説明

フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管及びそれを用いたフィン・アンド・チューブ型熱交換器並びにその製造方法

【課題】伝熱管とフィンとの間の接触熱抵抗を低減して、伝熱性能を向上させることの出来るフィン・アンド・チューブ型熱交換器に用いられる伝熱管と、それを用いたフィン・アンド・チューブ型熱交換器及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】伝熱管14の外表面に、100℃〜200℃に加熱することにより軟化もしくは溶融する接着性樹脂からなる塗膜層を形成し、その接着性樹脂により、伝熱管14とアルミニウム若しくはその合金からなるフィン12の組付け孔16内面との間の間隙を埋めつつ、それらを固着せしめて、フィン・アンド・チューブ型熱交換器10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管及びそれを用いたフィン・アンド・チューブ型熱交換器並びにその製造方法に係り、特に、家庭用エアコンやパッケージエアコン等の空調機におけるフィン・アンド・チューブ型熱交換器に好適に用いられる伝熱管と、それを用いたフィン・アンド・チューブ型熱交換器及びそれを有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭用エアコンや自動車用エアコン、パッケージエアコン等の空調用機器の他、冷蔵庫、ヒートポンプ式給湯器等には、蒸発器又は凝縮器として作動する熱交換器が用いられており、その中でも、家庭用室内エアコンや業務用パッケージエアコンにおいては、伝熱管にフィンを組み付けてなる構造のフィン・アンド・チューブ型熱交換器が、最も一般的に用いられている。
【0003】
また、近年、オゾン層保護や地球温暖化防止等の観点から、従来のフロン系冷媒に代えて、温暖化係数の低い自然冷媒を利用した熱交換器の開発も行われてきており、その中でも、炭酸ガスを主体とする冷媒を用いた給湯器が注目され、その開発が為されてきているが、その空気熱交換器にも、上記と同様なフィン・アンド・チューブ型熱交換器が用いられている。
【0004】
ところで、かかるフィン・アンド・チューブ型熱交換器は、一般に、複数のフィン(外面フィン)に対して垂直方向に伝熱管を差し込み、それら複数のフィンと伝熱管とを接合させた構造のものにおいて、実用化されてきている。そして、そのような構造とされた熱交換器においては、伝熱管内に冷媒を流通せしめる一方、伝熱管に対して垂直方向に、前記複数のフィンに沿って熱交換流体としての空気を流すことによって、冷媒と空気との間で熱交換が行われるようになっているのである。
【0005】
なお、このフィン・アンド・チューブ型熱交換器を構成するフィンは、一般的に、アルミニウム又はアルミニウム合金製の板材から構成されており、そのフィンの表面は、平坦なものの他にも、スリット又はルーバー等の伝熱促進効果のある形状に加工を施されたものが、多く用いられている。更に、そのようなフィンの表面には、親水性あるいは撥水性樹脂による塗膜を形成したものも、よく用いられている。このような樹脂塗膜を形成することによって、フィン・アンド・チューブ型熱交換器を、家庭用エアコンやパッケージエアコン等の空調機用として用いて作動させた際に、フィン表面に生じる結露水を均一な水膜とし、円滑に落下、排出させ、かかる結露水による通風抵抗を低くして、熱交換器の性能を維持することが可能となるのである。
【0006】
また、フィン・アンド・チューブ型熱交換器で用いられる伝熱管としては、よく知られているように、管軸に垂直な断面において円形形状を呈する丸管状のものが、一般的に採用されている。そして、そのような円形断面形状のもの(丸管)においては、その材質として、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金が多く採用されており、また、その内面に、多数の溝、例えば管軸に対して所定のリード角をもって延びるように螺旋状の溝を多数形成して、それらの溝間に所定高さの内面フィンが形成されるようにした、所謂、内面溝付伝熱管が多く用いられている。
【0007】
そして、そのような伝熱管が円形断面形状を呈している場合において、フィン・アンド・チューブ型熱交換器は、例えば、以下のような、よく知られた工程によって製作されることとなる。即ち、先ず、プレス加工等により、所定の組付け孔が複数形成せしめられたアルミニウムプレートフィンを成形し、そして、この得られたアルミニウムプレートフィンを積層した後に、前記組付け孔の内部に、別途製作した伝熱管を挿通せしめる。ここで用いられる伝熱管としては、例えば、転造加工等によって内面に溝付加工を施す等の加工を行ったものに、定尺切断・ヘアピン曲げ加工を施したものが供される。そして、かかる伝熱管を拡管することによって、アルミニウムプレートフィンに対して固着し、更に、ヘアピン曲げ加工を施した側とは反対側の伝熱管端部に、Uベンド管をろう付け加工する工程を経て、フィン・アンド・チューブ型熱交換器が製作されるのである。
【0008】
ところで、このようなフィン・アンド・チューブ型熱交換器の伝熱性能を向上させるためには、これまでに様々な取り組みが為されてきており、特に、伝熱管について、内面に施した溝の形態に様々な改良を加えることにより、管内熱伝達率の大幅な向上を図り、熱交換器の伝熱性能の向上が為されてきた。しかしながら、フィン・アンド・チューブ型熱交換器においては、このような伝熱管の管内熱伝達と同様に、伝熱管とアルミフィンとの間の熱伝達も非常に重要であり、この伝熱管とアルミフィンとの間の熱伝達は、伝熱管とアルミフィンとの密着度合い、即ち、それらの接触熱抵抗に大きく左右されることが、判っている。
【0009】
しかし、従来から一般的に用いられている銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金製の伝熱管にあっては、巨視的にその外表面が平滑面とされているものでも、微視的に見ると、微細な凹凸が存在している。一方、これと組み合わされるアルミニウムフィンの表面も同様に、微細な凹凸が存在しており、これらを組み付けたとき、外観上は充分に接触しているように見えているが、微視的に見れば部分的な接触であって、多くの空隙が存在しており、接触面積は充分ではない。このため、接触熱抵抗が大きくなってしまい、伝熱管とアルミフィンとの間の熱伝達は、充分ではなかったのである。
【0010】
そこで、このような空隙部を少なくして、熱交換器の伝熱性能を向上させるために、特開昭56−133595号公報(特許文献1)においては、伝熱管の表面に有機被膜を形成し、伝熱管をフィン群の穴に挿入し、拡管するようにしたクロスフィン型熱交換器が明らかにされている。このようなクロスフィン型熱交換器によれば、有機被膜が、拡管によってフィン群と伝熱管の微少隙間に移動し、両者間の接触を著しく向上させることが可能となるのである。しかしながら、そこで用いられる有機被膜としては、常温で粘調な有機被膜が挙げられているのであるが、それは、室温より高温の冷媒が伝熱管内を流れるような状況下では、かかる被膜が流出する等の問題を惹起するものであった。なお、ここで粘調とは、力を加えると、その温度で変形する状態を意味している。
【0011】
また、そのような問題を解決するものとして、特開2004−125235号公報(特許文献2)においては、伝熱管とフィンとの間に、少なくとも一部が固化又は硬化した樹脂層が存在する熱交換器及びその製造方法が、明らかにされている。このような熱交換器によれば、伝熱管の外表面の少なくとも一部に流動性を有する樹脂層等を形成した後、固化又は硬化の進行が少ないうちに拡管を行うことにより、拡管の際に伝熱管の径が拡大して、伝熱管表面の樹脂等がフィンと接触し、空隙部の少なくとも一部を埋めている。そして、この樹脂等が、その後の乾燥工程又はろう付けで加熱され、樹脂等は伝熱管及びフィンとの接触を保った状態で硬化することとなる。これにより、熱交換器の伝熱性能を向上することが出来るのである。
【0012】
ところが、かかる特許文献2に開示された熱交換器及びその製造方法においても、以下のような問題点が存在し、良好なものとは言えないのであった。即ち、伝熱管をアルミフィンに組み付ける工程、つまり、アルミフィンを積層した後に、該アルミフィンに形成されている組付け孔の内部に伝熱管を挿通せしめ、かかる伝熱管をアルミフィンに拡管固着する工程において、伝熱管外表面に塗布された樹脂層は、前述の特許文献1の場合と同様に、粘調な状態であるため、このような状態の伝熱管をアルミフィンの組付け孔に挿入すると、かかる樹脂層が組付け孔の内面と接触することで掻き取られてしまい、フィンと伝熱管との間の空隙を埋める樹脂が充分でなくなる恐れがあった。これは、通常、伝熱管の外径とアルミフィンの組付け孔の内径のクリアランスは極僅かしかなく、このような伝熱管の挿通作業時に、伝熱管の外面とアルミフィン組付け孔が擦れ合うことが度々であるため、伝熱管の外表面に形成されているのが粘調な樹脂層であると、擦れ合った際にこれが掻き取られてしまい、後の拡管工程において、空隙部を充分に埋めることの出来ない部分が出来てしまうのである。また、樹脂層の塗布工程が、伝熱管をアルミフィンに挿通する工程の直前に行われない場合に、粘調な樹脂層を外面に塗布された状態で、伝熱管をハンドリングしたり運搬したりすることになり、そのような作業中に、樹脂層が掻き取られる危険性も高いといった問題も内在するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭56−133595号公報
【特許文献2】特開2004−125235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、伝熱管とフィンとの間の接触熱抵抗を低減して、伝熱性能を向上させることの出来るフィン・アンド・チューブ型熱交換器に用いられる伝熱管を提供することにある。また、本発明にあっては、そのようなフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を用いて作製されたフィン・アンド・チューブ型熱交換器及びそれを製造する方法を提供することをも、その解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に挿通されて、拡管によって組み付けられる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管にして、その外表面に、100℃〜200℃への加熱によって軟化若しくは溶融する接着性樹脂からなる接着性塗膜が形成されてなり、該接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該フィンに対して固着せしめられ得るように構成したことを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を、その要旨とするものである。
【0016】
また、本発明は、アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に挿通されて、拡管によって組み付けられる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管にして、その外表面に、100℃〜200℃の融点を有するホットメルト型接着性樹脂からなる接着性塗膜が形成されてなり、該接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該フィンに対して固着せしめられ得るように構成したことを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を、その要旨としている。
【0017】
さらに、本発明は、アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に挿通されて、拡管によって組み付けられる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管にして、その外表面に、100℃〜200℃の反応温度を有する熱反応型接着性樹脂からなる接着性塗膜が形成されてなり、該接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該フィンに対して固着せしめられ得るように構成したことを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を、その要旨とする。
【0018】
そして、本発明にあっては、アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に、伝熱管を挿通せしめて、拡管によって組み付けてなるフィン・アンド・チューブ型熱交換器にして、前記伝熱管として、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の伝熱管を用い、かかる伝熱管の外表面に形成された接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該伝熱管が該フィンに対して固着せしめられていることを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器をも、その要旨とするものである。
【0019】
また、本発明は、伝熱管の外表面に、100℃〜200℃への加熱によって軟化若しくは溶融する接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂が軟化若しくは溶融する温度未満の温度に保持して、該接着性樹脂を乾燥、固化させた伝熱管を準備する工程と、親水性塗料若しくは撥水性塗料を表面に塗布してなるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンに設けられた組付け孔に、前記伝熱管を挿通させた後、前記伝熱管を拡管して、組付け体を作製する工程と、該組付け体を、前記接着性樹脂が軟化若しくは溶融する温度以上200℃以下の温度に保持して、該接着性樹脂を軟化若しくは溶融せしめ、前記フィンの組付け孔内表面と伝熱管外表面との間に該接着性樹脂を充満させる工程と、かかる接着性樹脂の充満させられた組付け体を冷却して、室温以上、該接着性樹脂が軟化若しくは溶融する温度以下の温度に保持し、かかる接着性樹脂を固化させることにより、一体化したフィン・アンド・チューブ型熱交換器を完成する工程とを有することを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法をも、その要旨とする。
【0020】
さらに、本発明おいては、伝熱管の外表面に、100℃以上200℃以下の融点を有するホットメルト型接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂の融点未満の温度に保持して、該接着性樹脂を乾燥、固化させた伝熱管を準備する工程と、親水性塗料若しくは撥水性塗料を表面に塗布してなるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンに設けられた組付け孔に、前記伝熱管を挿通させた後、前記伝熱管を拡管して、組付け体を作製する工程と、該組付け体を、前記接着性樹脂の融点以上200℃以下の温度に保持して、該接着性樹脂を溶融せしめ、前記フィンの組付け孔内表面と伝熱管外表面との間に該接着性樹脂を充満させる工程と、かかる接着性樹脂の充満させられた組付け体を冷却して、室温以上、該接着性樹脂の融点以下の温度に保持し、かかる接着性樹脂を固化させることにより、一体化したフィン・アンド・チューブ型熱交換器を完成する工程とを有することを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法をも、その要旨としている。
【0021】
更にまた、本発明にあっては、伝熱管の外表面に、反応温度が100℃以上200℃以下の熱反応型接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂の反応温度未満の温度に保持して、該接着性樹脂を乾燥させることにより、接着性塗膜が形成されてなる伝熱管を準備する工程と、親水性塗料若しくは撥水性塗料を表面に塗布してなるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンに設けられた組付け孔に、前記伝熱管を挿通させた後、前記伝熱管を拡管して、組付け体を作製する工程と、該組付け体を、前記接着性塗膜を構成する接着性樹脂の反応温度以上200℃以下の温度に保持して、該接着性樹脂を軟化させて、前記フィンの組付け孔内表面と伝熱管外表面との間に充満させると共に、該接着性樹脂を反応、硬化せしめて、一体化したフィン・アンド・チューブ型熱交換器を完成する工程とを有することを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法をも、その要旨としているのである。
【発明の効果】
【0022】
従って、このような本発明に従う構成とされたフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管によれば、伝熱管の外表面に形成された接着性樹脂からなる接着性塗膜によって、フィンの取付け孔の内面と、かかる伝熱管の外面との微視的な間隙が埋められて、伝熱管に対してフィンが固着せしめられ得るように、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管が構成されているところから、フィンと伝熱管との接触熱抵抗を効果的に低減せしめて、熱交換性能を向上させることが可能となる。
【0023】
また、かかる伝熱管の表面に形成される接着性塗膜が、100℃〜200℃に加熱することにより軟化若しくは溶融或いは反応する接着性樹脂にて形成されているところから、フィン表面に親水性塗膜や撥水性塗膜がプレコートされていても、その被膜の機能を良好に保ったまま、フィンと伝熱管を組み付けて、それらを固着し得る、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を形成することが出来るのである。
【0024】
なお、伝熱管がアルミニウム若しくはアルミニウム合金にて形成された内面溝付伝熱管とされた場合にあっては、伝熱管とフィンの強固な固着を図るために機械拡管の際の拡管率を大きくすると、伝熱管の内面フィンのつぶれが著しくなり、管内熱伝達率の低下を招くことになるが、本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管によれば、伝熱管とフィンの間隙に接着性樹脂による塗膜を介在させていることから、伝熱管の拡管率を小さくして、伝熱管の内面フィンの潰れを効果的に抑制することが可能となる。
【0025】
さらに、このような伝熱管の外表面に所定の接着性塗膜が形成されてなるフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を用いて作製されたフィン・アンド・チューブ型熱交換器にあっては、フィンと伝熱管との接触熱抵抗が低くなるように構成されているところから、高い熱交換性能を発揮することが可能であると共に、フィン表面に形成された親水性塗膜や撥水性塗膜の効果が良好に発揮されるところから、熱交換器を運転した際に生じるフィン表面の結露水を、それら塗膜によってフィン表面から円滑に排出して、かかる結露水による通風抵抗の増加を効果的に抑制し、安定して高い熱交換性能を維持することが可能となるのである。
【0026】
そして、本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法によれば、フィン表面に形成されている親水性塗膜や撥水性塗膜の機能を良好に保った状態としたフィン・アンド・チューブ型熱交換器を、有利に製造することが出来ることとなる。
【0027】
なお、かかる製造方法にあっては、その表面に予め親水性塗料や撥水性塗料が塗布されたフィンを用いているので、フィンと伝熱管とを組み付けてからフィン表面に親水性塗料や撥水性塗料の塗膜を形成するポストコート法に比べて、熱交換器全体を浸漬可能な大きさの塗料槽等を用意する必要がないため、製造コストを有利に低減することが可能であると共に、フィンに形成される塗膜を高品質化することが出来る特徴を有している。
【0028】
さらに、フィンと伝熱管とを組み付けた後に、フィンに親水性塗料や撥水性塗料を塗布したり、或いは、フィンと伝熱管とを固着させるための接着剤等を塗布したりする必要がないため、フィン間隔を有利に小さくすることが可能となるのであり、その結果、熱交換器の小型化や、熱交換性能の向上を図ることが出来るといった効果も、発揮されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器の一例を示す斜視説明図である。
【図2】図1に示されるフィン・アンド・チューブ型熱交換器を構成するフィンを示す正面説明図である。
【図3】図1に示されるフィン・アンド・チューブ型熱交換器のフィンと伝熱管との接合部分を拡大して示す断面説明図である。
【図4】本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器を構成する伝熱管の別の一例を示す断面説明図である。
【図5】本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器の別の一例を示す斜視説明図である。
【図6】実施例において用いたフィン材料の表面処理の形態を示す断面説明図である。
【図7】実施例において用いられたフィン・アンド・チューブ型熱交換器を概略的に示す斜視説明図である。
【図8】図7に示されるフィン・アンド・チューブ型熱交換器の伝熱管の配置の形態を示す断面説面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0031】
先ず、図1には、本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を用いたフィン・アンド・チューブ型熱交換器の実施形態の一つが、斜視図の形態において概略的に示されている。そこにおいて、熱交換器10は、互いに平行に且つ一定距離を隔てて配置された複数枚のフィン12に対して、複数本の伝熱管(丸管)14が、かかるフィン12に設けられた組付け穴16に挿入、固着されて、形成されている。
【0032】
より詳細には、フィン12は、従来と同様に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる金属材料にて形成された、図2にも示されているように、矩形の平面形状を呈した薄肉の板状フィンとされており、伝熱管14が組み付けられる組付け孔16が、矩形形状のフィン12の一端からフィン12の長手方向と平行に2列に、千鳥状に配置するように形成されている。なお、組付け孔16の内径は、組み付けられる伝熱管14の外径に応じて、適宜に決定されるものであるが、好ましくは、組付け孔16の内径:D2 は、拡管により組み付けられた拡管後の伝熱管14の外径:D1 とすると、D1 −D2 ≧0.08mmを満たすようにされることが、好ましい。このような大きさの組付け孔16とすることで、接触熱抵抗低減効果を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0033】
さらに、かかる組付け孔16の周りには、所定高さのカラー部20が、フィン12に一体的に形成されている。また、かかるフィン12表面には、図3に示される如く、親水性樹脂または撥水性樹脂が塗布されて、所定厚さの塗膜層18が形成されている。なお、フィン12の表面に、塗膜層18を形成する方法としては、予め塗膜が形成されたフィン材料(プレコートフィン材)を所定のフィン形状に加工し、伝熱管に組み付けて、フィン・アンド・チューブ型熱交換器を形成するプレコート法や、フィンと伝熱管とを組み付けて、フィン・アンド・チューブ型熱交換器として形成した後に、熱交換器全体を樹脂が溶解されている槽へ浸漬する浸漬法等によって、フィン表面に塗膜を形成するポストコート法がある。しかしながら、浸漬法にあっては、フィン表面への均一な塗膜の塗装が難しく、また、フィン間隔が狭くなってきている現状下において、浸漬法では、フィン間に溶解した樹脂が行き渡り難く、実施上困難な場合もあるため、好ましくは、品質的に優れたプレコート法が採用されることとなる。
【0034】
一方、丸管状の伝熱管14は、よく知られている如く、銅若しくは銅合金、或いはアルミニウム若しくはアルミニウム合金等からなる金属材料にて形成された、ここでは、円形断面形状を呈する平滑管とされ、その外表面には、本発明に従って、100℃〜200℃に加熱することにより軟化若しくは溶融する接着性樹脂が塗布されて、所定厚さの接着性の塗膜層22が形成されている(図3参照)。なお、ここで言う接着性樹脂とは、フィン12を構成する金属材料と伝熱管14を構成する金属材料との間に介在し、両金属材料を物理的に又は機械的に固着せしめた状態を維持することが可能な樹脂のことを意味する。また、かかる塗膜層22の厚さは、伝熱管14の外径とフィン12に形成された組付け孔16の内径によって決まるクリアランスや、拡管率などに応じて適宜に決定されるものであるが、好ましくは1〜10μm程度とされることとなる。
【0035】
なお、そのような塗膜層22を形成する接着性樹脂の1つとして、100℃〜200℃に加熱することにより軟化若しくは溶融する接着性樹脂が挙げられ、例えば、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ビニル樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、ポリスチレン樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系等の、単独若しくは複数を組み合わせたものが、適宜に選択されて、用いられることとなる。その中でも、特に、100℃〜200℃の融点を有するホットメルト型接着性樹脂が、有利に用いられることとなる。また、かかる塗膜層22を形成する接着性樹脂として、反応温度が100℃以上200℃以下の熱反応型接着性樹脂も、用いることが出来る。なお、ここで言う熱反応型接着性樹脂とは、反応温度以上の温度に保持することにより、含有されている物質の化学反応や重合反応等が起こり、樹脂が硬化して、接着性を向上させるような特性を持つ樹脂のことを意味しており、例えば、熱硬化性樹脂、反応性樹脂、反応系接着剤等が、これに含まれる。そして、そのような熱反応型の接着性樹脂として、具体的には、エポキシ、シアノアクリレート、ポリウレタン、アクリル系の、単独もしくは複数を組み合わせたものや、或いはそれらと熱可塑性樹脂とを組み合わせたものが、適宜に選択されて、用いられることとなる。
【0036】
また、そのような接着性樹脂の中でも、可撓性の高いものが用いられることが、望ましい。これは、可撓性の高い樹脂を用いることにより、フィン12と伝熱管14を組み付けて、熱交換器として形成した後に、L曲げ等の加工を施すよって熱交換器を変形させた場合にも、伝熱管14とフィン12との接着を効果的に維持して、フィン12と伝熱管14との間の接触熱抵抗を低減させる効果を有利に発揮することが出来るのである。
【0037】
そして、そのような伝熱管14とフィン12を用いて、かかるフィン12の複数枚を、それぞれに形成された組付け孔16を一致させた状態下において、互いに平行に且つ一定距離を隔てるように配置せしめ、その一致させた組付け孔16内に、伝熱管14を挿通した後、拡管法にて組み付けることにより、目的とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管が構成されているのである。なお、このとき、伝熱管14の外面(外周面)と、フィン12の組付け孔16の内面との間の隙間は、図3に示される如く、伝熱管14の外周面に形成された塗膜層22の接着性樹脂によって微視的に埋められて、それらを固着し、一体的なフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を構成している。そして、そのようなフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管を構成する伝熱管14のそれぞれの両端部は、ヘアピン曲げ加工を施した側と反対側の伝熱管端部にUベンド管をろう付け加工等する工程を経て、図1に示されるような、一体に組み付けられたフィン・アンド・チューブ型熱交換器10として構成されているのである。
【0038】
従って、このような本発明に従う構成とされたフィン・アンド・チューブ型熱交換器10によれば、伝熱管14の外表面に形成された接着性樹脂による塗膜層22により、フィン12の組付け孔16の内面と、かかる伝熱管14の外面との間隙が埋められていると共に、伝熱管14に対してフィン12が固着されているところから、フィン12と伝熱管14との接触熱抵抗を効果的に低減することが可能となり、以て、熱交換器10の熱交換性能を、有利に向上させることが出来るのである。
【0039】
また、かかる伝熱管14の外面に形成されている塗膜層22を構成する接着性樹脂の軟化若しくは溶融する温度が100℃以上とされているところから、熱交換器10を運転した際の熱によって、塗膜層22が溶融、流失してしまう恐れを、有利に回避することが出来る。即ち、フィン・アンド・チューブ型熱交換器においては、空調機の蒸発器として運転される際に、伝熱管14内を流通する冷媒の温度が100℃に近い状態になる場合があるため、塗膜層22を形成する接着性樹脂の軟化温度若しくは溶融温度が100℃未満とされると、フィン12と伝熱管14の空隙を埋めている接着性樹脂が空調機の運転中に溶融、流失してしまう恐れがあり、持続的な接触熱抵抗低減効果が得られなくなる問題があるのである。
【0040】
さらに、かかる塗膜層22を形成する接着性樹脂の融点が、200℃以下とされているところから、フィン12の表面に形成されている親水性塗膜や撥水性塗膜の機能を良好に保ったまま、伝熱管14とフィン12とを組み付けて、それらを固着し、フィン・アンド・チューブ型熱交換器10を形成することが出来るのである。即ち、その表面に親水性樹脂若しくは撥水性樹脂を塗布したアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン12に設けられた組付け孔16内に、伝熱管14を挿通、拡管して組み付けた後、それらを加熱して、伝熱管14の外面に塗布された塗膜層22を形成する接着性樹脂を液化若しくは軟化させ、組付け孔16の内面(カラー部20)と伝熱管14の外表面の間の間隙に接着性樹脂を充満させる際の温度を、フィン12の表面にプレコートされている親水性塗膜若しくは撥水性塗膜が熱分解等を引き起こす温度よりも低い200℃以下に抑えることが出来るため、それら親水性塗膜若しくは撥水性塗膜の性能低下を引き起こす恐れが、効果的に回避され得ることとなる。なお、それら親水性塗膜若しくは撥水性塗膜の機能をより一層維持することを考慮すると、塗膜層22を構成する接着性樹脂の融点の上限は、150℃以下とすることが好ましい。
【0041】
そして、このようにフィン12表面に形成された親水性塗膜や撥水性塗膜の効果が良好に発揮されるところから、熱交換器10を運転した際にフィン12の表面に発生する結露水を、それら塗膜によってフィン12の表面から円滑に排出して、かかる結露水による通風抵抗の増加を効果的に抑制することが出来、以て、熱交換器10が安定して高い熱交換性能を維持することが可能となるのである。
【0042】
ところで、このような構成とされたフィン・アンド・チューブ型熱交換器10は、以下のような方法を採用することによって、有利に製造されることとなる。即ち、先ず、銅若しくは銅合金、或いはアルミニウム若しくはその合金から形成された平滑管の外表面に、融点が100℃以上200℃以下の接着性樹脂若しくは反応温度が100℃以上200℃以下の熱反応型接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂がホットメルト型接着性樹脂の場合は、その融点未満、また熱反応型接着性樹脂の場合は、その反応温度未満の温度に保持し、接着性樹脂を乾燥、固化(熱反応型接着性樹脂においては乾燥)させて、伝熱管14の外面に、所定厚さの塗膜層22を形成したものを準備する。
【0043】
一方、その表面に親水性塗料若しくは撥水性塗料を塗布することで、所定厚さの塗膜層が形成されているアルミニウム板又はアルミニウム合金板に、プレス加工等を施すことによって、円形断面形状の組付け孔16が形成された所定形状のフィン12を準備する。そして、そのようなフィン12の複数枚を、それぞれの組付け孔16が一致するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置して、それら複数のフィン12の組付け孔16内を順次通過するように、先に準備した伝熱管14を挿通させる。そして、公知の機械拡管法や液圧拡管法などにより、所定の拡管率にて伝熱管14を拡管して、フィン12の組付け孔16と固着させ、組付け体を作製する。このとき、フィン12の組付け孔16の内面と伝熱管14の外面との間には、微視的な間隙が存在している。
【0044】
次いで、かかる組付け体を、伝熱管14の外面に塗布された接着性樹脂の融点以上200℃以下の温度に保持することによって、接着性樹脂を溶融させて、流動可能な状態と為し、フィン12の組付け孔16内面と伝熱管14の外面との間に存在する隙間全体に、そのように溶融した接着性樹脂を流動せしめて、充満させる。その後、それらの隙間が接着性樹脂によって充満させられた組付け体を、ホットメルト型接着性樹脂の場合には冷却して、室温以上、接着性樹脂の融点以下の温度に保持することにより、また熱反応型接着性樹脂の場合にはそのまま保持し反応させることにより、接着性樹脂を固化せしめて、図1に示されるような、フィン12と伝熱管14とが一体化されたフィン・アンド・チューブ型熱交換器が完成させられるのである。
【0045】
このような製造方法を採用することによって、低い温度にて伝熱管14とフィン12とを組み付けて、固着することが出来るため、フィン12の表面に形成されている親水性塗膜や撥水性塗膜の機能を良好に保った状態としたフィン・アンド・チューブ型熱交換器10を、有利に製造することが可能となるのである。
【0046】
また、かかる製造方法にあっては、その表面に予め親水性塗料や撥水性塗料が塗布されたフィンを用いているので、フィンに形成される塗膜を高品質化することが出来る。さらに、フィンと伝熱管とを組み付けてからフィン表面に親水性塗料や撥水性塗料の塗膜を形成する必要がないため、熱交換器の製造コストを有利に低減することが出来ると共に、フィン間隔を有利に小さくすることが可能となり、その結果、熱交換器の小型化や、熱交換性能の向上を図ることが出来るといった効果も、発揮されることとなる。
【0047】
以上、本発明の代表的な実施形態の一つとその製作方法について詳述してきたが、それらは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0048】
例えば、伝熱管14の外面に塗布された塗膜層22を形成する接着性樹脂には、潤滑剤、チクソ性付与剤、酸化防止剤、保存安定剤、帯電防止剤等を配合してもよい。また、かかる塗膜層22を与える接着性塗膜は、フィン12の表面に塗布された親水性塗膜に残存する水酸基等の活性な官能基との結合をするものであってもよい。このような接着性塗膜とすることによって、フィン12表面の塗膜との結合を高めることが出来、フィン12と伝熱管14との間の接触熱抵抗を効果的に低減することが可能となる。
【0049】
さらに、かかる塗膜層22を形成する接着性樹脂には、流動性を損なわない程度の、熱伝導性の良好な、粒子状の無機材料を含有せしめることも可能である。これは、接着成分を含有する樹脂は、通常、熱伝導性が良好ではないため、フィンと伝熱管との空隙を接着成分を含有する樹脂で充填することは、空隙に空気が存在している場合よりも熱伝導性は良好にはなるものの、充分な熱伝導性を発揮するものではないのである。そこで、接着性樹脂に熱伝導性の良好な物質を混入させることによって、より熱伝導性を向上させることが可能となるのである。なお、このように接着性樹脂に混入される無機材料としては、例えば、微細なニッケル、シリカ(SiO2 )、アルミナ(Al23)、カーボン等の粉末などを挙げることが出来る。但し、あまり多くの無機材料を混入させると、接着性樹脂を加熱した際に、溶融した接着性樹脂が充分に流動しなくなってしまい、フィンと伝熱管との間に生じている空隙になじませる(充満させる)ことが不十分となる。また、金属材料を用いる場合には、その自然電位がフィンよりも貴であることが望ましく、この場合には、接着部の優先腐食を防止することが出来る。
【0050】
また、接着性樹脂には、硬化剤を配合してもよい。ここで配合される硬化剤としては、特に制限されるものではなく、ブロックイソシアネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂等の1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。例えば、反応温度の異なる2種以上の硬化剤を配合することにより、加熱時の硬化速度を調整することが出来、重力による接着剤層の垂れを防止することが可能となる。また、そのような硬化剤は、膜剤にゼラチンやアラビアゴム、ウレタン樹脂等を用いた、粒径1〜1000μmのマイクロカプセルに含有した状態で配合することも可能である。このように配合された場合には、圧力のかかる接合箇所以外での樹脂の硬化が抑制され、接着後の熱交換器の曲げ加工を容易に行うことが可能となる。更に、アクリル酸系ジエステルとN、N−ジメチルアニリン等を組み合わせた嫌気性硬化剤を配合することも出来、この場合にも、組み立て時に密着して酸素が遮断された部分のみを硬化することも出来るため、接着後の熱交換器の曲げ加工を容易に行うことが可能となる。更にまた、湿度硬化剤を配合することも出来、この場合には、熱交換器を組み立てた後の水没気密試験時や蒸発運転時に、更に強度を高めることが可能となるのである。
【0051】
更にまた、かかる接着性樹脂に、PTFEやポリエチレン等の有機微粒子や、Sn−Bi系、Sn−Ag−Cu−Bi系等の融点が200℃以下の低融点金属微粒子の1種又は2種以上を配合してもよい。このような有機微粒子や金属微粒子を配合することによって、伝熱管14をフィン12の組付け孔16内に挿入する際の滑り性を向上させることが可能となり、熱交換器10の生産性を効果的に高めることが出来ることとなる。また、そのような低融点金属微粒子を配合した場合には、加熱の際に低融点金属が溶融し、一体化することによって、より接触熱抵抗の低減が可能となる。また、この場合に、接着性塗膜に低融点金属微粒子と共にグルタル酸、アジピン酸等のフラックス成分を同時に配合することによって、かかる加熱の際に、低融点金属粒子の酸化皮膜を除去することで、より一層の接触熱抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0052】
なお、接着性樹脂には、磁性を有するER流体を配合することも可能である。このようなER流体を配合することにより、加熱中に上方から磁力を与えることによって、加熱中に軟化した接着性塗膜が、重量によって下方向に垂れてしまうことを、効果的に防止乃至は抑制することが可能となる。
【0053】
さらに、伝熱管14の外面に塗布される塗膜層22は、前述の実施形態に示した1層の塗膜層に限るものではなく、2層以上の複数層とされてもよい。例えば、上塗りに融点が低く流動しやすい樹脂による塗膜層を形成すると共に、下塗りに金属材料との線膨張係数の差が小さい樹脂による塗膜層を形成することによって、加熱時の接着面積の確保と熱交換器使用時の密着性の維持とを、有利に両立することが出来ることとなる。
【0054】
なお、そのような接着性樹脂は、フィン12の外表面に塗布することも可能である。このように、伝熱管14の外表面とフィン12の外表面の両方に接着性樹脂を塗布することによって、より精度良く、伝熱管14とフィン12の間隙を接着性樹脂にて埋めることが可能となる。
【0055】
また、フィン12の表面に形成される塗膜は、前述の実施形態のように、1層の親水性樹脂あるいは撥水性樹脂の塗膜(塗膜層18)にて形成されることも可能であるが、フィン基板の表面に複数層の塗膜を形成して、それら複数層の塗膜のうちの最外層の塗膜を、親水性樹脂あるいは撥水性樹脂の塗膜としてもよい。例えば、そのように複数層の塗膜を形成する場合には、先ず、アルミニウム板の表面に、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等からなる耐食性を有する塗膜を形成して、更にその上に、親水性樹脂あるいは撥水性樹脂の塗膜を最外層として形成することが、好ましいのである。このような耐食性塗膜を形成することによって、アルミニウム材料からなるフィン12の耐食性を、有利に向上させることが出来ることとなる。
【0056】
さらに、フィン12の表面には、リン酸クロメート等によるクロメート処理等の化学皮膜処理(化成処理)によって得られる皮膜を下地処理層として形成することが好ましい。即ち、フィン12を形成するアルミニウム若しくはアルミニウム合金製のフィン基板の表面にこのような下地処理層が形成されていることによって、アルミニウム板(基板)と、その表面に形成される親水性樹脂塗膜や撥水性樹脂塗膜、耐食性塗膜との密着性を、効果的に向上させることが可能となる。
【0057】
なお、前述の実施形態においては、伝熱管14として、内面に溝等が設けられていない平滑管を用いていたが、図4に示される如く、その内面に多数の溝32が形成された、所謂内面溝付伝熱管30を採用することも勿論可能である。このような内面溝付伝熱管30を採用することによって、伝熱管14(30)の管内熱伝達率を有利に向上することが可能となり、以て、熱交換器10の熱交換性能を効果的に高めることが出来るのである。
【0058】
さらに、かかる伝熱管14としては、管軸に垂直な断面が円形形状を呈する丸管状の平滑管や、前述の内面溝付伝熱管を例示したが、それ以外にも、フィンに対して伝熱管を拡管法にて固着することが可能なものであれば、公知の各種の伝熱管が使用可能である。例えば、断面が扁平形状を呈する1つ穴の扁平管や、管軸方向に延びる複数の穴が形成された扁平多穴管等を採用することも可能である。
【0059】
加えて、かかる伝熱管14の外表面(伝熱管14の外面に形成された塗膜層22の外表面)に、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、潤滑油、ポリエチレングリコール等の潤滑層を成膜することも可能である。このような潤滑層を形成することによって、伝熱管をフィンの組付け孔内に挿入する際の滑り性を向上させることが出来、以て、熱交換器の生産性を向上させることが可能となる。
【0060】
また、上記の実施形態においては、1枚のフィン12に対して複数本の伝熱管14が貫通するようにして熱交換器が構成される、フィン・アンド・チューブ型熱交換器10とされていたが、図5に示される如く分割フィンタイプ、即ち、1枚のフィン42に対して1本の伝熱管44を貫通させたものを配列した形態の、所謂、サーペンタイン型熱交換器40としてもよい。このような形態の熱交換器40にあっても、本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管の、フィンと伝熱管との接触熱抵抗を効果的に低減せしめて、熱交換性能を向上させる効果が、有利に発揮されることとなる。
【0061】
その他、一々列挙はしないが、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施されるものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明の代表的な実施例の一つを示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
【0063】
先ず、本発明に従うフィン・アンド・チューブ型熱交換器を構成するために、伝熱管(14)として、アルミニウム合金(JIS A3003)を用いて押出加工することによって、図4に示される如き、断面が円形形状を呈する、外径:7.0mmの内面溝付伝熱管を準備した。なお、そのような内面溝付伝熱管は、底肉厚:0.47mm、フィン高さ:0.18mm、溝条数:54条、フィン頂角:20°、リード角:0°の寸法諸元を有しているものである。そして、アクリル樹脂系接着剤(コニシ製、KV610)に、溶剤として、トルエンを30〜40%、酢酸エチルを30〜40%配合したもの(塗料)を用意し、それをフェルトに含侵させて、室温下に、先に準備した伝熱管(14)の表面に接触せしめ、かかる伝熱管(14)の外周面に、膜厚:10μmの均一且つ密着性の良好な、接着性樹脂からなる塗膜を形成した。
【0064】
一方、フィン(12)を形成するためのアルミニウムフィン材料として、板厚:0.1mmの、純アルミニウム(JIS A1050)製板材を準備した。そして、このアルミニウムフィン材料の表面に対して、図6に示されるような、3層からなる表面処理を施した。即ち、先ず、アルミニウムフィン材料(50)に対してリン酸クロメート浸漬処理を施すことにより、アルミニウムフィン材料(50)の表面にリン酸クロメートよりなる化成皮膜(52)を形成した。次いで、かかる化成皮膜(52)の上に、ロールコーターを用いてエポキシ樹脂を塗布して、220℃の温度で10秒間加熱することにより、膜厚:1μmの耐食性塗膜(54)を形成した。更にその後、空冷し、そしてポリビニルアルコール樹脂よりなる親水性塗膜用の塗料を、耐食性塗膜(54)の表面に塗布し、220℃の温度で10秒間加熱することにより、膜厚:1.5μmの親水性塗膜(56)を形成して、親水性・耐食性アルミニウムフィン材料を得た。なお、ポリビニルアルコール樹脂よりなる親水性塗膜(56)は、170℃以上の温度にて熱分解が起こり、親水性塗膜としての性能低下を引き起こすものである。
【0065】
次いで、そのようにして得られた親水性・耐食性アルミニウムフィン材に、公知のプレス加工等を施すことにより、図2に示されるような、伝熱管(14)が挿通される組付け孔(16)が形成された、縦長さ:300mm、横長さ:25.4mmの矩形形状のフィン形状を呈する、フィン(12)を製作した。なお、このフィン(12)における組付け孔(16)部分には、孔の周りから所定の高さをもって立設するフィンカラー(20)が一体的に形成された。また、かかるカラー部(20)の内径は、7.2mmとなるようにされた。
【0066】
そして、上記のようにして得られた伝熱管(14)とフィン(12)とを用いて、図7に示されるような、伝熱管を2列14段に配置した、300mm×300mm×25.4mmのフィン・アンド・チューブ型熱交換器(10)を作製した。なお、それら伝熱管とフィンの固着方法としては、本発明に従って、フィン(12)における内径:7.2mmの組付け孔(16)に、外周面に接着性樹脂が塗布されてなる、外径7.0mmの伝熱管(14)を挿入して、拡管率6.0%及び2.6%にて機械拡管して、組み付けた後、オーブンに入れて、140℃で5分間保持し、接着成分を含有する樹脂を溶融させることにより、フィン(12)の組付け孔(16)内表面と伝熱管(14)の外表面との間に、かかる接着成分を含有する樹脂を充満させた。その後、室温まで冷却し、樹脂を固化させることにより伝熱管(14)をフィン(12)に固着させた。このようにして作製した熱交換器を、それぞれ、実施例1、実施例2とした。
【0067】
一方、フィンとしては、実施例1,2と同じものを用いるものの、伝熱管としては、実施例1,2とは異なり、その外面に接着性樹脂が塗布されていない内面溝付伝熱管を用いて、実施例1,2と同様にして、フィン・アンド・チューブ型熱交換器を作製した。ここで、拡管率:6.0%で機械拡管したものを比較例1とし、また拡管率:2.6%で機械拡管したものを比較例2とした。なお、それら実施例1,2及び比較例1,2の熱交換器の何れにおいても、フィン枚数:214枚、フィン間隔:1.4mmとし、また図8に示される伝熱管の間隔(P1,P2)に関しては、1つの列を構成する伝熱管の間隔:P1 は21mm、1列目の伝熱管と2列目の伝熱管の間隔:P2 は、12mmとなるようにした。
【0068】
そして、このようにして作製されたそれぞれの熱交換器について、フィン・アンド・チューブ型熱交換器として組付け完成後の状態において、フィンと伝熱管の接合状態を確認した。その結果、実施例1及び実施例2の熱交換器においては、何れも、接着性樹脂にて伝熱管とフィンが強固に固着されており、接合状態は良好であった。これに対して、比較例2の熱交換器にあっては、拡管率が2.6%と、低い拡管率の機械拡管によるものであるところから、伝熱管とフィンとが充分に固着されておらず、接合状態は良好ではなかった。
【0069】
また、それら作製された熱交換器における、フィンと伝熱管との間の接触熱抵抗の評価を、以下の方法にて行った。即ち、それぞれの熱交換器において、1列目には50℃の温水を流し、2列目には20℃の冷水を対向流となるように流して、温水及び冷水流量をそれぞれ変化させ、ウィルソン・プロット法により水側の熱抵抗を差し引いて、熱抵抗を算出して評価し、その結果を、下記表1に示した。なお、供試熱交換器は、真空容器内に設置し、供試部で発生する自然対流による熱伝達の影響を抑制して、評価を行った。また、かかる表1において、接触熱抵抗は、比較例1の熱交換器における接触熱抵抗を100としたときの接触熱抵抗比として、それぞれ示した。更に、単管性能や熱交換性能についても、比較例1における単管性能や熱交換性能を100としたときの性能比として、それぞれ併せ示した。
【0070】
【表1】

【0071】
かかる表1の結果より、本発明に従う接着性塗膜が形成されてなる実施例1の熱交換器における接触熱抵抗比は51となり、接触熱抵抗を非常に小さく出来ていることが判る。即ち、比較例1の熱交換器は、実施例1の熱交換器と同様に、機械拡管の拡管率が6.0%と大きく、伝熱管とフィンは、巨視的に見れば強固に接触しているように見えるのであるが、微視的に見れば伝熱管とフィンの間に間隙が存在し、接触熱抵抗は充分ではないのに対して、実施例1の熱交換器にあっては、接着性樹脂にて、伝熱管とフィンとの間の微視的な間隙が充満されることで、接触熱抵抗が小さくなっていることが、確認されるのである。
【0072】
また、実施例2の熱交換器における接触熱抵抗比は128である一方、比較例2の熱交換器における接触熱抵抗比は147となり、同じ拡管率の比較例2に対して、87%の接触熱抵抗となることが確認された。これは、どちらの熱交換器にあっても拡管率が2.6%と低く、伝熱管とフィンとの接触は良好ではないものの、実施例2の熱交換器にあっては、伝熱管とフィンの間隙を接着性樹脂が充満することで、接触熱抵抗が小さくなり、優れた特性を発揮することが、確認出来たのである。
【0073】
さらに、実施例1の熱交換器においては、組付け孔の内径:D2 =7.2mmに対して、拡管後の伝熱管の外径:D1 =7.0×1.06=7.42mmであることから、D1 −D2 =7.42−7.2=0.22mmとなる一方、実施例2の熱交換器においては、組付け孔の内径:D2 =7.2mmに対して、拡管後の伝熱管の外径:D1 =7.0×1.026=7.182mmとなることから、D1 −D2 =7.182−7.2=−0.018mmとなっている。このように、D1 −D2 ≧0.08mmの関係を満たしている実施例1の熱交換器の方が、接触熱抵抗の低減を、より効果的に達成出来ていることが確認されるのである。
【0074】
なお、実施例1の熱交換器にあっては、機械拡管の拡管率が6.0%と大きく、伝熱管の内面フィンの潰れが著しいため、実施例2の熱交換器に比べて、管内熱伝達性能が20%も低いものであったが、フィンと伝熱管との間の接触熱抵抗が低かったために、熱交換器全体の熱交換性能は、実施例2の熱交換器よりも、1%上回る結果となっている。
【0075】
次に、伝熱管(14)として、りん脱酸銅(JIS C1220)を用いて、公知の転造法にて、図4に示されるような、断面が円形形状を呈する、外径:7.0mmの内面溝付伝熱管を準備した。なお、そのような内面溝付伝熱管は、底肉厚:0.23mm、フィン高さ:0.18mm、溝条数:54条、フィン頂角:20°、リード角:27°の寸法諸元を有しているものである。そして、平均重合度:600、ケン化度:88%のポリビニルアルコールの20%水溶液とブロックイソシアネートの40%水溶液とを1:9の割合で混合したもの(塗料)を用意し、それをフェルトに含侵させ、室温下に、伝熱管(14)の表面に接触させることによって、塗布した後、100℃で15分間保持して、かかる伝熱管(14)の外周面に、膜厚:10μmの、均一で且つ密着性の良好な、接着性樹脂からなる塗膜を形成した。なお、上記塗料は、その反応温度が140℃であり、そしてそれより低い120℃で、軟化するものである。
【0076】
一方、フィン(12)を形成するためのアルミニウムフィン材料として、板厚:0.1mmの、純アルミニウム(JIS A1050)製の板材を準備した。そして、このアルミニウムフィン材料の表面に対して、図6に示されるような、3層からなる表面処理を施した。即ち、先ず、アルミニウムフィン材料(50)に対してリン酸クロメート浸漬処理を施すことにより、アルミニウムフィン材料(50)の表面にリン酸クロメートよりなる化成皮膜(52)を形成した。次いで、かかる化成皮膜(52)の上に、ロールコーターを用いてエポキシ樹脂を塗布して、220℃の温度で10秒間加熱することにより、膜厚:1μmの耐食性塗膜(54)を形成した。更にその後、空冷し、そしてポリビニルアルコール樹脂よりなる親水性塗膜用の塗料を、耐食性塗膜(54)の表面に塗布し、220℃の温度で10秒間加熱することにより、膜厚:1.5μmの親水性塗膜(56)を形成して、親水性・耐食性アルミニウムフィン材料を得た。なお、ポリビニルアルコール樹脂よりなる親水性塗膜(56)は、170℃以上の温度にて熱分解が起こり、親水性塗膜としての性能低下を引き起こすものである。
【0077】
次いで、そのようにして得られた親水性・耐食性アルミニウムフィン材に、公知のプレス加工等を施すことによって、図2に示されるような、伝熱管(14)が挿通される組付け孔(16)が形成された、縦長さ:300mm、横長さ:25.4mmの矩形形状のフィン形状を呈する、フィン(12)を製作した。なお、このフィン(12)における組付け孔(16)部分には、孔の周りから所定の高さをもって立設するフィンカラー(20)が一体的に形成された。また、かかるカラー部(20)の内径は、7.2mmとなるようにされた。
【0078】
そして、上記のようにして得られた伝熱管(14)とフィン(12)とを用いて、図7に示されるような、伝熱管を2列14段に配置した、300mm×300mm×25.4mmのフィン・アンド・チューブ型熱交換器(10)を作製した。なお、それら伝熱管とフィンの固着方法としては、本発明に従って、フィン(12)における内径:7.2mmの組付け孔(16)に、外周面に接着性樹脂が塗布されてなる、外径7.0mmの伝熱管(14)を挿入して、拡管率6.0%にて機械拡管して、組み付けた後、かかる組付け体をオーブン内に入れて、150℃で15分間保持し、伝熱管(14)の外面に塗布された接着性樹脂からなる塗膜を溶融させることにより、かかる接着性樹脂を、フィン(12)の組付け孔(16)の内表面と伝熱管(14)の外表面との間に生じていた隙間に充満させると共に、かかる接着性樹脂を反応・硬化させて、伝熱管(14)をフィン(12)に固着させた。このようにして作製した熱交換器を、実施例3ととした。
【0079】
一方、フィンとしては、実施例3と同じものを用いるものの、伝熱管としては、実施例3とは異なり、その外面に接着性樹脂が塗布されていない内面溝付伝熱管を用いて、実施例3と同様にして、フィン・アンド・チューブ型熱交換器を作製し、これを比較例3とした。ここで、機械拡管の拡管率は、実施例3と同様に6.0%とした、なお、それら実施例3及び比較例3の何れの熱交換器においても、フィン枚数:214枚、フィン間隔:1.4mmとし、また図8に示される伝熱管の間隔(P1,P2)に関しては、1つの列を構成する伝熱管の間隔:P1 は21mm、1列目の伝熱管と2列目の伝熱管の間隔:P2 は、12mmとなるようにした。
【0080】
そして、このように作製されたそれぞれの熱交換器について、フィン・アンド・チューブ型熱交換器として組付け完成後の状態において、フィンと伝熱管の接合状態を確認した。その結果、実施例3及び比較例3の熱交換器の何れも、接合状態は良好であった。特に、実施例3の熱交換器は、拡管率:6.0%という高い拡管率の機械拡管にて伝熱管とフィンが固着された上、伝熱管とフィン間は接着剤が介在しているため、接合状態は強固なものであった。
【0081】
また、そのように製作された実施例3及び比較例3の熱交換器においても、実施例1,2の熱交換器と同様な方法にて、フィンと伝熱管との間の接触熱抵抗の評価を行った。その結果、比較例3の接触熱抵抗を100としたとき、実施例3の接触熱抵抗比は50となった。これより、接着性樹脂にて伝熱管とフィンの間隙が充満されることで、接触熱抵抗が小さくなり、熱交換性能が向上せしめられ得ることが、確認された。
【符号の説明】
【0082】
10 熱交換器
12 フィン
14 伝熱管
16 組付け孔
18 塗膜層
20 カラー部
22 塗膜層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に挿通されて、拡管によって組み付けられる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管にして、
その外表面に、100℃〜200℃への加熱によって軟化若しくは溶融する接着性樹脂からなる接着性塗膜が形成されてなり、該接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該フィンに対して固着せしめられ得るように構成したことを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管。
【請求項2】
アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に挿通されて、拡管によって組み付けられる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管にして、
その外表面に、100℃〜200℃の融点を有するホットメルト型接着性樹脂からなる接着性塗膜が形成されてなり、該接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該フィンに対して固着せしめられ得るように構成したことを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管。
【請求項3】
アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に挿通されて、拡管によって組み付けられる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管にして、
その外表面に、100℃〜200℃の反応温度を有する熱反応型接着性樹脂からなる接着性塗膜が形成されてなり、該接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該フィンに対して固着せしめられ得るように構成したことを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器用伝熱管。
【請求項4】
アルミニウム若しくはその合金からなるフィンに設けられた組付け孔に、伝熱管を挿通せしめて、拡管によって組み付けてなるフィン・アンド・チューブ型熱交換器にして、
前記伝熱管として、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の伝熱管を用い、かかる伝熱管の外表面に形成された接着性塗膜によって、前記フィンの組付け孔内面との間の間隙を埋めつつ、該伝熱管が該フィンに対して固着せしめられていることを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器。
【請求項5】
伝熱管の外表面に、100℃〜200℃への加熱によって軟化若しくは溶融する接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂が軟化若しくは溶融する温度未満の温度に保持して、該接着性樹脂を乾燥、固化させた伝熱管を準備する工程と、
親水性塗料若しくは撥水性塗料を表面に塗布してなるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンに設けられた組付け孔に、前記伝熱管を挿通させた後、前記伝熱管を拡管して、組付け体を作製する工程と、
該組付け体を、前記接着性樹脂が軟化若しくは溶融する温度以上200℃以下の温度に保持して、該接着性樹脂を軟化若しくは溶融せしめ、前記フィンの組付け孔内表面と伝熱管外表面との間に該接着性樹脂を充満させる工程と、
かかる接着性樹脂の充満させられた組付け体を冷却して、室温以上、該接着性樹脂が軟化若しくは溶融する温度以下の温度に保持し、かかる接着性樹脂を固化させることにより、一体化したフィン・アンド・チューブ型熱交換器を完成する工程と、
を有することを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法。
【請求項6】
伝熱管の外表面に、100℃以上200℃以下の融点を有するホットメルト型接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂の融点未満の温度に保持して、該接着性樹脂を乾燥、固化させた伝熱管を準備する工程と、
親水性塗料若しくは撥水性塗料を表面に塗布してなるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンに設けられた組付け孔に、前記伝熱管を挿通させた後、前記伝熱管を拡管して、組付け体を作製する工程と、
該組付け体を、前記接着性樹脂の融点以上200℃以下の温度に保持して、該接着性樹脂を溶融せしめ、前記フィンの組付け孔内表面と伝熱管外表面との間に該接着性樹脂を充満させる工程と、
かかる接着性樹脂の充満させられた組付け体を冷却して、室温以上、該接着性樹脂の融点以下の温度に保持し、かかる接着性樹脂を固化させることにより、一体化したフィン・アンド・チューブ型熱交換器を完成する工程と、
を有することを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法。
【請求項7】
伝熱管の外表面に、反応温度が100℃以上200℃以下の熱反応型接着性樹脂を塗布した後、かかる接着性樹脂の反応温度未満の温度に保持して、該接着性樹脂を乾燥させることにより、接着性塗膜が形成されてなる伝熱管を準備する工程と、
親水性塗料若しくは撥水性塗料を表面に塗布してなるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンに設けられた組付け孔に、前記伝熱管を挿通させた後、前記伝熱管を拡管して、組付け体を作製する工程と、
該組付け体を、前記接着性塗膜を構成する接着性樹脂の反応温度以上200℃以下の温度に保持して、該接着性樹脂を軟化させて、前記フィンの組付け孔内表面と伝熱管外表面との間に充満させると共に、該接着性樹脂を反応、硬化せしめて、一体化したフィン・アンド・チューブ型熱交換器を完成する工程と、
を有することを特徴とするフィン・アンド・チューブ型熱交換器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52747(P2012−52747A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196438(P2010−196438)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)