説明

フットダクト構造

【課題】後席用ダクトを連結する仕様と連結しない仕様とを兼用でき、作業性が良好で、風漏れの虞のない車両用空調装置のフットダクト構造を提供する。
【解決手段】車両用空調装置のフットモード用流路の下流側端部に連結される導入口12と、この導入口からの流路に連通する、運転席用吹き出し口13、助手席用吹き出し口14、および後席用吹き出し口15と、前記後席用吹き出し口の下流端が切断により開口可能な封止部16と、前記導入口から前記後席用吹き出し口へ連通する流路を運転席側と助手席側とに分割する分割リブ17とを一体的に成形したフットダクト11であって、前記分割リブは前記後席用吹き出し口において一部不連続となり、前記導入口まで連続して設けられた上流側リブ19と、この上流側リブから間隔をおいて前記封止部まで設けられた下流側リブ20とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置のフットダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置は、空調ユニットケースに導入された空気を冷却するエバポレータと、エバポレータを通過した空気を加熱するヒータコアとを具備すると共に、フェースモード流路、フットモード流路、デフモード流路などの各方向へ温風又は冷風を吹き出す各種流路を備える。そして、フットモード流路の下流端には、一般的には、運転席用吹き出し口と、助手席用吹き出し口とを具備するフットダクトが連結されている。また、仕様によって後席用にリヤヒータ等の空調装置を備える場合があり、このような仕様では、フットダクトにさらに後席用吹き出し口が具備され、後席用のダクト等と連結されている。
【0003】
このようなフットダクトは、例えば、ブロー成形により成形されるが、リヤヒータが設置される仕様と設置されない仕様とで、フットダクトを別々に形成するのはコスト高になるため、後席用吹き出し口があるものとないものとを兼用した部品を成形するようにしている場合がある(例えば、特許文献1など参照)。すなわち、例えば、後席用吹き出し口を塞いだ形状のフットダクトを成形し、リヤヒータがない仕様の場合には、そのまま使用し、リヤヒータがある仕様の場合には、後席用吹き出し口の端部を切断して開口し、この端部に後席用ダクトを連結して使用することが行われている。
【0004】
ところで、従来から運転席側の温度と助手席側の温度とを独立して制御できる左右独立コントロール式の空調装置が知られている。このような左右独立コントロール式の空調装置では、フットダクトを運転席側と助手席側の左右で別々に設けると部品点数が増えコストもかかるため、フットダクトの左右中央部分に仕切りを設けて1つのフットダクトを運転席用吹き出し口に連通する流路と助手席用吹き出し口に連通する流路とに分割して対応しているものがある(例えば、特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−178592号公報
【特許文献2】特開平11−348540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フットダクト内部に左右を分割するリブを設ける場合、製造上の都合によりリブに対応する外側には溝(凹部)が形成されるため、端部を切断して開口し、この端部に後席用ダクトを連結した場合に、溝を介して風漏れが発生する虞がある。
【0007】
このような従来のフットダクトを図6および図7に示す。
【0008】
図6は、フットダクトの斜視図であり、図7は、後席用ダクトを連結した使用状態、およびそのD−D′線断面図を示す。これらの図面に示すように、フットダクト1は、ブロー成形品であり、車両用空調装置のフットモード用流路に連結される導入口2と、運転席用吹き出し口3と、助手席用吹き出し口4と、後席用吹き出し口5とを具備し、後席用吹き出し口5は封止部6により封止されている。後席用ダクトを連結しない場合には、このまま使用する。また、このフットダクト1は、左右独立温度コントロール仕様の空調装置に用いられるものであり、導入口2から後席用吹き出し口5までの流路を運転席側と助手席側、すなわち、左右に分割する分割リブ7が左右方向に直交する方向の壁面から内方へ突出するように設けられ、分割リブ7に対応する外側には、溝8が形成される。
【0009】
よって、図7に示すように、フットダクト1の封止部6を切断したフットダクト1Aの後席用吹き出し口5に、後席用ダクト9を嵌合した場合、後席用吹き出し口5の外側に挿入嵌合された後席用ダクト9との間の溝8が存在するので、この溝8から風漏れが生じる虞があった。
【0010】
よって、対策としては、後席用ダクト9を連結した際に風漏れが生じる溝8を塞ぐ部材を別途用意して取り付けるか、後席用ダクト9を連結する仕様と連結しない仕様とを別々に成形することが考えられるが、何れにしてもコスト高になるため、改善の余地があった。
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、後席用ダクトを連結する仕様と連結しない仕様とを兼用でき、作業性が良好で、風漏れの虞のないフットダクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の態様は、車両用空調装置のフットモード用流路の下流側端部に連結される導入口と、この導入口からの流路に連通する、運転席用吹き出し口、助手席用吹き出し口、および後席用吹き出し口と、前記後席用吹き出し口の下流端が切断により開口可能な封止部と、前記導入口から前記後席用吹き出し口へ連通する流路を運転席側と助手席側とに分割する分割リブとを一体的に成形したフットダクトであって、前記分割リブは前記後席用吹き出し口において一部不連続となり、前記導入口まで連続して設けられた上流側リブと、この上流側リブから間隔をおいて前記封止部まで設けられた下流側リブとからなることを特徴とするフットダクト構造にある。
【0013】
かかる本発明のフットダクト構造では、流路を左右に分割する分割リブの一部だけを不連続として、封止部を切断しないで使用する場合には、左右独立温度コントロール仕様のフットダクトとして機能し、また、封止部を切断して後席用ダクトを嵌合した際には、不連続部の外周面と後席用ダクトの内周面とが完全に密着して風漏れすることなく連結できる。
【0014】
ここで、前記後席用吹き出し口は、前記封止部を切断して開口させた端部を後席用ダクトに挿入して嵌合する嵌合領域を具備し、前記上流側リブと前記下流側リブとの間の不連続部は前記嵌合領域に存在する必要がある。
【0015】
これにより、封止部を切断して後席用ダクトを嵌合した際の風漏れが防止される。
【0016】
また、前記後席用吹き出し口の嵌合領域の上流側端の外周には、外側に突出する当接リブが設けられているのが好ましい。
【0017】
これにより、後席用ダクトを連結する際の嵌合領域が明確になる。
【0018】
また、前記上流側リブは前記当接リブの上流側まで設けられ、前記不連続部は前記当接リブの下流側に隣接して存在するのが好ましい。
【0019】
これにより、封止部を切断して後席用ダクトを嵌合した際に、不連続部の外周面と後席用ダクトの内周面とが完全に密着すると同時に後席用ダクトの端部が当接リブに密着するので、より確実に風漏れを防止できる。
【0020】
また、本発明の他の態様は、前記フットダクトの前記後席用吹き出し口の封止部を切断して開口し、当該後席用吹き出し口に後席用ダクトを嵌合させたことを特徴とするフットダクト構造にある。
【0021】
かかる態様では、フットダクトの封止部を切断して後席用ダクトを嵌合させ、これにより不連続部の外周面と後席用ダクトの内周面とが完全に密着して風漏れすることなく連結される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフットダクト構造では、流路を左右に分割する分割リブの一部だけを不連続としたので、封止部を切断しないで使用する場合には、左右独立温度コントロール仕様のフットダクトとして機能し、また、封止部を切断して後席用ダクトを嵌合した際には、不連続部の外周面と後席用ダクトの内周面とが完全に密着して風漏れすることなく連結できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例に係るフットダクトの斜視図及び要部斜視図である。
【図2】図1のA−A′線断面図およびB−B′線断面図である。
【図3】一実施例のフットダクトの使用状態を示す斜視図である。
【図4】図3のC−C′線断面図である。
【図5】他の実施例に係るフットダクトの要部斜視図である。
【図6】従来技術に係るフットダクトの斜視図である。
【図7】従来技術に係るフットダクトの使用状態を示す斜視図およびそのD−D′線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のフットダクト構造を一実施例に基づいて説明する。
【0025】
図1には本発明の一実施例に係るフットダクトの斜視図及び要部斜視図、図2はそのA−A′線断面図およびB−B′線断面図である。
【0026】
これらの図面に示すように、フットダクト11は、車両用空調装置のフットモード用流路に連結される導入口12と、運転席側用吹き出し口13と、助手席側吹き出し口14と、後席用吹き出し口15とを具備し、後席用吹き出し口15は封止部16により封止されている。かかるフットダクト11は、プラスチック材料をブロー成形することにより一体的に形成されたものである。
【0027】
また、このフットダクト11は、左右独立温度コントロール仕様の空調装置に用いられるものであり、導入口12から後席用吹き出し口15までの流路を運転席側と助手席側、すなわち、左右に分割する分割リブ17が左右方向に直交する方向の両側(図面中上下側)の壁面から内方へ突出するように設けられ、分割リブ17に対応する外側には溝18が形成されている。
【0028】
本実施例では、分割リブ17は、後席側吹き出し口15の封止部16近傍で不連続となり、上流側リブ19と、下流側リブ20とに分割され、その間には、分割リブ17が形成されていない不連続部21となる。すなわち、上流側リブ19は、不連続部21の上流側から導入口12までの流路を分割し、下流側リブ20は、不連続部21の下流側から封止部16までの流路を分割するように設けられている。不連続部21の壁面は内面も外面も周方向に亘って凹凸がなく、不連続部21の流路は左右に分割されていない。
【0029】
ここで、不連続部21では、流路が左右に分割されていないので、左右の流路内の風が多少混合することになるが、不連続部21の流路の流れ方向の寸法は、左右独立温度コントロールに対応して分割リブ17で左右の流路を独立させた機能を損ねない範囲とする必要があり、この点からすると、できるだけ小さくするのが好ましい。
【0030】
また、本実施例では、不連続部21の上流側の若干離間した位置に、外側に突出する当接リブ22が周方向に亘って設けられている。これは、後述するように、後席用吹き出し口15を後席用ダクトに嵌合する際の嵌合領域23を規定するものであり、当接リブ22の下流側が嵌合領域23となり、後席用ダクトを嵌合させた際には、後席用ダクトの端部が当接リブ22に当接するようになる。
【0031】
以上説明したフットダクト11は、後席用ダクトを連結しない場合には、図1の状態のままで使用する。この際、分割リブ17、すなわち、上流側リブ19および下流側リブ20で流路が左右に分割されているので、不連続部21が存在しても、左右独立温度コントロール仕様のフットダクトとして機能する。
【0032】
一方、後席用ダクトを連結して用いる場合の使用状態を図3に、そのC−C′線断面図を図4に示す。これらの図面に示すように、フットダクト11Aは、図1のフットダクト11の封止部16を切断して端部を開口したものである。ここで、封止部16の切断位置は、不連続部21より下流側、下流側リブ20が設けられた領域とするのが好ましい。よって、適正な切断位置を示すマークを設けておいてもよい。
【0033】
このように封止部16を切断して開口させた後席用吹き出し口15の嵌合領域23には後席用ダクト31が嵌合している。かかる後席用ダクト31は、後席用吹き出し口15から吹き出した風を左右に分割して流す流路を有するものであり、下流側の後席用ダクト31の嵌合口32に後席用吹き出し口15の嵌合領域23が挿入され、嵌合口32の端部が当接リブ22に当接する状態で両者が嵌合するようになっている。
【0034】
図4は、嵌合領域23の不連続部21に対応する位置での断面図であるが、不連続部21には溝18も存在しないので、嵌合領域の23の外周面と、嵌合口32の内周面とが確実に密着し、内部の流路を通過する風(空気)が漏れることがない。
【0035】
このように、本実施例では、不連続部21を設けることにより、後席用ダクト31を嵌合させた際に、嵌合部からの風漏れを防止している。よって、不連続部21の流路の流れ方向の寸法は、風漏れを防止できる程度の密着領域を形成できるものであればよい。
【0036】
すなわち、不連続部21は、左右独立温度コントロール仕様のフットダクトとして機能する点からするとできるだけ小さい方がよいが、風漏れを防止する目的からすると、ある程度の密着領域を形成できる寸法が好ましい。これらの点からすると、不連続部21の流路の流れ方向の寸法は、最低限5〜15mm程度必要であるが、10mm程度が好ましく、20mmを超えない寸法とするのがよい。
【0037】
図5は、他の実施例に係るフットダクトの後席用吹き出し口を示す図である。図5に示すように、このフットダクトでは、後席用吹き出し口15Aの不連続部21Aは、当接リブ22Aの下流側に隣接して設けられている。すなわち、上流側リブ19Aは、当接リブ22Aの上流側まで設けられ、当接リブ22Aの下流側に隣接する不連続部21Aの下流側に下流側リブ20Aが設けられている。
【0038】
このようなフットダクトでは、後席用ダクトを連結した場合、後席用ダクトの端部が不連続部21Aの外周面に密着すると同時に当接リブ22Aに当接するので、連結部からの風漏れをより確実に防止できるという効果を奏する。
【0039】
本発明に係るフットダクトは、上述した各実施例の構造に限定されるものではない。
【0040】
例えば、後席用吹き出し口の当接リブは必ずしも設ける必要はない。また、当接リブではなく、又は当接リブに追加して、嵌合の際に乗り越えて離脱を規制するリブを設けてもよい。
【0041】
また、本発明のフットダクトは、ブロー成形品とすると、安価に製造できると共に封止部の切断作業が容易になるというメリットがあるが、射出成形品など他の成形品としてもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両用の空調装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
11 フットダクト
12 導入口
13 運転席側用吹き出し口
14 助手席側吹き出し口
15 後席用吹き出し口
16 封止部
17 分割リブ
18 溝
19 上流側リブ
20 下流側リブ
21 不連続部
22 当接リブ
23 嵌合領域
31 後席用ダクト
32 嵌合口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置のフットモード用流路の下流側端部に連結される導入口と、この導入口からの流路に連通する、運転席用吹き出し口、助手席用吹き出し口、および後席用吹き出し口と、前記後席用吹き出し口の下流端が切断により開口可能な封止部と、前記導入口から前記後席用吹き出し口へ連通する流路を運転席側と助手席側とに分割する分割リブとを一体的に成形したフットダクトであって、
前記分割リブは前記後席用吹き出し口において一部不連続となり、前記導入口まで連続して設けられた上流側リブと、この上流側リブから間隔をおいて前記封止部まで設けられた下流側リブとからなる
ことを特徴とするフットダクト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のフットダクト構造において、
前記後席用吹き出し口は、前記封止部を切断して開口させた端部を後席用ダクトに挿入して嵌合する嵌合領域を具備し、前記上流側リブと前記下流側リブとの間の不連続部は前記嵌合領域に存在する
ことを特徴とするフットダクト構造。
【請求項3】
請求項2に記載のフットダクト構造において、
前記後席用吹き出し口の嵌合領域の上流側端の外周には、外側に突出する当接リブが設けられている
ことを特徴とするフットダクト構造。
【請求項4】
請求項3に記載のフットダクト構造において、
前記上流側リブは前記当接リブの上流側まで設けられ、前記不連続部は前記当接リブの下流側に隣接して存在する
ことを特徴とするフットダクト構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のフットダクトの前記後席用吹き出し口の封止部を切断して開口し、当該後席用吹き出し口に後席用ダクトを嵌合させた
ことを特徴とするフットダクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14298(P2013−14298A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150459(P2011−150459)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】