説明

フッ素化化合物の調製方法

【課題】2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの調製方法を提供する。
【解決手段】(i)1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る、ヘキサフルオロプロピレンの水素化段階;(ii)1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンを得る、前段階において得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの脱フッ化水素化段階;(iii)1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを得る、前段階において得られた1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの水素化段階;(iv)前段階において得られた1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの精製段階;(v)2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを得る、前段階において得られた1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの脱フッ化水素化段階;および(vi)前段階の2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの精製段階を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、フッ素化化合物、すなわちフッ素化化合物2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの調製方法である。
【背景技術】
【0002】
ヒドロフルオロカーボン(HFC)、特に2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)などのヒドロフルオロオレフィンは、それらの冷媒および熱媒液、消化剤、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体誘電体、モノマーまたは重合媒質、支持流体、研磨剤、乾燥剤ならびにエネルギー生産ユニット用流体の特性が知られている化合物である。オゾン層に対して潜在的に危険であるCFCおよびHCFCと異なり、HFOは、塩素を含まず、したがって、オゾン層に対して問題がない。
【0003】
1234yfの幾つかの製造方法が知られている。
【0004】
WO2008/002499は、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)の熱分解による2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)および1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)の混合物の製造方法を記載している。
【0005】
WO2008/002500は、脱フッ化水素化触媒を用いる1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)の触媒変換による、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)および1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)の混合物の製造方法を記載している。
【0006】
このように、これら2つの上記特許出願は、生成物HFO−1234zeの相当な部分を含む混合物の製造を標的にしている。
【0007】
WO2007/056194は、典型的にはKOHが最大50重量%の水溶液の水酸化カリウムまたは気相で、触媒、特にニッケル、炭素またはこれらの組合せに基づいた触媒の存在下のいずれかを用いるHFC−245ebの脱フッ化水素化によるHFO−1234yfの調製を記載している。
【0008】
文献のKnunyantsら、Journal of the USSR Academy of Sciences、Chemistry Department、「Reactions of Fluoro−olefins」、Report 13、「Catalytic hydrogenation of perfluoro−olefins」、1960年は、フッ素化化合物の多様な化学反応を明確に記載している。この文献は、アルミナに支持されたパラジウムに基づいた触媒を用い、温度を20℃から50℃に変化させ、次にこの値に維持する、HFPの実質的な定量的水素化を記載している。この文献は、KOHのジブチルエーテル懸濁液の中を通すことにより、わずか60%の収率で1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(HFO−1225ye)を生成する、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)の脱フッ化水素化を記載している。この文献は、アルミナに支持されたパラジウムからなる触媒を用いて1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)を得る、1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(HFO−1225ye)の水素化を記載している。この水素化の際に、水素化分解反応も起こり、顕著な量の1,1,1,2−テトラフルオロプロパンが生成される。この文献は、KOH粉末のジブチルエーテル懸濁液の中を通すことにより、わずか70%の収率で2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を得る、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)の脱フッ化水素化を記載している。これらの反応は、互いに独立して記載されているが、これらを組み合わせて、多様な量のフッ素を含む一連のエチレン、プロピレンおよびイソブチレン誘導体を合成することが可能であることが示されている。
【0009】
文献US−P−5396000は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)の触媒的な脱フッ化水素化により1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(HFO−1225ye)を得て、続く水素化により所望の化合物を生成する、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの調製を記載している。HFO−1225yeを得るHFC−236eaの脱ハロゲン化水素化は、気相において実施され、反応生成物は、1つの例において、続く反応器に直接運ばれ、そこで化合物HFC−245ebを得る化合物HFO−1225yeの水素化が起こる。この文献には、化合物HFC−236eaをヘキサフルオロプロピレン(HFP)の水素化によって得ることができることも示されている。
【0010】
文献US−P−5679875は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)の触媒的な脱フッ化水素化により1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(HFO−1225ye)を得て、続く水素化によって所望の化合物を生成する、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの調製を記載している。この反応は、気相において実施される。この文献には、化合物HFC−236eaをヘキサフルオロプロピレン(HFP)の水素化よって得ることができることも示されている。
【0011】
文献WO2008/030440は、HFO−1225yeを触媒の存在下で水素と反応させてHFC−245ebを得て、次にHFC−245ebを相間移動触媒および非水性、非アルコール性溶媒の存在下で塩基性水溶液と反応させる、HFO−1225yeからのHFO−1234yfの調製を記載している。
【0012】
文献WO2008/075017は、50重量%のKOH水溶液の存在下、150℃で1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)を得る、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)の脱フッ化水素化反応を説明する。相間移動触媒の不在下では、3時間半後の変換は、57.8%であり、HFO−1225yeへの選択性は、52.4%である(試験1)。相間移動触媒の存在下では、この変換は、わずか2.5時間後に達成され、選択性は実質的に不変である(試験4)。この文献の表2に示されているように、HFO−1225yeへの選択性を上昇させるためには、有機溶媒を使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2008/002499号
【特許文献2】国際公開第2008/002500号
【特許文献3】国際公開第2007/056194号
【特許文献4】米国特許出願公開第5,396,000号
【特許文献5】米国特許出願公開第5,679,875号
【特許文献6】国際公開第2008/030440号
【特許文献7】国際公開第2008/075017号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Knunyantsら、Journal of the USSR Academy of Sciences、Chemistry Department、「Reactions of Fluoro−olefins」、Report 13、「Catalytic hydrogenation of perfluoro−olefins」、1960年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
容易に入手可能であり、高い選択性で、好ましくは高い収率で、有利には高い生産高で所望の生成物をもたらす出発物質から、高純度のHFO−1234yfを調製する方法の必要性が存在する。
【0016】
出願人は、HFO−1234yfの製造方法の多様な段階において生じる幾つかの副産物、特にHFO−1234yfに近い沸点を有するものを、HFO−1234yfから分離することが困難であり、一般に高価である非常に厳密な条件を必要とすることに注目した。
【0017】
同様に、この方法の多様な段階における幾つかの未反応生成物または中間体生成物をHFO−1234yfから分離することは困難である。例としてはHFPを記述することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、上記記載の欠点を示さない高純度のHFO−1234yfの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの調製方法は、以下の段階:
(i)反応器において超化学量論的量の水素および触媒の存在下で1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る、ヘキサフルオロプロピレンの気相水素化の段階;
(ii)脱フッ化水素化触媒の存在下でまたは水および水酸化カリウムの混合物を使用して1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンを得る、前段階において得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの脱フッ化水素化の段階;
(iii)反応器において超化学量論的量の水素および触媒の存在下で1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを得る、前段階において得られた1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの気相水素化の段階;
(iv)前段階において得られた1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの精製の段階;
(v)脱フッ化水素化触媒の存在下でまたは水および水酸化カリウムの混合物を使用して2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを得る、精製した1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの脱フッ化水素化の段階;
(vi)前段階において得られた2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの精製の段階
を含む。
【0020】
本発明の方法は、以下の特徴:
−水素化段階(i)および/または(iii)は、単一段階もしくは多段階の断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施されること;
−HFC−236eaおよび未反応水素を含む、水素化段階(i)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(i)にリサイクルされること;
−水素化段階(i)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(i)において形成されたHFC−236eaの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付されること;
−HFC−245ebおよび未反応水素を含む、水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(iii)にリサイクルされること;
−水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(i)において形成されたHFC−245ebの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付されること;
−水酸化カリウムは、水およびKOH混合物の重量に対して、20から75重量%の量、有利には55から70重量%の量で段階(ii)および/または(v)の反応媒質に存在すること;
−水酸化カルシウムによる、脱フッ化水素化段階(ii)および/または(v)において共生成されるフッ化カリウムの処理の段階;
−脱フッ化水素化段階(ii)において得られる1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの精製の段階
の少なくとも1つを追加的に含むことができる。
【0021】
本発明により得られる2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの純度は、好ましくは99.5重量%を超え、有利には99.8重量%を超える。
【0022】
精製段階(iv)の目的は、脱フッ化水素化段階(v)のために意図される好ましくは98重量%を超える純度を有するHFC−245ebを得る目的のために、水素化段階(iii)からのHFC−245ebを含む流れを精製することである。
【0023】
この精製段階は、好ましくは、HFO−1234yfと同様の沸点(±10℃)を有する化合物を除去すること、またはHFC−245ebよりも少なくとも20℃低い、さらには少なくとも10℃低い沸点を有する前記化合物の前駆体を除去することから構成される。
【0024】
精製段階(iv)において除去される化合物は、好ましくは、ヘキサフルオロプロペン、シクロヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(ZおよびE異性体)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)および1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンから選択される。
【0025】
精製段階(iv)において除去される化合物は、有利には、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(ZおよびE異性体)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)および1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)から選択される。
【0026】
本発明の方法は、バッチ様式、半連続的または連続的に実施することができる。好ましくは、本発明の方法は、連続的に実施され、前段階からの流れは、任意の精製の後、続く段階に直接運ばれる。このようにして、高純度の化合物HFO−1234yfを調製するための経済的な方法が得られ、出発物質であるHFPは、低価格で商業的に容易に入手可能である。
【0027】
水素化段階(i)
水素化段階は、モル比が1.1から40、好ましくは2から15のH/HFPの存在下で実施することができる。
【0028】
水素化段階は、0.5から20バールの絶対圧、好ましくは1から5バールの絶対圧で実施することができる。
【0029】
水素化段階に使用することができる触媒として、例えば炭素、炭化ケイ素、アルミナまたはフッ化アルミニウムに場合により支持されているVIII族の金属またはレニウムに基づいた触媒を、特に記述することができる。
【0030】
金属として、有利には炭素またはアルミナに支持されたプラチナまたはパラジウム、特にパラジウムを使用することができる。この金属を、銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデンおよびタリウムなどの別の金属と組み合わせることも可能である。
【0031】
触媒は、押出物、ペレットまたはビーズの、あらゆる適切な形態で存在することができる。
【0032】
好ましくは、アルミナまたは炭素に支持されたパラジウムを0.05から10重量%、有利には0.1から5重量%含む触媒が使用される。
【0033】
水素化段階は、反応器の入口温度が30から200℃、好ましくは30から100℃であり、反応器の出口温度が50から250℃、好ましくは80から150℃であるような条件下において、実施することができる。
【0034】
接触時間(標準温度および圧力条件下での触媒と総気体流の容積比)は、好ましくは0.2から10秒、有利には1から5秒である。
【0035】
この水素化段階は、場合により多段階断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施することができる。
【0036】
HFPの水素化の段階は、実質的に定量である。
【0037】
好ましくは、HFC−236eaおよび未反応水素を含む、水素化段階(i)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(i)にリサイクルされる。
【0038】
有利には、水素化段階(i)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(i)において形成されたHFC−236eaの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付される。
【0039】
好ましくは、凝縮段階は、0から50℃の温度、0.5から20バールの絶対圧、有利には1から5バールの絶対圧で実施される。
【0040】
好ましくは、凝縮段階は、段階(i)の出口において1から30%のHFC−236eaが凝縮され、有利には2から10%が凝縮されるような条件下において実施される。
【0041】
非凝縮画分は、場合により加熱された後、続いて水素化段階(i)にリサイクルされる。
【0042】
脱フッ化水素化段階(ii)
段階(i)において形成されたHFC−236eaは、任意の凝縮および蒸発の後、続いて、好ましくは水酸化カリウムを使用し、有利には撹拌反応器において実施される脱フッ化水素化の段階に付される。水酸化カリウムは、好ましくは、水およびKOH混合物の重量に対して20から75重量%の量、有利には55から70重量%の量で反応媒質に存在する。
【0043】
脱フッ化水素化段階のKOHを含む水性反応媒質は、好ましくは80から180℃の温度、有利には125から180℃の温度に維持される。反応媒質の特に好ましい温度は、145から165℃である。
【0044】
KOHを使用する脱フッ化水素化の段階は、0.5から20バールの圧力で実施することができるが、0.5から5バールの絶対圧、より有利には1.1から2.5バールの絶対圧で稼働することが好ましい。
【0045】
フッ化カリウムは、KOHを使用する脱フッ化水素化の段階において形成される。
【0046】
本発明の方法は、脱フッ化水素化段階において共生成されたフッ化カリウムが、水性反応媒質中の水酸化カルシウムと好ましくは50から150℃の温度、有利には70から120℃の温度、より有利には70から100℃の温度で接触する、処理段階を含むことができる。
【0047】
この処理段階は、任意の希釈の後、好ましくは、フッ化カリウム、水酸化カリウムおよび水を含む脱フッ化水素化段階からの反応媒質の一部を含む反応器に、水酸化カルシウムを導入することによって実施される。
【0048】
フッ化カリウムは、好ましくは、脱フッ化水素化段階からの反応媒質に対して4から45重量%、有利には7から20重量%で存在する。
【0049】
処理の反応媒質は、好ましくは、媒質中の水酸化カリウムおよび水の総重量に対して4から50重量%の水酸化カリウム、有利には10から35重量%の水酸化カリウムを含む。
【0050】
水酸化カルシウムによる処理の段階は、脱フッ化水素化段階にリサイクルすることができる水酸化カリウムの再生を可能にし、例えば濾過および沈降による分離後に価値を回収することができる商業品質のフッ化カルシウムを得ることを可能にする。
【0051】
平均粒径が20から35μm(粒径分布の50重量%での平均寸法)のフッ化カルシウムが、この処理段階の好ましい条件下で得られる。
【0052】
水酸化カルシウムによる処理の段階は、当業者に既知のあらゆる種類の反応器、例えば撹拌反応器において実施することができる。
【0053】
水素化段階(iii)
段階(ii)において得られたHFO−1225yeは、場合により精製の後、触媒の存在下で水素化の段階に付される。
【0054】
HFO−1225yeの精製は、第1の蒸留における軽い不純物の除去および第2の蒸留における重い不純物の除去の二重蒸留を含むことができる。
【0055】
水素化段階は、モル比が1.1から40、好ましくは2から15のH/HFO−1225yeの存在下で実施することができる。
【0056】
水素化段階は、0.5から20バールの絶対圧、好ましくは1から5バールの絶対圧で実施することができる。
【0057】
水素化段階に使用することができる触媒として、例えば炭素、炭化ケイ素、アルミナまたはフッ化アルミニウムに場合により支持されているVIII族の金属またはレニウムに基づいた触媒を、特に記述することができる。
【0058】
金属として、有利には炭素またはアルミナに支持されたプラチナまたはパラジウム、特にパラジウムを使用することができる。この金属を、銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデンおよびタリウムなどの別の金属と組み合わせることも可能である。
【0059】
触媒は、押出物、ペレットまたはビーズの、あらゆる適切な形態で存在することができる。
【0060】
好ましくは、アルミナまたは炭素に支持されたパラジウムを0.05から10重量%、有利には0.1から5重量%含む触媒が使用される。
【0061】
水素化段階は、反応器の入口温度が50から200℃、好ましくは80から140℃であり、反応器の出口温度が80から250℃、好ましくは110から160℃であるような条件下において、実施することができる。
【0062】
接触時間(標準温度および圧力条件下での触媒と総気体流の容積比)は、好ましくは0.2から10秒、有利には1から5秒である。
【0063】
この水素化段階は、場合により多段階断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施することができる。
【0064】
HFO−1225yeの水素化の段階は、実質的に定量である。
【0065】
好ましくは、HFC−245ebおよび未反応水素を含む、水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(iii)にリサイクルされる。
【0066】
有利には、水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(iii)において形成されたHFC−245ebの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付される。
【0067】
好ましくは、凝縮段階は、0から50℃の温度、0.5から20バールの絶対圧、有利には1から5バールの絶対圧で実施される。
【0068】
好ましくは、凝縮段階は、段階(iii)の出口において1から30%のHFC−245ebが凝縮され、有利には2から10%が凝縮されるような条件下において実施される。
【0069】
非凝縮画分は、場合により加熱された後、続いて水素化段階(iii)にリサイクルされる。
【0070】
精製段階(iv)
水素化段階(iii)において得られたHFC−245ebは、任意の凝縮の後、脱フッ化水素化段階(v)のために意図される好ましくは98重量%を超える純度を有するHFC−245ebを得る目的のために、精製段階に付される。
【0071】
この精製段階は、好ましくは、HFO−1234yfと同様の沸点を有する化合物を除去すること、またはHFC−245ebよりも少なくとも20℃低い、それどころか、さらには少なくとも10℃低い沸点を有する前記化合物の前駆体を除去することから構成される。
【0072】
これらの化合物は、この方法の多様な段階からの副産物、この方法の多様な段階の未反応反応体および/または中間体であることができる。
【0073】
この精製段階は、好ましくは、1から20バールの絶対圧、有利には5から10バールの絶対圧で実施される少なくとも1つの従来の蒸留段階を含む。
【0074】
脱フッ化水素化段階(v)
好ましくは98重量%を超える純度の段階(iv)において精製されたHFC−245ebは、続いて、好ましくは水酸化カリウムを使用し、有利には撹拌反応器において実施される脱フッ化水素化の段階に付される。水酸化カリウムは、好ましくは、水およびKOH混合物の重量に対して、20から75重量%の量、有利には55から70重量%の量で反応媒質に存在する。
【0075】
脱フッ化水素化段階のKOHを含む水性反応媒質は、好ましくは80から180℃の温度、有利には125から180℃の温度に維持される。反応媒質の特に好ましい温度は、145から165℃である。
【0076】
脱フッ化水素化段階は、0.5から20バールの圧力で実施することができるが、0.5から5バールの絶対圧、より有利には1.1から2.5バールの絶対圧で稼働することが好ましい。
【0077】
フッ化カリウムは、KOHを使用する脱フッ化水素化の段階において形成される。
【0078】
本発明の方法は、脱フッ化水素化段階において共生成されたフッ化カリウムが、水性反応媒質中の水酸化カルシウムと好ましくは50から150℃の温度、有利には70から120℃の温度、より有利には70から100℃の温度で接触する、処理段階を含むことができる。
【0079】
この処理段階は、任意の希釈の後、好ましくは、フッ化カリウム、水酸化カリウムおよび水を含む脱フッ化水素化段階からの反応媒質の一部を含む反応器に、水酸化カルシウムを導入することによって実施される。
【0080】
フッ化カリウムは、好ましくは、脱フッ化水素化段階からの反応媒質に対して4から45重量%、有利には7から20重量%で存在する。
【0081】
処理の反応媒質は、好ましくは、媒質中の水酸化カリウムおよび水の総重量に対して4から50重量%の水酸化カリウム、有利には10から35重量%の水酸化カリウムを含む。
【0082】
水酸化カルシウムによる処理の段階は、脱フッ化水素化段階にリサイクルすることができる水酸化カリウムの再生を可能にし、例えば濾過および沈降による分離後に価値を回収することができる商業品質のフッ化カルシウムを得ることを可能にする。
【0083】
平均粒径が20から35μm(粒径分布の50重量%での平均寸法)のフッ化カルシウムが、この処理段階の好ましい条件下で得られる。
【0084】
水酸化カルシウムによる処理の段階を、当業者に既知のあらゆる種類の反応器、例えば撹拌反応器において実施することができる。
【0085】
精製段階(vi)
HFO−1234yf、未反応HFC−245ebおよび副産物を含む脱フッ化水素化段階(v)の終結時の気体流は、少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.8重量%の純度を有するHFO−1234yfを得る精製段階に付される。
【0086】
精製は、好ましくは、軽い不純物、特にトリフルオロプロピンを分離する第1蒸留段階および重い不純物、特にHFC−245ebからHFO−1234yfを分離する第2蒸留段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は本発明の特に好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明の特に好ましい実施形態(図1)によると、(i)ヘキサフルオロプロピレン(1)を、断熱反応器(100)において触媒の存在下で気体相中の超化学量論的量の水素(2)と連続的に反応させて、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得、この反応によりもたらされた気体出力流の一部(13)はリサイクルする;(ii)1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む段階(i)からもたらされた出力流の非再利用部分(3)を、反応媒質の水およびKOH混合物の重量に対して20から75重量%の量、好ましくは55から70重量%の量で水性反応媒質(200)に存在する水酸化カリウム(4)と反応させ、80から180℃の温度、好ましくは145から165℃の温度に維持して、1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンおよびフッ化カリウムを得る;(iii)段階(ii)において得られた1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(6)を、断熱反応器(300)において触媒の存在下で気体相中の超化学量論的量の水素(2)と反応させて、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを得て、この反応によりもたらされた気体出力流の一部(14)をリサイクルする;(iv)1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを含む段階(iii)からもたらされた出力流の非再利用部分(7)を、精製段階(400)に付して、不純物(8)を除去し、このようにして、純度が好ましくは98重量%を超える1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを得る;(v)精製段階(iv)の後に得た1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを、反応媒質の水およびKOH混合物の重量に対して20から75重量%の量、好ましくは55から70重量%の量で水性反応媒質(500)に存在する水酸化カリウム(4)と反応させ、80から180℃の温度、好ましくは145から165℃の温度に維持して、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンおよびフッ化カリウムを得る;(vi)HFO−1234yf、未反応HFC−245ebおよび副産物を含む脱フッ化水素化段階(v)からもたらされた気体流(9)を精製段階(600)に付して、99.5重量%を超える、好ましくは99.8重量%を超える純度を有するHFO−1234yf(12)を得る。HFO−1234yfから分離された軽い副産物(10)を処理に付すことができ、未反応HFC−245eb(11)を(500)にリサイクルすることができる。
【0089】
段階(iv)の精製は、好ましくは、1から20バールの絶対圧での従来の蒸留を含む。
【0090】
段階(ii)および段階(v)において形成されたフッ化カリウム(5)を、上記に記載された条件下で水酸化カルシウムによる処理に付して、水酸化カリウムを再生することができ、フッ化カルシウムを形成することができる。
【0091】
段階(ii)において得られたHFO−1225yeを、段階(iii)の水素化反応の前に精製段階(700)、好ましくは二重蒸留に付すことができる。
【0092】
水素化段階(i)および/または(iii)の終結時の気体出力流を部分的に凝縮することができ、未反応水素をすべて含む未凝縮部分が再利用される。
【0093】
水素化段階(i)および(iii)を上記に記載した条件下で実施することができる。
【0094】
実験部分
1gのヘキサフルオロプロペン、1gのシクロヘキサフルオロプロペン、1gのHFO−1234yf、0.2gのHFC−134a、1gのHFO−1243zf、0.1gのHFO−1225zc、10gのHFO−1225ye(ZまたはE)、40gのHFC−254eb、0.01gのHFC−143、1gのHFC−236ea、0.5gのフッ化水素酸および944.19gのHFC−245ebを含む混合物を、40段の理論段を含むカラムにおいて蒸留する。
【0095】
蒸留を、およそ80℃のカラム底部温度および50℃の上部温度により6バールの絶対圧で実施する。
【0096】
蒸留の終了時に、カラム底部を分析し、0.001gのHFC−143、0.094gのHFC−236eaおよび938gのHFC−245ebが見出される。他の化合物をカラム上部から除去した。
【0097】
蒸留したHFC−245ebを、続いて、水および水酸化カリウム混合物の存在下、撹拌反応器において脱フッ化水素化段階に付す。混合物を150℃に維持し、混合物中のKOHは、水/KOHの総重量に対して65重量%を表す。
【0098】
形成されたHFO−1234yfを凝縮し、次に、最初に13バールの圧力および60℃の底部温度に維持して、トリフルオロプロピンを分離し、続いて11バールの圧力および50℃の上部温度に維持して、上部に99.9重量%を超える純度のHFO−1234yfを得る、カラムにおける蒸留に付す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階:
(i)反応器において超化学量論的量の水素および触媒の存在下で1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る、ヘキサフルオロプロピレンの気相水素化の段階;
(ii)脱フッ化水素化触媒の存在下でまたは水および水酸化カリウムの混合物を使用して1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンを得る、前段階において得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの脱フッ化水素化の段階;
(iii)反応器において超化学量論的量の水素および触媒の存在下で1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを得る、前段階において得られた1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの気相水素化の段階;
(iv)前段階において得られた1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの精製の段階;
(v)脱フッ化水素化触媒の存在下でまたは水および水酸化カリウムの混合物を使用して2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを得る、精製した1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの脱フッ化水素化の段階;
(vi)前段階において得られた2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの精製の段階
を含む、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの調製方法。
【請求項2】
(iv)における1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの精製が、1から20バールの絶対圧での蒸留段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(iv)において除去される化合物が、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンよりも少なくとも20℃低い、実にさらには少なくとも10℃低い沸点を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水酸化カリウムが、段階(ii)および/または(v)の水/水酸化カリウム混合物の重量に基づいて55から75重量%に相当する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
段階(ii)および/または段階(v)が、80から180℃の温度、好ましくは145から165℃の温度で実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
段階(ii)からの流れが、段階(iii)へ運ばれる前に精製段階に付されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
精製が二重蒸留を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
連続的に実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
段階(i)および/または段階(iii)が、場合により多段階断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
段階(i)および/または段階(iii)からもたらされる気体出力流の一部が、リサイクルされることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
段階(i)および/または(iii)からもたらされる気体出力流が、部分凝縮の段階に付されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
脱フッ化水素化段階(ii)および脱フッ化水素化段階(v)において共生成されたフッ化カリウムの、水酸化カルシウムによる処理の段階を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
段階(i)および/または段階(iii)の触媒が、アルミナまたは炭素に支持されたパラジウムを0.05から10重量%、好ましくは0.1から5重量%含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
段階(i)が、30から100℃の反応器の入口温度で実施されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
段階(iii)が、80から140℃の反応器の入口温度で実施されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
99.5重量%を超える、好ましくは99.5重量%を超える純度を有する2,3,3,3−テトラフルオロプロペン。

【図1】
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