説明

フェンダ補強構造

【課題】新たに溶接工程を増やすことなくフェンダ前部の上辺部位を確実に補強し得るようにする。
【解決手段】フェンダ4前部でランプ3の上側を前方へ延びる上辺部位4aの剛性を確保するためのフェンダ補強構造に関し、ランプ3のハウジング5に一体的に形成したステー6に、フェンダ4前部の上辺部位4aをエンジンルーム7側から支持する補強部品8を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダ補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示す如く、一般的に車両の前方部分には、夜間等に前方を照らすためのヘッドランプ1や、車幅等を示すためのサイドランプ2から成るランプ3が備えられているが、従来にあっては、この種のランプ3が占める領域がフェンダ4の前部に対し僅かに入り込んでいただけであり、ランプ3の上側を前方へ延びるフェンダ4前部の上辺部位4aは比較的短く形成されていたため、特にフェンダ4前部の上辺部位4aに関して強度面での支障は生じていなかった。
【0003】
尚、この種のランプの周辺構造を開示する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【特許文献1】特開平6−312634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4に示す如く、近年における車両の前方部分に装備されるランプ3では、ヘッドランプとサイドランプを一体的に構成し且つ車幅方向外側に向かうに従い上方へ切れ上がるような吊目型の意匠を採用したものが増えてきているため、このようなランプ3では、該ランプ3が占める領域がフェンダ4の前部に対し後方深くまで入り込み、該フェンダ4前部の上辺部位4aが細長く前方へ延びる形となって剛性が低下し、洗車等でフェンダ4前部の上辺部位4aが手で押されたような場合に変形し易くなるという問題があった。
【0005】
ここで、フェンダ4前部の上辺部位4aの剛性を単純に高めるだけであれば、該上辺部位4aの裏側に補強用の金属片を裏当てして溶接するといった手段が考えられるが、もともとフェンダ4には溶接工程が不要なものが多いため、フェンダ4前部の上辺部位4aを補強するためだけに新たに溶接工程を増やすようなことは製作コストの大幅な高騰を招いてしまう結果となる。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、新たに溶接工程を増やすことなくフェンダ前部の上辺部位を確実に補強し得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フェンダ前部でランプの上側を前方へ延びる上辺部位の剛性を確保するためのフェンダ補強構造であって、ランプのハウジングに、フェンダ前部の上辺部位をエンジンルーム側から支持する補強部品を取り付けたことを特徴とするものである。
【0008】
而して、このようにすれば、ランプのハウジングに対し補強部品を取り付けるだけで、極めて簡便にフェンダ前部の上辺部位をエンジンルーム側から支持することが可能となり、洗車等でフェンダ前部の上辺部位が手で押されたような場合でも、その荷重がフェンダ前部の上辺部位から補強部品を介しランプのハウジングに伝達されて受け持たれ、フェンダ前部の上辺部位の変形が抑制されることになる。
【0009】
更に、本発明においては、フェンダ前部の上辺部位の下端でエンジンルーム側へ向けて折り返された返り部を補強部材で支持せしめると良く、このようにすれば、補強部品が返り部にしっかりと掛止されることで上辺部位に対する支持強度が増し、フェンダ前部の上辺部位の変形がより一層確実に抑制されることになる。
【0010】
また、このようにフェンダ前部の上辺部位の下端が補強部品により確実に支持されて変形し難くなれば、フェンダ前部の上辺部位の下端に隣接するランプのレンズとの隙間が変形により広がるといった不具合も起こらなくなる。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明のフェンダ補強構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0012】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ランプのハウジングに対し補強部品を取り付けるだけで、極めて簡便にフェンダ前部の上辺部位をエンジンルーム側から支持することができるので、新たに溶接工程を増やすことなくフェンダ前部の上辺部位を確実に補強することができ、該フェンダ前部における上辺部位の変形を著しく抑制することができる。
【0013】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、補強部品を返り部にしっかりと掛止させることで上辺部位に対する支持強度を増すことができるので、フェンダ前部の上辺部位の変形をより一層確実に抑制することができ、しかも、フェンダ前部の上辺部位の下端に隣接するランプのレンズとの隙間が変形により広がるといった不具合も回避することができて見栄えの悪化を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0016】
図1及び図2に示す如く、本形態例のフェンダ補強構造においては、ランプ3のハウジング5に一体的に形成したステー6に、フェンダ4前部でランプ3の上側を前方へ延びる上辺部位4aをエンジンルーム7側から支持する樹脂製の補強部品8を取り付けた構造となっており、この補強部品8は、車幅方向両側に平行なガイド面8cを持つカップ状の固定部8aと、該固定部8a上側から車幅方向外側へ扇状に延在する支持部8bとにより構成されるようになっている。
【0017】
他方、前記ステー6は、車両前後方向に延びるガイド壁6aを両側に備えてトラフ構造を成すようになっており、該ステー6の下部の溝形に、前記補強部品8の固定部8aを両ガイド面8cを前記ステー6の両ガイド壁6aに沿わせた状態で嵌め込んで位置決めし、その固定部8aの直下に突き当たるステー6側の突起部9に対しタッピングスクリュー10を上方から捩じ込んで補強部品8の取り付けを行うようにしている。
【0018】
ここで、タッピングスクリュー10を上方から捩じ込むにあたり、補強部品8の固定部8aがステー6の両ガイド壁6aの間に嵌まり込んで位置決めされ且つ回り止めされることになるため、補強部品8のステー6への取り付けは、極めて簡便に且つ精度良く行うことが可能である。
【0019】
また、特に本形態例においては、補強部品8の支持部8bが、フェンダ4前部の上辺部位4aの下端でエンジンルーム7側へ向けて折り返された返り部4bに対しゴム製又はウレタン製のエプトシーラ11を介して突き当たり、この返り部4bをエンジンルーム7側から支持するようにしてある。この際、補強部品8の支持部8bとフェンダ4側との位置のバラツキは、前記エプトシーラ11の弾力により吸収されることになる。
【0020】
尚、図中における12はエンジンフード、13はランプ3のレンズ、14は該レンズ13とハウジング5とのシール部を示す。
【0021】
而して、このようにフェンダ補強構造を構成すれば、ランプ3のハウジング5に一体的に形成されているステー6に対し補強部品8をタッピングスクリュー10で取り付けるだけで、極めて簡便にフェンダ4前部の上辺部位4aをエンジンルーム7側から支持することが可能となり、洗車等でフェンダ4前部の上辺部位4aが手で押されたような場合(図2中の矢印Xの方向から荷重がかかった場合)でも、その荷重がフェンダ4前部の上辺部位4aから補強部品8を介しランプ3のハウジング5に伝達されて受け持たれ、フェンダ4前部の上辺部位4aの変形が抑制されることになり、特に本形態例のように、フェンダ4前部の上辺部位4aの下端でエンジンルーム7側へ向けて折り返された返り部4bを補強部品8で支持させるようにすれば、該補強部品8が返り部4bにしっかりと掛止されることで上辺部位4aに対する支持強度が増し、フェンダ4前部の上辺部位4aの変形がより一層確実に抑制されることになる。
【0022】
従って、上記形態例によれば、ランプ3のハウジング5に一体的に形成されているステー6に対し補強部品8を取り付けるだけで、極めて簡便にフェンダ4前部の上辺部位4aをエンジンルーム7側から支持することができるので、新たに溶接工程を増やすことなくフェンダ4前部の上辺部位4aを確実に補強することができ、該フェンダ4前部における上辺部位4aの変形を著しく抑制することができる。
【0023】
更に、特に本形態例においては、補強部品8を返り部4bにしっかりと掛止させることで上辺部位4aに対する支持強度を増すことができるので、フェンダ4前部の上辺部位4aの変形をより一層確実に抑制することができ、しかも、フェンダ4前部の上辺部位4aの下端に隣接するランプ3のレンズ13との隙間が変形により広がるといった不具合も回避することができて見栄えの悪化を確実に防止することもできる。
【0024】
また、特に本形態例では、ランプ3のハウジング5に一体的に形成されたステー6に対し補強部品8が取り付けられているため、ランプ3のレンズ13とハウジング5とのシール部14から離れた位置で補強部品8の固定部8aが取り付けられることになり、フェンダ4の上辺部位4aに加えられた荷重が前記シール部14に伝わり難く、ランプ3のレンズ13内への水漏れに対しても有利な構造となっていると言えるが、前記ステー6を含むランプ3のハウジング5におけるステー6以外の場所に補強部品8を取り付けることも可能である。
【0025】
尚、本発明のフェンダ補強構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、補強部品は必ずしも樹脂製でなくて良いこと、また、補強部品及びランプのハウジングの形状は図示例に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II矢視の断面図である。
【図3】従来における一般的な車両の前方部分の一例を示す斜視図である。
【図4】近年における車両の前方部分の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
3 ランプ
4 フェンダ
4a 上辺部位
4b 返り部
5 ハウジング
6 ステー
7 エンジンルーム
8 補強部品
14 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダ前部でランプの上側を前方へ延びる上辺部位の剛性を確保するためのフェンダ補強構造であって、ランプのハウジングに、フェンダ前部の上辺部位をエンジンルーム側から支持する補強部品を取り付けたことを特徴とするフェンダ補強構造。
【請求項2】
フェンダ前部の上辺部位の下端でエンジンルーム側へ向けて折り返された返り部を補強部材で支持せしめたことを特徴とする請求項1に記載のフェンダ補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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