説明

フッ素化液を用いる水の前処理ユニット

本発明は、熱処理および/またはイオン処理によって、水、特に塩水を前処理するためのユニットを提供する。さらに詳細には、1.25を超える密度を有する水と混和性でないフッ素化液を含む、連続相または分散相を有する、直接接触の熱交換器および/またはイオン交換器を備える前処理ユニットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に熱処理および/またはイオン処理による、水、詳細には塩水の前処理のためのユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
淡水はますます不足して来ているので、塩水(海水、汽水、ブライン)を脱塩するためのプロセスは、これまで以上に求められてきている。しかし、このようなプロセスに関連するコストは、高いままであって、それらの環境的な影響を伴う。既存のプロセスは、これまで以上に高価な技術(物理的、化学的、生物学的および/または膜プロセス)を使用する頻度が高い。このような技術を改善するための1つの解決法は、淡水への塩水の変換の度合を有意に増大することであろう。しかし、塩水、特に海水の前処理のための今日のプロセスでは、スケーリングする塩の存在に起因してこの変換の度合が50%を超えて増大することは現在不可能である。「塩水の淡水への変換の度合(degree of conversion)」という用語は、塩水の処理ユニットあたりに生成される淡水の画分を意味する。この変換度合を増大することによって以下が可能になるであろう:
・淡水の相対的生成の増大;
・前処理すべき塩水の相対量の減少;
・脱塩ユニットの大きさの減少;
・脱塩に関連するエネルギー消費の減少;および
・流出液をより安価にするように流出液中の塩の量を増大することによって産生されるブラインの量の減少;ならびに熱および/または化学汚染の低下に起因する環状的影響の減少。
【0003】
このように変換の度合を増大することが不可能であることは、主に、カルシウム塩およびマグネシウム塩に関連するスケーリングの問題に起因する。この塩のいくつかは、低い溶解度を有し、そして他の塩は、逆溶解度を有する:それらは、温度が高すぎるとすぐに沈殿する。さらに、海水に関しては、塩、例えば、CaCO、Mg(OH)、またはCaSO沈殿物は、変換の度合が50%超に達すればすぐに大気温度で沈殿し、これが、臨界段階に相当する(ここで、濃縮物の塩の濃度は、供給流量の濃度の倍である)。装置のスケーリングによって、流動セクションの減少、熱交換器の熱移動係数の低下、および/または膜の細孔の閉塞が生じる。
【0004】
スケーリングに対抗するには、種々の処理が提唱されている:
・消石灰(lime)Ca(OH)を用いる炭素除去:その前処理プロセスは、消石灰の取扱および使用に固有の不利益を被る。さらに、2倍程度多いCaCO塩が沈殿され、そのため、処理すべきスラッジの容積も2倍になる。そのプロセスは、それがまた、排除困難な炭酸マグネシウムも生じるという点、および処理すべき水に存在する他のイオンを沈殿させるために、NaCOなどの他の化合物を添加することによって完了しなければならない頻度が高いという点で不満足である;
・酸炭素除去(acid decarbonization);上記のとおり、その技術は、強力な酸(HSO、HClなど)の操作および定期的な添加に関連する不利益を被る。さらに、これは、防蝕剤の使用を要し、そのため、費用および化学的汚染が増大する;
・シーディング(seeding):その技術は、処理すべき水に導入されている結晶シード上にスケーリングを沈着させるものである。これは、閉塞の間に固化のリスクを招き、これによっておそらく、その開発がないことが説明される;
・樹脂軟水化(resin softening):この技術では、カルシウムイオンCa2+、およびMg2+は、イオン交換樹脂を用いて置き換えられ、それらの樹脂は、その後再生される。そのプロセスの不利な点は、その使用が一般に不連続なサイクル中にあること、低い樹脂結合および再生率、ならびに設置費用が高いことである;
・脱スケーリング物の使用:その技術は、最も広範であって、スケーリングの沈着を回避するかまたは最小化するための、極めて低用量(2〜3ppm[百万分の一])のポリホスフェート、オルガノホスフェート、またはカルボキシリックポリマーの注入から構成される。これは、脱スケーリング組成物を取り扱うことおよび投与すること、ならびに70℃を超える温度に対して耐性が低いことのせいで不利益を被る。さらに、それらの組成物は、生物有機体によるファウリング(付着)を増大し得、かつ水変換の度合を有意に増大できない。
【0005】
ファウリング(fouling)現象に対抗するため、浄化(clarification)液および濾過液も存在する。「ファウリング」という用語は、導管の壁上のスラッジのゲル状の蓄積を意味し、これは、水中に存在する生物体の生物学的活性から生じる。それらの解決法は一般には、サンドフィルター、マルチ・チューブ・フィルター、限外濾過または精密濾過、凝固および凝結、デカンテーションおよびショック塩素化酸化処理を用いて構成される。
【0006】
結局、溶存した二酸素(dioxygen)および二酸化炭素の存在から、高い塩化物イオン含量から、高い水伝導率から、または汚染から生じる腐蝕に対抗するため、脱気装置の使用、酸炭素除去(HSO、HCl)、高圧循環中の金属としてのステンレス鋼の使用、および化学的消泡剤の使用を含めて、種々の技術が用いられ得る。
【0007】
これらの全ての解決法は、環境中への放出の前の、取扱および処理に関して問題である化合物の使用を要する。さらに、生じるコストがかなりかさむ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、特定のイオンを抽出するため、および/またはスケーリングの沈殿を妨げ、一方で有用な化学的試薬の使用を最小化する、炭酸塩(または硫酸塩)型の軽金属(アルカリ金属、またはアルカリ土類金属、ベリリウム、アルミニウム、マグネシウム)の特定の塩の制御された沈殿のために、直接接触交換器を用いることによって、淡水へ処理すべき水の変換の度合の有意な増大を提供し得る前処理ユニットを提供する。
【0009】
直接接触交換器は、2つの液体を隔てる物理的壁の非存在下で2つの液体の間の移動を確保する工業的デバイスを構成する。この移動は、詳細には熱の移動(直接接触熱交換器)および/またはイオンの移動(直接接触イオン交換器)であり得る。実際には、直接接触熱交換器および/または直接接触イオン交換器は、フッ素化相と処理すべき水との間で熱移動および/またはイオン移動を行うものである。「処理すべき水」という用語は、塩水(海水、汽水、ブライン)および流出物(ヒトの活動から直接または間接的に生じる汚染物および鉱物または生物学的不純物を有する水)を意味する。有利には、本発明の交換器は特に、炭化水素によって汚染された水の処理に適している。交換器は、例えば、カラムを備える。
【0010】
さらに詳細には、本発明によれば、水、詳細には、塩水の前処理のためのユニットが提供され、このユニットは、直接の接触交換器を備え、ここでは連続または分散のフッ素化相が、1.25を超える密度の水と混和性でないフッ素化液を含む。好ましくは、直接接触交換器は、熱交換器および/またはイオン交換器である。用いられるフッ素化相次第で、フッ素化相と処理すべき水との間で行われる移動は、熱移動であっても、もしくはイオン移動であっても、または熱およびイオン移動が同時であってもよい。
【0011】
水と混和性でないフッ素化液とは、例えば、疎水性である。
【0012】
本発明の前処理ユニットを用いて、少なくとも一部は、化学的前処理を置き換える、特に効率的である熱前処理の使用によって、脱塩プロセスにおける淡水への変換の度合を実質的に改善し得る。
【0013】
直接接触熱交換器を用いることは、処理すべき水の温度が以下を保証するのに十分上昇され得ることを意味する:
・二酸素(酸素分子)、二窒素(窒素分子)または二酸化炭素などの非凝縮ガスを除去するためのその水の自然な脱気;
・CaCO、Mg(OH)、CaSO型の逆溶解度塩の沈殿;
・CaF、BaSO、SrSOなどの、この温度で低溶解性である塩の沈殿;
・生物学的機能を維持可能であるには高すぎる温度で十分な時間滞留させることによる好気性または嫌気性の微生物の死滅;
・溶存した揮発性有機化合物のエバポレーション
これらの現象の結果は、二酸素または二酸化炭素などの腐食性ガスの存在に起因した腐食による問題を回避すること、ファウリングを回避すること、および上記の全てであって、プロセスの工程において炭酸塩硬度に関連する塩を沈殿することであり、ここでは、前述の沈殿はデバイスに影響しない。
【0014】
詳細には、この前処理ユニットを用いれば、より高温で作動する下流のプロセス、例えば、多重蒸留法(multiple distillation)(MED)、多段フラッシュ蒸留法(multistage flash distillation)(MSF)または膜蒸留法を、改善された生産性およびエネルギー効率で行うことが可能になり得る。本発明の前処理ユニットと組み合わせたこのようなプロセスによって、50%を超え、かつ可能性としては最大90%までという変換の度合までチャンスが得られる。
【0015】
さらに、フッ素化熱交換液と処理すべき水との間の特定の界面張力を有する水と混和性でない高密度の前述のフッ素化液の組み合わせは、この沈殿した塩が、この2つの相の境界で浮遊し得ることを意味する。従って前述の塩は交換器または結晶化タンクで容易に回収できる。
【0016】
イオン交換器の使用とは、イオンを負荷した(laden)水を前処理する場合には(直接接触イオン交換器が吸収交換器である場合)、イオンが、イオンを負荷された処理すべき水からフッ素化合相に交換され得ることを意味する。従って、前処理した水は、処理すべき水からフッ素化相へのイオン交換または抽出の関数として軟水にされるか、および/または脱塩される。
【0017】
イオン交換器を用いるとはまた、イオンを負荷されたフッ素化相を再生する場合(直接接触イオン交換器が、再生交換器である場合)、イオンは、イオンを負荷されたフッ素化相から再生水へ交換され得ることを意味する。従って、このフッ素化相は、そのイオンを枯渇されて、イオンを負荷された水の前処理のためのフッ素化相として機能するように再使用されてもよい。
【0018】
有利には、水と混和性でないフッ素化液は、1以下の実数値に等しいm/p比で規定され、ここで「m」および「p」は、水と混和性でないフッ素化液の分子に含まれる水素原子の数およびフッ素原子の数である.
好ましくは、フッ素化相の水と混和性でないフッ素化液は、実験式Cを有する化合物であり、ここで:
・C、H、F、N、O、Sはそれぞれ、炭素、水素、フッ素、窒素、酸素およびイオウの原子に相当し;
は、3〜25の範囲、好ましくは、3〜12の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、0〜27の範囲、好ましくは、0〜20の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、5〜54の範囲、好ましくは、5〜27の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、0〜6の範囲、好ましくは、0〜3の範囲の整数であり(境界値を含む);かつ
は、0〜10の範囲、好ましくは、0〜7の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、0〜6の範囲、好ましくは、0〜3の範囲の整数である(境界値を含む)。
【0019】
詳細には、本発明は、以下のファミリーのうちの1つに属する液体を目的とする:
ペルフルオロカーボン(PFC)またはヒドロフルオロカーボン(HFC)液およびそれらの誘導体およびイオン液。
【0020】
さらに詳細には、本発明は、ペルフルオロエーテル類(PFE)、ヒドロフルオロエーテル類(HFE)、ペルフルオロポリエーテル類(PFPE)、ヒドロフルオロポリエーテル類(HFPE)、ペルフルオロ化アミン類(PFA)、好ましくは三元の(PFTA)、ヒドロフルオロ化アミン類(HFA)、好ましくは三元の(ternary)(HFTA)、ペルフルオロ化ポリアミン類(PFPA)、ヒドロフルオロ化ポリアミン類(HFPA)、ペルフルオロチオエーテル類(PFTE)、ヒドロフルオロチオエーテル類(HFTE)、ペルフルオロポリチオエーテル類(PFPTE)、ヒドロフルオロポリチオエーテル類(HFPTE)、ヒドロフルオロチオエーテルアミン類(HFTEA)、ペルフルオロアザシクロヘキサン類、ペルフルオロエーテルアミン類、ヒドロフルオロエーテルアミン類(HFEA)、ペルフルオロチオエーテルアミン類、ペルフルオロエチレンアルコール類、ペルフルオロシクロヘキサン類、ヒドロフルオロシクロヘキサン類、ペルフルオロデカリン類、ペルフルオロシクロエーテル類、ヒドロフルオロシクロエーテル類、ペルフルオロシクロチオエーテル類、ヒドロフルオロシクロチオエーテル類および疎水性イオン液(これはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン類(TF2N)に基づく場合がある)を目的としている。
【0021】
前述のペルフルオロ化またはヒドロフルオロ化分子は、直鎖または分岐した炭素鎖を有し得る。好ましくは、前述の分子は、最大の沸点を上昇し、かつ水との混和性を最小化するための直鎖状の炭素鎖を有する。有利には、任意の水素原子を、好ましくは、酸官能基もしくはアミン官能基上に、またはデフォールト(default)として、1つまたは2つの炭素原子を含む炭素鎖上に置く。
【0022】
このような熱交換液を用いることは、処理すべき水との最大の熱移動があることを意味する。さらに前述の液体は、非毒性、非可燃性、不活性、オゾン層親和性、非極性もしくはわずかに極性、無色でかつ無臭、または非生体蓄積性および生分解性でさえある。
【0023】
「ペルフルオロカーボン類」という用語は、実験式Cを有する化合物を意味し、ここでC、、Fおよびは上記のとおりである。
【0024】
さらに詳細には、「ペルフルオロカーボン誘導体」という用語は、窒素、酸素および/またはイオウから選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換されるペルフルオロカーボン化合物を意味する。従って、それらは、実験式C、C、C、C、C、C、Cを有する化合物であり、ここでC、F、N、O、S、は上記のとおりである。さらに好ましくは、それらは、ペルフルオロシクロヘキサン類、ペルフルオロデカリン類、ペルフルオロアルキルアミン類、−ジアルキルアミン類または−トリアルキルアミン類、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロシクロエーテル類、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロチオエーテル類、またはペルフルオロポリチオエーテル類である。
【0025】
好ましくは、フッ素化相の液体は、全体的な加温現象におけるそれらの関与に特に関して、比較的低い環境への影響のために、フッ化水素化液(またはヒドロフルオロカーボン類)から選択される。
【0026】
「ヒドロフルオロカーボン類」という用語は、実験式Cを有する化合物を意味し、ここでC、H、F、およびは上記のとおりである。
【0027】
好ましくは、フッ素化相の液体は、ヒドロフルオロカーボン化合物または誘導体を含む。
【0028】
「ヒドロフルオロカーボン誘導体」という用語は、窒素、酸素、および/またはイオウから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むヒドロフルオロカーボン化合物を意味する。さらに詳細には、それらは、実験式C、C、C、C、C、CおよびCを有する化合物であり、ここでC、H、F、N、O、Sおよびは上記のとおりである。好ましくは、前述の化合物は、ヒドロフルオロシクロヘキサン、ヒドロフルオロデカリン類、ヒドロフルオロエーテル類、ヒドロフルオロシクロエーテル類、ヒドロフルオロポリエーテル類、ヒドロフルオロチオエーテル類、ヒドロフルオロポリチオエーテル類、ヒドロフルオロアルキルアミン類、ヒドロフルオロジアルキルアミン類、ヒドロフルオロポリアルキルアミン類、ヒドロフルオロヒドラジン類、ヒドロフルオロチオエーテルアルキルアミン類、ヒドロフルオロエーテルアミン類、ヒドロフルオロエーテルポリアミン類およびイオン性の液体である。
【0029】
好ましくは、水素およびフッ素に関して飽和されているペルフルオロカーボン類およびヒドロフルオロカーボン類が選択される。好ましくは、この化合物は、上記のようにおよびについて以下であるように選択される:
・m+p=2n+q+2(環を含まない化合物について);
・m+p=2n+q(環または酸素もしくはイオウとの二重結合を含む化合物について);および
・m+p=2n+q(2つの環または酸素もしくはイオウとの2つの二重結合を含む化合物について、あるいは1つの環および酸素もしくはイオウとの1つの二重結合を含む化合物について)。
【0030】
本発明による好ましい化合物は、下の実施例1の表1に詳細に記載される(「疎水性フッ素化液」)。
【0031】
一実施形態では、この交換器は、イオン交換器であって、ここでこのフッ素化相はさらに、フッ素化イオン交換液を含み、この液体は、1つ以上のイオン性および/または非イオン性のフッ素化界面活性剤(単数または複数)を含んでいる。好ましくは、このフッ素化イオン交換液は、1つ以上のイオン性および/または非イオン性フッ素化界面活性剤(単数または複数)によって構成される。この実施形態では、水と混和性でないフッ素化液は、溶媒としてのその機能のために主に用いられるが、その熱交換機能について用いられるのではない。その結果、フッ素化相は連続状または分散状である。
【0032】
別の実施形態では、この交換器は、イオンおよび熱についての交換器、すなわち、熱交換器およびイオン交換器である。次いで、水と混和性でないフッ素化液を、その熱交換機能および溶媒機能のために用いる。このような状況のもとでは、フッ素化相は、連続状である。
【0033】
非イオン性フッ素化界面活性剤は、イオン交換機能と、フッ素化相中の水滴の凝集(coalescence)を制限する機能とを同時に行い得る。フッ素化相が、複数の非イオン性フッ素化界面活性剤を含む場合、各々の非イオン性フッ素化界面活性剤は同時に、イオン交換の機能と、フッ素化相中の水滴の凝集を制限する機能とを同時に行い得る。非イオン性フッ素化界面活性剤は、イオン交換の機能、またはフッ素化相中の水滴の凝集を制限する機能を単独で実現し得る。フッ素化相が、複数の非イオン性フッ素化界面活性剤を含む場合、各々の非イオン性フッ素化界面活性剤は、イオン交換の機能、またはフッ素化相中の水滴の凝集を制限する機能を単独で実行し得る。最終的に、1つ以上の非イオン性界面活性剤は、イオン交換の機能、またはフッ素化相中の水滴の凝集を制限する機能を単独で実現し得るが、1つ以上の非イオン性界面活性剤は同時に、イオン交換の機能と、フッ素化相中の水滴の凝集を制限する機能とを実行し得る。
【0034】
処理すべき水の中のイオンを前処理に供する場合(例えば、吸収による)、イオン性および/または非イオン性のフッ素化界面活性剤は、交換またはイオン抽出の機能、すなわち、処理すべき水からフッ素化相中へのイオンの交換または抽出を実行し得る。対照的に、イオンを負荷されたフッ素化相を再生に供する場合、例えば、処理すべき水の中のイオンの処理から誘導される、イオンを負荷されたフッ素化相、イオン性および/または非イオン性フッ素化界面活性剤は、フッ素化相を再生するために、イオンを負荷されたフッ素化相から再生水へのイオンの交換または抽出の機能を実行する。
【0035】
好ましい実施形態では、フッ素化相は、0.5%〜30%(重量)のイオン性フッ素化界面活性剤および/または非イオン性フッ素化界面活性剤、好ましくは1%〜5%(境界値を含む)のイオン性フッ素化界面活性剤および/または非イオン性フッ素化界面活性剤を含む。
【0036】
好ましくは、フッ素化イオン交換液は、陰イオン性フッ素化交換液(または界面活性剤)(AFEL)および/または陽イオン性フッ素化交換液(または界面活性剤)(CFEL)を含む。種々の場合に、このフッ素化イオン交換液は、複数のAFELおよび/またはCFELを含む。このような化合物は、例えば、ペルフルオロ化カルボン酸塩類(ペルフルオロカルボキシラート)、フッ化水素化カルボン酸塩類、ペルフルオロ化アルコキシド塩類(ペルフルオロアルコキシド)、フッ化水素化アルコキシド塩類、ペルフルオロ化ジアルコキシド塩類(ペルフルオロジアルコキシド)、フッ化水素化ジアルコキシド塩類、ペルフルオロ化カルボキシイミデート塩類(ペルフルオロカルボキシイミデート)、フッ化水素化カルボキシイミデート塩類、ペルフルオロ化スルホン酸塩類(ペルフルオロスルホン酸塩類)、フッ化水素化スルホン酸塩類、ペルフルオロ化硫酸塩類(ペルフルオロ硫酸塩類)、フッ化水素化硫酸塩類、ペルフルオロ化エーテルスルホン酸塩類(ペルフルオロエーテルスルホン酸塩類)、フッ化水素化スルホン酸塩エーテル塩類、ペルフルオロ化アルキルアンモニウム塩類(ペルフルオロアルキルアンモニウム)、フッ化水素化アルキルアンモニウム塩類、ペルフルオロ化ジアルキルイミダゾリウム塩類(ペルフルオロジアルキルイミダゾリウム)、フッ化水素化ジアルキルイミダゾリウム塩類、ペルフルオロ化アルキルホスホニウム塩類(ペルフルオロアルキルホスホニウム)、フッ化水素化アルキルホスホニウム塩類、ペルフルオロ化ジアルキルオキサゾリジニウム塩類(ペルフルオロジアルキルオキサゾリジニウム)、フッ化水素化ジアルキルオキサゾリジニウム塩類、ペルフルオロ化ジアルキル−1−アザ−3,5−ジオキサシクロヘキサン塩類(ペルフルオロジアルキル−1−アザ−3,5−ジオキサシクロヘキサン)、フッ化水素化ジアルキル−1−アザ−3,5−ジオキサシクロヘキサン塩類、ペルフルオロ化アルキルホウ酸塩類(ペルフルオロホウ酸塩類)、フッ化水素化アルキルホウ酸塩類、ペルフルオロ化ジアルキルジボラシクロペンタジエン塩類(ペルフルオロジアルキルジボラシクロペンタジエン)、フッ化水素化ジアルキルジボラシクロペンタジエン塩類、ペルフルオロ化ジアルキルオキサボラリジニウム塩類(ペルフロロジアルキルオキサボラリジニウム)、フッ化水素化ジアルキルオキサボラリジニウム塩類、ペルフルオロ化ジアルキル−1−ボラ−3,5−ジオキサシクロヘキサン塩類(ペルフルオロジアルキル−1−ボラ−3、5−ジオキサシクロヘキサン)、およびフッ化水素化ジアルキル−1−ボラ−3,5−ジオキサシクロヘキサン塩類から選択され得る。例えば、実施例3は、イオン性フッ素化界面活性剤のリストを含む。
【0037】
好ましくは、非イオン性フッ素化界面活性剤は、フッ化水素化またはペルフルオロ化クラウンエーテル類、ペルフルオロアルデヒド類、ヒドロフルオロアルデヒド類、ヒドロフルオロエーテルアルデヒド類、およびヒドロフルオロチオエーテルアルデヒド類から選択される。その例は、実施例2に示す。
【0038】
有利には、イオンの交換または抽出のためのイオン性および/または非イオン性のフッ素化界面活性剤は、1以下の実数値に等しいa/b比で規定され、ここで「a」および「b」は、該イオン性および/または非イオン性フッ素化界面活性剤に含まれる水素原子の数およびフッ素原子の数である。従って、このようなフッ素化界面活性剤は、比較的低い可燃性および比較的高い溶解度を、フッ素化相の水と混和性でないフッ素化液中で有しており、これが次に、溶媒および/または熱交換液として機能する。
【0039】
好ましくは:
・陰イオン性フッ素化交換液は、窒素および/またはリンおよび/または酸素および/またはイオウのヘテロ原子を含んでいる陽イオン性の極性ヘッドを含む;そして
・陽イオン性フッ素化交換液は、ホウ素および/またはアルミニウムおよび/または酸素および/またはイオウのヘテロ原子を含む陰イオン性の極性ヘッドを含む。
【0040】
このような陰イオン性および陽イオン性のフッ素化交換液を用いて、フッ素化交換液および処理すべき水から抽出されたイオンによって構成される対の沈殿を回避してもよい。
【0041】
図4は、イオン交換の起点での現象を図示する。詳細には、これは、陽イオン性フッ素化交換液(CFEL)を含んでいる2〜3%のイオン性フッ素化界面活性剤が溶解されている疎水性フッ素化液(HFL)中に浸された、少なくともナトリウムイオンおよびカルシウムイオンを含む水滴に相当する。このような交換液は、親水性の陰イオン性ヘッドを有する高度にフッ素化された、疎水性の鎖を含む。陰イオン性ヘッドを有するこの界面活性剤は、水−HFLの界面がそれ自体の位置である。HFL中の水滴の向流の動きの間、これは、陰イオン性ヘッドを有する界面活性剤の多くの分子と接触し、これによって陰イオン性ヘッドを有するこの界面活性剤と水との間の、水−HFL界面で陽イオンの交換が可能になる。処理すべき水のイオンの前処理(例えば、吸収による)では(直接接触イオン交換器が吸収交換器である場合)、例えば、HFL中では可溶性であるが、水中では可溶性でない陰イオンヘッドを有する前述の界面活性剤を介する、フッ素化相と水との間の陽イオンの交換によって、水からのカルシウム陽イオンの抽出がある。対照的に、イオンを負荷されたフッ素化相の再生では(直接接触イオン交換器が再生交換器である場合)、カルシウムが再生水に添加される。
【0042】
この種類のフッ素化イオン交換液を含むフッ素化相の使用は、二価の陽イオン(Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+など)および三価の陽イオン、ならびに処理すべき水に存在する可能性のある金属(Fe2+、Mn2+、Zn2+など)を排除し得る。詳細には、水の硬度を担うイオンおよび有害金属はこのように抽出される。以下の反応が例として提供され得る:
【化1】

【0043】
図5は、陰イオン性フッ素化交換液(AFEL)を含んでいる2〜3%のイオン性フッ素化界面活性剤が溶解されている同じ疎水性フッ素化液(HFL)に浸漬された少なくとも炭酸塩イオンを含む水滴と同じ現象を示す。この交換液は、陽イオン性親水性ヘッドを有する高度フッ素化疎水性鎖を含む。図4と同じ方式で、水−HFL界面でそれ自体の陽イオン性ヘッド位置を有する界面活性剤および陰イオン交換が、陽イオン性ヘッドを有する前述の界面活性剤と水との間の水−HFL界面で観察される。処理すべき水のイオンの前処理(例えば、吸収による)の場合、(直接接触イオン交換器が吸収交換器である場合)、例えば、HFL中では可溶性であるが、水中では可溶性でない、陽イオンヘッドを有する前述の界面活性剤を介する、フッ素化相と水との間の陰イオンの交換によって、水からの炭酸塩イオンの抽出がある。対照的に、イオンを負荷されたフッ素化相の再生では(直接接触イオン交換器が再生交換器である場合)、炭酸塩イオンが再生水に添加される。
【0044】
この種類のフッ素化イオン交換液を含むフッ素化相の使用は、水の硬度を主に担う一価の陰イオン(NO)および二価の陰イオン(Co2−、SO2−など)が排除され得ることを意味する。以下の反応が例として提供され得る:
【化2】

【0045】
図6は、陽イオン性フッ素化交換液(CFEL)および陰イオン性フッ素化交換液(AFEL)を同時に用いるイオン交換を図示する。連続相における電気的中立状態を確立するため、CFELおよびAFELは、フッ素化相におけるイオン交換対において一緒に会合する(associate)。イオン交換器のこれらの対は、水−HFLの界面にそれ自身が位置し、そしてそれぞれCFELおよびAFELの処理すべき水中の陽イオンおよび陰イオンに対する親和性が大きいことによって、それらは、それぞれ、CEFLとAFELとの間の水−HFLの界面および処理すべき水の中の陽イオンと陰イオンで解離してかつ交換を可能にする。処理すべき水中のイオンの前処理(例えば、吸収による)によれば(直接接触イオン交換器が吸収交換器である場合)、陽イオンおよび陰イオンは、HFLには溶解性であるが、水には不溶性である前述の交換器イオンを介して水から抽出される。対照的に、イオンを負荷されたフッ素化相の再生によれば(直接接触イオン交換器が再生交換器である場合)、陽イオンおよび陰イオンが水に添加される。
【0046】
この種類のイオン交換液を含むフッ素化相の使用は、一価、二価、および三価の陽イオンおよび陰イオンが水から抽出され得るということを意味する。脱塩および/または水の硬度を低下するために用いられ得る反応の例は、以下のとおりである:
【化3】

【0047】
非イオン性フッ素化交換液(NIFEL)を単独で、または1つ以上のAFELまたはCFELと組み合わせて用いることも可能である。NIFELは、イオン錯体形成によって水相からフッ素化相へイオンを交換または抽出する。NIFELでは、水を脱塩するためおよび/または水の硬度を減少するために以下の反応が行われ得る:
【化4】

【0048】
別の実施形態では、この交換器は、熱交換器であって、ここではフッ素化相はさらに、非イオン性フッ素化界面活性剤を含む。好ましくは、このフッ素化相は、連続状である。非イオン性フッ素化界面活性剤は、フッ素化相に分散された塩水の水滴によって構成される二相混合物を安定化し得、かつ熱交換を促進し得るが、一方で、フッ素化相における水滴の合体は制限する。非イオン性フッ素化界面活性剤のリストを実施例2の表2に示す。
【0049】
有利には、非イオン性フッ素化界面活性剤は、1以下の実数値に等しいe/f比で規定され、ここで「e」および「f」は、非イオン性フッ素化界面活性剤の分子に含まれる水素原子の数およびフッ素原子の数である。
【0050】
好ましくは、連続フッ素化相は、非イオン性界面活性剤の0.5%〜30%(容積あたり)、好ましくは、非イオン性界面活性剤の1%〜5%(境界値を含む)を含む。
【0051】
有利には、本発明の前処理ユニットは、結晶化ユニットを備える。この結晶化ユニットは、例えば、シーディングまたは凝固剤および沈下(settling)の有無による飽和結晶化タンクの形態をとる。
【0052】
好ましくは、本発明の前処理ユニットの直接接触熱交換器は、連続相を再循環するためのデバイスを備える。この再循環デバイスは、消費の節減も、熱エネルギーの節減も両方可能である。フッ素化相が、イオン性ヘッドを有する少なくとも1つのフッ素化液を含む場合、この再循環デバイスはまた、イオン交換ヘッドを有するフッ素化合物液再生のためのデバイスを備える。この再生デバイスは好ましくは、逆反応が行われている前処理または脱塩システムに由来する処理水またはブラインの少なくとも一部を使用する直接接触再生カラムである。
【0053】
さらに詳細には、直接接触熱交換器は、2つの部分(処理すべき水を冷却するための冷却部分、および処理すべき水を加熱するための加熱部分)から構成され、この加熱部分で冷却される連続フッ素化相は、この冷却部分で加熱される連続フッ素化相として再使用される。
【0054】
本発明の前処理ユニットは、少なくとも2つの方式で機能し得る:
・第一の「ホット」方式、すなわち、カラムに熱を提供するコレクターが、80℃〜200℃の大きさの温度で作動する。この最初の方式では、処理すべき水は、圧力下で大気温度(15℃〜30℃)で導入され、そして連続フッ素化相の液体での熱交換によって加熱され(この加熱によって、塩の沈殿、または水−HFL界面のイオンの間の平衡の動きおよび任意のガスの排気が可能になる)、次いで、冷却されて、大気温度に戻り、その後に脱塩ユニットに送られる;ならびに
・第二の「コールド」方式、すなわち、カラムに熱を提供するコレクターが、−4℃〜10℃の大きさの温度で作動する。この第二の方式では、処理すべき水は、大気温度で交換器に導入され、ここで冷却されて、0℃未満の塩水の凝固温度に達する。次いで、これは、このコールド(水を凍結することによる)中で作動する脱塩ユニットへ送られ、その後に、交換器中に再注入されて、連続フッ素化相の液体によって加熱され、大気温度で放出される。
【0055】
高温で作動する直接接触熱交換器では、結晶化ユニットは、フッ素化相と処理すべき水との界面で浮遊する沈殿した塩を回収し得る。
【0056】
本発明による前処理ユニットを使用する水の前処理のためのプロセスもまた、提唱され、以下の工程を包含する:
・上行する水と下行するフッ素化相との間で向流熱交換および/またはイオン交換を行うために、交換器の一部の上端にフッ素化相を導入する工程、および交換器の一部の下端に水を導入する工程;ならびに
・前処理した水を回収する工程。
【0057】
好ましくは、このプロセスは、水の圧縮の工程を包含してもよく、圧縮は、所定の圧力で生じる。さらに、水は減圧下で、例えば、水滴の形態で導入され得る。
【0058】
1つの実現では、このプロセスはさらに、フッ素化相を連続相で導入する工程を包含し、ここでは水は分散相で導入される。このプロセスを熱および/またはイオン交換器で用いる。
【0059】
さらに詳細には、熱交換器として機能する交換器では、このプロセスは、以下の工程を包含する:
・上行する分散した水と下行する連続フッ素化相との間で向流熱交換を行うために、交換器の一部の上端に連続相でフッ素化相を導入する工程、および交換器部分の下端に水を大気温度において分散相で、例えば、水滴の形態で導入する工程;ならびに
・この水を結晶化ユニットに送る工程。
【0060】
このプロセスはさらに、以下の工程を包含し得る:
・処理すべき水を圧縮する工程であって、圧縮は所定の圧力で行う工程;ならびに
・上行する分散した水と下行する連続フッ素化相との間で向流熱交換を行うために、他の交換器部分の下部に、例えば、圧力下で、分散状で水を導入する工程;ならびに
・大気温度で水を回収する工程。
【0061】
有利には、水の圧力は、1〜15バール(絶対圧)(bar abs)の範囲である。
【0062】
別の実施では、このプロセスはさらに、フッ素化相を分散相で導入する工程を包含し、ここでは水は連続的に導入される。このプロセスはイオン交換器単独で用いられる。
【0063】
さらに、このプロセスが、イオン交換器を備える前処理ユニットを使用する場合、このプロセスはさらに、以下の工程を包含し得る:
・前処理交換器と名づけられた、第一の交換器の下端で得られるフッ素化相を回収する工程;
・前処理ユニットの再生交換器と名づけられた第二の交換器の一部の上端に、回収されたフッ素化相を導入する工程
・上行する再生水と下行する回収されたフッ素化相との間で向流イオン交換を行うために、再生交換器の一部の下端に再生水を導入する工程;ならびに
・再生したフッ素化相を回収する工程;ならびに
・前処理交換器の上部に再生されたフッ素化相を導入する工程。
【0064】
本発明はまた、水処理プロセスであって、上記のような前処理プロセスを包含し、さらに前処理した水を回収する工程後、脱塩による処理の工程を包含する、水処理プロセスを提供する。
【0065】
必要に応じて、再生水は、少なくとも一部は、処理工程の間に脱塩された水を含む。
【0066】
本発明はまた、直接接触熱交換器およびイオン交換器の使用であって、連続相または分散相として、1.25を超える密度を有する水と混和性でないフッ素化液を、水の処理のため、および詳細には塩水の前処理のために含む使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
本発明は、単なる例として示され、かつ添付の図面を参照してなされる以下の説明からより良く理解され得る:
【図1】第一の実施形態を示しており、ここでは直接接触熱交換器が高温で作動する。
【図2】第二の実施形態を示しており、ここでは直接接触熱交換器が低温で作動する。
【図3】第三の実施形態を示しており、ここでは直接接触熱交換器が熱交換方式およびイオン交換方式の両方で、すなわち、高温でおよび疎水性フッ素化液およびイオン性界面活性剤(イオン交換ヘッドを有する)を含む連続相で作動する。
【図4】水滴の周囲に陰イオン性ヘッドを有する界面活性剤の存在を示す。
【図5】水滴の周囲に陽イオン性ヘッドを有する界面活性剤の存在を示す。
【図6】フッ素化相と処理すべき水との間の陽イオン交換および陰イオン交換の略図である。
【図7】第四の実施形態を示しており、ここでは、直接接触交換器は、熱交換方式で、およびイオン交換方式で、すなわち、高温で、および疎水性フッ素化液および陽イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤(イオン交換ヘッドを有する)を含む連続相で作動する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
【実施例1】
【0069】
熱交換液
表1
【表1a】

【表1b】

【表1c】

【表1d】

【0070】
*は、既知または部分的に既知の物理的特性を有する600個を超える分子に基づく群解析プロセスによって決定した沸点、融点および密度を示す。
【実施例2】
【0071】
非イオン性フッ素化界面活性剤。
【0072】
表2:
【表2a】

【表2b】

【0073】
*は、既知または部分的に既知の物理的特性を有する600個を超える分子に基づく群解析プロセスによって決定した沸点、融点および密度を示す。
【0074】
HLB:親水性/親油性バランス
【実施例3】
【0075】
イオン性フッ素化界面活性剤。
【0076】
表3:
【表3a】

【表3b】

【表3c】

【表3d】

【表3e】

【0077】
*は、既知または部分的に既知の物理的特性を有する600個を超える分子に基づく群解析プロセスによって決定した沸点、融点および密度を示す。
【0078】
また、下記化学式で示される他のイオン性フッ素化界面活性剤使用できる。式中、基R1、R2、R3、R4は、以下の基から独立に選択される:−((CH(CFF)、−((CH(CFF)、−((CH)(CFF)、−((CH(CFF)、−((CFF)、−((CH(CFF)、−((CFF)、−((CFF)、−((CH)(CFF)、−((CH(CFF)、−((CH(CFF)、−((CH(CFF)、−((CFCFO)CF)、および−CH
【化5】

【実施例4】
【0079】
高温で作動する直接接触熱交換器
図1は、本発明の第一の実施形態を示しており、ここでは、直接接触熱交換器1は、高温で作動する。処理すべき水2(ここでは海水)を、液体ポンプ3によって加圧し、その結果、この水2の圧力は、下部分配器5でカラム4の気圧よりも高く、これによってカラム4の下部ゾーン6の全体を覆う均一なサイズの水滴への水2の分散が確実になる。従って、直接接触熱交換を、ヒートアップする上行する分散した水2とクールダウンする下行する連続フッ素化相7との間の向流ゾーンを有するゾーン6中で行う。
【0080】
下部ゾーン6の上部8に到達する際、不混和性の疎水性フッ素化熱交換液7よりも低密度である水2は、自然に分離するが、水2中に最初に溶解されたガス9はパージされる。熱水2は、それが沸騰されないために十分高圧である。
【0081】
次いで、これは結晶化ユニット10に送られて、任意の逆溶解度塩が結晶化することが可能になり、かつそれらが固体状で排出されることが可能になる。この結晶化ユニット10の底は、フッ素化熱交換液7を含み、その上に塩の結晶が沈着され、これによって沈殿した固体の排出が容易になる。
【0082】
前述の結晶化ユニット10は、第二の分配器12に戻された透明な塩水2の産生を可能にする清澄化セクション11と連結されて、カラム4の上部ゾーン13の全体にわたる清澄化した塩水2の均一な分散が確実になる。次いで、熱交換が、クールダウンする塩水2の上行する分散相と、ヒートアップする下行する連続フッ素化相7との間で生じる。このように、カラムヘッド14では、冷たい清澄化塩水2が産生されて、水への変換度合が高い脱塩ユニット15が供給される。
【0083】
直接接触熱交換器1はまた、閉鎖ループ内で熱交換液7を循環するためのシステム16を設けられる;これは、下部ゾーン6の底部から冷たくかつ最大圧力で収集され、上部ゾーン13の頂部へ再循環され、そしてカラム4の全セクションにわたって分配される。フッ素化熱交換液7は、カラム4内を連続相として下行して加熱され、下部ゾーン6と上部ゾーン13の界面に位置するコレクター17に到達する。該コレクター17は、カラム4に熱を、そして下部ゾーン6の全セクションにまたがって連続フッ素化相の分布を提供する。
【0084】
ある適用例では、1リットルあたり36gの塩を含有する海水を1日あたり10000m処理する上記のような直接接触交換器を考慮しており、これは、ペルフルオロノナン型(C20−Tbp=123℃、Tmp=−16℃)の連続フッ素化相(熱交換液、HEL)の液体との直接接触によって25℃〜123℃に変化し得る。得られた結果のまとめは、それぞれ、下部の前加熱ゾーン6および上部の冷却ゾーン13について下の2つの表に示す:
【表4】

【0085】
「TTH」(総接線高さ)は、図1のそれぞれ直接接触交換ゾーン6および13の高さである。
【0086】

この実施例では、塩水の7.3kWh/mという熱エネルギー消費が、水を前処理するために必要であった。脱塩水を飲料可能に、および再ミネラル化するために、1日あたり2〜5トンの逆溶解度を有する塩が、排出されるかまたは少なくとも部分的に再使用されなければならなかったことにも注意のこと。
【0087】
一般的な見地から、脱塩ユニットの変換の度合が増大すれば、処理の流速および産生されるブラインの流速の減少に起因して脱塩コストに直接の影響を有する。従って、水の変換の度合を50%から80%に増大することは、処理すべき水の流速が、35%まで低下し得、かつ管理されるべきブラインの流速が75%まで低下し得ることを意味し、これは、産生される淡水の1立方メートルあたりの単位コストが上記のユニットと現行の脱塩技術とを組み合わせることによって約15%〜35%まで減少し得ることを意味する。
【実施例5】
【0088】
低温で作動する直接接触熱交換器
図2は、本発明の第二の実施形態を示しており、ここでは、直接接触熱交換器1は、低温で作動する。処理すべき水2(ここでは海水)を、液体ポンプ3によって加圧して、その結果水2の圧力は、下部分配器5でカラム4の気圧よりも高く、これによってカラム4の下部ゾーン6の全体を覆う均一なサイズの水滴への水2の分散が確実になる。従って、直接接触熱交換が、クールダウンする上行する分散した水2とヒートアップする下行する連続フッ素化相7との間の向流ゾーン6中で行われる。
【0089】
水2は、不混和性の疎水性フッ素化熱交換液7よりも低密度であり、下部ゾーン6の上部8に到達する際に自然に分離する。
【0090】
次いで、冷水2は、脱塩ユニット15に送られて、この水は凍結され、ここで処理すべき水の結晶化ならびに淡水と液体ブラインとへの分離が行われる。
【0091】
水2由来のブラインまたは融解氷結晶は次に、第二の分配器12に送られて、カラム4の上部ゾーン13の全体にわたってその均一な分散を生じる。次いで、熱交換が、水2由来の淡水またはブラインの上行する分散相(これはヒートアップする)と、下行する連続フッ素化相7(これはクールダウンする)との間で行われる。
【0092】
カラムヘッド14では、淡水またはブラインが必要に応じて、大気温度で回収される。
【0093】
直接接触熱交換器1はまた、閉鎖ループ内でフッ素化熱交換液7を循環するためのシステム16を設けられる;これは、下部ゾーン6の底部で、大気温度でおよび最大圧力で収集され、上部ゾーン13の頂部に再循環され、そしてカラム4の全セクションにわたって分配される。フッ素化熱交換液7は、カラム4内を連続相として下行して冷却され、下部ゾーン6と上部ゾーン13の界面に位置するコレクター17に到達して、前述のコレクター17は、カラム4の部分的な熱の冷却を確実にし、かつ下部カラム6の全セクションにまたがって連続フッ素化相の分布を確実にする。
【実施例6】
【0094】
疎水性フッ素化液およびイオン交換ヘッドを有するイオン性界面活性剤を含んでいる連続フッ素化相で、高温で作動する直接接触熱交換器
図3は、本発明のユニットおよびプロセスの第三の実施形態を図示しており、ここでは、直接接触熱およびイオン交換器1は、疎水性フッ素化液およびイオン交換ヘッドを有するイオン性界面活性剤を含んでいる連続フッ素化相で高温で作動する。
【0095】
熱交換器およびイオン交換器の操作は、以下の2つの相違を除いて、実施例4に記載の操作と同一である:
・連続フッ素化熱交換相7が、ペルフルオロノナンと、ナトリウムヒドロフルオロアルキルカルボキシラート型の2%のイオン性フッ素化界面活性剤との混合物を含み;そして
・この再循環デバイスは、閉鎖ループ循環のためのシステム16が設けられるだけでなく、脱塩システム15に由来するブライン19の少なくとも一部の向流を用いて界面活性剤を再生するためのカラム20も設けられている。
【0096】
従って、一旦、イオン交換反応がカラム4で行われれば、イオン交換ヘッドを有するフッ素化液を含む連続フッ素化相は、逆イオン交換反応を行うための脱塩ユニット15に由来するNaClの豊富なブラインを使用する直接接触再生カラム20に排出される。次いで、この再生された連続フッ素化層は、上部ゾーン13の頂部に送られ、カラム4のセクション全体にわたって分配される。
【0097】
この第三の実施形態は、多価陽イオンの連続抽出が、液相−液相の間の陽イオン交換によって行われ得ることを意味し、このことは、塩水が、効率的に軟水にされ得るが、排出されるべき結晶化された塩の産生は最小化されることを意味する。さらに、80℃を超える温度で働くことによって、イオン交換の反応速度論は改善されるが、同時に溶解されたガスの脱気および生物有機体の熱破壊が可能になる。
【0098】
例として、下の表では、図3に記載されるシステムを用いる、水の前処理の前後の標準的な海水の組成を示す。
【表5】

【0099】
このシステムは、50%よりかなり高い水の変換の度合を有する脱塩システムが、脱塩コストの全体的な低下のために下流で用いられ得ることを意味する。
【実施例7】
【0100】
疎水性フッ素化液および水の脱塩のためのイオン交換ヘッドを有する1対のイオン性界面活性剤を含んでいる連続フッ素化相で、高温で作動する直接接触熱交換器。
【0101】
図7は、本発明のユニットおよびプロセスのある実施形態を図示しており、ここでは、前処理直接接触熱交換器およびイオン交換器1は、疎水性フッ素化液(ここではヒドロフルオロカーボン)および1対の陽イオンおよび陰イオン界面活性剤(ここでは、ヒドロフルオロアルキルアンモニウムおよびヒドロフルオロアルキルホウ酸塩)を含んでいる連続フッ素化相で、高温で機能する。
【0102】
実施例7の熱交換器およびイオン交換器の操作は、実施例6に記載の操作と同一である。実施例7のユニットおよびプロセスは、以下の追加の特徴を含む。
【0103】
イオン21を負荷された連続フッ素化相は、交換器1の下端5でカラム底部から回収される。この処理された水30は、交換器1の上端14から回収される。脱塩ユニット15は、処理された水30の回収の工程後に脱塩による水2の処理の工程を使用する。
【0104】
交換器1から回収された連続フッ素化相21は、再生交換器20の上端22に導入される。再生水は、この再生水の上行する水滴と下行する回収された連続フッ素化相21との間の向流としてイオン交換または熱交換を行うために水滴の形態で、圧力下で下端24に導入される。この再生水は、ブライン19の一部19Aおよび/または脱塩ユニット15(回収された処理水30を、交換器1の上端14から供給する)由来の脱塩水23を含む。ブライン19の一部19Bは、交換器1の下端5の領域中に導入される、処理すべき水2の一部を形成する。この部分19Bは、ポンプ27によって下端5に送られる。
【0105】
回収された連続フッ素化相21のイオンは、回収された連続フッ素化相21から再生水19、23に交換される。イオン中で枯渇される、再生された連続フッ素化相18は、下端24で収集され、ポンプ25によって前処理交換器の上端14に導入される。次いで、これは、交換器1の下行性フッ素化連続相7を構成する。イオン26を負荷された再生水は、再生交換器20の上端22から回収される。
【0106】
例えば、下の表は、図7に記載されるシステムを用いる水の前処理の前(水2)および後(水30)の標準的な海水の組成を示す。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.25を超える密度を有する、水と混和性でないフッ素化液を含む、連続的なまたは分散されたフッ素化相を有する、直接接触の熱交換器および/またはイオン交換器を備える、水を前処理するためのユニット。
【請求項2】
前記交換器がイオン交換器であり、前記フッ素化相がさらにフッ素化イオン交換液を含む、請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記フッ素化イオン交換液が、フッ素化イオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を含む、請求項2に記載のユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のユニットであって、前記イオン性および/または非イオン性フッ素化界面活性剤が、1以下の実数値に等しいa/b比で規定され、ここで「a」および「b」は、該イオン性および/または非イオン性フッ素化界面活性剤に含まれる水素原子の数およびフッ素原子の数である、ユニット。
【請求項5】
請求項3または4に記載のユニットであって、前記フッ素化イオン交換液が陽イオン性フッ素化交換液および/または陰イオン性フッ素化交換液を含む、ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のユニットであって、前記陰イオン性フッ素化交換液が、陽イオン性極性ヘッドを備え、該ヘッドが、窒素および/またはリンおよび/または酸素および/またはイオウのヘテロ原子を含んでいる、ユニット。
【請求項7】
請求項5または6に記載のユニットであって、前記陽イオン性フッ素化交換液が、陰イオン性極性ヘッドを備え、該ヘッドがホウ素、および/またはアルミニウム、および/または酸素、および/またはイオウのヘテロ原子を含んでいる、ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のユニットであって、前記フッ素化相の水と混和性でないフッ素化液が、実験式Cを有する化合物であり:
・C、H、F、N、O、Sはそれぞれ、炭素、水素、フッ素、窒素、酸素およびイオウの原子に相当し;
は、3〜25の範囲、好ましくは、3〜12の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、0〜27の範囲、好ましくは、0〜20の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、5〜54の範囲、好ましくは、5〜27の範囲の整数であり(境界値を含む);
は、0〜6の範囲、好ましくは、0〜3の範囲の整数であり(境界値を含む);かつ
は、0〜10の範囲、好ましくは、0〜7の範囲の整数であり(境界値を含む);かつ
は、0〜6の範囲、好ましくは、0〜3の範囲の整数である(境界値を含む)、
ユニット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のユニットであって、前記水と混和性でないフッ素化液が、1以下の実数値に等しいm/p比で規定され、ここで「m」および「p」は、水と混和性でないフッ素化液の分子に含まれる水素原子の数およびフッ素原子の数である、ユニット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のユニットであって、前記フッ素化相の水と混和性でない前記フッ素化液が、ペルフルオロカーボン(PFC)またはその誘導体である、ユニット。
【請求項11】
請求項9に記載のユニットであって、前記フッ素化相の水と混和性でない前記フッ素化液が、ヒドロフルオロカーボン(HFC)またはその誘導体であり、ここで前記m/p比が、厳密には0を超え、かつ1以下の実数値である、ユニット。
【請求項12】
請求項10または11に記載のユニットであって、前記誘導体が、窒素、酸素およびイオウから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、ユニット。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のユニットであって、前記交換器が、熱交換器であり、前記フッ素化相がさらに、非イオン性フッ素化界面活性剤を含む、ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載のユニットであって、前記非イオン性フッ素化界面活性剤が、1以下の実数値に等しいe/f比で規定され、ここで「e」および「f」は、非イオン性フッ素化界面活性剤の分子に含まれる水素原子の数およびフッ素原子の数である、ユニット。
【請求項15】
請求項13または14に記載のユニットであって、前記フッ素化相が、連続相である、ユニット。
【請求項16】
請求項15に記載のユニットであって、前記熱交換器が2つの部分:
・処理すべき水を冷却するための冷却部分と;
・処理すべき水を加熱するための加熱部分と;
から構成され、
該冷却部分で冷却されるフッ素化連続相は、冷却部分において加熱されるフッ素化連続相として再使用される、ユニット。
【請求項17】
請求項16に記載のユニットであって、また冷却部分および加熱部分の境界に位置する結晶化ユニットを備える、ユニット。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のユニットであって、連続フッ素化相を有し、前記交換器が、連続フッ素化相を再循環するためのデバイスを備える、ユニット。
【請求項19】
水を前処理するためのプロセスであって、請求項1に記載の前処理ユニットを使用し、かつ以下の工程:
・前記交換器(1)の前記部分の1つの上端にフッ素化相を導入し、かつ水(2)を該交換器(1)の該部分の1つの下端(5)に導入して、上行する水(2)と下行するフッ素化相(7)との間で向流熱交換および/またはイオン交換を行う工程と;
・前処理された水(30)を回収する工程と、
を包含する、プロセス。
【請求項20】
請求項19に記載のプロセスであって、フッ素化相を連続相で導入する工程をさらに包含し、ここで前記水(2)が分散状で導入される、プロセス。
【請求項21】
請求項19に記載のプロセスであって、フッ素化相を分散相で導入する工程をさらに包含し、ここで前記水(2)が連続的に導入される、プロセス。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか1項に記載のプロセスであって、イオン交換器を備える、前処理ユニットを使用し、かつさらに、以下の工程:
・前処理交換器と名付けられる、第一の交換器(1)の下端(5)で得られるフッ素化相(21)を回収する工程と;
・前処理ユニットの、再生交換器と名付けられる、第二の交換器(20)の一部の1つの上端(22)に回収されたフッ素化相(21)を導入する工程と;
・再生水(19A、23)を再生交換器(20)の一部の1つの下端(24)に導入して、上行する再生水(19A、23)と下行する回収されたフッ素化相(21)との間で向流イオン交換を行う工程と;
・再生されたフッ素化相(18)を回収する工程と;
・該前処理交換器(1)の上部(14)に再生されたフッ素化相(18)を導入する工程とを包含する、プロセス。
【請求項23】
水を処理するプロセスであって、請求項19〜22のいずれか1項に記載の前処理プロセスを包含し、かつさらに前処理された水(30)の回収の前記工程後に脱塩による処理の工程を包含する、プロセス。
【請求項24】
請求項23に記載のプロセスであって、請求項22に記載の前記前処理プロセスを包含し、ここで、前記再生水(19A、23)が、前記処理工程(19A、23)の間に脱塩された水(23)の少なくとも一部を含む、プロセス。
【請求項25】
水の処理のために、および特に塩水の処理のために、1.25より大きい密度を有する、水と混和性でないフッ素化液を、連続相または分散相として含む直接接触交換器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−516763(P2012−516763A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546930(P2011−546930)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050169
【国際公開番号】WO2010/086575
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511186756)
【Fターム(参考)】