フェロアロイの製造
電気アーク炉でのフェロアロイの製造方法が開示される。この方法は、非凝集化炭素含有ポリマーを炉に投入し、その結果、ポリマーがスラグ発泡剤として機能を発揮する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
新規の添加剤を用いて電気アーク炉(EAF)でフェロアロイ(例えばスチールなど)を製造する方法が開示される。その主要な機能において、新規の添加剤は、スラグ発泡剤、還元剤として機能する。しかし、本添加剤は、付加的に燃料及び/又は加炭・復炭剤(recarburiser)として機能し得る。
【背景技術】
【0002】
背景技術
過去50年間においてプラスチック産業は多大な成長を遂げた結果、今やプラスチック材料及び製品は社会に必須のものとなっている。日本などの国におけるプラスチック製造は、年間およそ1500万トンに達し、その結果年間約900万トンの関連廃棄物が生じ、その内50%は、民生用固形廃棄物に関連する。
【0003】
プラスチック処理の問題は増大しており、国際的にプラスチック再利用が材料回収に占める割合は小さく、残りは埋め立て又は焼却炉での焼却のいずれかによって処理されている。プラスチック材料は容易に分解せず、埋立地に有毒元素を浸出させ得る一方で、従来の焼却ではしばしばダイオキシンなどの有害な排出物を生成する。
【0004】
世界的に見て、鉄鋼産業は、エネルギー及び資源利用の効率を改善することによって環境に対する影響力を最小限にまで減らすという圧力に直面している。例えば、高炉の炭素強度を減少させるために特別な努力がなされてきた。高炉のエネルギー管理の一つの戦略には、燃料、即ちコークスの消費の減少が含まれる。代替燃料として、高炉の羽口にプラスチックを注入することによってCO2排出を減少させることが提案されている。これは、プラスチックの有する燃焼エネルギーが、通常注入される微粉炭と少なくとも同程度に高く、また炭素に対する水素の割合がより高いために、燃焼生成物として生じるCO2がより少なくなるためである。
【0005】
電気アーク炉(EAF)を含む他の型式の製鋼炉へのプラスチック添加が公知である。例えばUS5,554,207は、EAF廃棄物粉塵を廃プラスチックと組合せて固体を形成し、次いでそれをEAFに加えるプロセスを開示している。同様にJP2004−052002は、廃プラスチックをスチール粉塵と一緒に混錬して柔軟な固体をとし、これをEAFに加えるプロセスを開示している。いずれの文献も、添加剤を加えてスラグ発泡を促進させることには関係していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
第一の局面においては、電気アーク炉でのフェロアロイの製造方法において、非塊状化炭素含有ポリマーを炉内に投入し、その結果該ポリマーがスラグ起泡剤としての機能を発揮する工程が提供される。
【0007】
「非塊状化炭素含有ポリマー」なる用語は、微粒化と粗粒化ポリマー及び粒状ポリマーの双方を包含するものであり、EAF廃物粉塵又はスチール粉塵とともに形成されるようなポリマーは除外するものと意図される。かかる塊状固体は、スラグ発泡剤として機能しないであろう。
【0008】
電気アーク炉においては、非塊状化炭素含有ポリマーを使用してスラグ発泡を惹起させ得ることが、以前に考慮・意図されたことはなかった。電気アーク炉内でスラグ発泡が増大することは、溶融金属をより良好にその全面を覆い、熱を良く保持・抑制する(即ち、断熱する)ため、EAFにおける電気消費量が大幅に減少する。
【0009】
非塊状化炭素含有ポリマーは、フェロアロイの製造方法において還元剤、燃料及び/又は加炭剤・復炭剤として付加的な機能を発揮し得る可能性がある。即ち、かかるポリマーは、炉供給材に存在し・含まれる及び/又は金属加工の際に生じる金属酸化物を還元させ;及び/又は燃料の供給源として機能し;並びに/又は加炭剤・復炭剤として作用して、製造される最終フェロアロイにおいて鉄とともに存在する炭素の量を増加させることが出来る。例えば、電気アーク炉において主要な燃料源は、これまで電気であった。
【0010】
廃プラスチックはかくして、(電気の使用量を少なくすることによって)エネルギー効率を高めることが出来、コークス及び石炭などの伝統的な炭素源の消費量(及びコスト)を減少させることが出来る。また廃プラスチックは、無煙炭及びグラファイトなどの高価な加炭・復炭剤を代替するか、又はその使用を減少させ得る。
【0011】
「フェロアロイ」なる用語が本明細書で用いられる場合、広範な鉄−炭素合金(スチールを含む)並びにその他の鉄−炭素及び/又は鉄系合金を包含するものと意図され、フェロクロム、フェロクロムシリコン、フェロマンガン、フェロシリコマンガン、フェロシリコン、マグネシウムフェロシリコン、フェロモリブデン、フェロニッケル、フェロチタン、フェロリン(ferrophosphorous)、フェロタングステン、フェロバナジウム、フェロジルコニウムなどが含まれる。
【0012】
典型的には、非塊状化炭素含有ポリマーは炉に投入されるが、少なくとも部分的に燃焼し且つ炭素質の残さを生成するように投入される。かかるポリマーは、燃料として機能する。炭素質の残さは次に、酸化されてスラグ発泡を惹起させ得る。残さは、更に還元剤又は加炭・復炭剤として機能し得る。即ち、典型的には炉に投入された非塊状化炭素含有ポリマーは、スラグ発泡前駆物質として機能するが、また加炭・復炭剤前駆物質又は還元剤前駆物質としても機能する可能性がある。
【0013】
非塊状化炭素含有ポリマーは、炉に投入される単独の添加剤を含んでもよいが、典型的な実施態様においては、非塊状化炭素含有ポリマーは、別の炭素供給源と共に炉に投入される。かかる他の炭素供給源は、燃焼して燃料として作用し得るのであり、またスラグ発泡に寄与し得るのであり、還元剤又は加炭・復炭剤として機能する可能性がある。かかる他の炭素供給源は、石炭、コークス、炭素木炭(carbon char)、木炭又はグラファイトであり得る。
【0014】
例えば、非塊状化炭素含有ポリマー及び他の炭素供給源はおよそ1:1の重量比で炉に投入してもよいが、かかる比率は、炉によって変動し得る。
【0015】
この方法の典型的な適応な方法においては、炭素含有ポリマーは、廃プラスチックである。廃プラスチックを炉に投入することは、処理しない場合環境上の問題を起こす廃プラスチックの処理の有効な手段を提供する。
【0016】
典型的には、炭素含有ポリマーは、C、H及び選択的にOなる原子のみを含む。ポリマー中に他の元素が存在すると(例、N、S、P、Si、ハロゲンなど)、これら他の元素は、フェロアロイ製造を妨げ、及び/又は汚染物質(contaminants)、汚染物(pollutants)、有害ガスなどを生成する恐れがある。即ち炭素含有ポリマーを適切に選択することによって、有害ガス及びその他の好ましくない、又は有害な生成物の生成を回避出来る。好適なプラスチックの一つは、ポリエチレンであるが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエンスチレン、ABSなどの他のプラスチック、及びベークライトなどの再加工困難なプラスチックなどが使用し得る。
【0017】
典型的には、非塊状化炭素含有ポリマーは、典型的に100um又はそれ以下の粒径のポリマー粒子の形で炉に投入される。
【0018】
製造される典型的なフェロアロイはスチールであるが、(前述のような)他のフェロアロイの製造には非塊状化炭素含有ポリマーの投入が用いられ得る。
【0019】
第二の局面においては、電気アーク炉でのフェロアロイの製造におけるスラグ発泡剤としての非塊状化炭素含有ポリマーの使用が提供される。
【0020】
典型的に、この非塊状化炭素含有ポリマーの使用は、第一の局面の方法によって達成されるフェロアロイの製造において行なわれる。
【0021】
第三の局面においては、電気アーク炉においてフェロアロイを製造する方法であって、下記工程から成る方法が提供される:
―炉にフェロアロイの供給原料を投入する工程;
―炉の中の供給原料を加熱して溶融状態にし、合金/供給原料の溶融表面上にスラグを形成する工程;及び
―スラグ発泡剤として機能する非塊状化炭素含有ポリマーを炉に投入する工程、である。
【0022】
典型的には、非塊状化炭素含有ポリマーは、炉内で燃焼して溶融合金/供給原料に熱エネルギーを放出・付与し且つスラグを発泡させる物質を生成させるために投入される。
【0023】
選択的に、かかる物質は、スラグの発泡に加えて以下の作用を持つ:即ち、
―スラグ中の各種金属酸化物の化学的還元を惹起してフェロアロイを製造すること;、
その結果得られた鉄及び炭素の合金を加炭・復炭すること、である。
【0024】
非塊状化炭素含有ポリマーは、付加的な薬剤とともに投入することが出来る。付加的な薬剤は、第一の局面において定義された他の炭素供給源であってもよい。
【0025】
非塊状化炭素含有ポリマーはまた、炉の供給原料と共に投入してもよい。例えば、(連続炉運転型式において)供給原料及び炭素含有ポリマーが投入される場合、炉が既に加熱されていてもよい。
【0026】
典型的には、第三の局面の方法は、それ以外では第一の局面において定義された通りである。
【0027】
本発明者らはまた、非塊状化炭素含有ポリマーが再加熱炉における燃料として一般的に用いられ得ることを以前から推測していた。
【0028】
従って第四の局面においては、再加熱炉を運転する方法において、燃料として作用させるために非塊状化炭素含有ポリマーを炉に投入する工程が提供される。
【0029】
典型的には、再加熱炉は、炭素含有ポリマーを燃焼させるために充分な温度、典型的には1000℃よりも高い温度で運転・動作する。
【0030】
更には非塊状化炭素含有ポリマーは、粒状として、任意には天然ガスなどの別の燃料と共に炉に投入してもよい。
【0031】
第五の局面においては、炭素含有供給原料を用いるフェロアロイ製造炉における炭素含有ポリマーの再利用可能性を決定するためのシステムが提供される。このシステムは、以下の工程から成る:
―所定のポリマーのスラグ発泡能力を反映するパラメータの数値を導出する工程;、
そのパラメータを一つ又はそれ以上の他のポリマーから導出された一つ又はそれ以上のパラメータ数値と比較する工程;
これらのパラメータ数値から一定の範囲又は尺度を開発する工程、である。
【0032】
このパラメータは、発泡スラグの高さ及び/又は発泡スラグの継続時間であり得る。
【0033】
「発明の要旨」において定義したフェロアロイの製造方法に包含される他の実施態様がいくつかあるが、次に本方法の具体的な実施態様を添付の図面を参照して実施例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
具体的な実施態様の詳細な説明
EAFスチール製造に関する広範な研究において、溶質炭素/固体炭素とスラグとの化学反応が、スラグ発泡のプロセスを惹起することが認められたのである。スラグ発泡は、スラグ中での炭素による鉄酸化物の還元の結果惹起されるCOガス生成によって、また炭素の酸化によって生起するものであった。スラグ発泡は、炭素供給材料の性質に強度に依存すること而も高温におけるかかる供給材料の特性がスラグ発泡現象を支配することが認められた。
【0035】
さらに認められたことであるが、発泡状スラグは、電気アークを遮蔽することに加え、金属浴をその全面で覆いかかくして熱を抑制し、その結果大幅なエネルギー節約(即ち電気消費量の減少)をもたらすものであった。一定レベルのスラグ発泡の持続が、効率的なEAFスチール製造にとって重要であることが認められたのである。
【0036】
驚くべき一つの開発・展開において、非塊状化炭素含有ポリマー(例えば、典型的には粒状形状の廃プラスチック)をEAFスチール製造に導入することが可能ではないかと仮定したのである。EAFスチール製造において用いられる高温では、廃プラスチックは、一旦炉の中に導入されると燃焼し(燃料として作用・機能する)、炭素質の残留・残さ生成物を生成するものと推測し、その後炭素含有ポリマーが他のフェロアロイの製造にも導入出来、この場合もやはり炭素質の残留生成物を生成するものと仮定した。
【0037】
かかる炭素質の残留生成物が次には、EAFスチール製造においてスラグ発泡を惹起させることが出来、しかも選択的に還元剤として機能する(例、他のフェロアロイの製造において)可能性があり、また選択的に加炭・復炭剤としても機能することが観察された。
【0038】
テスト実施に際して、当初のプラスチックの化学的組成、構造及び結合ネットワークが、炭素質残さの特性を決定することを仮定した。更には一定のプラスチックからの炭素溶解(carbon dissolution)の動力学は、炭素質残さが液状スチールに溶解する速度に依存することが認められた。その結果、(例、コークス中の炭素に比べて)プラスチック中において炭素が比較的高度に配列する結果、液状スチール中への炭素溶解が高められ得る旨仮定したのである。
【0039】
炭素質残さの構造的特性化は、滴下管炉に導入したプラスチック−グラファイト混合物を用いて行なった(EAFにおいて実際に実行され得る運転条件をシミュレーションして)ところ、炭素質残さがその後EAF内において液体スラグの発泡を惹起するに到ることが観察され且つこれらの炭素質残さが、溶融フェロアロイにおいて一定の還元能力有し及び/又は炭素溶解を増大させ得ることを確認したのである。構造的特性化の結果を、下記する実施例5に示す。
【0040】
他のフェロアロイの製造においては、種々の炭素質の還元材料が用いられていることが認められた。公知の還元性材料としては、コークス、石炭や木炭などの炭素類、及び異なる種類の木材から製造される木炭の形状であるバイオ炭素類が挙げられる。この場合でもやはり、これらの炭素質材料の材料特性及び反応が、還元性能を規定する上で重要な役割を果たすことが認められた。
【0041】
主要な実験上の考察の対象はやはり、特に還元体のガス化、溶融金属中への炭素の溶解、及び固体炭素によるスラグの直接還元に関する検討であった。
【0042】
スラグの形成はまた、スチール以外のフェロアロイの製造においても典型的であることが認められた。マンガン及びクロムは何れも、固体及び液体状態で還元されるものであった。スラグ中へのMnOの溶解とその後の固体炭素又は液体金属に溶解した炭素によるスラグからの還元が、MnO還元の主要な機構と看做された。同様に、Fe−Cr溶融物に溶解した炭素による液体スラグ中におけるクロム鉄鉱の還元が、フェロクロムの製造に重要であることが認められ、炭素と溶解鉱石(酸化クロム、酸化マンガン)を含有する液体スラグとの反応が、還元プロセスにおいて重要な役割を果たしていた。従って、廃プラスチックからの炭素質残さも、他のフェロアロイの製造における還元体(及び必要に応じてスラグ発泡剤)としても使用可能であることが仮定されたのである。
【実施例】
【0043】
実施例
フェロアロイの製造方法の非制限的な実施例を以下に説明する。
【0044】
実施例1
スラグ発泡を検討するために、静滴下(sessile drop)アプローチを用いて実験室規模の水平管抵抗炉において先ずスラグ/炭素相互作用を検討した。実験構成の概略図を図1に示す。スラグの使用重量は、〜0.20gであった。最初に試料を試験片ホールダー上に保持した。この試験片ホールダーは、ステンレススチール棒を用いて炉の高温ゾーンの中心に押出すことが出来るものであった。
【0045】
スラグ/炭素集合体は、炉の高温ゾーンにおいて所望の温度(一550℃)が達成されるまで炉の低温ゾーンに保持し、次いで炉の高温ゾーンにおいて平衡化させた。この集合体は、研究の所望温度である高温ゾーンに挿入した。これによって、より低温において生起して、目的の温度において研究の対象である現象に影響を及ぼし得るあらゆる反応が排除された。炉管は、実験の継続中はアルゴンでパージし、アルゴン流速は、質量流量計によって制御した。
【0046】
スラグ/炭素系の発泡挙動は、綿密に制御され視覚的にモニターされた静滴下法(sessile drop technique)を用いて検討した。アイリス(IRIS)レンズを取り付けた高品質高解像度の電荷結合素子(CCD)カメラを用いて、炉の中の実際のin−situ現象を捕捉した。カメラからの出力は、ビデオカセットレコーダ(VCR)及びテレビ(TV)モニターに導いて、全体のプロセスを時間の関数として記録した。これによって、フレームグラバー(frame grabber)を用いてビデオテープからコンピュータへ、スラグと炭素質材料との接触を表わす特定の画像を時間の関数として捕捉出来た。この系において時間−日付ジェネレータを用いてプロセスの継続時間を表示した。特別に設計されたコンピュータソフトウェアを用いて、曲線の当てはめ作業に基づいて、捕捉した画像から容積を求めた。反応動力学をよりよく理解するために、ほとんどの場合において画像を2時間まで記録した。
【0047】
スラグ組成は以下のとおりであった:即ち、CaO 30.48%、MgO 11.72%、SiO2 13.34%、Al2O3 5.24%、Fe2O3 33.33%、MnO 5.24%。であった。
【0048】
スラグ発泡検討は、先ずグラファイト及びコークスについて行った。その後、プラスチックについてスラグ発泡検討を行った。
【0049】
結果及び考察
グラファイト/スラグ系:グラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡についての予備的な結果を図2Aから図2Fに時間の関数として示す。
【0050】
グラファイトは、スチール製造スラグとともに良好な発泡特性を示した。図2Aは、T=13秒においてスラグ粉末が、溶融し始めたばかりの状態を示す。図2Bは、T=47秒において液体の滴が形をなしつつある状態を示し、また図2CにおいてはT=57秒において完全に形成された状態を示す。次いで小滴はサイズが大きくなり、T=1分7秒の図2D及びT=1分22秒の図2Eにおいては、ますます大きくなる滴が観察され、スラグ発泡が生起していることが示される。図2Fにおいては、T=1分57秒において小滴がわずかに崩壊しており、いくらかのガス状の生成物が部分的に漏れたことが示される。即ち、グラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡は、極めて迅速かつ広範であることが見出された。
【0051】
コークス/スラグ系:コークス/スラグ系におけるスラグ発泡に関する予備的な結果は、図3Aから図3Fに時間の関数として示される。
【0052】
コークスは、スチール製造スラグについては信頼性の低い発泡特性を示した。図3Aにおいては、T=9秒においてスラグ粉末が溶融し始めたばかりの状態が示される。図3Bにおいては、T=1分20秒において液滴が形成されつつある。図3C乃至図3Fにおいては、T=2分15秒からT=21分37秒にまでの範囲に渉る画像が示される。この期間に渉って、液滴は完全に形成されている。これら四つの滴は、サイズ及び容積が僅かに変動しており、コークス/スラグ系におけるスラグ発泡がかなり小さいレベルであることが判る。即ち、コークス/スラグ系におけるスラグ発泡速度は、グラファイト/スラグ系よりも遅かった。
【0053】
炭素溶解の研究の結果、コークスに対する溶解速度定数は、グラファイトに対するものよりも小さいことが明らかになった。これら二つの炭素型スラグ発泡挙動はかなり異なっており、グラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡の速度及び程度はコークス/スラグ系よりもかなり高かった。即ち、炭素溶解速度とスラグ発泡との関係を仮定したのである。
【0054】
実施例2
動作・運転中のEAFのプラント動作・運転データの分析から、コークス注入量を増加すると、酸素消費量が増加することが判明したが、投入スチール1トン当りの電力消費量においては何らの明確なパターンは得られなかった。
【0055】
動作・運転中のEAFは、その動作・運転において二つの異なる形状の炭素を用いた。EAFは、〜90%のCを含有するコークスとともに、4%のCを含有する数トンのフラットアイアン(flat iron)を用いた。フラットアイアン中に存在する炭素は、フラットアイアンが溶融したときに既に溶解していたのに対し、コークス中に存在する炭素は固体状態で存在した。
【0056】
炭素の形状(溶質又は固体炭素)は、平均電力消費量/1トンのスチールに対して重大な影響を及ぼすことが観察された。投入したフラットアイアン量が増加すると(溶質炭素のレベルが高くなることに相当する)、電力消費量が著しく減少した。この傾向は、炭素質材料が果たした役割であると解釈され、スラグ発泡の増大によって、投入スチール1トン当りの電力消費量が減少することが判明した。即ち、EAFスチール製造におけるフラットアイアン炭素の効率は、コークスについて相当する効率よりもかなり高いことが見出された。
【0057】
本発明者らは、以下のことを認めた。
1.液体鉄への炭素溶解の動力学は、炭素質材料の性質に強く依存した。例えば、コークスに対する溶解速度定数はグラファイトに対するものよりも小さかった。
2.実施例1のグラファイト/スラグ系及びコークス/スラグ系の結果から、グラファイトによるスラグ発泡の速度及び程度が、コークスよりもかなり高いことが判明した。
3.炭素/スラグ相互作用の動力学は、溶質炭素及びコークスに対してかなり異なることが予期され、その結果スラグ発泡挙動に幅広い変化がもたらされた。
【0058】
これらの結果から、炭素質材料を適切に選択することがスラグ発泡、従ってEAF動作・運転のエネルギー効率に重要な役割を果たし得ることが判明した。これらの結果に基いて、本発明者らはまた、EAFに炭素含有ポリマーを加えて燃料として部分的に燃焼させ、炭素質材料残さを生成させることによって、スラグ発泡及び/又は金属酸化物の還元及び/又は加炭・復炭が引起され得ると推測した。
【0059】
実施例3
本発明者らは次に、伝統的な炭素供給源の少なくともいくつか(例、コークス)の代わりにEAFプロセスに廃プラスチックを添加することをテストした。下記する原材料を集めて、EAFに供給する原材料をシミュレーションした。
【0060】
原材料
以下の炭素質材料、プラスチック及びスラグを用いてスラグ発泡比較実験を行なった。
【0061】
炭素質材料:グラファイト;コークス;グラファイトとプラスチックの混合物(1:1)から生成される残さ(この残さのXRDスペクトルが図6に示す)。1:1なる比は、炉によって変動してもよい。
【0062】
プラスチック材料:プラスチック廃物の主要な構成要素を示すために線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を入手した。用いたポリエチレン試料の粒径は、100マイクロメートルより小さかった。
【0063】
スラグ:以下のスラグ組成(%wt)を調製した:30.48% CaO;11.72% MgO;13.34% SiO2;5.24% Al2O3;33.33% Fe2O3;5.24% MnO。
【0064】
炭素質材料粉末の基体は、2.2´208Paの圧力下の油圧プレスによって調製した。グラファイト及びコークスの粉末は購入状態で使用された。グラファイトとプラスチックの混合物の調製プロセスは実施例4に記載する。
【0065】
スラグは、上記の混合比における酸化物成分の均質な混合物を1650℃に加熱し、次いで完全な溶融からおよそ30分後に溶融物を銅型で鋳造することによって調製した。
【0066】
装置
静滴下実験を行なうために図1の水平炉を用いた。セラミック炉管の寸法は、内径がΦ50mm及び長さが1000mmであった。アルミナ又はグラファイト製の試験片ホールダーは、炉カバーを通じて管に挿入した。この装置は、炉が所望の温度、この実施例においては典型的には1550℃まで加熱されないうちは試料が炉の低温ゾーンに保持されることを可能にするものであった。
【0067】
実験手順
スラグ発泡を検討するために、最初に水平管抵抗炉においてスラグ/炭素相互作用を検討した。炉の高温ゾーンにおいて所望の温度(1550℃)が達成されて平衡に達するまで、スラグ/炭素集合体を炉の低温ゾーンに保持した。次いで集合体を所望の温度の高温ゾーンに挿入した。この手順によって、より低温において起こり得る、目的の温度において研究されるべき現象に影響し得るあらゆる反応が排除された。実験の継続時間にわたって炉管はアルゴンでパージした。
【0068】
スラグ/炭素系の発泡挙動は、綿密に制御され視覚的にモニターされた静滴下技術を用いて再び検討した。アイリスレンズを装着したCCDカメラを再び用いて、炉の中の実際のin−situ現象を捕捉した。再びカメラからの出力はVCR及びTVモニターに導かれて、全体のプロセスを時間の関数として記録した。フレームグラバーを用いてビデオテープからコンピュータに、スラグと炭素質材料との接触を表わす画像が経時的に捕捉された。再び時間−日付ジェネレータを用いてプロセスの継続時間を表示した。曲線の当てはめ作業に基づいて、コンピュータソフトウェアによって捕捉された画像から容積を求めた。
【0069】
試験片ホールダー上に保持された炭素質材料基体上にスラグ粉末(約0.20g)を載置した。一旦所望の炉温度に達すると、試験片ホールダーを炉の低温ゾーンから高温ゾーンに押し込んで、実験を開始した。全体の反応プロセスはCCDカメラによってモニターされ、ビデオテープを用いて記録した。画像をさらに分析して試料容積を算出した。実験の間、不活性ガスのアルゴンを1l/分の流量で流した。オフガスは、反応速度を評価するために用いられ得るCO及びCO2含有量を得るためにIR分析器に通した。
【0070】
実験結果
この実験を行なうことによって、スラグ中の鉄酸化物と、炭素質材料:グラファイト、グラファイト/プラスチック残さ混合物及びコークスとの反応によって惹起されるスラグ発泡挙動を検討した。典型的な画像を図4Aから図4Cに示す。
【0071】
グラファイトとスラグとの間の反応が、最も活発なスラグ発泡を生成することが観察された。図4Aにおいて明らかに示されるように、発泡スラグ滴の容積が最大であった。
【0072】
50%グラファイト/50%プラスチック混合物の反応中にスラグ小滴から泡が放出された。図4Bに示されるような高温視覚化画像に基づいて、また鉄酸化物の還元を示すオフガス中のCOの生成に基づいて、グラファイト/プラスチック混合物の場合のスラグ発泡現象の発生を確立した。これによって、プラスチックをEAFに添加して燃料として燃焼させることが出来、また炭素質残さが、スラグ発泡及び/又は金属酸化物還元及び/又は加炭・復炭効果を有し得ることが示された。
【0073】
実施例4
グラファイト/プラスチック混合物の調製プロセス
滴下管炉(DTF)を用いてプラスチック−グラファイトブレンドの高温気相反応を行なった。図5に滴下管炉を概略的に示す。
【0074】
DTFで行なわれる各試験は、1200℃にて実施され、一旦炉がこの動作・運転温度に達すると、酸素及び窒素ガスを所望の流量で炉に導入した。自動流量制御器を用いて、ガス流量及び組成をかかる実験の過程で制御した。各テストの際には炉のインジェクターに冷却水を循環させることによって、過熱及び炉の反応ゾーンにおける注入された燃料材料と酸素との相互作用以前に反応が生起するのを防いだ。また、コレクターは、各実験の際に生成される不燃焼の木炭を保持する目的をも達成された。
【0075】
乾燥材料フィーダを用いて水冷式の供給プローブを経由して、プラスチック−グラファイトブレンドを実験反応器に導入した。酸素と窒素ガスの混合物を用いてプラスチックとグラファイトとの固体反応物を反応ゾーン内に送入した。実験の詳細は、以下の通りであった。
【0076】
【表1】
【0077】
この実験の結果、EAFにおいてシミュレーションし得る動作・運転条件下で、プラスチックをEAFに投入して燃料として燃焼させ、スラグ発泡、金属酸化物還元及び溶融鉄の加炭・復炭に有用な炭素質残さを形成出来ることが明らかとなった。
【0078】
実施例5
スラグと炭素質材料との反応に付随するEAFスラグ発泡現象
【0079】
実際のEAFスラグ試料、より具体的には不活性アルゴン雰囲気下でのスラグと炭素質基体との反応過程でのスラグ発泡現象を研究するために実験を行なった。スラグ組成は、27.0% CaO;40.3% FeO;7.9% Al2O3;8.8% MgO;10.9% SiO2;及び4.8% MnOであった。スラグの塩基度は2.5(%CaO/%SiO2)であった。実験のために三つの炭素質材料が選択された。それらは純粋なグラファイト;グラファイト及びプラスチックの混合比1:1の混合物からの炭素質残さ;並びに工業用コークスであった。1:1の比は異なるEAFに対して変動してもよい。各試験に対して約0.075gのスラグを用いた。温度は1550℃に設定した。
【0080】
図6は、滴下管炉(DTF)において反応させた後の50%プラスチックと50%グラファイトの混合物から生成した残さのXRDスペクトルを示す。プラスチック及びグラファイトのピークが明瞭に見られる。
【0081】
CCDカメラを用いてスラグ/炭素発泡現象を記録した。図7は、約200秒の時間における、種々の炭素質基体と反応する発泡スラグ滴の典型的な画像を示す。スラグ発泡は、グラファイト基体との反応の場合に最も活発であった。スラグとコークス並びにプラスチックとグラファイトの混合物との反応は、それほど活発ではなかったが、この結果からプラスチックが、EAFスラグとのスラグ発泡剤及び還元剤の双方として作用・機能出来ることが判明した。
【0082】
IR分析器を用いて、DTFオフガス中のCO及びCO2含有量を分析した。その結果を以下の図8、図9及び図10に示す。グラファイト基体の場合には、オフCO及びCO2ガス含有量は他の場合よりもほんの僅かに大きかった。このことは、鉄酸化物の還元によるガス放出は三つの炭素質材料全てによって起こっており、三つともスラグ発泡に寄与することを意味した。
【0083】
加えて実施例5の結果は、工業用スラグと実験室調製スラグとの組成の相違にもかかわらず、先の実施例の結果と一致する。
【0084】
実施例6
廃プラスチックの燃料効率を検討することによって、EAF又はその他の非高炉型式の炉における燃料としての廃プラスチックの適合性をテストした。実施例4と同じ条件を用いて、図5の滴下管炉(DTF)を用いて燃焼効率を評価した。各テスト実施の前後(即ち各試料がDTFに通された後)に試料の%Cを求めた。炭素含有量の求めるためにLECO炭素含有量分析器を用いた。
【0085】
各試料は、粉末状コークスと混合した、0wt%プラスチックから50wt%プラスチックまでの変動する含量の粉末状廃プラスチックを含んで成るものであった。その結果を下記の表に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
この表は、得られた燃焼効率を示し(最終列)、また未処理のwt%C分析をも掲げている。wt%Cの減少は、炭素が反応(燃焼)して一酸化炭素及び二酸化炭素ガスを生成した結果である。
【0088】
これらの結果から、コークスの燃焼効率は非常に低いが、コークスに廃プラスチックを混合すると燃焼効率が増加することを示す。加えて、燃焼後に残留する残さは、次いでEAF又はその他の非高炉タイプの炉における他の反応に関与する。
【0089】
実施例7
フェロアロイ製造における加炭・復炭剤としての廃プラスチックの機能を検討するために、図11に概略的に示されるような実験室規模の誘導電気炉において炭素質残さの炭素溶解を検討した。
【0090】
(EAF動作・運転温度をシミュレーションするために)炉の温度を制御して1550℃の溶融鉄浴温度を達成させた。これに関しては、この手順の際に炉を囲む「ジャケット」熱交換器構成に冷却水を循環させることによって過熱を防ぎ、ほぼ一定の浴温度を維持した。N2ガス入口を介して溶融浴上に窒素雰囲気を形成した。
【0091】
廃プラスチックの粉末は、炉の中に直接供給し、また粉末は、溶融鉄浴上に供給した。このプラスチックは、燃焼して炭素質残さを生成するが、その残さは、加炭剤・復炭剤として機能出来た。代替策として、例えば図5の滴下管炉からの廃プラスチックを溶融鉄浴上に導入してもよい。
【0092】
浸炭剤(carburiser)カバー法は、炭素溶解を研究するために用いられる標準的なアプローチだった。これに関しては、炭素質材料が金属浴の頂部に実際に乗って浸炭剤カバーを形成した。これは、実験手順において廃プラスチック材料が金属浴の頭頂部に供給されたためである。浴温度を測定するための熱電対が、金属試料を取出して経時的に炭素溶解を漸進的に測定するための石英サンプリング管とともに、浸炭剤カバーを貫通して伸展していた。次いでLECO炭素含有量分析器を用いて、抽出された金属試料の炭素含有量を分析した。
【0093】
炭素溶解の結果を図12に示す。図12において、最初(時間=0)に浴の有する溶解炭素含有量が、重量比1.67%だったことが分かる。次いでプラスチック残さを添加したところ、溶解炭素含有量が2.97%に増加し、次いでおよそ3%レベルで水平になった。時間=25分において更なるプラスチック残さを浴に添加したところ、T=30分において溶解炭素含有量は、3.89%に増加した。
【0094】
この実験は、プラスチック残さを有効な加炭・復炭剤として使用出来ること、及びプラスチック残さの漸進的な導入によって溶解炭素量の漸進的増加を達成出来ることを実証した。EAF又はその他の非高炉型式の炉において、加炭・復炭用の残さは、典型的には廃プラスチック自体を炉に導入し、燃焼して炭素質残さを生成させ、次いで溶融金属浴への残さの混合を促進し、炭素含有量が所望の量に増加するための時間を与えることによって生成されるだろう。廃プラスチックは、無煙炭及びグラファイトなどのより高価な加炭・復炭剤を代替・置換し得る。
【0095】
実施例9
コークス/プラスチック混合物の燃焼効率
コークス及びそのプラスチック(50wt%まで)との混合物を、20%のO2を含有する酸化性雰囲気の中で1200℃にてDTF中で燃焼させた。供給速度は、おおよそ0.0278g/sであった。炭素質残さを集めてその炭素含有量を測定した。DTFでの燃焼に際して灰の無視出来る損失があることを想定して、燃焼効率ηを次のように算出した。
【0096】
【数1】
【0097】
上式において、A0及びAiは、燃焼の前後での灰含有量であり、C0及びCiは、それぞれDTFでの燃焼の前後での炭素含有量を表わすものであった。コークス/プラスチック混合物の燃焼効率についての実験結果を図14に示す。燃焼効率の変動が大きいため、y軸に沿って対数目盛を使用した。
【0098】
この実施例において、コークス/プラスチック混合物の全燃焼効率はコークス単独の燃焼効率の40倍近くである、即ち、コークスは0.25であるのに対してコークス−プラスチック混合物は、〜10であることが観察された。コークス/プラスチック混合物の燃焼効率が高くなるのは、ある程度は、プラスチックの燃焼の際に揮発性物質が多量に放出されるためと考えられる。コークス及びプラスチックの混合物は、燃焼効率が一般的にコークスよりもかなり高くなったが、混合比が持つ効果について明確な傾向は観察されなかった。しかし、プラスチック成分の増加による燃焼効率の低下は観察されなかった。
【0099】
実施例10
炭素質残さでのスラグ発泡
DTFにおける燃焼後のコークスとプラスチックの混合物からの炭素質残さを9トン/cm2荷重下でプレスしてさいころ型に成型し、スラグ発泡実験に対する基体として用いた。所望の温度に達した後、スラグが溶融し始め、スラグ中に存在する鉄酸化物は、炭素質基体との反応を開始して、CO及びCO2ガス並びに金属鉄を生成した。スラグ相を通過したCO及びCO2ガスの放出によって、スラグ発泡が惹起されるのである。反応プロセスは、CCDカメラを用いてモニターされ、更なる画像分析のためにDVDディスクに記録された。図15は、スラグと30%プラスチック+70%コークスの混合物との反応の典型的な画像を示す。スラグが溶融した後、直ちにガス泡がスラグ相を通過して放出されることが観察された。ガスバブルの生成及び破裂のため、スラグ小滴が基体上を活発に転がり回った。約600秒後、ガス生成が相当程度減少するに伴って、スラグ小滴は徐々に沈静化した。
【0100】
また、スラグとコークス/プラスチック基体との反応の過程において、スラグ中のFeOと基体中のCとが反応してCO及びCO2ガスを生成した。IRスペクトロメータを用いてオフガス混合物中のこれらのガスの濃度を測定する。
【0101】
その結果得られる典型的なCO及びCO2ガス含有量を図16に示す。CO及びCO2ガス含有量は、何れも急激に増加して最大値となり、300秒間近く安定状態になってから反応時間に伴い減少したことが分かる。オフガス中の検出されたCO2ガスは、COよりもかなり少なかった。オフガス分析から得られた放出CO及びCO2の容積は、次いで標準ガス等式を用いてモル数に変換した。図17に示されるとおり、除去された酸素のモル数は、スラグと炭素質材料との還元反応の動力学を反映していた。
【0102】
この結果から、スラグのコークスとの還元反応は、プラスチック−コークス混合物との対応する反応よりもかなり速く、その結果放出ガスがより多くなることが判明した。これらのガスは、スラグ発泡を惹起し、スラグ小滴の容積を変化させた。
【0103】
次いで、スラグ小滴中のガス滞留量をVt/V0によって測定した。ここでVtは、時間tにおけるスラグ小滴の容積であり、V0は初期容積である。図18は、コークス及び30%プラスチック+70%コークス混合物に対するVt/Voを時間の関数としてプロットした図である。この結果は、30%プラスチック+70%コークス混合物に対して観察されたスラグ発泡のレベルがコークスに比べてかなり高かったことを示した。コークス/プラスチック混合物の場合小滴径がかなり大きくなり、このような滴径の増加は、コークスに比べてプラスチック混合物の方がかなり長い期間持続された。その理由の大半は、プラスチック混合物とスラグとの反応速度が幾分遅い(図17)ためにガス放出の速度が遅くなり、その結果より小さい泡が生成され、また泡がより長い期間持続されたためと考えられる。コークスについては、スラグ小滴から逸出する高いガス量によって泡の成長が急速であった。
【0104】
コークスと一定範囲のコークス/プラスチック混合物に関する実施例9及び10での検討の結果、EAF製鋼において廃プラスチックを利用する可能性が更に実証された。コークス/プラスチック混合物は、純粋なコークスよりもかなり良好な燃焼を示した。コークス/プラスチック混合物のスラグ発泡特性は、純粋なコークスよりも優れていたことが見出された。スラグ小滴の容積は、顕著に大きく増加し、その容積変化はより長い期間にわたって持続された。これらの結果からまた、コークスをコークス/プラスチック混合物に部分的に置換することによって炭素燃焼を高め得ることが明らかとなった。
【0105】
実施例11
図4に示されるように、実施例3に記載されたものと同様の実験手順において、コークス/スラグ系及び50%コークス/50%プラスチック/スラグ系の発泡特性を検討した。この場合のプラスチックは、高密度ポリエチレン(HDPE)であり、その粒径は、100マイクロメートルより小さかった。スラグは実施例5のものと同様であり、二つの系に対してそれぞれ0.078グラム及び0.092グラムのスラグを用いた。試験実施が異なる時間に行なわれたため、スラグの重量は全く同じではない。しかし、この重量差は実験結果に影響しない。
【0106】
図13A及び図13Bは、0、30、45、60、90、150、210及び300秒の時間間隔における二つの系の滴発泡挙動を並列比較して示した図である。コークス/プラスチック/スラグ系は、発泡特性がコークス/スラグ系よりも比較的急速であったことが分かる。
【0107】
言換えると、HDPEなどのプラスチックも、EAF又はその他の非高炉型式の炉に増大・改善されたスラグ発泡特性を付与出来るということであり、多くの他のプラスチックも、同様の増大・改善された性能を付与し得ることを示している。
【0108】
実施例12
本発明者は、プラスチックのフェロアロイ製造における再使用及び他の非高炉タイプの炉における可燃性燃料としての再使用に対する適合性を示す指数(index)を着想し,提案したのである。この指数は、プラスチックのグリーンインデックス(Green Index for Plastics)(又は“GIP”指数)と称するものであった。本発明者は、この指数が、プラスチックの再利用性に関するものとして一般的な意味で使用され而もGIP指数として公知となり得るものと考えたのである。
【0109】
かくして、プラスチックが例えば製鋼などのフェロアロイ製造などに再利用出来ることを、一般大衆が認識出来る機構・仕組みを確立することが可能となるであろう。本発明者は、プラスチックの種類を識別するために用いられる現行のシステムが、プラスチックの再利用可能性に関するいかなる情報も提供していないことに注目したのである。現行のシステムは、事実プラスチックの種類に関する情報しか提供していない(例、PETに対しての数字の1など)。
【0110】
最後に、本発明者は、関連GIPS指数を開発することによってかかるGIP指数を増強出来ると推測したのである。ここで“S”は、製鋼におけるプラスチックの使用の適合性を表わし示す。
【0111】
一般的にこれらの実験によって、スチール以外のフェロアロイの製造に対して、EAFを用いて、非塊状化プラスチックを炉に投入することが出来、また燃料として燃焼出来且つ、スラグ発泡、金属酸化物還元、及び溶融金属(例、鉄)の加炭・復炭をもたらすために有用な炭素質残さを形成出来ることが示された。
【0112】
更にはこれらの実験によって、再加熱炉などに対して、例えば天然ガスなどの他の燃料に対する補助として非塊状化プラスチックを炉に投入することが出来而も燃料として燃焼可能であることも示された。このことは、製鋼操業運転における再加熱炉などの炉において用いられる(1000℃より高い)高温において特に当てはまる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
即ち、社会において莫大な量の廃プラスチックを使用し且つ消費する有効な手段が、提供される。
【0114】
多くの具体的な実施態様を上記にて記載したが、フェロアロイの製造方法は、多くの他の形態で実施出来ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1に記載された、静滴下アプローチのための水平管抵抗炉構成の概略図である。
【図2】図2A乃至図2Fの各々は、スラグの滴下を示し且つ図1の水平管抵抗炉構成を用いたグラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡を時間の関数として逐次的に示す図である。
【図3】図3A乃至図3Fの各々は、スラグの滴下を示し且つ図1の水平管抵抗炉構成を用いたコークス/スラグ系におけるスラグ発泡を時間の関数として逐次的に示す図である。
【図4】図4A乃至図4Cはそれぞれ、スラグ系を有し且つ図1の水平管抵抗炉構成を用いるグラファイト、グラファイト/プラスチック及びコークスについてスラグの滴下を示す。
【図5】実施例4に記載された滴下管炉構成の概略図である。
【図6】実施例5に記載された、50%プラスチックと50%グラファイトとの混合物から滴下管炉において反応させた後得られた炭素質残さのXRDスペクトルを示す図である。
【図7】実施例5に記載された、種々の炭素質材料が惹起するスラグ発泡のCCD画像を示す図である。
【図8】実施例5に記載されたグラファイト基体と工業用スラグとの反応のIR測定結果を示す図である。
【図9】実施例5に記載された50%プラスチックと50%グラファイトとの基体と工業スラグとの反応のIR測定結果を示す図である。
【図10】実施例5に記載されたコークス基体と工業用スラグとの反応のIR測定結果を示す図である。
【図11】実施例7に記載された誘導(炭素溶解)電気炉の概略図である。
【図12】実施例7に記載された、図11の誘導電気炉について、溶融フェロアロイ中の炭素溶解の%を時間に対してプロットした図である。
【図13A】図1の水平管抵抗炉構成を用いた経時的なコークス/スラグ(上側の行)及びコークス/HDPEプラスチック/スラグ(下側の行)の滴下を示す図である。
【図13B】図1の水平管抵抗炉構成を用いた経時的なコークス/スラグ(上側の行)及びコークス/HDPEプラスチック/スラグ(下側の行)の滴下を示す図である。
【図14】実施例9に記載された、1200℃におけるコークスと、コークスとプラスチックとの混合物の燃焼効率、η、をプロットした図である。
【図15】実施例10に記載された、1550℃における70%コークス−30%プラスチック残さ/スラグ系におけるスラグ発泡のCCD画像を時間の関数として示す図である。
【図16】実施例10に記載された、CO及びCO2ガス発生を時間の関数としてプロットした図である。
【図17】実施例10に記載された、スラグのコークスとの相互作用及びスラグと30%プラスチック+70%コークス混合物との相互作用において除去された酸素のモル数をプロットした図である。
【図18】実施例10に記載された、1550℃におけるコークスと30%プラスチック+70%コークスとの混合物に対するVt/Voプロットを示す図である。
【技術分野】
【0001】
技術分野
新規の添加剤を用いて電気アーク炉(EAF)でフェロアロイ(例えばスチールなど)を製造する方法が開示される。その主要な機能において、新規の添加剤は、スラグ発泡剤、還元剤として機能する。しかし、本添加剤は、付加的に燃料及び/又は加炭・復炭剤(recarburiser)として機能し得る。
【背景技術】
【0002】
背景技術
過去50年間においてプラスチック産業は多大な成長を遂げた結果、今やプラスチック材料及び製品は社会に必須のものとなっている。日本などの国におけるプラスチック製造は、年間およそ1500万トンに達し、その結果年間約900万トンの関連廃棄物が生じ、その内50%は、民生用固形廃棄物に関連する。
【0003】
プラスチック処理の問題は増大しており、国際的にプラスチック再利用が材料回収に占める割合は小さく、残りは埋め立て又は焼却炉での焼却のいずれかによって処理されている。プラスチック材料は容易に分解せず、埋立地に有毒元素を浸出させ得る一方で、従来の焼却ではしばしばダイオキシンなどの有害な排出物を生成する。
【0004】
世界的に見て、鉄鋼産業は、エネルギー及び資源利用の効率を改善することによって環境に対する影響力を最小限にまで減らすという圧力に直面している。例えば、高炉の炭素強度を減少させるために特別な努力がなされてきた。高炉のエネルギー管理の一つの戦略には、燃料、即ちコークスの消費の減少が含まれる。代替燃料として、高炉の羽口にプラスチックを注入することによってCO2排出を減少させることが提案されている。これは、プラスチックの有する燃焼エネルギーが、通常注入される微粉炭と少なくとも同程度に高く、また炭素に対する水素の割合がより高いために、燃焼生成物として生じるCO2がより少なくなるためである。
【0005】
電気アーク炉(EAF)を含む他の型式の製鋼炉へのプラスチック添加が公知である。例えばUS5,554,207は、EAF廃棄物粉塵を廃プラスチックと組合せて固体を形成し、次いでそれをEAFに加えるプロセスを開示している。同様にJP2004−052002は、廃プラスチックをスチール粉塵と一緒に混錬して柔軟な固体をとし、これをEAFに加えるプロセスを開示している。いずれの文献も、添加剤を加えてスラグ発泡を促進させることには関係していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
第一の局面においては、電気アーク炉でのフェロアロイの製造方法において、非塊状化炭素含有ポリマーを炉内に投入し、その結果該ポリマーがスラグ起泡剤としての機能を発揮する工程が提供される。
【0007】
「非塊状化炭素含有ポリマー」なる用語は、微粒化と粗粒化ポリマー及び粒状ポリマーの双方を包含するものであり、EAF廃物粉塵又はスチール粉塵とともに形成されるようなポリマーは除外するものと意図される。かかる塊状固体は、スラグ発泡剤として機能しないであろう。
【0008】
電気アーク炉においては、非塊状化炭素含有ポリマーを使用してスラグ発泡を惹起させ得ることが、以前に考慮・意図されたことはなかった。電気アーク炉内でスラグ発泡が増大することは、溶融金属をより良好にその全面を覆い、熱を良く保持・抑制する(即ち、断熱する)ため、EAFにおける電気消費量が大幅に減少する。
【0009】
非塊状化炭素含有ポリマーは、フェロアロイの製造方法において還元剤、燃料及び/又は加炭剤・復炭剤として付加的な機能を発揮し得る可能性がある。即ち、かかるポリマーは、炉供給材に存在し・含まれる及び/又は金属加工の際に生じる金属酸化物を還元させ;及び/又は燃料の供給源として機能し;並びに/又は加炭剤・復炭剤として作用して、製造される最終フェロアロイにおいて鉄とともに存在する炭素の量を増加させることが出来る。例えば、電気アーク炉において主要な燃料源は、これまで電気であった。
【0010】
廃プラスチックはかくして、(電気の使用量を少なくすることによって)エネルギー効率を高めることが出来、コークス及び石炭などの伝統的な炭素源の消費量(及びコスト)を減少させることが出来る。また廃プラスチックは、無煙炭及びグラファイトなどの高価な加炭・復炭剤を代替するか、又はその使用を減少させ得る。
【0011】
「フェロアロイ」なる用語が本明細書で用いられる場合、広範な鉄−炭素合金(スチールを含む)並びにその他の鉄−炭素及び/又は鉄系合金を包含するものと意図され、フェロクロム、フェロクロムシリコン、フェロマンガン、フェロシリコマンガン、フェロシリコン、マグネシウムフェロシリコン、フェロモリブデン、フェロニッケル、フェロチタン、フェロリン(ferrophosphorous)、フェロタングステン、フェロバナジウム、フェロジルコニウムなどが含まれる。
【0012】
典型的には、非塊状化炭素含有ポリマーは炉に投入されるが、少なくとも部分的に燃焼し且つ炭素質の残さを生成するように投入される。かかるポリマーは、燃料として機能する。炭素質の残さは次に、酸化されてスラグ発泡を惹起させ得る。残さは、更に還元剤又は加炭・復炭剤として機能し得る。即ち、典型的には炉に投入された非塊状化炭素含有ポリマーは、スラグ発泡前駆物質として機能するが、また加炭・復炭剤前駆物質又は還元剤前駆物質としても機能する可能性がある。
【0013】
非塊状化炭素含有ポリマーは、炉に投入される単独の添加剤を含んでもよいが、典型的な実施態様においては、非塊状化炭素含有ポリマーは、別の炭素供給源と共に炉に投入される。かかる他の炭素供給源は、燃焼して燃料として作用し得るのであり、またスラグ発泡に寄与し得るのであり、還元剤又は加炭・復炭剤として機能する可能性がある。かかる他の炭素供給源は、石炭、コークス、炭素木炭(carbon char)、木炭又はグラファイトであり得る。
【0014】
例えば、非塊状化炭素含有ポリマー及び他の炭素供給源はおよそ1:1の重量比で炉に投入してもよいが、かかる比率は、炉によって変動し得る。
【0015】
この方法の典型的な適応な方法においては、炭素含有ポリマーは、廃プラスチックである。廃プラスチックを炉に投入することは、処理しない場合環境上の問題を起こす廃プラスチックの処理の有効な手段を提供する。
【0016】
典型的には、炭素含有ポリマーは、C、H及び選択的にOなる原子のみを含む。ポリマー中に他の元素が存在すると(例、N、S、P、Si、ハロゲンなど)、これら他の元素は、フェロアロイ製造を妨げ、及び/又は汚染物質(contaminants)、汚染物(pollutants)、有害ガスなどを生成する恐れがある。即ち炭素含有ポリマーを適切に選択することによって、有害ガス及びその他の好ましくない、又は有害な生成物の生成を回避出来る。好適なプラスチックの一つは、ポリエチレンであるが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエンスチレン、ABSなどの他のプラスチック、及びベークライトなどの再加工困難なプラスチックなどが使用し得る。
【0017】
典型的には、非塊状化炭素含有ポリマーは、典型的に100um又はそれ以下の粒径のポリマー粒子の形で炉に投入される。
【0018】
製造される典型的なフェロアロイはスチールであるが、(前述のような)他のフェロアロイの製造には非塊状化炭素含有ポリマーの投入が用いられ得る。
【0019】
第二の局面においては、電気アーク炉でのフェロアロイの製造におけるスラグ発泡剤としての非塊状化炭素含有ポリマーの使用が提供される。
【0020】
典型的に、この非塊状化炭素含有ポリマーの使用は、第一の局面の方法によって達成されるフェロアロイの製造において行なわれる。
【0021】
第三の局面においては、電気アーク炉においてフェロアロイを製造する方法であって、下記工程から成る方法が提供される:
―炉にフェロアロイの供給原料を投入する工程;
―炉の中の供給原料を加熱して溶融状態にし、合金/供給原料の溶融表面上にスラグを形成する工程;及び
―スラグ発泡剤として機能する非塊状化炭素含有ポリマーを炉に投入する工程、である。
【0022】
典型的には、非塊状化炭素含有ポリマーは、炉内で燃焼して溶融合金/供給原料に熱エネルギーを放出・付与し且つスラグを発泡させる物質を生成させるために投入される。
【0023】
選択的に、かかる物質は、スラグの発泡に加えて以下の作用を持つ:即ち、
―スラグ中の各種金属酸化物の化学的還元を惹起してフェロアロイを製造すること;、
その結果得られた鉄及び炭素の合金を加炭・復炭すること、である。
【0024】
非塊状化炭素含有ポリマーは、付加的な薬剤とともに投入することが出来る。付加的な薬剤は、第一の局面において定義された他の炭素供給源であってもよい。
【0025】
非塊状化炭素含有ポリマーはまた、炉の供給原料と共に投入してもよい。例えば、(連続炉運転型式において)供給原料及び炭素含有ポリマーが投入される場合、炉が既に加熱されていてもよい。
【0026】
典型的には、第三の局面の方法は、それ以外では第一の局面において定義された通りである。
【0027】
本発明者らはまた、非塊状化炭素含有ポリマーが再加熱炉における燃料として一般的に用いられ得ることを以前から推測していた。
【0028】
従って第四の局面においては、再加熱炉を運転する方法において、燃料として作用させるために非塊状化炭素含有ポリマーを炉に投入する工程が提供される。
【0029】
典型的には、再加熱炉は、炭素含有ポリマーを燃焼させるために充分な温度、典型的には1000℃よりも高い温度で運転・動作する。
【0030】
更には非塊状化炭素含有ポリマーは、粒状として、任意には天然ガスなどの別の燃料と共に炉に投入してもよい。
【0031】
第五の局面においては、炭素含有供給原料を用いるフェロアロイ製造炉における炭素含有ポリマーの再利用可能性を決定するためのシステムが提供される。このシステムは、以下の工程から成る:
―所定のポリマーのスラグ発泡能力を反映するパラメータの数値を導出する工程;、
そのパラメータを一つ又はそれ以上の他のポリマーから導出された一つ又はそれ以上のパラメータ数値と比較する工程;
これらのパラメータ数値から一定の範囲又は尺度を開発する工程、である。
【0032】
このパラメータは、発泡スラグの高さ及び/又は発泡スラグの継続時間であり得る。
【0033】
「発明の要旨」において定義したフェロアロイの製造方法に包含される他の実施態様がいくつかあるが、次に本方法の具体的な実施態様を添付の図面を参照して実施例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
具体的な実施態様の詳細な説明
EAFスチール製造に関する広範な研究において、溶質炭素/固体炭素とスラグとの化学反応が、スラグ発泡のプロセスを惹起することが認められたのである。スラグ発泡は、スラグ中での炭素による鉄酸化物の還元の結果惹起されるCOガス生成によって、また炭素の酸化によって生起するものであった。スラグ発泡は、炭素供給材料の性質に強度に依存すること而も高温におけるかかる供給材料の特性がスラグ発泡現象を支配することが認められた。
【0035】
さらに認められたことであるが、発泡状スラグは、電気アークを遮蔽することに加え、金属浴をその全面で覆いかかくして熱を抑制し、その結果大幅なエネルギー節約(即ち電気消費量の減少)をもたらすものであった。一定レベルのスラグ発泡の持続が、効率的なEAFスチール製造にとって重要であることが認められたのである。
【0036】
驚くべき一つの開発・展開において、非塊状化炭素含有ポリマー(例えば、典型的には粒状形状の廃プラスチック)をEAFスチール製造に導入することが可能ではないかと仮定したのである。EAFスチール製造において用いられる高温では、廃プラスチックは、一旦炉の中に導入されると燃焼し(燃料として作用・機能する)、炭素質の残留・残さ生成物を生成するものと推測し、その後炭素含有ポリマーが他のフェロアロイの製造にも導入出来、この場合もやはり炭素質の残留生成物を生成するものと仮定した。
【0037】
かかる炭素質の残留生成物が次には、EAFスチール製造においてスラグ発泡を惹起させることが出来、しかも選択的に還元剤として機能する(例、他のフェロアロイの製造において)可能性があり、また選択的に加炭・復炭剤としても機能することが観察された。
【0038】
テスト実施に際して、当初のプラスチックの化学的組成、構造及び結合ネットワークが、炭素質残さの特性を決定することを仮定した。更には一定のプラスチックからの炭素溶解(carbon dissolution)の動力学は、炭素質残さが液状スチールに溶解する速度に依存することが認められた。その結果、(例、コークス中の炭素に比べて)プラスチック中において炭素が比較的高度に配列する結果、液状スチール中への炭素溶解が高められ得る旨仮定したのである。
【0039】
炭素質残さの構造的特性化は、滴下管炉に導入したプラスチック−グラファイト混合物を用いて行なった(EAFにおいて実際に実行され得る運転条件をシミュレーションして)ところ、炭素質残さがその後EAF内において液体スラグの発泡を惹起するに到ることが観察され且つこれらの炭素質残さが、溶融フェロアロイにおいて一定の還元能力有し及び/又は炭素溶解を増大させ得ることを確認したのである。構造的特性化の結果を、下記する実施例5に示す。
【0040】
他のフェロアロイの製造においては、種々の炭素質の還元材料が用いられていることが認められた。公知の還元性材料としては、コークス、石炭や木炭などの炭素類、及び異なる種類の木材から製造される木炭の形状であるバイオ炭素類が挙げられる。この場合でもやはり、これらの炭素質材料の材料特性及び反応が、還元性能を規定する上で重要な役割を果たすことが認められた。
【0041】
主要な実験上の考察の対象はやはり、特に還元体のガス化、溶融金属中への炭素の溶解、及び固体炭素によるスラグの直接還元に関する検討であった。
【0042】
スラグの形成はまた、スチール以外のフェロアロイの製造においても典型的であることが認められた。マンガン及びクロムは何れも、固体及び液体状態で還元されるものであった。スラグ中へのMnOの溶解とその後の固体炭素又は液体金属に溶解した炭素によるスラグからの還元が、MnO還元の主要な機構と看做された。同様に、Fe−Cr溶融物に溶解した炭素による液体スラグ中におけるクロム鉄鉱の還元が、フェロクロムの製造に重要であることが認められ、炭素と溶解鉱石(酸化クロム、酸化マンガン)を含有する液体スラグとの反応が、還元プロセスにおいて重要な役割を果たしていた。従って、廃プラスチックからの炭素質残さも、他のフェロアロイの製造における還元体(及び必要に応じてスラグ発泡剤)としても使用可能であることが仮定されたのである。
【実施例】
【0043】
実施例
フェロアロイの製造方法の非制限的な実施例を以下に説明する。
【0044】
実施例1
スラグ発泡を検討するために、静滴下(sessile drop)アプローチを用いて実験室規模の水平管抵抗炉において先ずスラグ/炭素相互作用を検討した。実験構成の概略図を図1に示す。スラグの使用重量は、〜0.20gであった。最初に試料を試験片ホールダー上に保持した。この試験片ホールダーは、ステンレススチール棒を用いて炉の高温ゾーンの中心に押出すことが出来るものであった。
【0045】
スラグ/炭素集合体は、炉の高温ゾーンにおいて所望の温度(一550℃)が達成されるまで炉の低温ゾーンに保持し、次いで炉の高温ゾーンにおいて平衡化させた。この集合体は、研究の所望温度である高温ゾーンに挿入した。これによって、より低温において生起して、目的の温度において研究の対象である現象に影響を及ぼし得るあらゆる反応が排除された。炉管は、実験の継続中はアルゴンでパージし、アルゴン流速は、質量流量計によって制御した。
【0046】
スラグ/炭素系の発泡挙動は、綿密に制御され視覚的にモニターされた静滴下法(sessile drop technique)を用いて検討した。アイリス(IRIS)レンズを取り付けた高品質高解像度の電荷結合素子(CCD)カメラを用いて、炉の中の実際のin−situ現象を捕捉した。カメラからの出力は、ビデオカセットレコーダ(VCR)及びテレビ(TV)モニターに導いて、全体のプロセスを時間の関数として記録した。これによって、フレームグラバー(frame grabber)を用いてビデオテープからコンピュータへ、スラグと炭素質材料との接触を表わす特定の画像を時間の関数として捕捉出来た。この系において時間−日付ジェネレータを用いてプロセスの継続時間を表示した。特別に設計されたコンピュータソフトウェアを用いて、曲線の当てはめ作業に基づいて、捕捉した画像から容積を求めた。反応動力学をよりよく理解するために、ほとんどの場合において画像を2時間まで記録した。
【0047】
スラグ組成は以下のとおりであった:即ち、CaO 30.48%、MgO 11.72%、SiO2 13.34%、Al2O3 5.24%、Fe2O3 33.33%、MnO 5.24%。であった。
【0048】
スラグ発泡検討は、先ずグラファイト及びコークスについて行った。その後、プラスチックについてスラグ発泡検討を行った。
【0049】
結果及び考察
グラファイト/スラグ系:グラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡についての予備的な結果を図2Aから図2Fに時間の関数として示す。
【0050】
グラファイトは、スチール製造スラグとともに良好な発泡特性を示した。図2Aは、T=13秒においてスラグ粉末が、溶融し始めたばかりの状態を示す。図2Bは、T=47秒において液体の滴が形をなしつつある状態を示し、また図2CにおいてはT=57秒において完全に形成された状態を示す。次いで小滴はサイズが大きくなり、T=1分7秒の図2D及びT=1分22秒の図2Eにおいては、ますます大きくなる滴が観察され、スラグ発泡が生起していることが示される。図2Fにおいては、T=1分57秒において小滴がわずかに崩壊しており、いくらかのガス状の生成物が部分的に漏れたことが示される。即ち、グラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡は、極めて迅速かつ広範であることが見出された。
【0051】
コークス/スラグ系:コークス/スラグ系におけるスラグ発泡に関する予備的な結果は、図3Aから図3Fに時間の関数として示される。
【0052】
コークスは、スチール製造スラグについては信頼性の低い発泡特性を示した。図3Aにおいては、T=9秒においてスラグ粉末が溶融し始めたばかりの状態が示される。図3Bにおいては、T=1分20秒において液滴が形成されつつある。図3C乃至図3Fにおいては、T=2分15秒からT=21分37秒にまでの範囲に渉る画像が示される。この期間に渉って、液滴は完全に形成されている。これら四つの滴は、サイズ及び容積が僅かに変動しており、コークス/スラグ系におけるスラグ発泡がかなり小さいレベルであることが判る。即ち、コークス/スラグ系におけるスラグ発泡速度は、グラファイト/スラグ系よりも遅かった。
【0053】
炭素溶解の研究の結果、コークスに対する溶解速度定数は、グラファイトに対するものよりも小さいことが明らかになった。これら二つの炭素型スラグ発泡挙動はかなり異なっており、グラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡の速度及び程度はコークス/スラグ系よりもかなり高かった。即ち、炭素溶解速度とスラグ発泡との関係を仮定したのである。
【0054】
実施例2
動作・運転中のEAFのプラント動作・運転データの分析から、コークス注入量を増加すると、酸素消費量が増加することが判明したが、投入スチール1トン当りの電力消費量においては何らの明確なパターンは得られなかった。
【0055】
動作・運転中のEAFは、その動作・運転において二つの異なる形状の炭素を用いた。EAFは、〜90%のCを含有するコークスとともに、4%のCを含有する数トンのフラットアイアン(flat iron)を用いた。フラットアイアン中に存在する炭素は、フラットアイアンが溶融したときに既に溶解していたのに対し、コークス中に存在する炭素は固体状態で存在した。
【0056】
炭素の形状(溶質又は固体炭素)は、平均電力消費量/1トンのスチールに対して重大な影響を及ぼすことが観察された。投入したフラットアイアン量が増加すると(溶質炭素のレベルが高くなることに相当する)、電力消費量が著しく減少した。この傾向は、炭素質材料が果たした役割であると解釈され、スラグ発泡の増大によって、投入スチール1トン当りの電力消費量が減少することが判明した。即ち、EAFスチール製造におけるフラットアイアン炭素の効率は、コークスについて相当する効率よりもかなり高いことが見出された。
【0057】
本発明者らは、以下のことを認めた。
1.液体鉄への炭素溶解の動力学は、炭素質材料の性質に強く依存した。例えば、コークスに対する溶解速度定数はグラファイトに対するものよりも小さかった。
2.実施例1のグラファイト/スラグ系及びコークス/スラグ系の結果から、グラファイトによるスラグ発泡の速度及び程度が、コークスよりもかなり高いことが判明した。
3.炭素/スラグ相互作用の動力学は、溶質炭素及びコークスに対してかなり異なることが予期され、その結果スラグ発泡挙動に幅広い変化がもたらされた。
【0058】
これらの結果から、炭素質材料を適切に選択することがスラグ発泡、従ってEAF動作・運転のエネルギー効率に重要な役割を果たし得ることが判明した。これらの結果に基いて、本発明者らはまた、EAFに炭素含有ポリマーを加えて燃料として部分的に燃焼させ、炭素質材料残さを生成させることによって、スラグ発泡及び/又は金属酸化物の還元及び/又は加炭・復炭が引起され得ると推測した。
【0059】
実施例3
本発明者らは次に、伝統的な炭素供給源の少なくともいくつか(例、コークス)の代わりにEAFプロセスに廃プラスチックを添加することをテストした。下記する原材料を集めて、EAFに供給する原材料をシミュレーションした。
【0060】
原材料
以下の炭素質材料、プラスチック及びスラグを用いてスラグ発泡比較実験を行なった。
【0061】
炭素質材料:グラファイト;コークス;グラファイトとプラスチックの混合物(1:1)から生成される残さ(この残さのXRDスペクトルが図6に示す)。1:1なる比は、炉によって変動してもよい。
【0062】
プラスチック材料:プラスチック廃物の主要な構成要素を示すために線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を入手した。用いたポリエチレン試料の粒径は、100マイクロメートルより小さかった。
【0063】
スラグ:以下のスラグ組成(%wt)を調製した:30.48% CaO;11.72% MgO;13.34% SiO2;5.24% Al2O3;33.33% Fe2O3;5.24% MnO。
【0064】
炭素質材料粉末の基体は、2.2´208Paの圧力下の油圧プレスによって調製した。グラファイト及びコークスの粉末は購入状態で使用された。グラファイトとプラスチックの混合物の調製プロセスは実施例4に記載する。
【0065】
スラグは、上記の混合比における酸化物成分の均質な混合物を1650℃に加熱し、次いで完全な溶融からおよそ30分後に溶融物を銅型で鋳造することによって調製した。
【0066】
装置
静滴下実験を行なうために図1の水平炉を用いた。セラミック炉管の寸法は、内径がΦ50mm及び長さが1000mmであった。アルミナ又はグラファイト製の試験片ホールダーは、炉カバーを通じて管に挿入した。この装置は、炉が所望の温度、この実施例においては典型的には1550℃まで加熱されないうちは試料が炉の低温ゾーンに保持されることを可能にするものであった。
【0067】
実験手順
スラグ発泡を検討するために、最初に水平管抵抗炉においてスラグ/炭素相互作用を検討した。炉の高温ゾーンにおいて所望の温度(1550℃)が達成されて平衡に達するまで、スラグ/炭素集合体を炉の低温ゾーンに保持した。次いで集合体を所望の温度の高温ゾーンに挿入した。この手順によって、より低温において起こり得る、目的の温度において研究されるべき現象に影響し得るあらゆる反応が排除された。実験の継続時間にわたって炉管はアルゴンでパージした。
【0068】
スラグ/炭素系の発泡挙動は、綿密に制御され視覚的にモニターされた静滴下技術を用いて再び検討した。アイリスレンズを装着したCCDカメラを再び用いて、炉の中の実際のin−situ現象を捕捉した。再びカメラからの出力はVCR及びTVモニターに導かれて、全体のプロセスを時間の関数として記録した。フレームグラバーを用いてビデオテープからコンピュータに、スラグと炭素質材料との接触を表わす画像が経時的に捕捉された。再び時間−日付ジェネレータを用いてプロセスの継続時間を表示した。曲線の当てはめ作業に基づいて、コンピュータソフトウェアによって捕捉された画像から容積を求めた。
【0069】
試験片ホールダー上に保持された炭素質材料基体上にスラグ粉末(約0.20g)を載置した。一旦所望の炉温度に達すると、試験片ホールダーを炉の低温ゾーンから高温ゾーンに押し込んで、実験を開始した。全体の反応プロセスはCCDカメラによってモニターされ、ビデオテープを用いて記録した。画像をさらに分析して試料容積を算出した。実験の間、不活性ガスのアルゴンを1l/分の流量で流した。オフガスは、反応速度を評価するために用いられ得るCO及びCO2含有量を得るためにIR分析器に通した。
【0070】
実験結果
この実験を行なうことによって、スラグ中の鉄酸化物と、炭素質材料:グラファイト、グラファイト/プラスチック残さ混合物及びコークスとの反応によって惹起されるスラグ発泡挙動を検討した。典型的な画像を図4Aから図4Cに示す。
【0071】
グラファイトとスラグとの間の反応が、最も活発なスラグ発泡を生成することが観察された。図4Aにおいて明らかに示されるように、発泡スラグ滴の容積が最大であった。
【0072】
50%グラファイト/50%プラスチック混合物の反応中にスラグ小滴から泡が放出された。図4Bに示されるような高温視覚化画像に基づいて、また鉄酸化物の還元を示すオフガス中のCOの生成に基づいて、グラファイト/プラスチック混合物の場合のスラグ発泡現象の発生を確立した。これによって、プラスチックをEAFに添加して燃料として燃焼させることが出来、また炭素質残さが、スラグ発泡及び/又は金属酸化物還元及び/又は加炭・復炭効果を有し得ることが示された。
【0073】
実施例4
グラファイト/プラスチック混合物の調製プロセス
滴下管炉(DTF)を用いてプラスチック−グラファイトブレンドの高温気相反応を行なった。図5に滴下管炉を概略的に示す。
【0074】
DTFで行なわれる各試験は、1200℃にて実施され、一旦炉がこの動作・運転温度に達すると、酸素及び窒素ガスを所望の流量で炉に導入した。自動流量制御器を用いて、ガス流量及び組成をかかる実験の過程で制御した。各テストの際には炉のインジェクターに冷却水を循環させることによって、過熱及び炉の反応ゾーンにおける注入された燃料材料と酸素との相互作用以前に反応が生起するのを防いだ。また、コレクターは、各実験の際に生成される不燃焼の木炭を保持する目的をも達成された。
【0075】
乾燥材料フィーダを用いて水冷式の供給プローブを経由して、プラスチック−グラファイトブレンドを実験反応器に導入した。酸素と窒素ガスの混合物を用いてプラスチックとグラファイトとの固体反応物を反応ゾーン内に送入した。実験の詳細は、以下の通りであった。
【0076】
【表1】
【0077】
この実験の結果、EAFにおいてシミュレーションし得る動作・運転条件下で、プラスチックをEAFに投入して燃料として燃焼させ、スラグ発泡、金属酸化物還元及び溶融鉄の加炭・復炭に有用な炭素質残さを形成出来ることが明らかとなった。
【0078】
実施例5
スラグと炭素質材料との反応に付随するEAFスラグ発泡現象
【0079】
実際のEAFスラグ試料、より具体的には不活性アルゴン雰囲気下でのスラグと炭素質基体との反応過程でのスラグ発泡現象を研究するために実験を行なった。スラグ組成は、27.0% CaO;40.3% FeO;7.9% Al2O3;8.8% MgO;10.9% SiO2;及び4.8% MnOであった。スラグの塩基度は2.5(%CaO/%SiO2)であった。実験のために三つの炭素質材料が選択された。それらは純粋なグラファイト;グラファイト及びプラスチックの混合比1:1の混合物からの炭素質残さ;並びに工業用コークスであった。1:1の比は異なるEAFに対して変動してもよい。各試験に対して約0.075gのスラグを用いた。温度は1550℃に設定した。
【0080】
図6は、滴下管炉(DTF)において反応させた後の50%プラスチックと50%グラファイトの混合物から生成した残さのXRDスペクトルを示す。プラスチック及びグラファイトのピークが明瞭に見られる。
【0081】
CCDカメラを用いてスラグ/炭素発泡現象を記録した。図7は、約200秒の時間における、種々の炭素質基体と反応する発泡スラグ滴の典型的な画像を示す。スラグ発泡は、グラファイト基体との反応の場合に最も活発であった。スラグとコークス並びにプラスチックとグラファイトの混合物との反応は、それほど活発ではなかったが、この結果からプラスチックが、EAFスラグとのスラグ発泡剤及び還元剤の双方として作用・機能出来ることが判明した。
【0082】
IR分析器を用いて、DTFオフガス中のCO及びCO2含有量を分析した。その結果を以下の図8、図9及び図10に示す。グラファイト基体の場合には、オフCO及びCO2ガス含有量は他の場合よりもほんの僅かに大きかった。このことは、鉄酸化物の還元によるガス放出は三つの炭素質材料全てによって起こっており、三つともスラグ発泡に寄与することを意味した。
【0083】
加えて実施例5の結果は、工業用スラグと実験室調製スラグとの組成の相違にもかかわらず、先の実施例の結果と一致する。
【0084】
実施例6
廃プラスチックの燃料効率を検討することによって、EAF又はその他の非高炉型式の炉における燃料としての廃プラスチックの適合性をテストした。実施例4と同じ条件を用いて、図5の滴下管炉(DTF)を用いて燃焼効率を評価した。各テスト実施の前後(即ち各試料がDTFに通された後)に試料の%Cを求めた。炭素含有量の求めるためにLECO炭素含有量分析器を用いた。
【0085】
各試料は、粉末状コークスと混合した、0wt%プラスチックから50wt%プラスチックまでの変動する含量の粉末状廃プラスチックを含んで成るものであった。その結果を下記の表に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
この表は、得られた燃焼効率を示し(最終列)、また未処理のwt%C分析をも掲げている。wt%Cの減少は、炭素が反応(燃焼)して一酸化炭素及び二酸化炭素ガスを生成した結果である。
【0088】
これらの結果から、コークスの燃焼効率は非常に低いが、コークスに廃プラスチックを混合すると燃焼効率が増加することを示す。加えて、燃焼後に残留する残さは、次いでEAF又はその他の非高炉タイプの炉における他の反応に関与する。
【0089】
実施例7
フェロアロイ製造における加炭・復炭剤としての廃プラスチックの機能を検討するために、図11に概略的に示されるような実験室規模の誘導電気炉において炭素質残さの炭素溶解を検討した。
【0090】
(EAF動作・運転温度をシミュレーションするために)炉の温度を制御して1550℃の溶融鉄浴温度を達成させた。これに関しては、この手順の際に炉を囲む「ジャケット」熱交換器構成に冷却水を循環させることによって過熱を防ぎ、ほぼ一定の浴温度を維持した。N2ガス入口を介して溶融浴上に窒素雰囲気を形成した。
【0091】
廃プラスチックの粉末は、炉の中に直接供給し、また粉末は、溶融鉄浴上に供給した。このプラスチックは、燃焼して炭素質残さを生成するが、その残さは、加炭剤・復炭剤として機能出来た。代替策として、例えば図5の滴下管炉からの廃プラスチックを溶融鉄浴上に導入してもよい。
【0092】
浸炭剤(carburiser)カバー法は、炭素溶解を研究するために用いられる標準的なアプローチだった。これに関しては、炭素質材料が金属浴の頂部に実際に乗って浸炭剤カバーを形成した。これは、実験手順において廃プラスチック材料が金属浴の頭頂部に供給されたためである。浴温度を測定するための熱電対が、金属試料を取出して経時的に炭素溶解を漸進的に測定するための石英サンプリング管とともに、浸炭剤カバーを貫通して伸展していた。次いでLECO炭素含有量分析器を用いて、抽出された金属試料の炭素含有量を分析した。
【0093】
炭素溶解の結果を図12に示す。図12において、最初(時間=0)に浴の有する溶解炭素含有量が、重量比1.67%だったことが分かる。次いでプラスチック残さを添加したところ、溶解炭素含有量が2.97%に増加し、次いでおよそ3%レベルで水平になった。時間=25分において更なるプラスチック残さを浴に添加したところ、T=30分において溶解炭素含有量は、3.89%に増加した。
【0094】
この実験は、プラスチック残さを有効な加炭・復炭剤として使用出来ること、及びプラスチック残さの漸進的な導入によって溶解炭素量の漸進的増加を達成出来ることを実証した。EAF又はその他の非高炉型式の炉において、加炭・復炭用の残さは、典型的には廃プラスチック自体を炉に導入し、燃焼して炭素質残さを生成させ、次いで溶融金属浴への残さの混合を促進し、炭素含有量が所望の量に増加するための時間を与えることによって生成されるだろう。廃プラスチックは、無煙炭及びグラファイトなどのより高価な加炭・復炭剤を代替・置換し得る。
【0095】
実施例9
コークス/プラスチック混合物の燃焼効率
コークス及びそのプラスチック(50wt%まで)との混合物を、20%のO2を含有する酸化性雰囲気の中で1200℃にてDTF中で燃焼させた。供給速度は、おおよそ0.0278g/sであった。炭素質残さを集めてその炭素含有量を測定した。DTFでの燃焼に際して灰の無視出来る損失があることを想定して、燃焼効率ηを次のように算出した。
【0096】
【数1】
【0097】
上式において、A0及びAiは、燃焼の前後での灰含有量であり、C0及びCiは、それぞれDTFでの燃焼の前後での炭素含有量を表わすものであった。コークス/プラスチック混合物の燃焼効率についての実験結果を図14に示す。燃焼効率の変動が大きいため、y軸に沿って対数目盛を使用した。
【0098】
この実施例において、コークス/プラスチック混合物の全燃焼効率はコークス単独の燃焼効率の40倍近くである、即ち、コークスは0.25であるのに対してコークス−プラスチック混合物は、〜10であることが観察された。コークス/プラスチック混合物の燃焼効率が高くなるのは、ある程度は、プラスチックの燃焼の際に揮発性物質が多量に放出されるためと考えられる。コークス及びプラスチックの混合物は、燃焼効率が一般的にコークスよりもかなり高くなったが、混合比が持つ効果について明確な傾向は観察されなかった。しかし、プラスチック成分の増加による燃焼効率の低下は観察されなかった。
【0099】
実施例10
炭素質残さでのスラグ発泡
DTFにおける燃焼後のコークスとプラスチックの混合物からの炭素質残さを9トン/cm2荷重下でプレスしてさいころ型に成型し、スラグ発泡実験に対する基体として用いた。所望の温度に達した後、スラグが溶融し始め、スラグ中に存在する鉄酸化物は、炭素質基体との反応を開始して、CO及びCO2ガス並びに金属鉄を生成した。スラグ相を通過したCO及びCO2ガスの放出によって、スラグ発泡が惹起されるのである。反応プロセスは、CCDカメラを用いてモニターされ、更なる画像分析のためにDVDディスクに記録された。図15は、スラグと30%プラスチック+70%コークスの混合物との反応の典型的な画像を示す。スラグが溶融した後、直ちにガス泡がスラグ相を通過して放出されることが観察された。ガスバブルの生成及び破裂のため、スラグ小滴が基体上を活発に転がり回った。約600秒後、ガス生成が相当程度減少するに伴って、スラグ小滴は徐々に沈静化した。
【0100】
また、スラグとコークス/プラスチック基体との反応の過程において、スラグ中のFeOと基体中のCとが反応してCO及びCO2ガスを生成した。IRスペクトロメータを用いてオフガス混合物中のこれらのガスの濃度を測定する。
【0101】
その結果得られる典型的なCO及びCO2ガス含有量を図16に示す。CO及びCO2ガス含有量は、何れも急激に増加して最大値となり、300秒間近く安定状態になってから反応時間に伴い減少したことが分かる。オフガス中の検出されたCO2ガスは、COよりもかなり少なかった。オフガス分析から得られた放出CO及びCO2の容積は、次いで標準ガス等式を用いてモル数に変換した。図17に示されるとおり、除去された酸素のモル数は、スラグと炭素質材料との還元反応の動力学を反映していた。
【0102】
この結果から、スラグのコークスとの還元反応は、プラスチック−コークス混合物との対応する反応よりもかなり速く、その結果放出ガスがより多くなることが判明した。これらのガスは、スラグ発泡を惹起し、スラグ小滴の容積を変化させた。
【0103】
次いで、スラグ小滴中のガス滞留量をVt/V0によって測定した。ここでVtは、時間tにおけるスラグ小滴の容積であり、V0は初期容積である。図18は、コークス及び30%プラスチック+70%コークス混合物に対するVt/Voを時間の関数としてプロットした図である。この結果は、30%プラスチック+70%コークス混合物に対して観察されたスラグ発泡のレベルがコークスに比べてかなり高かったことを示した。コークス/プラスチック混合物の場合小滴径がかなり大きくなり、このような滴径の増加は、コークスに比べてプラスチック混合物の方がかなり長い期間持続された。その理由の大半は、プラスチック混合物とスラグとの反応速度が幾分遅い(図17)ためにガス放出の速度が遅くなり、その結果より小さい泡が生成され、また泡がより長い期間持続されたためと考えられる。コークスについては、スラグ小滴から逸出する高いガス量によって泡の成長が急速であった。
【0104】
コークスと一定範囲のコークス/プラスチック混合物に関する実施例9及び10での検討の結果、EAF製鋼において廃プラスチックを利用する可能性が更に実証された。コークス/プラスチック混合物は、純粋なコークスよりもかなり良好な燃焼を示した。コークス/プラスチック混合物のスラグ発泡特性は、純粋なコークスよりも優れていたことが見出された。スラグ小滴の容積は、顕著に大きく増加し、その容積変化はより長い期間にわたって持続された。これらの結果からまた、コークスをコークス/プラスチック混合物に部分的に置換することによって炭素燃焼を高め得ることが明らかとなった。
【0105】
実施例11
図4に示されるように、実施例3に記載されたものと同様の実験手順において、コークス/スラグ系及び50%コークス/50%プラスチック/スラグ系の発泡特性を検討した。この場合のプラスチックは、高密度ポリエチレン(HDPE)であり、その粒径は、100マイクロメートルより小さかった。スラグは実施例5のものと同様であり、二つの系に対してそれぞれ0.078グラム及び0.092グラムのスラグを用いた。試験実施が異なる時間に行なわれたため、スラグの重量は全く同じではない。しかし、この重量差は実験結果に影響しない。
【0106】
図13A及び図13Bは、0、30、45、60、90、150、210及び300秒の時間間隔における二つの系の滴発泡挙動を並列比較して示した図である。コークス/プラスチック/スラグ系は、発泡特性がコークス/スラグ系よりも比較的急速であったことが分かる。
【0107】
言換えると、HDPEなどのプラスチックも、EAF又はその他の非高炉型式の炉に増大・改善されたスラグ発泡特性を付与出来るということであり、多くの他のプラスチックも、同様の増大・改善された性能を付与し得ることを示している。
【0108】
実施例12
本発明者は、プラスチックのフェロアロイ製造における再使用及び他の非高炉タイプの炉における可燃性燃料としての再使用に対する適合性を示す指数(index)を着想し,提案したのである。この指数は、プラスチックのグリーンインデックス(Green Index for Plastics)(又は“GIP”指数)と称するものであった。本発明者は、この指数が、プラスチックの再利用性に関するものとして一般的な意味で使用され而もGIP指数として公知となり得るものと考えたのである。
【0109】
かくして、プラスチックが例えば製鋼などのフェロアロイ製造などに再利用出来ることを、一般大衆が認識出来る機構・仕組みを確立することが可能となるであろう。本発明者は、プラスチックの種類を識別するために用いられる現行のシステムが、プラスチックの再利用可能性に関するいかなる情報も提供していないことに注目したのである。現行のシステムは、事実プラスチックの種類に関する情報しか提供していない(例、PETに対しての数字の1など)。
【0110】
最後に、本発明者は、関連GIPS指数を開発することによってかかるGIP指数を増強出来ると推測したのである。ここで“S”は、製鋼におけるプラスチックの使用の適合性を表わし示す。
【0111】
一般的にこれらの実験によって、スチール以外のフェロアロイの製造に対して、EAFを用いて、非塊状化プラスチックを炉に投入することが出来、また燃料として燃焼出来且つ、スラグ発泡、金属酸化物還元、及び溶融金属(例、鉄)の加炭・復炭をもたらすために有用な炭素質残さを形成出来ることが示された。
【0112】
更にはこれらの実験によって、再加熱炉などに対して、例えば天然ガスなどの他の燃料に対する補助として非塊状化プラスチックを炉に投入することが出来而も燃料として燃焼可能であることも示された。このことは、製鋼操業運転における再加熱炉などの炉において用いられる(1000℃より高い)高温において特に当てはまる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
即ち、社会において莫大な量の廃プラスチックを使用し且つ消費する有効な手段が、提供される。
【0114】
多くの具体的な実施態様を上記にて記載したが、フェロアロイの製造方法は、多くの他の形態で実施出来ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1に記載された、静滴下アプローチのための水平管抵抗炉構成の概略図である。
【図2】図2A乃至図2Fの各々は、スラグの滴下を示し且つ図1の水平管抵抗炉構成を用いたグラファイト/スラグ系におけるスラグ発泡を時間の関数として逐次的に示す図である。
【図3】図3A乃至図3Fの各々は、スラグの滴下を示し且つ図1の水平管抵抗炉構成を用いたコークス/スラグ系におけるスラグ発泡を時間の関数として逐次的に示す図である。
【図4】図4A乃至図4Cはそれぞれ、スラグ系を有し且つ図1の水平管抵抗炉構成を用いるグラファイト、グラファイト/プラスチック及びコークスについてスラグの滴下を示す。
【図5】実施例4に記載された滴下管炉構成の概略図である。
【図6】実施例5に記載された、50%プラスチックと50%グラファイトとの混合物から滴下管炉において反応させた後得られた炭素質残さのXRDスペクトルを示す図である。
【図7】実施例5に記載された、種々の炭素質材料が惹起するスラグ発泡のCCD画像を示す図である。
【図8】実施例5に記載されたグラファイト基体と工業用スラグとの反応のIR測定結果を示す図である。
【図9】実施例5に記載された50%プラスチックと50%グラファイトとの基体と工業スラグとの反応のIR測定結果を示す図である。
【図10】実施例5に記載されたコークス基体と工業用スラグとの反応のIR測定結果を示す図である。
【図11】実施例7に記載された誘導(炭素溶解)電気炉の概略図である。
【図12】実施例7に記載された、図11の誘導電気炉について、溶融フェロアロイ中の炭素溶解の%を時間に対してプロットした図である。
【図13A】図1の水平管抵抗炉構成を用いた経時的なコークス/スラグ(上側の行)及びコークス/HDPEプラスチック/スラグ(下側の行)の滴下を示す図である。
【図13B】図1の水平管抵抗炉構成を用いた経時的なコークス/スラグ(上側の行)及びコークス/HDPEプラスチック/スラグ(下側の行)の滴下を示す図である。
【図14】実施例9に記載された、1200℃におけるコークスと、コークスとプラスチックとの混合物の燃焼効率、η、をプロットした図である。
【図15】実施例10に記載された、1550℃における70%コークス−30%プラスチック残さ/スラグ系におけるスラグ発泡のCCD画像を時間の関数として示す図である。
【図16】実施例10に記載された、CO及びCO2ガス発生を時間の関数としてプロットした図である。
【図17】実施例10に記載された、スラグのコークスとの相互作用及びスラグと30%プラスチック+70%コークス混合物との相互作用において除去された酸素のモル数をプロットした図である。
【図18】実施例10に記載された、1550℃におけるコークスと30%プラスチック+70%コークスとの混合物に対するVt/Voプロットを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気アーク炉でフェロアロイを製造する方法において、非塊状化炭素含有ポリマーを炉内に投入し、その結果該ポリマーがスラグ起泡剤としての機能を果たす工程。
【請求項2】
前記非塊状化炭素含有ポリマーは炉が、投入されることによって少なくとも部分的に燃焼して炭素質の燃焼残留物を生成し、その結果前記残留物が次いで酸化してスラグ発泡を惹起する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記残留物が、還元剤としても作用し得るか又は加炭・復炭剤として機能し得る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非塊状化炭素含有ポリマーに加えて、他の炭素供給源が炉に投入される、請求項1乃至3の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
他の炭素供給源が、炭素含有ポリマーと共に炉に投入される石炭、コークス、炭素木炭、木炭及び/又はグラファイトである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非塊状化炭素含有ポリマーと他の炭素供給源が、約1:1の重量比で炉に投入される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記非塊状化炭素含有ポリマーが、廃プラスチックである、請求項1乃至6の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素含有ポリマーが、原子C、H及び選択的にOのみを含む、請求項1乃至7の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非塊化炭素含有ポリマーが、ポリマー粒子の形状で炉に投入される、請求項1乃至8の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
製造されるフェロアロイがスチールである、請求項1乃至9の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気アーク炉によるフェロアロイの製造に非塊状化炭素含有ポリマーをスラグ起泡剤として用いる使用。
【請求項12】
フェロアロイの製造が、請求項1乃至10の内いずれか一項に記載の方法によって達成される、請求項13に記載の使用。
【請求項13】
下記する工程から成る、電気アーク炉によってフェロアロイを製造する方法:
― フェロアロイの供給原料を炉に投入する工程;
― 炉の中の供給原料を加熱して溶融状態にし、合金/供給原料の溶融表面上にスラグを形成する工程;及び
― スラグ起泡剤として機能する非塊状の炭素含有ポリマーを炉に投入する工程。
【請求項14】
前記非塊状化炭素含有ポリマーが、投入されることによって炉の中で燃焼して溶融合金/供給原料に熱エネルギーを放出し且つスラグを発泡させる薬剤を生成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
スラグを起泡させること以外に スラグ中の各金属酸化物の化学還元を惹起してフェロアロイを生成させること、及び/又は
スラグを発泡させること、
得られた鉄と炭素の合金を加炭・復炭すること、を特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記非塊化炭素含有ポリマーが、溶融スラグ中の各金属酸化物の化学還元を惹起する付加的な薬剤とともに投入される、請求項13乃至15の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記付加的な薬剤が、請求項4乃至6の内のいずれか一項において定義された他の炭素供給源である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項13乃至17の内のいずれか一項に記載の方法であって、それ以外は請求項2乃至10の内のいずれか一項において定義されたものである、前記方法。
【請求項19】
燃料として作用する非塊状化炭素含有ポリマーを炉に投入する工程を含む、再加熱炉を動作・運転する方法。
【請求項20】
前記再加熱炉が、非塊状化炭素含有ポリマーを燃焼させるために十分な温度で動作・運転する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炉の温度が1000℃よりも高い、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素含有ポリマーが粒状形で炉に投入される、請求項19乃至21の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記非塊化炭素含有ポリマーが、他の燃料とともに炉に投入される、請求項19乃至22の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
他の燃料が天然ガスである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
下記する工程から成る、炭素含有供給原料を使用するフェロアロイ製造炉において炭素含有ポリマーの再利用可能性を決定するためのシステム:
―所定のポリマーのスラグ発泡能力を反映するパラメータの値を誘導する工程;、
前記パラメータを一つまたはそれ以上の他のポリマーから得られた一つまはそれ以上のパラメータ値と比較する工程;及び、
それらのパラメータ値から範囲または尺度を策定する工程。
【請求項26】
前記パラメーが、泡スラグの高さ及び/又は泡スラグの寿命である、請求項25に記載のシステム。
【請求項1】
電気アーク炉でフェロアロイを製造する方法において、非塊状化炭素含有ポリマーを炉内に投入し、その結果該ポリマーがスラグ起泡剤としての機能を果たす工程。
【請求項2】
前記非塊状化炭素含有ポリマーは炉が、投入されることによって少なくとも部分的に燃焼して炭素質の燃焼残留物を生成し、その結果前記残留物が次いで酸化してスラグ発泡を惹起する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記残留物が、還元剤としても作用し得るか又は加炭・復炭剤として機能し得る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非塊状化炭素含有ポリマーに加えて、他の炭素供給源が炉に投入される、請求項1乃至3の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
他の炭素供給源が、炭素含有ポリマーと共に炉に投入される石炭、コークス、炭素木炭、木炭及び/又はグラファイトである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非塊状化炭素含有ポリマーと他の炭素供給源が、約1:1の重量比で炉に投入される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記非塊状化炭素含有ポリマーが、廃プラスチックである、請求項1乃至6の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素含有ポリマーが、原子C、H及び選択的にOのみを含む、請求項1乃至7の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非塊化炭素含有ポリマーが、ポリマー粒子の形状で炉に投入される、請求項1乃至8の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
製造されるフェロアロイがスチールである、請求項1乃至9の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気アーク炉によるフェロアロイの製造に非塊状化炭素含有ポリマーをスラグ起泡剤として用いる使用。
【請求項12】
フェロアロイの製造が、請求項1乃至10の内いずれか一項に記載の方法によって達成される、請求項13に記載の使用。
【請求項13】
下記する工程から成る、電気アーク炉によってフェロアロイを製造する方法:
― フェロアロイの供給原料を炉に投入する工程;
― 炉の中の供給原料を加熱して溶融状態にし、合金/供給原料の溶融表面上にスラグを形成する工程;及び
― スラグ起泡剤として機能する非塊状の炭素含有ポリマーを炉に投入する工程。
【請求項14】
前記非塊状化炭素含有ポリマーが、投入されることによって炉の中で燃焼して溶融合金/供給原料に熱エネルギーを放出し且つスラグを発泡させる薬剤を生成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
スラグを起泡させること以外に スラグ中の各金属酸化物の化学還元を惹起してフェロアロイを生成させること、及び/又は
スラグを発泡させること、
得られた鉄と炭素の合金を加炭・復炭すること、を特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記非塊化炭素含有ポリマーが、溶融スラグ中の各金属酸化物の化学還元を惹起する付加的な薬剤とともに投入される、請求項13乃至15の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記付加的な薬剤が、請求項4乃至6の内のいずれか一項において定義された他の炭素供給源である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項13乃至17の内のいずれか一項に記載の方法であって、それ以外は請求項2乃至10の内のいずれか一項において定義されたものである、前記方法。
【請求項19】
燃料として作用する非塊状化炭素含有ポリマーを炉に投入する工程を含む、再加熱炉を動作・運転する方法。
【請求項20】
前記再加熱炉が、非塊状化炭素含有ポリマーを燃焼させるために十分な温度で動作・運転する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炉の温度が1000℃よりも高い、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素含有ポリマーが粒状形で炉に投入される、請求項19乃至21の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記非塊化炭素含有ポリマーが、他の燃料とともに炉に投入される、請求項19乃至22の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
他の燃料が天然ガスである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
下記する工程から成る、炭素含有供給原料を使用するフェロアロイ製造炉において炭素含有ポリマーの再利用可能性を決定するためのシステム:
―所定のポリマーのスラグ発泡能力を反映するパラメータの値を誘導する工程;、
前記パラメータを一つまたはそれ以上の他のポリマーから得られた一つまはそれ以上のパラメータ値と比較する工程;及び、
それらのパラメータ値から範囲または尺度を策定する工程。
【請求項26】
前記パラメーが、泡スラグの高さ及び/又は泡スラグの寿命である、請求項25に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−511747(P2008−511747A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528506(P2007−528506)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000720
【国際公開番号】WO2006/024069
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(503226040)ニューサウス・イノベーションズ・ピーティーワイ・リミテッド (7)
【住所又は居所原語表記】Rupert Myers Building, Gate 14, Barker Street, UNSW, Sydney, New South Wales 2052, Australia
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000720
【国際公開番号】WO2006/024069
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(503226040)ニューサウス・イノベーションズ・ピーティーワイ・リミテッド (7)
【住所又は居所原語表記】Rupert Myers Building, Gate 14, Barker Street, UNSW, Sydney, New South Wales 2052, Australia
【Fターム(参考)】
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