

フィルム端部の引出し方法及び引出し具又は引出し具を備えた収納箱

【課題】ロールフィルムの側面に密着したフィルム端部を簡単に引き出すことができるフィルム端部の引出し具100を提供する。
【解決手段】引出し具100は当接体1と端部検出面3とで構成する。当接体1は、ロールフィルムPの長手側面が当接自在となる平面部1Aを有する。端部検出面3は、当接体1の平面部1A表面に粘着剤2を付着して形成される。この粘着剤2は、端部検出面3に接着されたロールフィルムPの側面が該端部検出面3上で回転自在となる接着力を有する。そして、ロールフィルムPの長手側面を当接体1の端部検出面3に押し当ててフィルム端部P1を接着する。フィルムが開く方向にロールフィルムPを回転させてフィルム端部P1を引き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用ラップフィルム等を筒状に巻回したロールフィルムにおいて、該ロールフィルムの側面に密着したフィルム端部を簡単に引出すことができるフィルム端部の引出し方法及び引出し具又は引出し具を備えた収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用ラップ等のフィルムは、厚さ十数μmのプラスチックフィルムが筒状に巻き付けられている(以下、ロールフィルムと称する)。そして、フィルムの端部がロールフィルムの側面に接触すると、静電気の作用などによってフィルム端部が密着状態になる。そのため、このフィルム端部の検出が困難な作業になっていた。しかも、やっと検出したフィルム端部をつまんで剥がそうとすると、つまんだ一部からフィルムが裂けてしまい、均等に引き出すことができなくなることも多い。このように、密着状態のフィルム端部をロールフィルムから引き出すには極めて面倒な手間を要していた。
【0003】
一方、この種のロールフィルムが食品用ラップフィルムとして使用される場合、ロールフィルムを切断するカッターを備えた収納箱に収納されている。そして、該収納箱から必要な長さだけ引き出してカッターで切断する。このような収納箱では、ロールフィルムが巻き戻ったり、不用意に飛び出したりしてフィルム端部がロールフィルムの側面に密着しないようにするための工夫が凝らされている。
【0004】
例えば特許文献1に記載のラップフィルム用カートンでは、ラップフィルムを切断する位置の側壁に巻戻り防止層を設けている。そして、箱から引き出したラップフィルムをこの巻戻り防止層に密着せしめることで、ラップフィルムの巻き戻しを防止するものである。
【0005】
また特許文献2に記載されたラップフィルムの収納箱では、箱の長さ方向の両端部にラップフィルムとの密着力が高い高密着面を形成し、該高密着面に切断後のフィルムを密着させることで、フィルムが逆戻りするのを防止すると共に、切り始めのフィルムのスリップを防止している。
【0006】
さらに特許文献3では、収納箱の長手両端部の側面にロールフィルムの両端部を支える折込片等を設け、ロールフィルムが収納箱から不用意に飛び出すのを防止している。すなわち、収納箱からロールフィルムが不用意に飛び出した際に、このフィルム端部がロールフィルム側面に巻き付けられるのを予防するものである。
【0007】
一方、市販されているロールフィルム用収納箱の説明書などには、既にフィルム端部がロールフィルムに密着してしまったときの対応策として、セロハンテープを使用してフィルム端部を見つける手順などが紹介されている。
【0008】
また、布製のガムテープをロールフィルムの長手方向に貼り付けてから引き剥がす方法などもインターネット上の情報として公開されている。この方法によると、ロールフィルムの長手側面に沿って布製のガムテープを貼り付け、このガムテープの端を幅方向に沿って三等分すると共に、三等分された端の中央部分を長手方向に沿って強制的に切り離すと、ガムテープに接着されていたフィルムも同時に切り取られ、新しいフィルム端部が形成されるという方法である。
【特許文献1】特許第2608617号公報
【特許文献2】特許第2705899号公報
【特許文献3】実公昭61‐43702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の各特許文献に例示されるごとく、従来のロールフィルム用の収納箱では、引き出したフィルム端部が巻き戻らないようにする工夫や、収納箱から不用意に飛び出さないようにする工夫などが数多く提案されている。ところが、このフィルム端部がロールフィルム側面に既に密着してしまったときに、フィルム端部を簡単に引き剥がす手段は極めて限定されており、前述のようなセロハンテープや、布製のガムテープなどに頼らざるを得ないものであった。ところが、布製のガムテープを使用する剥離手段は、接着状態の布製ガムテープを長手方向に沿って強制的に切り裂く手段であるから、指先の力やコツなどが必要になり、誰もが簡単に実行できる手段ではなかった。
【0010】
一方、この種のロールフィルムは、静電気の作用だけでなく、物質の分子同士が近づくとお互いが引き合おうとする、所謂、ファンデルワース力やフィルム表面のわずかな粘着力などが複合的に作用してフィルム端部がロールフィルム側面に密着することが知られている。しかも、食品用フィルムは使用時に、のこぎり状のカッターで切断されているため、セロハンテープでフィルムの一部のみを接着して引き剥がそうとすると、接着した一部のみがフィルム端部から裂けてしまうことが多い。この場合、フィルム端部の裂けた一部のみが引き出され、残されたフィルム端部がロール側面に密着したまま周回遅れになる。このような状態では、もはやフィルム端部をもとの状態に引き出すことが極めて困難になり、フィルムの使用をあきらめてそのまま廃棄されることも少なくない。
【0011】
そのため、ロールフィルムの側面に巻きついてしまったフィルム端部を引き出す手段は、たとえ接着テープや布製のガムテープなどを使用したとしても極めて面倒な作業にならざるを得ず、誰でも簡単に使いこなすことができるフィルム端部の引き出し手段が望まれていた。
【0012】
そこで本発明は上述の課題を解決すべく創出されたもので、既にロールフィルムの側面に密着してしまったフィルム端部を、誰もが簡単に引き出すことができるフィルム端部の引出し方法及び引出し具又は引出し具を備えた収納箱の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため本発明における第1の手段は、長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムPを使用し、該ロールフィルムの側面に密着したフィルム端部P1を該ロールフィルムP側面から引き離すフィルム端部の引出し方法において、ロールフィルムPの長手側面の全長が当接可能な範囲の平面部1Aに、該ロールフィルムPが着脱自在に接着される粘着剤2を付着して端部検出面3を形成し、ロールフィルムPの長手側面を端部検出面3に密着するように押し当て、端部検出面3にフィルム端部P1を接着した後、ロールフィルムPを回転させてフィルム端部P1を引き出す方法にある。
【0014】
第2の手段は、長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムPに使用され、該ロールフィルムPの側面に密着したフィルム端部P1をロールフィルムP側面から引き離すフィルム端部の引出し具100において、該引出し具100は、ロールフィルムPの長手側面の全長が当接可能な平面部1Aを有する当接体1と、該当接体1の平面部1AにロールフィルムPが着脱自在に接着される粘着剤2を付着して形成された端部検出面3とで構成され、該端部検出面3とロールフィルムPの側面とを平行に押し当ててフィルム端部P1を接着し、ロールフィルムPを回転させてフィルム端部P1を引き出す引出し具である。
【0015】
第3の手段は、長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムPに使用され、該ロールフィルムPの側面に密着したフィルム端部P1をロールフィルムP側面から引き離す引出し具100を備えたロールフィルム用の収納箱200において、該収納箱200は、ロールフィルムPを収納する箱本体10と、該箱本体10の長手方向に沿った開口部に揺動自在に設けられた蓋体20とからなり、引出し具100は、ロールフィルムPの長手側面に当接する収納箱200のいずれかの側板を当接体1とすると共に、該当接体1の平面部1AにロールフィルムPが着脱自在に接着される粘着剤2を付着して端部検出面3を形成し、該端部検出面3にロールフィルムPを平行に押し当ててフィルム端部P1を接着すると共に、ロールフィルムPを回転させてフィルム端部P1を引き出すことができる収納箱にある。
【0016】
第4の手段の前記引出し具100は、前記蓋体20の天板21を前記当接体1とすると共に、該天板21の内側面21Aを前記平面部1Aとし、該内側面21Aに前記粘着剤2を付着して前記端部検出面3が形成されたものである。
【0017】
第5の手段の前記粘着剤2は、エラストマー系溶剤形の粘着剤2を使用することを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1によると、ロールフィルムPの長手側面を端部検出面3に密着するように押し当て、端部検出面3にフィルム端部P1を接着することによって、フィルム端部P1を、極めて簡単に見つけ出すことができる。すなわち、これまでフィルム端部P1の一部から全体を探すといった発想を転換し、ロールフィルムPの長手側面全体からフィルム端部P1を探すといった逆転の発想により、ロールフィルムPを回転させるだけの簡単な操作でフィルム端部P1を引き出すことに成功したものである。
【0019】
この結果、これまでのセロハンテープや布製ガムテープを使用しなくても、ロールフィルムPを端部検出面3に着脱自在に押し当てて回転させるだけで、誰でも簡単にフィルム端部P1を引き出すことが可能になった。しかも、フィルム端部P1の全長を端部検出面3に接着した状態でフィルム端部P1を引き出すことから、セロハンテープなどによって部分的に引き剥がしたときのように、フィルム端部P1の一部が周囲から切り離され、かえって修復が困難になるような不都合も全くなくなった。
【0020】
しかも、フィルム端部P1が周回遅れなど、不揃いに密着した状態になっているロールフィルムPであっても、ロールフィルムPの長手側面を端部検出面3に平行に押し当てることで、フィルム端部P1を順次探し出すことができる。したがって、周回遅れになっているフィルム端部P1でも簡単に順次引き出すことも可能になる。
【0021】
請求項2の引出し具100は、ロールフィルムPの長手側面の全長が当接可能な平面部1Aを有する当接体1と、該当接体1の平面部1AにロールフィルムPが着脱自在に接着される粘着剤2を付着して形成された端部検出面3とで構成されているので、引出し具100自体の構成としては極めてシンプルな構成になる。したがって、ロールフィルムPの長手側面の全長を当接体1の端部検出面3に平行に押し当てることができる平面部1Aを有するものであれば、どのような部材でも本発明の引出し具100として利用することが可能になる。この結果、ロールフィルムPの用途に応じて自由な形状の引出し具100を提供することができる。
【0022】
請求項3に記載の収納箱200は、ロールフィルムPを収納する箱本体10と、該箱本体10の長手方向に沿った開口部に揺動自在に設けられた蓋体20とからなり、引出し具100は、ロールフィルムPの長手側面に当接する収納箱200のいずれかの側板を当接体1とするので、本発明引出し具100を常にロールフィルムPのそばに設置することができる。したがって、いつ、どのような場所でもロールフィルムPと共に、引出し具100を使用することが可能になる。
【0023】
請求項4に記載の収納箱200では、蓋体20の天板21を当接体1とし、該天板21の内側面21Aに端部検出面3を設けている。このように構成したことで、蓋体20を開けるだけで引出し具100の使用が可能になる。さらに、フィルム端部P1を引き出した後は、ロールフィルムPを蓋体20から箱本体10に戻し、収納箱200に予め設けられているカッターを利用して切断することで、再び通常どおりの使用ができるようになる。このように、引出し具100の使用が極めて合理的になり、始めて使用する者でも直感的な使用を可能にしている。
【0024】
しかも、天板21の内側面21Aに端部検出面3を設けているので、不使用時における端部検出面3の粘着剤2がロールフィルムPの通常の使用を妨げることがなく使用者の目に触れることもない。また、不使用時の端部検出面3に塵などが付着せず清潔な使用が可能である。
【0025】
請求項5に記載の粘着剤2により、フィルム端部P1を着脱自在に貼り直しでき、端部検出面3にロールフィルムPを押し付けながらフィルム端部P1を検出する作業が容易になる。また、接着力が微弱なエラストマー系溶剤形の粘着剤2を使用できるので、この粘着剤2に他の部材等が間違って接着した場合でも容易に除去することができるなど、使用時の不都合も極めて少ない。
【0026】
このように本発明によると、ロールフィルムの側面に巻きついてしまったフィルム端部を、極めて容易に見つけ出し、誰もが簡単に引き出すことができるなどといった産業上有益な種々の効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の最良の形態は、ロールフィルムPの長手側面が平行に当接自在となる平面部1Aを有する当接体1と、該当接体1の平面部1A表面に粘着剤2を付着して形成された端部検出面3とでフィルム端部の引出し具100を構成する。このとき、引出し具100は、ロールフィルムPを収納する箱本体10と、該箱本体10の長手方向に沿った開口部に揺動自在に設けられた蓋体20に設置するものとし、特に、蓋体20の天板21を前記当接体1とすると共に、該天板21の内側面21Aを前記平面部1Aとし、該内側面21Aの表面に粘着剤2を付着して端部検出面3が形成された引出し具100とする。そして、ロールフィルムPの長手側面を当接体1の端部検出面3に平行に押し当ててフィルム端部P1を接着し、フィルムが開く方向にロールフィルムPを回転させてフィルム端部P1を引き出すように設けた収納箱200により当初の目的を達成するものである。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の一実施例を説明する。本発明引出し方法は、長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムPにおいて実施される。すなわち、ロールフィルムPの側面に密着したフィルム端部P1を簡単に見つけ出して引き出す方法である。このロールフィルムPの材質や用途は限定されないが、特に食品用ラップフィルム等の包装用ラップあるいはストレッチフィルムなど、薄いフィルムを巻きつけたロールフィルムPのフィルム端部を引出すのに有効である(図1参照)。
【0029】
本発明引出し方法は、最初にロールフィルムPの長手側面の全長が当接自在となる任意の部材の平面部1Aに粘着剤2を付着して端部検出面3を形成する(図1参照)。この粘着剤2は、端部検出面3に接着したロールフィルムPが、該端部検出面3上で貼り直し自在になる程度の比較的弱い接着力を有する粘着剤2の使用が好適である。
【0030】
次に、端部検出面3を使用してフィルム端部P1端部の位置を探し出す。すなわち、ロールフィルムPを持ってロールフィルムPの長手側面の全長を端部検出面3に平行に押し当てる(図2(イ)参照)。次に、このロールフィルムPを押し当てながら少しずつ円周方向に回転させて行く(同図(ロ)参照)。
【0031】
この手順を繰り返してロールフィルムPの当接面を順次変えて行くと、フィルム端部P1の一部又は全体が端部検出面3に接着された状態で検出される。そこで、フィルム端部P1の一部が見つかった場合、ロールフィルムPの当接位置を貼り直してフィルム端部P1の長手部分を端部検出面3に接着する。
【0032】
そして、フィルム端部P1の長手部分を端部検出面3に接着した後、フィルムが開く方向へロールフィルムPを回転させると、端部検出面3に残されたフィルム端部P1がロールフィルムP側面から引き出された状態になる(図2(ハ)参照)。
【0033】
また、該検出時において、フィルム端部P1の長手部分の全体が端部検出面3に一度で接着されることも多い。この場合は、そのままロールフィルムPを回転させるだけのワンタッチ操作でフィルム端部P1を引き出すことができる(図2(ハ)参照)。
【0034】
フィルム端部P1が斜めに切断されている場合など、フィルム端部P1の長手全体を端部検出面3に一度で接着できない状態では、できるだけフィルム端部P1を長めに接着し、引き出す面積が広くなるように貼り直しながら調整し、最終的にフィルム端部P1の長手全体が接着できるようにする。
【0035】
フィルム端部P1の一部が周回遅れになっている場合は最も困難な修復作業になっていた。この場合でも次の手順で容易に修復可能になる。まずロールフィルムPの各端部に近接するフィルム端部P1をそれぞれ検出する。この検出には、ロールフィルムPの長手側面全体を端部検出面3に当接するのではなく、ロールフィルムPを端部検出面3に対して横向きに押し当てる(図3参照)。そして、ロールフィルムPの一方の長手端部のみが端部検出面3に当接した状態でロールフィルムPを回転させるとフィルム端部P1を容易に検出できる。
【0036】
このような手順でロールフィルムPの長手両端部にあるフィルム端部P1をそれぞれ検出すると、引き出しが先行しているフィルム端部P1と周回遅れのフィルム端部P1とが別々に検出されるので、周回遅れのフィルム端部P1を引き出し、先行しているフィルム端部P1に揃える。このように、フィルム端部P1を修復する手順は、フィルム端部P1の状態に応じて適宜に変更することができる。
【0037】
本発明引出し具100は、当接体1と端部検出面3とで構成される(図1参照)。すなわち、当接体1は、ロールフィルムPの長手側面が当接自在となる平面部1Aを有する部材を使用する。さらに当接体1の平面部1Aに粘着剤2を付着して端部検出面3を形成する。
【0038】
また、本発明引出し具100は、独立した引出し具100として構成する(図4参照)ほか、ロールフィルムPを収納する収納箱200の一部や(図1参照)、テーブルの天板の一部などを引出し具100として形成することも可能である。
【0039】
独立した引出し具100を構成する場合、ロールフィルムP側面の全長が当接可能になる平面部1Aを有する部材が当接体1の対象になる。したがって、平面部1Aを有する任意の形状の物品を当接体1として使用することができる(図4参照)。当接体1の材質も任意に選択できるもので、紙、合成樹脂、金属、皮革、木材など、ロールフィルムPの側面を押し当てることが可能な材質であれば良い。
【0040】
引出し具100を使用するには、当接体1をテーブル等に置き、ロールフィルムPを持って押し当てるほか、テーブル等にロールフィルムPを置き、この上から引出し具100を持って押し当てるといった使用も可能である。また、当接体1の平面部1A以外の面は、平坦でなくてもよいので、当接体1を操作する取手4や、当接体1を固定する任意の台など適宜の加工等を施すことも可能である(図4参照)。
【0041】
また、独立した引出し具100を構成する場合、例えば合成樹脂材のように粘着性を有する材質を当接体1に使用することも可能である。この場合、粘着剤2は、平面部1Aに後から付着するものではなく、当接体1が自ら持つ性質を粘着剤2として使用することになる。
【0042】
当接体1の平面部1Aは、ロールフィルムPの長手側面の全長が当接する面として形成されている。したがって、ロールフィルムPの円周に沿って湾曲する平面部1Aであってもよい(図5参照)。また、柔軟な板状材やシート材を当接体1とし、ロールフィルムPの側面を包むように押し当てる当接体1でもよい(図6参照)。このように、独立した引出し具100は、当接体1の平面部1Aが、ロールフィルムPの長手側面の全長が当接する面を持つ部材であればよく、当接体1の形状、材質、硬度などは自由に設計変更することができる。
【0043】
本発明で使用する粘着剤2は、当接体1の平面部1AにロールフィルムPを着脱自在に接着するものである。したがって、端部検出面3に当接されたロールフィルムPの側面が端部検出面3上で貼り直しが可能な粘着剤2を使用する。すなわち、粘着剤2の接着力は、端部検出面3に当接されたロールフィルムPの側面が貼り付き、張り付いた後でロールフィルムPが回転自在となる比較的弱い接着力であれば本発明引出し具100の粘着剤2として使用可能である。
【0044】
例えば、セロハンテープやガムテープの接着面に液体、粉末等を付着させて接着力を弱くすることで粘着剤2としての使用が可能である。また、実験によると、粘着剤2として、エラストマー系溶剤形の接着剤が粘着剤2として使用可能であることが明らかになった。この実験では、収納箱200の蓋体20を構成する用紙の非印刷面に、このエラストマー系溶剤形の接着剤を適量付着して端部検出面3を形成した場合でも粘着剤2として繰り返し使用可能であることが確認されている。
【0045】
尚、このような粘着剤2は、本発明で使用する粘着剤2の一実施例にすぎず、ロールフィルムPを着脱自在に貼り直しができる接着力を有するものなら、他の接着剤や粘着剤等に変更することが可能である。
【0046】
さらに、粘着剤2を付着する面積は、広くなるほどフィルム端部P1を検出しやすくなる。しかしながら、必ずしも当接体1の平面部1A全面に付着する必要はなく、ロールフィルムPの長手側面の全長が接着可能になる程度の幅狭な帯状に限定して付着してもよい。また、端部検出面3は、フィルム端部P1の長手方向に沿った全長を接着するので、粘着剤2は平面部1A上の全面に塗布してもよいが、粘着剤2を多数の点状に付着するなど、ある程度の間隔をおいて付着することも可能である。
【0047】
さらに、粘着剤2の付着手段は、はけ塗り、印刷、吹付けなど、当接体1の平面部1Aに粘着剤2を直に付着する手段がある。また、シートやフィルム等の平面部1Aに粘着剤2を付着した当接体1を別途形成し、この当接体1を別の当接体1の平面部1Aに接着するなどして使用することも可能である。
【0048】
本発明収納箱として、ロールフィルムPを収納する収納箱200の一部を引出し具100とする実施例を説明する(図1参照)。この収納箱200は、ロールフィルムPを収納する箱本体10と、該箱本体10の長手方向に沿った開口部に揺動自在に設けられた蓋体20とからなる。
【0049】
この場合の当接体1は、ロールフィルムPの長手側面に当接する収納箱200のいずれかの側板を当接体1とする。すなわち、収納箱200の天板21または側板22または底板23、若しくはこれらの組合せから選択することができる。そして、この当接体1の平面部1AにロールフィルムPが着脱自在に接着される粘着剤2を付着して端部検出面3を形成する。また、独立したシート状、フィルム状等の平面部1Aに粘着剤2を付着して引出し具100を形成し、この引出し具100を収納箱200の平面部1Aに装着して端部検出面3を形成することも可能である。
【0050】
図示例では、蓋体20の天板21を当接体1とし、蓋体20内部の内側面21Aを平面部1Aとしている(図1参照)。そして、この内側面21Aに直接粘着剤2を付着して端部検出面3を形成し、蓋体20を引出し具100とするものである。
【0051】
天板21の内側面21Aを当接体1とした場合、蓋体20を開くと引出し具100の使用が可能になる。さらに、開いた蓋体20の一側縁部は箱本体10の開口側縁に連続しているので、当接体1の粘着剤2にフィルム端部P1を接着させた状態で、箱本体10方向にロールフィルムPを回転移動させることができる。この場合、片手で蓋体20を支え、もう一方の手で持ったロールフィルムPを内側面21Aに当接させるといった簡単な操作になる。
【0052】
また、他の実施例として、底板23を当接体1とし、この当接体1の外側面を端部検出面3とすることも可能である(図7参照)。この場合、粘着剤2が箱本体10の外側に付着されるので、不使用時の端部検出面3を覆う剥離紙5等を端部検出面3に貼り付けておいてもよい。
【0053】
尚、本発明は図示例に限定されるものではなく、当接体1や収納箱200の形状や寸法等の設計変更、および当接体1や粘着剤2の材質の置換などは、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】(イ)乃至(ハ)は本発明引出し方法の一実施例を示す側面図である。
【図3】本発明の他の端部検出方法を示す平面図である。
【図4】本発明の引出し具の他の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の当接体を示す側面図である。
【図6】本発明の他の当接体を示す側面図である。
【図7】本発明の他の当接体の使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0055】
P ロールフィルム
P1 フィルム端部
1 当接体
1A 平面部
2 粘着剤
3 端部検出面
4 取手
5 剥離紙
10 箱本体
20 蓋体
21 天板
21A 内側面
22 側板
23 底板
100 引出し具
200 収納箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムを使用し、該ロールフィルムの側面に密着したフィルム端部を該ロールフィルム側面から引き離すフィルム端部の引出し方法において、ロールフィルムの長手側面の全長が当接可能な範囲の平面部に、該ロールフィルムが着脱自在に接着される粘着剤を付着して端部検出面を形成し、ロールフィルムの長手側面を端部検出面に密着するように押し当て、端部検出面にフィルム端部を接着した後、ロールフィルムを回転させてフィルム端部を引き出すことを特徴とするフィルム端部の引出し方法。
【請求項2】
長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムに使用され、該ロールフィルムの側面に密着したフィルム端部をロールフィルム側面から引き離すフィルム端部の引出し具において、該引出し具は、ロールフィルムの長手側面の全長が当接可能な平面部を有する当接体と、該当接体の平面部にロールフィルムが着脱自在に接着される粘着剤を付着して形成された端部検出面とで構成され、該端部検出面とロールフィルムの側面とを平行に押し当ててフィルム端部を接着し、ロールフィルムを回転させてフィルム端部を引き出すことを特徴とするフィルム端部の引出し具。
【請求項3】
長尺な帯状フィルムが筒状に巻かれたロールフィルムに使用され、該ロールフィルムの側面に密着したフィルム端部をロールフィルム側面から引き離す引出し具を備えたロールフィルム用の収納箱において、該収納箱は、ロールフィルムを収納する箱本体と、該箱本体の長手方向に沿った開口部に揺動自在に設けられた蓋体とからなり、引出し具は、ロールフィルムの長手側面に当接する収納箱のいずれかの側板を当接体とすると共に、該当接体の平面部にロールフィルムが着脱自在に接着される粘着剤を付着して端部検出面を形成し、該端部検出面にロールフィルムを平行に押し当ててフィルム端部を接着すると共に、ロールフィルムを回転させてフィルム端部を引き出すことを特徴とする引出し具を備えた収納箱。
【請求項4】
前記引出し具は、前記蓋体の天板を前記当接体とすると共に、該天板の内側面を前記平面部とし、該内側面に前記粘着剤を付着して前記端部検出面が形成された請求項3記載の引出し具を備えた収納箱。
【請求項5】
前記粘着剤は、エラストマー系溶剤形の粘着剤を使用する請求項3又は4記載の引出し具を備えた収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−143594(P2010−143594A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320621(P2008−320621)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【特許番号】特許第4406038号(P4406038)
【特許公報発行日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(308038727)
【Fターム(参考)】