説明

フォリスタチン(follistatin)ドメイン含有タンパク質

【課題】細胞に対するGDF−8の効果を調節すること。
【解決手段】本発明は、増殖および分化因子−8(GDF−8)のレベルまたは活性を調節する、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質の使用に関する。より詳細には、本発明は少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含み、フォリスタイン自体を含まない、GDF−8のレベルまたは活性の調節に関する障害を処置するためのタンパク質の使用に関する。本発明は、筋肉障害および筋肉疾患、特に筋肉組織の増大が治療学的に有効である筋肉障害および筋肉疾患を処置するのに有効である。本発明はまた、代謝、脂肪、組織および骨変性に関する疾患および障害を処置するのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願番号60/357,846(2002年2月21日出願)および
同第60/434,645(2002年12月20日出願)の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、増殖分化因子−8(growth and differentiatio
n factor−8)(GDF−8)のレベルまたは活性を調節する、少なくとも1つ
のフォリスタチンドメインを含むタンパク質の使用に関する。より具体的には、本発明は
、GDF−8のレベルまたは活性の調節に関連する障害を処置するため、フォリスタチン
自体を除く、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質の使用に関する
。本発明は、筋疾患および筋障害(特に、筋組織における増加が治療上有益である筋疾患
および筋障害)を処置するために有用である。本発明はまた、代謝、脂肪組織、および骨
変性に関連する疾患および障害を処置するために有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
増殖分化因子−8(GDF−8)(マイオスタチン(myostatin)としても公
知である)は、構造的に関連する増殖因子のトランスホーミング増殖因子β(TGF−β
)スーパーファミリーのメンバー(これらの全ては、重要な生理学的増殖調節特性および
形態形成特性を有する)である(Kingsleyら(1994)Genes Dev.
,8:133−46;Hoodlessら(1998)Curr.Topics Mic
robiol.Immunol.,228:235−72)。GDF−8は、骨格筋量の
ネガティブレギュレーターであり、そしてその生物学的活性を調節する同定因子(ide
ntifying factor)への大きな関心が存在する。例えば、GDF−8は、
発育中および成体の骨格筋において高く発現される。トランスジェニックマウスにおける
GDF−8ヌル変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成によって特徴付けられる(Mc
Pherronら(1997)Nature,387:83−90)。骨格筋量における
同様の増加は、ウシにおけるGDF−8の天然に存在する変異から明らかである(Ash
moreら(1974)Growth,38:501−507;Swatlandおよび
Kieffer(1994)J.Anim.Sci.,38:752−757;McPh
erronおよびLee(1997)Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A
.,94:12457−12461;ならびにKambadurら(1997)Geno
me Res.,7:910−915)。最近の研究はまた、ヒトにおけるHIV感染に
関連する筋衰弱が、GDF−8タンパク質発現の増加によって達成されることを示してい
る(Gonzalez−Cadavidら(1998)Proc.Natl.Acad.
Sci.U.S.A.,95:14938−43)。さらに、GDF−8は、筋特異的酵
素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生および筋芽細胞増殖を調節し得る(特許文献1)。
【0004】
ヒトおよび動物の多くの障害は、筋組織の喪失または筋組織の機能的障害に関連する。
今日まで、これらの障害のための信頼性のある治療または有効な治療はほとんど存在しな
い。しかし、これらの障害に関連するひどい症状は、これらの障害に罹患している患者に
おける筋組織の量を増大させる治療を使用することによって実質的に減少され得る。これ
らの状態は治癒しないものの、このような治療は、これらの患者の生活の質を有意に改善
し、そしてこれらの疾患の影響を幾分か回復し得る。従って、これらの障害に罹患してい
る患者における筋組織の全体的な増大に寄与し得る新規の治療を同定することが当該分野
において必要である。
【0005】
骨格筋におけるその増殖調節特性および形態形成特性に加えて、GDF−8はまた、他
の多くの生理学的プロセス(例えば、グルコースホメオスタシス)、ならびに異常な状態
(例えば、2型糖尿病および脂肪組織障害(例えば、肥満)の発展に関与し得る。例えば
、GDF−8は、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化を調節する(Kimら(2001)B.
B.R.C.281:902−906)。したがって、GDF−8の調節は、これらの疾
患を処置するためにも有用であり得る。
【0006】
GDF−8タンパク質は、アミノ末端プロペプチドおよびカルボキシ末端成熟ドメイン
からなる前駆体タンパク質として合成される(McPherronおよびLee,(19
97)Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,94:12457−124
61)。切断前に、この前駆体GDF−8タンパク質はホモダイマーを形成する。次いで
、アミノ末端プロペプチドは、成熟ドメインから切断される。この切断されたプロペプチ
ドは、その生物学的活性が不活性化されている成熟ドメインダイマーに非共有結合された
ままであり得る(Miyazonoら(1988)J.Biol.Chem.,263:
6407−6415;Wakefieldら(1988)J.Biol.Chem.,2
63:7646−7654;およびBrownら(1990)Growth Facto
rs,3:35−43)。2つのGDF−8プロペプチドはGDF−8成熟ダイマーに結
合すると考えられている(Thiesら(2001)Growth Factors,1
8:251−259)。この非活性化特性に起因して、このプロペプチドは、「潜伏関連
ペプチド(latency−associated peptide)」(LAP)とし
て公知であり、そして成熟ドメインとプロペプチドとの複合体は、低潜在性複合体(sm
all latent complex)と通常称される(GentryおよびNash
(1990)Biochemistry,29:6851−6857;Derynckら
(1995)Nature,316:701−705;ならびにMassague(19
90)Ann.Rev.Cell Biol.,12:597−641)。他のタンパク
質はまた、GDF−8または構造的に関連するタンパク質に結合し、それらの生物学的活
性を阻害することが公知である。このような阻害性タンパク質には、フォリスタチンが挙
げられる(Gamerら(1999)Dev.Biol.,208: 222−232)
。GDF−8の成熟ドメインは、プロペプチドが除去された場合に、ホモダイマーとして
活性化されると考えられる。
【0007】
明らかに、GDF−8は、多くの重大な生物学的プロセスの調節に関与する。これらの
プロセスでのその重要な機能に起因して、GDF−8は治療介入にとっての望ましい標的
であり得る。特に、GDF−8の活性を阻害する治療剤は、ヒトまたは動物の疾患(筋組
織の増大が治療的に有益である)を処置するために使用され得る。
【0008】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む公知のタンパク質は、多くの生物学的
プロセス(特に、TGF−βスーパーファミリーシグナル伝達の調節および細胞接着のよ
うな細胞外マトリクス媒介性プロセスの調節)において役割を果たしている。フォリスタ
チン、フォリスタチン関連遺伝子(FLRG、FSRP)、およびフォリスタチン関連タ
ンパク質(FRP)は全て、TGF−βによる転写調節を介してか(Bartholin
ら(2001)Oncogene,20:5409−5419;Shibanumaら(
1993)Eur.J.Biochem.217:13−19)、またはTGF−βシグ
ナル伝達経路をアンタゴナイズするその能力によって(Phillipsおよびde K
retser(1998)Front.Neuroendocrin.,19:287−
322;Tsuchidaら(2000)J.Biol.Chem.,275:4078
8−40796;Patelら(1996)Dev.Biol.,178:327−34
2;Amthorら(1996)Dev.Biol.,178:343−362)のいず
れかで、TGF−βシグナル伝達に関連する。括弧内のタンパク質の名称は、代替的な名
称である。
【0009】
インスリン増殖因子結合タンパク質7(IGFBP7、mac25)(これは、少なく
とも1つのフォリスタチンドメインを含む)は、インスリンに結合し、その後のインスリ
ンレセプターとの相互作用をブロックする。さらに、IGFBP7は、TGF−βファミ
リーメンバーであるアクチビンに結合されることが示されている(Kato(2000)
Mol.Med.,6:126−135)。
【0010】
アグリンおよびアグリン関連タンパク質は、9つ以上のフォリスタチンドメインを含み
、そして神経細胞から分泌され、アセチルコリンレセプターおよびシナプスの形成に関与
する他の分子の凝集を促進する。フォリスタチンドメインが、シナプスに増殖因子を局在
化するのに役立ち得ることが示唆される(Patthyら(1993)Trends N
eurosci.,16:76−81)。
【0011】
オステオネクチン(SPARC、BM40)およびヘビン(SC1、mast9、QR
1)は、細胞外マトリクスタンパク質と相互作用し、そして細胞増殖および細胞接着を調
節するタンパク質に密接に関連する(Motamed(1999)Int.J.Bioc
hem.Cell.Biol.,31:1363−1366;GirardおよびSpr
inger(1996)J.Biol.Chem.,271:4511−4517)。こ
れらのタンパク質は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む。
他のフォリスタチンドメインタンパク質は、記載されるか、またはNCBIデータベー
ス(National Center for Biotechnology Info
rmation,Bethesda,Maryland,USA)に明らかにされている
が、しかし、これらの機能は、現在未知である。これらのタンパク質としては、以下が挙
げられる:U19878(G01639、トモレグリン(tomoregulin)−1
に非常に類似)、T46914、ヒトGASP1(GDF−関連血清タンパク質1(
F−ssociated erum rotein 1);本明細書中に記載され
る;図7)、ヒトGASP2(WFIKKN;Trexlerら(2001)Proc.
Natl.Acad.Sci.U.S.A.,98:3705−3709;図9)、およ
びテスチカン(testican)(SPOCK)タンパク質のプロテオグリカンファミ
リー(Allielら(1993)Eur.J.Biochem.,214:347−3
50)。マウスGASP1(図6)およびマウスGASP2(図8)のアミノ酸配列およ
びヌクレオチド配列はまた、Celeraデータベース(Rockville,MD)か
ら決定された。本明細書中に記載されるように、予測されたアミノ酸配列を変更しなかっ
たウォッブルコドン中のいくつかの塩基の置換を除いて、クローン化マウスGASP1の
ヌクレオチド配列は、予測されたCelera配列とマッチした(図13を参照のこと)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第00/43781号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
従って、本発明は、独特な構造特性(すなわち、少なくとも1つのフォリスタチンドメ
インの存在)を含む、フォリスタチン以外のタンパク質に関する。フォリスタチン自体は
、本発明によって包含されない。GDF−8タンパク質が、モノマー形態、ダイマー活性
化形態であるか、またはGDF−8の潜伏複合体に複合体化されようとも、少なくとも1
つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、成熟GDF−8タンパク質またはその
フラグメントと特異的に反応する。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタン
パク質は、成熟GDF−8タンパク質上のエピトープに結合し得、この結合は、同じタン
パク質によって結合されない成熟GDF−8タンパク質に対して、GDF−8に関連する
1つ以上の生物学的活性の減少を生じる。
【0014】
本発明は、細胞に対するGDF−8の効果を調節するための方法を提供する。このよう
な方法は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質の有効量を投与す
る工程を包含する。本発明はまた、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタン
パク質をコードするDNA分子を投与することによって細胞においてタンパク質を発現す
るための方法を包含する。
【0015】
本発明に従って、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、治療
的有効用量で患者に投与され得、筋組織の増加が治療的に有益である医学的状態を処置ま
たは予防する。実施形態としては、GDF−8の生産、代謝または活性に関連する細胞お
よび組織に関与する疾患、障害および損傷の処置が挙げられる。
【0016】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、薬学的調製物に調製さ
れ得る。モノマー形態、ダイマーの活性化形態であるか、またはGDF−8潜伏複合体に
複合体化されようとも、薬学的調製物は、成熟GDF−8タンパク質またはそのフラグメ
ントの結合を助ける他の成分を含み得る。
【0017】
さらに、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、モノマー形態
、ダイマーの活性化形態であるか、またはGDF−8潜伏複合体に複合体化されようとも
、診断ツールとして使用され得、成熟GDF−8タンパク質またはそのフラグメントを定
量的または定性的に検出する。例えば、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む
タンパク質を使用して、細胞、体液、組織または生物中のGDF−8タンパク質の存在、
非存在または量を検出し得る。検出された成熟GDF−8タンパク質の存在または量は、
本明細書中に列挙される1つ以上の医学的状態と相関され得る。
【0018】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、モノマー形態、ダイマ
ーの活性化形態であるか、またはGDF−8潜伏複合体に複合体化されようとも、成熟G
DF−8タンパク質またはそのフラグメントを検出するための診断キット中に提供され得
、そして本明細書中に記載される1つ以上の医学的状態と結果とを相関させことを助ける
。このようなキットは、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む少なくとも1つ
のタンパク質(これは、標識されているか、または標識されていない)およびこのタンパ
ク質に結合する少なくとも1つの因子(例えば、標識化抗体)を含み得る。このキットは
また、実験的な検出の結果を比較し得る、適切な生物学的標準およびコントロールサンプ
ルを含み得る。これはまた、緩衝液または洗浄溶液およびキットを使用するための指示書
を備え得る。実験を行い得る構造的な成分(例えば、スティック、ビース、紙、カラムム
、バイアルまたはゲル)を備え得る。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
薬学的組成物であって、以下:
i)少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む少なくとも1つのタンパク質、およ

ii)少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリア
を含み、ここで該タンパク質は、フォリスタチンでない、
組成物。
(項目2)
前記タンパク質が、以下:FLRG、FRP、アグリン、オステオネクチン、ヘビン、
IGFBP7、U19878およびGASP2から選択される、項目1に記載の組成物

(項目3)
前記タンパク質が、安定化改変を有する、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記改変が、IgG分子のFc領域への融合である、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記IgG分子が、IgG1またはIgG4あるいはその誘導体である、項目4に記
載の組成物。
(項目6)
前記IgG分子が、IgG1またはその誘導体である、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記IgG分子が、リンカーペプチドによって少なくとも1つのフォリスタチンドメイン
を含むタンパク質に融合される、項目4に記載の組成物。
(項目8)
前記改変が、改変されたグリコシル化部位を含む、項目3に記載の組成物。
(項目9)
前記改変が、少なくとも1つの炭水化物部分を含む、項目3に記載の組成物。
(項目10)
前記改変が、アルブミンまたはアルブミン誘導体を含む、項目3に記載の組成物。
(項目11)
前記改変が、非タンパク質様ポリマーを含む、項目3に記載の組成物。
(項目12)
前記改変が、ペグ化を含む、項目3に記載の組成物。
(項目13)
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む少なくとも1つのタンパク質を含む診
断キットであって、
ここで該タンパク質は、フォリスタチンではなく、そして少なくとも1種の他のキット成
分が、以下:
i)タンパク質を結合する少なくとも1種の試薬;
ii)少なくとも1種の緩衝液および/または溶液;ならびに
iii)少なくとも1種の構造成分
から選択されるでない、
診断キット。
(項目14)
前記タンパク質が、以下:FLRG、FRP、アグリン、オステオネクチン、ヘビン、I
GFBP7、U19878およびGASP2から選択される、項目13に記載のキット

(項目15)
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質をコードする核酸を含む組
換え細胞であって、該タンパク質は、フォリスタチンでない、組換え細胞。
(項目16)
前記タンパク質が、安定化改変を有する、項目15に記載の組換え細胞。
(項目17)
前記タンパク質が、以下:FLRG、FRP、アグリン、オステオネクチン、ヘビン、
IGFBP7、U19878およびGASP2から選択される、項目15または項目
16に記載の組換え細胞。
(項目18)
GDF−8を調節する方法であって、該方法は、少なくとも1つのフォリスタチンドメ
インを含む少なくとも1つのタンパク質を投与する工程および該タンパク質をGDF−8
と相互作用させる工程を包含し、該タンパク質は、フォリスタチンでない、方法。
(項目19)
医学的障害を被る患者を処置する方法であって、該方法は、治療有効用量の少なくとも
1つのフォリスタチンドメインを含む少なくとも1つのタンパク質を投与する工程および
該タンパク質をGDF−8と相互作用させる工程を包含し、該タンパク質は、フォリスタ
チンでない、方法。
(項目20)
医学的障害を被る患者を処置する方法であって、該方法は、少なくとも1つのフォリス
タチンドメインを含むタンパク質をコードする核酸を投与する工程、該核酸がタンパク質
に翻訳されるようにする工程および該翻訳されたタンパク質をGDF−8と相互作用させ
る工程を包含し、該タンパク質は、フォリスタチンでない、方法。
(項目21)
核酸を発現する方法であって、該方法は、以下:
i)少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質をコードする核酸を細胞
に投与する工程、
ii)該核酸が該細胞に侵入するようにする工程、および
iii)該細胞に該タンパク質を発現させる工程、
を包含し、
ここで該タンパク質が、フォリスタチンでない、
方法。
(項目22)
前記タンパク質が、以下:FLRG、FRP、アグリン、オステオネクチン、ヘビン、
IGFBP7、U19878およびGASP2から選択される、項目18、19、20
または21に記載の方法。
(項目23)
前記タンパク質が、安定化改変を有する、項目18、19、20または21に記載の
方法。
(項目24)
前記改変が、IgG分子のFc領域への融合である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記IgG分子が、IgG1またはIgG4あるいはその誘導体である、項目24に
記載の方法。
(項目26)
前記IgG分子が、IgG1またはその誘導体である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記IgG分子が、リンカーペプチドによって少なくとも1つのフォリスタチンドメイン
を含むタンパク質に融合される、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記改変が、改変されたグリコシル化部位を含む、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記改変が、少なくとも1つの炭水化物部分を含む、項目23に記載の方法。
(項目30)
前記改変が、アルブミンまたはアルブミン誘導体を含む、項目23に記載の組成物。
(項目31)
前記改変が、非タンパク質様ポリマーを含む、項目23に記載の方法。
(項目32)
前記改変が、ペグ化を含む、項目23に記載の方法。
(項目33)
前記患者が、筋組織の質量または量の増加によって治療的に有利になる、項目19に
記載の方法。
(項目34)
前記障害が、筋障害である、項目19に記載の方法。
(項目35)
前記筋肉障害が、筋ジストロフィーである、項目34に記載の方法。
(項目36)
項目35に記載の方法であって、前記筋障害が、以下:重篤なまたは良性のX連鎖筋
ジストロフィー、肢帯ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋萎縮、筋緊張性ジストロフィー、
遠位筋ジストロフィー(distal muscular dystrophy)、進行
性ジストロフィー性眼筋麻痺(progressive dystrophic oph
thalmoplegia)、眼咽頭筋ジストロフィーおよびフクヤマ型先天性筋ジスト
ロフィーから選択される、方法。
(項目37)
項目34に記載の方法であって、前記障害が、以下:先天性ミオパシー、先天性筋緊
張症、家族性周期性四肢麻痺、発作性ミオグロビン尿症、重症筋無力症、イートン−ラン
バート症候群、二次筋無力症、脱神経萎縮症(denervation atrophy
)、発作性筋萎縮症(paroxymal muscle atrophy)、筋るいそ
う症候群(muscle wasting syndrome)、サルコペニア(sar
copenia)および悪液質から選択される、方法。
(項目38)
前記障害が、筋組織に対する外傷および筋組織に対する慢性損傷から選択される筋障害
でsる、項目34に記載の方法。
(項目39)
前記障害が、代謝疾患または代謝障害である、項目19に記載の方法。
(項目40)
前記障害が、2型糖尿病、非インシュリン依存性真性糖尿病、高血糖症または肥満症で
ある、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記障害が、肥満症のような脂肪組織障害である、項目19に記載の方法。
(項目42)
前記障害が、骨粗しょう症のような骨変性疾患である、項目19に記載の方法。
(項目43)
前記タンパク質が、同時あるいは1日間隔、1週間間隔または1ヶ月間隔で投与される
、項目19に記載の方法。
(項目44)
前記タンパ質が、5mg〜100mgの用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目45)
前記タンパク質が、15mg〜85mgの用量で投与される、項目19に記載の方法

(項目46)
前記タンパク質が、3mg〜70mgの用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目47)
前記タンパク質が、40mg〜60mgの用量で投与される、項目19に記載の方法

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、野生型マウス血清からのGDF−8複合体の抗体精製を示す。銀染色還元ゲルは、アガロースビーズに共有結合したJA16モノクローナル抗体を使用して、野生型マウス血清から精製したタンパク質を示す。モック結合ビーズを用いたコントロール精製(0)を、並行して行った。次いで、緩衝液(mock溶出)、競合ペプチドおよびSDSサンプル緩衝液での溶出は、JA16結合体化ビーズからペプチドで特異的に溶出された2つの明らかなタンパク質バンドを示した(矢印によって示される)。
【図2−1】図2は、正常なマウス血清から親和性精製された、サンプル中の成熟GDF−8およびプロセシングされていないGDF−8の同定を示す。図2Aは、親和性精製されたサンプル中の12kDaの明らかなバンドから同定されたGDF−8由来ペプチド(配列番号19)の代表的なMS/MSスペクトルを示す。N末端フラグメントイオン(bイオン)およびC末端フラグメントイオン(yイオン)の両方が明らかである。特に、最も強いプロリン含有ペプチドの一般的特徴であるyフラグメントイオンが、プロリン残基の前でフラグメント化から生じる。
【図2−2】図2は、正常なマウス血清から親和性精製された、サンプル中の成熟GDF−8およびプロセシングされていないGDF−8の同定を示す。図2Bは、GDF−8の成熟領域を認識するポリクローナル抗体でプローブされたウェスタンブロットを示し、親和性精製されたサンプル中のGDF−8の存在を確認する。GDF−8の成熟形態およびプロセシングされていない形態の両方が、明らかである。
【図3−1】図3は、正常なマウス血清から単離された循環GDF−8に結合するGDF−8プロペプチドおよびフォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)を示す。36kDaバンドで同定されたGDF−8プロペプチド(配列番号23)(図3A)およびFLRG由来ペプチド(配列番号30)(図3C)からの代表的なMS/MSスペクトルを示す。図3Bは、GDF−8のプロペプチド領域を特異的に認識するポリクローナル抗体を用いてプローブ化された、親和性精製されたGDF−8複合体のウェスタンブロットを示し、GDF−8複合体中のこのタンパク質の質量スペクトル同定を確認する。短縮されたプロペプチドおよびプロセシングされていないGDF−8の両方は、より長い曝露で明らかであり、プロセシングされていないGDF−8はまた、SDS溶出サンプルにおいて見られる。図3Dは、FLRGに対するモノクローナル抗体を用いてプローブした、親和性精製したGDF−8複合体のウェスタンブロットを示す。
【図3−2】図3は、正常なマウス血清から単離された循環GDF−8に結合するGDF−8プロペプチドおよびフォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)を示す。36kDaバンドで同定されたGDF−8プロペプチド(配列番号23)(図3A)およびFLRG由来ペプチド(配列番号30)(図3C)からの代表的なMS/MSスペクトルを示す。図3Bは、GDF−8のプロペプチド領域を特異的に認識するポリクローナル抗体を用いてプローブ化された、親和性精製されたGDF−8複合体のウェスタンブロットを示し、GDF−8複合体中のこのタンパク質の質量スペクトル同定を確認する。短縮されたプロペプチドおよびプロセシングされていないGDF−8の両方は、より長い曝露で明らかであり、プロセシングされていないGDF−8はまた、SDS溶出サンプルにおいて見られる。図3Dは、FLRGに対するモノクローナル抗体を用いてプローブした、親和性精製したGDF−8複合体のウェスタンブロットを示す。
【図3−3】図3は、正常なマウス血清から単離された循環GDF−8に結合するGDF−8プロペプチドおよびフォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)を示す。36kDaバンドで同定されたGDF−8プロペプチド(配列番号23)(図3A)およびFLRG由来ペプチド(配列番号30)(図3C)からの代表的なMS/MSスペクトルを示す。図3Bは、GDF−8のプロペプチド領域を特異的に認識するポリクローナル抗体を用いてプローブ化された、親和性精製されたGDF−8複合体のウェスタンブロットを示し、GDF−8複合体中のこのタンパク質の質量スペクトル同定を確認する。短縮されたプロペプチドおよびプロセシングされていないGDF−8の両方は、より長い曝露で明らかであり、プロセシングされていないGDF−8はまた、SDS溶出サンプルにおいて見られる。図3Dは、FLRGに対するモノクローナル抗体を用いてプローブした、親和性精製したGDF−8複合体のウェスタンブロットを示す。
【図3−4】図3は、正常なマウス血清から単離された循環GDF−8に結合するGDF−8プロペプチドおよびフォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)を示す。36kDaバンドで同定されたGDF−8プロペプチド(配列番号23)(図3A)およびFLRG由来ペプチド(配列番号30)(図3C)からの代表的なMS/MSスペクトルを示す。図3Bは、GDF−8のプロペプチド領域を特異的に認識するポリクローナル抗体を用いてプローブ化された、親和性精製されたGDF−8複合体のウェスタンブロットを示し、GDF−8複合体中のこのタンパク質の質量スペクトル同定を確認する。短縮されたプロペプチドおよびプロセシングされていないGDF−8の両方は、より長い曝露で明らかであり、プロセシングされていないGDF−8はまた、SDS溶出サンプルにおいて見られる。図3Dは、FLRGに対するモノクローナル抗体を用いてプローブした、親和性精製したGDF−8複合体のウェスタンブロットを示す。
【図4】図4は、血清中の主要なGDF−8結合タンパク質としてのGDF−8プロペプチド、FLRGおよび新規タンパク質を同定した大規模なGDF−8精製の徹底的な分析の結果を示す。銀染色ゲルを、ネガティブコントロールおよびJ16免疫沈降物の両方のペプチド溶出サンプルから13スライスに切り分けた。各スライス中のタンパク質を、トリプシンで消化し、そしてナノフローLC−MS/MSを使用して同定し、そしてデータベースで検出した。JA16サンプルに独特なタンパク質は、プロセシングされていないGDF−8および成熟GDF−8、GDF−8プロペプチド、FLRGならびに新規の複数ドメインプロテアーゼインヒビター(GDF−関連血清タンパク質1:GASP1)のみを含んだ。これらのタンパク質が、ゲルの顕著な領域から同定された。
【図5】図5は、新規の複数ドメインプロテアーゼインヒビター(GASP1)が、血清中のGDF−8に結合されることを示す。図5A(配列番号31に割当てられたペプチド)および5B(配列番号33に割当てられたペプチド)は、図4の銀染色ゲル中のバンド3で同定された、2つのGASP1ペプチドからの代表的なMS/MSスペクトルを示す。
【図6−1】図6Aは、マウスGASP1に対する予測されたヌクレオチド配列を示す。図6Bは、マウスGASP1に対する予測された代替のヌクレオチド配列を示す。図6Cは、図6Aおよび6Bに示されたヌクレオチド配列によってコードされた予測されるアミノ酸配列を示す。2つのヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質配列は、同一である。なぜなら、ヌクレオチド差異は、全てウォッブルコドン位置においてであるからである。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図6−2】図6Aは、マウスGASP1に対する予測されたヌクレオチド配列を示す。図6Bは、マウスGASP1に対する予測された代替のヌクレオチド配列を示す。図6Cは、図6Aおよび6Bに示されたヌクレオチド配列によってコードされた予測されるアミノ酸配列を示す。2つのヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質配列は、同一である。なぜなら、ヌクレオチド差異は、全てウォッブルコドン位置においてであるからである。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図6−3】図6Aは、マウスGASP1に対する予測されたヌクレオチド配列を示す。図6Bは、マウスGASP1に対する予測された代替のヌクレオチド配列を示す。図6Cは、図6Aおよび6Bに示されたヌクレオチド配列によってコードされた予測されるアミノ酸配列を示す。2つのヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質配列は、同一である。なぜなら、ヌクレオチド差異は、全てウォッブルコドン位置においてであるからである。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図7−1】図7Aは、ヒトGASP1の予測されたヌクレオチド配列を示す。配列の末端は、アスタリスクによって示される。
【図7−2】図7Bは、対応する予測されたアミノ酸配列を示す。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。配列の末端は、アスタリスクによって示される。
【図7−3】図7Cは、代替の開始部位を使用したヒトGASP1の予測されたヌクレオチド配列を示す。配列の末端は、アスタリスクによって示される。
【図7−4】図7Dは、対応する予測されたアミノ酸配列を示す。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。配列の末端は、アスタリスクによって示される。
【図8−1】図8Aは、マウスGASP2に対する予測されたヌクレオチド配列を示し、一方、図8Bは、対応する予測されたアミノ酸配列を示す。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図8−2】図8Aは、マウスGASP2に対する予測されたヌクレオチド配列を示し、一方、図8Bは、対応する予測されたアミノ酸配列を示す。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図9−1】図9Aは、ヒトGASP2に対する予測されたヌクレオチド配列を示し、一方、図9Bは、対応する予測されたアミノ酸配列を示す。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図9−2】図9Aは、ヒトGASP2に対する予測されたヌクレオチド配列を示し、一方、図9Bは、対応する予測されたアミノ酸配列を示す。フォリスタチンドメインは、太字かつ下線で示される。
【図10】図10は、マウスGASP1が、多くの成体組織および発達の間で発現されることを示す。図は、マウスGASP1の組織発現プロファイルを示す。GASP1の551bpフラグメントは、Clontech(Palo Alto,CA)からの正規化された一本鎖cDNAパネルから増幅された。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)の一部は、コントロールとして増幅された。G3PDH発現は、骨格筋で高く、そして精巣で低いことが公知である。cDNAパネルは、G3PDHに加えて、β−アクチン、ホスホリパーゼA2およびリボソームタンパク質S29に対して正規化された。
【図11】図11は、ヒト血清から単離されたタンパク質を示す。JA16免疫沈降物またはコントロールサンプル(0)からのタンパク質は、モックPBS溶出、競合ペプチド溶出またはSDS溶出において溶出された。ゲルの示された領域中のタンパク質を、トリプシンで消化し、そしてLS−MS/MSによって分析し、そしてデータベースで検索した。JA16サンプル中に存在するが、コントロールサンプル中に存在しないタンパク質は、成熟GDF−8(バンド16)、GDF−8プロペプチドおよびFLRG(バンド11)ならびにヒトGASP1(バンド4)であった。図11Bは、成熟GDF−8を認識する抗体を用いてプローブした同一のJA16免疫沈降物のウェスタンブロットを示す。ヒト血清から単離した、成熟GDF−8およびプロセシングされていないGDF−8に対応するバンドが明らかである。
【図12−1】図12は、GDF−8由来のペプチド、ならびにバンド4、11、および16(図11)から単離された関連するタンパク質の相対的質量スペクトルを示す。ペプチド配列ならびにN末端(bイオン)およびC末端(yイオン)が示される。同定されたペプチドの完全な列挙は、表1に提供される。GASP1ペプチド(配列番号44)(図12A)、FLRGペプチド(配列番号41)(図12B)、GFD−8プロペプチドペプチド(配列番号24)(図12C)、および成熟GDF−8ペプチド(配列番号13)(図12D)由来のスペクトルが示されている。
【図12−2】図12は、GDF−8由来のペプチド、ならびにバンド4、11、および16(図11)から単離された関連するタンパク質の相対的質量スペクトルを示す。ペプチド配列ならびにN末端(bイオン)およびC末端(yイオン)が示される。同定されたペプチドの完全な列挙は、表1に提供される。GASP1ペプチド(配列番号44)(図12A)、FLRGペプチド(配列番号41)(図12B)、GFD−8プロペプチドペプチド(配列番号24)(図12C)、および成熟GDF−8ペプチド(配列番号13)(図12D)由来のスペクトルが示されている。
【図13】図13は、クローニングされたマウスGASP1のヌクレオチド配列(配列番号48)およびアミノ酸配列(配列番号49)を示す。JA16アフィニティー精製したサンプルにおける質量分光分析法によって同定されたペプチドに、下線を引く。この配列の末端は、アスタリスクによって記される。
【図14】図14Aは、GASP1のドメイン構造を示す。GASP1は、アミノ酸29の後に、シグナル配列/切断部位を有する。さらに、GASP1は、2つのKunitz/BPTIセリンプロテアーゼインヒビタードメイン、フォリスタチンドメイン(Kazalセリンプロテアーゼインヒビターモチーフを含む)およびネツリンドメイン(これは、メタロプロテアーゼを阻害し得る)を含む。図14Bは、マウスおよびヒトのゲノム配列から推定された、GASP1およびGASP2の系統樹を示す。マウスGASP1およびヒトGASP1は、90%同一である。GASP1およびGASP2は、54%同一である。
【図15】図15は、組換え産生されたGASP1が、GDF−8とGDF−8プロペプチドとの両方に別個に結合することを示す。(A)JA16を使用して、GDF−8を、偽V5−HisまたはGASP1−V5−HisでトランスフェクトされたCOS細胞の馴化培地(組換え精製されたGDF−8および/またはプロペプチドを補充した)から免疫沈降させた。抗V5ポリクローナル抗体(上のパネル)、抗GDF−8ポリクローナル抗体(中央のパネル)、または抗プロペプチドポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロットを使用して、これらのタンパク質が免疫沈降物中に存在したか否かを決定した。(B)組換え産生されたGASP1タンパク質を、抗V5タグ抗体によって、偽V5−His馴化培地またはGASp−V5−His馴化培地(組換え精製されたGDF−8および/またはプロペプチドを補充した)から免疫沈降させた。この免疫沈降物を、(A)においてと同様に、ウェスタンブロッティングによって分析した。
【図16−1】図16は、GASP1が、GDF−8および非常に関連するBMP−11の生物学的活性を阻害するが、アクチビンもTGF−βも阻害しないことを示す。偽V5−Hisトランスフェクト物(白丸)またはGASP1−V5−Hisトランスフェクト物(塗りつぶした四角)由来の馴化培地の種々の希釈物を、(A)10ng/ml GDF−8、(B)10ng/ml BMP−11、(C)10ng/mlアクチビン、または(D)0.5ng/ml TGF−βとともにインキュベートした、次いで、これらのサンプルを、A204(A〜C)細胞中またはRD(D)細胞中でのルシフェラーゼレポーター活性アッセイに供し、添加された増殖因子の活性を決定した。ルシフェラーゼ活性を、相対ルシフェラーゼ単位で示す。各増殖因子単独から得られた活性を、塗りつぶされた菱形および短い破線で示す。いずれの増殖因子も添加しない場合、アッセイにおけるバックグラウンド活性は、記号のない長い破線によって示されるように、低い。
【図16−2】図16は、GASP1が、GDF−8および非常に関連するBMP−11の生物学的活性を阻害するが、アクチビンもTGF−βも阻害しないことを示す。偽V5−Hisトランスフェクト物(白丸)またはGASP1−V5−Hisトランスフェクト物(塗りつぶした四角)由来の馴化培地の種々の希釈物を、(A)10ng/ml GDF−8、(B)10ng/ml BMP−11、(C)10ng/mlアクチビン、または(D)0.5ng/ml TGF−βとともにインキュベートした、次いで、これらのサンプルを、A204(A〜C)細胞中またはRD(D)細胞中でのルシフェラーゼレポーター活性アッセイに供し、添加された増殖因子の活性を決定した。ルシフェラーゼ活性を、相対ルシフェラーゼ単位で示す。各増殖因子単独から得られた活性を、塗りつぶされた菱形および短い破線で示す。いずれの増殖因子も添加しない場合、アッセイにおけるバックグラウンド活性は、記号のない長い破線によって示されるように、低い。
【図17】図17は、GDF−8のGASP1阻害の強さを示す。精製したGASP1を、RD細胞中での(CAGA)12-(配列番号53)ルシフェラーゼレポーターアッセイにおける20ng/mlのミオスタチンを阻害する能力について、試験した(塗りつぶされた四角)。GDF−8単独から生じる活性を、塗りつぶされた菱形および短い破線によって示す。増殖因子が添加されなかった場合に存在する活性を、長い破線によって示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(定義)
用語「フォリスタチンドメイン」とは、システインリッチ反復によって特徴付けられる
アミノ酸ドメインをコードするアミノ酸ドメインまたはヌクレオチドドメインをいう。フ
ォリスタチンドメインは、代表的に、65〜90のアミノ酸スパンを含み、そして10の
保存されたシステイン残基、およびKazalセリンプロテアーゼインヒビタードメイン
に類似の領域を含む。一般に、システイン残基の間のループ領域は、フォリスタチンドメ
インにおける配列変動性を示すが、何らかの保存が明らかである。4番目のシステインと
5番目のシステインとの間のループは、通常小さく、1つまたは2つのアミノ酸のみを含
む。7番目のシステインと8番目のシステインとの間のループにおけるアミノ酸は、一般
に、最も高度に保存されており、(G,A)−(S,N)−(S,N,T)−(D,N)
−(G,N)のコンセンサス配列、および引き続く(T,S)−Yモチーフを含む。9番
目のシステインと10番目のシステインとの間の領域は、一般に、別のアミノ酸とは別の
2つの疎水性残基(具体的には、V、I、またはL)を含むモチーフを含む。
用語「少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質)とは、少なくとも
1つであるが、おそらくは1つより多い、フォリスタチンドメインを含むタンパク質をい
う。この用語はまた、ネイティブのタンパク質に関連する既知の生物学的活性を維持する
ようなタンパク質(特に、GDF−8結合活性に関与するタンパク質であり、アミノ酸配
列に対する保存的変化または非保存的変化で改変された配列を含む)(フラグメント;置
換変異、付加変異もしくは欠失変異を有するタンパク質、および融合タンパク質を含む)
の、任意の改変体をいう。これらのタンパク質は、任意の供給源(天然または合成)に由
来し得る。このタンパク質は、ヒトタンパク質であっても、動物供給源(ウシ、ニワトリ
、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、および魚が挙げられる)に由
来してもよい。フォリスタチン自体は、本発明に包含されない。
【0021】
用語「GDF−8」または「GDF−8タンパク質」は、特異的な増殖因子および分化
因子をいう。これらの用語は、タンパク質の全長未プロセス前駆体形態ならびに翻訳後切
断から得られる成熟形態およびプロペプチド形態を含む。これらの用語はまた、アミノ酸
配列に対する保存的変化または非保存的変化で改変された配列を含む、タンパク質と関連
する公知の生物学的活性を維持するGDF−8の任意のフラグメントをいう。これらのG
DF−8分子は、任意の供給源(天然供給源または合成供給源)に由来し得る。このタン
パク質は、ヒト供給源由来であっても、動物供給源(ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、
ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、およびサカナが挙げられる)由来であってもよい
。種々のGDF−8分子は、McPherronら、(1997)Proc.Natl.
Acad.Sci.USA,94:12457−12461に記載される。
【0022】
「成熟GDF−8」は、GDF−8前駆体タンパク質のカルボキシ末端ドメインから切
断されたタンパク質をいう。成熟GDF−8は、モノマー、ホモダイマー、またはGDF
−8潜伏複合体として存在し得る。インビボ条件またはインビトロ条件に依存して、成熟
GDF−8は、任意のまたは全てのこれらの異なる形態の間の平衡を確立し得る。GDF
−8は、ホモダイマーとして生物学的に活性であると考えられる。その生物学的に活性な
形態において、成熟GDF−8はまた、「活性なGDF−8」ともいわれる。
【0023】
「GDF−8プロペプチド」は、GDF−8前駆体タンパク質のアミノ末端ドメインか
ら切断されたポリペプチドをいう。GDF−8プロペプチドは、成熟GDF−8上のプロ
ペプチド結合ドメインに結合し得る。
【0024】
「GDF−8潜伏複合体」は、成熟GDF−8ホモダイマーとGDF−8プロペプチド
との間に形成されるタンパク質の複合体をいう。2つのGDF−8プロペプチドがホモダ
イマー中の成熟GDF−8の2つの分子と結合し、不活性なテトラマー複合体を形成する
と考えられる。潜伏複合体は、1つ以上のGDF−8プロペプチドの代わりに、またはそ
れらに加えて他のGDF−8インヒビターを含み得る。
【0025】
句「GDF−8活性」は、活性なGDF−8タンパク質に関連する1以上の増殖制御活
性または形態形成活性をいう。例えば、活性なGDF−8は、骨格筋のネガティブな制御
因子である。活性なGDF−8はまた、筋肉特異的酵素(クレアチンキナーゼ)の産生を
調節し得、筋芽細胞増殖を刺激し得、そして脂肪細胞への前脂肪細胞の分化を調節し得る
。GDF−8はまた、末梢組織(特に、骨格筋または脂肪細胞)におけるインスリンおよ
びグルコースの取り込みに対する感受性を増大すると考えられる。従って、GDF−8の
生物学的活性としては、筋肉形成の阻害、筋肉細胞増殖の阻害、筋肉発達の阻害、筋肉質
量の減少、筋肉特異的酵素の調節、筋芽細胞の細胞増殖の阻害、脂肪細胞への前脂肪細胞
の分化の調節、インスリンに対する感受性の増加、グルコース取り込みの調節、グルコー
ス血流遮断、ならびにニューロン細胞の発生および維持の調節が挙げられるが、これらに
限定されない。
【0026】
用語「単離された」または「精製された」は、その天然の環境から実質的に隔離された
分子をいう。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞供給源または組織供
給源由来の細胞物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まない。句「実質的に細胞物
質を含まない」は、単離されたタンパク質が少なくとも70%〜80%(w/w)純粋で
あり、必要に応じて少なくとも80%〜89%(w/w)純粋であり、少なくとも90〜
95%純粋であり、あるいは少なくとも96%、97%、98%、99%または100%
(w/w)純粋である調製物をいう。
【0027】
用語「LC−MS/MS」とは、特定の質量/電荷比の分子イオン、このイオンのフラ
グメントを単離し、そしてこのフラグメントイオンの質量/電荷比を記録するようにプロ
グラムされた質量分析計とインラインの液体クロマトグラフィーをいう。ペプチドサンプ
ルを分析する場合、この技術は、液体クロマトグラフィーを通しての、複雑なサンプルの
上流での分離を可能にし、続いて、フラグメントイオン質量の記録および引き続くペプチ
ド配列の決定がなされる。
【0028】
用語「MS/MS」とは、特定の質量/電荷比の分子イオンを単離し、そして得られた
フラグメントイオンの質量/電荷比を記録するための、質量分光計を使用するプロセスを
いう。このフラグメントイオンは、ペプチドの配列に関する情報を提供する。
【0029】
用語「処置する(treating)」および「処置(treatment)」は、治
療処置および予防または防止処置の両方をいう。処置が必要な者は、特定の医療疾患をす
でに有する個体および最終的にこの疾患を獲得し得る者(すなわち、防止処置を必要とす
る者)を含み得る。処置との用語は、障害の基礎にある原因に取り組む手段と、その原因
に必ずしも影響を与えずに医学的障害の症状を減少させる手段との両方を包含する。従っ
て、生活の質の改善および症状の軽減は、疾患の原因に反作用する手段と同様に、処置と
みなされる。
【0030】
用語「医学的障害」とは、筋肉、骨、またはグルコースホメオスタシスの障害をいい、
そしてGDF−8および/またはTGF−βスーパーファミリーの他のメンバー(例えば
、BMP−11)に関連する障害が挙げられる。このような障害の例としては、代謝疾患
および障害(例えば、インスリン依存性(1型)糖尿病、インスリン非依存性(2型)糖
尿病、高血糖症、傷害性グルコース耐性、代謝症候群(例えば、症候群X)、および外傷
(例えば、火傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン耐性、ならびに脂肪組
織障害(例えば、肥満症));筋肉および神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー(重篤
かまたは良性のX染色体連鎖性筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕
筋ジストロフィー、筋緊張性(myotinic)ジストロフィー、遠位筋ジストロフィ
ー、進行性ジストロフィー眼筋麻痺、眼咽頭筋ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロ
フィー、およびFakuyama型先天性筋ジストロフィーが挙げられるが、これらに限
定されない));筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮症;器官萎縮症;脆弱(fra
ilty);手根管症候群;先天性閉塞性肺疾患;先天性ミオパシー;先天性ミオトニー
;家族性周期性四肢麻痺;発作性ミオグロビン尿症;重症筋無力症;イートン−ランバー
ト症候群;二次筋無力症;脱神経萎縮症;痙攣筋萎縮症;および筋肉減少症(sarco
penia)、悪液質、ならびに他の筋肉消耗症候群が挙げられるが、これらに限定され
ない。他の例としては、骨粗鬆症(特に、年配および/または閉経後の女性において);
糖質コルチコイド誘導骨粗鬆症;骨減少症;変形性関節症;骨粗鬆症関連骨折;および筋
組織に対する外傷性傷害または慢性傷害が挙げられる。なおさらなる例としては、慢性糖
質コルチコイド療法に起因する低い骨質量、早期の性線不全;アンドロゲン抑制、ビタミ
ンD欠乏、二次上皮小体機能亢進症、栄養性欠損、および神経性食欲不振が挙げられる。
【0031】
用語「質量の増加」とは、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質
での処置後に、この処置前に存在した筋肉質量の量と比較して大きい量の筋肉の存在をい
う。
【0032】
用語「治療的利益」とは、障害の症状の改善、障害の進行の遅延、または障害の伝播の
停止をいう。治療的利益は、障害の局面(例えば、筋肉塊の量)を、少なくとも1つのフ
ォリスタチンドメインを含む少なくとも1つのタンパク質が投与された前後で比較するこ
とによって、決定される。
【0033】
用語「調節する」とは、タンパク質の活性、挙動または量を増加、減少または阻害する
ことによって、タンパク質の特性を変化させることをいう。例えば、少なくとも1つのフ
ォリスタチンドメインを含むタンパク質は、この活性を阻害することによって、GDF−
8を調節し得る。
【0034】
用語「安定化改変」とは、タンパク質を安定化し得、タンパク質のインビトロでの半減
期を増加させ得、タンパク質の循環半減期を増加させ得、そして/またはタンパク質のタ
ンパク質分解を減少させ得る、当該分野において公知であるかまたは本明細書中に記載さ
れる、任意の改変である。このような安定化改変としては、融合タンパク質(例えば、少
なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質および第二のタンパク質を含む
融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の改変(例えば、少なくとも1つのフ
ォリスタチンドメインを含むタンパク質へのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、お
よび炭水化物部分の改変(例えば、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタン
パク質からの炭水化物部分の除去が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない
。融合タンパク質を含む安定化改変の場合(例えば、第二のタンパク質が、少なくとも1
つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質に融合されるように)、第二のタンパク質
は、「安定化剤部分」または「安定化剤タンパク質」と称され得る。例えば、少なくとも
1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質(ヒトタンパク質)は、IgG分子と融
合され得、ここで、IgGは、安定化剤タンパク質または安定化剤部分として働く。本明
細書中で使用される場合、融合タンパク質の第二のタンパク質を言及することに加えて、
「安定化剤部分」はまた、炭水化物部分、または非タンパク質様ポリマーのような、非タ
ンパク質様改変を含む。
【0035】
用語「IgG分子のFc領域」とは、当業者に周知であるように、アイソタイプIgG
の免疫グロブリンのFcドメインをいう。IgG分子のFc領域は、IgG分子(IgG
1、IgG2、IgG3、およびIgG4)の、そのIgG分子のインビボでの血清半減
期を増加させる原因である部分である。
【0036】
「インビトロ半減期」とは、生存生物の文脈外で測定された、タンパク質の安定性をい
う。インビトロ半減期を測定するためのアッセイは、当該分野において周知であり、そし
てSDS−PAGE、ELISA、細胞ベースのアッセイ、パルス−チェイス、ウェスタ
ンブロッティング、ノーザンブロッティングなどが挙げられるが、これらに限定されない
。これらおよび他の有用なアッセイは、当該分野において周知である。
【0037】
「インビボ半減期」とは、生物におけるタンパク質の安定性をいう。インビボ半減期は
、当該分野において公知の多数の方法によって測定され得、インビボ血清半減期、循環半
減期、および本明細書中の実施例に記載されるアッセイが挙げられるが、これらに限定さ
れない。
【0038】
「インビボ血清半減期」とは、生物の血液中で循環するタンパク質の半減期をいう。当
該分野において公知の方法を使用して、インビボ血清半減期を測定し得る。例えば、放射
活性タンパク質が動物に投与され得、そして血清中の標識タンパク質の量が、経時的にモ
ニタリングされ得る。
【0039】
明細書および図面に列挙される配列の同定を補助するために、以下の表が提供される。
この表は、配列番号、図の位置、および配列の説明を列挙する。
【0040】
【数1】


(発明の詳細な説明)
(少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質)
本発明は、独特の構造特徴(すなわち、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含
む)を有する、フォリスタチン以外のタンパク質に関する。フォリスタチン自体は、本発
明によって包含されない。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は
、GDF−8を結合し、そしてGDF−8を阻害すると考えられる。少なくとも1つのフ
ォリスタチンドメインを有するタンパク質の例としては、フォリスタチン様関連遺伝子(
FLRG)、FRP(flik、tsc36)、アグリン、オステオネクチン(SPAR
C、BM40)、ヘビン(SC1,mast9、QR1)、IGFBP7(mac25)
、およびU19878が挙げられるが、これらに限定されない。GASP1(図6および
7に提供されるヌクレオチド配列およびアミノ酸の配列を含む)ならびにGASP2(図
8および9に提供されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を含む)は、少なくとも1
つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質の、他の例である。
【0041】
フォリスタチンドメインは、上記のように、システインリッチな反復によって特徴付け
られるアミノ酸ドメインをコードするアミノ酸ドメインまたはヌクレオチドドメインとし
て定義される。フォリスタチンドメインは、代表的に、65〜90のアミノ酸スパンを含
み、そして10の保存されたシステイン残基、およびKazalセリンプロテアーゼイン
ヒビタードメインに類似の領域を含む。一般に、システイン残基の間のループ領域は、フ
ォリスタチンドメインにおける配列変動性を示すが、何らかの保存が明らかである。4番
目のシステインと5番目のシステインとの間のループは、通常小さく、1つまたは2つの
アミノ酸のみを含む。7番目のシステインと8番目のシステインとの間のループにおける
アミノ酸は、一般に、最も高度に保存されており、(G,A)−(S,N)−(S,N,
T)−(D,N)−(G,N)のコンセンサス配列、および引き続く(T,S)−Yモチ
ーフを含む。9番目のシステインと10番目のシステインとの間の領域は、一般に、別の
アミノ酸とは別の2つの疎水性残基(具体的には、V、I、またはL)を含むモチーフを
含む。
【0042】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質(これは、GDF−8を結
合し得る)は、種々の方法を使用して単離され得る。例えば、本発明において例示される
ように、GDF−8を用いるアフィニティー精製を使用し得る。さらに、cDNAライブ
ラリーの低ストリンジェンシーのスクリーニングを使用し得るか、またはフォリスタチン
ドメインに指向するプローブを用いる退行PCR技術を使用し得る。より多くのゲノムデ
ータが利用可能になるにつれて、多数の配列プロファイリングプログラムおよび分析プロ
グラム(例えば、MotifSearch(Genetics Computer Gr
oup,Madison,WI)、ProfileSearch(GCG)、およびBL
AST(NCBI))を使用する類似性検索を使用して、公知のフォリスタチンドメイン
との有意な相同性を含む、新規タンパク質を見出し得る。
【0043】
当業者は、GDF−8または少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク
質の両方が、その生物学的特性を変化させずに、そのそれぞれのアミノ酸配列に対する多
数の保存的変化を含み得ることを認識する。このような保存的アミノ酸改変は、アミノ酸
側鎖の置換基の相対的類似性(例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなど)に
基づく。種々の前述の特徴を考慮する例示的な保存的置換は、当業者に周知であり、そし
て以下が挙げられる:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セ
リンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、お
よびイソロイシン。さらに、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質
は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む機能的フラグメントを作製するため
に使用され得る。このようなフラグメントは、GDF−8を結合し、そして阻害すると予
測される。本発明の実施形態において、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む
タンパク質は、そのモノマー形態であっても、活性なダイマー形態であっても、またはG
DF−8潜在的複合体に複合体化されても、0.001nMと100nMとの間、または
0.01nMと10nMとの間、または0.1nMと1nMとの間の親和性で、成熟GD
R−8またはそのフラグメントに特異的に結合する。
【0044】
(ヌクレオチドおよびタンパク質の配列)
常に必要ではないが、所望であれば、当業者は、少なくとも1つのフォリスタチンドメ
インを含む新規タンパク質のアミノ酸または核酸の配列を決定し得る。例えば、本発明は
、図6〜9に示されるように、GASP1およびGASP2のアミノ酸配列およびヌクレ
オチド配列を提供する。
【0045】
本発明はまた、このような核酸配列およびアミノ酸配列の改変体、ホモログ、およびフ
ラグメントを包含する。例えば、核酸配列またはアミノ酸配列は、ネイティブなタンパク
質の核酸またはアミノ酸の配列に対して、少なくとも70%〜79%同一、または少なく
とも80%〜89%同一、または少なくとも90〜95%同一、または少なくとも96%
〜100%同一の配列を含み得る。当業者は、GDF−8に結合する領域が、結合に関与
しないこのタンパク質の他の部分より、さほど配列の変動に許容性ではなくあり得ること
を認識する。従って、タンパク質のこれらの非結合領域は、そのタンパク質の結合特性を
有意には変化させない実質的なバリエーションを含み得る。しかし、当業者はまた、多く
の変化が、その標的に対するタンパク質の親和性を特異的に増加させるためになされ得る
ことを認識する。このような親和性を増加させる変化は、代表的に、このタンパク質を変
化させること(これは、結合領域においてであり得る)、およびGDF−8を結合する能
力またはその結合の強度を試験することによって実験的に決定される。全てのこのような
代替は、結合領域の内部であっても外側であっても、本発明の範囲に含まれる。
【0046】
相対的な配列類似性または同一性は、Sequence Analysis Soft
ware Package TM(Version 10;Genetics Comp
uter Group.Inc.,University of Wisconsin
Biotechnology Center,Madison,WI)の「Best F
it」または「Gap」プログラムを使用して、決定され得る。「Gap」は、Need
lemanおよびWunschのアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch
、1970)を利用して、一致の数を最大にし、そしてギャップの数を最小にする、2つ
の配列の整列を見出す。「Bestfit」は、2つの配列の間での類似性の最良のセグ
メントの最適な整列を実施する。最適な配列は、SmithおよびWatermanの局
所相同性アルゴリズム(SmithおよびWaterman、1981;Smithら、
1983)を使用して、ギャップを挿入して、一致の数を最大にすることによって、見出
される。
【0047】
上記の配列分析ソフトウェアパッケージは、本発明により開示されたヌクレオチド配列
およびアミノ酸配列の相同性を同定するための、多数の他の有用な配列分析ツールを備え
る。例えば、「BLAST」プログラム(Altschulら、1990)は、特定のデ
ータベース(例えば、NCBIにて維持される配列データベース)中の問い合わせ配列(
ペプチドまたは核酸のいずれか)に対する配列類似性について検索する;「FastA」
(LipmanおよびPearson,1985;PearsonおよびLipman,
1988もまた参照のこと;Pearsonら、1990)は、問い合わせ配列と同じ型
(核酸またはタンパク質)の配列群との間の類似性についてのPearsonおよびLi
pman検索を実行する;「TfastA」は、タンパク質問い合わせ配列とヌクレオチ
ド配列の任意の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実
行する(これは、比較を実行する前に、6つ全てのリーディングフレームでヌクレオチド
配列を翻訳する);「FastX」は、フレームシフトを考慮して、ヌクレオチド問い合
わせ配列とタンパク質配列の群との間の類似性についてPearsonおよびLipma
n検索を実施する。「TfastX」は、フレームシフトを考慮して、タンパク質問い合
わせ配列とヌクレオチド配列の任意の群との間の類似性についてPearsonおよびL
ipman検索を実施する(これは、比較を実行する前に、核酸(nucleic)配列
の両方の鎖を翻訳する)。
【0048】
(改変タンパク質)
本発明は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のフラグメント
を包含する。このようなフラグメントは、フォリスタチンドメインの全てまたは一部を含
む可能性が高い。フラグメントは、フォリスタチンドメインとN末端との間、および/ま
たはフォリスタチンドメインとC末端との間の配列を全て含んでも、一部含んでも、また
は含まなくてもよい。
【0049】
特定のアミノ酸は、タンパク質の活性(例えば、少なくとも1つのフォリスタチンドメ
インを含むタンパク質の結合特徴)に対して悪影響を及ぼさずに、タンパク質構造におい
て他のアミノ酸で置換され得ることが、当業者に理解される。従って、種々の変化が、タ
ンパク質の生物学的有用性または生物学的活性を感知されるほど喪失せずに、少なくとも
1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のアミノ酸配列またはこのタンパク質を
コードするDNA配列中に作製され得ることが、本発明者らによって企図される。このよ
うな変化としては、欠失、挿入、短縮、置換、融合、モチーフ配列のシャッフリングなど
が挙げられ得る。
【0050】
このような変化を作製する際に、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮され得る。タンパ
ク質に対して、相互作用的な生物学的機能を付与することにおける、ヒドロパシーアミノ
酸指数の重要性は、当該分野で一般に理解される(KyteおよびDoolittle(
1982)J.Mol.Biol.,157:105−132)。アミノ酸の相対的なヒ
ドロパシー特徴は、得られたタンパク質の二次構造に寄与し、これが、次いで、他の分子
(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)とのタンパク質の相互作
用を規定することが、受容されている。
【0051】
各アミノ酸は、その疎水性および電荷の特徴に基づいて、ヒドロパシー指数を割り当て
られている(KyteおよびDoolittle,1982);これらは、イソロイシン
(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.
8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1
.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプ
トファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−
3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3
.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)およびアルギニン(−4.5)
である。このような変化を作製する際に、アミノ酸の置換のヒドロパシー指数は、±2以
内、±1以内、そして±0.5以内であり得る。
【0052】
類似のアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効果的になされ得ることもまた、当該分野
で理解される。米国特許第4,554,101号は、その隣接アミノ酸の親水性によって
支配されるような、タンパク質の最も高い局所的平均親水性が、タンパク質の生物学的特
性に相関することを記載している。
【0053】
米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値が、アミノ酸残
基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン
酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギ
ン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、
プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイ
ン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)
、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)お
よびトリプトファン(−3.4)。このような変化を作製する際に、アミノ酸の置換の親
水性値は、±2以内、±1以内、そして±0.5以内であり得る。
【0054】
これらの改変は、このタンパク質の構造または生物学的機能が、この変化によって影響
を受けないように、保存的であり得る。このような保存的アミノ酸改変は、アミノ酸側鎖
置換基の相対的な類似性(例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、大きさなど)に基づ
く。種々の上述の特徴を考慮する例示的な保存的置換は、当業者に周知であり、これらに
は、以下が挙げられる:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;
セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;そしてバリン、ロイシンおよ
びイソロイシン。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のアミノ酸
配列は、タンパク質のその標的抗原への結合に悪影響が及ぼされない限り、任意の多数の
保存的変化を有するように改変され得る。このような変化は、少なくとも1つのフォリス
タチンドメインを含むタンパク質の結合部分の内側または外側に導入され得る。例えば、
タンパク質の抗原結合部分の内側に導入された変化は、その標的に対するタンパク質の親
和性を増大させるように設計され得る。
【0055】
(安定化改変)
安定化改変は、タンパク質を安定化し得るか、タンパク質のインビトロおよび/または
インビボの半減期を増強し得るか、タンパク質の循環半減期を増強し得るか、そして/あ
るいはタンパク質のタンパク質分解性の分解を減少し得る。このような安定化改変として
は、以下が挙げられるが、これらに限定されない:融合タンパク質、グリコシル化部位の
改変、および炭水化物部分の改変。安定化タンパク質は、改変されたGDFプロペプチド
の全体的な安定性を増強する、任意のタンパク質であり得る。当業者に認識されるように
、このような融合タンパク質は、必要に応じて、プロペプチド部分と安定化部分との間の
リンカーペプチドを含み得る。当該分野で周知なように、得られた翻訳されたタンパク質
が第一のタンパク質および第二のタンパク質の両方を含むように、第二のタンパク質が第
一のタンパク質とインフレームで融合されるように、融合タンパク質が調製される。例え
ば、本発明において、融合タンパク質は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含
むタンパク質が、第二のタンパク質(例えば、安定化タンパク質部分)と融合されるよう
に、調製され得る。このような融合タンパク質は、得られた翻訳されたタンパク質が、プ
ロペプチド部分および安定化部分の両方を含むように、調製される。
【0056】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、グリコシル化され得る
か、あるいはアルブミンタンパク質または非タンパク質性ポリマーに連結され得る。例え
ば、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、種々の非タンパク質
性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオ
キシアルキレン)の1つに、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689
号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号
または同第4,179,337号に示される様式で、連結され得る。タンパク質は、例え
ば、その循環半減期を増大するために、ポリマーに対する共有結合体化によって化学的に
改変される。ポリマーおよびこれらをペプチドに結合させるための方法もまた、米国特許
第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号および
同第4,609,546号に示される。
【0057】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、ペグ化され得る。ペグ
化は、身体におけるタンパク質の半減期を延長させるために、タンパク質にポリエチレン
グリコール(PEG)を結合させるプロセスである。少なくとも1つのフォリスタチンド
メインを含むタンパク質のペグ化は、GDF−8の最適な阻害のために必要なタンパク質
の投与の用量および頻度を減少させ得る。この技術の概説は、Bhadraら、(200
2)Pharmazie,57:5−29およびHarrisら、(2001)Clin
.Pharmacokinet.,40:539−551に提供される。
【0058】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、IgG分子のFc領域
に連結され得る。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、IgG
分子のFc領域に隣接して融合され得るか、またはリンカーペプチドを介してIgG分子
のFc領域に結合され得る。このようなリンカーペプチドの使用は、タンパク質生化学の
分野で周知である。Fc領域は、例えば、IgG1またはIgG4から誘導され得る。
【0059】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、変更された(すなわち
、元のまたはネイティブのグリコシル化パターンから変更された)グリコシル化パターン
を有するように改変され得る。本明細書中で使用する場合、「変更された」とは、1つ以
上の炭化水素部分が欠失していること、そして/または元のタンパク質の1つ以上のグリ
コシル化部位が付加されていることを意味する。
【0060】
タンパク質のグリコシル化は、代表的に、N結合型またはO結合型のいずれかである。
N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への、炭化水素部分の結合をいう。トリペプチド
配列のアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、
プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的
結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のい
ずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O結合型グリコシル化は、糖N
−アセチルグルコサミン、ガラクトースまたはキシロースの1つの、ヒドロキシアミノ酸
(最も一般的にはセリンまたはスレオニン)への結合をいうが、5−ヒドロキシプロリン
または5−ヒドロキシリジンもまた、使用され得る。
【0061】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質へのグリコシル化部位の付
加は、このタンパク質が上記のトリペプチド配列の1つ以上を含むように、アミノ酸配列
を変更することによって、簡便に達成される(N結合型グリコシル化部位について)。こ
の変更はまた、元のタンパク質の配列への、1つ以上のセリン残基またはスレオニン残基
の付加、あるいはこれらによる置換によって、作製され得る(O結合型グリコシル化部位
について)。簡略化すると、タンパク質のアミノ酸配列は、DNAレベルでの変化によっ
て変更され得る。
【0062】
タンパク質の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、タンパク質のアミノ酸残基へ
のグリコシドの化学的または酵素的連結による。これらの手順は、N結合型グリコシル化
またはO結合型グリコシル化についてのグリコシル化能を有する宿主細胞における、GD
Fペプチドインヒビターの産生を必要としない点で、利点を有する。使用される連結様式
に依存して、糖は、以下に対して結合され得る:(a)アルギニンおよびヒスチジン、(
b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインのもの)、
(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのも
の)、(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンの
もの)あるいは(f)グルタミンのアミド基。これらの方法は、WO 87/05330
ならびにAplinおよびWriston(1981)CRC Crit.Rev.Bi
ochem.,22:259−306に記載されている。
【0063】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質上に存在する任意の炭化水
素部分の除去は、化学的にかまたは酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、ト
リフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物に対するタンパク質の曝露を必要とする
。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコ
サミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたは全ての糖の切断を生じ
る。
【0064】
化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら、(1987)Arch.Bioc
hem.Biophys.,259:52;およびEdgeら(1981)Anal.B
iochem.,118:131によって記載される。GDFペプチドインヒビター上の
炭化水素部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987)Meth.Enzym
ol.,138:350に記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソ
グリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0065】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、タンパク質アルブミン
またはアルブミンの誘導体に連結され得る。タンパク質およびポリペプチドをアルブミン
またはアルブミン誘導体に連結するための方法は、当該分野で周知である。例えば、米国
特許第5,116,944号を参照のこと。
【0066】
(薬学的組成物)
本発明は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質を含有する組成
物を提供する。このような組成物は、薬学的使用および患者への投与に適切であり得る。
これらの組成物は、代表的に、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む1つ以上
のタンパク質、および薬学的に受容可能な賦形剤を含有する。本明細書中で使用する場合
、句「薬学的に受容可能な賦形剤」は、薬学的投与と適合性の、任意または全ての、溶媒
、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む
。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知であ
る。これらの組成物はまた、補充的な、さらなる、または増強された治療機能を提供する
、他の活性化合物を含み得る。これらの薬学的組成物はまた、投与のための指示書と共に
、容器、パックまたはディスペンサー中に含まれ得る。
【0067】
本発明の薬学的組成物は、意図された投与経路と適合するように処方される。投与を達
成するための方法は、当業者に公知である。例えば、投与は、静脈内、筋内または皮下で
あり得る。
【0068】
皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、代表的に、以下の成分のうち1つ以
上を含む:滅菌希釈剤(例えば、注射用の水、生理食塩溶液、不揮発油、ポリエチレング
リコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、
ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸価剤(例えば、アスコルビン酸または
亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例
えば、アセテート、シトレートまたはホスフェート):および張度調節のための薬剤(例
えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸ま
たは水酸化ナトリウム)を用いて調節され得る。このような調製物は、ガラスまたはプラ
スチックでできた、アンプル、使い捨てシリンジまたは多用量バイアル中に封入され得る

【0069】
注射に適切な薬学的組成物としては、滅菌水溶液または分散物、および滅菌の注射可能
な溶液または分散物の即座の調製のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与について、
適切なキャリアとしては、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(B
ASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げ
られる。全ての場合において、この組成物は、滅菌でなければならず、そして容易な注入
可能性が存在する程度まで、流体であるべきである。これは、製造および保存の条件下で
安定でなければならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して防
止されなければならない。このキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例え
ば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およ
びこれらの適切な混合物を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例え
ば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒子サイズ
の維持によって、そして界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止
は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、
アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、組成物中に、
等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナト
リウム))を含み得る。注射可能な組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤(
例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびセラチン)を組成物中に含むことによって
、もたらされ得る。
【0070】
1実施形態において、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、
身体からの迅速な排出に対して化合物を保護するキャリアを用いて調製される(例えば、
制御放出組成物(移植物および微小カプセル化送達系を含む))。生体分解性、生体適合
性のポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コ
ラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調
製のための方法は、当業者に明らかである。これらの材料はまた、Alza Corpo
rationおよびNova Pharmaceuticals,Ind.から市販で入
手され得る。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質を含有するリポ
ソーム懸濁物もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例え
ば、米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に公知の方法に従って
、調製され得る。
【0071】
治療的に有用な薬剤(例えば、増殖因子(例えば、BMP、TGF−β、FGF、IG
F)、サイトカイン(例えば、インターロイキンおよびCDF)、抗生物質ならびに処置
される状態について有益な任意の他の治療剤)が、必要に応じて含まれ得るか、または、
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質と同時もしくは連続的に投与
され得る。
【0072】
投与の容易さのためおよび投薬の均一性のために、単位投薬形態で組成物を処方するこ
とが、特に有利である。本明細書中で使用する場合、単位投薬形態は、処置される被験体
についての単一な投薬として適した、物理的に別個の単位をいい;各単位は、必要な薬学
的キャリアと共同して、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を
含む。本発明の単位投薬形態についての仕様は、活性化合物の独自の特徴および達成され
るべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物を調合する分
野における特有の制限によって決定され、そしてこれらに直接依存する。
【0073】
(処置適応症)
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、ヒトまたは動物におけ
る種々の医学的障害を、予防、診断または処置するために有用である。従って、本発明は
、筋細胞および組織に関連する疾患および障害を処置するための方法を提供し、この方法
は、疾患の症状を緩和するのに十分な量で、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを
含む少なくとも1種のタンパク質を含有する組成物を、被験体に投与する工程による。こ
のような障害としては、以下が挙げられる:筋ジストロフィ(以下が挙げられるが、これ
らに限定されない:重篤もしくは良性のX連鎖筋ジストロフィ、肢帯筋ジストロフィ、顔
面肩甲上腕筋ジストロフィ、筋緊張性ジストロフィ(myotinic dystrop
hy)、遠位筋ジストロフィ、進行性ジストロフィ性眼筋麻痺(dystrophico
phthalmoplegia)、眼咽頭筋ジストロフィ、デュシェーヌ筋ジストロフィ
およびフクヤマ型先天性筋ジストロフィ);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮症;
器官萎縮症;脆弱性(frailty);手根管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;先天性
ミオパシー;先天性ミオトニー;家族性周期性四肢麻痺;発作性ミオグロビン尿症;重症
筋無力症;イートン−ランバート症候群;続発性筋無力症;脱神経萎縮症;発作性筋萎縮
症;ならびに筋肉減少症(sarcopenia)、悪液質および他の筋るいそう症候群
。本発明はまた、筋肉組織に対する外傷性または慢性の損傷に関連する。
【0074】
筋肉の疾患および障害についての治療を提供することに加えて、本発明は、異常なグル
コース恒常性から生じる代謝性の疾患または障害を予防または処置するための方法もまた
、提供する。このような疾患または障害としては、以下が挙げられる:代謝性の疾患およ
び障害(例えば、インスリン依存性(1型)糖尿病、非インスリン依存性(2型)糖尿病
)、高血糖症、グルコース寛容減損、代謝症候群(例えば、X症候群)、肥満および外傷
によって誘導されるインスリン抵抗性(例えば、熱傷または窒素不均衡)、脂肪組織障害
(例えば、肥満)または骨変性疾患(例えば、特に、年配および/または閉経後の女性に
おける、骨粗鬆症;グルココルチコイド誘導性の骨粗鬆症;骨減少症;変形性関節症;お
よび骨粗鬆症関連の骨折)。なおさらなる例としては、慢性のグルココルチコイド治療に
起因する骨質量の低下、未成熟性腺不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性
副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症および神経性食欲不振が挙げられる。
【0075】
正常なグルコース恒常性は、血中グルコースレベルにおける僅かな変化に応答して、膵臓のβ細胞によって分泌されるインスリンの、緻密に調節された調和を必要とする。インスリンの基本的作用の1つは、組織(特に筋肉および脂肪)への、血液からのグルコースの取り込みを刺激することである。
【0076】
従って、本発明は、真性糖尿病および関連障害(例えば、肥満または高血糖症)を処置
するための方法を提供し、この方法は、疾患の症状を緩和するのに十分な量で、少なくと
も1つのフォリスタチンドメインを含む少なくとも1種のタンパク質を含有する組成物を
、被験体に投与する工程による。2型すなわち、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM
)は、一部、以下の形質によって特徴づけられる:(1)末梢組織(特に骨格筋および脂
肪細胞)におけるグルコース取り込みに対するインスリンの作用に対する抵抗性、(2)
肝臓グルコース産生を阻害するインスリン作用の減損、および(3)インスリン分泌の調
節不全(DeFronzo(1997)Diabetes Rev.5:177−269
)。従って、2型糖尿病に罹患している被験体は、少なくとも1つのフォリスタチンドメ
インを含むタンパク質(これは、インスリンに対する感受性および細胞によるグルコース
取り込みを増大させる)の投与によって、本発明に従って処置され得る。
【0077】
同様に、インスリン機能不全(例えば、抵抗性、不活性または欠損)および/または細
胞への不十分なグルコース輸送によって特徴づけられる他の疾患および代謝障害もまた、
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質(これは、インスリンに対す
る感受性および細胞によるグルコース取り込みを増大させる)の投与によって、本発明に
従って処置され得る。
【0078】
(タンパク質を使用する処置方法)
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、GDF−8タンパク質
(モノマー形態でも、ダイマーの活性化形態でも、GDF−8の潜在的複合体に複合体化
されても)に関連する1つ以上の活性を、同じタンパク質が結合していないGDF−8タ
ンパク質と比較して、阻害または低減するために使用され得る。1実施形態において、成
熟GDF−8タンパク質の活性は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタン
パク質が結合した場合、フォリスタチンドメインを有するタンパク質が結合していない成
熟GDF−8タンパク質と比較して、少なくとも50%、または少なくとも60、62、
64、66、68、70、72、72、76、78、80、82、84、86もしくは8
8%、または少なくとも90、91、92、93もしくは94%、または少なくとも95
%〜100%、阻害される。
【0079】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質を含有する薬学的調製物は
、治療有効量で投与される。本明細書中で使用する場合、タンパク質の「有効量」とは、
所望の生物学的結果を達成するために、GDF−8の活性を低減するのに十分な投薬量で
ある。所望の生物学的結果は、筋肉量の増加、筋肉強度の増加、改善された代謝、減少し
た脂肪、または改善されたグルコース恒常性を含む、任意の治療利益であり得る。このよ
うな改善は、種々の方法(以下を測定する方法が挙げられる:痩せおよび太った体重(例
えば、二重x線走査分析)、筋肉強度、血清脂質、血清レプチン、血清グルコース、糖化
ヘモグロビン、グルコース寛容および糖尿病の二次的合併症の改善)によって測定され得
る。
【0080】
一般に、治療有効量は、被験体の年齢、状態および性別、ならびに被験体における医学
的状態の重篤度によって、変動し得る。投薬量は、必要に応じて、処置の観察された効果
に適するちうに、医師によって決定さ得れ、そして調節され得る。少なくとも1つのフォ
リスタチンドメインを含む少なくとも1種のタンパク質を投与するために適切な投薬量は
、5mg〜100mg、15mg〜85mg、30mg〜70mgまたは40mg〜60
mgの範囲であり得る。タンパク質は、1つの用量で、または間隔を空けて(例えば、一
日一回、週に一回および月に一回)、投与され得る。投薬スケジュールは、GDF−8に
対するタンパク質の親和性、タンパク質の半減期または患者の状態の重篤度に依存して、
調節され得る。一般に、これらの組成物は、投与後のより長い時間にわたって、少なくと
も1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質の循環レベルを最大化するために、ボ
ーラス用量で投与される。連続注入もまた、ボーラス投与後に使用され得る。
【0081】
それらの化合物の毒性効力および治療効力は、細胞培養物または実験動物における標準
的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%までの致死用量)およびED50(集
団の50%における治療的な有効用量))によって決定され得る。毒性効果と治療効果と
の間の用量の比率は、治療係数であり、比LD50/ED50と表し得る。大きな治療係
数を示す少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質が、使用され得る。
【0082】
細胞培養物アッセイおよび動物実験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための
投薬量範囲の評価において用いられ得る。このような化合物の投薬量は、ほとんど毒性の
ないED50または毒性のないED50を有する循環濃度の範囲内であり得る。投薬量は
、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化され得る
。本発明において用いられる少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む任意のタン
パク質について、治療的有効用量が、始めに細胞培養物アッセイから推定され得る。細胞
培養物にて決定されたIC50を含む循環血漿濃度(すなわち、症状の最大阻害の半分を
達成する試験タンパク質の濃度)範囲を達成するための用量が、動物モデルで処方され得
る。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意
の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニタリングされ得る。適切な
バイオアッセイの例としては、GDF−8タンパク質/レセプター結合アッセイ、クレア
チンキナーゼアッセイ、脂肪細胞におけるグルコース取込みに基づくアッセイ、および免
疫学的アッセイが挙げられる。
【0083】
(DNAを投与する方法)
本発明はまた、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のインビボ
産生のための遺伝子療法を提供する。このような治療は、本明細書中に列挙されるような
障害を有する細胞または組織へのポリヌクレオチド配列の導入によって、その治療効果を
達成する。
【0084】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のポリヌクレオチド配列の
送達は、組換え発現ベクター(例えば、キメラウイルスまたはコロイド分散系)を使用し
て達成され得る。標的リポソームは、ポリヌクレオチド配列の治療的送達のために使用さ
れ得る。遺伝子治療のために使用され得る種々のウイルスベクターとしては、アデノウイ
ルス、疱疹ウイルス、ワクシニア、またはレトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げ
られる。レトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスまたは鳥レトロウイルスの誘
導体であり得る。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては
、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Moloneyマウス白血病ウイルス(M
oMuLV)、Harveyマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイ
ルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。多くのさらなるレトロウイ
ルスベクターが、複数の遺伝子に組込み得る。これらの全てのベクターは、選択マーカー
のために遺伝子を移入または組込み得、その結果、導入された細胞が、同定および生成さ
れ得る。ウイルスベクターに目的のGDFプロペプチドのポリヌクレオチド配列を挿入す
ることによって、特定の標的細胞上のレセプターに対するリガンドをコードする別の遺伝
子と共に、ここで、例えば、本ベクターが、標的特異的である。
【0085】
レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を接着することに
よって標的を特異的にし得る。標的化は、抗体を使用することによって達成され得る。当
業者は、特定のポリヌクレオチド配列が、レトロウイルスゲノムに挿入され得るか、また
はウイルスエンベロープに結合され、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタ
ンパク質のポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にす
ることを認識する。1つの実施形態において、ベクターは、筋肉細胞または筋組織に標的
化される。
【0086】
組換えレトロウイルスが、欠損であるので、これらは、LTR内の調節配列の制御下で
、レトロウイルスの全ての構造遺伝子をコードするプラスミドを含むヘルパー細胞株を必
要とする。これらのプラスミドは、パッケージング機構がキャプシド化のためのRNA転
写物を認識するのを可能にするヌクレオチド配列を損失している。パッケージングシグナ
ルの欠損を有するヘルパー細胞株としては、例えば、PSI.2、PA317およびPA
12が挙げられるがこれらに限定されない。これらの細胞株は、ゲノムがパッケージング
されないので、空のビリオンを産生する。レトロウイルスベクターは、パッケージングシ
グナルがインタクトであるような細胞に導入され得るが、構造遺伝子が、目的の他の遺伝
子によって置き換えられる場合、ベクターは、パッケージングされ得、ベクタービリオン
が産生される。
【0087】
あるいは、他の組織培養細胞が、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによっ
て、レトロウイルス構造遺伝子(gag、polおよびenv)をコードするプラスミド
で直接トランスフェクトされ得る。次いで、これらの細胞は、目的の遺伝子を含むベクタ
ープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は、培養培地中にレトロウイルス
ベクターを放出する。
【0088】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のポリヌクレオチドのため
の別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、高分子複合体
、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、および脂質ベースの系(水中油エマルジョン
、ミセル、混合ミセル、およびリポソーム)が挙げられる。リポソームは、人工的な膜小
胞であり、これは、インビトロおよびインビボの送達ビヒクルとして有用である。RNA
、DNAおよびインタクトなビリオンは、水性内部内にカプセル化され得、生物学的に活
性な形態中に細胞を送達し得る(例えば、Fraleyら(1981)Trends B
iochem.Sci.,6:77を参照のこと)。リポソームビヒクルを使用する効率
的な遺伝子移送のための方法が、当該分野で公知である(例えば、Manninoら(1
988)Biotechniques,6:682を参照のこと)。リポソームの組成物
は、通常、リン脂質の組み合わせであり、通常、ステロイド(特に、コレステロール)と
の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質がまた、使用され得る。リポソームの
物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0089】
リポソーム産物において有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホス
ファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィン
ゴリピド、セレブロシドおよびガングリオシドのようなホスファチジル化合物が挙げられ
る。例示的なリン脂質としては、タマゴホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファ
チジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームの
標的化はまた、例えば、器官特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づいて可
能であり、これは、当該分野で公知である。
【0090】
GDF−8応答の調節における使用のための、1つの部位に対する少なくとも1つのフ
ォリスタチンドメインを含むタンパク質を発現する細胞を送達するために使用され得る、
広い範囲の方法が存在する。本発明の1つの実施形態において、フォリスタチンタンパク
質を発現する細胞は、直接適用(例えば、このような細胞のサンプルの組織損傷の部位へ
の直接注射)によって送達され得る。これらの細胞は、精製され得る。このような細胞は
、これらの移動度を部分的に妨げる培地またはマトリクス中に送達され、細胞の損傷の部
位へ局在化し得る。このような培地またはマトリクスは、半固体(例えば、ペーストまた
はゲル(ゲル様ポリマーを含む))であり得る。あるいは、培地またはマトリクスは、固
体の形態であり得、多孔性固体は、細胞の固体マトリクスへの移動を可能にし、これらを
そこに保持し、その一方で、細胞を増殖させる。
【0091】
(GDF−8の検出方法および単離方法)
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、インビボまたはインビ
トロで、GDF−8の存在またはレベルを検出するために使用され得る。これらのタンパ
ク質の存在またはレベルを、医療状態と相関させることにより、当業者は、関連する医療
状態を診断し得る。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質によって
診断され得る医療状態は、本明細書中に示される。
【0092】
このような検出方法は、当業者に周知であり、これとしては、ELISA、ラジオイム
ノアッセイ、イムノブロット、ウェスタンブロット、免疫蛍光、免疫沈降、および他の類
似の技術が挙げられる。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、
GDF−8を検出するための1つ以上のこれらの技術を組込む診断キット中に、さらに提
供され得る。このようなキットは、他の成分、パッケージング、指示書、またはタンパク
質の検出およびキットの使用を補助するための他の物質を含み得る。
【0093】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質が、診断目的のために意図
される場合、例えば、リガンド基(例えば、ビオチン)または検出可能なマーカー基(例
えば、蛍光基、放射性同位元素または酵素)を用いて、これらタンパク質を改変すること
が所望され得る。所望される場合、タンパク質が、従来の技術を使用して、標識され得る
。適切な標識は、発蛍光団、発色団、放射性同位元素、電子密度試薬、酵素、および特異
的な結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、代表的に、これらの活性に
よって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、通常、その3,3’,5,
5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を青色色素に変換する能力によって検出され、
分光光度計を用いて定量される。他の適切な結合パートナーとしては、例えば、ビオチン
とアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとプロテインA、および当該分野に公知の
種々のレセプターリガンド結合が挙げられる。他の並べ替えおよび可能性が、当業者に容
易に明らかであり、本発明の範囲内で、等価物として考慮される。
【0094】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインまたはそのフラグメントを含むタンパク質が
また、精製プロセスにおいてGDF−8を単離するために有用であり得る。1つの型のプ
ロセスにおいて、タンパク質は、カラムまたは樹脂に組込むことによって固定化され得る
。タンパク質は、GDF−8を結合するために使用され、次いで、結合GDF−8の遊離
を生じる条件に供される。このようなプロセスは、GDF−8の市販の商品のために使用
され得る。
【0095】
以下の実施例は、本発明の実施形態を提供する。当業者は、多数の改変およびバリエー
ションが本発明の意図および範囲を変更することなく実施され得ることを、認識する。こ
のような改変およびバリエーションは、本発明の範囲内に包含されると考えられる。これ
らの実施例は、本発明を決して限定しない。本明細書中および特許請求の範囲中の全ての
数は、用語「約」によって修飾される。なぜなら、例えば、投薬量における小さな変化は
、本発明の範囲内であると考えられるからである。
【実施例】
【0096】
(実施例1:JA16結合ビーズの精製)
N−ヒドロキシスクシンイミジル−活性化ビーズ(4%ビーズ化アガロース、Sigm
a H−8635,St Louis MO)を、MilliQ−HO中で洗浄し、1
0mg JA16/ml樹脂の最終濃度を可能にする比で、抗−GDF−8 JA16モ
ノクローナル抗体(100mM MOPS(pH7.5)中、3〜4μg/μl)と共に
4℃で4時間インキュベートした。ビーズを、100mM MOPS(pH7.5)およ
びリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で徹底的に洗浄し(Ausubelら(1999)
Current Protocols in Molecular Biology,J
ohn Wiley & Sons)、使用するまで、4℃でPBS中で保存した。コン
トロールビーズを、JA16抗体を使用せずに同様に調製した。
【0097】
(実施例2:親和精製(Affinity Purification))
JA16−結合体化ビーズまたはコントロールビーズをパックした全40μlを、4℃
で3時間、15mlの正常Balb/Cマウス血清(Golden West Biol
ogicals,Temecula CA)または30mlのプールされた正常ヒト血清
(ICN Biomedical,Aurora OH)と共にインキュベートした。ビ
ーズを、約10mlの冷1%Triton X−100/PBS中で2回洗浄し、約10
mlの冷0.1%Triton X−100/PBS中で2回洗浄し、そして約1mlの
冷PBSで2回洗浄した。タンパク質を、3回の連続工程において、ビーズから溶出した
。第1に、ビーズを、「モック溶出」に処理し、ここで、100μlのPBSを、ビーズ
に添加し、4℃で30分インキュベートした。上清を、回収し、30μlの4×LDSサ
ンプル緩衝液(Invitrogen,Carlsbad CA)と合わせた。第2に、
ビーズを、「ペプチド溶出液」に供し、100μlのPBS中、1μg/μlの競合ペプ
チド(配列:DFGLDSDEHSTESRSSRYPLTVDFEAFGWD−COO
H(配列番号12))を、ビーズに添加し、再度、4℃で30分間インキュベートした。
上清を、前記のように回収した。第3に、ビーズを、「SDS溶出」技術を用いて処理し
、ここで、30μlの4×LDS緩衝液(Invitrogen)および100μlのP
BSを、ビーズに添加し、80℃まで10分間加熱し、その後、この上清を新鮮なチュー
ブに移した。
【0098】
各溶出工程において遊離されるタンパク質の銀染色されたゲルが、図1に示される。図
1に示される銀染色されたゲル中の2つのタンパク質バンド(約12および36kDa)
は、JA16−結合体ビーズから特異的に溶出されたが、結合体化されないコントロール
ビーズからは溶出されなかった。
(実施例3:マススペクトルメトリー)
サンプルは、NuPage 10×還元剤(Invitrogen)を用いて、10分
間、80℃で還元し、そして110μMヨードアセトアミドを用いて、暗室中で30分間
、22℃でアルキル化した。サンプルは、製造元の推め(Invitrogen)に従っ
て、10%NuPageBis−Trisゲルで、MES緩衝液系を用いて直ちに泳動し
、そしてグルタルアルデヒドを含まない系(Shevchenkoら、(1996)An
al.Chem.,68:850〜858)を用いて銀染色した。バンドを、Seque
ncing Grade Modified Trypsin(Promega,Mad
ison WI)を用いて、Abimed Digest Pro(Langenfel
d,Germany)またはPro Gest Investigator(Genom
ics Solutions,Ann Arbor MI)内で切除および消化した。消
化されたサンプルの量は、エバポレーションにより減少するので、最終量が約20μlに
なるように、1%酢酸を補充した。サンプル(5〜10μl)を、Picofrit針(
New Objectives,Woburn MA)に詰め、10cm×内径75μm
18逆相カラム上にロードした。MS/MSデータを、LCQ DecaあるいはLC
Q Deca XP(Finnigan,San Jose CA)質量分析計を用いて
回収し、Sequestプログラム(Finnigan)を用いて、NCBI非重複デー
タベースに対して検索した。他に記載されない限り、本明細書中に列挙している全てのペ
プチド配列は、点検マニュアルによって質が高いと判断され、そしてSequest評価
システムによって、2.5以上のXcorrスコアを生成したMS/MSスペクトルに対
応た。
(実施例4:ウエスタンブロット)
タンパク質を、0.45μmのニトロセルロース膜(Invitrogen)に転写し
、ブロッキング緩衝液(Tris緩衝生理食塩水(TBS:10mM Tris−HCl
、pH7.5、150mM NaCl)に5%脱脂粉乳を加えたもの)の中で、4℃で一
晩、ブロッキングした。次いで、ブロットを、ブロッキング緩衝液で、1:1000の割
合に希釈した一次抗体と、室温で1〜3時間プローブし、TBSで5回洗浄し、西洋ワサ
ビペルオキシダーゼ結合体化二次抗体とブロッキング緩衝液とを、室温で1〜3時間プロ
ーブし、前回と同様に洗浄する。シグナルを、West Pico Substrate
(Pierce)を用いて、オートラジオグラフィーによって検出した。
(実施例5:GDF−8の単離)
前述の実施例で記載された方法を用いた実験は、GDF−8の単離を生じた。GDF−
8の還元された形態は12kDaであるので、発明者らは、図1で示された銀染色ゲル由
来の下側のバンド中のタンパク質を、成熟型GDF−8であると推測した。この仮説を確
かめるため、発明者らはこのバンドを切除し、トリプシンで消化し、LC−MS/MSに
よって得られたペプチドのMS/MSスペクトルを得た。6つのトリプシンによって得ら
れたペプチドに対応するMS/MSスペクトルは、図2Aおよび表1に示されるように、
成熟型GDF−8がゲルのこの領域から、単離されたことを確認した。
【0099】
表1は、マウス血清およびヒト血清由来のJA16免疫沈降物中で見つけられた、GD
F−8(配列番号13〜20)、GDF−8プロペプチド(配列番号21〜27)、FL
RG(配列番号28〜30)およびGASP1(配列番号31〜35)由来のペプチドを
列挙する。タンパク配列中の、すぐ前のアミノ酸は、それぞれのペプチドの括弧内に示さ
れており、そしてペプチドの電荷状況(Z)およびSequestプログラム相関係数(
corr、確信の測度)を列挙する。表中に示している配列の番号は、単離したペプチ
ドおよびその配列にのみ、言及する。括弧内にある前述のアミノ酸は、ペプチドを含んで
おらず、参考文献のみを提供する。全てのスペクトルを、点検マニュアルによって確認し
た。
【0100】
興味深いことに、ウエスタンブロットはまた、プロセシングされていないGDF−8の
全長(43kDa)に対応するバンドも含んでおり、この分子のいくつかの部分が、タン
パク分解性のプロセシングを受けずに、血清中に分泌されている事を意味する(図2B)
。プロセシングされていないGDF−8の存在を、発明者らのマススペクトロメトリーで
確認した(図示せず)。従って、アフィニティ−精製方法は、正常マウス血清より、効果
的にGDF−8を単離した。
【0101】
JA16抗体は、GDF−8および高い関連性のあるタンパク質BMP/GDF−11
の両方を認識するが、発明者らは、BMP−11ペプチドの証拠を、マススペクトロメト
リーによりアフィニティ−精製したサンプル中に見なかった。
【0102】
【表1−1】

【0103】
【表1−2】


(実施例6:GDF−8に結合したタンパク質の単離)
一旦、アフィニティー精製技術によって、正常なマウス血清からGDF−8が首尾よく
単離し得ることが確認されると、本発明者らは、自然の状態でGDF−8に結合するタン
パク質の同定を進めた。図1に示されている銀染色ゲル上の36kDaのバンドを、上記
のように分析した。マススペクトロメトリーによって、JA16免疫精製サンプルに特異
的であるゲルのこの領域中において、2つのタンパク質を同定した。これらは、GDF−
8プロペプチドおよびフォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)であることが決定された
。これらのタンパク質のそれぞれから同定されたペプチドを、表1に示す(配列番号13
〜27)。高品質なMS/MSスペクトルが、GDF−8プロペプチド由来の6つの独特
のペプチドおよびFLRG由来の3つの独特のペプチドを見出した;代表的なペプチドを
、図3Aおよび図3Cに示す。さらに、これらのタンパク質の両方の存在を、GDF−8
プロペプチドおよびFLRGのそれぞれに特異的なポリクローナル抗体を使用したウエス
タンブロッティングによって確認した(図3Bおよび図3D)。従って、循環GDF−8
は、インビボでGDF−8プロペプチドおよびFLRGに結合しているようである。
【0104】
(実施例7:GDF−8に結合する新規タンパク質の単離)
インビボで循環GDF−8複合体の主要な構成成分を特徴付けるために、野生型のマウ
ス血清由来のネイティブなGDF−8およびその関連タンパク質を、アガロース結合体化
抗GDF−8モノクローナル抗体(JA16)を使用したアフィニティー精製により単離
した。JA16結合タンパク質を、PBS緩衝液のみを使用した溶出工程(モック溶出)
、JA16の結合のためのGDF−8と競合し得るペプチドを使用した溶出、およびSD
S界面活性剤を使用した溶出の溶出工程に供した。これらのサンプルを濃縮し、一次元S
DS−PAGEゲル上で泳動して、銀染料で可視化した(図4)。JA16精製サンプル
に独特な2つのバンド(GDF−8として同定された12kDaのバンド、ならびにGD
F−8プロペプチドおよびFLRGの両方を含む36kDaのバンド)が見られる。
【0105】
インビボでGDF−8に結合された他のタンパク質を同定し得るかどうかを決定するた
めに、本発明者らは、精製をおおよそ5倍にスケールアップし、マススペクトロメトリー
を使用して、JA16免疫複合体中には存在するがネガティブコントロール中には存在し
ないタンパク質を検索した。この目的を達成するために、図4に示されるように、本発明
者らは、10kDa〜200kDaの範囲の分子量に対応する、銀染色ゲルの領域を13
のゲル切片に切り出した。これらのスライスのそれぞれを、ゲル内トリプシン消化および
LC−MS/MSに供した。公知のタンパク質の非リダンダントなNCBIデータベース
に対するMS/MSスペクトルの結果の比較により、JA16免疫沈降物に特異的なさら
なるいくつかのタンパク質は明らかにならなかったが、前記のタンパク質(成熟GDF−
8、GDF−8プロペプチド、プロセシングしていないGDF−8、およびFLRG)が
、これらのサンプル中ですべて同定された(図4)。JA16免疫複合体およびネガティブ
コントロールサンプルの両方において見出されたバックグラウンドのタンパク質には、大
量の血清タンパク質(例えば、アルブミン、免疫グロブリンおよび相補的なタンパク質)
が含まれていた。JA16サンプル中には、他のTGF−βスーパーファミリーメンバー
(高度に関連するタンパク質BMP−11/GDF−11を含む)の証拠は無かった。従
って、これらの実験において、JA16抗体は、GDF−8を特異的に精製した。
【0106】
興味深いことに、JA16がインビトロでGDF−8/フォリスタチン複合体を免疫沈
降し得るという事実があるにもかかわらず、本発明者らは、本発明者らのGDF−8免疫
複合体中にフォリスタチンの証拠を見出せなかった(データは示さず)。フォリスタチン
は、GDF−8とActRIIBレセプターとの会合にアンタゴナイズすることで、GD
F−8活性を阻害することが示されている(LeeおよびMcPherron(2001
)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、98:9306〜9311)
。本発明者らの結果は、フォリスタチンは、通常の条件下では、循環GDF−8複合体の
活性の調節において主要な役割は果たしていないことを示唆する。
【0107】
このMS/MS手順によるタンパク質の同定は、検索されるデータベースの内容に依存
するので、本発明者らは、13サンプルから収集されたMS/MSスペクトルをセレラマ
ウスゲノム配列から予測されるパンパク質のデータベースと比較することにより、図4由
来のデータをさらに分析した。この分析により、JA16精製サンプルに特異的なさらな
るタンパク質を同定し、そして本明細書中でこれをGDF関連血清タンパク質1(GAS
P1)と称する。このタンパク質を最初に同定したことにより、公的なゲノム配列決定の
試みによって、この配列が、寄託番号gi|20914039で、NCBI nrデータ
ベースに追加されている。
【0108】
高品質なMS/MSスペクトルに基づいて、GASP1配列に対応する5つのペプチド
を同定した(表1(配列番号31〜35);図5AおよびB)。GASP1ペプチドに対
応するスペクトルが、70〜80kDaのタンパク質を含むバンド3に見られた。しかし
、おそらくこの領域中でバックグラウンドの免疫グロブリンおよびアルブミンが大量であ
ることに起因して、このタンパク質に対応する特定のバンドは見えなかった(図4を参照
のこと)。一般的には、SequestXcorrスコアが2.3以上であることが2
イオンにとって有意であると考えられている。偶然にも、本発明者らの実験において同定
されたペプチドの1つ(配列=ECETDQECETYEK(配列番号31))が、この
タンパク質をコードする2つのエキソンの間の接合部にかかっており、この例においてセ
レラの予想アルゴリズムの正確性が証明する。
【0109】
GASP1転写物およびGASP1タンパク質の配列を、実際のGASP1のクローニ
ングの前に予測した(図6)。GASP1を、予測分子量63kDaを有する571アミ
ノ酸のタンパク質であると予測した。これは、N末端に推定シグナル配列/切断部位、な
らびにアミノ酸314およびアミノ酸514にN−グリコシル化のための潜在的な2つの
部位を有する。PfamおよびBLASTによるGASP1タンパク質配列の解析(Al
tschulら(1990)J.Mol.Biol.、215:403〜410;Bat
emanら(2002)Nucleic Acids Res.、30:276〜280
の技術に従った)により、GASP1は多くの保存ドメイン(WAPドメイン、フォリス
タチン/カザル(Kazal)ドメイン、免疫グロブリンドメイン、二つのタンデムなク
ニッツ(Kunitz)ドメイン、およびネトリンドメインが挙げられる)を含んでいる
ことが明らかになった(図14A)。WAPドメインは、元々は乳清酸性タンパク質中で
同定されたものであり、4つのジスルフィド中心を形成する8つのシステインを含み、し
ばしば抗プロテアーゼ活性を有するタンパク質中で見出される(Hennighause
nおよびSippel(1982)Nucleic Acids Res.、10:26
77〜2684;Seemullerら(1986)FEBS Lett.、199:43
〜48)。フォリスタチンドメインはGDF−8とGASP1との間の相互作用を媒介す
ると考えられている。フォリスタチンドメインのC末端領域は、カザルセリンプロテアー
ゼインヒビタードメインとの類似性を含んでいる。GASP1の場合において、この領域
は、フォリスタチンまたはFLRGに対してよりも、カザルドメインに対してずっと密接
に関係しており、このことは、この領域がさらなるプロテアーゼインヒビター機能を有し
得る可能性を示唆している。クニッツドメインは、元々はウシ膵臓トリプシンインヒビタ
ー中で同定されたものであり、またセリンプロテアーゼも阻害し、したがって、このクラ
スのタンパク質の制御におけるGASP1のあり得る役割が確立される。さらに、ネトリ
ンドメインは、メタロプロテアーゼの阻害に関係している(BanyaiおよびPatt
hy、1999;Mottら、2000)。したがって、これらの保存領域の存在に基づ
いて、おそらくGDF−8の処理または潜在的GDF−8複合体の活性化を制御すること
で、GASP1はプロテアーゼ活性を阻害するようである。
【0110】
マウスセレラ転写産物データベースに対するBLAST検索により、>50%のGAS
P1との同一性を有するタンパク質が明かにされた。本明細書中ではこれをGASP2と
称する。GASP2は、GASP1と同様のドメイン構造を含んでおり、このことは、こ
れらのタンパク質が多効性プロテアーゼインヒビターの二つのメンバーファミリーを定義
していることを示唆している(図14B)。興味深いことに、GASP1にのみ対応し、
GASP2には対応しないペプチドが、本発明者らのJA16精製サンプル中で見出され
た。この結果は、GASP1およびGASP2がおそらく、異なる生物学的特異性を有し
ていることを示唆している。GASP1およびGASP2は両方とも、ヒトにおいても保
存されている(マウスと>90%の同一性)。ヒトGASP1の配列は、現在NCBI
nrデータベースにおいて、登録番号gi|18652308として入手可能である。ヒ
ト血清におけるGDF−8濃度は、マウス血清において見られるものよりもかなり低いが
(Hillら(2002)J.Biol.Chem.、277:40735〜40741
)、タンパク質のマススペクトロメトリー分析の感度により、本発明者らはヒト血清由来
のJA16免疫沈降物からGASP1のヒトホモログに対応する3つのペプチドを単離し
た(表1)。対応するネガティブコントロール中には、これらのペプチドは1つも見出さ
れなかった。繰り返しになるが、これらの実験においてヒトGASP2の証拠は無かった
。したがって、GASP1とGDF−8との間の相互作用は、マウスとヒトとの間で保存
されている。
【0111】
GDF−8は、骨格筋においてほぼ独占的に産生される。GASP1のmRNAの組織
分布を決定するために、様々なマウス組織および様々な段階の胚から産生された1本鎖c
DNAから、GASP1の551bpのフラグメントを増幅した(図10)。マウスGA
SP1フラグメントを、製造者の推奨に従ってAdvantage cDNA PCRキ
ット(Clontech)(順方向プライマー:5' TTGGCCACTGCCACC
ACAATCTCAACCACTT 3'(配列番号46);逆方向プライマー:5' T
CTCAGCATGGCCATGCCGCCGTCGA 3'(配列番号47))を使用
して、正規化されたマウス1本鎖cDNAパネル(Clontech、Palo Alt
o CA)から増幅した。GASP1は、かなり広範囲で発現している(特に、骨格筋お
よび心臓において高度な発現を有する)ようである。重要な発現はまた、脳、肺、および
精巣においても見られる。反対に、肝臓および腎臓は、比較的低いレベルのGASP1の
mRNAを発現している。発生が進行するにつれて、GASP1のmRNAのレベルはか
なり一定になり、おそらくマウスの胚形成における7日目と11日目との間でわずかにし
か増加していない。
【0112】
(実施例8:ヒト血清およびマウス血清におけるGDF−8)
ヒト血清中のGDF−8濃度は、マウス血清に見られるものよりもかなり低い。GDF
−8は治療上の標的としての可能性を有しているので、ヒトにおける循環するGDF−8
複合体の組成を決定することが目的であった。この知識により、マウスモデルの妥当性を
決定し、潜在的に別の治療上の標的を同定する。したがって、JA16ベースのGDF−
8のアフィニティー精製をヒト血清を使用して繰り返した。マウスと比較してヒト血清に
おけるGDF−8が低レベルであることに起因して、成熟GDF−8およびGDF−8プ
ロペプチド/FLRGに対応するバンドは見えなかった(図11A)。しかし、GDF−
8の成熟領域を認識するポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロティングにより、
JA16精製サンプル中での成熟GDF−8および未処理のGDF−8の存在が明らかに
なった(図11B)。
【0113】
本発明者らは、成熟GDF8と共精製されるタンパク質を同定するために、高感度のマ
ススペクトロメトリーを利用した。ネガティブコントロールおよびJA16結合体化ビー
ズの両方に由来するペプチド溶出サンプルに対応するレーンを、16片にスライスした。
これらのゲルスライスを、以前のように、ゲル内トリプシン消化、ナノフローLC−MS
/MS、およびSequestを用いた分析に供した。
【0114】
興味深いことに、JA16サンプルにおいてのみ特異的に同定され、ネガティブコント
ロールにおいては同定されないタンパク質は、成熟GDF−8、GDF−8プロペプチド
、ヒトFLRG、およびGASP1のヒトホモログであった。これらのタンパク質の各々
から見出されたペプチドを、表1において列挙し(配列暗号36〜45)、代表的なMS
/MSスペクトルを図12において示す。したがって、インビボGDF−8複合体はマウ
スとヒトとの間で保存されているようである。
【0115】
(実施例9:マウスGASP1のクローニングおよび特徴付け)
推定GASP1配列を同定した後、マウスGASP1の実際の配列を決定することが目
的であった。セレラ推定配列に基づいて、GASP1コード配列を、以下のプライマー(
順方向プライマー:5' CACCATGTGTGCCCCAGGGTATCATCGG
TTCTGG 3'(配列番号50);逆方向プライマー:5' TTGCAAGCCCA
GGAAGTCCTTGAGGAC 3'(配列番号51))を使用するPfuTurb
oポリメラーゼ(Stratagene)を用いたPCRによって、マウスの心臓のQU
ICKCLONE cDNA(Clontech)から増幅した。この反応由来のPCR
産物は、1%アガロースゲル上で、おおよそ1700塩基対の単一の主要なバンドとして
泳動した。次いで、増幅されたDNAを、インフレームのC末端V5−Hisタグを含む
ように、製造者の推奨に従ってpcDNA3.1D/V5−His−TOPOベクター(
Invitrogen)のTOPO部位にクローニングした。全長cDNA挿入物を、両
方の鎖について配列決定した。マウスGASP1クローンのヌクレオチド配列を図13に
示す。推定アミノ酸配列(すなわち、288C:G;294G:A;615G:A;73
8A:G;768C:T;1407A:G;1419A:G;および1584C:G、こ
こで示されている位置の最初の塩基がセレラによって報告された塩基であり、2番目の塩
基はクローンの配列決定から得られた塩基である;図6AおよびBを参照のこと)を変化
させないウォッブルコドンにおける数塩基の置換を除いて、このクローンは推定セレラ配
列に一致した。
【0116】
GASP1タンパク質のN末端処理を決定するために、本発明者らは、C末端V5−H
isタグと共にクローニングされたマウスGASP1(GASP1−V5−His)をコ
ードする哺乳動物発現ベクターを用いて、COS細胞をトランスフェクトした。48時間
後に、無血清条件つき培地を収集し、抗V5ポリクローナル抗体(Sigma)を用いた
ウエスタンブロット分析によって分析した。より詳細には、無血清ダルベッコの改変イー
グル培地中でFuGENE6試薬(Roche)を使用して、GASP1−V5−His
/pcDNA3.1D−V5−His−TOPOまたは空ベクターを用いたCOS1細胞
のトランスフェクションの48時間後に、条件つき培地を収集した。
【0117】
おおよそ80kDaで泳動する単一のバンドが見られ、GASP1が条件つき培地中に
分泌されていることが証明された(データ未掲載)。この条件つき培地のおおよそ10m
lを、Hisアフィニティーカラムに通し、さらに逆相クロマトグラフィーによって精製
した。この精製スキームにより、クマシー染色されたSDS−PAGEゲル上に、全長G
ASP1の予測される大きさの1つのバンドが得られた。このバンドのエドマン配列決定
により、N末端配列(L−P−P−I−R−Y−S−H−A−G−I(配列番号52))
を決定した。したがって、GASP1のアミノ酸1〜29が、プロセッシングおよび分泌
の間に取り除かれるシグナル配列を構成する。
【0118】
(実施例10:GDF−8プロペプチドおよび成熟GDF−8への組換え産生されたG
ASP1の結合)
次に、組換え産生されたGASP1が、マウス血清から単離されたGASP1と同様の
GDF−8に対する結合パターンを有していることが決定された。組換えタンパク質を用
いた免疫沈降のために、ベクターまたはGASP1を用いてトランスフェクトされた細胞
由来の条件つき培地(400μl)を、1.2μgの組換え精製されたGDF−8タンパ
ク質および/またはGDF−8プロペプチドタンパク質と組み合わせた(Thiesら、
2001)。JA16(10μlパック量)または抗V5(30μl)と結合体化したア
ガロースビーズを、補充された条件つき培地と共に、4℃で2時間、インキュベートし、
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の1% 冷Tritonで2回、そしてPBSで2
回洗浄した。ビーズを、DTTを含む1×LDS緩衝液(50μl)に再懸濁した。ウエ
スタンブロットを、先に記述したように行った(Hillら、2002)。
【0119】
GDF−8とGASP1との間の相互作用の確認およびさらなる特徴付けを行うために
、本発明者らは、精製した組換えGDF−8および精製した組換えGDF−8プロペプチ
ドを、ベクターコントロールまたはGASP1−5V−Hisのいずれかを用いてトラン
スフェクトされたCOS1細胞由来の条件つき培地と共にインキュベートした。次いで、
本発明者らはJA16結合体化アガロースビーズを使用して、GDF−8を免疫沈降し、
ウエスタンブロットを使用して、GASP1とGDF−8プロペプチドとの共精製を調べ
た(図15A)。GASP1(レーン3)およびGDF−8プロペプチド(レーン1)の
両方とも、GDF−8と共に共免疫沈降されており、GDF−8がこれらのタンパク質の
両方と相互作用し得ることが証明された。これらの実験における非特異的な結合の可能性
を除いて、GASP1およびプロペプチドの両方とも、GDF−8が欠乏している場合に
はJA16免疫沈降物中に検出されなかった(レーン4)。これら3つ全てのタンパク質
が存在していた場合、GASP1およびGDF−8プロペプチドは両方とも、GDF−8
を用いて沈降させられ、このことから、これらのタンパク質が三量体の複合体を形成し得
る可能性が示唆された(レーン5)。しかし、本実験は、GASP1およびプロペプチド
が別のGDF−8分子上の同じエピト−プに結合している可能性を取り除いていない。
【0120】
GASP1とGDF−8との間の相互作用をさらに確認するために、本発明者らはGD
F−8および/またはGDF−8プロペプチドの組変えタンパク質を補充した条件つき培
地からGASP1を沈降させることで、逆免疫沈降を実施した。これを達成するために、
本発明者らは、GASP1上のC末端V5−HisタグのV5エピト−プに対して指向さ
れたアガロース結合体化モノクローナル抗体を使用した。予想どおりに、GDF−8はG
ASP1と共に共免疫沈降し(図15B、レーン3およびレーン5)、さらにこれらのタ
ンパク質間の直接的な相互作用が確認された。驚いたことに、GDF−8の非存在下でさ
え、GDF−8プロペプチドはまた、GASP1と共精製され(レーン4)、このことは
、GDF−8プロペプチドがGASP1に直接的に結合し得ることが示唆する。したがっ
て、GASP1はGDF−8およびGDF−8プロペプチドの両方に、独立して結合する
。このことは、成熟GDF−8と独占的に結合するFLRG(別のフォリスタチンドメイ
ンタンパク質)と正反対である(Hillら(2002)J.Biol.Chem.、2
77:40735−40741)。GDF−8およびプロペプチドの両方を添加すると、
プロペプチドを単独で添加した場合に比べてプロペプチドのGASP1への結合が弱くな
るのが一貫して見られる。この観察によって、GASP1が潜在的なGDF−8小複合体
と結合し得ないことが示唆される。
【0121】
(実施例11:GDF−8活性およびBMP−11活性のGASP1媒介される阻害、
しかしアクチビン活性またはTGF−β1活性は阻害されない)
ルシフェラーゼレポーター構築物、pGL3−(CAGA)12(配列番号53)(D
ennlerら、(1998)EMBO J.,17:3091−3100)を、A20
4またはRD横紋筋肉腫細胞に過渡的にトランスフェクトした。ベクターまたはGASP
1トランスフェクトされた細胞由来の馴化培地の希釈液を、37℃で30分間10ng/
ml GDF−8、10ng/ml BMP−11、10ng/ml rhアクチビンA
(R&D Systems)、または0.5ng/ml rh TGF−β1(R&D
Systems)と共にインキュベートした。ルシフェラーゼ活性を、Thiesら、(
2001)Growth Factors,18:251−259およびZimmers
ら、(2002)Science,296:1486−1488に従って測定した。この
アッセイにおいて、A204細胞は、GDF−8、BMP−11およびアクチビンに応答
するが、TGF−β1にあまり応答しない。RD細胞は、GDF−8およびTGF−β1
の両方に応答する。従って、我々は、A204細胞を用いてGDP−8、BMP−11、
およびアクチビンを阻害するGASP1の能力を試験し、そしてRD細胞を用いてTGF
−βおよびGDF−8の活性をモニタリングした。GDF−8についての結果を、A20
4細胞から示すが、RD細胞と類似であった。これらの増殖因子の各々により誘導される
ルシフェラーゼ活性の濃度依存性を測定する標準曲線を、各々の実験について作成した(
データは示さず)。用いられる増殖因子濃度が、この曲線の直線領域に合致し、その結果
、濃度における小さな変化が、ルシフェラーゼ活性における測定可能な変化を生じる。
【0122】
2つのフォリスタチンドメインタンパク質、フォリスタチンおよびFLRGは、(CA
GA)12(配列番号53)ルシフェラーゼ転写レポーターアッセイにおいてGDF−8
活性を阻害するが、関連タンパク質、アクチビンおよびBMP−11の生物学的活性をま
た、阻害する。(CAGA)12(配列番号53)レポーターアッセイにおけるGDF−
8、BMP−11、アクチビン、およびTGF−β1活性を阻害するGASP1の能力を
また、試験した。
V5−Hisタグ化GASP1またはベクターコントロールでトランスフェクトされたC
OS細胞由来の馴化培地の種々の希釈液を、精製した組み換えGDF−8(10ng/m
l)、BMP−11(10ng/ml)、アクチビン(10ng/ml)、またはTGF
−β1(0.5ng/ml)と共にインキュベートし、(CAGA)12(配列番号53
)レポーター構築物を発現する横紋筋肉腫細胞における増殖因子活性について、アッセイ
した。GASP1は、濃度依存様式においてGDF−8活性を強力に阻害した(図16A
)。GASP1は同様に、このアッセイにおけるBMP−11の活性を阻害し(図16B
)、このことは、成熟GDF−8およびBMP−11が高度に保護され、そして11アミ
ノ酸のみが異なるために、予期された。驚くべきことに、GASP1は、アクチビンまた
はTGF−β1の活性を阻害せず(図16CおよびD)、フォリスタチン自体によっては
示されない非常に高度なレベルの特異性を示唆する。従って、GASP1は、GDF−8
およびBMP−11の阻害において特異性を示す。
【0123】
GDF−8についてのGASP1の親和性を、レポーター遺伝子アッセイにおけるGD
F−8の阻害についてのIC50を決定することにより評価した。GASP1−V5−H
isタンパク質を、コバルト親和性カラム上の調整された馴化培地から精製し、上記のよ
うに溶出した。GASP1を含む画分を、BioSepS3000カラム(Phenom
enex)を用いるPBSにおけるサイズ除外クロマトグラフィーによりさらに精製した
。図17に示されるように、GASP1が、およそ3nMのIC50でGDF−8を阻害
した。
【0124】
(実施例12:筋肉障害の処置)
GASP1を、表2に記載のGDF−8の機能化に関する疾患または障害を患う患者に
投与し得る。患者は、一度にまたは間隔を空けて、例えば毎日一回、組成物を摂取し、彼
らの疾患または障害の症状を改善させる。例えば、筋肉障害に関する症状が、筋肉質量、
筋肉活性、およびまたは筋肉調和によって測定されるように、改善される。このことは、
本発明の組成物が、GDF−8の機能化に関する疾患または障害(例えば、筋肉障害)の
処置に有用であることを示す。
【0125】
【表2】


本願にわたって引用された全ての参考文献、特許および公開された特許出願の完全な内
容が、本明細書中で参考として援用される。前述の詳細な説明が、例示目的のみのために
与えられた。広範囲の変化および改変を、上記の実施形態に対して行い得る。従って添付
の特許請求の範囲(全ての等価物を含む)が、本発明の範囲を規定するよう意図されるこ
とが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−286804(P2009−286804A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212564(P2009−212564)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2003−571402(P2003−571402)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】