説明

フィンカッター

【課題】パネル式水冷壁管モジュールを相互に溶接する前に、チューブを傷つけず、安全に、短時間でそのモジュール端のフィン部分の切削して削除する。
【解決手段】モジュールを構成するチューブの中に切削時に挿入されるガイド棒、チューブ間を繋ぐフィン部分を切削するカッティングヘッド、それらを回転させる回転機2、回転機に固定されたストッパー部9とからなりカッティングヘッドは当該チューブの外径よりわずかに大きい筒状部の先端に取り付けられた複数のバイトを有し、そのバイトの切削範囲が、フィンカッターの回転中心からチューブの外半径よりわずかに大きい位置から隣接するチューブの中心までの距離の半分を超え、かつ、その隣接するチューブに接触しない範囲であり、回転機がかじり等で逆回転し始めたときにストッパー部がフィン部分8等に接触して回転をとめるフィンカッターと、それを用いる方法である。
【選択図】図6

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電用ボイラ等に用いられるパネル式水冷壁管モジュールを相互に溶接する際に、そのモジュール端のフィン部分を切削して削除するフィンカッター、及び、それを使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電用などに用いられる高温高圧ボイラの燃焼室は、大きな筐体を構成するのに十分な強度を持たせ、炉内の気密を保ち、かつ、それを覆う耐火材や外壁材を保護するために、パネル式水冷壁管モジュールで構成されるのが一般的である。
【0003】
パネル式水冷壁管モジュール(以下「モジュール」という。)は、図7にその端部の形状を示すように、水冷壁管、すなわち、チューブを10から20mm離して並列させ、その隙間に板状あるいは棒状のフィン部材を挿入して、それを溶接によりチューブに溶接したり、あるいは、特殊な溶接機を用いて、溶接棒の溶材そのものでその隙間を埋めて生産される。以下、この隙間を埋めた部分を「フィン部分」という。
【0004】
大きな燃焼室は、この様にして生産されたモジュール同士を何枚も溶接により結合することにより構成される。モジュール同士の溶接に当たっては、高温高圧にさらされるチューブ同士の溶接は完璧に行われる必要がある。
【0005】
そのために、チューブ同士の溶接は、図8(a)に示すように、溶接する管端から約25mmの部分にフィン部分の付いていないチューブのみの部分をあらかじめ作り、完全な円周溶接をし、かつ、RT検査等、溶接部の健全性確認に必要な検査を行える空間を確保する。その空間を使って、1本ずつチューブを熟練した溶接工の手により溶接し、必要な検査を行なう。
そのあと、図8(b)に示すように、溶接部前後にできたフィン部分の欠けたところに板状材を挿入して、その板状材の四周をチューブやフィン部分に溶接し、機密性のある完全なパネルを構成する。
【0006】
工場内でモジュール同士を溶接する場合には、モジュール生産の段階で管端から約25mmの部分にフィン部分を付けないものを作ることも可能である。
しかし、モジュールの生産性を高めるために管端までフィン部分を付ける場合もある。また、改造や補修工事の場合のように、現場で寸法あわせをして最終的にモジュールの全長を決め、それに合わせてモジュールの端部をカットする場合には、カットしたあとのモジュールの端部は当然管端までフィン部分が構成された形となる。
この様な場合には、モジュール同士の溶接の前に、管端から約25mmの長さに渡ってフィン部分を削除する作業が必要になる。
【0007】
従来、この作業は、ガスカットする、グラインダーで削除する、あるいは、特殊なニッパー状の工具での機械的に切断する、等の方法により行われてきた。しかし、いずれの方法でも、チューブを傷つけやすいので品質管理上の問題があり、それだけにこの作業には熟練工を必要とし、作業員の安全面でも万全とは言い難く、さらに、削除するフィン部分の数が一つのボイラで数千ヶ所にも及ぶことも多いので、極めて多くの作業時間がかかると言う問題があった。
【0008】
特許文献1及び特許文献2には、モジュールの溶接をしたあとに残るフィン部分の欠けた部分の寸法を計測し、それに基づいてその欠けた部分に挿入すべき板状材をけがきし、加工をするシステムや、そのシステムを用いたモジュールの加工装置の発明が開示されている。しかし、モジュールの管端から一定区間のフィン部分が無いものを取り扱う発明であり、フィン部分の削除には関係がない。
【特許文献1】特開平7−71903号公報
【特許文献2】特開平7−241736号公報
【0009】
また、特許文献3には、チューブの開先をチップの交換成しに短時間で行える開先加工装置の考案が開示されているが、通常のチューブ間の溶接の準備作業の話であり、フィン部分の削除とは関係がない。
【特許文献3】実開平5−16016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、パネル式水冷壁管モジュールを相互に溶接する前段階のフィン部分を削除する際に、チューブを傷つけることが少く、品質管理が楽で、非熟練工でも取り扱うことができ、作業員にとって安全で、さらに、作業時間が大幅に削減できる、モジュール端のフィン部分を切削して削除するフィンカッター、及び、それを使用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、モジュールを相互に溶接する際に、当該溶接をするモジュール端のフィン部分を切削して削除するためのフィンカッターであって、
当該モジュールを構成するチューブの中に切削時に挿入されるガイド棒と、当該チューブ間を繋ぐフィン部分を切削するカッティングヘッドと、それらを回転させる回転機とからなり、
当該ガイド棒の外径は当該チューブの内径にほぼ等しく、
当該カッティングヘッドは当該チューブの外径よりわずかに大きい内径を有する筒状の本体と、その先端に取り付けられた複数のバイトより成り、
当該バイトの切削範囲が、当該フィンカッターの回転中心から当該ガイド棒を挿入したチューブの外半径よりわずかに大きい位置から、当該回転中心から当該ガイド棒を挿入したチューブに隣接する隣のチューブの中心までの距離の半分を超え、かつ、当該隣のチューブに接触しない位置までであるフィンカッターである。
【0012】
すなわち、本発明のフィンカッターは、回転機とそれにより回転するガイド棒、および、複数のバイトを先端に取り付けたカッティングヘッドからなる。
回転機は、従来からある開先加工機のようにその回転軸に装着した切削工具に回転運動を与えるものであって、数mm厚さのフィン部分を切削する能力のあるものであればよく、その駆動は電動、空気動等、この作業に要する駆動力を与えるものであればなんでも良い。作業員がその回転機を手で保持して、回転軸方向に力を加えやすいハンドル等を有する構造が望まれる。
【0013】
切削作業中にモジュールを構成するチューブの中に挿入され、チューブに対してカッティングヘッドの回転中心を安定的に保持するガイド棒は、モジュールを構成するチューブの内径にほぼ等しい外径を有している。
チューブの中に挿入されるのであるから、その外径はチューブの内径よりわずかに小さいことになるが、切削作業中フィンカッターの回転中心を一定方向に維持し安定した切削作業を行うためには、チューブとガイド棒の隙間は狭いことが望ましい。
【0014】
ボイラに使われるチューブは、外径と肉厚を指定して購入されるが、規格上肉厚はプラスの公差を有しているので、チューブの内径は(外径―2×肉厚)よりもわずかに小さい。
したがって、チューブの内径を公称の(外径―2×肉厚)で判断せず、実際にモジュールを構成しているチューブの内径を何ヶ所か計り、その数値から0.1mmから0.2mm小さい外径を有するガイド棒を用意するのが望ましい。
【0015】
ガイド棒は、切削作業中常にチューブ内面と接触し、また、かじり等が生じた場合には、大きな衝撃力が加わるから、耐摩耗性、対衝撃力性の高い材質を用いる必要がある。
また、ガイド棒の長さは、カッティングヘッドに取り付けられたバイトがフィン部分の切削に入る前に、ガイド棒はチューブの中にその十分な長さを挿入されることにより、カッティングヘッドの回転中心をチューブに対して安定的に保持しなければいけないから、バイトの先端部分より切削の進行方向に、十分突き出した長さが必要である。
【0016】
カッティングヘッドはガイド棒を取り囲む形で取り付けられた筒状の本体とその本体に取り付けられた複数のバイトからなる。
カッティングヘッド本体は、チューブの外径よりわずかに大きい内径を有する。モジュール端のチューブの中に差し込まれたガイド棒をガイドとして回転しながら進み、そのチューブの外側に付いているフィン部分を切削する。
【0017】
本体の先端に取り付けられたバイトの切削範囲は、フィンカッターの回転中心、すなわち、ガイド棒が差し込まれているチューブの中心から考えて、そのチューブの外半径よりわずかに大きい位置から、その中心から隣のチューブの中心までの距離の半分を超え、かつ、その隣のチューブに接触しない位置までとする。
【0018】
チューブの中に ほぼぴったりとはまるガイド棒の存在により、フィンカッターの回転軸は極めて安定して保持された状態で前進する。
そして、バイトの切削範囲をフィンカッターの回転中心からチューブの外半径よりわずかに大きい位置からとすることにより、フィン部分の切削作業にあたって、チューブそのものを傷つけることがない。
【0019】
チューブ間の溶接を行うには、チューブからフィン部分を完全に削除して、正確に溶接用の開先を取ってから行う。そのためには、フィンカッターでフィン部分を削除したあと、グラインダー等を用いて、外面を平滑にするが、その作業を容易に、かつ、短時間で済ませられるようにするには、バイトの切削範囲の回転中心から一番近いところは、チューブの外面にできるだけ近いことが望ましい。
【0020】
一方、バイトの切削範囲の回転中心から一番遠いところは、まず、フィンカッターの回転中心、すなわち、ガイド棒が差し込まれているチューブの中心から隣接する隣のチューブの中心までの距離の半分を超える位置までである。切削作業はチューブ1本ずつにフィンカッターをセットして順番に行われるが、1本のチューブにフィンカッターをセットして切削したときに、隣のチューブの中心までの距離の半分以上を切削できないと、隣のチューブにフィンカッターをセットした切削を行ったあとに、両チューブの真ん中に切削されないフィン部分が棒状に残ってしまうからである。
【0021】
さらに、バイトの切削範囲の回転中心から一番遠いところを、フィンカッターの回転中心から隣接する隣のチューブに接触しない位置までとすることにより、フィン部分の切削作業に当たって、隣のチューブを傷つけることがない。
このとき、隣接する隣のチューブに接触しない程度であれば良く、特に隣接するチューブの外面ギリギリまでとする必要はない。 切削作業はチューブ1本ずつ順番に行われ、隣のチューブにも、本発明のフィンカッターをセットして切削作業をするので、その際に、そのチューブの外面にできるだけ近いところまでフィン部分を切削できるからである。
【0022】
切削作業に当たっては、切削が進むにつれて筒状の本体の中にフィン部分を削除されたチューブの端部が進入してくるから、筒状のふところの深さは、フィン部分を削除する長さ、すなわち、将来チューブ同士の溶接をして検査をするに必要な長さである約25mm、以上であることが必要である。
【0023】
さらに、本発明は、上述のフィンカッターであって、前記回転機に固定され、かつ、前記カッティングヘッドの外側を円弧状に囲むストッパー部を有し、切削作業中にかじり等により当該回転機が切削の回転方向と逆方向に回転し始めた場合に、当該ストッパー部が前記モジュールのフィン部分、あるいは、前記隣のチューブに接触して当該回転機の回転をとめるフィンカッターである。
【0024】
切削作業中に、ガイド棒の外面とチューブ内面との間に、あるいは、カッティングヘッドのの内面とチューブの外面との間にかじり等の不測の現象が生じると、回転機には切削する回転方向とは逆の方向に大きな回転力が生じ、作業員が保持し、制御することができなくなる。 この様な状態が発生すると、作業員の受傷の原因にもなり、また、加工するモジュールに傷を付けることにもなりかねない。
【0025】
カッティングヘッドの外側を円弧状に囲む形状の、回転機に固定されたストッパー部を設ける。その円弧の長さ、すなわち、ストッパー部の巾は、チューブに本発明のフィンカッターをセットしたときに、チューブの両側にある一方のフィン部分から他方のフィン部分まで、あるいは、隣接する一方のチューブから他方のチューブまで、チューブ外面に沿って延びる円弧の長さからわずかに狭い範囲とする。
【0026】
ストッパー部のカッティングヘッドの進行方向の長さとその強度は、本発明のフィンカッターをチューブにセットしたときに、すなわち、切削作業を開始する前の状態で、十分ストッパー部がフィン部分、あるいは、隣のチューブにかかり、いつ不測の現象が生じてもそれらに接触して回転機の暴走をとめうる十分な長さと、その衝撃に耐える強度が必要となる。
【0027】
このストッパー部を有することにより、かじり等の不測の現象が生じても、回転機が逆転して暴走することはなく、作業員は容易に制御することができ、作業員の受傷やモジュールの損傷を未然に防ぐことができる。
【0028】
また、本発明は、上述のいずれかのフィンカッターを用いてパネル式水冷壁管モジュール端のフィン部分を切削して削除する方法である。
【0029】
パネル式水冷壁管モジュールを相互に溶接する前段階のフィン部分を削除する際に、作業員は上述のフィンカッターをモジュールを構成するチューブ1本1本にセットして順番にフィン部分を所定の長さに渡り削除する。
それにより、チューブを傷つけることが少く、品質管理が楽で、非熟練工でも取り扱うことができ、作業員にとって安全で、さらに、作業時間が大幅に削減できる。
【発明の効果】
【0030】
以上に述べたとおり、本発明のフィンカッター、及び、それを用いる方法は、パネル式水冷壁管モジュールを相互に溶接する前段階のフィン部分を削除する際に、チューブを傷つけることが少なく、品質管理が楽で、非熟練工でも取り扱うことができ、作業員にとって安全で、さらに、作業時間が大幅に削減できると言う効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明はかかる形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々変更を加えて良いことは言うまでもない。
【0032】
図1は本発明のフィンカッターの実施例1の全体図、図2はカッティングヘッドとガイド棒を組み立てた状態の説明図、図3はそれを斜め下から見た斜視図、図4はカッティングヘッドを裏返して斜め上から見た斜視図、図5はカッティングヘッドがモジュール端のフィン部分を切削している状況図、図6は本発明のフィンカッターの実施例2の全体図、図7はまだフィン部分を削除していないモジュール端の説明図、そして、図8はフィン部分を削除した二つのモジュールを溶接に備えて配置した状態と、チューブを溶接後フィン部分の欠けたところに板状材を挿入した状態を示す説明図である。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明の実施例1のフィンカッター1の全体図である。
フィンカッタ1ーは、回転機2とそれにより回転する、ガイド棒3、および、複数のバイト41を先端に取り付けたカッティングヘッド4からなる。
本実施例の回転機1は、従来からチューブの開先加工機として使われている圧縮空気で駆動される回転機を使用している。駆動用の圧縮空気は導入孔21から導入され、回転機本体22の内蔵されたタービンを回転して、その回転力が駆動軸23からカッティングヘッド4に伝えられる。
【0034】
作業員は回転機本体22を把持してフィンカッター1全体を支える。フィンカッター本体に設けられたハンドル24を図に示すように切削方向、すなわち、フィンカッターの回転中心方向と直角に設けることにより、これを握った作業員の手は切削方向に容易に力を与えられる。
【0035】
この実施例では回転機として圧縮空気を駆動源として用いる開先加工機を回転機2として採用したが、、回転軸に装着した切削工具に回転運動を与えるものであって、数mm厚さのフィン部分を切削する能力のあるものであればよく、その駆動は電動、空気動等、この作業に要する駆動力を与えるものであればなんでも良い。
【0036】
回転機2の回転軸23には、ガイド棒3とカッティングヘッド4が取り付けられ、一体となって回転する。カッティングヘッド4は、その本体42とそれに取り付けられた複数のバイト41から構成される。
【0037】
図2はカッティングヘッドとガイド棒を組み立てた状態を示す。また、図3はそれを斜め下から見た斜視図である。
まず、図2の中央に断面図を示す。カッティングヘッド本体42は筒状を成し、B−B矢視図に示すように、その下端には複数の突起43が設けられ、それぞれの突起にボルト44によってバイト41が固定されている。斜め下から見た斜視図である図3やカッティングヘッドを裏返して斜め上から見た図4により、さらに理解を容易にできよう。
【0038】
また、カッティングヘッド本体42の上部は、回転機2(表示されていない)の回転軸23に接続するためにテーパを付けて外径を小さくし、さらに、その先端部はA−A矢視図に示すように円柱部分の一部に切り欠き47を設けて、回転軸23の工具装着部にフィットして切削力を伝える構造となっている。この部分の構造は、回転機の工具装着部に合わせて適宜考えればよい。
【0039】
カッティングヘッド本体42の中にはガイド棒3が挿入され、ねじ31により両者は固定される。これらを回転軸23に固定するために、ガイド棒3を中空33にしてその中に固定用ボルト5を挿入して、その固定用ボルト5を回転軸23に設けられた雌ねじに結合させる。固定用ボルト5はその頭部をガイド棒3の中に設けられた段差32に当てて、ガイド棒3,及び、それにねじ31で固定されたカッティングヘッド4を回転軸23に固定する。
【0040】
切削作業中に固定用ボルト5が抜け落ちないように、固定用ボルト5と回転軸23を結合するねじ51は、上述のねじ31に対して逆ねじとし、さらに固定用ボルト5がゆるんでも脱落しないように、固定用ボルト5を締め付けた後、ガイド棒3の内面に設けた円周状の溝に脱落防止用のクリップ34を挿入する。
【0041】
カッティングヘッド本体42の内側には、切削作業が進むにつれて、フィン部分を削除されたチューブの端部が進入してくるから、筒上部のふところの深さDは、フィン部分を削除する長さ(通常は約25mm)にある程度の余裕を持たせる必要がある。
【0042】
カッティングヘッド本体42に取り付けられたバイト41は、図2では6個表示されているが、6個に限るものではない。切削対象となるフィン部分やチューブの形状・寸法により、使用するカッティングヘッド本体42とバイト41の寸法が変わるので、それに応じて定めればよい。一般には数の多い方が切削が安定し、早く、また、切削対象のフィン部分がカッティングヘッドの回転中心を挟んでちょうど対称の位置にあるので、バイトも回転中心を挟んで対称に位置する、つまり、複数個であるのがよい。
【0043】
なお、バイト41は消耗品であるから、容易に手に入る汎用品とするのが望ましく、また、ボルト44をゆるめて90°ずつ回転させ、バイトの四辺いずれもが切削に用いられる形状のものが望ましい。
【0044】
図5はカッティングヘッドがモジュール端のフィン部分を切削している状況図である。水冷壁管モジュール6は、例えば、外径28.6mm、肉厚5.1mmのチューブ7を中心間距離43.0mmで並列させ、チューブの間にできる隙間、この場合は巾14.4mmの隙間をフィン部分8で埋めた構成になっている。
【0045】
本発明のフィンカッター1のガイド棒を1本のチューブ7aに挿入し、回転機を起動して切削を開始する。作業員フィンカッター本体とハンドルを手で持って支持するとともに、回転軸方向に力を加えて推し進めていく。
【0046】
挿入されたガイド棒は、チューブ7の実際の内径よりも0.1mmから0.2mm小さい外径を有するので、切削の作業が行われる間、チューブ内面に接触しながらフィンカッターの回転中心をチューブ7の中心軸と一致させて、安定的に維持する。
【0047】
カッティングヘッド42に取り付けられたバイト41の切削範囲は、フィンカッターの回転中心からチューブ7の外半径よりわずかに大きい位置から、その回転中心から隣接する隣のチューブ7bの中心までの距離の半分を超え、かつ、隣のチューブ7bに接触しない用に設定してるから、フィン部分の切削中にチューブ7aを傷つけることはなく、また、隣のチューブ7bを傷つけることもない。
【0048】
さらに、隣のチューブ7bの中心までの距離の半分を超え、言い換えれば、チューブ7aとチューブ7bの図中に二点差線で示した中間線を超えているので、チューブ7aでの切削作業が終わったあと、チューブ7bでも同様に切削作業を行えば、両チューブ間のフィン部分8は削り残すことなく除去できる。
【実施例2】
【0049】
図6は本発明のフィンカッターの実施例2の全体図である。以下の説明で理解を容易にするために、実施例1のフィンカッター1の場合と同じ機能を持ち同様の形状を有する構成要素は同じ番号を付番することとする。
【0050】
フィンカッター1aは、フィンカッター1と同様に回転機2とそれにより回転する、ガイド棒3,及び、複数のバイト41を先端に取る付けたカッティングヘッド4を有する。
それらの構成や作用はフィンカッター1と同様である。
【0051】
フィンカッター1aは、さらに、回転機2に固定され、かつ、カッティングヘッド4の外側を円弧状に囲むストッパー部9を有ている。
切削作業中にかじり等により回転機4が切削の回転方向と逆方向に回転し始めた場合に、ストッパー部9がC−C矢視図に示すようにモジュール6のフィン部分8b、8a、あるいは、隣接するチューブ7b、7cに接触して回転機4の回転をとめるためである。
【0052】
ストッパー部9の円弧の長さL、すなわち、ストッパー部の巾は、チューブに本発明のフィンカッター1aをセットしたときに、チューブの両側にある一方のフィン部分8aから他方のフィン部分8bまで、あるいは、隣接する一方のチューブ7bから他方のチューブ7cまで、チューブ外面に沿って延びる円弧の長さからわずかに狭い範囲とする。
【0053】
C−C矢視図からわかるように、フィン部分8aから8bまでとするか、あるいは、チューブ7bから7cまでとするかは、モジュール6の構成とストッパー部9の半径の関係から、どちらに接触するか判断して決めればよい。
【0054】
ストッパー部9のカッティングヘッドの進行方向の長さHとその強度は、フィンカッター1aをチューブにセットしたときに、すなわち、切削作業を開始する前の状態で、十分ストッパー部9がフィン部分8a、8b、あるいは、隣接するチューブ7b、7cにかかり、いつ不測の現象が生じてもそれらに接触して回転機4の暴走をとめうる十分な長さと、その衝撃に耐える強度が必要となる。
確実に接触し、回転をとめるためには、ストッパー部9の先端9aは、ガイド棒3の先端3aよりも十分先に出ている必要がある。
【0055】
このストッパー部9を有することにより、かじり等の不測の現象が生じても、回転機2が逆転して暴走することはなく、作業員は容易に制御することができ、作業員の受傷やモジュールの損傷を未然に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
火力発電用などに用いられる高温高圧ボイラの燃焼室を構成するパネル式水冷壁管モジュール同士を溶接するに当たり広く活用できる。工場での使用においても、もちろんその効果を発揮できるが、ボイラを建設する現場においては、簡単な設備で、フィン部分の切削が、容易に、安全に、かつ、素早くできるのでさらに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のフィンカッターの実施例1の全体図である。
【図2】同実施例のカッティングヘッドとガイド棒を組み立てた状態の説明図である。
【図3】それを斜め下から見た斜視図である。
【図4】そのカッティングヘッドを裏返して斜め上から見た斜視図である。
【図5】カッティングヘッドがモジュール端のフィン部分を切削している状況図である。
【図6】本発明のフィンカッターの実施例2の全体図である。
【図7】まだフィン部分を削除していないモジュール端の説明図である。
【図8】フィン部分を削除した二つのモジュールを溶接に備えて配置した状態とチューブを溶接後フィン部分の欠けたところに板状材を挿入した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1、1a フィンカッター
2 回転機
21 圧縮空気導入孔
22 回転機本体
23 駆動軸
24 ハンドル
3 ガイド棒
31 ねじ
32 段差
33 中空
34 クリップ
4 カッティングヘッド
41 バイト
42 カッティングヘッド本体
43 同 突起
44 ボルト
47 切り欠き
5 固定ボルト
6 モジュール
7、7a、7b、7c チューブ
8、8a、8b フィン部分
9 ストッパー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル式水冷壁管モジュール(以下「モジュール」という。)を相互に溶接する際に、当該溶接をするモジュール端のフィン部分を切削して削除するためのフィンカッターであって、
当該モジュールを構成する水冷壁管(以下「チューブ」という。)の中に切削時に挿入されるガイド棒と、当該チューブ間を繋ぐフィン部分を切削するカッティングヘッドと、それらを回転させる回転機とからなり、
当該ガイド棒の外径は当該チューブの内径にほぼ等しく、
当該カッティングヘッドは当該チューブの外径よりわずかに大きい内径を有する筒状の本体と、その先端に取り付けられた複数のバイトより成り、
当該バイトの切削範囲が、当該フィンカッターの回転中心から当該ガイド棒を挿入したチューブの外半径よりわずかに大きい位置から、当該回転中心から当該ガイド棒を挿入したチューブに隣接する隣のチューブの中心までの距離の半分を超え、かつ、当該隣のチューブに接触しない位置までであるフィンカッター。
【請求項2】
請求項1記載のフィンカッターであって、前記回転機に固定され、かつ、前記カッティングヘッドの外側を円弧状に囲むストッパー部を有し、切削作業中にかじり等により当該回転機が切削の回転方向と逆方向に回転し始めた場合に、当該ストッパー部が前記モジュールのフィン部分、あるいは、前記隣のチューブに接触して当該回転機の回転をとめるフィンカッター。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のフィンカッターを用いてパネル式水冷壁管モジュール端のフィン部分を切削して削除する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−233818(P2009−233818A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85164(P2008−85164)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【特許番号】特許第4176143号(P4176143)
【特許公報発行日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(593162361)日本建設工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】