説明

フィルム

【課題】イソシアネート化合物を遊離させず、カルボジイミド化合物により、高分子化合物の末端が封止された組成物よりなるフィルムを提供すること。
【解決手段】カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物と、酸性基を有する高分子化合物とを混合した組成物よりなるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボジイミド化合物によって高分子化合物の末端が封止された組成物からなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物からなるフィルム、例えば脂肪族ポリエステルからなるフィルムに対してカルボジイミド化合物を適用し、加水分解を抑制することは既に提案されている(特許文献1)。この提案において用いられているカルボジイミド化合物は、線状のカルボジイミド化合物である。
【0003】
線状カルボジイミド化合物を高分子化合物の末端封止剤として用いると、線状カルボジイミド化合物が高分子化合物の末端に結合する反応に伴いイソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−261797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イソシアネート化合物を遊離させず、カルボジイミド化合物により、高分子化合物の末端が封止された組成物よりなるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。即ち、本発明の目的は、
カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物と、酸性基を有する高分子化合物とを混合した組成物よりなるフィルムにより達成される。
【0007】
また、本願発明には、下記も包含される。
1.環状構造を形成する原子数が8〜50である上記のフィルム。
2.環状構造が、下記式(1)で表される上記のフィルム。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
3.Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である上記のフィルム。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【0008】
4.環状構造を含む化合物が、下記式(2)で表される上記のフィルム。
【化3】

(式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
5.Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である上記のフィルム。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【0009】
6.環状構造を含む化合物が、下記式(3)で表される上記のフィルム。
【化5】

(式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
7.Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である上記のフィルム。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
8.Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである上記のフィルム。
【0010】
9.環状構造を含む化合物が、下記式(4)で表される上記のフィルム。
【化7】

(式中、Qcは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
10.Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である上記のフィルム。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【0011】
11.ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである上記のフィルム。
12.酸性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種である上記のフィルム。
13.高分子化合物が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドポリイミド、ポリエステルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である上記のフィルム。
14.ポリエステルが、ブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、エチレンナフタレンジカルボキシレートおよびブチレンナフタレンジカルボキシレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を主たる繰り返し単位として含む芳香族ポリエステルである、上記のフィルム。
15.ポリエステルが脂肪族ポリエステルである、上記のフィルム。
16.脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸である、上記のフィルム。
17.ポリ乳酸がステレオコンプレックス結晶を形成している、上記のフィルム。
【0012】
18.組成物が下記の3成分からなる、上記のフィルム。
(a)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物、
(b)酸性基を有する高分子化合物、
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
19.組成物が下記の2成分からなる、上記のフィルム。
(a)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物、
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
20.組成物が下記の1成分からなる、上記のフィルム。
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イソシアネート化合物を遊離させず、カルボジイミド化合物により、高分子化合物の末端が封止された組成物よりなるフィルムを提供することができる。その結果、イソシアネート化合物による悪臭の発生を抑制することができ作業環境を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
<環状構造>
本発明において、カルボジイミド化合物は環状構造を有する(以下、本カルボジイミド化合物を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0015】
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有する。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0016】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0017】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化9】

【0018】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0019】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
【0020】
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【化10】

【0021】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0022】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0023】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0024】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0025】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0026】
上記式(1−1)、(1−2)においてXおよびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0027】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0028】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0029】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0030】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0031】
上記式(1−3)においてXは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0032】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0033】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0034】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0035】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0036】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
<環状カルボジイミド化合物(a)>
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【化11】

【0038】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0039】
【化12】

【0040】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
【化16】

【0045】
【化17】

【0046】
【化18】

【0047】
【化19】

【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
【化24】

【0053】
【化25】

【0054】
【化26】

【0055】
<環状カルボジイミド化合物(b)>
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【化27】

【0056】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qを構成する基の内一つは3価である。
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0057】
【化28】

【0058】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【0059】
【化29】

【0060】
【化30】

【0061】
【化31】

【0062】
【化32】

【0063】
<環状カルボジイミド化合物(c)>
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0064】
【化33】

【0065】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0066】
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【化34】

【0067】
Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0068】
【化35】

【0069】
【化36】

【0070】
【化37】

【0071】
<高分子化合物>
本発明において、環状カルボジイミド化合物を適用する高分子化合物は酸性基を有する。酸性基として、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
高分子化合物として、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドポリイミド、ポリエステルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0072】
ポリエステルとしては、例えば、ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体とジールあるいはそのエステル形成性誘導体、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、ラクトンから選択された1種以上を重縮合してなる重合体または共重合体が、好ましくは熱可塑性ポリエステル樹脂が例示される。
かかる熱可塑性ポリエステル樹脂は、成形性などのため、ラジカル生成源、例えばエネルギー活性線、酸化剤などにより処理されてなる架橋構造を含有していてもよい。
【0073】
上記ジカルボン酸あるいはエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸単位およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0074】
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンtert−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0075】
また、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオ酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどを挙げることができる。
【0076】
これらの重合体ないしは共重合体の具体例として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる芳香族ポリエステルとしては、芳香族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、好ましくは、テレフタル酸あるいはナフタレン2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる重合体が例示される。
【0077】
具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリトリメチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリトリメチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリブチレンナフタレート・ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリトリメチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレンナフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリトリメチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)等を好ましく挙げることができる。
【0078】
脂肪族ポリエステル樹脂としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなる重合体やそれらの共重合体が例示される。
【0079】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの重縮合体、もしくは共重合体などを例示することができ、なかでもポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトン、ならびにこれらの共重合体などが挙げられ特にポリL−乳酸、ポリD−乳酸および、ステレオコンプレックス結晶を形成しているステレオコンプレックスポリ乳酸、ラセミポリ乳酸に好適に用いることができる。
【0080】
ポリ乳酸としては、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするものを用いればよいが、とくに融点が150℃以上であるものであることが好ましい(ここで、主たるとは、全体の50%以上を該成分が占めていることを意味する。)。融点が150℃よりも低い場合には、フィルムの寸法安定性、高温機械特性等を高いものとすることができない。
【0081】
好ましくはポリ乳酸の融点は170℃以上であり、さらに好ましくは融点が200℃以上である。ここで融点とは、DSC測定によって得られた溶融ピークのピーク温度を意味する。とくに耐熱性を付与するためにはポリ乳酸がステレオコンプレックス結晶を形成していることが好ましい。
ここで、ステレオコンプレックスポリ乳酸とは、ポリL乳酸セグメントとポリD乳酸セグメントが形成する共晶である。
【0082】
ステレオコンプレックス結晶は通常ポリL乳酸やポリD乳酸が単独で形成する結晶よりも融点が高いので、若干でも含まれることによって耐熱性を上げる効果が期待できるが、特にその効果は全体の結晶量に対するステレオコンプレックス結晶の量が多い場合に顕著に発揮される。下記式に従うステレオコンプレックス結晶化度(S)において、95%以上であることが好ましく、さらに好ましくは100%である。
S=[ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)] × 100
(但し、ΔHmsはステレオコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー。)
【0083】
ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の形成を安定的且つ高度に進めるために特定の添加物を配合する手法が好ましく適用される。
すなわち、例えば、ステレオコンプレックス結晶化促進剤として下記式で表されるリン酸金属塩を添加する手法が挙げられる。
【0084】
【化38】

【0085】
式中、R11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0086】
【化39】

【0087】
式中R14、R15およびR16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0088】
上記二つの式において表されるリン酸金属塩のM、Mは、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
これらのリン酸金属塩は、(株)ADEKA製の商品名、「アデカスタブ」NA−11、NA−71等が好適な剤として例示される。
【0089】
ポリ乳酸に対して、リン酸金属塩は0.001から2wt%、好ましくは0.005から1wt%、より好ましくは0.01から0.5wt%さらに好ましくは0.02から0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎるとステレオコンプレックス結晶融点を低下させるので好ましくない。
【0090】
さらに所望により、リン酸金属塩の作用を強化するため、公知の結晶化核剤を併用することができる。なかでも珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトが好ましくは選択される。
結晶化核剤の使用量はポリ乳酸に対し0.05から5wt%、より好ましくは0.06から2wt%、さらに好ましくは0.06から1wt%の範囲が選択される。
【0091】
ポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。たとえば、ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法など、一般に知られている重合法によって好適に得ることができる。
【0092】
ポリ乳酸にはその製造上、カルボン酸基が含まれてくることがあるが、その含まれるカルボン酸基の量は少ないほどよい。そのような理由から、たとえばラクチドから水以外の開始剤を用いて開環重合したものや、重合後に化学的に処理をしてカルボン酸基を低減したポリマーを用いることは好ましい。
【0093】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも10万、好ましくは10〜30万である。平均分子量が5万よりも低い場合にはフィルムの強度物性が低下するため好ましくない。30万を越える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融製膜が困難になる場合がある。
【0094】
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。ただし、高い融点を維持するためやフィルム強度を損なわないため、この場合フィルムの70モル%以上が乳酸単位からなることが望ましい。
【0095】
このようにして得られるポリ乳酸よりなるフィルムは引っ張り強度が50MPa以上であり、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tonであることが好ましい。
引っ張強度が50MPa未満の場合には製品強度の低下を招くことにつながり、好ましくない。
【0096】
フィルムの引っ張り強度は、より好ましくは70MPa以上であり、さらに好ましくは100MPa以上である。一方、200MPaを超える強度を有するフィルムを得ようとすると、フィルムの伸度が著しく低くなるので、製造が困難となることがある。
【0097】
更に、カルボキシル基末端濃度[COOH]は0〜20eq/tonであることが好ましい。カルボキシル基末端濃度が20eq/tonよりも多い場合には、加水分解の度合いが大きく、フィルム強力の著しい低下を招くことがある。強力保持の観点からは、カルボキシル基末端濃度は好ましくは10eq/ton以下、最も好ましくは6eq/ton以下である。カルボキシル基末端基濃度は低ければ低いほど好ましい。
【0098】
また脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、多価カルボン酸として、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸単位およびそのエステル誘導体、ジオール成分として炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを主たる構成成分とする縮合体を例示することができる。具体的には、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートならびにこれらの共重合体などが挙げられる。
【0099】
さらに全芳香族ポリエステルとしては、芳香族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、好ましくは、テレフタル酸あるいはナフタレン2,6−ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体と芳香族多価ヒドロキシ化合物またはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる重合体が例示される。
【0100】
具体的には例えば、ポリ(4−オキシフェニレン−2,2−プロピリデン−4−オキシフェニレン−テレフタロイル−co−イソフタロイル)などが例示されるこれらのポリエステル類は、カルボジイミド反応性成分として、分子末端にカルボキシル基およびまたはヒドロキシル基末端を1から50当量/tonを含有する。かかる末端基、とりわけカルボキシル基はポリエステルの安定性を低下させるため、環状カルボジイミド化合物で封止することが好ましい。
【0101】
カルボキシル末端基をカルボジイミド化合物で封止するとき、本発明の環状カルボジイミド化合物を適用することにより、有毒な遊離イソシアネートの生成無く、カルボキシル基を封止できる利点は大きい。
【0102】
前述のポリエステル類は周知の方法(例えば、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(湯木和男著、日刊工業新聞社(1989年12月22日発行)等に記載)により製造することができる。
【0103】
さらに本発明のポリエステルとしては、前記ポリエステルに加え、不飽和多価カルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体を共重合してなる不飽和ポリエステル樹脂、低融点重合体セグメントを含むポリエステルエラストマーが例示される。
【0104】
不飽和多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水マレイン酸、フマル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水マレイン酸などが例示される。かかる不飽和ポリエステルには、硬化特性を制御するため、各種モノマー類が添加され、熱キュア、ラジカルキュア、光、電子線などの活性エネルギー線によるキュア処理により硬化.成形される。かかる不飽和樹脂は、カルボキシル基の制御はチクソトロピーなどのレオロジー特性、樹脂耐久性等に関して重要な技術的課題であるが、環状カルボジイミド化合物により、有毒な遊離イソシアネートの生成無く、カルボキシル基を封止、制御することができる利点、さらにより有効に分子量を増大させる利点の工業的意義は大きい。
【0105】
さらに本発明においてポリエステルは、柔軟成分を共重合してなるポリエステルエラストマーでもよい。ポリエステルエラストマーは公知文献、例えば特開平11−92636号公報などに記載のごとく高融点硬ポリエステルセグメントと分子量400〜6,000の低融点重合体セグメントとからなる共重合体であり、高融点ポリエステルセグメント構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が150℃以上であり、ポリアルキレングリコール類また炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族グリコールから製造される脂肪族ポリエステルなどよりなる低融点重合体セグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなる熱可塑性ポリエステル型ブロック共重合体である。かかるエラストマーは、加水分解安定性に問題があるが、環状カルボジイミド化合物により、安全上問題なく、カルボキシル基の制御できる意義、分子量低下を抑制あるいは増大できる工業的な意義は大きい。本発明のポリアミドとしては、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸あるいはそのアミド形成性誘導体を主たる構成原料としたアミド結合を有する熱可塑性重合体である。
【0106】
本発明においてポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸あるいはそのアシル活性体を縮合してなる重縮合物、あるいはアミノカルボン酸もしくはラクタム、あるいはアミノ酸を重縮合してなる重合体、あるいはそれらの共重合体を用いることができる。
【0107】
ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンが挙げられる。芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、4,4’−ジフェニルジアミン、3,4’−ジフェニルジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’スルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0108】
ジカルボン酸としてはアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸などが挙げられる。具体的にはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)などの脂肪族ポリアミド、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))及びこれらの共重合ポリアミドなどの脂肪族−芳香族ポリアミドおよびこれらの共重合体や混合物さらにはポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド−co−イソフタルアミド)などを挙げることができる。
【0109】
アミノ酸としては、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などが、ラクタムとしては例えばω−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−カプリルラクタム、ω−ラウロラクタムなどが例示される。
【0110】
これらのポリアミド樹脂の分子量は特に制限はないが、ポリアミド樹脂1重量%濃度の98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0111】
また、これらのアミド樹脂は周知の方法、例えば、(ポリアミド樹脂ハンドブック(福本修著、日刊工業新聞社(昭和63年1月30日発行)等に準じて製造することができる。
【0112】
さらに本発明のポリアミドには、ポリアミドエラストマーとして公知のポリアミドを包含する。かかるポリアミドとしては、例えば炭素数が6以上のポリアミド形成成分およびポリ(アルキレンオキシド)グリコールとの反応によるグラフトまたはブロック共重合体が挙げられ、炭素数が6以上のポリアミド形成成分とポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分との結合は、通常エステル結合、アミド結合であるが、特にこれらのみに限定されず、ジカルボン酸、ジアミン等の第3成分を両成分の反応成分として用いることも可能である。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの例としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が例示される。該ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は200〜6,000が重合性および剛性の点で好ましく、300〜4,000がより好ましい。
【0113】
本発明で用いるポリアミドエラストマーは、カプロラクタム、ポリエチレングリコール、テレフタル酸を重合して得られるポリアミドエラストマーが好ましい。
かかるポリアミド樹脂は、原料より容易に理解されるごとく、カルボキシル基を30から100当量/ton、アミノ基を30から100当量/ton程度含有するが、カルボキシル基はポリアミドの安定性の好ましくない効果を有することは良くしられている。
【0114】
本発明の環状カルボジイミド化合物により、安全上問題なくカルボキシル基を20当量/ton以下、あるいは10当量/ton以下、さらに好ましくはそれ以下にまで制御され、分子量低下がより有効に抑制された組成物の意義は大きい。本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂は、下記式(I)で示される主たる繰り返し構造単位を有する。
【0115】
【化40】

(式中Rは3価の有機基を表し、Rは2価の有機基を表し、nは正の整数を表す。)
【0116】
このようなポリアミドイミド樹脂の代表的な合成方法としては、(1)ジイソシアネートと三塩基酸無水物を反応させる方法、(2)ジアミンと三塩基酸無水物を反応させる方法、(3)ジアミンと三塩基酸無水物クロライドを反応させる方法等が挙げられる。ただし、本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂の合成方法は、これらの方法に制限するものではない。上記合成方法で用いられる代表的な化合物を次に列挙する。
【0117】
まず、ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等が好ましいものとして挙げられる。
【0118】
また、ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン等が好ましいものとして挙げられる。これらの中で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタンがより好ましいものとして挙げられる。
【0119】
また、三塩基酸無水物としては、トリメリット酸無水物が好ましいものとして挙げられ、三塩基酸無水物クロライドとしては、トリメリット酸無水物クロライドなどが挙げられる。
【0120】
ポリアミドイミド樹脂を合成する際に、ジカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物等をポリアミドイミド樹脂の特性を損わない範囲で同時に反応させることができる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸等が挙げられ、テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらは、全酸成分中の50当量%以下で使用することが好ましい。
【0121】
ポリアミド−イミド樹脂がポリマー中含有されるカルボキシル基濃度により耐久性が低下することがあるので、カルボキシル基の含有量は、好ましくは1から10当量/tonあるいはそれ以下に制御することが好ましい。本発明環状カルボジイミド化合物においては好適に上記カルボキシル基濃度範囲とすることが可能である。
【0122】
本発明のポリイミド樹脂は特に限定無く、従来公知のポリイミド樹脂が例示されるが、中でも熱可塑性ポリイミド樹脂が好適に選択される。
かかるポリイミド樹脂としては、例えば、以下に記載のジアミン成分とテトラカルボン酸よりなるポリイミドが例示される。
【0123】
【化41】

[式中、Rは、(i)単結合;(ii)C2〜12脂肪族炭化水素基;(iii)C4〜30脂環族基;(iv)C6〜30芳香族基;(v)−Ph−O−R−O−Ph−基(式中、Rは、フェニレン基又は−Ph−X−Ph−基を示し、Xは単結合、ハロゲン原子により置換されても良いC1〜4アルキレン基、−O−Ph−O−基、−O−、−CO−、−S−、−SO−又は−SO−基を示す);又は(v)−R−(SiR−O)m−SiR−R−基(式中、Rは、−(CH)s−、−(CH)s−Ph−、−(CH)s−O−Ph−、又は−Ph−を示し、mは1〜100の整数であり;sは1−4の整数を示し;RはC1〜6アルキル基、フェニル基又はC1〜6アルキルフェニル基を示す)
【0124】
【化42】

〔式中、YはC2〜12の四価の脂肪族基、C4〜8の四価の脂環族基、C6〜14のモノ又はポリ縮合環の四価の芳香族基、>Ph−X−Ph<基(式中、Xは単結合、ハロゲン原子によって置換されても良いC1〜4アルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−又は−SO基を示す)〕。
【0125】
ポリアミド酸の製造に用いられるテトラカルボン酸無水物の具体例としては、例えば、無水ピロメリト酸(PMDA)、無水4,4’−オキシジフタル酸(ODPA)、無水ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸(BPDA)、無水ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸(BTDA)、無水エチレンテトラカルボン酸、無水ブタンテトラカルボン酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、無水ビフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、無水2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、無水2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、無水ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、無水ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、無水1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、無水ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、無水ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、無水4,4’−(P−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、無水4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、無水ナフタリン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、無水ナフタリン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、無水ナフタリン−1,2,5,6−テトラカルボン酸、無水ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、無水ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、無水アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸と無水フェナントレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらジカルボン酸無水物は単独で使用、又は2種以上混合して使用しても良い。上記のうち、好ましくは無水ピロメリト酸(PMDA)、無水4,4’−オキシジフタル酸(ODPA)、無水ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸(BPDA)、無水ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、無水ビフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸(DSDA)が使用される。
【0126】
本発明において、ポリイミドの製造に使用されるジアミンの具体例としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジ(メタ−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ジ(パラ−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニル−2,2’−プロパン、1,5−ジアミノナフタリン、1,8−ジアミノナフタリン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ドデカジアミン、ジ(パラ−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,4−ジ(3−アミノプロピルジアミノシラン)ベンゼン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、オルト−トリルジアミン、メタ−トリルジアミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン,4,4’−ジ(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ジ〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ジ〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ジ〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ジ〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ジ(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)エーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記のジアミンは単独又は多くを混合して使用しても良い。
【0127】
熱可塑性ポリイミドとしては、例えば以下記載のテトラカルボン酸無水物とp−フェニレンジアミン、各種シクロヘキサンジアミン、水添ビスフェノールA型ジアミン等の公知のジアミンとからなるポリイミド樹脂、さらにゼネラルエレクトリック社よりUltemの商品名で市販されている、Ultem1000、Ultem1010、UltemCRS5001、UltemXH6050、三井化学(株)製のオーラム250AMなどが例示される。
【0128】
【化43】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は、アリール基を表す。R10は炭素数6〜30のアリーレン基または炭素数2〜20のアルキレン基を示す。m、n、はそれぞれ、0〜5の整数、kは1〜3の整数。]
【0129】
本発明のポリエステルアミド樹脂は特に限定無く、ポリエステル構成成分とポリアミド構成成分の共重合により得られる従来公知のポリエステルアミド樹脂が例示されるが、中でも熱可塑性ポリエステルアミド樹脂が好適に選択される。
【0130】
本発明のポリエステルアミド樹脂は、公知の方法等により合成する事ができる。例えば、前記ポリアミド構成成分をまず重縮合反応により進行させ、末端に官能基を有したポリアミドを合成した後、ポリアミドの存在下、前記ポリエステル構成成分を重合させる方法等によって行う事ができる。この重縮合反応は、通常、第一段階としてアミド化反応を進行させ、第二段階にエステル化反応を進行させる事により実施される。
【0131】
かかるポリエステル構成成分としては、上記記載のポリエステル構成成分が好適に選択される。また、かかるポリアミド構成成分としては、上記記載のポリアミド構成成分が好適に選択される。
【0132】
環状カルボジイミド化合物を作用させるこれらの高分子化合物には、環状カルボジイミド化合物と反応してその効力を失わない範囲で、公知のあらゆる添加剤、フィラーを添加して用いることができる。添加剤としては例えば、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコールなどの脂肪族ポリエーテルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として含有させることができる。さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0133】
<高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との混合方法>
本発明においては、環状カルボジイミド化合物は酸性基を有する高分子化合物と混合し、反応させることによって、酸性基を封止することができる。環状カルボジイミド化合物を高分子化合物に添加、混合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用する高分子のマスターバッチとして添加する方法、あるいは環状カルボジイミド化合物が溶解、分散または溶融している液体に高分子化合物の固体を接触させ環状カルボジイミド化合物を浸透させる方法などをとることができる。
【0134】
溶液、融液あるいは適用する高分子のマスターバッチとして添加する方法をとる場合には、従来公知の混練装置を使用して添加する方法ことができる。混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の反応容器、混合槽、混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。高分子化合物との混合時間は特に指定はなく、混合装置、混合温度にもよるが、0.1分から2時間、好ましくは0.2分から60分、より好ましくは1分から30分が選択される。
【0135】
溶媒としては、高分子化合物および環状カルボジイミド化合物に対し、不活性であるものを用いることができる。特に、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解、あるいは両者に少なくとも部分的に溶解より溶媒が好ましい。
溶媒としてはたとえば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒などを用いることができる。
【0136】
炭化水素系溶媒として、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどが挙げられる。
ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロへヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどをあげることができる。
アミド系溶媒としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
【0137】
本発明において、溶媒は、高分子化合物と環状カルボジイミド化合物の合計、100重量部あたり1〜1,000重量部の範囲で適用される。1重量部より少ないと、溶媒適用に意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、反応効率の観点より1,000重量部程度である。
【0138】
環状カルボジイミド化合物が溶解、分散または溶融している液体に高分子化合物の固体を接触させ環状カルボジイミド化合物を浸透させる方法をとる場合には、上記のごとき溶剤に溶解した環状カルボジイミド化合物に固体の高分子化合物を接触させる方法や、環状カルボジイミド化合物のエマルジョン液に固体の高分子化合物を接触させる方法などをとることができる。接触させる方法としては、高分子化合物を浸漬する方法や、高分子化合物に塗布する方法、散布する方法などを好適にとることができる。
【0139】
本発明の環状カルボジイミド化合物による封止反応は、室温(25℃)〜300℃程度の温度で可能であるが、反応効率の観点より、好ましくは50〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲ではより促進される。高分子化合物は、溶融している温度ではより反応が進行しやすいが、環状カルボジイミド化合物の揮散、分解などを抑制するため、300℃より低い温度で反応させることが好ましい。また高分子の溶融温度を低下、攪拌効率を上げるためにも、溶媒を適用することは効果がある。
【0140】
反応は無触媒で十分速やかに進行するが、反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒としては、従来の線状カルボジイミド化合物で使用される触媒が適用できる。例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、第4級アンモニウム塩、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、リン酸エステル、有機酸、ルイス酸などが挙げられ、これらは1種または2種以上使用することができる。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、高分子化合物と環状カルボジイミド化合物の合計100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
【0141】
環状カルボジイミド化合物の適用量は、酸性基1当量あたり、環状カルボジイミド化合物に含まれるカルボジイミド基が0.5から100当量の範囲が選択される。0.5当量より過少に過ぎると、環状カルボジイミド化合物適用の意義がない場合がある。また100当量より過剰に過ぎると、基質の特性が変成する場合がある。かかる観点より、上記基準において、好ましくは0.6〜100当量、より好ましくは0.65〜70当量、さらに好ましくは0.7〜50当量、とりわけ好ましくは0.7〜30当量の範囲が選択される。
【0142】
<高分子化合物と環状カルボジイミド化合物とを混合した組成物>
上記の方法によって混合して得られる組成物は、両者の割合、反応時間等によって、基本的に以下の態様を取りうる。
(1)組成物が下記の3成分からなる、
(a)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物。
(b)酸性基を有する高分子化合物。
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
(2)組成物が下記の2成分からなる。
(a)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物。
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
(3)組成物が下記の成分からなる、
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
ここで、(3)の態様は組成物ではなく、変性された高分子化合物であるが、本発明においては便宜的に「組成物」として記載する。
【0143】
いずれの態様も好ましいものであるが、未反応の環状カルボジイミド化合物が組成物中に存在している場合には、溶融成形時、湿熱雰囲気化等、何らかの要因で高分子化合物の分子鎖が切断された場合に、未反応の環状カルボジイミド化合物と、切断により生じた分子鎖末端とが反応することにより、酸性基濃度を低いままで保つことができるので、とりわけ好ましい。
【0144】
なお、本発明において、上記の”3成分”、”2成分”、”1成分”の記載は、酸性基を有する高分子化合物と環状カルボジイミド化合物とが組成物中においてとりうる態様についてのみを記載しているのであって、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、上述の公知のあらゆる添加剤、フィラーが添加することを除外しているものではないことはいうまでもない。
【0145】
<高分子化合物と環状カルボジイミド化合物とを混合した組成物からなるフィルム>
本発明のフィルムは、上述の高分子化合物と環状カルボジイミド化合物とを混合した組成物からなるが、フィルムに製膜するにあたっては、押し出し成形、キャスト成形等の成形手法を用いることができる。例えば、Iダイ、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し成形することができる。
【0146】
押し出し成形により成形品を得る場合は、溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出し次いで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造される。このとき溶融フィルムと冷却ドラムの密着方法については、キャスティングドラムの温度を上げて粘着させたり、ロールによるニップや静電密着などの技術が使用できるが、静電密着方式を使用する場合はスルホン酸四級ホスホニウム塩などの静電密着剤を配合し、電極よりフィルム溶融面に非接触的に電荷を容易に印加し、それによってフィルムを、回転する冷却ドラムに密着させることにより表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることができる。
【0147】
また、樹脂組成物を溶解する溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、溶液とした後、キャスト乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。
【0148】
未延伸フィルムは機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に横一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することができる。
【0149】
延伸倍率は少なくともどちらか一方向に0.1%以上1000%以下であることが好ましく、0.2%以上600%以下であることがさらに好ましく、0.3%以上300%以下であることがとりわけ好ましい。この範囲に設計することにより、複屈折率、耐熱性、強度の観点で好ましい延伸フィルムが得られる。
【0150】
該フィルムは、延伸後、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解温度をTmとするとき、Tm未満の温度で熱処理することにより、熱収縮率を好適に低下させることができる。
【0151】
フィルム製膜時の熱セットは可能な範囲で高い温度で実施することで、90℃における熱収縮率を1%以下に低下させることができ、より好ましく、熱処理温度は90からTm(℃)の範囲が好ましく、さらに好ましくは100から(Tm−10)(℃)、より好ましくは120から(Tm−20)(℃)の範囲が選択される。
かくして得られた延伸フィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
【0152】
本発明により得られた耐湿熱性の改善されたフィルムは、液晶ディスプレイなどに使用される偏光板保護フィルム、その他光学用フィルム、太陽電池裏面保護膜用フィルム、電気絶縁用フィルム、農業用マルチフィルム、ラベル用フィルム、包装用フルム、コンデンサー用フィルム(たとえば肉厚3μm以下のフィルム)、プリンターリボン用フィルム(たとえば肉厚5μm程度のフィルム)、感熱孔版印刷用フィルム、磁気記録フィルム(たとえばQICテープ用:コンピューター記録用フィルム1/4インチテープ)、ノングレアフィルム(たとえば肉厚50μm以下のフィル)、反射防止フィルム、反射フィルム、光拡散フィルム、位相差フィルム、透明導電性フィルム、輝度向上フィルム、プロテクトフィルム、リリースフィルム、ガスまたは水蒸気透過防止フィルム、ドライフォトレジスト用フィルムなどに有用である。
【0153】
<環状カルボジイミド化合物の製造方法>
本発明の環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0154】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法により製造することができる。
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System BocO/DMAP,Pedro Molina etal.
【0155】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化44】

【化45】

【0156】
(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化46】

【0157】
(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化47】

【0158】
(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0159】
【化48】

【化49】

【化50】

【0160】
なお、環状カルボジイミド化合物は、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができるが、本発明の主旨に反しない範囲において、所望により、例えば、従来公知のポリマーのカルボキシル基封止剤を併用することができる。かかる従来公知のカルボキシル基封止剤としては、特開2005−2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、などが例示される。
【実施例】
【0161】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0162】
A.融点、ステレオコンプレックス結晶化度(S)
TAインストルメント社製,TA−2920を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた溶融ピークのピーク温度を融点とした。
また、TA−2920を用い、試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、10℃/分で250℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解温度(Tm*)およびステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHms)およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmh)を測定した。
また結晶化開始温度(Tc*)、結晶化温度(Tc)は上記測定試料を急速冷却し、さ
らに引き続き、同じ条件で第二サイクル測定を行い測定した。ステレオ化度は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式によりステレオコンプレックス結晶化度を求めた。
S= [ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)]×100
(但し、ΔHmsはコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳
酸結晶の融解エンタルピー)
【0163】
B.カルボキシル基末端濃度[COOH](eq/ton)
カルボキシル基濃度:試料を精製o−クレゾールに窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
【0164】
C.イソシアネートガス発生テスト
試料を、160℃で5分間加熱し、熱分解GC/MS分析により定性・定量した。尚、定量はイソシアネートで作成した検量線を用いて行った。GC/MSは日本電子(株)製GC/MS Jms Q1000GC K9を使用した。
【0165】
D.耐加水分解安定性:
得られた試料を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHにて100時間処理したときの還元粘度保持率を評価した。
試料の耐加水分解安定性は、還元粘度保持率が80から90%未満であるとき「合格」、90%から95%未満であるとき「優秀合格」、95%から100%のとき「とりわけ優秀合格」と判断される。
【0166】
E.還元粘度(ηsp/c)の測定
試料1.2mgを〔テトラクロロエタン/フェノール=(6/4)wt%混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定し、還元粘度保持率は、試料処理前の還元粘度を100%として求めた。
【0167】
[参考例1]高分子化合物(ポリL乳酸)の製造
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応器にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し触媒失活剤剤として、1.2倍当量の燐酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリL−乳酸を得た。
得られたポリL−乳酸の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移温度(Tg)55℃、融点は175℃であった。カルボキシル基末端濃度14eq/ton、加水分解に対する還元粘度保持率は、9.5%であった。
【0168】
[参考例2]高分子化合物(ステレオコンプレックスポリ乳酸)の製造:
参考例1において、L−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更したこと以外は同条件で重合を行い、ポリD乳酸を得た。
得られたポリD−乳酸の重量平均分子量は15.1万、ガラス転移温度(Tg)55℃、融点は175℃であった。カルボキシル基濃度は15eq/tonおよび加水分解に対する還元粘度保持率は9.1%であった。
得られたポリD−乳酸と、参考例1の操作で得たポリL−乳酸,各50重量部とリン酸エステル金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−171)0.3重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練後、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して、ステレオコンプレックス結晶化度(S)100%、結晶融解温度216℃の組成物を得た。
この組成物のカルボキシル基末端濃度は11eq/tonであった。また、加水分解に対する還元粘度保持率は10%であった。
【0169】
[参考例3]
帝人ファイバー(株)製のポリエチレンテレフタレート「TR−8580」の還元粘度、カルボキシル基末端濃度を求めた。還元粘度は0.35dl/gであった。カルボキシル基末端濃度は30eq/tonであった。
【0170】
[参考例4]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行なった。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度が0.61dl/gの、実質的に粒子を含有しない、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
【0171】
[参考例5]環状カルボジイミド化合物(1)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)と1,2−ジブロモエタン(0.05mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物A(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物A(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(1g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)200mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了する。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物B(アミン体)が得られた。
【0172】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに中間生成物B(0.05mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下する。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物C(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert-ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに、25℃で中間生成物C(0.05mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を精製することで、下記構造式にて示される環状カルボジイミド化合物(MW=252)を得た。この構造はNMR,IRにより確認した。
【0173】
【化51】

【0174】
[参考例6]環状カルボジイミド化合物(2)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0175】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造式に示す化合物(MW=516)を得た。構造はNMR、IRにより確認した。
【0176】
【化52】

【0177】
[参考例7]高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との組成物(1):
参考例1の操作によって得られたポリL−乳酸100重量部を、110℃、5時間真空乾燥した後、2軸混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度210℃でベント圧、13.3Paで真空排気しながら溶融混練後、参考例5の操作で得た環状カルボジイミド化合物1重量部を第二供給口より供給しシリンダー温度210℃で溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化した。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。
【0178】
[参考例8]高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との組成物(2):
参考例7において、環状カルボジイミド化合物を参考例6の操作で得たものを用いること以外は同様の操作を行った。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。
【0179】
[参考例9]高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との組成物(3):
参考例2の操作において、得られたポリD−乳酸と、参考例1の操作で得たポリL−乳酸,各50重量部とリン酸エステル金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−11)0.3重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練後、参考例5の操作で得た環状カルボジイミド化合物1重量部を第二供給口より供給しシリンダー温度230℃で溶融混練したこと以外は同様の操作を行って組成物を得た。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。
【0180】
[参考例10]高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との組成物(4):
参考例9の操作において、環状カルボジイミド化合物として、参考例6の操作で得たものを用いること以外は同様の操作を行って組成物を得た。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。
【0181】
[参考例11]高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との組成物(5):
参考例3の操作において、得られたポリエチレンテレフタレートを150℃、3時間で乾燥した後、混練機の第一供給口より、シリンダー温度270℃で溶融混練後、参考例6の操作で得た環状カルボジイミド化合物1重量部を第二供給口より供給しシリンダー温度270℃で溶融混練したこと以外は同様の操作を行って組成物を得た。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。
【0182】
[参考例12]高分子化合物と環状カルボジイミド化合物との組成物(6):
参考例4の操作において、得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを170℃、3時間で乾燥した後、混練機の第一供給口より、シリンダー温度290℃で溶融混練後、参考例6の操作で得た環状カルボジイミド化合物1重量部を第二供給口より供給しシリンダー温度290℃で溶融混練したこと以外は同様の操作を行って組成物を得た。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。
【0183】
[実施例1]
参考例7で得られた、融点170℃、カルボキシル基末端濃度0eq/tonのポリL乳酸のチップを、110℃に設定した真空乾燥器で12時間乾燥した。乾燥したチップをダイ温度、220℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い、静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
該未延伸フィルムはさらに100℃で、縦方向に1.1〜1.5倍、横方向に1.1〜2.0倍延伸、さらに140〜160℃で熱固定を行い厚さ約40μmの2軸延伸フィルムとした。製膜、延伸、熱固定の過程でイソシアネートガスに由来する刺激臭は感じられなかった。
【0184】
[実施例2]
参考例8で得られた、融点170℃、カルボキシル基末端濃度0eq/tonのポリL乳酸のチップを、110℃に設定した真空乾燥器で12時間乾燥した。乾燥したチップを実施例1と同様の操作を行って、厚さ約40μmの2軸延伸フィルムを得た。製膜、延伸、熱固定の過程でイソシアネートガスに由来する刺激臭は感じられなかった。
【0185】
[実施例3]
参考例9で得られた、融点213℃、カルボキシル基末端濃度0eq/tonのステレオコンプレックスポリ乳酸のチップを、110℃に設定した真空乾燥器で12hr乾燥した。乾燥したチップを実施例1と同様の操作を行って、厚さ約40μmの2軸延伸フィルムを得た。製膜、延伸、熱固定の過程でイソシアネートガスに由来する刺激臭は感じられなかった。
【0186】
[実施例4]
参考例10で得られた、融点213℃、カルボキシル基末端濃度0eq/tonのステレオコンプレックスポリ乳酸のチップを、110℃に設定した真空乾燥器で12hr乾燥した。乾燥したチップを実施例1と同様の操作を行って、厚さ約40μmの2軸延伸フィルムを得た。製膜、延伸、熱固定の過程でイソシアネートガスに由来する刺激臭は感じられなかった。
【0187】
[実施例5]
参考例11で得られた、融点256℃、カルボキシル基末端濃度5eq/tonのポリエチレンテレフタレートのチップを、150℃に設定した熱風乾燥器で3時間乾燥した。乾燥したチップをダイ温度、270℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い、静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
該未延伸フィルムはさらに100℃で、縦方向に1.1〜1.5倍、横方向に1.1〜2.0倍延伸、さらに140〜210℃で熱固定を行い厚さ約40μmの2軸延伸フィルムとした。製膜、延伸、熱固定の過程でイソシアネートガスに由来する刺激臭は感じられなかった。
【0188】
[実施例6]
参考例12で得られた、融点260℃、カルボキシル基末端濃度5eq/tonのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのチップを、170℃に設定した熱風乾燥器で3時間乾燥した。乾燥したチップをダイ温度、290℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い、静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
該未延伸フィルムはさらに120℃で、縦方向に1.1〜1.5倍、横方向に1.1〜2.0倍延伸、さらに140〜210℃で熱固定を行い厚さ約40μmの2軸延伸フィルムとした。製膜、延伸、熱固定の過程でイソシアネートガスに由来する刺激臭は感じられなかった。
【0189】
[比較例1]
参考例1で製造した樹脂に市販の直鎖状ポリカルボジイミド化合物(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライト」LA−1)を1%、二軸押出機を用いて210℃にて混練して得たチップを、実施例1と同様にして厚さ約40μmの2軸延伸フィルムとした。製膜の過程でイソシアネート由来の刺激臭がした。さらにフィルムについてイソシアネートガス発生テストを実施したところ10ppmのイソシアネートガスが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物と、酸性基を有する高分子化合物とを混合した組成物よりなるフィルム。
【請求項2】
環状構造を形成する原子数が8〜50である請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
環状構造が、下記式(1)で表される請求項1記載のフィルム。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項4】
Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(2−3)で表される2〜4価の結合基である請求項3記載のフィルム。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項5】
環状構造を含む化合物が、下記式(2)で表される請求項1記載のフィルム。
【化3】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項6】
は、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項5記載のフィルム。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【請求項7】
環状構造を含む化合物が、下記式(3)で表される請求項1記載のフィルム。
【化5】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項8】
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である請求項7記載のフィルム。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項9】
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項7記載のフィルム。
【請求項10】
環状構造を含む化合物が、下記式(4)で表される請求項1記載のフィルム。
【化7】

(式中、Qは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項11】
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である請求項10記載のフィルム。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項12】
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項10記載のフィルム。
【請求項13】
酸性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載のフィルム。
【請求項14】
高分子化合物が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドポリイミド、ポリエステルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載のフィルム。
【請求項15】
ポリエステルが、ブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、エチレンナフタレンジカルボキシレートおよびブチレンナフタレンジカルボキシレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を主たる繰り返し単位として含む芳香族ポリエステルである、請求項14記載のフィルム。
【請求項16】
ポリエステルが脂肪族ポリエステルである、請求項14記載のフィルム。
【請求項17】
脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸である、請求項16記載のフィルム。
【請求項18】
ポリ乳酸がステレオコンプレックス結晶を形成している、請求項17記載のフィルム。
【請求項19】
組成物が下記の3成分からなる、請求項1記載のフィルム。
(a)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物、
(b)酸性基を有する高分子化合物、
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
【請求項20】
組成物が下記の2成分からなる、請求項1記載のフィルム。
(a)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物、
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。
【請求項21】
組成物が下記の1成分からなる、請求項1記載のフィルム。
(c)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物によって酸性基が封止された高分子化合物。

【公開番号】特開2011−153209(P2011−153209A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15360(P2010−15360)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】