説明

フィンチューブ型熱交換器

【課題】フィンチューブ型熱交換器において風の供給方向と異なる筋模様の波形状を保ちながら排水性を良好にできるようにする。
【解決手段】熱交換器は、Y方向に沿って風が供給される熱交換器であって、Y方向と直交するX方向に配列された伝熱フィン3と、伝熱フィン3を貫通する複数の伝熱管2を備えている。各伝熱フィン3は、Y方向に対して傾斜する線状の山部31および谷部32を交互に繰り返す波形部3Aと、谷部32の両端部のうち下側に位置する方の端部同士を結ぶように延びる平坦部3Bと、平坦部3Bから斜めに立ち上がり、波形部3Aに沿って山部31の一方の端部に収束する変換部3Cと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブ型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、風が供給される方向と直交する方向に配列された伝熱フィンと、伝熱フィンを貫通する複数の伝熱管とを備えたフィンチューブ型熱交換器が知られている。例えば、特許文献1には、図5(a)および(b)に示すようなフィンチューブ型熱交換器100が開示されている。
【0003】
この熱交換器100では、各伝熱フィン120が風の供給方向Aおよび伝熱フィン120の配列方向と直交する方向に延びる短冊状をなしており、伝熱管110がその方向に配列されている。また、各伝熱フィン120は、風の供給方向Aに対して傾斜する線状の山部121および谷部122を交互に繰り返す波形状を有している。
【0004】
このような傾斜波形状の伝熱フィン120では、垂直波形状の伝熱フィンに比べて、風の供給方向Aに対する波形勾配が緩和されるため、通風抵抗を低減することができる。しかも、山部121の裏側に形成される溝および谷部122の表側に形成される溝内に当該溝が延びる方向に沿う旋回流が生じるため、旋回流による攪拌効果により熱伝達率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−31029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような熱交換器100が例えば空気調和装置の室外熱交換器として用いられる場合、暖房運転時の結露や除霜運転時の霜の溶解によって伝熱フィン120の表面上に水が堆積する。堆積した水は自重により山部121の裏側に形成される溝および谷部122の表側に形成される溝に沿って斜め下向きに流れ落ちるが、伝熱フィン120の縁は伝熱フィン120の配列方向に波打つ波形状になっているために、図5(a)に示すようにフィン縁において多くの水130が排出されずに保持される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、フィンチューブ型熱交換器において風の供給方向と異なる筋模様の波形状を保ちながら排水性を良好にできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のフィンチューブ型熱交換器は、第1方向に沿って風が供給されるフィンチューブ型熱交換器であって、前記第1方向と直交する第2方向に配列された伝熱フィンと、前記伝熱フィンを貫通する複数の伝熱管と、を備え、前記伝熱フィンのそれぞれは、前記第1方向に対して傾斜する線状の山部および谷部を交互に繰り返す波形部と、前記谷部の両端部のうち下側に位置する方の端部同士を結ぶように延びる平坦部と、前記平坦部から斜めに立ち上がり、前記波形部に沿って前記山部の一方の端部に収束する変換部と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、山部の裏側に形成される溝に沿って流れ落ちる水は変換部によって平坦部に導かれ、谷部の表側に形成される溝に沿って流れ落ちる水は直接的に平坦部に導かれる。そして、平坦部に導かれた水は、平坦部に沿って抵抗なくスムーズに流れ落ちる。これにより、伝熱フィンの表面上に堆積する水を良好に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィンチューブ型熱交換器を示す概略斜視図
【図2】(a)は図1に示すフィンチューブ型熱交換器の部分的な側面断面図、(b)は(a)のIIB−IIB線に沿った断面図
【図3】変形例のフィンチューブ型熱交換器の部分的な側面断面図
【図4】参照モデルのフィンチューブ型熱交換器を示す概略斜視図
【図5】(a)は従来のフィンチューブ型熱交換器の側面図、(b)は(a)のVB−VB線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係るフィンチューブ型熱交換器1を示す。この熱交換器1は、内部流路を流れる媒体と当該熱交換器1を通過する空気との間で熱交換を行うものである。内部流路を流れる媒体の具体例は、例えば二酸化炭素やHFCなどの冷媒である。熱交換器1には図1中に矢印Aで示すように第1方向に沿って風が供給される。
【0013】
具体的に、熱交換器1は、前記第1方向と直交する第2方向に配列された伝熱フィン3と、伝熱フィン3を貫通する複数の伝熱管2とを備えている。なお、以下では、説明の便宜のために、第1方向をY方向、第2方向をX方向、第1方向および第2方向と直交する第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向およびY方向が水平方向であり、Z方向が鉛直方向であるが、X、Y、Z方向はこれに限定されるものではなく、熱交換器1の設置場所等に応じて適宜選定可能である。
【0014】
伝熱フィン3は、所定の間隔でX方向に互いに平行に並んでおり、それらの間に空気用の外部流路を形成する。各伝熱フィン3は、Z方向に延びる短冊状をなしている。
【0015】
伝熱管2は、上記内部流路を構成するものであり、Z方向に一定のピッチで配列されている。伝熱管2は、隣り合うもの同士がU字管21によって連結されることにより、蛇行しながらZ方向に延び、伝熱フィン3を複数回横切る1本の内部流路を形成する。最も下方および上方に位置する伝熱管2は延長されており、外部との接続口を構成している。ただし、伝熱管2は必ずしも互いに連結されている必要はなく、個々に内部流路を構成していてもよい。
【0016】
伝熱管2は、Y方向において、伝熱フィン3の中央から風上側または風下側にずれた位置に配置されていてもよい。ただし、フィン効率を向上させるという観点からは、伝熱管2がY方向において伝熱フィン3の中央を貫通していることが好ましい。なお、伝熱管2は、伝熱フィン3に設けられたカラー37(図2(a)および(b)参照)内に挿入されている。
【0017】
次に、図2(a)および(b)を参照して、各伝熱フィン3の形状について詳細に説明する。
【0018】
伝熱フィン3は、伝熱管2に貫通される波形部3Aと、Y方向において波形部3Aの両側に位置する第1平坦部3B(本発明の平坦部に相当)および第2平坦部3D(本発明の第2の平坦部に相当)を含む。伝熱フィン3には、例えば肉厚が0.05〜0.8mmのアルミニウム製の薄板を好適に用いることができる。特に、フィン効率を向上させるという観点からは、肉厚が0.08mm以上の薄板を用いることが好ましい。また、伝熱フィン3の表面には、ベーマイト処理または親水性塗料の塗布などの親水性処理が施されていてもよい。
【0019】
波形部3Aは、Y方向に対して傾斜する線状の山部31および谷部32を交互に繰り返す波形状を有している。本実施形態では、山部31および谷部32の傾斜方向が、Y方向の風上側から風下側に向かって先下がりとなっている。なお、山部31と谷部32の間にある腹部は、尖った山部31および谷部32が形成されるようにフラットになっていてもよいし、丸みを帯びた山部31および谷部32が形成されるように全体的にまたは両端部のみが湾曲していてもよい。
【0020】
波形部3Aの波長λおよび振幅γ、ならびにY方向に対する山部31および谷部32の傾斜角度θ1は、所望の伝熱性能が得られるように適宜決定され得る。本実施形態では、谷部32が伝熱管2の中心を通るような波形状が採用されている。
【0021】
波形部3Aには、谷部32と同一レベルで伝熱管2を取り巻くフラットなリング部36が設けられている。リング部36の外周縁からはテーパー状の周壁35が山部31まで立ち上がっており、リング部36の内周縁からは筒状のカラー37が立ち上がっている。
【0022】
第1平坦部3Bおよび第2平坦部3Dは、X方向に扁平でZ方向に長い長方形板状をなしている。風下側に位置する第1平坦部3Bは、谷部32の両端部のうち下側に位置する方の端部同士を結ぶように延びており、風上側に位置する第2平坦部3Dは、谷部32の両端部のうち上側に位置する方の端部同士を結ぶように延びている。
【0023】
第1平坦部3Bおよび第2平坦部3Dの幅tは、特に限定されるものではないが、例えば4.0mm以下である。
【0024】
第1平坦部3Bと波形部3Aの間には、それらの間に形成される三角形の隙間を塞ぐように第1変換部(本発明の変換部に相当)3Cが設けられている。同様に、第2平坦部3Dと波形部3Aの間には、それらの間に形成される三角形の隙間を塞ぐように第2変換部(本発明の第2の変換部に相当)3Eが設けられている。
【0025】
波形部3Aの山部31は谷部32よりも短く、山部31の両端部がY方向において谷部32の両端部よりも内側に配置されている。第1変換部3Cは、第1平坦部3Bから斜めに立ち上がり、波形部3Aに沿って山部31の下側の端部に収束しており、第2変換部3Eは、第2平坦部3Dから斜めに立ち上がり、波形部3Aに沿って山部31の上側の端部に収束している。換言すれば、第1変換部3Cおよび第2変換部3Eは、平坦部3B,3Dの内側の辺を底辺とする三角形板状をなしている。
【0026】
第1変換部3Cおよび第2変換部3Eの平坦部3B,3Dに対する仰角θ2は、例えば5度以上80度以下である。ただし、仰角θ2が大きくなりすぎると、伝熱フィン3の形成時に山部31または谷部32でヒビ割れが生じるおそれがあるため、仰角θ2は60度以下であることが好ましい。
【0027】
以上説明した本実施形態の熱交換器1では、山部31の裏側に形成される溝に沿って流れ落ちる水は第1変換部3Cによって第1平坦部3Bに導かれ、谷部32の表側に形成される溝に沿って流れ落ちる水は直接的に第1平坦部3Bに導かれる。そして、第1平坦部3Bに導かれた水は、第1平坦部3Bに沿って抵抗なくスムーズに流れ落ちる。これにより、伝熱フィン3の表面上に堆積する水を良好に排出することができる。
【0028】
また、本実施形態では、波形部3Aを挟んで第1変換部3Cと反対側に第2変換部3Eが設けられているため、伝熱フィン3間に流入する空気を第2変換部3Eによってガイドすることができる。これにより、通風抵抗を小さく抑えることができる。また、伝熱フィン3間に流入した空気が第2変換部3Eに衝突することと第2変換部3Eによってガイドされた空気が隣接する伝熱フィン3に衝突することにより、伝熱性能をも向上させることができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、波形部3Aを挟んで第1平坦部3Bと反対側に第2平坦部3Dが設けられているため、伝熱フィン3を高い歩留まりで製造することができる。
【0030】
図5(a)および(b)に示すような従来の伝熱フィン120を大量生産するには、大きな金属原板をプレス成型することにより複数の短冊状の伝熱フィン120が幅方向に連なった連続波板を成形し、その後に連続波板を各伝熱フィン120のフィン縁に沿って切断することが考えられる。しかしながら、連続波板を厚さ方向の両側から切断刃で挟み込む切断機を用いて連続波板の切断を行った場合には、伝熱フィン120の山部121および谷部122に切断刃が直交しないために、フィン縁上の山部121および谷部122付近でよじれが生じる。その結果、不良品が発生し、歩留まりが低下する。
【0031】
これに対し、本実施形態では、波形部3Aの両側に平坦部3B,3Dが設けられているので、複数の伝熱フィン3が連なった連続波板を切断機を用いて切断する際に、山部31および谷部32が存しない第1平坦部3Bと第2平坦部3Dの境界上に切断刃を配置することができる。従って、伝熱フィン3を良好な形状を保ったままで切り離すことができる。これにより、不良品発生によるコスト増加を大幅に軽減することが期待できる。なお、連続波板を切断する際の切断刃の位置ずれを考慮すると、第1平坦部3Bおよび第2平坦部3Dの幅tは0.25mm以上が好ましい。
【0032】
<変形例>
なお、第2平坦部3Dおよび第2変換部3Eは必ずしも必要ではなく、伝熱フィン3の第1平坦部3Bおよび第1変換部3Cと反対側の縁は、山部31および谷部32の端部が露出した、伝熱フィン3の配列方向に波打つ波形状になっていてもよい。
【0033】
さらに、第1平坦部3Bおよび第1変換部3Cは必ずしも風下側に配置されている必要はなく、山部31および谷部32の傾斜方向がY方向の風上側から風下側に向かって先上がりとなっていて、第1平坦部3Bおよび第1変換部3Cが風上側に配置されていてもよい。ただし、この場合には、伝熱フィン3の表面上を水が流れる向きと風の供給方向とが逆向きになるため、排水性の観点からは、前記実施形態のように、第1平坦部3Bおよび第1変換部3Cが風下側に配置されていることが好ましい。
【0034】
また、前記実施形態では、波形部3Aが、谷部32が伝熱管2の中心を通るように構成されている。しかし、波形部3Aは、図3に示すように、谷部32がリング部36の最下点または最下点近傍を通るように構成されていてもよい。このような構成であれば、リング部36上に堆積する水が谷部32の表側に形成される溝内に直ちに流れ込むため、排水性をさらに向上させることができる。なお、最下点近傍とは、伝熱管2の中心に対して最下点から±30度以内の範囲をいう。
【0035】
<シミュレーション>
以下に、熱交換器の伝熱性能に対する平坦部および変換部の影響を確認するために行ったシミュレーションを説明する。
【0036】
シミュレーションでは、フィンチューブ型熱交換器を空気調和装置(4kW)の蒸発器として用い、暖房運転を行った場合の熱交換器全体での熱交換量および空気圧力損失を算出した。解析条件としては、熱交換器に供給される空気の温度を7.0℃、密度を1.244kg/m3、風速を1.0m/sとした。また、熱交換器の内部流路を流れる冷媒をR410Aとし、その温度を0.0℃、熱伝達率を3200W/m2・Kとした。
【0037】
まず、図2(a)および(b)に示すような構成の実施形態モデルを作成した。
【0038】
伝熱フィン3の寸法としては、厚さを0.09mm、Y方向の幅を18.90mmとし、伝熱管2をY方向において伝熱フィン2の中央に配置した。波形部3Aについては、波形状の振幅γを1.33mm、山部31および谷部32の傾斜角度θ1を17.9度とした。伝熱管2については、内径を6.4mm、外径を7.0mm、Z方向のピッチを18.32mmとした。また、第1平坦部3Bおよび第2平坦部3Dの幅tを0.35mm、第1変換部3Cおよび第2変換部3Eの仰角θ2を45.9度とした。
【0039】
次に、実施形態モデルの平坦部および変換部をなくした代わりに波形部を延長した、図4に示すような参照モデルを作成した。
【0040】
シミュレーションの結果、空気圧力損失に関しては、参照モデルに対する実施形態モデルの増加割合が僅かに1.9%であり、実施形態モデルでは参照モデルと同等に通風抵抗が低かった。また、熱交換量に関しては、参照モデルに対する実施形態モデルの増加割合が0.4%であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のフィンチューブ型熱交換器は、空気調和装置、給湯装置、暖房装置などに用いられるヒートポンプに有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 熱交換器
2 伝熱管
3 伝熱フィン
3A 波形部
3B 第1平坦部
3C 第1変換部
3D 第2平坦部
3E 第2変換部
31 山部
32 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って風が供給されるフィンチューブ型熱交換器であって、
前記第1方向と直交する第2方向に配列された伝熱フィンと、
前記伝熱フィンを貫通する複数の伝熱管と、を備え、
前記伝熱フィンのそれぞれは、前記第1方向に対して傾斜する線状の山部および谷部を交互に繰り返す波形部と、前記谷部の両端部のうち下側に位置する方の端部同士を結ぶように延びる平坦部と、前記平坦部から斜めに立ち上がり、前記波形部に沿って前記山部の一方の端部に収束する変換部と、を含む、フィンチューブ型熱交換器。
【請求項2】
前記谷部の両端部のうち下側に位置する方の端部は、風下側の端部である、請求項1に記載のフィンチューブ型熱交換器。
【請求項3】
前記波形部には、前記谷部と同一レベルで前記伝熱管を取り巻くリング部が設けられており、前記波形部は、前記谷部が前記リング部の最下点または最下点近傍を通るように構成されている、請求項1または2に記載のフィンチューブ型熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱フィンのそれぞれは、前記谷部の両端部のうち上側に位置する方の端部同士を結ぶように延びる第2の平坦部と、前記第2の平坦部から斜めに立ち上がり、前記波形部に沿って前記山部の他方の端部に収束する第2の変換部と、をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィンチューブ型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87978(P2013−87978A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226402(P2011−226402)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)