フォトニック結晶を用いた波長可変光フィルタ素子
【課題】電気光学材料からなる周期構造により光フィルタを構成すると電界印加により透過帯域を可変できる。しかし、従来技術による光フィルタは周期構造を形成する一方の部材の屈折率しか変化しないため両部材間の屈折率差を効率的に変化させられなかった。透過帯域のシフト量は屈折率差の変化に依存するため効率的に透過帯域をシフトさせることができず、低電力での動作が課題であった。
【解決手段】ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を持つ導波路1に一対の電極3a、3bを作製する。前記電極一対の電極3a,3bは前記導波路1に前記ポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に電界を印加できるように配置する。前記ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に配置された電極3bの電位が−c方向に配置された電極3aの電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【解決手段】ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を持つ導波路1に一対の電極3a、3bを作製する。前記電極一対の電極3a,3bは前記導波路1に前記ポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に電界を印加できるように配置する。前記ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に配置された電極3bの電位が−c方向に配置された電極3aの電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトニック結晶を用いた光フィルタ素子、特に電気光学効果を持つ材料から素子を構成して透過帯域を可変できる波長可変光フィルタ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率の異なる材料で光の波長程度の周期構造を形成するとフォトニックバンドを持つフォトニック結晶が形成される。これを利用することによって高効率かつ小型の光素子を作製可能であることから近年注目されている。
【0003】
フォトニック結晶は一次元、二次元あるいは三次元周期構造を持ち、現在のところ半導体を用いて周期構造を作製する方法が多く提案されている。半導体でフォトニック結晶を作製した場合、帯域波長は一定であり、これを変化させることはできない。
【0004】
これに対し、液晶を用いたフォトニック結晶が検討されている。液晶は電界を印加することによって屈折率が変化する性質を持つため、帯域波長が変化する光デバイスを作製することが可能である。しかし、液晶を用いた場合には電界の変化に対する応答速度がミリ秒オーダーであり、より高い応答速度が求められている。
【0005】
そこで、電界の変化に対してナノ秒オーダーで応答する電気光学材料を用いたフォトニック結晶が特許文献1などにおいて提案されている。
【0006】
特許文献1では、図9のように電気光学材料であるPLZT17と充填材18からなる周期構造21によりフォトニック結晶を形成している。これに電極19から電界を加えることで透過帯域を可変できる波長可変光フィルタを得ている。
【0007】
特許文献2では図10のようにニオブ酸リチウム基板20に分極反転を施し周期構造を形成している。ニオブ酸リチウムなどの電気光学結晶は強電界を印加するなどの方法でc軸の向きを反転させ、分極の向きを反転することができる。分極反転部、非反転部からなる周期構造に電界を印加すると、両部分で電界の変化に対して屈折率を互いに逆に変化させることができる。
【特許文献1】特開2004−302457号公報
【特許文献2】特表2002−539467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では信号源がもたらす電界の変化に対して周期構造21を構成する一方の部材の屈折率しか変化しない。そのため電界の変化に対して一方の部材は屈折率が大きくなり、もう一方の部材は屈折率が小さくなるといったように両部材で互いに逆に屈折率を変化させることはできず、両部材間の屈折率差を効率的に変化させることができない。そのため、信号源がもたらす電界の変化に対して効率的に透過帯域をシフトすることができない。
【0009】
特許文献2では、ニオブ酸リチウムに分極反転技術により周期構造を作製することが示唆されている。これを用いると分極反転部15と非反転部16で、電界の変化に対して屈折率を互いに逆に変化させることができる。しかし、これだけでは電界無印加時に分極反転部15、非反転部16の間には屈折率差がない。そのため、屈折率の異なる部材を周期的に並べフォトニック結晶を形成するということができない。分極反転部15もしくは非反転部16に不純物をドーピングするなどして屈折率差を与える方法も考えられるが、光の波長オーダーでの作製は極めて困難である。
【0010】
周期構造を構成する2つの部材で信号源がもたらす電界の変化に対して屈折率を互いに逆に変化させることができれば、電界の変化に対して効率的に透過帯域をシフトすることのできる波長可変光フィルタを提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ポッケルス効果を示す結晶およびカー効果を示す材料からなる導波路に、電界を印加する一対の電極を配置する。前記導波路には前記ポッケルス効果を示す結晶および前記カー効果を示す材料が導波路の長手方向に交互に配置された周期構造が形成されている。
【0012】
前記周期構造はポッケルス効果を示す結晶に周期的に溝を形成し凹凸構造を作製し、前記凹凸構造の凹部にカー効果を示す材料を充填して形成する。
【0013】
前記ポッケルス効果を示す結晶は、c軸の向きが一様に前記導波路を横切る方向に揃っており、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記一対の電極は前記導波路を間に挟むように導波路の側壁に配置する。前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【0014】
前記ポッケルス効果を示す結晶は、c軸の向きが一様に前記基板の底面に対して垂直な方向に揃っており、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記一対の電極は前記導波路の上面及び前記基板の底面に配置する。前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【0015】
前記ポッケルス効果を示す結晶は、c軸の向きが一様に前記導波路の長手方向に揃っており、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記一対の電極は前記導波路の長手方向の両端にそれぞれ配置する。前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる導波路1に、電界を印加するための一対の電極3a,3bを配置する。この際、前記ポッケルス効果を示す結晶4は、c軸の向きが一様に揃っていて、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記ポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に配置された前記電極3aおよび前記ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に配置された前記電極3bに電圧を印加する。この際、電極3bの電位は常に電極3aよりも高くなるようにする。
【0017】
これにより、電界は前記ポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に印加される。この時、前記ポッケルス効果を示す結晶4および前記カー効果を示す材料5の屈折率は互いに逆に変化する。そのため、従来のように一方の部材の屈折率のみを変化させる方法に比べて、両部材の屈折率が互いに逆に変化する分だけ効率的に両部材間の屈折率差を変化させることができる。
【0018】
透過帯域のシフト量は両部材間の屈折率差の変化に依存するため、従来の方法と同等のシフト量をより小さい電界で得ることができる。これにより低電力で動作可能な波長可変光フィルタ素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明に係る波長可変光フィルタ素子の第1の実施形態による構成を図1に示す。
【0020】
ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる導波路1の側壁に電界を印加する一対の電極3a、3bが配置されている。一対の電極3a、3bは導波路1を間に挟んでいる。本明細書では、一対の電極3a、3bを厳密に区別する際、第1電極3a、第2電極3b、ということがある。
【0021】
この際、電極3a、3bと導波路1の間にバッファ層8を介することで導波路1を伝搬する光のロスを低減できる。バッファ層8の材料としては、SiO2などの導波路1のコア部より十分屈折率の小さい材料を用いる。
【0022】
導波路1は、図2に示されるように、複数のポッケルス効果を示す結晶4および複数のカー効果を示す材料5が長手方向に交互に繰り返し並べられた周期構造からなる。また、導波路1は光を伝搬させるために深さDの拡散層と幅Lのリッジ構造を形成し深さ方向及び横方向に光の閉じ込めを得ている。導波路1の拡散層の深さD、及び幅Lは導波路1を伝搬する光がシングルモードとなるように定めるのが好ましい。
【0023】
以下、導波路1の作製方法について説明する。
【0024】
まず、ポッケルス効果を示す結晶4に深さDの拡散層を形成し、深さ方向に光の閉じ込め構造を形成する。拡散層はポッケルス効果を示す結晶4にプロトン交換や金属拡散等を施すことで得られる。なお、ポッケルス効果を示す結晶4としてニオブ酸リチウムを用い温度230℃の溶融した安息香酸を用いてプロトン交換を行う場合には、プロトン交換された部分の屈折率は異常屈折率neだけが0.124上昇する。この時、交換深さDを0.6〜1.5μmとすれば深さ方向にシングルモードが得られる。また、チタン拡散を用いて拡散層を形成する場合では、70nmのチタンを拡散した時、拡散深さDは3μmとなる。拡散層での屈折率変化はそれぞれ異常屈折率neが0.036、常屈折率noが0.018上昇し、この時深さ方向ではシングルモードが得られる。
【0025】
次に、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を作製する。
【0026】
図5に示すように、まずポッケルス効果を示す結晶4に周期的に溝を掘り凹凸構造10を作製し、凹凸構造10の凹部12にカー効果を示す材料5を充填し平坦化する。これにより、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を形成する。これについて後述する実施例で詳しく説明する。
【0027】
なお、周期構造を形成するポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5のそれぞれの幅L1,L2は、光学長が設計波長の1/4となるように設計すると設計波長に対してフォトニックバンドギャップが形成される。フォトニックバンドギャップが形成された波長域の光は、導波路1を透過することができない。
【0028】
次に、横方向に光の閉じ込め構造を形成する。図2に示すように、横方向の閉じ込め構造はエッチングやダイシング等の方法により導波路1をリッジ構造にする。なお、リッジの幅Lは2.0〜4.0μmとした時に横方向でシングルモードの導波路が得られる。また、リッジの深さHは拡散深さDよりも深い方が好ましい。
【0029】
なお、ポッケルス効果を示す結晶4に深さ方向の光の閉じ込め構造を形成する工程、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を作製する工程、横方向の光の閉じ込め構造を形成する工程は、必ずしも上記の順番で行う必要はない。
【0030】
導波路1に周期構造を形成する方法としては、上記のようにポッケルス効果を示す材料4に周期的に溝を掘り凹凸構造10を作製しカー効果を示す材料5を充填する方法が好ましい。他の方法としてカー効果を示す材料5に周期的に溝を掘り凹凸構造10を作製しポッケルス効果を示す結晶4を充填する方法も考えられるが、この方法ではポッケルス効果を示す結晶4のc軸の向きや自発分極の極性を揃えるのが困難である。
【0031】
ポッケルス効果を示す結晶4としては、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸リン酸カリウム、ニオブ酸カリウム、リン酸2水素アンモニウム(ADP)、リン酸2水素カリウム(KDP)、GaAs、ZnOなどの対称中心を持たない結晶を用いることができる。これらの結晶はc軸方向に大きな自発分極を持つ。
【0032】
なお、ポッケルス効果を示す結晶4はc軸の方向が一様に揃っていて、かつ自発分極の極性も揃っているものを用いる必要がある。これは、ポッケルス効果においてはc軸の方向および自発分極の極性が屈折率変化の符号を決定するためである。c軸の方向および自発分極の極性が揃っていない材料を用いると電界を印加しても屈折率変化を得ることができない。
【0033】
本明細書では、ポッケルス効果を示す材料4のc軸の方向を正確に定義するため、自発分極の極性が正となる方向を+c方向、自発分極の極性が負となる方向を−c方向と定める。
【0034】
カー効果を示す材料5としては、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、KTaO3、KTa1-xNbxO3(KTN)、SrTiO3、などの対称中心を持つ結晶を用いる事ができる。
【0035】
カー効果を示す材料5はc軸の向き、あるいは自発分極の極性を必ずしも一様に揃える必要はない。カー効果はc軸の方向や自発分極の向きとは関係なく電界印加時に屈折率変化が得られるためである。そのため、カー効果を示す材料5は必ずしも単結晶である必要はない。
【0036】
本実施形態では、基板2として図1のようにc軸が導波路1を横切る方向に揃ったポッケルス効果を示す結晶4を用いる。一対の電極3a、3bは電界Eをポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加するために、導波路1の側壁に導波路1を間に挟むように配置している。一対の電極3a、3bはポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を第2電極3b、−c方向に位置するものを第1電極3aとする。
【0037】
次に、本発明で提案する波長可変光フィルタ素子の動作方法を説明する。
【0038】
ポッケルス効果を有する結晶の多くは異方性を持つ。異方性を持つ結晶では複屈折を生じ、偏光の向きに対して異なる2つの屈折率を持つ。2つの偏光状態をそれぞれ常光および異常光と言い、常光に対する屈折率を常屈折率、異常光に対対する屈折率を異常屈折率と言う。
【0039】
一対の電極3a,3bが印加する電界Eはポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加される。ポッケルス効果を示す結晶4のc軸の向きに電界を印加した場合、ポッケルス効果を示す結晶4の異常屈折率の変化Δne1はポッケルス係数γ33に比例する。c軸の向きに加えた電界Eと異常屈折率の変化Δne1の関係は式(1)で表せる。
【0040】
Δne1=−1/2 ne13 γ33 E ・・・式(1)
ここで、電界Eは+c方向のベクトルを持つ場合を正とした。以下でも電界Eの定義は同様とする。
【0041】
また、ne1はポッケルス効果を示す結晶4の異常屈折率である。
【0042】
ニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウムはポッケルス係数の中でも特にγ33が最も大きい結晶である。
【0043】
また、ポッケルス効果を示す結晶4のc軸の方向に電界を印加すると、常光に対してはγ13に比例した屈折率変化Δno1が得られる。c軸の向きに加えた電界Eと常屈折率の変化Δno1の関係は式(1)’で表せる。
【0044】
Δno1=−1/2 no13 γ13 E ・・・式(1)’
なお、no1はポッケルス効果を示す結晶4の常屈折率である。
【0045】
また、カー効果を示す材料5ではカー効果により印加する電界Eの大きさの2乗に比例して屈折率が変化する。この際、電界Eの向きは任意である。カー効果による屈折率変化Δn2は以下の式で示される。
【0046】
Δn2=−1/2 n23 R E2 ・・・式(2)
ここでn2はカー効果を示す材料5の屈折率であり、Rはカー係数である。
【0047】
なお、本素子を動作させる際には電界Eを印加した際の屈折率変化量が常光と異常光に対してそれぞれ異なるため、いずれか一方の偏光を導波させる方が好ましい。そのためには、入射光に常光と異常光が混在している場合には、偏光子等を用いて予め入射光の偏光をいずれか一方にした後に本素子に入射する必要がある。
【0048】
以下では、異常光のみが導波しているものとして説明する。
【0049】
図6に一例としてポッケルス効果を示す結晶4がニオブ酸リチウムでカー効果を示す材料5がPLZTであった場合の異常屈折率の変化の様子を示す。図6で横軸はc軸方向に印加する電界Eを、縦軸はそれぞれの屈折率の変化量Δnを示している。なお、図6はニオブ酸リチウムの異常光に対する屈折率を2.2、ポッケルス係数γ33を30.8×10-12m/V、またPLZTの屈折率を2.4、カー係数Rを5.0×10-18(m/V)2として、式(1)および式(2)から計算した。
【0050】
図6のAの範囲では電界Eは負の値を持っている。電界Eが負の値を持つということは、電界Eがポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に印加されていることを意味する。このような電界Eを印加するためには、一対の電極3aおよび3bに電圧を加える際に、ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する電極3bが常にポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に位置する電極3aよりも電位が高くなるように電圧を加えればよい。
【0051】
電界Eが負の値を持つAの範囲では、電界の変化に対してポッケルス効果を示す結晶4とカー効果を示す材料5で屈折率が互いに逆に変化する。このため、両部材間の屈折率差の変化を大きくとることが可能となる。
【0052】
透過帯域のシフト量は両部材間の屈折率差の変化に大きく依存するため、本発明の波長可変光フィルタでは透過帯域を高効率にシフトさせることができる。そのため、同じ電力で動作させても従来のように一方の屈折率しか変化しない場合と比較して大きいシフト量を得られるため、低電力での動作が可能となる。
【0053】
また、常光のみを導波させた場合でも異常光の場合と同様の効果が得られ、効率的に波長帯域をシフトさせることができ、低電力での動作が可能となる。
【0054】
本発明による波長可変光フィルタの代替技術として、分極反転による周期構造で光フィルタを構成する方法が考えられる。しかし、光フィルタとして動作するためには、フォトニックバンドギャップを形成するように屈折率差をもった2つの部材で周期構造を形成する必要がある。そのため、サブミクロンサイズである分極反転部15および分極非反転部16のどちらか一方のみに不純物を拡散する等の工程が必要となり、精度良く作製することは困難である。本発明による方法では、このような工程は必要としない。
【0055】
(第2の実施形態)
本発明で提案する波長可変光フィルタ素子の第2の実施形態による構成を図3に示す。
【0056】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の作製方法により導波路1を形成した後、図3のように一対の電極3a、3bを配置する。
【0057】
この際、基板2として図3のようにc軸が基板2の底面に垂直な方向に一様に揃ったポッケルス効果を示す結晶4を用いる。この際、自発分極の極性は導波路1の上面が正であっても、基板2の底面が正であってもいずれでも良い。
【0058】
一対の電極3a、3bは電界Eをポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加するために、基板2の底面および導波路1の上面にそれぞれ配置している。
ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を電極3b、−c方向に位置する方を電極3aとする。
【0059】
ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を電極3b、−c方向に位置する方を電極3aとする限り、図11に示すように、第1電極3aを導波路1の上面に、第2電極3bを基板2の底面に配置しても良い。この場合、一対の電極3a、3bには、図3とは逆の方向に電圧を印加することになる。
【0060】
一対の電極3a、3bの内、導波路1の上面に形成するものはバッファ層8を介して作製すれば、導波路1での光の散乱を妨げることができる。
【0061】
本実施形態による電極構成では、電極間距離は基板2の厚みに依存するが電極の形成は容易である。また、本実施形態による波長可変光フィルタも第1の実施形態によるものと同様に、電極3bの電位が電極3aよりも常に高くなるように電圧を印加することで効率的に透過帯域をシフトさせることができる。
【0062】
(第3の実施形態)
本発明で提案する波長可変光フィルタ素子の第3の実施形態による構成を図4に示す。
【0063】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の作製方法により導波路1を形成した後、図4のように一対の電極3a、3bを配置する。
【0064】
この際、基板2として図4のようにc軸を導波路1の長手方向に揃えたポッケルス効果を示す結晶4を用いる。
【0065】
一対の電極3a、3bは電界Eをポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加するために、導波路1の長手方向の両端にそれぞれ配置している。一対の電極3a,3bは、ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を3b、−c方向に位置する方を3aと定義する。一対の電極3a、3bはバッファ層8を介して作製すれば、導波路での光の散乱を妨げることができる。
【0066】
本実施形態による電極構造では導波路1の側面や基板2の裏面への電極形成が不要であるため、電極形成がより容易になる。また、本実施形態による波長可変光フィルタも第1の実施形態によるものと同様に、電極3bの電位が電極3aよりも常に高くなるように電圧を印加することで効率的に透過帯域をシフトさせることができる。
【実施例1】
【0067】
本発明による波長可変光フィルタ素子の動作検討を行った。
【0068】
ポッケルス効果を示す結晶4はニオブ酸リチウム、カー効果を示す材料5はPLZTとし、ニオブ酸リチウムの幅L1を170nm、PLZTの幅L2を156nmとした。一対の電極3a、3bの間隔は4μmとして考えた。また、導波路1を導波する光は異常光のみとした。
【0069】
電極3aを接地した後にDC電源7を用いて電極3bに+10Vの電位を与え、更に信号源6から振幅10Vの信号電界を印加する場合を考えた。この時、電極3bの電位は電極3aの電位よりも常に高くなる。電極3a、3bの間隔は4μmであるので10Vの電圧を印加すると2.5×106V/mの電界が得られる。
【0070】
この場合には、電界Eは図6の点(a)から点(b)の範囲で変化する。図6中で電界Eが点(a)から点(b)まで変化するとニオブ酸リチウムの屈折率は8.6×10-4だけ減少し、PLZTの屈折率は8.2×10-4増加する。ニオブ酸リチウムとPLZTの間の屈折率差の変化量は両部材の屈折率変化量の合計となるため、電界Eが点(a)から点(b)まで変化するときに16.8×10-4だけ変化することがわかった。
【0071】
続いて、この素子の点(a)、点(b)での光の透過帯域を計算した。結果を図7に示す。図7で横軸は入力光の波長、縦軸は出力光の入力光に対する強度とした。電界無印加時である点(a)と比べて、電界印加時の点(b)では透過帯域が+340pm変化することがわかった。
【0072】
比較のため、従来のように一方の屈折率しか変化しない場合の計算も行った。図7と同様の電界Eを印加した際に、ニオブ酸リチウムの屈折率しか変化しない場合では光フィルタの透過帯域は図8のようになった。この場合では透過帯域は+190pmしか変化しないことがわかった。
【0073】
以上の計算結果から、同じ電圧を印加させた場合に本発明による波長可変光フィルタ素子の方が従来のものより効率的に波長帯域をシフトできることが確認できた。
【0074】
以下のような工程で、本発明による波長可変光フィルタを実際に作製した。
【0075】
基板2としては、ニオブ酸リチウム結晶のX-cut基板を用いた。X-cut基板ではc軸は基板の底面に対して平行な方向を向いている。導波路1は長手方向がc軸に対して垂直となるようにした。
【0076】
まず、ニオブ酸リチウム基板にTi拡散により拡散層を形成した。基板上にTiを70nm蒸着した後、酸素雰囲気下において1030℃で10時間拡散を行い、深さ3.0μmの拡散層を得た。
【0077】
次に、図5のような工程でニオブ酸リチウムおよびPLZTからなる周期構造を作製した。
【0078】
まず、図5(B)のようにニオブ酸リチウム基板9上にレジストマスク13を形成する。レジストマスク13は電子ビーム描画により作製した。
【0079】
次に、図5Cのようにエッチングで凹凸構造10を形成した。エッチングにはICPドライエッチング装置を用い、エッチングガスとしては、ArとC4F8エッチング後に形成された凹凸構造10は凸部11の幅L1が170nm、凹部12の幅L2が156nm、凹部12の深さdは250nmとした。
【0080】
ドライエッチング後、図5(D)のようにレジストマスク13を剥離した後に図5(E)のようにPLZT14を成膜した。
【0081】
なお、PLZT14はゾル−ゲル法によって作製した。
【0082】
まず、PLZTゾル前駆体溶液を凹凸構造10の凹部12に充填するように塗布する。これを乾燥させることによりPLZT 前駆体を得て、更に焼成した。焼結温度は725℃として10分間焼成を行った。これにより、250nmのPLZT14の単結晶を得た。
【0083】
その後、図5(F)のように平坦化を行い余分なPLZTを除去した。
【0084】
以上の工程により、1.5μm光に対してフォトニックバンドギャップを持つ周期構造を形成した。
【0085】
次に、リッジを形成し導波路1の横方向での光の閉じ込め構造を形成した。フォトリソグラフィにより導波路1に対応するレジストマスクを形成した後、エッチングを行うことでリッジを形成した。導波路1の幅Lは4.0μm、リッジの深さHは2.0μmとした。
【0086】
導波路1の側壁に、バッファ層8を形成した後に一対の電極3a、3bを形成した。バッファ層8としてはSiO2を電極材料としてはAlを用いた。
【0087】
以上の工程で作製した波長可変光フィルタにおいて電圧の印加により波長帯域がシフトすることを確認した。また、ニオブ酸リチウム基板の+c方向に配置した電極3bの電位が−c方向に配置した電極3aの電位よりも高くなるように動作させることで従来型より大きな波長帯域のシフトが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明による素子は波長を可変することができる光フィルタ素子として用いることができ、低電力で透過帯域を可変することができる。
【0089】
以下、本発明をまとめる。
【0090】
1.(図1、図3、図4の包括概念)
基板(2)の上面に設けられた導波路(1)と、
前記導波路(1)に電界を印加する一対の電極(3)とを有する波長可変光フィルタ素子であって、
前記導波路(1)は、ポッケルス効果を示す結晶(4)およびカー効果を示す材料(5)からなり、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)およびカー効果を示す材料(5)は前記導波路(1)の長手方向に交互に配置された周期構造を形成しており、
前記一対の電極(3)は、前記導波路(1)を挟む第1電極(3a)および第2電極(3b)とからなり、
前記第1電極(3a)は前記ポッケルス効果を示す結晶(4)の−c方向に配置され、
前記第2電極(3b)は前記ポッケルス効果を示す結晶(4)の+c方向に配置され、
前記第2電極(3b)に印加される電圧は、前記第1電極(3a)に印加される電圧よりも常に大きい
(ことを特徴とする)波長可変光フィルタ素子。
【0091】
2.(図1)
前記一対の電極(3)は、前記導波路(1)の側壁に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が、前記導波路(1)の短手方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【0092】
3.(図3)
前記第1電極(3a)は基板(2)の下面に設けられており、
前記第2電極(3b)は導波路(1)の上面に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が前記基板(2)の法線方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【0093】
4.(図11)
前記第2電極(3b)は基板(2)の下面に設けられており、
前記第1電極(3a)は導波路(1)の上面に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が前記基板(2)の法線方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【0094】
5.(図4)
前記一対の電極(3)は導波路(1)の上面に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が前記導波路(1)の長手方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態による波長可変光フィルタの構成図
【図2】導波路の構造を示す図
【図3】第2の実施形態による波長可変光フィルタの構成図
【図4】第3の実施形態による波長可変光フィルタの構成図
【図5】周期構造の作製工程を示す図
【図6】ニオブ酸リチウムとPLZTの電界印加時の屈折率変化を示すグラフ
【図7】本発明による波長可変光フィルタの透過帯域シフトの一例を示すグラフ
【図8】従来技術による波長可変光フィルタの透過帯域シフトの一例を示すグラフ
【図9】特許文献1による波長可変光フィルタを示す図
【図10】特許文献2による周期構造を示す図
【図11】第2の実施形態の変形例による波長可変光フィルタの構成図
【符号の説明】
【0096】
1 導波路
2 基板
3a、3b、19 電極
4 ポッケルス効果を示す結晶
5 カー効果を示す材料
6 信号源
7 DC電源
8 バッファ層
9、20 ニオブ酸リチウム基板
10 凹凸構造
11 凸部
12 凹部
13 レジストマスク
14、17 PLZT
15 分極反転部
16 非反転部
18 充填材
21 周期構造
22 クラッド層
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトニック結晶を用いた光フィルタ素子、特に電気光学効果を持つ材料から素子を構成して透過帯域を可変できる波長可変光フィルタ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率の異なる材料で光の波長程度の周期構造を形成するとフォトニックバンドを持つフォトニック結晶が形成される。これを利用することによって高効率かつ小型の光素子を作製可能であることから近年注目されている。
【0003】
フォトニック結晶は一次元、二次元あるいは三次元周期構造を持ち、現在のところ半導体を用いて周期構造を作製する方法が多く提案されている。半導体でフォトニック結晶を作製した場合、帯域波長は一定であり、これを変化させることはできない。
【0004】
これに対し、液晶を用いたフォトニック結晶が検討されている。液晶は電界を印加することによって屈折率が変化する性質を持つため、帯域波長が変化する光デバイスを作製することが可能である。しかし、液晶を用いた場合には電界の変化に対する応答速度がミリ秒オーダーであり、より高い応答速度が求められている。
【0005】
そこで、電界の変化に対してナノ秒オーダーで応答する電気光学材料を用いたフォトニック結晶が特許文献1などにおいて提案されている。
【0006】
特許文献1では、図9のように電気光学材料であるPLZT17と充填材18からなる周期構造21によりフォトニック結晶を形成している。これに電極19から電界を加えることで透過帯域を可変できる波長可変光フィルタを得ている。
【0007】
特許文献2では図10のようにニオブ酸リチウム基板20に分極反転を施し周期構造を形成している。ニオブ酸リチウムなどの電気光学結晶は強電界を印加するなどの方法でc軸の向きを反転させ、分極の向きを反転することができる。分極反転部、非反転部からなる周期構造に電界を印加すると、両部分で電界の変化に対して屈折率を互いに逆に変化させることができる。
【特許文献1】特開2004−302457号公報
【特許文献2】特表2002−539467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では信号源がもたらす電界の変化に対して周期構造21を構成する一方の部材の屈折率しか変化しない。そのため電界の変化に対して一方の部材は屈折率が大きくなり、もう一方の部材は屈折率が小さくなるといったように両部材で互いに逆に屈折率を変化させることはできず、両部材間の屈折率差を効率的に変化させることができない。そのため、信号源がもたらす電界の変化に対して効率的に透過帯域をシフトすることができない。
【0009】
特許文献2では、ニオブ酸リチウムに分極反転技術により周期構造を作製することが示唆されている。これを用いると分極反転部15と非反転部16で、電界の変化に対して屈折率を互いに逆に変化させることができる。しかし、これだけでは電界無印加時に分極反転部15、非反転部16の間には屈折率差がない。そのため、屈折率の異なる部材を周期的に並べフォトニック結晶を形成するということができない。分極反転部15もしくは非反転部16に不純物をドーピングするなどして屈折率差を与える方法も考えられるが、光の波長オーダーでの作製は極めて困難である。
【0010】
周期構造を構成する2つの部材で信号源がもたらす電界の変化に対して屈折率を互いに逆に変化させることができれば、電界の変化に対して効率的に透過帯域をシフトすることのできる波長可変光フィルタを提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ポッケルス効果を示す結晶およびカー効果を示す材料からなる導波路に、電界を印加する一対の電極を配置する。前記導波路には前記ポッケルス効果を示す結晶および前記カー効果を示す材料が導波路の長手方向に交互に配置された周期構造が形成されている。
【0012】
前記周期構造はポッケルス効果を示す結晶に周期的に溝を形成し凹凸構造を作製し、前記凹凸構造の凹部にカー効果を示す材料を充填して形成する。
【0013】
前記ポッケルス効果を示す結晶は、c軸の向きが一様に前記導波路を横切る方向に揃っており、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記一対の電極は前記導波路を間に挟むように導波路の側壁に配置する。前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【0014】
前記ポッケルス効果を示す結晶は、c軸の向きが一様に前記基板の底面に対して垂直な方向に揃っており、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記一対の電極は前記導波路の上面及び前記基板の底面に配置する。前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【0015】
前記ポッケルス効果を示す結晶は、c軸の向きが一様に前記導波路の長手方向に揃っており、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記一対の電極は前記導波路の長手方向の両端にそれぞれ配置する。前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる導波路1に、電界を印加するための一対の電極3a,3bを配置する。この際、前記ポッケルス効果を示す結晶4は、c軸の向きが一様に揃っていて、c軸方向の自発分極の極性も一様に揃っているものを用いる。前記ポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に配置された前記電極3aおよび前記ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に配置された前記電極3bに電圧を印加する。この際、電極3bの電位は常に電極3aよりも高くなるようにする。
【0017】
これにより、電界は前記ポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に印加される。この時、前記ポッケルス効果を示す結晶4および前記カー効果を示す材料5の屈折率は互いに逆に変化する。そのため、従来のように一方の部材の屈折率のみを変化させる方法に比べて、両部材の屈折率が互いに逆に変化する分だけ効率的に両部材間の屈折率差を変化させることができる。
【0018】
透過帯域のシフト量は両部材間の屈折率差の変化に依存するため、従来の方法と同等のシフト量をより小さい電界で得ることができる。これにより低電力で動作可能な波長可変光フィルタ素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明に係る波長可変光フィルタ素子の第1の実施形態による構成を図1に示す。
【0020】
ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる導波路1の側壁に電界を印加する一対の電極3a、3bが配置されている。一対の電極3a、3bは導波路1を間に挟んでいる。本明細書では、一対の電極3a、3bを厳密に区別する際、第1電極3a、第2電極3b、ということがある。
【0021】
この際、電極3a、3bと導波路1の間にバッファ層8を介することで導波路1を伝搬する光のロスを低減できる。バッファ層8の材料としては、SiO2などの導波路1のコア部より十分屈折率の小さい材料を用いる。
【0022】
導波路1は、図2に示されるように、複数のポッケルス効果を示す結晶4および複数のカー効果を示す材料5が長手方向に交互に繰り返し並べられた周期構造からなる。また、導波路1は光を伝搬させるために深さDの拡散層と幅Lのリッジ構造を形成し深さ方向及び横方向に光の閉じ込めを得ている。導波路1の拡散層の深さD、及び幅Lは導波路1を伝搬する光がシングルモードとなるように定めるのが好ましい。
【0023】
以下、導波路1の作製方法について説明する。
【0024】
まず、ポッケルス効果を示す結晶4に深さDの拡散層を形成し、深さ方向に光の閉じ込め構造を形成する。拡散層はポッケルス効果を示す結晶4にプロトン交換や金属拡散等を施すことで得られる。なお、ポッケルス効果を示す結晶4としてニオブ酸リチウムを用い温度230℃の溶融した安息香酸を用いてプロトン交換を行う場合には、プロトン交換された部分の屈折率は異常屈折率neだけが0.124上昇する。この時、交換深さDを0.6〜1.5μmとすれば深さ方向にシングルモードが得られる。また、チタン拡散を用いて拡散層を形成する場合では、70nmのチタンを拡散した時、拡散深さDは3μmとなる。拡散層での屈折率変化はそれぞれ異常屈折率neが0.036、常屈折率noが0.018上昇し、この時深さ方向ではシングルモードが得られる。
【0025】
次に、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を作製する。
【0026】
図5に示すように、まずポッケルス効果を示す結晶4に周期的に溝を掘り凹凸構造10を作製し、凹凸構造10の凹部12にカー効果を示す材料5を充填し平坦化する。これにより、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を形成する。これについて後述する実施例で詳しく説明する。
【0027】
なお、周期構造を形成するポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5のそれぞれの幅L1,L2は、光学長が設計波長の1/4となるように設計すると設計波長に対してフォトニックバンドギャップが形成される。フォトニックバンドギャップが形成された波長域の光は、導波路1を透過することができない。
【0028】
次に、横方向に光の閉じ込め構造を形成する。図2に示すように、横方向の閉じ込め構造はエッチングやダイシング等の方法により導波路1をリッジ構造にする。なお、リッジの幅Lは2.0〜4.0μmとした時に横方向でシングルモードの導波路が得られる。また、リッジの深さHは拡散深さDよりも深い方が好ましい。
【0029】
なお、ポッケルス効果を示す結晶4に深さ方向の光の閉じ込め構造を形成する工程、ポッケルス効果を示す結晶4およびカー効果を示す材料5からなる周期構造を作製する工程、横方向の光の閉じ込め構造を形成する工程は、必ずしも上記の順番で行う必要はない。
【0030】
導波路1に周期構造を形成する方法としては、上記のようにポッケルス効果を示す材料4に周期的に溝を掘り凹凸構造10を作製しカー効果を示す材料5を充填する方法が好ましい。他の方法としてカー効果を示す材料5に周期的に溝を掘り凹凸構造10を作製しポッケルス効果を示す結晶4を充填する方法も考えられるが、この方法ではポッケルス効果を示す結晶4のc軸の向きや自発分極の極性を揃えるのが困難である。
【0031】
ポッケルス効果を示す結晶4としては、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸リン酸カリウム、ニオブ酸カリウム、リン酸2水素アンモニウム(ADP)、リン酸2水素カリウム(KDP)、GaAs、ZnOなどの対称中心を持たない結晶を用いることができる。これらの結晶はc軸方向に大きな自発分極を持つ。
【0032】
なお、ポッケルス効果を示す結晶4はc軸の方向が一様に揃っていて、かつ自発分極の極性も揃っているものを用いる必要がある。これは、ポッケルス効果においてはc軸の方向および自発分極の極性が屈折率変化の符号を決定するためである。c軸の方向および自発分極の極性が揃っていない材料を用いると電界を印加しても屈折率変化を得ることができない。
【0033】
本明細書では、ポッケルス効果を示す材料4のc軸の方向を正確に定義するため、自発分極の極性が正となる方向を+c方向、自発分極の極性が負となる方向を−c方向と定める。
【0034】
カー効果を示す材料5としては、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、KTaO3、KTa1-xNbxO3(KTN)、SrTiO3、などの対称中心を持つ結晶を用いる事ができる。
【0035】
カー効果を示す材料5はc軸の向き、あるいは自発分極の極性を必ずしも一様に揃える必要はない。カー効果はc軸の方向や自発分極の向きとは関係なく電界印加時に屈折率変化が得られるためである。そのため、カー効果を示す材料5は必ずしも単結晶である必要はない。
【0036】
本実施形態では、基板2として図1のようにc軸が導波路1を横切る方向に揃ったポッケルス効果を示す結晶4を用いる。一対の電極3a、3bは電界Eをポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加するために、導波路1の側壁に導波路1を間に挟むように配置している。一対の電極3a、3bはポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を第2電極3b、−c方向に位置するものを第1電極3aとする。
【0037】
次に、本発明で提案する波長可変光フィルタ素子の動作方法を説明する。
【0038】
ポッケルス効果を有する結晶の多くは異方性を持つ。異方性を持つ結晶では複屈折を生じ、偏光の向きに対して異なる2つの屈折率を持つ。2つの偏光状態をそれぞれ常光および異常光と言い、常光に対する屈折率を常屈折率、異常光に対対する屈折率を異常屈折率と言う。
【0039】
一対の電極3a,3bが印加する電界Eはポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加される。ポッケルス効果を示す結晶4のc軸の向きに電界を印加した場合、ポッケルス効果を示す結晶4の異常屈折率の変化Δne1はポッケルス係数γ33に比例する。c軸の向きに加えた電界Eと異常屈折率の変化Δne1の関係は式(1)で表せる。
【0040】
Δne1=−1/2 ne13 γ33 E ・・・式(1)
ここで、電界Eは+c方向のベクトルを持つ場合を正とした。以下でも電界Eの定義は同様とする。
【0041】
また、ne1はポッケルス効果を示す結晶4の異常屈折率である。
【0042】
ニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウムはポッケルス係数の中でも特にγ33が最も大きい結晶である。
【0043】
また、ポッケルス効果を示す結晶4のc軸の方向に電界を印加すると、常光に対してはγ13に比例した屈折率変化Δno1が得られる。c軸の向きに加えた電界Eと常屈折率の変化Δno1の関係は式(1)’で表せる。
【0044】
Δno1=−1/2 no13 γ13 E ・・・式(1)’
なお、no1はポッケルス効果を示す結晶4の常屈折率である。
【0045】
また、カー効果を示す材料5ではカー効果により印加する電界Eの大きさの2乗に比例して屈折率が変化する。この際、電界Eの向きは任意である。カー効果による屈折率変化Δn2は以下の式で示される。
【0046】
Δn2=−1/2 n23 R E2 ・・・式(2)
ここでn2はカー効果を示す材料5の屈折率であり、Rはカー係数である。
【0047】
なお、本素子を動作させる際には電界Eを印加した際の屈折率変化量が常光と異常光に対してそれぞれ異なるため、いずれか一方の偏光を導波させる方が好ましい。そのためには、入射光に常光と異常光が混在している場合には、偏光子等を用いて予め入射光の偏光をいずれか一方にした後に本素子に入射する必要がある。
【0048】
以下では、異常光のみが導波しているものとして説明する。
【0049】
図6に一例としてポッケルス効果を示す結晶4がニオブ酸リチウムでカー効果を示す材料5がPLZTであった場合の異常屈折率の変化の様子を示す。図6で横軸はc軸方向に印加する電界Eを、縦軸はそれぞれの屈折率の変化量Δnを示している。なお、図6はニオブ酸リチウムの異常光に対する屈折率を2.2、ポッケルス係数γ33を30.8×10-12m/V、またPLZTの屈折率を2.4、カー係数Rを5.0×10-18(m/V)2として、式(1)および式(2)から計算した。
【0050】
図6のAの範囲では電界Eは負の値を持っている。電界Eが負の値を持つということは、電界Eがポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に印加されていることを意味する。このような電界Eを印加するためには、一対の電極3aおよび3bに電圧を加える際に、ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する電極3bが常にポッケルス効果を示す結晶4の−c方向に位置する電極3aよりも電位が高くなるように電圧を加えればよい。
【0051】
電界Eが負の値を持つAの範囲では、電界の変化に対してポッケルス効果を示す結晶4とカー効果を示す材料5で屈折率が互いに逆に変化する。このため、両部材間の屈折率差の変化を大きくとることが可能となる。
【0052】
透過帯域のシフト量は両部材間の屈折率差の変化に大きく依存するため、本発明の波長可変光フィルタでは透過帯域を高効率にシフトさせることができる。そのため、同じ電力で動作させても従来のように一方の屈折率しか変化しない場合と比較して大きいシフト量を得られるため、低電力での動作が可能となる。
【0053】
また、常光のみを導波させた場合でも異常光の場合と同様の効果が得られ、効率的に波長帯域をシフトさせることができ、低電力での動作が可能となる。
【0054】
本発明による波長可変光フィルタの代替技術として、分極反転による周期構造で光フィルタを構成する方法が考えられる。しかし、光フィルタとして動作するためには、フォトニックバンドギャップを形成するように屈折率差をもった2つの部材で周期構造を形成する必要がある。そのため、サブミクロンサイズである分極反転部15および分極非反転部16のどちらか一方のみに不純物を拡散する等の工程が必要となり、精度良く作製することは困難である。本発明による方法では、このような工程は必要としない。
【0055】
(第2の実施形態)
本発明で提案する波長可変光フィルタ素子の第2の実施形態による構成を図3に示す。
【0056】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の作製方法により導波路1を形成した後、図3のように一対の電極3a、3bを配置する。
【0057】
この際、基板2として図3のようにc軸が基板2の底面に垂直な方向に一様に揃ったポッケルス効果を示す結晶4を用いる。この際、自発分極の極性は導波路1の上面が正であっても、基板2の底面が正であってもいずれでも良い。
【0058】
一対の電極3a、3bは電界Eをポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加するために、基板2の底面および導波路1の上面にそれぞれ配置している。
ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を電極3b、−c方向に位置する方を電極3aとする。
【0059】
ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を電極3b、−c方向に位置する方を電極3aとする限り、図11に示すように、第1電極3aを導波路1の上面に、第2電極3bを基板2の底面に配置しても良い。この場合、一対の電極3a、3bには、図3とは逆の方向に電圧を印加することになる。
【0060】
一対の電極3a、3bの内、導波路1の上面に形成するものはバッファ層8を介して作製すれば、導波路1での光の散乱を妨げることができる。
【0061】
本実施形態による電極構成では、電極間距離は基板2の厚みに依存するが電極の形成は容易である。また、本実施形態による波長可変光フィルタも第1の実施形態によるものと同様に、電極3bの電位が電極3aよりも常に高くなるように電圧を印加することで効率的に透過帯域をシフトさせることができる。
【0062】
(第3の実施形態)
本発明で提案する波長可変光フィルタ素子の第3の実施形態による構成を図4に示す。
【0063】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の作製方法により導波路1を形成した後、図4のように一対の電極3a、3bを配置する。
【0064】
この際、基板2として図4のようにc軸を導波路1の長手方向に揃えたポッケルス効果を示す結晶4を用いる。
【0065】
一対の電極3a、3bは電界Eをポッケルス効果を示す結晶4のc軸方向に印加するために、導波路1の長手方向の両端にそれぞれ配置している。一対の電極3a,3bは、ポッケルス効果を示す結晶4の+c方向に位置する方を3b、−c方向に位置する方を3aと定義する。一対の電極3a、3bはバッファ層8を介して作製すれば、導波路での光の散乱を妨げることができる。
【0066】
本実施形態による電極構造では導波路1の側面や基板2の裏面への電極形成が不要であるため、電極形成がより容易になる。また、本実施形態による波長可変光フィルタも第1の実施形態によるものと同様に、電極3bの電位が電極3aよりも常に高くなるように電圧を印加することで効率的に透過帯域をシフトさせることができる。
【実施例1】
【0067】
本発明による波長可変光フィルタ素子の動作検討を行った。
【0068】
ポッケルス効果を示す結晶4はニオブ酸リチウム、カー効果を示す材料5はPLZTとし、ニオブ酸リチウムの幅L1を170nm、PLZTの幅L2を156nmとした。一対の電極3a、3bの間隔は4μmとして考えた。また、導波路1を導波する光は異常光のみとした。
【0069】
電極3aを接地した後にDC電源7を用いて電極3bに+10Vの電位を与え、更に信号源6から振幅10Vの信号電界を印加する場合を考えた。この時、電極3bの電位は電極3aの電位よりも常に高くなる。電極3a、3bの間隔は4μmであるので10Vの電圧を印加すると2.5×106V/mの電界が得られる。
【0070】
この場合には、電界Eは図6の点(a)から点(b)の範囲で変化する。図6中で電界Eが点(a)から点(b)まで変化するとニオブ酸リチウムの屈折率は8.6×10-4だけ減少し、PLZTの屈折率は8.2×10-4増加する。ニオブ酸リチウムとPLZTの間の屈折率差の変化量は両部材の屈折率変化量の合計となるため、電界Eが点(a)から点(b)まで変化するときに16.8×10-4だけ変化することがわかった。
【0071】
続いて、この素子の点(a)、点(b)での光の透過帯域を計算した。結果を図7に示す。図7で横軸は入力光の波長、縦軸は出力光の入力光に対する強度とした。電界無印加時である点(a)と比べて、電界印加時の点(b)では透過帯域が+340pm変化することがわかった。
【0072】
比較のため、従来のように一方の屈折率しか変化しない場合の計算も行った。図7と同様の電界Eを印加した際に、ニオブ酸リチウムの屈折率しか変化しない場合では光フィルタの透過帯域は図8のようになった。この場合では透過帯域は+190pmしか変化しないことがわかった。
【0073】
以上の計算結果から、同じ電圧を印加させた場合に本発明による波長可変光フィルタ素子の方が従来のものより効率的に波長帯域をシフトできることが確認できた。
【0074】
以下のような工程で、本発明による波長可変光フィルタを実際に作製した。
【0075】
基板2としては、ニオブ酸リチウム結晶のX-cut基板を用いた。X-cut基板ではc軸は基板の底面に対して平行な方向を向いている。導波路1は長手方向がc軸に対して垂直となるようにした。
【0076】
まず、ニオブ酸リチウム基板にTi拡散により拡散層を形成した。基板上にTiを70nm蒸着した後、酸素雰囲気下において1030℃で10時間拡散を行い、深さ3.0μmの拡散層を得た。
【0077】
次に、図5のような工程でニオブ酸リチウムおよびPLZTからなる周期構造を作製した。
【0078】
まず、図5(B)のようにニオブ酸リチウム基板9上にレジストマスク13を形成する。レジストマスク13は電子ビーム描画により作製した。
【0079】
次に、図5Cのようにエッチングで凹凸構造10を形成した。エッチングにはICPドライエッチング装置を用い、エッチングガスとしては、ArとC4F8エッチング後に形成された凹凸構造10は凸部11の幅L1が170nm、凹部12の幅L2が156nm、凹部12の深さdは250nmとした。
【0080】
ドライエッチング後、図5(D)のようにレジストマスク13を剥離した後に図5(E)のようにPLZT14を成膜した。
【0081】
なお、PLZT14はゾル−ゲル法によって作製した。
【0082】
まず、PLZTゾル前駆体溶液を凹凸構造10の凹部12に充填するように塗布する。これを乾燥させることによりPLZT 前駆体を得て、更に焼成した。焼結温度は725℃として10分間焼成を行った。これにより、250nmのPLZT14の単結晶を得た。
【0083】
その後、図5(F)のように平坦化を行い余分なPLZTを除去した。
【0084】
以上の工程により、1.5μm光に対してフォトニックバンドギャップを持つ周期構造を形成した。
【0085】
次に、リッジを形成し導波路1の横方向での光の閉じ込め構造を形成した。フォトリソグラフィにより導波路1に対応するレジストマスクを形成した後、エッチングを行うことでリッジを形成した。導波路1の幅Lは4.0μm、リッジの深さHは2.0μmとした。
【0086】
導波路1の側壁に、バッファ層8を形成した後に一対の電極3a、3bを形成した。バッファ層8としてはSiO2を電極材料としてはAlを用いた。
【0087】
以上の工程で作製した波長可変光フィルタにおいて電圧の印加により波長帯域がシフトすることを確認した。また、ニオブ酸リチウム基板の+c方向に配置した電極3bの電位が−c方向に配置した電極3aの電位よりも高くなるように動作させることで従来型より大きな波長帯域のシフトが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明による素子は波長を可変することができる光フィルタ素子として用いることができ、低電力で透過帯域を可変することができる。
【0089】
以下、本発明をまとめる。
【0090】
1.(図1、図3、図4の包括概念)
基板(2)の上面に設けられた導波路(1)と、
前記導波路(1)に電界を印加する一対の電極(3)とを有する波長可変光フィルタ素子であって、
前記導波路(1)は、ポッケルス効果を示す結晶(4)およびカー効果を示す材料(5)からなり、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)およびカー効果を示す材料(5)は前記導波路(1)の長手方向に交互に配置された周期構造を形成しており、
前記一対の電極(3)は、前記導波路(1)を挟む第1電極(3a)および第2電極(3b)とからなり、
前記第1電極(3a)は前記ポッケルス効果を示す結晶(4)の−c方向に配置され、
前記第2電極(3b)は前記ポッケルス効果を示す結晶(4)の+c方向に配置され、
前記第2電極(3b)に印加される電圧は、前記第1電極(3a)に印加される電圧よりも常に大きい
(ことを特徴とする)波長可変光フィルタ素子。
【0091】
2.(図1)
前記一対の電極(3)は、前記導波路(1)の側壁に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が、前記導波路(1)の短手方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【0092】
3.(図3)
前記第1電極(3a)は基板(2)の下面に設けられており、
前記第2電極(3b)は導波路(1)の上面に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が前記基板(2)の法線方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【0093】
4.(図11)
前記第2電極(3b)は基板(2)の下面に設けられており、
前記第1電極(3a)は導波路(1)の上面に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が前記基板(2)の法線方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【0094】
5.(図4)
前記一対の電極(3)は導波路(1)の上面に設けられており、
前記ポッケルス効果を示す結晶(4)のc軸が前記導波路(1)の長手方向に平行である、前記項1に記載の波長可変光フィルタ素子。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態による波長可変光フィルタの構成図
【図2】導波路の構造を示す図
【図3】第2の実施形態による波長可変光フィルタの構成図
【図4】第3の実施形態による波長可変光フィルタの構成図
【図5】周期構造の作製工程を示す図
【図6】ニオブ酸リチウムとPLZTの電界印加時の屈折率変化を示すグラフ
【図7】本発明による波長可変光フィルタの透過帯域シフトの一例を示すグラフ
【図8】従来技術による波長可変光フィルタの透過帯域シフトの一例を示すグラフ
【図9】特許文献1による波長可変光フィルタを示す図
【図10】特許文献2による周期構造を示す図
【図11】第2の実施形態の変形例による波長可変光フィルタの構成図
【符号の説明】
【0096】
1 導波路
2 基板
3a、3b、19 電極
4 ポッケルス効果を示す結晶
5 カー効果を示す材料
6 信号源
7 DC電源
8 バッファ層
9、20 ニオブ酸リチウム基板
10 凹凸構造
11 凸部
12 凹部
13 レジストマスク
14、17 PLZT
15 分極反転部
16 非反転部
18 充填材
21 周期構造
22 クラッド層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポッケルス効果を示す結晶およびカー効果を示す材料からなる導波路と、
前記導波路に電界を印加する一対の電極を有し、
前記導波路には前記ポッケルス効果を示す結晶および前記カー効果を示す材料が導波路の長手方向に交互に配置された周期構造が形成されており、
前記周期構造がポッケルス効果を示す結晶に周期的に溝を形成した凹凸構造と、
前記凹凸構造の凹部に充填されたカー効果を示す材料からなり、
前記ポッケルス効果を示す結晶のc軸の向きが一様に前記導波路を横切る方向に揃っており、
前記ポッケルス効果を示す結晶の持つc軸方向の自発分極の極性が一様に揃っており、
前記一対の電極は前記導波路の側壁に前記導波路を間に挟むようにそれぞれ配置され、
前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、
前記ポッケルス効果を示す結晶の−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する波長可変光フィルタ素子。
【請求項2】
前記ポッケルス効果を示す結晶のc軸の向きが一様に基板の底面に対して垂直な方向に揃っており、
前記ポッケルス効果を示す結晶の持つc軸方向の自発分極の極性が一様に揃っており、
前記一対の電極は前記導波路の上面および前記基板の底面にそれぞれ配置され、
前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された前記一方の電極の電位が、
前記ポッケルス効果を示す結晶の−c方向に配置された前記もう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する請求項1記載の波長可変光フィルタ素子。
【請求項3】
前記ポッケルス効果を示す結晶のc軸の向きが一様に導波路の長手方向に揃っており、
前記ポッケルス効果を示す結晶の持つc軸方向の自発分極の極性が一様に揃っており、
前記一対の電極は前記導波路の長手方向の両端にそれぞれ配置され、
前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された前記一方の電極の電位が、
前記ポッケルス効果を示す結晶の−c方向に配置された前記もう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する請求項1記載の波長可変光フィルタ素子。
【請求項4】
前記導波路に形成される周期構造が、
前記ポッケルス効果を示す結晶に周期的に溝を掘り凹凸構造を形成する工程と、
前記凹凸構造の凹部にカー効果を示す材料を充填する工程からなる事を特徴とする請求項1〜3記載の波長可変光フィルタの製造方法。
【請求項1】
ポッケルス効果を示す結晶およびカー効果を示す材料からなる導波路と、
前記導波路に電界を印加する一対の電極を有し、
前記導波路には前記ポッケルス効果を示す結晶および前記カー効果を示す材料が導波路の長手方向に交互に配置された周期構造が形成されており、
前記周期構造がポッケルス効果を示す結晶に周期的に溝を形成した凹凸構造と、
前記凹凸構造の凹部に充填されたカー効果を示す材料からなり、
前記ポッケルス効果を示す結晶のc軸の向きが一様に前記導波路を横切る方向に揃っており、
前記ポッケルス効果を示す結晶の持つc軸方向の自発分極の極性が一様に揃っており、
前記一対の電極は前記導波路の側壁に前記導波路を間に挟むようにそれぞれ配置され、
前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された一方の電極の電位が、
前記ポッケルス効果を示す結晶の−c方向に配置されたもう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する波長可変光フィルタ素子。
【請求項2】
前記ポッケルス効果を示す結晶のc軸の向きが一様に基板の底面に対して垂直な方向に揃っており、
前記ポッケルス効果を示す結晶の持つc軸方向の自発分極の極性が一様に揃っており、
前記一対の電極は前記導波路の上面および前記基板の底面にそれぞれ配置され、
前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された前記一方の電極の電位が、
前記ポッケルス効果を示す結晶の−c方向に配置された前記もう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する請求項1記載の波長可変光フィルタ素子。
【請求項3】
前記ポッケルス効果を示す結晶のc軸の向きが一様に導波路の長手方向に揃っており、
前記ポッケルス効果を示す結晶の持つc軸方向の自発分極の極性が一様に揃っており、
前記一対の電極は前記導波路の長手方向の両端にそれぞれ配置され、
前記一対の電極の内、前記ポッケルス効果を示す結晶の+c方向に配置された前記一方の電極の電位が、
前記ポッケルス効果を示す結晶の−c方向に配置された前記もう一方の電極の電位よりも常に高くなるように電圧を印加する請求項1記載の波長可変光フィルタ素子。
【請求項4】
前記導波路に形成される周期構造が、
前記ポッケルス効果を示す結晶に周期的に溝を掘り凹凸構造を形成する工程と、
前記凹凸構造の凹部にカー効果を示す材料を充填する工程からなる事を特徴とする請求項1〜3記載の波長可変光フィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−219233(P2007−219233A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40552(P2006−40552)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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