説明

フェキソフェナジンの調製方法

4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸アルキルエステルを、炭化水素、好ましくはn−ヘプタン中に懸濁させることにより精製することを包含する、フェキソフェナジンを調製するための方法について記載する。このようにして得られた化合物を、適した溶媒に溶解し、アザシクラノールと縮合させ、以下の式(I)


(Rは、アルキルラジカルである。)の化合物を生成し、次にこの化合物を加水分解及び還元してフェキソフェナジンを得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
先行技術
式IIの中間体中の、以下の式V
【0002】
【化1】

の異性体の存在は、フェキソフェナジンの合成において常に最も重要な要素の1つであった。
【0003】
特許文献において、式II及びVの異性体を分離するための様々な方法が公開されており、これらの方法は、例えばUS6548675において記載されているように、これらの異性体を式VI及び式VIIの生成物に変換することを提供する。
【0004】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6548675号
【特許文献2】米国特許第4254129号
【発明の概要】
【0006】
フェキソフェナジンの調製方法
本発明の目的は、4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸メチルエステルの精製を包含するフェキソフェナジンの調製方法であり、より詳細には、本発明は、以下の式
【0007】
【化3】

のフェキソフェナジンを、同じく以下の式
【0008】
【化4】

(Rはアルキルであり、好ましくはC−Cであり、より好ましくはメチルである。)
の4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸アルキルエステルから調製するための方法に関する。
【0009】
本発明の方法は、式IIの化合物を炭化水素中に懸濁させることによる、この化合物の精製を包含している。
【0010】
この方法において、式IIの化合物は、炭化水素中に低温にて懸濁され、固化後に濾過される。このようにして得られた化合物を適した溶媒に溶解し、以下の式
【0011】
【化5】

のアザシクラノールと縮合させ、以下の
【0012】
【化6】

化合物が得られ、次にこの化合物を加水分解及び還元して、フェキソフェナジンが得られる。
【0013】
結晶化によるこれら2つの生成物の分離、及び、このようにして得られた式VIの生成物の式IIの生成物への実質的に純粋な形態への再変換。
【0014】
発明の説明
フェキソフェナジンの合成法の開発中、発明者らは、驚くべきことに、式IIの化合物は、式Vの化合物から及び他の不純物から、精製対象である混合物を無極性有機溶媒中に懸濁させることにより精製し得ることを発見した。このような溶媒は、好ましくは、例えば直鎖及び/又は分岐鎖である式C2n+2(nは5〜12である。)の化合物又は複数の式C2n+2の化合物の混合物等の、アルキル系の炭化水素であり、最も好ましい炭化水素はn−ヘプタンである。
【0015】
これら2つの異性体II及びVの混合物(室温では濃密な油)は上記の炭化水素溶媒が入った反応装置内に滴下により添加され、混合物は低温における攪拌下に置かれる。
【0016】
更に詳細に、このような炭化水素溶媒は、通常は、精製対象である混合物に対して2〜50倍の体積の量にて用いられる。このようにして得られた混合物を、次に、−80℃〜10℃の範囲の温度にて1〜12時間に亘って攪拌し続ける。
【0017】
式IIの化合物は、固形物として得られ、不純物、特に異性体Vは溶媒中に溶解されたままである。懸濁液は、低温濾過され、式IIの生成物を固形物として回収し、固形物のまま(約4℃の好ましい温度にて)保存する又は溶媒に溶解させアザシクラノールとの縮合反応に直接用いることができる。
【0018】
この反応は、当分野において既知であり、例えば、参照により本願に組み込まれるUS4254129に記載されている。好ましくは、この反応は、通常、無極性有機溶媒、好ましくはケトン系の無極性有機溶媒、より好ましくはメチルイソブチルケトン(MIBK)中において行われる。温度は、好ましくは40℃〜反応混合物の還流温度であり、反応は約8〜24時間に亘って行われる。
【0019】
次に、縮合生成物は、加水分解及び還元されてフェキソフェナジンとなる。
【0020】
以下の実施例は例示に過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0021】
(実施例)
【実施例1】
【0022】
100gの4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸メチルエステル(HPCL純度90%、メタ異性体含有量6.5%)を、2リットルのヘプタンが入ったフラスコに、−20℃にて攪拌しながら滴下により加える。懸濁液が得られ、この懸濁液を−20℃にて濾過する。65gの精製物(HPLC純度98.9%、メタ異性体含有量0.6%。4℃にて固形物として保存される)が得られる。
【実施例2】
【0023】
100gの4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸メチルエステル(HPCL純度90%、メタ異性体含有量6.5%)を、2リットルのヘキサンが入ったフラスコに、−30℃にて攪拌しながら滴下により加える。懸濁液が得られ、この懸濁液を−30℃にて濾過する。66gの精製物(HPLC純度98.6%、メタ異性体含有量0.8%。4℃にて固形物として保存される)が得られる。
【実施例3】
【0024】
100gの4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸メチルエステル(HPCL純度90%、メタ異性体含有量6.5%)を、2リットルのイソオクタンが入ったフラスコに、−50℃にて攪拌しながら滴下により加える。懸濁液が得られ、この懸濁液を−50℃にて濾過する。68gの精製物(HPLC純度98.9%、メタ異性体含有量0.5%。4℃にて固形物として保存される)が得られる。
【実施例4】
【0025】
1リットルの4つ口フラスコに、実施例1において得られた50gの精製された4−[4−クロロ−1−オキソブチル]−2,2−ジメチルフェニル酢酸メチルエステル、38gのアザシクラノール、18gの重炭酸ナトリウム、250mlのMIBK及び50mlの水を投入する。この混合物を、約24時間に亘って、還流下にて加熱する及び攪拌し続ける。反応が終了したら、混合物を冷却し、200mlの水を添加し、相を分離する。
【0026】
有機相は、真空下にて、50mlにまで濃縮される。白色の沈殿物が得られ、この沈殿物は、濾過される及び真空下にて乾燥させられる。63gの4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸メチルエステルが得られる。
【実施例5】
【0027】
機械的攪拌装置を備えた4つ口フラスコに、実施例2に従って得られた100gの4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸メチルエステル、600mlのメタノール及び60mlの30%水酸化ナトリウムを投入する。この混合物を、約5時間に亘って、還流下にて加熱する及び攪拌し続ける。エステルが完全に加水分解されたら、炭素に担持させた10gの5%パラジウムを反応装置に投入し、ベンジルケトンがアルコールに完全に転化されるまで50℃及び圧力6バールにて水素化を行う。反応が完了したら、触媒を濾過し、酢酸でpHを5〜8に調節することによりフェキソフェナジンを沈殿させる。得られた固形物は濾過される及び真空下で65℃にて乾燥させられる。
【0028】
85gの粗フェキソフェナジンが、平均してHPLC純度>99%、メタ異性体<0.2%にて得られる。
【実施例6】
【0029】
機械的攪拌装置を備えた4つ口フラスコに、実施例2に従って得られた100gの4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸メチルエステル、600mlのメタノール及び130mlの30%水酸化ナトリウムを投入する。この混合物を、約2時間に亘って、還流下にて加熱する及び攪拌し続ける。エステルが完全に加水分解されたら、溶液を冷却し、7gの水素化ホウ素ナトリウムを添加する。反応溶液を50℃にて再加熱し、ベンジルケトンからアルコールに完全に転化されるまでこの温度に維持する。反応が完了したら、10mlのアセトンを添加し、溶液を30分間に亘って攪拌し、溶液を冷却し、酢酸を用いてpHを5〜8に調節することによりフェキソフェナジンを沈殿させる。得られた固形物は、濾過される及び真空下で65℃にて乾燥させられる。
【0030】
85gの粗フェキソフェナジンが、平均してHPLC純度>90%、メタ異性体<0.2%にて得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化7】

の化合物を式
【化8】

(Rは、アルキルである。)
の対応する異性体から分離するための方法であり、
これら2つの異性体II及びVの混合物は、アルキル炭化水素に添加され、その結果、式IIの異性体が沈殿する
前記方法。
【請求項2】
RがC−Cアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rがメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキル炭化水素が、直鎖及び/又は分岐鎖である式C2n+2の化合物又は複数の式C2n+2の化合物の混合物(nは5から12である。)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキル炭化水素がn−ヘプタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記2つの異性体II及びVの混合物が、前記アルキル炭化水素に滴下により添加され、このようにして得られた混合物は攪拌下に置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
このようにして得られた前記混合物が1から12時間に亘って攪拌し続けられる、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
このようにして得られた前記混合物が−80から10℃の範囲の温度にて攪拌し続けられる、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキル炭化水素が前記異性体II及びVの混合物に対して2から50倍の体積の量にて用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7の方法により式Vの異性体から分離された式IIの化合物がアザシクラノールと縮合される、フェキソフェナジンを調製するための方法。
【請求項9】
前記縮合が、無極性有機溶媒、好ましくはケトン系の無極性有機溶媒、より好ましくはメチルイソブチルケトン中において行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記縮合が、40℃から反応混合物の還流温度の温度にて行われる、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544692(P2009−544692A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521423(P2009−521423)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000526
【国際公開番号】WO2008/012859
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(507201050)アルキミカ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (5)
【氏名又は名称原語表記】ARCHIMICA S.R.L.
【Fターム(参考)】