説明

フック付き線状体

【課題】 外径が大きい碍子などの支持体に容易に巻き付けることが可能なフック付き線状体を提供する。
【解決手段】 細長で可撓性を有するロープ11と、ロープ11の少なくとも一方の端に設けられたフック12と、を備え、ロープ11のフック12側の所定長の端部が、少なくとも当該端部およびフック12の自重によっては撓まないように、その剛性が高められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全帯に設けられ先端にフックを備える親綱などのフック付き線状体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス遮断機(GCB)の碍子(ブッシング)の点検や修理などを行う場合、作業者は、安全帯を使用して作業を行っている。すなわち、図5に示すように、安全帯は、腰ベルト120と親綱121とを備え、親綱121の先端・自由端には、金属製のフックが取り付けられている。そして、作業者Mの腰に腰ベルト120を装着し、親綱121を碍子100にまわしてフックを腰ベルト120に掛けることで、作業の安全性を確保している。
【0003】
このように支持体にロープを巻き付ける安全帯に関する技術として、移動の際の安全性を確保するために、腰ベルトにリングを取り付け、このリングにフック付きロープを連結させるとともに、ロープが折り畳み可能な高所作業用安全帯が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−017942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、110kV以上のガス遮断機では、図5に示すように、碍子100が互いに外側を向いて設置され、さらに、碍子100は、その下部の外径が大きく、上側に向かって外径が小さくなっている。また、碍子100を清掃したり、測定試験器具を取り付けたりするために、碍子100の頭頂部まで登る必要性が生じる場合がある。
【0006】
しかしながら、碍子100の下部の外径が70cmなどと大きいため、作業者が一人で親綱121を碍子100にまわすことが困難であった。つまり、一方の手で親綱121の先端部を持ち、碍子100にまわした状態で、他方の手で親綱121の先端部を持とうとしても、フックの重みで親綱121の先端部が垂れ下がってしまい、親綱121の先端部を握ることができない。このため、外径が小さい碍子100の中央部まで登った後に、親綱121を碍子100にまわしたり、一方の手でフックを他方の手に投げ渡したりしなければならず、安全性が損なわれたり碍子100が損傷したりするおそれがあった。また、特許文献1の技術は、高所での移動の際にロープが絡まないようにコンパクト化することはできるが、外径が大きい碍子100などにロープを容易に巻き付けることはできない。
【0007】
そこで本発明は、外径が大きい碍子などの支持体に容易に巻き付けることが可能なフック付き線状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、細長で可撓性を有する線状体と、前記線状体の少なくとも一方の端に設けられたフックと、を備え、前記線状体の前記フック側の所定長の端部が、少なくとも当該端部および前記フックの自重によっては撓まないように、その剛性が高められている、ことを特徴とするフック付き線状体である。
【0009】
この発明によれば、ガス遮断機の碍子などの支持体に線状体を巻き付ける場合に、線状体のフック側の端部がフックの自重によっては撓まない。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフック付き線状体において、前記フック側の端部にスパイラル機能付きカバーが取り付けられることで、当該端部の剛性が高められ、前記スパイラル機能付きカバーの長さが伸縮自在となっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、線状体のフック側の所定長の端部が、フックの自重によっては撓まないように剛性が高められているため、線状体のフック側端部を手で持った際に、所定長だけ線状体の端部が真っ直ぐな状態となる。このため、線状体のフック側端部を持って支持体にまわした際に、フック側の端部が垂れ下がらずに延びた状態となり、他方の手で端部を容易に把持することが可能となる。つまり、外径が大きい碍子などの支持体にも、線状体を容易に巻き付けることが可能となる。この結果、より高い安全性を確保したり、碍子の損傷を防止したりすることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、伸縮自在なスパイラル機能付きカバーによって、線状体のフック側の端部の剛性が高められているため、支持体の大きさや作業環境などに応じてスパイラル機能付きカバーの長さを伸縮させることで、より容易に線状体を巻き付けることが可能となる。しかも、持ち運び時や未使用時などにはスパイラル機能付きカバーを縮めることで、取り扱い性や収容性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係るフック付きロープを備える安全帯を示す正面図である。
【図2】図1のフック付きロープのスパイラル機能付きカバーが縮んだ状態を示す正面図である。
【図3】図1のフック付きロープのスパイラル機能付きカバーが伸びた状態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るクレーンバンドを示す斜視図である。
【図5】ガス遮断機の碍子に安全帯を取り付けて作業を行う状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1ないし図4は、この実施の形態に係るフック付きロープ(フック付き線状体)1を備えた安全帯10を示す。このフック付きロープ1は、支持体の周囲に巻き付けたりして作業者の身体を支持するものであり、図1に示すように、主として、ロープ(線状体)11と、このロープ11の一端部に設けられたフック12と、ロープ11の一端部側に設けられたスパイラル機能付きカバー13とを備え、親綱として腰ベルト50に取り付けて安全帯10として使用するものである。
【0016】
ロープ11は、ナイロン等の合成樹脂繊維を編み込んで形成され、細長で可撓性を有し屈曲自在となっている。このロープ11の長さは、点検や清掃などの作業の対象物や支持体の大きさ、作業環境などを考慮して設定され、例えば、3m程度に設定されている。
【0017】
フック12は、ロープ11の先端に取り付けられた基部12aと、略U字形でカギ状のフック部12bとを有し、基部12aの回転軸12cを軸にしてフック部12bが回動自在となっている。また、外力が付加されない状態では、フック部12bの自由端部が基部12a側に押圧され、基部12aとフック部12bとで環形状が形成されるようになっている。
【0018】
スパイラル機能付きカバー13は、ロープ11のフック12側の端部に取り付けられ、この端部の剛性を高めるものである。このスパイラル機能付きカバー13は、図2および図3に示すように、ゴムチューブ131とこれを覆うカバー132とから構成されている。ゴムチューブ131は、熱収縮性を有し、ロープ11のフック12側の端部に装着され加熱されることで、当該端部に取り付けられている。また、作業対象や支持体の大きさなどを考慮して、所定の長さ、例えば200mmに設定され、さらに、ゴムチューブ131が取り付けられた端部とフック12の自重によっては曲がらず(撓まず)、多少の外力が付加されても、真っ直ぐな姿勢を維持できるように、厚みと強度とが設定されている。また、ゴムチューブ131の表面には、軸方向に沿ったスパイラル状の凸部131aが形成されている。
【0019】
カバー132は、円筒状で、硬質の合成樹脂から構成され、ゴムチューブ131と同等の長さを有している。さらに、カバー132の内面には、軸方向に沿ったスパイラル状の凹部132aが形成され、ゴムチューブ131の凸部131aと螺合している。そして、カバー132を回転させることで、カバー132がゴムチューブ131に対して進退動・スライドし、これにより、スパイラル機能付きカバー13が伸縮するようになっている。つまり、ロープ11の剛性が高められる部分の長さが、変化するようになっている。また、図3に示すように、ゴムチューブ131とカバー132とが、少なくとも所定の長さDだけ、例えば50mmだけ重なるように、凸部131aと凹部132aとの螺合関係・長さが設定されている。つまり、例えば150mm以上カバー132を引き出せないようになっている。
【0020】
腰ベルト50は、主ベルト51と、補助ベルト52と、バックル53と、長さ調整器54とから構成されている。
【0021】
主ベルト51は、ナイロン等の合成樹脂繊維製で、屈曲自在であり、その長さは、作業者の胴周りよりも十分長く設定されている。この主ベルト51の中央には、主ベルト51よりもやや幅広の補助ベルト52が取り付けられている。この補助ベルト52の内側にはクッション(図示せず)が取り付けられ、作業者の腰に直接接触するようになっている。さらに、主ベルト51の一端には、バックル53が設けられ、主ベルト51を作業者の腰に巻きつけた状態で、このバックル53に主ベルト51の他端部を通して締め付けるようになっている。
【0022】
また、主ベルト51の側部には、長さ調整器54が設けられ、この長さ調整器54にフック付きロープ1が取り付けられている。すなわち、ロープ11の自由端部(非フック12側)が長さ調整器54に挿入され、長さ調整器54の調整レバー(図示せず)を押すと、ロープ11が移動可能となり、調整レバーを離すと、ロープ11の位置が固定されるようになっている。
【0023】
次に、このような構成のフック付きロープ1を備えた安全帯10の作用などについて説明する。ここで、図5に示すように、ガス遮断機の碍子100を点検や修理などする場合について説明する。
【0024】
まず、作業者Mは、腰に腰ベルト50を装着する。次に、長さ調整器54の調整レバーを押してロープ11を引き出し、長さ調整器54からフック12までの長さを、碍子100の外周長よりも長くする。また、碍子100の外周長や作業者Mの手の長さなどに応じて、上記のようにしてスパイラル機能付きカバー13の長さを調整する。つまり、後述するように、フック12を手渡しでき、かつ取り扱いが容易なようにスパイラル機能付きカバー13の長さを調整する。
【0025】
続いて、一方の手でスパイラル機能付きカバー13の自由端側(非フック12側)を把持し、碍子100の外周に沿って腕をまわし、他方の手でフック12を受け取る。このとき、スパイラル機能付きカバー13が真っ直ぐに延び、撓まないため、一方の手と他方の手とが届かない場合でも、フック12を受け取ることができる。そして、フック12を腰ベルト50に掛け、ロープ11が碍子100の外周に密着するように、長さ調整器54でロープ11の長さを調整する。このようにしてロープ11の長さを調整しながら、スパイラル機能付きカバー13を昇降して、点検や修理などを行うものである。
【0026】
以上のように、このフック付きロープ1によれば、ロープ11のフック12側が撓まずに真っ直ぐに延びるため、実質的に作業者Mの腕が伸びた状態となり、作業者Mの手と手とが直接届かない場合でも、フック12を容易に手渡しすることができる。このため、外径が大きい碍子100の下部の位置から、ロープ11を巻き付けて安全帯10をセットし、より高い安全性を確保することができる。また、フック12を投げ渡す必要がなくなり、碍子100の損傷などを防止することができる。
【0027】
さらに、スパイラル機能付きカバー13が伸縮自在なため、碍子100の外径や作業環境などに応じてスパイラル機能付きカバー13の長さを調整することで、より容易にロープ11を巻き付けることが可能となる。しかも、持ち運び時や未使用時などにはスパイラル機能付きカバー13を縮めることで、取り扱い性や収容性が高まる。また、既製・既存の安全帯のロープにスパイラル機能付きカバー13を取り付けるだけで、容易かつ低コストで、フック付きロープ1および安全帯10を構成することができる。
【0028】
(実施の形態2)
図4は、この実施の形態に係るクレーンバンド(フック付き線状体)20の使用状態を示す斜視図である。このクレーンバンド20は、クレーンやホイストなどで重量物110を運ぶ際に、重量物110に巻き付けるようにして取り付けられるバンドであり、帯状体(線状体)21とスパイラル機能付きカバー22とから構成されている。
【0029】
帯状体21は、屈曲自在で断面が偏平しおり、両端部に、クレーンフック111を掛けるリング状のフック21a、21bが形成されている。つまり、通常広く使用されている既製のクレーンバンドと同等の構成となっている。
【0030】
スパイラル機能付きカバー22は、熱収縮性を有するゴムチューブから構成され、帯状体21の第2のフック21b側に取り付けられている。すなわち、帯状体21の端部に装着、加熱されることで、取り付けられている。また、このスパイラル機能付きカバー22は、スパイラル機能付きカバー22やフック21bの自重によっては曲がらず、多少の外力が付加されても、真っ直ぐな姿勢を維持できるように、厚みと強度とが設定されている。さらに、スパイラル機能付きカバー22の長さは、重量物110の大きさや作業環境などを考慮して設定されている。
【0031】
このように、帯状体21の第2のフック21b側にスパイラル機能付きカバー22が取り付けられ、帯状体21の第2のフック21b側の端部の剛性が高められている。このため、実施の形態1と同様に、帯状体21の第2のフック21b側が撓まずに真っ直ぐに延び、重量物110が大きい場合でも、第2のフック21bを容易に手渡して、クレーンバンド20をセットすることができる。また、既製・既存のクレーンバンドにスパイラル機能付きカバー22を取り付けるだけで、容易かつ低コストで、クレーンバンド20を構成することができる。
【0032】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、スパイラル機能付きカバー13、22を取り付けることで剛性を高めているが、ロープ11などの端部に固化剤・硬化剤を添加することで端部の剛性を高めてもよい。また、スパイラル機能付きカバー13、22を着脱自在とし、フック12、21bを手渡しする場合などにのみ、スパイラル機能付きカバー13、22を取り付けるようにしてもよい。これにより、スパイラル機能付きカバー13、22を共用化できるとともに、スパイラル機能付きカバー13、22が作業の邪魔になることなどを防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 フック付きロープ(フック付き線状体)
10 安全帯
11 ロープ(線状体)
12 フック
13 スパイラル機能付きカバー
50 腰ベルト
51 主ベルト
52 補助ベルト
53 バックル
54 長さ調整器
20 クレーンバンド(フック付き線状体)
21 帯状体(線状体)
21a、21b フック
22 スパイラル機能付きカバー
100 碍子
110 重量物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長で可撓性を有する線状体と、
前記線状体の少なくとも一方の端に設けられたフックと、を備え、
前記線状体の前記フック側の所定長の端部が、少なくとも当該端部および前記フックの自重によっては撓まないように、その剛性が高められている、
ことを特徴とするフック付き線状体。
【請求項2】
前記フック側の端部にスパイラル機能付きカバーが取り付けられることで、当該端部の剛性が高められ、前記スパイラル機能付きカバーの長さが伸縮自在となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のフック付き線状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−55449(P2012−55449A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200437(P2010−200437)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】