説明

フイルダムにおける湧水処理方法

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明はフイルダムの施工において、土質材料の盛り立て時の湧水処理方法に係るものである。
【従来の技術】従来、石塊等を積み上げて堤体を構築するフイルダムにおいて、同フイルダムの中間壁、あるいは内部遮水壁に水密性を確保するため、土質材料の盛り立てを行ない遮水壁を構築している。前記フイルダムを構築する堤体に接する両岸aの浸透層a′から浸出してくる多量の湧水を処理する場合、図4に示す如く湧水個所の長手方向に溝bを掘削して同溝bに砂利または砕石cを敷き詰め、土質材料dが流れないようにし、その上にヒユーム管eまたはコンクリートパイプを立設し、その周囲を土質材料eで締め固め、湧水を管内に集めるようにしている。更に、前記ヒユーム管e内に、後からセメントミルクをグラウトするためグラウト用有孔管fを挿入するとともに、土質材料gを盛り立て、同土質材料gの盛り立て高さと水位のバランスをみながら順次前記ヒユーム管eを継接し、所定の高さに達するとグラウトの空気抜き用管hを挿入して、ヒユーム管eの上部にコンクリート蓋iを施してグラウト材を注入して、前記溝b内の砂利、砕石の間隙を閉塞し、盛り立てた土質材料の安定を図っていた。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記従来の湧水処理方法においては、前記溝に水平管が敷設されてないので砕石が目詰りを生じ、その先端部までセメントミルクが注入されないので、水平ドレーンを完全に閉塞できず、土質材料の盛り立て後、同材料が不安定になり、フイルダムとしての遮水壁が軟弱になるという問題点があった。本発明は前記従来技術の有する問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とする処は、中間部の目詰りがなく、水平ドレーンと垂直ドレーンに確実にグラウトを施すことができ、集水部を確実に閉塞することができるフイルダムにおける湧水処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するため、本発明に係るフイルダムにおける湧水処理方法によれば、湧水個所の長手方向に掘削した溝に砕石、砂利を敷詰めた水平ドレーンと、前記溝上に垂直管を立設して砕石、砂利を填装した垂直ドレーンとに亘って連続して有孔管を敷設し、同有孔管を垂直ドレーンより上方に突出せしめるとともに、同垂直ドレーンの中間部に空気抜き管を埋設して同管の先端を垂直ドレーンより上方に突出せしめ、同垂直ドレーンの上端を閉塞して、前記有孔管における垂直ドレーン突出端部より水平ドレーン内に延びる水平有孔管部の先端まで可撓性グラウト注入管を貫挿し、前記水平ドレーンをその先端からグラウト材を注入しながら引き抜き前記垂直ドレーンに至る集水部を閉塞するものである。
【作用】本発明は前記したように、湧水個所の長手方向に設けた溝に砕石、砂利を敷き詰めた水平ドレーンと、前記溝上に立設した垂直管に砕石、砂利を填装した垂直ドレーンとに亘って連続して敷設した有孔管内に、地上部から貫入した可撓性グラウト注入管を貫挿してその先端からグラウト材を注入しながら、前記垂直ドレーンに至る集水部に引き抜き、かくして前記水平ドレーンと垂直ドレーンに亘って有孔管からグラウト材を注入する。この際、前記垂直ドレーンの頂部が閉塞され、且つ空気抜き管からグラウト材中のエヤーを排除することによって、中間部に目詰りを生じることなく、前記水平、垂直両ドレーンに密実にグラウトすることができ、集水部を閉塞するものである。
【実施例】以下本発明を図示の実施例について説明すると、フイルダムを構築する堤体に接する両岸1からの湧水個所の長手方向に沿って溝2を掘削して、同溝2に砂利または砕石3を敷き詰めて水平ドレーンAを構築し、前記溝2上にヒユーム管4の如き垂直管を立設し、同管4内に砂利または砕石5を填装して垂直ドレーンBを構築する。更に前記水平ドレーンAと垂直ドレーンBの集水桝に連通する有孔管6を敷設し、同管6の先端を垂直ドレーンBより上方に突出せしめ、垂直ドレーンBの中間より空気抜き管7を埋設して、同管7の先端を垂直ドレーンBの上方に突出せしめるとともに、前記ヒユーム管4の上部をコンクリート蓋8で閉塞する。一方、前記ヒユーム管4の下部外周に土質材料9を配設し、同材料9上部の盛土10によって締め固め、湧水をヒユーム管5内に集水せしめるようにする。而して盛土が完了すると前記有孔管6における垂直ドレーンBからの突出部より可撓性グラウト注入管11を挿入し、同管9を前記有孔管6の水平ドレーンA内に延びる水平有孔管部6aの先端まで貫入せしめ、水平ドレーンAの先端からセメントミルク等のグラウト材を注入しながら前記有孔管6の上端まで引き抜く。この際、前記垂直ドレーンBの頂部がコンクリート蓋8で閉塞され、空気抜き管7によってグラウト材中の空気が抜き出されることによって前記水平、垂直両ドレーンA、B間に亘る集水部が中間に目詰りが生じることなく完全に閉塞され、盛り立てによる土質材料の水密性が向上される。
【発明の効果】このように本発明によれば前記水平ドレーン及び垂直ドレーンに亘って敷設された有孔管から、同管内に挿入されたグラウト注入管を介してグラウト材が圧入されるとともに、前記垂直ドレーンの頂部が閉塞され、空気抜き管よりグラウト材中の空気が引き抜かれることによって、中間に目詰りがなく水平、垂直両ドレーンに亘ってグラウトが密実に施され、集水部が確実に閉塞され、湧水個所からの湧水を処理して、盛り立てによる土質材料の水密性を向上させ、フイルダムの性能を確保する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフイルダムにおける湧水処理方法の一実施例の実施状況を示す縦断面図である。
【図2】図1における垂直及び水平ドレーン部の拡大縦断側面図である。
【図3】図2の矢視イ−イ図である。
【図4】従来工法の実施状況を示す縦断面図である。
【符号の説明】
A 水平ドレーン
B 垂直ドレーン
2 溝
3 砂利または砕石
4 ヒユーム管
5 砂利または砕石
6 有孔管
6a 水平有孔管部
7 空気抜き管
8 コンクリート蓋
9 土質材料
10 盛土
11 グラウト注入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 湧水個所の長手方向に掘削した溝に砕石、砂利を敷詰めた水平ドレーンと、前記溝上に垂直管を立設して砕石、砂利を填装した垂直ドレーンとに亘って連続して有孔管を敷設し、同有孔管を垂直ドレーンより上方に突出せしめるとともに、同垂直ドレーンの中間部に空気抜き管を埋設して同管の先端を垂直ドレーンより上方に突出せしめ、同垂直ドレーンの上端を閉塞して、前記有孔管における垂直ドレーン突出端部より水平ドレーン内に延びる水平有孔管部の先端まで可撓性グラウト注入管を貫挿し、前記水平ドレーンをその先端からグラウト材を注入しながら引き抜き前記垂直ドレーンに至る集水部を閉塞することを特徴とするフイルダムにおける湧水処理方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【特許番号】第2536794号
【登録日】平成8年(1996)7月8日
【発行日】平成8年(1996)9月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−17342
【出願日】平成3年(1991)2月8日
【公開番号】特開平4−258406
【公開日】平成4年(1992)9月14日
【出願人】(000112668)株式会社フジタ (20)
【参考文献】
【文献】実開昭63−156222(JP,U)