フォトクロミック物質及びその製造方法
【課題】化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を実現する。
【解決手段】本発明の物質は、下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表され、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたものである。
【解決手段】本発明の物質は、下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表され、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示す物質、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォトクロミズムを示すフォトクロミック材料は、光ディスク(超高密度メモリ)、光スイッチ、光印刷用インク、ディスプレイ、サングラス、調光ガラス等の様々な工業的応用が期待されている。
【0003】
ここで、フォトクロミズムとは、物質に光を照射すると変色し、逆に変色した物質に他の光を照射又は加熱すると退色して元に戻る一種の可逆的な現象をいい、このような性質を示す材料をフォトクロミック材料という。
【0004】
フォトクロミック材料は、有機物及び無機物の両方において知られている。有機フォトクロミック材料としては、アゾベンゼン、スピロピラン、ジアリールエテン等が知られている。しかしながら、有機フォトクロミズム材料は、熱に対する安定性が低く、異性化の繰り返しによる化学種そのものの劣化が生じ易い等の問題があった。
【0005】
このため、無機物をベースにしたフォトクロミック材料が、化学的、熱的に安定であり注目されている。
【0006】
無機フォトクロミック材料としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タングステンと酸化チタンとの混合物、ハロゲン化銀を封入したガラス等が知られている。しかしながら、これらの材料では、本質的に、紫外光領域にしか感度を有さない。紫外線は人体に有害であり、また、小型の光源の種類は少ないため、これらの無機フォトクロミック材料では利用分野が制限され得る。
【0007】
このような問題を解決するため、五酸化二バナジウムからなる、可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−303033号公報(2001年10月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、これまでに種々のフォトクロミック材料が開発されているが、化学的、熱的に安定であり、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料の数はまだ少ない。このため、より多くの種類のこのようなフォトクロミック材料が求められている。
【0010】
また、五酸化二バナジウムは毒性が強い物質であるため、より毒性の低い物質を用いたフォトクロミック材料が求められている。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より毒性が低く、化学的、熱的に安定であり、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る物質は、上記課題を解決するために、下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表される組成を有する物質であり、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、より毒性が低く、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することができるという効果を奏する。特に、上記構成では、焼成時にホウ酸を混合しているため、高い結晶性を有する物質となり、フォトクロミズムによる色の変化が大きい。
【0014】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるcが、2.5≦c≦3の範囲内であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0016】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるMが、Fe及びCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0<fであることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、高価な希土類元素を使用せずに、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0018】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるMがNdであり、0<f≦1であることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0020】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるfが0であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る物質では、焼成する上記工程を、還元雰囲気下で行うことが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0023】
本発明に係る物質では、焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことが好ましい。
【0024】
本発明に係るフォトクロミック材料は、上記課題を解決するために、上述した本発明に係る物質の何れか1つを含むことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、本発明に係る上記物質を含むため、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明に係る物質の製造方法は、上記課題を解決するために、上述した本発明に係る物質の何れか1つの製造方法であり、
上記物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含むことを特徴としている。
【0027】
上記方法によれば、上記工程を含むため、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を製造することができるという効果を奏する。
【0028】
本発明に係る物質の製造方法では、上記焼成工程を、還元雰囲気下で行うことが好ましい。
【0029】
上記方法によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を製造することができる。
【0030】
本発明に係る物質の製造方法では、焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る物質は、以上のように、式(1)で表され、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたことを特徴としている。
【0032】
また、本発明に係るフォトクロミック材料は、上述した本発明に係る物質の何れか1つを含むことを特徴としている。
【0033】
更には、本発明に係る物質の製造方法は、上記物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含むことを特徴としている。
【0034】
このため、より毒性が低く、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】紫外線照射前後、並びに更に加熱した後における、実施例1で作製した試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図2】紫外線照射後における、実施例1で作製した試料の反射率の時間変化を示すグラフである。
【図3】紫外線照射後における実施例1で作製した試料の反射率の温度に対する影響を示すグラフである。
【図4】紫外線照射と185℃3分間の加熱とを繰り返し行った場合における、実施例1で作製した試料の反射率の変化を示すグラフである。
【図5】可視光照射前後、並びに更に可視光を照射した後における、実施例1で作製した試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図6】可視光照射と紫外線照射とを繰り返し行った場合における、実施例1で作製した試料の反射率の変化を示すグラフである。
【図7】紫外線照射前後、並びに更に可視光を照射した後における、実施例1で作製した試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図8】紫外線照射後における、実施例1で作製した試料の反射率の時間変化を示すグラフである。
【図9】紫外線照射後における、参考例1で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図10】紫外線照射後における、参考例1で作製した各試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図11】紫外線照射後における、実施例2で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図12】紫外線照射後における、実施例2で作製した各試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図13】紫外線照射後における、実施例3で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図14】紫外線照射後における、実施例4で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図15】紫外線照射後における、実施例5で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図16】紫外線照射後における、実施例6で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図17】紫外線照射後における、参考例2で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図18】紫外線照射後における、参考例3で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図19】紫外線照射後における、実施例7で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図20】紫外線照射後における、実施例8〜10で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図21】紫外線照射後における、実施例11〜13で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図22】紫外線照射後における、実施例14〜16で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図23】紫外線照射後における、実施例17〜19で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図24】紫外線照射後における、実施例20〜22で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図25】紫外線照射後における、実施例23〜25で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図26】紫外線照射後における、実施例26〜28で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図27】紫外線照射後における、実施例29〜30で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図28】紫外線照射後における、実施例31〜33で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図29】紫外線照射後における、実施例34〜36で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図30】紫外線照射後における、実施例37〜40で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図31】紫外線照射後における、実施例41〜43で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図32】紫外線照射後における、実施例44〜46で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図33】紫外線照射後における、実施例47で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図34】紫外線照射後における、実施例48〜50で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図35】紫外線照射後における、実施例51で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図36】紫外線照射後における、実施例52〜54で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図37】紫外線照射後における、実施例55で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図38】紫外線照射後における、実施例56で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図39】紫外線照射後における、実施例57で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0037】
(I)フォトクロミック物質
本発明に係る物質は、下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表される組成を有し、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られる。
【0038】
また、本発明に係る上記物質は、上記式(1’)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1’)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu及びNdから選択される少なくとも1つの金属であり、0≦f≦1である。)
で表される組成を有する物質であり、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたものであることが好ましい。
【0039】
これにより、当該物質は、化学的、熱的に安定性を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示す。
【0040】
より具体的には、上記物質は、無機物であるため、高い耐久性を有し、有機物のように溶媒に溶かす必要がなく、固体そのものでフォトクロミズムを示す。また、紫外光のみならず可視光によってもフォトクロミズムを示し、これらの光の照射後に紅色を示す。
【0041】
更には、光照射後も、フォトクロミズムによって発現した色を長時間保持することができ、加えて、熱に対して当該色が変化し難い。
【0042】
また、フォトクロミズムによって変色した上記物質に対して、熱や光を照射すれば、再度元の色に戻すことができ、これらの着色及び脱色速度が速い。そして、上記物質は、比較的安価に作製することができる。
【0043】
尚、本発明に係る物質は、式(1)で表される組成以外にも、フォトクロミズムを阻害しない範囲で、他の元素等を更に含有していてもよい。
【0044】
上記式(1)におけるcは、1.4≦c≦3.5であり、2.0<c≦3.5の範囲内であることが好ましく、2.5≦c≦3の範囲内であることがより好ましい。式(1)におけるcが上記範囲内であれば、フォトクロミズムにおける変化量(反射率の差)を大きくすることができる。
【0045】
上記式(1)におけるMは、V、Fe、Cr、Mn、Cu、Ni、Co、Mo、Ce、Eu及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素であることが好ましく、Fe、Cu、Eu又はNdであることがより好ましい。
【0046】
上記式(1)におけるMは、2種以上の元素の組合せでもよく、例えば、Eu及びCu、Eu及びFe、Fe及びCu、Eu及びFe及びCu等の組合せが挙げられる。この場合、各元素の合計量がfとなる。
【0047】
上記式(1)におけるfは、0≦fであればよいが、0≦f≦2であることが好ましく、0≦f≦1であることがより好ましい。
【0048】
上記MがEuである場合には、0<f≦1の範囲内であり、0<f≦0.5の範囲内であることが好ましく、0<f≦0.2の範囲内であることがより好ましい。式(1)におけるfが上記範囲内であれば、フォトクロミズムにおける変化量(反射率の差)を大きくすることができる。
【0049】
また、上記MがNdである場合には、0<f≦1の範囲内であり、0<f≦0.5の範囲内であることが好ましく、0<f≦0.12の範囲内であることがより好ましい。式(1)におけるfが上記範囲内であれば、フォトクロミズムにおける変化量(反射率の差)を大きくすることができる。
【0050】
更には、上記MがFeである場合には、0<fの範囲内であり、0.1≦fの範囲内であることが好ましく、0.1≦f≦1.5の範囲内であることがより好ましい。また、上記MがCuである場合には、0<fの範囲内であり、0.2≦fの範囲内であることが好ましく、0.2≦f≦1.5の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
また、本発明に係る物質では、当該物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られる。このため、得られる物質は結晶性となる。ここで、本発明に係る物質では、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度が、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であることが好ましい。
【0052】
(II)フォトクロミック物質の製造方法
本発明に係る物質は、当該物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって製造することができる。
【0053】
尚、上記混合物には、上記各原料及びホウ酸以外にも、フォトクロミズムを阻害しない範囲で、他の物質等を更に含有していてもよい。
【0054】
上記各原料として、例えば、Ba元素を含む原料は、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、ケイ化バリウム、ホウ酸バリウムが挙げられ、Ca元素を含む原料は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、水酸化カルシウムが挙げられ、Mg元素を含む原料は、炭酸マグネシウムが挙げられ、Si元素を含む原料は、シリコン、酸化シリコンが挙げられ、Eu元素を含む原料は、酸化ユーロピウム、硝酸ユーロピウムが挙げられ、Nd元素を含む原料は、酸化ネオジム、炭酸ネオジム、硝酸ネオジム、水酸化ネオジムが挙げられ、O元素を含む原料は、上述した各種酸化物が挙げられる。
【0055】
本発明に係る製造方法では、上記各原料を、目的とする物質の組成比で混合し、更にホウ酸を混合し、当該混合物を焼成することによって得ることができる。
【0056】
上記焼成におけるホウ酸の量は、特には限定されないが、例えば、BaMgSiO4に対して2〜10モル%の範囲内で混合させることが好ましい。
【0057】
上記焼成は、還元雰囲気下で行うことが好ましく、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスと水素との混合ガス中で行うことが挙げられる。係る場合における、混合ガスにおける水素の濃度は、2〜10体積%の範囲内であることが好ましい。
【0058】
上記焼成は、例えば、1300℃の温度で、1〜4時間加熱することによって行うことができる。
【0059】
(III)フォトクロミック材料
本発明に係るフォトクロミック材料は、本発明に係る上記物質を含む。このため、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供し得る。
【0060】
更には、フォトクロミズムによる変色の耐熱性が高く、例えば、100℃程度までは変色を保持し得る。また、一旦、フォトクロミズムが生じれば、その変色を長時間(例えば、1時間以上)保持し得る。
【0061】
上記フォトクロミック材料では、本発明に係る上記物質を1種類のみ含んでいてもよく、複数種類含んでいてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1:Ba2Mg2.5Si2O8.5:Eu0.2〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユーロピウムを、2:2.5:2:0.2のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Eu0.2(試料A)を作製した。尚、作製した試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0064】
<紫外線によるフォトクロミズムの測定>
作製した試料Aについて、365nmの紫外線(124mW/cm2)を3分間照射前後で反射率スペクトルを測定し、フォトクロミズムの有無を確認した。
【0065】
その結果、図1に示すように、紫外線の照射によって、523nmを中心に反射率が大きく低下し、白色から紅色へと変化するフォトクロミズムを示すことが確認された。
【0066】
また、紫外線照射後の試料を、185℃で3分間加熱することによって、元の反射スペクトルに戻ることが確認された。
【0067】
また、上記紫外線照射後における試料Aの反射率の時間変化について測定した結果(大気中、室温)を図2に示す。図2に示すように、紫外線照射から1時間経過後であっても、変化した色は安定であることが確認された。
【0068】
次に、温度に対する、上記紫外線照射後における試料Aの反射率の影響を測定した結果を図3に示す。図3に示すように、100℃程度までは、変化した色は安定であることが確認された。
【0069】
また、試料Aについて、上記紫外線照射と185℃で3分間の加熱とを繰り返し行った場合における反射率の変化を図4に示す。図4に示すように、紫外線照射と加熱とを5サイクル繰り返しても反射率は変化していなかった。
【0070】
以上のことから、試料Aは、データが消え難く、繰り返しデータの書き換えができ、高温であっても記録が消去し難い記録材料を提供し得ることが確認された。
【0071】
<可視光によるフォトクロミズムの測定>
試料Aについて、405nmの可視光(7.2mW/cm2)を30分間照射前後の反射率スペクトルを測定し、フォトクロミズムの有無を確認した。
【0072】
その結果、図5に示すように、可視光の照射によって、523nmを中心に反射率が大きく低下し、紫外線を照射した場合と同様に、白色から紅色へと変化するフォトクロミズムを示すことが確認された。
【0073】
また、405nmの光照射後の試料Aに対して、532nmの可視光(2830mW/cm2)を1分間照射することによって、元の反射スペクトルに戻ることが確認された。
【0074】
次に、試料Aについて、405nmの上記可視光と532nmの上記可視光とを繰り返し照射した場合における反射率の変化を図6に示す。図6に示すように、これらの操作を5サイクル以上繰り返しても反射率はほとんど変化していなかった。
【0075】
また、365nmの紫外線(124mW/cm2)を3分間照射した試料Aと、その後532nmの可視光(2830mW/cm2)を1分間照射した試料Aとの反射スペクトルを図7に示す。その結果、紫外線でフォトクロミズムを起こした試料Aについても、可視光を照射することによって、元の反射スペクトルに戻ることが確認された。
【0076】
更には、上記365nmの紫外線照射(124mW/cm2、3分間)後における試料Aの反射率の時間変化について測定した結果(大気中、室温)を図8に示す。
【0077】
図8に示すように、紫外線照射からおよそ250時間経過後であっても、フォトクロミズムによって変化した色は安定であることが確認された。
【0078】
〔参考例1:Mgの組成比の影響〕
実施例1と同様の操作によって、Ba2MgxSi2O(6+x)においてMgの組成比xを1.2〜3.3に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0079】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の反射率スペクトルを測定した結果を図9及び図10に示す(図9中の数字は、Mgの組成比xである)。
【0080】
図9及び10に示すように、Mgの組成比xがおよそ1.4以上になると、フォトクロミズムが観察され、Mgの組成比xが増加するに従って、その変化が大きくなることが確認された。
【0081】
〔実施例2:Euの組成比の影響〕
実施例1におけるEuの添加量を0〜1モル%の範囲で変化させて、つまり、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Euxの組成においてxを0〜1の範囲内で変化させて各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0082】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図11に示す。
【0083】
図11に示すように、Euの添加量が約0.2モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.2モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0084】
また、Euの添加量が0モル%の試料と、0.5モル%の試料とについて、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の反射率スペクトルを測定した結果を図12に示す。
【0085】
その結果、Euを添加することによって、フォトクロミズム後において吸収する光の波長の範囲が広がることが確認された。
【0086】
〔実施例3:Ndの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユーロピウム、酸化ネオジムを、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Eu・NdxにおいてNdの組成比xを0〜1に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0087】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図13に示す。
【0088】
図13に示すように、Ndの添加量が約0.12モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.12モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0089】
〔実施例4:Baの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素を、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Siに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、BaxMg2.5Si2O(6.5+x)においてBaの組成比xを1.8〜2.2に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0090】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図14に示す。
【0091】
図14に示すように、Baの組成比xが約2.0のときに、反射率が最も減少することが確認された。
【0092】
〔実施例5:Caの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユーロピウムを、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba1.9Ca0.1Mg2.5Si2O8.5:Euの試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0093】
そして、上記試料について、実施例1で作製した試料と共に、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図15に示す。
【0094】
図15に示すように、CaのBaに対する濃度が、0.5モル%くらいまでは、反射率はほとんど変化しないことが確認された。
【0095】
〔実施例6:Siの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素を、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2.5SixO(4.5+2x)においてSiの組成比xを1.8〜2.2に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0096】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図16に示す。
【0097】
図16に示すように、Siの組成比xが約2.0のときに、反射率が最も減少することが確認された。
【0098】
〔参考例2:ホウ酸の混合量の影響〕
ホウ酸の量を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)0〜10モル%で変化させたこと以外は、参考例1と同様の操作を行い、Ba2Mg2.5Si2O8.5の各試料を作製した。尚、ホウ酸の量が2モル%以上の条件で作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0099】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図17に示す。
【0100】
図17に示すように、ホウ酸を加えることによって、反射率は大幅に減少することが確認された。
【0101】
〔参考例3:水素濃度の影響〕
焼成時のアルゴンガス中の水素濃度を0〜5体積%の範囲で変化させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Euの各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0102】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図18に示す。
【0103】
図18に示すように、焼成時の不活性ガス中に水素を混合させることによって、反射率は大幅に減少することが確認された。
【0104】
〔実施例7:焼成温度の影響〕
焼成温度を1200℃〜1400℃に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、各種試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0105】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図19に示す。
【0106】
図19に示すように、焼成温度を高くすることによって、反射率が減少することが確認された。
【0107】
〔実施例8:Ba2Mg2Si2O8:Li0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、炭酸リチウムを、2:2:2:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Li0.001を作製した。
【0108】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図20に示す。
【0109】
〔実施例9:Ba2Mg2Si2O8:S0.001〕
炭酸リチウムの代わりに硫黄を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:S0.001を作製した。
【0110】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図20に示す。
【0111】
〔実施例10:Ba2Mg2Si2O8:C0.001〕
炭酸リチウムの代わりに炭素を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:C0.001を作製した。
【0112】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図20に示す。
【0113】
〔実施例11:Ba2Mg2Si2O8:Ti0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化チタンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ti0.001を作製した。
【0114】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図21に示す。
【0115】
〔実施例12:Ba2Mg2Si2O8:Al0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化アルミニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Al0.001を作製した。
【0116】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図21に示す。
【0117】
〔実施例13:Ba2Mg2Si2O8:V0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化バナジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:V0.001を作製した。
【0118】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図21に示す。
【0119】
〔実施例14:Ba2Mg2Si2O8:Mn0.001〕
炭酸リチウムの代わりに炭酸マンガンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Mn0.001を作製した。
【0120】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図22に示す。
【0121】
〔実施例15:Ba2Mg2Si2O8:Cr0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化クロムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Cr0.001を作製した。
【0122】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図22に示す。
【0123】
〔実施例16:Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化鉄を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001を作製した。
【0124】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図22に示す。
【0125】
〔実施例17:Ba2Mg2Si2O8:Cu0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化銅を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Cu0.001を作製した。
【0126】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図23に示す。
【0127】
〔実施例18:Ba2Mg2Si2O8:Ni0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ニッケルを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ni0.001を作製した。
【0128】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図23に示す。
【0129】
〔実施例19:Ba2Mg2Si2O8:Co0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化コバルトを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Co0.001を作製した。
【0130】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図23に示す。
【0131】
〔実施例20:Ba2Mg2Si2O8:Ge0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ゲルマニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ge0.001を作製した。
【0132】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図24に示す。
【0133】
〔実施例21:Ba2Mg2Si2O8:Zn0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化亜鉛を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Zn0.001を作製した。
【0134】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図24に示す。
【0135】
〔実施例22:Ba2Mg2Si2O8:Ga0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ガリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ga0.001を作製した。
【0136】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図24に示す。
【0137】
〔実施例23:Ba2Mg2Si2O8:Zr0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ジルコニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Zr0.001を作製した。
【0138】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図25に示す。
【0139】
〔実施例24:Ba2Mg2Si2O8:Y0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化イットリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Y0.001を作製した。
【0140】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図25に示す。
【0141】
〔実施例25:Ba2Mg2Si2O8:Nb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ニオブを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Nb0.001を作製した。
【0142】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図25に示す。
【0143】
〔実施例26:Ba2Mg2Si2O8:In0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化インジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:In0.001を作製した。
【0144】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図26に示す。
【0145】
〔実施例27:Ba2Mg2Si2O8:Ag0.001〕
炭酸リチウムの代わりに銀コロイドを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ag0.001を作製した。
【0146】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図26に示す。
【0147】
〔実施例28:Ba2Mg2Si2O8:Mo0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化モリブデンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Mo0.001を作製した。
【0148】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図26に示す。
【0149】
〔実施例29:Ba2Mg2Si2O8:Sn0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化スズを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Sn0.001を作製した。
【0150】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図27に示す。
【0151】
〔実施例30:Ba2Mg2Si2O8:Sb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化アンチモンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Sb0.001を作製した。
【0152】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図27に示す。
【0153】
〔実施例31:Ba2Mg2Si2O8:Bi0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ビスマスを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Bi0.001を作製した。
【0154】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図28に示す。
【0155】
〔実施例32:Ba2Mg2Si2O8:Ta0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化タンタルを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ta0.001を作製した。
【0156】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図28に示す。
【0157】
〔実施例33:Ba2Mg2Si2O8:W0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化タングステンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:W0.001を作製した。
【0158】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図28に示す。
【0159】
〔実施例34:Ba2Mg2Si2O8:La0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ランタンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:La0.001を作製した。
【0160】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図29に示す。
【0161】
〔実施例35:Ba2Mg2Si2O8:Ce0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化セリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ce0.001を作製した。
【0162】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図29に示す。
【0163】
〔実施例36:Ba2Mg2Si2O8:Pr0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化プラセオジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Pr0.001を作製した。
【0164】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図29に示す。
【0165】
〔実施例37:Ba2Mg2Si2O8:Nd0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ネオジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Nd0.001を作製した。
【0166】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0167】
〔実施例38:Ba2Mg2Si2O8:Sm0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化サマリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Sm0.001を作製した。
【0168】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0169】
〔実施例39:Ba2Mg2Si2O8:Gd0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ガドリニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Gd0.001を作製した。
【0170】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0171】
〔実施例40:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ユウロピウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001を作製した。
【0172】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0173】
〔実施例41:Ba2Mg2Si2O8:Er0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化エルビウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Er0.001を作製した。
【0174】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図31に示す。
【0175】
〔実施例42:Ba2Mg2Si2O8:Ho0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ホルミウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ho0.001を作製した。
【0176】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図31に示す。
【0177】
〔実施例43:Ba2Mg2Si2O8:Tb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化テルビウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Tb0.001を作製した。
【0178】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図31に示す。
【0179】
〔実施例44:Ba2Mg2Si2O8:Tm0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ツリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Tm0.001を作製した。
【0180】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図32に示す。
【0181】
〔実施例45:Ba2Mg2Si2O8:Yb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化イッテルビウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Yb0.001を作製した。
【0182】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図32に示す。
【0183】
〔実施例46:Ba2Mg2Si2O8:Lu0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ルテチウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Lu0.001を作製した。
【0184】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図32に示す。
【0185】
〔実施例47:Ba2Mg2Si2O8:P0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化リンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:P0.001を作製した。
【0186】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図33に示す。
【0187】
〔実施例48:Ba2Mg2Si2O8:Cd0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化カドミウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Cd0.001を作製した。
【0188】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図34に示す。
【0189】
〔実施例49:Ba2Mg2Si2O8:Pb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化鉛を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Pb0.001を作製した。
【0190】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図33に示す。
【0191】
〔実施例50:Cuの組成比の影響〕
実施例17におけるCuの添加量を0〜1.2モル%の範囲で変化させて、つまり、Ba2Mg2Si2O8:Cuxの組成においてxを0〜1.2の範囲内で変化させて各試料を作製した。そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図34に示す。
【0192】
図34に示すように、Cuの添加量が約0.2モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.2モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0193】
〔実施例51:Feの組成比の影響〕
実施例16におけるFeの添加量を0〜0.8モル%の範囲で変化させて、つまり、Ba2Mg2Si2O8:Fexの組成においてxを0〜0.8の範囲内で変化させて各試料を作製した。そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図35に示す。
【0194】
図35に示すように、Feの添加量が約0.2モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.1モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0195】
図20〜33に示すように、バナジウム(V)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、及びセリウム(Ce)は、添加することによってBaMgSiO4の吸収スペクトルに影響を与えることがわかった。特に、CuとFeは、523nm付近の吸収スペクトルへの影響が大きかった。
【0196】
また、図34及び35に示すように、Cuは0.1mol%で、Feは0.05mol%で飽和する傾向を示し、両元素とも僅かな添加量で効果があることがわかった。特に、Feは523nmの光の反射率を15%以下にしていることから、Euと同等の高い効果を示すことがわかった。このように、Euのような希土類元素を使用しなくても優れた性能が得られるため、BaMgSiO4系のフォトクロミック材料としての応用分野を広げ、量産する場合に有利となる。
【0197】
<添加元素の複合効果の検討>
CuやFeにも著しい添加効果が見られたため、添加元素の複合化による効果について以下確認した。
【0198】
〔実施例52:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Cu0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユウロピウム、酸化銅を、2:2:2:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Cu0.001を作製した。
【0199】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図36に示す。
【0200】
〔実施例53:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユウロピウム、酸化鉄を、2:2:2:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001を作製した。
【0201】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図36に示す。
【0202】
〔実施例54:Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001Cu0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化ユウロピウムを、2:2:2:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001Cu0.001を作製した。
【0203】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図36に示す。
【0204】
〔実施例55:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001Cu0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユウロピウム、酸化鉄、酸化銅を、2:2:2:0.001:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001Cu0.001を作製した。
【0205】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図37に示す。
【0206】
図36に示すように、添加元素がEuのみである場合と比較して、Eu+Cu(実施例52)、Eu+Fe(実施例53)、Fe+Cu(実施例54)の可視光領域における吸収量が増加することがわかった。最も効果的な組合せはEu+Fe(実施例53)であった。また、Eu+Fe(実施例53)とEu+Fe+Cu(実施例55)とを比較した場合、Cuの添加効果はほとんど見られなかった。
【0207】
<原料変更の検討>
炭酸バリウムは毒物であるため、製造過程における人に対する影響を考慮して、バリウム化合物の中で無毒であることが知られている硫酸バリウムを原料として用いて、以下フォトクロミック現象を確認した。
【0208】
〔実施例56:Ba2Mg2Si2O8〕
硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素を、2:2:2のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8を作製した。
【0209】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図38に示す。
【0210】
〔実施例57:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001〕
炭酸バリウムを硫酸バリウムに変更したこと以外は実施例53と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001を作製した。
【0211】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図39に示す。
【0212】
図38に示すように、硫酸バリウムを使用した場合でも、炭酸バリウムを用いた場合と同様のフォトクロミック現象が観察された。このため、有毒な炭酸バリウムを使用せずに無毒の硫酸バリウムを使用することが可能であることが確認された。
【0213】
尚、硫酸バリウムを用いた場合では、炭酸バリウムを用いた場合と比較して可視光に対する吸収量が増加していたが、これは、硫酸バリウム中の硫黄が化合物中に残ってしまうことに起因していると思われる。
【0214】
EuとFeを添加した化合物においても、硫酸バリウムを使用した場合は、炭酸バリウムを用いた場合と同様のフォトクロミック現象が観察され、無毒の硫酸バリウムを原料として使用し得ることが確認された。
【0215】
尚、実施例8〜57で作製した化合物についても、実施例1と同様に可視光によるフォトクロミズムの測定を行った。その結果、紫外線を照射した場合と同様に、白色から紅色へと変化するフォトクロミズムを示すことが確認された。
【0216】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明の物質は、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料に好適に用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示す物質、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォトクロミズムを示すフォトクロミック材料は、光ディスク(超高密度メモリ)、光スイッチ、光印刷用インク、ディスプレイ、サングラス、調光ガラス等の様々な工業的応用が期待されている。
【0003】
ここで、フォトクロミズムとは、物質に光を照射すると変色し、逆に変色した物質に他の光を照射又は加熱すると退色して元に戻る一種の可逆的な現象をいい、このような性質を示す材料をフォトクロミック材料という。
【0004】
フォトクロミック材料は、有機物及び無機物の両方において知られている。有機フォトクロミック材料としては、アゾベンゼン、スピロピラン、ジアリールエテン等が知られている。しかしながら、有機フォトクロミズム材料は、熱に対する安定性が低く、異性化の繰り返しによる化学種そのものの劣化が生じ易い等の問題があった。
【0005】
このため、無機物をベースにしたフォトクロミック材料が、化学的、熱的に安定であり注目されている。
【0006】
無機フォトクロミック材料としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タングステンと酸化チタンとの混合物、ハロゲン化銀を封入したガラス等が知られている。しかしながら、これらの材料では、本質的に、紫外光領域にしか感度を有さない。紫外線は人体に有害であり、また、小型の光源の種類は少ないため、これらの無機フォトクロミック材料では利用分野が制限され得る。
【0007】
このような問題を解決するため、五酸化二バナジウムからなる、可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−303033号公報(2001年10月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、これまでに種々のフォトクロミック材料が開発されているが、化学的、熱的に安定であり、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料の数はまだ少ない。このため、より多くの種類のこのようなフォトクロミック材料が求められている。
【0010】
また、五酸化二バナジウムは毒性が強い物質であるため、より毒性の低い物質を用いたフォトクロミック材料が求められている。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より毒性が低く、化学的、熱的に安定であり、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る物質は、上記課題を解決するために、下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表される組成を有する物質であり、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、より毒性が低く、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することができるという効果を奏する。特に、上記構成では、焼成時にホウ酸を混合しているため、高い結晶性を有する物質となり、フォトクロミズムによる色の変化が大きい。
【0014】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるcが、2.5≦c≦3の範囲内であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0016】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるMが、Fe及びCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0<fであることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、高価な希土類元素を使用せずに、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0018】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるMがNdであり、0<f≦1であることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0020】
本発明に係る物質では、上記式(1)におけるfが0であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る物質では、焼成する上記工程を、還元雰囲気下で行うことが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を提供することができる。
【0023】
本発明に係る物質では、焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことが好ましい。
【0024】
本発明に係るフォトクロミック材料は、上記課題を解決するために、上述した本発明に係る物質の何れか1つを含むことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、本発明に係る上記物質を含むため、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明に係る物質の製造方法は、上記課題を解決するために、上述した本発明に係る物質の何れか1つの製造方法であり、
上記物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含むことを特徴としている。
【0027】
上記方法によれば、上記工程を含むため、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を製造することができるという効果を奏する。
【0028】
本発明に係る物質の製造方法では、上記焼成工程を、還元雰囲気下で行うことが好ましい。
【0029】
上記方法によれば、フォトクロミズムにおける変化がより大きいフォトクロミック材料を製造することができる。
【0030】
本発明に係る物質の製造方法では、焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る物質は、以上のように、式(1)で表され、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたことを特徴としている。
【0032】
また、本発明に係るフォトクロミック材料は、上述した本発明に係る物質の何れか1つを含むことを特徴としている。
【0033】
更には、本発明に係る物質の製造方法は、上記物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含むことを特徴としている。
【0034】
このため、より毒性が低く、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】紫外線照射前後、並びに更に加熱した後における、実施例1で作製した試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図2】紫外線照射後における、実施例1で作製した試料の反射率の時間変化を示すグラフである。
【図3】紫外線照射後における実施例1で作製した試料の反射率の温度に対する影響を示すグラフである。
【図4】紫外線照射と185℃3分間の加熱とを繰り返し行った場合における、実施例1で作製した試料の反射率の変化を示すグラフである。
【図5】可視光照射前後、並びに更に可視光を照射した後における、実施例1で作製した試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図6】可視光照射と紫外線照射とを繰り返し行った場合における、実施例1で作製した試料の反射率の変化を示すグラフである。
【図7】紫外線照射前後、並びに更に可視光を照射した後における、実施例1で作製した試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図8】紫外線照射後における、実施例1で作製した試料の反射率の時間変化を示すグラフである。
【図9】紫外線照射後における、参考例1で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図10】紫外線照射後における、参考例1で作製した各試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図11】紫外線照射後における、実施例2で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図12】紫外線照射後における、実施例2で作製した各試料についての反射率スペクトルを示すグラフである。
【図13】紫外線照射後における、実施例3で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図14】紫外線照射後における、実施例4で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図15】紫外線照射後における、実施例5で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図16】紫外線照射後における、実施例6で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図17】紫外線照射後における、参考例2で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図18】紫外線照射後における、参考例3で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図19】紫外線照射後における、実施例7で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図20】紫外線照射後における、実施例8〜10で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図21】紫外線照射後における、実施例11〜13で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図22】紫外線照射後における、実施例14〜16で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図23】紫外線照射後における、実施例17〜19で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図24】紫外線照射後における、実施例20〜22で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図25】紫外線照射後における、実施例23〜25で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図26】紫外線照射後における、実施例26〜28で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図27】紫外線照射後における、実施例29〜30で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図28】紫外線照射後における、実施例31〜33で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図29】紫外線照射後における、実施例34〜36で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図30】紫外線照射後における、実施例37〜40で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図31】紫外線照射後における、実施例41〜43で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図32】紫外線照射後における、実施例44〜46で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図33】紫外線照射後における、実施例47で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図34】紫外線照射後における、実施例48〜50で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図35】紫外線照射後における、実施例51で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図36】紫外線照射後における、実施例52〜54で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図37】紫外線照射後における、実施例55で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図38】紫外線照射後における、実施例56で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【図39】紫外線照射後における、実施例57で作製した各試料についての反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0037】
(I)フォトクロミック物質
本発明に係る物質は、下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表される組成を有し、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られる。
【0038】
また、本発明に係る上記物質は、上記式(1’)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1’)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu及びNdから選択される少なくとも1つの金属であり、0≦f≦1である。)
で表される組成を有する物質であり、上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたものであることが好ましい。
【0039】
これにより、当該物質は、化学的、熱的に安定性を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示す。
【0040】
より具体的には、上記物質は、無機物であるため、高い耐久性を有し、有機物のように溶媒に溶かす必要がなく、固体そのものでフォトクロミズムを示す。また、紫外光のみならず可視光によってもフォトクロミズムを示し、これらの光の照射後に紅色を示す。
【0041】
更には、光照射後も、フォトクロミズムによって発現した色を長時間保持することができ、加えて、熱に対して当該色が変化し難い。
【0042】
また、フォトクロミズムによって変色した上記物質に対して、熱や光を照射すれば、再度元の色に戻すことができ、これらの着色及び脱色速度が速い。そして、上記物質は、比較的安価に作製することができる。
【0043】
尚、本発明に係る物質は、式(1)で表される組成以外にも、フォトクロミズムを阻害しない範囲で、他の元素等を更に含有していてもよい。
【0044】
上記式(1)におけるcは、1.4≦c≦3.5であり、2.0<c≦3.5の範囲内であることが好ましく、2.5≦c≦3の範囲内であることがより好ましい。式(1)におけるcが上記範囲内であれば、フォトクロミズムにおける変化量(反射率の差)を大きくすることができる。
【0045】
上記式(1)におけるMは、V、Fe、Cr、Mn、Cu、Ni、Co、Mo、Ce、Eu及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素であることが好ましく、Fe、Cu、Eu又はNdであることがより好ましい。
【0046】
上記式(1)におけるMは、2種以上の元素の組合せでもよく、例えば、Eu及びCu、Eu及びFe、Fe及びCu、Eu及びFe及びCu等の組合せが挙げられる。この場合、各元素の合計量がfとなる。
【0047】
上記式(1)におけるfは、0≦fであればよいが、0≦f≦2であることが好ましく、0≦f≦1であることがより好ましい。
【0048】
上記MがEuである場合には、0<f≦1の範囲内であり、0<f≦0.5の範囲内であることが好ましく、0<f≦0.2の範囲内であることがより好ましい。式(1)におけるfが上記範囲内であれば、フォトクロミズムにおける変化量(反射率の差)を大きくすることができる。
【0049】
また、上記MがNdである場合には、0<f≦1の範囲内であり、0<f≦0.5の範囲内であることが好ましく、0<f≦0.12の範囲内であることがより好ましい。式(1)におけるfが上記範囲内であれば、フォトクロミズムにおける変化量(反射率の差)を大きくすることができる。
【0050】
更には、上記MがFeである場合には、0<fの範囲内であり、0.1≦fの範囲内であることが好ましく、0.1≦f≦1.5の範囲内であることがより好ましい。また、上記MがCuである場合には、0<fの範囲内であり、0.2≦fの範囲内であることが好ましく、0.2≦f≦1.5の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
また、本発明に係る物質では、当該物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られる。このため、得られる物質は結晶性となる。ここで、本発明に係る物質では、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度が、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であることが好ましい。
【0052】
(II)フォトクロミック物質の製造方法
本発明に係る物質は、当該物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって製造することができる。
【0053】
尚、上記混合物には、上記各原料及びホウ酸以外にも、フォトクロミズムを阻害しない範囲で、他の物質等を更に含有していてもよい。
【0054】
上記各原料として、例えば、Ba元素を含む原料は、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、ケイ化バリウム、ホウ酸バリウムが挙げられ、Ca元素を含む原料は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、水酸化カルシウムが挙げられ、Mg元素を含む原料は、炭酸マグネシウムが挙げられ、Si元素を含む原料は、シリコン、酸化シリコンが挙げられ、Eu元素を含む原料は、酸化ユーロピウム、硝酸ユーロピウムが挙げられ、Nd元素を含む原料は、酸化ネオジム、炭酸ネオジム、硝酸ネオジム、水酸化ネオジムが挙げられ、O元素を含む原料は、上述した各種酸化物が挙げられる。
【0055】
本発明に係る製造方法では、上記各原料を、目的とする物質の組成比で混合し、更にホウ酸を混合し、当該混合物を焼成することによって得ることができる。
【0056】
上記焼成におけるホウ酸の量は、特には限定されないが、例えば、BaMgSiO4に対して2〜10モル%の範囲内で混合させることが好ましい。
【0057】
上記焼成は、還元雰囲気下で行うことが好ましく、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスと水素との混合ガス中で行うことが挙げられる。係る場合における、混合ガスにおける水素の濃度は、2〜10体積%の範囲内であることが好ましい。
【0058】
上記焼成は、例えば、1300℃の温度で、1〜4時間加熱することによって行うことができる。
【0059】
(III)フォトクロミック材料
本発明に係るフォトクロミック材料は、本発明に係る上記物質を含む。このため、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料を提供し得る。
【0060】
更には、フォトクロミズムによる変色の耐熱性が高く、例えば、100℃程度までは変色を保持し得る。また、一旦、フォトクロミズムが生じれば、その変色を長時間(例えば、1時間以上)保持し得る。
【0061】
上記フォトクロミック材料では、本発明に係る上記物質を1種類のみ含んでいてもよく、複数種類含んでいてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1:Ba2Mg2.5Si2O8.5:Eu0.2〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユーロピウムを、2:2.5:2:0.2のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Eu0.2(試料A)を作製した。尚、作製した試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0064】
<紫外線によるフォトクロミズムの測定>
作製した試料Aについて、365nmの紫外線(124mW/cm2)を3分間照射前後で反射率スペクトルを測定し、フォトクロミズムの有無を確認した。
【0065】
その結果、図1に示すように、紫外線の照射によって、523nmを中心に反射率が大きく低下し、白色から紅色へと変化するフォトクロミズムを示すことが確認された。
【0066】
また、紫外線照射後の試料を、185℃で3分間加熱することによって、元の反射スペクトルに戻ることが確認された。
【0067】
また、上記紫外線照射後における試料Aの反射率の時間変化について測定した結果(大気中、室温)を図2に示す。図2に示すように、紫外線照射から1時間経過後であっても、変化した色は安定であることが確認された。
【0068】
次に、温度に対する、上記紫外線照射後における試料Aの反射率の影響を測定した結果を図3に示す。図3に示すように、100℃程度までは、変化した色は安定であることが確認された。
【0069】
また、試料Aについて、上記紫外線照射と185℃で3分間の加熱とを繰り返し行った場合における反射率の変化を図4に示す。図4に示すように、紫外線照射と加熱とを5サイクル繰り返しても反射率は変化していなかった。
【0070】
以上のことから、試料Aは、データが消え難く、繰り返しデータの書き換えができ、高温であっても記録が消去し難い記録材料を提供し得ることが確認された。
【0071】
<可視光によるフォトクロミズムの測定>
試料Aについて、405nmの可視光(7.2mW/cm2)を30分間照射前後の反射率スペクトルを測定し、フォトクロミズムの有無を確認した。
【0072】
その結果、図5に示すように、可視光の照射によって、523nmを中心に反射率が大きく低下し、紫外線を照射した場合と同様に、白色から紅色へと変化するフォトクロミズムを示すことが確認された。
【0073】
また、405nmの光照射後の試料Aに対して、532nmの可視光(2830mW/cm2)を1分間照射することによって、元の反射スペクトルに戻ることが確認された。
【0074】
次に、試料Aについて、405nmの上記可視光と532nmの上記可視光とを繰り返し照射した場合における反射率の変化を図6に示す。図6に示すように、これらの操作を5サイクル以上繰り返しても反射率はほとんど変化していなかった。
【0075】
また、365nmの紫外線(124mW/cm2)を3分間照射した試料Aと、その後532nmの可視光(2830mW/cm2)を1分間照射した試料Aとの反射スペクトルを図7に示す。その結果、紫外線でフォトクロミズムを起こした試料Aについても、可視光を照射することによって、元の反射スペクトルに戻ることが確認された。
【0076】
更には、上記365nmの紫外線照射(124mW/cm2、3分間)後における試料Aの反射率の時間変化について測定した結果(大気中、室温)を図8に示す。
【0077】
図8に示すように、紫外線照射からおよそ250時間経過後であっても、フォトクロミズムによって変化した色は安定であることが確認された。
【0078】
〔参考例1:Mgの組成比の影響〕
実施例1と同様の操作によって、Ba2MgxSi2O(6+x)においてMgの組成比xを1.2〜3.3に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0079】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の反射率スペクトルを測定した結果を図9及び図10に示す(図9中の数字は、Mgの組成比xである)。
【0080】
図9及び10に示すように、Mgの組成比xがおよそ1.4以上になると、フォトクロミズムが観察され、Mgの組成比xが増加するに従って、その変化が大きくなることが確認された。
【0081】
〔実施例2:Euの組成比の影響〕
実施例1におけるEuの添加量を0〜1モル%の範囲で変化させて、つまり、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Euxの組成においてxを0〜1の範囲内で変化させて各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0082】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図11に示す。
【0083】
図11に示すように、Euの添加量が約0.2モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.2モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0084】
また、Euの添加量が0モル%の試料と、0.5モル%の試料とについて、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の反射率スペクトルを測定した結果を図12に示す。
【0085】
その結果、Euを添加することによって、フォトクロミズム後において吸収する光の波長の範囲が広がることが確認された。
【0086】
〔実施例3:Ndの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユーロピウム、酸化ネオジムを、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Eu・NdxにおいてNdの組成比xを0〜1に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0087】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図13に示す。
【0088】
図13に示すように、Ndの添加量が約0.12モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.12モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0089】
〔実施例4:Baの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素を、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Siに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、BaxMg2.5Si2O(6.5+x)においてBaの組成比xを1.8〜2.2に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0090】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図14に示す。
【0091】
図14に示すように、Baの組成比xが約2.0のときに、反射率が最も減少することが確認された。
【0092】
〔実施例5:Caの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユーロピウムを、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba1.9Ca0.1Mg2.5Si2O8.5:Euの試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0093】
そして、上記試料について、実施例1で作製した試料と共に、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図15に示す。
【0094】
図15に示すように、CaのBaに対する濃度が、0.5モル%くらいまでは、反射率はほとんど変化しないことが確認された。
【0095】
〔実施例6:Siの組成比の影響〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素を、所望の組成比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2.5SixO(4.5+2x)においてSiの組成比xを1.8〜2.2に変化させた各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0096】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図16に示す。
【0097】
図16に示すように、Siの組成比xが約2.0のときに、反射率が最も減少することが確認された。
【0098】
〔参考例2:ホウ酸の混合量の影響〕
ホウ酸の量を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)0〜10モル%で変化させたこと以外は、参考例1と同様の操作を行い、Ba2Mg2.5Si2O8.5の各試料を作製した。尚、ホウ酸の量が2モル%以上の条件で作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0099】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図17に示す。
【0100】
図17に示すように、ホウ酸を加えることによって、反射率は大幅に減少することが確認された。
【0101】
〔参考例3:水素濃度の影響〕
焼成時のアルゴンガス中の水素濃度を0〜5体積%の範囲で変化させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、Ba2Mg2.5Si2O8.5:Euの各試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0102】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図18に示す。
【0103】
図18に示すように、焼成時の不活性ガス中に水素を混合させることによって、反射率は大幅に減少することが確認された。
【0104】
〔実施例7:焼成温度の影響〕
焼成温度を1200℃〜1400℃に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、各種試料を作製した。尚、作製した各試料における、BaMgSiO4相の最も強いX線のピーク強度は、他の結晶層によるX線のピーク強度に対して2倍以上であった。
【0105】
そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図19に示す。
【0106】
図19に示すように、焼成温度を高くすることによって、反射率が減少することが確認された。
【0107】
〔実施例8:Ba2Mg2Si2O8:Li0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、炭酸リチウムを、2:2:2:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Li0.001を作製した。
【0108】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図20に示す。
【0109】
〔実施例9:Ba2Mg2Si2O8:S0.001〕
炭酸リチウムの代わりに硫黄を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:S0.001を作製した。
【0110】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図20に示す。
【0111】
〔実施例10:Ba2Mg2Si2O8:C0.001〕
炭酸リチウムの代わりに炭素を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:C0.001を作製した。
【0112】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図20に示す。
【0113】
〔実施例11:Ba2Mg2Si2O8:Ti0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化チタンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ti0.001を作製した。
【0114】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図21に示す。
【0115】
〔実施例12:Ba2Mg2Si2O8:Al0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化アルミニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Al0.001を作製した。
【0116】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図21に示す。
【0117】
〔実施例13:Ba2Mg2Si2O8:V0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化バナジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:V0.001を作製した。
【0118】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図21に示す。
【0119】
〔実施例14:Ba2Mg2Si2O8:Mn0.001〕
炭酸リチウムの代わりに炭酸マンガンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Mn0.001を作製した。
【0120】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図22に示す。
【0121】
〔実施例15:Ba2Mg2Si2O8:Cr0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化クロムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Cr0.001を作製した。
【0122】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図22に示す。
【0123】
〔実施例16:Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化鉄を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001を作製した。
【0124】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図22に示す。
【0125】
〔実施例17:Ba2Mg2Si2O8:Cu0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化銅を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Cu0.001を作製した。
【0126】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図23に示す。
【0127】
〔実施例18:Ba2Mg2Si2O8:Ni0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ニッケルを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ni0.001を作製した。
【0128】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図23に示す。
【0129】
〔実施例19:Ba2Mg2Si2O8:Co0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化コバルトを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Co0.001を作製した。
【0130】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図23に示す。
【0131】
〔実施例20:Ba2Mg2Si2O8:Ge0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ゲルマニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ge0.001を作製した。
【0132】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図24に示す。
【0133】
〔実施例21:Ba2Mg2Si2O8:Zn0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化亜鉛を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Zn0.001を作製した。
【0134】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図24に示す。
【0135】
〔実施例22:Ba2Mg2Si2O8:Ga0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ガリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ga0.001を作製した。
【0136】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図24に示す。
【0137】
〔実施例23:Ba2Mg2Si2O8:Zr0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ジルコニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Zr0.001を作製した。
【0138】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図25に示す。
【0139】
〔実施例24:Ba2Mg2Si2O8:Y0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化イットリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Y0.001を作製した。
【0140】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図25に示す。
【0141】
〔実施例25:Ba2Mg2Si2O8:Nb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ニオブを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Nb0.001を作製した。
【0142】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図25に示す。
【0143】
〔実施例26:Ba2Mg2Si2O8:In0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化インジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:In0.001を作製した。
【0144】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図26に示す。
【0145】
〔実施例27:Ba2Mg2Si2O8:Ag0.001〕
炭酸リチウムの代わりに銀コロイドを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ag0.001を作製した。
【0146】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図26に示す。
【0147】
〔実施例28:Ba2Mg2Si2O8:Mo0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化モリブデンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Mo0.001を作製した。
【0148】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図26に示す。
【0149】
〔実施例29:Ba2Mg2Si2O8:Sn0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化スズを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Sn0.001を作製した。
【0150】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図27に示す。
【0151】
〔実施例30:Ba2Mg2Si2O8:Sb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化アンチモンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Sb0.001を作製した。
【0152】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図27に示す。
【0153】
〔実施例31:Ba2Mg2Si2O8:Bi0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ビスマスを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Bi0.001を作製した。
【0154】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図28に示す。
【0155】
〔実施例32:Ba2Mg2Si2O8:Ta0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化タンタルを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ta0.001を作製した。
【0156】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図28に示す。
【0157】
〔実施例33:Ba2Mg2Si2O8:W0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化タングステンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:W0.001を作製した。
【0158】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図28に示す。
【0159】
〔実施例34:Ba2Mg2Si2O8:La0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ランタンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:La0.001を作製した。
【0160】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図29に示す。
【0161】
〔実施例35:Ba2Mg2Si2O8:Ce0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化セリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ce0.001を作製した。
【0162】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図29に示す。
【0163】
〔実施例36:Ba2Mg2Si2O8:Pr0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化プラセオジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Pr0.001を作製した。
【0164】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図29に示す。
【0165】
〔実施例37:Ba2Mg2Si2O8:Nd0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ネオジウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Nd0.001を作製した。
【0166】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0167】
〔実施例38:Ba2Mg2Si2O8:Sm0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化サマリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Sm0.001を作製した。
【0168】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0169】
〔実施例39:Ba2Mg2Si2O8:Gd0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ガドリニウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Gd0.001を作製した。
【0170】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0171】
〔実施例40:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ユウロピウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001を作製した。
【0172】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図30に示す。
【0173】
〔実施例41:Ba2Mg2Si2O8:Er0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化エルビウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Er0.001を作製した。
【0174】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図31に示す。
【0175】
〔実施例42:Ba2Mg2Si2O8:Ho0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ホルミウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Ho0.001を作製した。
【0176】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図31に示す。
【0177】
〔実施例43:Ba2Mg2Si2O8:Tb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化テルビウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Tb0.001を作製した。
【0178】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図31に示す。
【0179】
〔実施例44:Ba2Mg2Si2O8:Tm0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ツリウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Tm0.001を作製した。
【0180】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図32に示す。
【0181】
〔実施例45:Ba2Mg2Si2O8:Yb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化イッテルビウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Yb0.001を作製した。
【0182】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図32に示す。
【0183】
〔実施例46:Ba2Mg2Si2O8:Lu0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化ルテチウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Lu0.001を作製した。
【0184】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図32に示す。
【0185】
〔実施例47:Ba2Mg2Si2O8:P0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化リンを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:P0.001を作製した。
【0186】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図33に示す。
【0187】
〔実施例48:Ba2Mg2Si2O8:Cd0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化カドミウムを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Cd0.001を作製した。
【0188】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図34に示す。
【0189】
〔実施例49:Ba2Mg2Si2O8:Pb0.001〕
炭酸リチウムの代わりに酸化鉛を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Pb0.001を作製した。
【0190】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図33に示す。
【0191】
〔実施例50:Cuの組成比の影響〕
実施例17におけるCuの添加量を0〜1.2モル%の範囲で変化させて、つまり、Ba2Mg2Si2O8:Cuxの組成においてxを0〜1.2の範囲内で変化させて各試料を作製した。そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図34に示す。
【0192】
図34に示すように、Cuの添加量が約0.2モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.2モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0193】
〔実施例51:Feの組成比の影響〕
実施例16におけるFeの添加量を0〜0.8モル%の範囲で変化させて、つまり、Ba2Mg2Si2O8:Fexの組成においてxを0〜0.8の範囲内で変化させて各試料を作製した。そして、これらの各試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図35に示す。
【0194】
図35に示すように、Feの添加量が約0.2モル%までは、添加量の増加に伴い、反射率は減少するが、約0.1モル%を超えると、反射率はほとんど変化していなかった。
【0195】
図20〜33に示すように、バナジウム(V)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、及びセリウム(Ce)は、添加することによってBaMgSiO4の吸収スペクトルに影響を与えることがわかった。特に、CuとFeは、523nm付近の吸収スペクトルへの影響が大きかった。
【0196】
また、図34及び35に示すように、Cuは0.1mol%で、Feは0.05mol%で飽和する傾向を示し、両元素とも僅かな添加量で効果があることがわかった。特に、Feは523nmの光の反射率を15%以下にしていることから、Euと同等の高い効果を示すことがわかった。このように、Euのような希土類元素を使用しなくても優れた性能が得られるため、BaMgSiO4系のフォトクロミック材料としての応用分野を広げ、量産する場合に有利となる。
【0197】
<添加元素の複合効果の検討>
CuやFeにも著しい添加効果が見られたため、添加元素の複合化による効果について以下確認した。
【0198】
〔実施例52:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Cu0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユウロピウム、酸化銅を、2:2:2:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Cu0.001を作製した。
【0199】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図36に示す。
【0200】
〔実施例53:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユウロピウム、酸化鉄を、2:2:2:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001を作製した。
【0201】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図36に示す。
【0202】
〔実施例54:Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001Cu0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化ユウロピウムを、2:2:2:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Fe0.001Cu0.001を作製した。
【0203】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図36に示す。
【0204】
〔実施例55:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001Cu0.001〕
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ユウロピウム、酸化鉄、酸化銅を、2:2:2:0.001:0.001:0.001のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001Cu0.001を作製した。
【0205】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図37に示す。
【0206】
図36に示すように、添加元素がEuのみである場合と比較して、Eu+Cu(実施例52)、Eu+Fe(実施例53)、Fe+Cu(実施例54)の可視光領域における吸収量が増加することがわかった。最も効果的な組合せはEu+Fe(実施例53)であった。また、Eu+Fe(実施例53)とEu+Fe+Cu(実施例55)とを比較した場合、Cuの添加効果はほとんど見られなかった。
【0207】
<原料変更の検討>
炭酸バリウムは毒物であるため、製造過程における人に対する影響を考慮して、バリウム化合物の中で無毒であることが知られている硫酸バリウムを原料として用いて、以下フォトクロミック現象を確認した。
【0208】
〔実施例56:Ba2Mg2Si2O8〕
硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素を、2:2:2のモル比となるようにそれぞれ量りとり、ホウ酸を、BaMgSiO4に対して(Baに対して)10モルとなるように量りとり、これらにエタノールを加えて混合した。当該混合物を乾燥後、直径20mm、厚さ5mmのペレットを作製し、電気炉を用いて、95体積%アルゴン−5体積%水素の混合ガス中、1300℃で4時間焼成することによって、Ba2Mg2Si2O8を作製した。
【0209】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図38に示す。
【0210】
〔実施例57:Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001〕
炭酸バリウムを硫酸バリウムに変更したこと以外は実施例53と同様の操作を行い、Ba2Mg2Si2O8:Eu0.001Fe0.001を作製した。
【0211】
この試料について、365nmの光(124mW/cm2)を3分間照射後の523nmにおける反射率を測定した結果を図39に示す。
【0212】
図38に示すように、硫酸バリウムを使用した場合でも、炭酸バリウムを用いた場合と同様のフォトクロミック現象が観察された。このため、有毒な炭酸バリウムを使用せずに無毒の硫酸バリウムを使用することが可能であることが確認された。
【0213】
尚、硫酸バリウムを用いた場合では、炭酸バリウムを用いた場合と比較して可視光に対する吸収量が増加していたが、これは、硫酸バリウム中の硫黄が化合物中に残ってしまうことに起因していると思われる。
【0214】
EuとFeを添加した化合物においても、硫酸バリウムを使用した場合は、炭酸バリウムを用いた場合と同様のフォトクロミック現象が観察され、無毒の硫酸バリウムを原料として使用し得ることが確認された。
【0215】
尚、実施例8〜57で作製した化合物についても、実施例1と同様に可視光によるフォトクロミズムの測定を行った。その結果、紫外線を照射した場合と同様に、白色から紅色へと変化するフォトクロミズムを示すことが確認された。
【0216】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明の物質は、化学的、熱的に安定を有し、且つ可視光によってフォトクロミズムを示すフォトクロミック材料に好適に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表される組成を有する物質であり、
上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたことを特徴とする物質。
【請求項2】
上記式(1)におけるcが、2.5≦b≦3の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の物質。
【請求項3】
上記式(1)におけるMが、Fe及びCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0<fであることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項4】
上記式(1)におけるMがNdであり、0<f≦1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項5】
上記式(1)におけるfが0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項6】
焼成する上記工程を、還元雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の物質。
【請求項7】
焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことを特徴とする請求項6に記載の物質。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の物質を含むことを特徴とするフォトクロミック材料。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載の物質の製造方法であり、
上記物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含むことを特徴とする物質の製造方法。
【請求項10】
焼成する上記工程を、還元雰囲気下で行うことを特徴とする請求項9に記載の物質の製造方法。
【請求項11】
焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことを特徴とする請求項10に記載の物質。
【請求項1】
下記式(1)
Ba(a−b)CabMgcSidOeMf …(1)
(式中、1.8≦a≦2.2、0≦b≦0.1、1.4≦c≦3.5、1.8≦d≦2.2、e=(a+c+2d)であり、Mは、Eu、Nd、Li、S、C、Ti、Al、V、Mn、Cr、Fe、Cu、Ni、Co、Ge、Zn、Ga、Zr、Y、Nb、In、Ag、Mo、Sn、Sb、Bi、Ta、W、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Er、Ho、Tb、Tm、Yb、Lu、P、Cd、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦fである。)
で表される組成を有する物質であり、
上記物質を構成する各元素を含む原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含む方法によって得られたことを特徴とする物質。
【請求項2】
上記式(1)におけるcが、2.5≦b≦3の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の物質。
【請求項3】
上記式(1)におけるMが、Fe及びCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、0<fであることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項4】
上記式(1)におけるMがNdであり、0<f≦1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項5】
上記式(1)におけるfが0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項6】
焼成する上記工程を、還元雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の物質。
【請求項7】
焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことを特徴とする請求項6に記載の物質。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の物質を含むことを特徴とするフォトクロミック材料。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載の物質の製造方法であり、
上記物質を構成する元素をそれぞれ含む各原料とホウ酸との混合物を焼成する工程を含むことを特徴とする物質の製造方法。
【請求項10】
焼成する上記工程を、還元雰囲気下で行うことを特徴とする請求項9に記載の物質の製造方法。
【請求項11】
焼成する上記工程を、水素ガス存在下で行うことを特徴とする請求項10に記載の物質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2011−132493(P2011−132493A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174727(P2010−174727)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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