説明

フィンチューブ熱交換器

【課題】単位重量あたりの熱交換量の大きいフィンチューブ熱交換器を提供する。
【解決手段】フィンチューブ熱交換器10は、フィン30及び伝熱管20を備えている。フィン30は、伝熱管20が個別に嵌められた複数の貫通孔5a及び5bを有する。貫通孔5a及び5bは、フィン30の並び方向と空気Aの流れ方向との両方向に垂直な段方向に沿って等間隔で形成されているとともに、流れ方向に平行な列方向に沿って複数の列で形成されている。伝熱管20の外径をD、伝熱管20の段方向の中心間距離をDp、伝熱管20の列方向の中心間距離をLp、複数のフィン30のフィンピッチをFpと定義したとき、熱交換器10は、下記の関係を満たす。
5mm≦D≦5.5mm
2.5≦Dp/D≦3.7
3.1≦Lp/D≦3.7
0.25≦Fp/D≦0.28

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブ熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィンチューブ熱交換器として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された熱交換器は、図7(a)(b)に示すように、板状フィン1及び伝熱管2を有する。伝熱管2は、板状フィン1に対して垂直に挿入されている。板状フィン1には、切り起こし3が設けられている。
【0003】
伝熱管2の外径をD、伝熱管2の段方向の段ピッチをDp、板状フィン1のフィンピッチをFp、伝熱管2の列方向の列ピッチをLpと定義したとき、特許文献1に記載された熱交換器は、3mm≦D≦7mm、2D≦Dp≦3D、2D≦Lp≦3.5D、0.15D≦Fp≦0.27Dの関係を満たす。このような構成によれば、伝熱特性に優れた熱交換器を提供できることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3720208号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成によれば、熱交換器の熱交換量を増やすことができるものの、熱交換器の重量も増加する。つまり、単位重量あたりの熱交換量は必ずしも十分ではない。また、特許文献1に記載された熱交換器のフィンには切り起こしが設けられている。そのため、フィンピッチFp及び段ピッチDpを狭くして熱交換器の小型化を図ることが本質的に難しい。また、開口部が設けられていないフィン(フラットフィン、コルゲートフィンなど)を使用した熱交換器の特性は、開口部が設けられたフィンを使用した熱交換器の特性と大きく異なる。そのため、開口部が設けられていないフィンを使用した熱交換器に特許文献1に記載された構成をそのまま適用することは不可能である。さらに、フィンに切り起こしを設けると、着霜による切り起こしの目詰まりの問題も生じる。
【0006】
本発明は、比較的容易に小型化できるとともに、単位重量あたりの熱交換量の大きいフィンチューブ熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
気体の流路を形成するために平行に並べられた複数のフィンと、
前記複数のフィンを貫通しており、前記気体と熱交換する媒体が内部を流れる伝熱管とを備え、
前記複数のフィンは、それぞれ、前記伝熱管が個別に嵌められた複数の貫通孔を有し、かつ前記複数の貫通孔を除いたその他の領域において当該フィンの第1主面側から第2主面側への前記気体の流れを禁止するように構成され、
前記複数の貫通孔は、前記複数のフィンの並び方向と前記気体の流れ方向との両方向に垂直な段方向に沿って等間隔で形成されているとともに、前記流れ方向に平行な列方向に沿って複数の列で形成されており、
前記伝熱管の外径をD、前記伝熱管の前記段方向の中心間距離をDp、前記伝熱管の前記列方向の中心間距離をLp、前記複数のフィンのフィンピッチをFpと定義したとき、
5mm≦D≦5.5mm
2.5≦Dp/D≦3.7
3.1≦Lp/D≦3.7
0.25≦Fp/D≦0.28
の関係を満たす、フィンチューブ熱交換器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィンチューブ熱交換器において、各フィンは、第1主面側から第2主面側への気体の流れを禁止するように構成されている。言い換えれば、伝熱管が嵌められた貫通孔以外の部分に開口部が設けられていない。従って、段ピッチDp(中心間距離Dp)及びフィンピッチFpを比較的容易に狭くすることができる。また、上記した関係を満たすことにより、比較的細い伝熱管(5〜5.5mm)を使用する場合において、単位重量あたりの熱交換量を改善することができる。さらに、着霜による切り起こしの目詰まりの問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフィンチューブ熱交換器の斜視図
【図2】図1のフィンチューブ熱交換器に用いられたフィンの平面図
【図3】図2に示すフィンのIII-III線に沿った断面図
【図4】図1のフィンチューブ熱交換器に用いられた別のフィンの平面図
【図5】図4に示すフィンのV-V線に沿った断面図
【図6A】数値解析の結果を示すグラフ
【図6B】数値解析の結果を示す別のグラフ
【図6C】数値解析の結果を示すさらに別のグラフ
【図7】従来のフィンチューブ熱交換器の平面図及び側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のフィンチューブ熱交換器10は、空気A(気体)の流路を形成するために一定間隔(フィンピッチ)で平行に並べられた複数のフィン30と、これらのフィン30を垂直に貫通する複数の伝熱管20とを備えている。フィンチューブ熱交換器10は、伝熱管20の内部を流れる媒体Bと、フィン30の表面に沿って流れる空気Aとを熱交換させるように構成されている。媒体Bは、ハイドロフルオロカーボン(R410A、R407C、R32)、イソブタン、プロパン、二酸化炭素などの冷媒である。媒体Bは、詳細には、ヒートポンプサイクルを循環する冷媒である。伝熱管20は、1本につながっていてもよいし、複数本に分かれていてもよい。
【0012】
図1及び図2に示すように、複数のフィン30は、空気Aの流れ方向の上流側(風上側)に配置された複数の第1フィン31と、複数の第1フィン31を通過した空気Aが流入するように空気Aの流れ方向の下流側(風下側)に配置された複数の第2フィン32とを含む。本実施形態において、第1フィン31の構造及び寸法は、第2フィン32のそれらに等しい。つまり、第1フィン31及び第2フィン32は、同一部材で構成されている。本明細書において、第1フィン31に関する説明は、特に断らない限り、第2フィン32にも適用される。
【0013】
ただし、第1フィン31の構造及び寸法が、第2フィン32のそれらと異なっていてもよい。さらに、第1フィン31及び第2フィン32が単一の部材で構成されていてもよい。つまり、第1フィン31の面積と第2フィン32の面積とを合計した面積を有するフィンを準備し、そのフィンを「フィン30」として使用することができる。
【0014】
図2に示すように、第1フィン31及び第2フィン32は、それぞれ、直線状の前縁31f及び32fを有する。本明細書では、空気Aの流れ方向に平行な方向を列方向、複数のフィン30の並び方向と空気Aの流れ方向との両方向に垂直な方向を段方向と定義する。前縁31f及び32fは、段方向に平行である。図1に示すように、列方向、並び方向及び段方向は、それぞれ、X方向、Y方向およびZ方向に対応している。空気Aは、フィン31及び32の表面に平行な方向から熱交換器10に流入する。
【0015】
第1フィン31は、例えば、長方形かつ平板の形状を有する。第1フィン31の長手方向は段方向に一致している。本実施形態では、第1フィン31は一定間隔(フィンピッチ)で並べられている。第1フィン31の材料として、打ち抜き加工された肉厚0.05〜0.8mmのアルミニウム製の平板を好適に使用できる。第1フィン31の表面にベーマイト処理、親水性塗料の塗布などの親水性処理が施されていてもよい。
【0016】
第1フィン31は、複数の貫通孔31hを有する。複数の貫通孔31hは、段方向に沿って等間隔で形成されている。第1フィン31は、複数の貫通孔31hを除いたその他の領域において当該フィン31の第1主面側(上面側)から第2主面側(下面側)への空気Aの流れを禁止するように構成されている。つまり、第1フィン31には、貫通孔31h以外に開口部が設けられていない。本実施形態において、第1フィン31は、起伏を有さないフラットフィンである。同様に、第2フィン32は、複数の貫通孔32hを有する。複数の貫通孔32hは、段方向に沿って等間隔で形成されている。第2フィン32は、複数の貫通孔32hを除いたその他の領域において当該フィン32の第1主面側(上面側)から第2主面側(下面側)への空気Aの流れを禁止するように構成されている。つまり、第2フィン32には、貫通孔32h以外に開口部が設けられていない。本実施形態において、第2フィン32は、起伏を有さないフラットフィンである。フラットフィンは、圧力損失を抑制する観点で有利である。また、開口部が存在しなければ、着霜による目詰まりの問題も生じない。
【0017】
なお、「開口部が設けられていない」とは、スリット、ルーバーなどが設けられていないこと、すなわち、フィンを貫通する孔が設けられていないことを意味する。開口部が設けられていないフィンには、フラットフィン及びコルゲートフィンが含まれる。
【0018】
貫通孔31h及び32hは、列方向に沿って複数の列で形成されている。つまり、複数の貫通孔31hは、上流側の列(第1列)に形成された貫通孔である。複数の貫通孔32hは、下流側の列(第2列)に形成された貫通孔である。貫通孔31h及び32hのそれぞれに伝熱管20が嵌められている。
【0019】
図1及び図2に示すように、伝熱管20は、段方向に並ぶように第1フィン31側に配置された複数の第1伝熱管21と、同じく段方向に並ぶように第2フィン32側に配置された複数の第2伝熱管22とを含む。本実施形態において、第1伝熱管21の外径は、第2伝熱管22の外径に等しい。つまり、第1伝熱管21及び第2伝熱管22は、同一の配管(冷媒管)で構成されている。本明細書において、第1伝熱管21に関する説明は、特に断らない限り、第2伝熱管22にも適用される。
【0020】
第1伝熱管21及び第2伝熱管22は、それぞれ、第1フィン31の貫通孔31h及び第2フィン32の貫通孔32hに嵌められている。貫通孔31hの周りにフィンカラー5aが第1フィン31の一部によって形成されており、フィンカラー5aと第1伝熱管21とが密着している。同様に、貫通孔32hの周りにフィンカラー5bが第2フィン32の一部によって形成されており、フィンカラー5bと第2伝熱管22とが密着している。フィンカラー5a及び5bは、いわゆるバーリング加工によって形成することができる。第1伝熱管21及び第2伝熱管22は、フィン30を平面視したとき、互い違いに配置されている。つまり、フィン30を平面視したとき、貫通孔31h及び32hが千鳥状に配列している。
【0021】
貫通孔31h及び32hの直径は、例えば5〜5.5mmである。貫通孔31hの直径及び貫通孔32hの直径は、それぞれ、第1伝熱管21の外径及び第2伝熱管22の外径に一致している。比較的細い伝熱管21及び22を使用することにより、熱交換器10の軽量化が容易となる。第1フィン31の列方向の寸法は、例えば15〜25mmである。第2フィン32の列方向の寸法も例えば15〜25mmである。
【0022】
図3に示すように、第1フィン31の下流端31eと第2フィン32の前縁32f(上流端)との間には、隙間37が形成されている。この隙間37には、第1フィン31の下流端31eと第2フィン32の前縁32fとの間に霜が跨って形成されて風路が閉塞するのを防止する役割がある。つまり、隙間37により着霜時の圧力損失の増大を抑制できる。また、隙間37が存在していると、第1フィン31の下流端31eの陰に第2フィン32の前縁32fが隠れないので、第2フィン32での熱交換量も増大する。隙間37の列方向の広さGは、例えば1〜3mmである。本実施形態では、複数の第1フィン31及び複数の第2フィン32が、互いに等しいフィンピッチFpを有する。並び方向に関して複数の第1フィン31と複数の第2フィン32とが互い違いに配列している。
【0023】
伝熱管20の外径をD、伝熱管20の段方向の中心間距離をDp、伝熱管20の列方向の中心間距離をLp、複数のフィン30のフィンピッチをFpと定義する。具体的には、第1伝熱管21の外径及び第2伝熱管22の外径をDと定義する。互いに隣り合う2つの第1伝熱管21の中心間距離をDpと定義する。第2伝熱管22の中心間距離もDpで表される。第1伝熱管21の中心O1と第2伝熱管22の中心O2との列方向の距離をLpと定義する。伝熱管20の外径D、段ピッチDp、列ピッチLp及びフィンピッチFpの単位は、いずれも「mm」である。このとき、本実施形態のフィンチューブ熱交換器10は、下記の関係を満足する。
【0024】
5mm≦D≦5.5mm
2.5≦Dp/D≦3.7
3.1≦Lp/D≦3.7
0.25≦Fp/D≦0.28
【0025】
伝熱管20の外径D、段ピッチDp、列ピッチLp及びフィンピッチFpの変化に対する、熱交換器10の熱交換量の変化及び熱交換器10の重量の変化について説明する。
【0026】
(伝熱管20の外径D)
段ピッチDp、列ピッチLp及びフィンピッチFpを一定とし、伝熱管20の外径Dを小さくすると、冷媒側熱伝達率、冷媒側伝熱面積、空気側熱伝達率及び空気側伝熱面積のバランスに応じて熱交換器10の熱交換量が増減する。多くの場合、熱交換量は減少する。伝熱管20の本数が一定かつ外径Dが小さくなるため、熱交換器10の重量は減少する。伝熱管20の外径Dを大きくすると、逆の結果が得られる。ただし、5〜5.5mmの外径Dを有する伝熱管20を使用することで、熱交換器10の軽量化が容易となる。
【0027】
(段ピッチDp)
伝熱管20の外径D、列ピッチLp及びフィンピッチFpを一定とし、段ピッチDpを狭めると、熱交換量は増加し、重量も増加する。段ピッチDpを拡げると、逆の結果が得られる。
【0028】
(列ピッチLp)
伝熱管20の外径D、段ピッチDp及びフィンピッチFpを一定とし、列ピッチLpを狭くすると、熱交換量は減少し、重量も減少する。列ピッチLpを拡げると、逆の結果が得られる。
【0029】
(フィンピッチFp)
伝熱管20の外径D、段ピッチDp及び列ピッチLpを一定とし、フィンピッチFpを拡げると、熱交換量は減少し、重量も減少する。フィンピッチFpを狭めると、逆の結果が得られる。
【0030】
小さい外径Dを有する伝熱管20を使用する場合、熱交換量の低下を補うために、段ピッチDpを狭くしたり、列ピッチLpを拡げたりする必要がある。同様に、フィンピッチFpを拡げる場合、熱交換量の低下を補うために、段ピッチDpを狭くしたり、列ピッチLpを拡げたりする必要がある。しかし、これらの変更は重量の増加を招く。つまり、フィンチューブ熱交換器10において、熱交換量と重量の間には、トレードオフの関係が存在する。後述する数値解析の結果から明らかとなるように、上記した関係を満足するように伝熱管20の外径D、段ピッチDp、列ピッチLp及びフィンピッチFpを調節することによって、フラットフィン又はコルゲートフィンを使用したフィンチューブ熱交換器の単位重量あたりの熱交換量を改善する(最適化する)ことができる。
【0031】
(変形例)
図4及び図5に示すように、本変形例において、フィン130は、空気Aの流れ方向(列方向)に沿って山部と谷部が交互に現れるように成形されたコルゲートフィンである。コルゲートフィンによれば、フラットフィンよりも優れた伝熱性能を期待できる。その他の構成は、基本的には、図1〜3を参照した説明した通りである。本変形例では、前列の第1フィン131及び後列の第2フィン132の両方がコルゲートフィンである。ただし、フラットフィンとコルゲートフィンとを組み合わせて使用してもよい。すなわち、前列の第1フィンとしてフラットフィンを使用し、後列の第2フィンとしてコルゲートフィンを使用することができる。逆に、前列の第1フィンとしてコルゲートフィンを使用し、後列の第2フィンとしてフラットフィンを使用することができる。
【0032】
図4及び図5に示すように、第1フィン131及び第2フィン132は、それぞれ、空気Aの流れ方向に沿って2つの山部(又は谷部)が現れるように成形されたコルゲートフィンである。ただし、コルゲートフィンの山部(又は谷部)の数は特に限定されない。例えば、V字形に成形されたコルゲートフィン、すなわち、山部を1つのみ有するコルゲートフィンを図1に示す熱交換器10に使用してもよい。
【0033】
なお、図2及び図3を参照して説明したフラットフィン(フィン30)の表面に凹部及び/又は凸部が設けられていてもよい。凹部及び/又は凸部を設けることによって、伝熱性能を向上させることができる。そのような凹部及び/又は凸部によって排水性が低下したり、ゴミ、埃などの異物の目詰まりによって伝熱性能が低下したりするおそれもない。このことは、コルゲートフィンについても同様である。
【実施例】
【0034】
本発明のフィンチューブ熱交換器の性能を確認するため、汎用の流体解析ソフトウェアを用いて数値解析を実施した。主な解析条件を以下に示す。
【0035】
ソフトウェア:FLUENT(アンシスジャパン社製)
流入空気の乾球温度:35℃
流入空気の湿球温度:24℃
前面風速:1.2m/秒
冷媒:R410A
凝縮温度:43℃
冷媒側熱伝達率:12000W/m2・K
伝熱管の外径D:5mm、5.25mm、5.5mm
伝熱管の材質:銅
第1フィンの長さ(列方向):18.9mm
第2フィンの長さ(列方向):18.9mm
フィンの厚み:0.09mm
フィンピッチ:1.27mm、1.37mm、1.41mm
フィンの材質:アルミニウム
フィンの形状:コルゲートフィン(山の高さ:1.36mm、山の数:2、傾斜角度:16.7°)
【0036】
参照例として、以下の構成を有するフィンチューブ熱交換器の数値解析も行った。上記条件と異なる構成のみを記す。
伝熱管の外径D:7mm
段ピッチDp:18.3mm
列ピッチLp:18.9mm
【0037】
図6A、図6B及び図6Cに解析結果を示す。図6A及び図6Cのグラフにおいて、横軸は、段ピッチDpを伝熱管の外径Dで割った値を表す。図6Bのグラフにおいて、横軸は、列ピッチLpを伝熱管の外径Dで割った値を表す。
【0038】
なお、図6Aにおいて、伝熱管の外径Dが5.5mmのときの近似カーブは、下記式(1)で表される。y=0となるのは、x=2.49、3.73のときである。
y=−18.629*x2+115.85*x−72.969…(1)
【0039】
図6Bにおいて、伝熱管の外径Dが5mmのときの近似カーブは、下記式(2)で表される。y=0となるのは、x=3.15のときである。
y=−52.441*x2+383.14*x−586.75…(2)
【0040】
図6Bにおいて、伝熱管の外径Dが5.5mmのときの近似カーブは、下記式(3)で表される。y=0となるのは、x=3.67のときである。
y=−60.358*x2+400.89*x−558.13…(3)
【0041】
図6A、図6B及び図6Cのグラフにおいて、縦軸の「Q/ΔPa比」は、それぞれ、以下の意味を持っている。各グラフにおいて、「Q」は、解析対象の熱交換器の単位重量あたりの熱交換量を表しており、「ΔPa」は解析対象の熱交換器の圧力損失(通風抵抗)を表している。詳細には、図6Aのグラフにおいて、「Q」は、特定の段ピッチDpに対して、最適な列ピッチLpを選択したときの解析対象の熱交換器の単位重量あたりの熱交換量を表しており、「ΔPa」は、特定の段ピッチDpに対して、最適な列ピッチLpを選択したときの熱交換器の圧力損失を表している。図6Bのグラフにおいて、「Q」は、特定の列ピッチLpに対して、最適な段ピッチDpを選択したときの解析対象の熱交換器の単位重量あたりの熱交換量を表しており、「ΔPa」は、特定の列ピッチLpに対して、最適な段ピッチDpを選択したときの熱交換器の圧力損失を表している。図6Cのグラフの縦軸は、列ピッチLpを18.9mmに固定し、段ピッチDpを変化させたときのQ/ΔPa比を表している。つまり、特定のフィンチューブ熱交換器のQ/ΔPa比が100%を超えているとき、その特定のフィンチューブ熱交換器の性能は、参照例のフィンチューブ熱交換器の性能を上回っている。なお、図6A、図6B、図6Cでは、参照例の熱交換器(D=7mm)の単位重量あたりの熱交換量と、参照例の熱交換器の圧力損失の比を100とし、解析対象の熱交換器のQ/ΔPaを正規化した値をプロットしている。
【0042】
図6Aのグラフは、フィンピッチFpを1.37mm、伝熱管の外径Dを5mm、5.25mm又は5.5mmに固定し、段ピッチDpを変化させたときのQ/ΔPa比を表している。列ピッチLpは段ピッチDpに応じて最適化した。Q/ΔPa比のカーブは、特定のDp/Dにピークを持っていた。この理由は、次の通りである。すなわち、フィンピッチFp及び伝熱管の外径Dが一定の条件の下で段ピッチDpを増やすとQ及びΔPaが減少し、段ピッチDpを減らすとQ及びΔPaが増加する。Q及びΔPaの増加又は減少のバランスに応じて、Q/ΔPa比のカーブがピークを持つものとなる。また、伝熱管の外径Dを5mm、5.25mm、5.5mmと変化させると、Q/ΔPa比のカーブは、少しずつシフトした。伝熱管の外径Dが5〜5mmの範囲にあるとき、段ピッチDpが2.5≦Dp/D≦3.7の関係を満たせば、Q/ΔPa比が100%を超えた。
【0043】
図6Bのグラフは、フィンピッチFpを1.37mm、伝熱管の外径Dを5mm、5.25mm又は5.5mmに固定し、列ピッチLpを変化させたときのQ/ΔPa比を表している。段ピッチDpは列ピッチLpに応じて最適化した。Q/ΔPa比のカーブは、特定のLp/Dにピークを持っていた。この理由は、次の通りである。すなわち、フィンピッチFp及び伝熱管の外径Dが一定の条件の下で列ピッチLpを増やすとQ及びΔPaが増加し、列ピッチLpを減らすとQ及びΔPaが減少する。Q及びΔPaの増加又は減少のバランスに応じて、Q/ΔPa比のカーブがピークを持つものとなる。伝熱管の外径Dを5mm、5.25mm、5.5mmと変化させると、Q/ΔPa比のカーブは、少しずつシフトした。伝熱管の外径Dが5〜5mmの範囲にあるとき、列ピッチLpが3.1≦Lp/D≦3.7の関係を満たせば、Q/ΔPa比が100%を超えた。
【0044】
図6Cのグラフは、伝熱管の外径Dを5.5mm、列ピッチLpを18.9mm、フィンピッチFpを1.27mm、1.37mm又は1.41mmに固定し、段ピッチDpを変化させたときのQ/ΔPa比を表している。Q/ΔPa比のカーブは、特定のDp/Dにピークを持っていた。図6Aの場合と異なり、ピークの位置は概ね一定であった(Dp/D=3.1の位置)。
【0045】
図6Cに示すように、フィンピッチFpが1.37〜1.41mmの範囲にあり、かつDp/Dが2.5〜3.7の範囲にあるとき、Q/ΔPa比が100%を超えた。図6Aのグラフから理解できるように、フィンピッチFpが一定であれば、伝熱管の外径Dが5mm又は5.25mmのときのQ/ΔPa比は、段ピッチDp及び列ピッチLpを調節することによって、伝熱管の外径Dが5.5mmのときのQ/ΔPa比を上回ることができる。そのため、伝熱管の外径Dが5mm又は5.25のときにおいても、フィンピッチFpが1.37〜1.41mmの範囲にあり、かつDp/Dが2.5〜3.7の範囲にあれば、Q/ΔPa比は100%を超える。従って、Fp/Dの好ましい下限値は、1.37mm/5.5mm=0.25であり、Fp/Dの好ましい上限値は、1.41mm/5mm=0.28である。
【0046】
以上の結果から、(a)5mm≦D≦5.5mm、(b)2.5≦Dp/D≦3.7、(c)3.1≦Lp/D≦3.7、(d)0.25≦Fp/D≦0.28の要件が導かれる。これらの要件を全て満足するフィンチューブ熱交換器の単位重量あたりの熱交換量は十分に大きい。
【0047】
本実施例における解析条件は、空調装置の冷房定格条件に該当する。しかし、本発明のフィンチューブ熱交換器によれば、冷房中間条件、暖房定格条件、暖房中間条件などの他の条件においても冷房定格条件と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のフィンチューブ熱交換器は、空調装置、給湯機、暖房機などのヒートポンプ応用機器の室外熱交換器に適用することによって、より大きな効果を発揮する。なぜなら、フィンに開口部が設けられていないので、結露条件及び着霜条件での排水性に優れているだけでなく、ゴミ、埃などの異物による目詰まりに対しても優れているからである。
【符号の説明】
【0049】
5a,5b フィンカラー
10 フィンチューブ熱交換器
20 伝熱管
21 第1伝熱管
22 第2伝熱管
30 フィン
31 第1フィン
31h 貫通孔
32 第2フィン
32h 貫通孔
Dp 段ピッチ
Lp 列ピッチ
Fp フィンピッチ
D 伝熱管の外径
A 空気
B 媒体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流路を形成するために平行に並べられた複数のフィンと、
前記複数のフィンを貫通しており、前記気体と熱交換する媒体が内部を流れる伝熱管とを備え、
前記複数のフィンは、それぞれ、前記伝熱管が個別に嵌められた複数の貫通孔を有し、かつ前記複数の貫通孔を除いたその他の領域において当該フィンの第1主面側から第2主面側への前記気体の流れを禁止するように構成され、
前記複数の貫通孔は、前記複数のフィンの並び方向と前記気体の流れ方向との両方向に垂直な段方向に沿って等間隔で形成されているとともに、前記流れ方向に平行な列方向に沿って複数の列で形成されており、
前記伝熱管の外径をD、前記伝熱管の前記段方向の中心間距離をDp、前記伝熱管の前記列方向の中心間距離をLp、前記複数のフィンのフィンピッチをFpと定義したとき、
5mm≦D≦5.5mm
2.5≦Dp/D≦3.7
3.1≦Lp/D≦3.7
0.25≦Fp/D≦0.28
の関係を満たす、フィンチューブ熱交換器。
【請求項2】
前記複数のフィンは、それぞれ、コルゲートフィンである、請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器。
【請求項3】
前記複数のフィンが、前記列方向の上流側に配置された複数の第1フィンと、前記列方向の下流側に配置された複数の第2フィンとを含み、
前記複数の第1フィン及び前記複数の第2フィンが、互いに等しい前記フィンピッチFpを有し、
前記並び方向に関して前記複数の第1フィンと前記複数の第2フィンとが互い違いに配列している、請求項1又は2に記載のフィンチューブ熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92306(P2013−92306A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234793(P2011−234793)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)