説明

フッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂、その製造方法及びその使用

a) 遊離イソシアナート基又は遊離アミノ基及び/又はヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーの製造又は遊離ヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリオール混合物(結合剤)の製造、並びにb) 全体の系中でポリマー結合したフッ素含有量1〜4質量%を有するフッ素変性されたポリウレタン樹脂の製造、その際、1成分適用の場合には、工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーを空気湿度と、又は2成分適用の場合には、フッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を架橋剤成分(D)(硬化剤)、調製成分(F)(ii)と、場合により溶剤成分(L)(iii)並びに触媒の存在で反応させることにより得られた、改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂に関する。本発明による1成分又は2成分ポリウレタン樹脂中に適当なフッ素化されたマクロモノマーを使用することにより、極めて低い表面張力及び極めて高い接触角を有する硬質の被覆系もしくは表面を製造できる。更に、このポリウレタン樹脂は公知の先行技術と比べて明らかにわずかな吸塵傾向を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、優れた持続的な防汚性及び撥水性の表面特性並びに極めて良好な材料特性及び加工特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂、その製造方法及びその使用である。
【0002】
ポリイソシアナート及びイソシアナート反応性成分、例えば高分子量のポリオールからなるポリウレタン樹脂をベースとする高性能被覆材料は、一般に公知である。この被覆材料は極めて良好な材料特性を示すが、高い表面エネルギーを有し、従って容易に清浄化できない。
【0003】
防汚性及び撥水性コーティングの需要が増大することにより、被覆系に混合(例えばWO 99/26994に記載)されるか又は被覆系上に可逆的に塗布(DE 100 63 431 C1参照)されるフッ素含有組成物が開発された。
【0004】
側鎖でフッ素化された構成ブロック(ジオール成分)をポリウレタンマトリックス中へ適切に組み込むことによりポリウレタン系を化学的変性することによって、フッ素化された化合物の特別な表面特性と、ベース−ポリウレタンの個々の特性とを合わせて、防汚性及び撥水性の特性を生じさせかつ改善された清浄化性を生じさせることが可能である。この場合、高価なことが多いフッ素化合物を少量だけ必要として、所望の表面特性が達成されることは有利であることが明らかである。
【0005】
フッ素変性にもかかわらず一般的な硬化系との相容性も付与される。
【0006】
フッ素化されたポリウレタン系及び被覆の表面特性を変性するための、例えば疎油化もしくは疎水化のためのその使用は、前記特許文献から既に以前から公知である。
【0007】
EP 0 405 534 A1には、石材表面の処理のための、ヒドロキシ官能性の(ペル)フルオロポリエーテルを含有するポリウレタンが記載されているが、このポリウレタンは耐久性の塗膜を形成ない。
【0008】
疎油化及び疎水化のために高い蒸気透過率を有する、ペルフルオロアルキルアクリラート又は−メタクリラートをベースとするフッ素化されたポリマーで被覆された親水性ポリウレタン塗膜は、WO 97/36951 A1から公知である。
【0009】
US 4,504,401 B1は、繊維製品、例えばカーペットの防汚仕上げのための、低分子のペルフルオロアルキル基含有のウレタンを開示している。
【0010】
このEP 0 702 041 A1には、フッ素化されたモノアルコールで変性されたアロファナート及びイソシアヌラート基を有するポリイソシアナートが記載されていて、このポリイソシアナートは1成分又は2成分被覆系のための組成において19.4〜43.7Dynes/cmの表面エネルギーを有する。
【0011】
EP 0 719 809 A1には、類似のフッ素変性されたポリイソシアナート並びに他のフッ素化されていないポリイソシアナートとのブレンドが開示されていて、その際、このフッ素は1個以上のヒドロキシル基を有するフッ素成分を介して導入される。被覆組成物中で使用することにより、EP 0 702 041 A1に記載されているような表面エネルギーを有する塗膜が生じる。
【0012】
1個以上のヒドロキシル基を有するフッ素含有ポリオールと、アロファナート構造及びイソシアヌラート構造を有するポリイソシアナートとから、4:1〜1:10の分子量比でなるフッ素変性されたウレタン系は、EP 0 566 037 A2から公知である。この系は、硬化剤成分として使用され、透明な塗膜を生じる。
【0013】
DE 195 47 448 A1によると、フッ素化されたアルコールと、フッ素化されていないポリオールと、ブロックトポリイソシアナート並びに少なくとも1種のアミン架橋剤とをベースとする摩擦が減少された耐摩耗性のウレタン被覆組成物が開示されている。ブロックトポリイソシアナートに基づき、この被覆組成物は予め120℃を越えて加熱しなければならず、その後にポリアミン成分を用いて架橋を行うことができる。
【0014】
(ペル)フルオロポリエーテル(PFPE)をベースとするコーティング用の組成物は、EP 1 116 759 A1に記載されている。この組成物は、溶剤の他に二官能性(ペル)フルオロポリエーテルジオールをIPDI−トリマーと組み合わせて含んでいる。この(ペル)フルオロポリエーテルは、この明細書においては側鎖側に組み込まれていない。
【0015】
モノマー、もしくはブロックされた形のポリイソシアナートのようなマクロモノマー、親水性アルコール又はチオール成分、単官能性及び二官能性のヒドロキシ(ペル)フルオロポリエーテルアルコール、並びに単官能性(ペル)フルオロアルキルアルコール並びに化学的に架橋可能なアルコール成分もしくはチオールから製造されたフッ素化された分枝鎖のオリゴウレタンは、EP 1 059 319 A2明細書に開示されている。ここでも、(ペル)フルオロポリエーテル化合物は側鎖側に組み込まれていない。
【0016】
従って、本発明の根底をなす課題は、多様な適用領域に対した、鉱物性及び非鉱物性の下地の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂を開発することであり、前記ポリウレタン樹脂は上記の先行技術の欠点を有しておらず、良好な実用特性を有し、かつ同時に経済的、環境的及び生理的な観点を考慮して製造することができることである。
【0017】
前記課題は、本発明の場合に、
a) 遊離イソシアナート基又は遊離アミノ基及び/又はヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又は遊離ヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリオール混合物(結合剤)を製造し、その際、
) イソシアナート基に対して反応性の2つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有しかつ500〜2000ダルトンの分子量を有するフッ素変性されたマクロモノマー(A1)、イソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ500〜6000ダルトンの分子量を有する高分子量のポリオール成分(A2)、並びにイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ50〜499ダルトンの分子量を有する低分子量のポリオール成分(A3)(i)を、
同じ又は異なる反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1つのジイソシアナート、ポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなるポリイソシアナート成分(B)(i)と、場合により溶剤成分(L)(i)の存在で、かつ場合により触媒の存在で反応させるか、
又は、場合により溶剤成分(L)(i)の存在で、かつ場合により触媒の存在で混合し、
) 場合により、工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物を、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリオール及び/又はポリアミン及び/又はポリアミノアルコール及び/又は一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12、R=1〜100個のC原子及び0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有しかつ250〜25000ダルトンの分子量を有する任意の有機基)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)のグループから選択された、イソシアナート基に対して反応性の1つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はヒドロキシル基に対して反応性の1つ以上のイソシアナート基を有しかつ50〜2500ダルトンの分子量を有する、場合によりフッ素変性された官能化成分(C)(i)と反応させ、
) 工程a)又はa)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物に、調製成分(F)(i)を添加し、
並びに最終的に
b) 1成分適用の場合には工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーを空気湿度と、又は2成分適用の場合には工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を架橋剤成分(D)(硬化剤)、調製成分(F)(ii)と場合により溶剤成分(L)(iii)並びに触媒の存在で反応させ、かつその際、架橋剤成分(D)として工程a)からのポリオール混合物の場合には、同じ又は異なる反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1つのジイソシアナート、ポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなるポリイソシアナート成分(B)(iii)を使用し、ポリウレタンプレポリマーの場合には、ポリイソシアナート成分(B)(iii)又はイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ50〜499ダルトンの分子量を有する低分子量のポリオール成分(A3)(ii)及び/又はイソシアナート基に対して反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族アミノ基を有しかつ50〜500ダルトンの分子量を有する低分子量のポリアミン成分(E)を使用することにより、全体の系で1〜4質量%のポリマー結合したフッ素含有量を含有するフッ素変性されたポリウレタン樹脂を製造することにより製造された、改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂を提供することにより解決される。
【0018】
意外にも、1成分又は2成分ポリウレタン樹脂中に適当なフッ素化されたマクロモノマーを使用することにより、硬質な被覆系もしくは極めて低い臨界表面張力γ(18.6mN/mを有するテフロンよりも低い)を有する表面及び極めて高い接触角θ(111゜を有するテフロン(R)の範囲内)が得られるだけでなく、これは更に公知の先行技術と比較してもなお明らかに低下された吸塵傾向(dirt pickup)を有することが見出された。この特性プロフィールは、既に極めてわずかなフッ素含有量(調製された全体の系に対して1〜4質量%)もしくは極めて少量のフッ素化されたマクロモノマーを用いて達成される。このために重要なのは、1成分又は2成分ポリウレタン樹脂が共有結合したフッ素化された側鎖を有することであり、この側鎖は適当なマクロモノマーによって導入することができる。更に、フッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、なお溶剤不含で又は少ない溶剤で製造できることは予測されなかった。
【0019】
改善された表面特性を有する本発明によるフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、多工程製造方法により定義される。
【0020】
反応工程a)において、遊離イソシアナート基及び/又は遊離アミノ基及び/又はヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はフッ素変性されたポリオール混合物は、工程a)において、フッ素変性されたマクロモノマー(A1)を高分子量のポリオール成分(A2)並びに低分子量のポリオール成分(A3)(i)と一緒に、ポリイソシアナート成分(B)(i)と、場合により溶剤成分(L)(i)及び触媒の存在で反応させるか、又はフッ素変性されたマクロモノマー(A1)と、高分子量のポリオール成分(A2)と、低分子量のポリオール成分(A3)(i)とを、場合による溶剤成分(L)(i)及び触媒の存在で混合することにより製造される。場合により、工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物を、場合によりフッ素変性された官能化成分(C)(i)と反応させることができる。引き続くa)において、工程a)又はa)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物に、調製成分(F)(i)を添加する。
【0021】
工程b)によるフッ素変性されたポリウレタン樹脂の引き続く製造は、1成分適用の場合には工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーを空気湿度と、又は2成分適用の場合には工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を架橋剤成分(D)(硬化剤)、調製成分(F)(ii)と、場合により溶剤成分(L)(iii)並びに触媒の存在で反応させることにより行われる。架橋剤成分(D)として、工程a3)からのポリオール混合物の場合には、ポリイソシアナート成分(B)(iii)が使用され、一方で、ポリウレタンプレポリマーの場合にはポリイソシアナート成分(B)(iii)又は低分子量のポリオール成分(A3)(ii)及び/又は低分子量のポリアミン成分(E)が使用される。
【0022】
) 一般式
CF−(CF−(CH−OH
[式中、x=3〜20、及びy=1〜6]
の末端メチレン基を有するペルフルオロアルキルアルコール(炭化水素スペーサー)又は一般式
CFCFCFO−CF(CF)CFO)−CF(CF)CH−OH
[式中、z=1〜10]のヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)−オリゴマー−アルコール又はイソシアナート基に対して反応性の1つのヒドロキシル基を有しかつ250〜5000ダルトンの分子量を有するものの混合物からなるフルオロアルコール成分(A4)を、同じ又は異なる反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1つのジイソシアナート、ポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなるポリイソシアナート成分(B)(ii)と、場合により溶剤成分(L)(ii)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させ、
) 場合により工程c)からの前付加物を、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリオール及び/又はポリアミン及び/又はポリアミノアルコールのグループから選択されるイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有しかつ50〜500ダルトンの分子量を有する官能化成分(C)(ii)と完全に反応させること
により製造されたフッ素変性されたマクロモノマー(A1)を使用するのが有利である。
【0023】
本発明の範囲内で、フッ素変性されたマクロモノマー(A1)として、
i) ペルフルオロアルケン及びジエタノールアミンと、有利に一般式
CF−(CF−CH=CH
[式中、x=3〜20]
の末端にメチレン基を有するペルフルオロアルキルアルケン(炭化水素スペーサー)、及び/又は
ii) アルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラートと、ジエタノールアミン、及び/又は
iii) (ペル)フルオロアルキルアルキレンオキシドと、N−メチルエタノールアミン又はジエタノールアミンと有利に一般式
CF−(CF−CH−C
[式中、x=3〜20]の(ペル)フルオロアルキルアルキレンオキシドとの、場合により溶剤含有の反応生成物を使用することもできる。
【0024】
有利に、フッ素変性されたマクロモノマー(A1)として、単官能性ペルフルオロアルキルアルコール、イソホロンジイソシアナート又はトルエンジイソシアナート及びジエタノールアミンからなる単峰性の分子量分布を有する反応生成物もしくはマクロモノマーが使用される。
【0025】
高分子量のポリオール成分(A2)は、イソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ500〜6000ダルトンの平均分子量(数平均)を有するポリマーのポリオールからなる。適当なポリマーのポリオールとして、例えば(疎水性に変性された)ポリアルキレングリコール、脂肪族又は芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ヒドロキシ官能性マクロモノマー及びテレケル(Telechele)、例えばα,ω−ポリメタクリラートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、ヒドロキシ官能性ケトン樹脂、ヒドロキシ官能性ポリスルフィド、ヒドロキシ官能性トリグリセリド、ビスエポキシドと不飽和脂肪酸とをベースとする酸化乾燥するアルキド樹脂又はこれらの適当な混合物を使用することができる。有利に、500〜3000ダルトンの分子量を有する線状もしくは二官能性(疎水性に変性された)ポリエーテル−及び/又はポリエステル−及び/又はポリカプロラクトン−及び/又はポリカーボネート−ポリオール及び/又はα,ω−ポリメタクリラートジオールが使用される。
【0026】
低分子量のポリオール成分(A3)(i)及び(A3)(ii)は、ポリイソシアナートに対して反応性の2つ以上のヒドロキシ基を有しかつ50〜499ダルトンの平均分子量を有するポリオールからなる。適当な低分子量のポリオールとして、例えば1,2−エタンジオールもしくはエチレングリコール、1,2−プロパンジオールもしくは1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールもしくは1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールもしくは1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールもしくは1,6−ヘキサンメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールもしくはネオペンチルグリコール、1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサンもしくはシクロヘキサンジメタノール、1,2,3−プロパントリオールもしくはグリセロール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパノールもしくはトリメチロールエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールもしくはトリメチロールプロパン、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールもしくはペンタエリトリットを使用することができる。
【0027】
このフルオロアルコール成分(A4)は、一般式
CF−(CF−(CH−OH
[式中x=3〜20及びy=1〜6]の末端にメチレン基を有するペルフルオロアルキルアルコール(炭化水素スペーサー)又は市販の混合物(例えばZonyl(R) BA, BA L, BA LD, Du Pont de Nemours)又は一般式
CFCFCFO−CF(CF)CFO)−CF(CF)CH−OH
[式中z=1〜10]のヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)−オリゴマーアルコール又は市販の混合物(例えばKrytox(R), Du Pont de Nemours)又はこの両方の混合物からなる。
【0028】
適当なペルフルオロアルキルアルコールとして、更に2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオール、1H,1H−ヘプタフルオロブタノール、1H,1H、9H−ヘキサデカフルオロノナノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブタノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、1H,1H−ペンタフルオロプロパノール、2−(ペルフルオロブチル)エタノール、3−(ペルフルオロブチル)プロパノール、6−(ペルフルオロブチル)ヘキサノール、1H,1H−ペルフルオロ−1−デカノール、2−(ペルフルオロデシル)エタノール、6−(ペルフルオロエチル)ヘキサノール、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノール、6−(ペルフルオロヘキシル)ヘキサノール、3−(ペルフルオロヘキシル)プロパノール、1H,1H−ペルフルオロ−1−ノナノール、1H,1H−ペルフルオロ−1−オクタノール、2−(ペルフルオロオクチル)エタノール、6−(ペルフルオロオクチル)ヘキサノール、3−(ペルフルオロオクチル)プロパノール、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、6−(ペルフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エタノール、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エタノール、2−ペルフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパノール、1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロ−1−ヘキサデカノール、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロ−1−テトラデカノール並びに1H,1H−トリフルオロエタノールを使用することができる。
【0029】
このポリイソシアナート成分(B)(i)、(B)(ii)及び/又は(B)(iii)は、同じ又は異なる反応性の2つ以上の脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1つのポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなる。ポリウレタン化学において十分公知のポリイソシアナート又はこれらの組合せが特に適している。適当な脂肪族ポリイソシアナートとして、例えば1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−5−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンもしくはイソホロンジイソシアナート(IPDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン(H12MDI)、1,3−ビス−(1−イソシアナト−1−メチル−エチル)−ベンゼン(m−TMXDI)もしくは個々の芳香族ポリイソシアナートの工業的異性体混合物を使用することができる。適当な芳香族ポリイソシアナートとして、例えば2,4−ジイソシアナートトルエンもしくはトルエンジイソシアナート(TDI)、ビス−(4−イソシアナトフェニル)−メタン(MDI)及び場合によりその高級な同族体(ポリマーMDI)もしくはこれらの個々の芳香族ポリイソシアナートの工業的異性体混合物を使用することができる。更に、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン(H12MDI)、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−5−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン(IPDI)をベースとするいわゆる「塗料イソシアナート(Lackpolyisocyanate)」が基本的に適している。「塗料イソシアナート」の概念は、アロファナート基、ビューレット基、カルボジイミド基、イソシアヌラート基、ウレトジオン基、ウレタン基を有する、このジイソシアナートの誘導体を表し、この場合モノマーのジイソシアナートの残留含有量は先行技術に相応して最小限に減少される。その他に、例えば、1,6−ジイソシアナートヘキサン(HDI)をベースとする「塗料イソシアナート」の親水性変性により得られる変性されたイソシアナートを使用することもできる。同様に、二官能性ポリイソシアナート誘導体もしくは少なくとも三官能性の脂肪族又は芳香族ポリイソシアナートと、一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12及びR=1〜100個のC原子及び0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有する任意の有機基)の(場合によりフッ素変性された)アミノ官能性の多面体のオリゴマーポリシルセスキオキサン(POSS)との反応生成物が適している。
【0030】
シルセスキオキサンは、オリゴマー又はポリマーの物質であり、この完全に縮合された代表物は一般式(SiO3/2R)を表し、その際、n>4であり、基Rは水素原子であることができるが大抵は有機基を表す。シルセスキオキサンの最も小さな構造は四面体である。Voronkov及びLavrent'yev著(Top. Curr. Chem. 102 (1982), 199-236)は、三官能性のRSiY前駆体(式中、Rは炭化水素基を表し、Yは加水分解可能基、例えばクロリド、アルコキシド又はシロキシドを表す)の加水分解による縮合による、完全に縮合された及び完全には縮合されていないオリゴマーのシルセスキオキサンの合成を記載している。Lichtenhan et al.はオリゴマーのシルセスキオキサンの塩基触媒による製造を記載している(WO 01/10871)。式RSi12のシルセスキオキサン(同じ又は異なる炭化水素基Rを有する)は、塩基触媒により反応させて、官能化された完全には縮合されていないシルセスキオキサン、例えばRSi(OH)又はRSi11(OH)及びRSi10(OH)にし、(Chem. Commun. (1999), 2309-10; Polym. Mater. Sci. Eng. 82 (2000), 301-2; WO 01/10871)、それにより多様な完全には縮合されていない多官能性のシルセスキオキサン用の原料化合物として利用することができる。特に、式RSi(OH)のシルセスキオキサン(トリシラノール)は、官能化されたモノマーのシラン(corner capping)と反応させることにより相応して変性されたオリゴマーのシルセスキオキサンに変換される。
【0031】
成分(B)(i)の場合に、2,4−トルエンジイソシアナート又は2,4−トルエンジイソシアナートと2,6−トルエンジイソシアナートとからの工業的異性体混合物又はイソホロンジイソシアナート(IPDI)の工業的シス/トランス異性体混合物が有利である。異なる反応性のイソシアナート基を有するポリイソシアナートが特に有利である。
【0032】
成分(B)(ii)の場合に、2,4−トルエンジイソシアナート又は2,4−トルエンジイソシアナートと2,6−トルエンジイソシアナートとからの工業的異性体混合物又はビス−(4−イソシアナトフェニル)−メタン(MDI)及び場合によりその高級な同族体(ポリマーMDI)もしくはイソホロンジイソシアナート(IPDI)の工業的異性体混合物又は工業的シス/トランス異性体混合物が有利である。
【0033】
成分(B)(iii)の場合に、2,4−トルエンジイソシアナート又は2,4−トルエンジイソシアナートと2,6−トルエンジイソシアナートとからの工業的異性体混合物又はビス−(4−イソシアナトフェニル)−メタン(MDI)及び場合によりその高級な同族体(ポリマーMDI)もしくはイソホロンジイソシアナート(IPDI)の工業的異性体混合物又は工業的シス/トランス異性体混合物又は1,6−ジイソシアナートヘキサン(HDI)をベースとする「塗料ポリイソシアナート」が有利であると見なすことができる。
【0034】
場合によりフッ素変性された官能化成分(C)(i)は、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリオール及び/又はポリアミン及び/又はポリアミノアルコール及び/又は一般式(RSiO1.5(式中n=4、6、8、10、12、R=1〜100個のC原子及び0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有しかつ250〜25000ダルトンの分子量の任意の有機基)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)のグループから選択された、ポリイソシアナートに対して反応性の1つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はヒドロキシル基に対して反応性の1つ以上のイソシアナト基を有しかつ50〜2500ダルトンの分子量を有する化合物からなる。適当な化合物として、例えばモノアルコール、モノアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタノール、トリメチロールプロパン、(B)(i)、(B)(ii)及び(B)(iii)と同様のポリイソシアナート成分及び一般式(RSiO1.5(式中、R=アミノプロピル及び/又はイソシアナトプロピル及び場合によりCHCHCFCFCFCFCFCF及び/又はH及び/又はアルキル及び/又はシクロアルキル及び/又はアリール及び/又は(CH(OCHCHOMe及び/又はエポキシプロピル及び/又はジメトキシシロキシ及び/又はメタクリロイルオキシプロピル及び/又はトリエトキシシリルプロピル)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)を使用することができる。
【0035】
しかしながら本発明の範囲内で、成分(C)(i)として、一般式
(RSiO1.5
[式中、a=0又は1、b=0又は1、a+b=1、m=2、6、8、10、12、並びにR=水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基又はポリマー単位(これは置換されているか又は非置換である)又はポリマー単位又は架橋単位を介して結合されている他の官能化された多面体のオリゴマーのケイ素−酸素クラスター単位、X=オキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シロキシ基、アルキルシロキシ基、アルコキシシロキシ基、シリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、ハロゲン基、エポキシ基、エステル基、フルオロアルキル基、イソシアナート基、ブロックトイソシアナート基、アクリラート基、メタクリラート基、ニトリル基、アミノ基、ホスフィン基、ポリエーテル基又はタイプXのような基を少なくとも1つ有するタイプRの置換基、その際、タイプRの前記置換基は同じ又は異なり、同様にタイプXの置換基は同じ又は異なる]の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)を使用することも可能である。
【0036】
この官能化成分(C)(i)は、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリオール及び/又はポリアミン及び/又はポリアミノアルコールのグループから選択される、更にイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有しかつ50〜500ダルトンの分子量を有する化合物からなることができる。適当な化合物として、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタノール及びトリメチロールプロパンを使用することができる。ジエタノールアミンを使用するのが有利である。
【0037】
低分子量のポリアミン成分(E)は、ポリイソシアナートに対して反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族アミノ基を有しかつ50〜500ダルトンの分子量を有するポリアミンからなる。適当な(環式)脂肪族ポリアミンとして、例えばアジピン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、イソホロンジアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタノール、Huntsman Corporation社のJeffamine(R)(ポリオキシアルキレンアミン)、ジアスパラギン酸エステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸(AMPS)の塩とエチレンジアミンとからなる付加物、(メタ)アクリル酸の塩とエチレンジアミンとからなる付加物、1,3−プロパンスルホンとエチレンジアミンとからなる付加物又はこれらの任意の混合物を使用することができる。適当な芳香族ポリアミンとして例えばビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、クメンジアミン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン(MDA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)又はこれらの任意の混合物を使用することができる。その他に、アルジミン及び/又はケチミン及び/又はエナミンをベースとする潜在的硬化剤を使用することもでき、この潜在的硬化剤は水(例えば空気湿度)の侵入時に揮発性の分解生成物を放出するかもしくは放出せずにポリアミンを放出する。
【0038】
溶剤成分(L)(i)、(L)(ii)及び(L)(iii)は、低沸点の又は高沸点の有機溶剤からなる。適当な溶剤として、例えばN−メチルピロリドン、グリコールエーテル、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル(Proglyde DMM(R))、環式アルキレンカーボネート、キシレン、エチルベンゼン、C3−アルキルベンゼン(クメン)、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルグリコール、1−メトキシプロピルアセタート、メチルイソブチルケトンを使用することができる。有利にフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、全体の系中で10質量%より少ない有機溶剤を含有する。
【0039】
調製成分(F)(i)及び(F)(ii)は、例えば消泡剤、脱気剤、潤滑剤、レベリング剤、分散剤、基材湿潤剤、疎水化剤、流動性付与剤、凝集助剤、艶消し剤、定着剤、凍結防止剤、酸化防止剤、UV安定剤、殺菌剤、殺真菌剤、他のポリマー及び/又はポリマー分散液、充填剤、顔料及び全ての種類のナノ粒子又はこれらの適当な組合せであり、その際、個々の調製成分はこの場合不活性と見なされる。この調製成分は、フッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂の製造の前でも、その製造の後でも導入することができる。
【0040】
工程a)中の成分(A1)、(A2)、(A3)(i)、(B)(i)及び(C)(i)からなるフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物の固体含有量は、成分(A1)、(A2)、(A3)(i)、(B)(i)、場合により(C)(i)、(F)(i)、場合により(L)(i)及び場合により(L)(iii)からなる結合剤の全体の量に対して、25〜100質量%、有利に50〜75質量%に調節される。
【0041】
工程c)中の成分(B)(iii)もしくは(B)(iii)又は(A3)(ii)及び/又は(E)からなる架橋剤成分の固体含有量は、成分(B)(iii)又は(A4)(ii)及び/又は(E)、(F)(ii)及び場合により(L)(iii)からなる硬化剤(D)の全体の量に対して25〜100質量%、有利に50〜75質量%に調節される。
【0042】
成分(A)、(B)、(C)及び(E)からなるポリウレタンポリマーは、有利に10000〜100000ダルトンの平均分子量(数平均)を有する。
【0043】
本発明の他の主題は、工程a)でフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はフッ素変性されたポリオール混合物(結合剤)を製造し、引き続き工程b)でフッ素変性されたポリウレタン樹脂を製造することによる、フッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂の製造方法に関する。この方法を実施するために、この反応工程においてポリウレタン化学において通常の技術を使用して、反応工程a)において成分(A1)、(A2)及び(A3)(i)を成分(B)(i)と、場合により溶剤成分(L)(i)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させ、その際、成分(A1)、(A2)、(A3)(i)のヒドロキシル基は部分的に又は完全に成分(B)(i)のイソシアナート基と反応されるか、又は場合により溶剤成分(L)(i)の存在で及び場合により触媒の存在で混合され、場合により工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物を反応工程a)中でなお場合によりフッ素変性された官能化成分(C)(i)と反応させかつ工程a)又はa)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物に反応工程a)中で調製成分(F)(i)を添加し、その際、この調製成分を単独で又は混合した形で個々の成分の反応又は混合の前、その間又はその後で添加することによる、フッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)が製造される。
【0044】
フッ素変性されたマクロモノマー(A1)は、有利に反応工程c)においてフルオロアルコール成分(A4)をポリイソシアナート成分(B)(ii)と場合により溶剤成分(L)(ii)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させ、その際、成分(A4)及び(B)(ii)の反応条件及び選択性は、成分(B)(ii)のイソシアナート基の1つだけが、成分(A4)と反応し、かつ場合により引き続く反応工程c)において工程c)からの均一な前付加物が調製成分(C)(ii)と完全に反応するように選択され、その際、成分(C)(ii)の反応条件及び選択性は成分(C)(ii)の反応性基の1つだけが、前付加物の1つ又は複数の遊離イソシアナート基と反応するように選択されることにより製造される。
【0045】
有利な実施態様の場合には、この場合、フルオロアルコール成分(A4)は−20〜50℃の温度で、場合により適当な溶剤(L)(ii)を添加しながら及び場合により触媒を添加しながら、30〜60分の期間の間にポリイソシアナート成分(B)(ii)に滴加し、かつ反応させて、イソシアナート基の1つだけを反応させる。他の場合による工程において、生じた前付加物を数分間で冷却しながら官能化成分(C)(ii)中へ滴加する。適当な溶剤(L)(ii)は例えばN−メチルピロリドン(NMP)又はテトラヒドロフランである。
【0046】
引き続く反応工程b)において、最終的に、工程b)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーを1成分適用の場合には空気湿度と反応させるか、又は工程b)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を2成分適用の場合には、ポリイソシアナート成分(B)(iii)又は低分子量のポリオール成分(A4)(ii)及び/又は低分子量のポリアミン成分(E)、調節成分(F)(ii)及び場合により溶剤成分(L)(iii)からなる架橋剤成分(D)(硬化剤)と、場合により触媒の存在で反応させ、その際、前記調節成分を単独で又は一緒に、個々の成分の混合の前、その間又はその後で添加することにより、フッ素変性されたポリウレタン樹脂が製造される。
【0047】
工程a)において成分(A1)、(A2)、(A3)(i)及び(B)(i)のNCO/OH当量比は、0.5〜10.0、有利に1.5〜6.0の値に調節される。
【0048】
工程b)において結合剤及び硬化剤のNCO/OH当量比は、1.0〜2.0、有利に1.0〜1.5の有利な値に調節される。
【0049】
工程c)において成分(A4)及び(B)(ii)のNCO/OH当量比は、殊に1.9〜2.1に調節され、工程c)において工程c)からの前付加物中の成分及び(C)(ii)のNCO/OH+NH当量比は0.95〜1.05に調節される。
【0050】
この反応工程a)、b)及びc)は通常では成分(A)及び(B)に対して、0.01〜1質量%のポリイソシアナートの重付加反応のために通常の触媒の存在で実施される。ポリイソシアナートの重付加反応のための通常の触媒は例えば次のものである:ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウラート(DBTL)、トリエチルアミン、オクタン酸スズ(II)、1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,4−ジアザ−ビシクロ[3,2,0]−5−ノネン(DBN)、1,5−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)。
【0051】
反応工程a)及びa)は有利に40〜120℃、殊に50〜110℃の温度で実施される。
【0052】
反応工程c)及びc)は有利に-20〜50℃、殊に0〜30℃の温度で実施される。
【0053】
反応工程a)及びb)は有利に10〜60℃、殊に20〜50℃の温度で実施される。
【0054】
本発明の他の主題は、建築分野又は工業分野において、鉱物性及び非鉱物性の下地、例えば
a) 無機表面、
例えば、全ての種類の多孔性、吸収性、粗面及び研磨された建築資材及び建築材料(例えば、コンクリート、漆喰、ケイ酸及びケイ酸塩、人工石、天然石(例えば、花崗岩、大理石、砂岩、粘板岩、蛇紋岩)、粘土、セメント、レンガ)並びにエナメル、充填剤及び顔料、ガラス、セラミック、金属及び金属合金、
b) 有機表面
例えば、木及び木材、ベニア、ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、プラスチック、皮革、天然繊維、全ての種類の極性有機ポリマー、複合材料
の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂の使用に関する。
【0055】
本発明により提案された、改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、次の適用分野において、持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のために適している:
建築、例えば
・ 落書き防止/防汚コーティング
・ イージークリーンコーティング
・ 全ての種類の他の被覆(例えばバルコニー被覆、屋根(瓦)被覆、焼き付け塗料、ペイント及び塗料、ファッサードペイント、床用被覆、軽量、中量及び重量負荷可能な工業用床、公園地盤被覆、スポーツ用床)
・ シーリング
・ コンクリート完成部品
・ コンクリート成形品
・ タイル及び目地
・ 接着剤及び封止剤
・ 防音壁
・ 防食
・ 漆喰及び装飾漆喰
・ 断熱複合材料系(WDVS)及び断熱系(WDS)
並びに
非建築及び工業、例えば
・ 自動車工業
・ コイルコーティング
・ 焼き付け塗料
・ ガラス繊維及びガラス表面
・ セラミック及び衛生用セラミック
・ 皮革仕上げ
・ 表面変性された充填剤及び顔料
・ 紙被覆
・ 風力装置のロータ
・ 船舶用塗料。
【0056】
その他に、本発明による提案された、改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、建築分野において、コンクリート、例えば
・ コンクリート完成部品
・ コンクリート成形品
・ 現場打ちコンクリート
・ ショットクリート
・ レディーミックスコンクリート
の材料の疎水化/疎油化のために適している。
【0057】
適用分野及びそれに関連する要求プロフィールに応じて、本発明によるフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂を用いて、つまり、
・ 空気湿度で硬化可能な、1成分プレポリマーベースの系又は
・ 潜在的硬化剤によって硬化可能な、1成分プレポリマーベースの系又は
・ 架橋剤によって硬化可能な、2成分プレポリマーベースの系又は
・ 架橋剤によって硬化可能な、2成分ポリオールベースの系
を製造することができる。
【0058】
記載されたフッ素成分の適当な選択及び使用量によって、極めて低い臨界表面張力及び極めて高い接触角を有し、優れた落書き防止特性及び防汚特性を有する被覆系もしくは表面を得ることができる。
【0059】
特に、極めて高い耐薬品性及び耐溶剤性を必要とする適用の場合には、本発明によるフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、フッ素変性を有する水性結合剤系より優れている。
【0060】
改善された表面特性を有する本発明によるフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂は、それぞれの適用分野のために、基本的に調製された形でもしくは未調製の形で使用することができる。この調製は、塗料工業及び被覆工業から公知の方法及び技術により実施される。
【0061】
原則として、調製物の範囲内で、改善された表面特性を有する本発明の場合にフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂を水性又は非水性の結合剤と組み合わせる及び/又は改善された表面特性を有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂をベースとする調製物を水性又は非水性の結合剤をベースとする調製物と組み合わせることもできる。水性又は非水性の結合剤の概念は、この場合、水ベースのポリウレタン、ポリマー分散液、再分散性ポリマー粉末又は非水性の溶剤含有又は溶剤不含の、場合により反応性のポリマーを表す。
【0062】
改善された表面特性を有する本発明によるフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂の適用は、公知の方法、例えばフローコーティング、キャストコーティング、ブレードコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、刷毛塗り、ディップコーティング、ローラーコーティングで行われる。
【0063】
改善された表面特性を有する本発明によるフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂から製造された被覆の乾燥及び硬化は、一般に、5〜50℃の範囲内の常温(外気温、室内温度)で、つまり被覆を特別加熱することなしに行われるが、しかしこの適用に応じて50〜150℃の範囲内の高めた温度でも行われる。
【0064】
次の実施例は、本発明を詳細に説明する。
【0065】
実施例
実施例1:
フッ素変性されたジオール成分(T-Bone)
滴下漏斗、KPG撹拌機、還流冷却器、内部温度計及び窒素保護装置を備えた4口フラスコ中で、N−メチルピロリドン(NMP)28.8g中に溶かした2,4−トルエンジイソシアナート(TDI)(Desmodur T 80, Fa. Bayer AG)0.1molを、窒素保護下で装入し、約15〜20℃に冷却した。2,4−トルエンジイソシアナート(TDI)の晶析は、この場合無条件に回避するのが好ましい。ジブチルスズラウラート(DBTL)2滴を触媒として添加した後、冷却しながら約1時間内で当モル量のフルオロアルコール(例えばDu Pont de Nemours社のZonyl(R))をゆっくりと滴加した。滴加の完了後に、このバッチを同じ温度で1時間後攪拌し、所望のNCO値を達成した。この前付加物を引き続き、N−メチルピロリドン(NMP)3.0gと混合した当モル量のジエタノールアミン(DEA)に冷却しながらゆっくりと滴加した。NCO値がゼロに低下した場合に反応は完了した。
【0066】
実施例2:
床用の、フッ素変性された光堅牢性の1Kポリウレタンシーリング剤(湿分硬化性)
KPG撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素保護装置を備えた4口フラスコ中で、フッ素変性されたジオール成分(実施例1参照、N−メチルピロリドン(NMP)1.4質量部を含有)4.7質量部と、イソホロンジイソシアナート(Degussa AG社、Vestanat(R) IPDI)25.2質量部とからなる混合物を、窒素保護下で2時間80〜90℃で、触媒としてジブチルスズラウラート(DBTL)1滴の存在で撹拌した。56mgKOH・g−1のヒドロキシル価を有するDesmophen C 200(Bayer AG社)41.5質量部を添加した後、この混合物を窒素保護下で80〜90℃で更に撹拌し、算定されたNCO含有量が達成された(理論値:10.37質量%)。反応の進行を酸滴定によって行った。引き続きProglyde(R) DMM(Dow Chemical社)28.6質量部を添加した。
【0067】
フッ素含有量(結合剤に対して):2.0質量%。
【0068】
実施例3:
フッ素変性された2Kポリウレタン−床用被覆、自己レベリング、溶剤貧有
充填されたポリオール成分(部分A):
真空ディソルバー中で、Sovermol(R) 805(Cognis Deutschland GmbH社)30.6質量部とフッ素変性されたジオール成分(実施例1参照、N−メチルピロリドン(NMP)4.0質量部を含有)13.5質量部とからなる混合物にゆっくりと常に撹拌しながらゼオライトペースト(Finma Chemie社)4.4質量部、Perenol E 8(Cognis Deutschland GmbH社)1.0質量部、Perenol F 40(Cognis Deutschland GmbH社)0.5質量部、Micro Talc AT 1(Norwegian-Talc社)8.0質量部、Baryte C 14 (Sachtleben社)17質量部、顔料粉末(Heubach社のHeucosinタイプ)5.0質量部並びにMillisil W12(Quarzwerke社)20.0質量部を添加した。この混合物に、引き続き真空中で1500rpmで約20分間分散させた。
【0069】
ポリイソシアナート(部分B):
Desmodur VL R 10(ポリマーのMDI、Bayer AG社、イソシアナート含有量:31.5質量%)15.75質量部
部分A:部分Bの混合比=100:15.75
フッ素含有量(調製物に対して):3.6質量%。
【0070】
実施例4:
フッ素変性された2Kポリウレタン−床用被覆、自己レベリング、溶剤貧有
充填されたポリオール成分(部分A):
真空ディソルバー中で、Desmophen(R) 1145(Bayer AG社)16.5質量部と、Desmophen(R) 1150(Bayer AG社)17.6質量部と、フッ素変性されたジオール成分(実施例1参照、N−メチルピロリドン(NMP)4.0質量部)13.3質量部とからなる混合物に、ゆっくりと常に撹拌しながらFinmaSorb 430 PR(Firma Chemie社)7.8質量部、Texaphor P 61(Cognis Deutschland GmbH社)0.5質量部、石英粉W6(Ouarzwerke社)41.2質量部、顔料粉末2.6質量部並びにPerenol E 8(Cognis Deutschland GmbH社)0.5質量部を添加した。この混合物に、引き続き真空中で1500rpmで約20分間分散させた。
【0071】
ポリイソシアナート(部分B):
Desmodur VL(ポリマーのMDI、Bayer AG社、イソシアナート含有量31.5質量%)22.0質量部
部分A:部分Bの混合比=100:22
フッ素含有量(調製物に対して):3.4質量%。
【0072】
実施例5
床用の光堅牢性の1Kポリウレタンシーリング剤(湿分硬化性、フッ素変性及びポリシルセスキオキサン変性された)
KPG撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素保護装置を備えた4口フラスコ中で、フッ素変性されたジオール成分(実施例1参照、N−メチルピロリドン(NMP)1.5質量部を含有)5.0質量部と、イソホロンジイソシアナート(Degussa AG社、Vestanat(R) IPDI)26.3質量部とからなる混合物を、窒素保護下で2時間80〜90℃で、触媒としてジブチルスズラウラート(DBTL)約1滴の存在で撹拌した。56mgKOH・g-1のヒドロキシル価を有するDesmophen C 200(Bayer AG社)34.7質量部及びα,ω−ポリメタクリラートジオール(Tego Chemie Service GmbH社)4.4質量部並びに3−{3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1(3,9).1(5,15).1(7,13)]オクタシロキサン−1−イル}プロピルイソシアナート(Degussa AG社)1.1質量部を添加した後、この混合物を窒素保護下で80〜90℃で更に撹拌し、計算されたNCO含有量を達成した(理論値:10.86質量%)。反応の進行を酸滴定によって行った。引き続きProglyde(R) DMM(Dow Chemical社)28.5質量部を添加した。
【0073】
フッ素含有量(結合剤に対して):2.2質量%。
【0074】
成分概要
工程a): フッ素変性されたマクロモノマー(A1)
(A4) フルオロアルコール成分
(B)(ii) ポリイソシアナート成分II
(C)(ii) 官能化成分II
(L)(ii) 溶剤成分III
工程b): フッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物
(A1) 工程a)からのフッ素変性されたマクロモノマー
(A2) 高分子量のポリオール成分
(A3)(i) 低分子量のポリオール成分I
(B)(i) ポリイソシアナート成分I
(C)(i) 官能化成分I
(F)(i) 調製成分I
(L)(i) 溶剤成分I
工程c): フッ素変性されたポリウレタン樹脂
(D) 架橋剤成分(混合物)、次のものを含有
(B)(iii) ポリイソシアナート成分III
(A3)(ii) 低分子量のポリオール成分II
(E) 低分子量のポリアミン成分
(F)(ii) 調製成分II
(L)(iii) 溶剤成分I

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 遊離イソシアナート基又は遊離アミノ基及び/又はヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又は遊離ヒドロキシル基を有するフッ素変性されたポリオール混合物(結合剤)を製造し、その際、
) イソシアナート基に対して反応性の2つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有しかつ500〜2000ダルトンの分子量を有するフッ素変性されたマクロモノマー(A1)、イソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ500〜6000ダルトンの分子量を有する高分子量のポリオール成分(A2)並びにイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ50〜499ダルトンの分子量を有する低分子量のポリオール成分(A3)(i)を、
同じ又は異なる反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1つのジイソシアナート、ポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなるポリイソシアナート成分(B)(i)と、場合により溶剤成分(L)(i)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させるか、
又は
場合により、溶剤成分(L)(i)の存在で及び場合により触媒の存在で混合し、
) 場合により、工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物を、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリオール及び/又はポリアミン及び/又はポリアミノアルコール及び/又は一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12、R=1〜100個のC原子及び0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有しかつ250〜25000ダルトンの分子量を有する任意の有機基)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)のグループから選択された、イソシアナート基に対して反応性の1つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はヒドロキシル基に対して反応性の1つ以上のイソシアナート基を有しかつ50〜2500ダルトンの分子量を有する、場合によりフッ素変性された官能化成分(C)(i)と反応させ、
) 工程a)又はa)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物に、調製成分(F)(i)を添加し、
並びに最終的に
b) 1成分適用の場合には工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーを空気湿度と、又は2成分適用の場合には工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を架橋剤成分(D)(硬化剤)、調製成分(F)(ii)と場合により溶剤成分(L)(iii)並びに触媒の存在で反応させ、かつその際、架橋剤成分(D)として工程a)からのポリオール混合物の場合には、同じ又は異なる反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1つのジイソシアナート、ポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなるポリイソシアナート成分(B)(iii)を使用し、ポリウレタンプレポリマーの場合には、ポリイソシアナート成分(B)(iii)又はイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ50〜499ダルトンの分子量を有する低分子量のポリオール成分(A3)(ii)及び/又はイソシアナート基に対して反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族アミノ基を有しかつ50〜500ダルトンの分子量を有する低分子量のポリアミン成分(E)を使用することにより、全体の系で1〜4質量%のポリマー結合したフッ素含有量を含有するフッ素変性されたポリウレタン樹脂を製造すること
により得られる、改善された表面エネルギーを有するフッ素変性された1成分又は2成分ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
) 一般式
CF−(CF−(CH−OH
[式中、x=3〜20、及びy=1〜6]
の末端メチレン基を有するペルフルオロアルキルアルコール(炭化水素スペーサー)又は一般式
CFCFCFO−CF(CF)CFO)−CF(CF)CH−OH
[式中、z=1〜10]のヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)−オリゴマー−アルコール又はイソシアナート基に対して反応性の1つのヒドロキシル基を有しかつ250〜5000ダルトンの分子量のこれらの混合物からなるフルオロアルコール成分(A4)を、同じ又は異なる反応性の2つ以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアナート基を有する少なくとも1種のジイソシアナート、ポリイソシアナート、ポリイソシアナート誘導体又はポリイソシアナート同族体からなるポリイソシアナート成分(B)(ii)と、場合により溶剤成分(L)(ii)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させ、
) 場合により工程c)からの前付加物を、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリオール及び/又はポリアミン及び/又はポリアミノアルコールのグループから選択されるイソシアナート基に対して反応性の2つ以上のアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有しかつ50〜500ダルトンの分子量を有する官能化成分(C)(ii)と完全に反応させる
ことによりフッ素変性されたマクロモノマー(A1)を製造することを特徴とする、請求項1記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂
【請求項3】
フッ素変性されたマクロモノマー(A1)として、単官能性のペルフルオロアルキルアルコール、イソホロンジイソシアナート又はトルエンジイソシアナート及びジエタノールアミンとからなる単峰性分子量分布を有する反応生成物もしくはマクロモノマーを使用することを特徴とする、請求項1又は2記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項4】
フッ素変性されたマクロモノマー(A1)として、
i) ペルフルオロアルケン及びジエタノールアミン、有利に一般式
CF−(CF−CH=CH
[式中、x=3〜20]
の、末端にメチレン基を有するペルフルオロアルキルアルケン(炭化水素スペーサー)、及び/又は
ii) アルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及びジエタノールアミン、及び/又は
iii) (ペル)フルオロアルキルアルキレンオキシド及びN−メチルエタノールアミン又はジエタノールアミンと有利に一般式
CF−(CF−CH−C
[式中、x=3〜20]の(ペル)フルオロアルキルアルキレンオキシドとの、場合により溶剤含有の反応生成物を使用することを特徴とする、請求項1記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項5】
高分子量のポリオール成分(A2)として、(疎水性に変性された)ポリアルキレングリコール、脂肪族又は芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ヒドロキシ官能性マクロモノマー及びテレケル、例えばα,ω−ポリメタクリラートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、ヒドロキシ官能性ケトン樹脂、ヒドロキシ官能性ポリスルフィド、ヒドロキシ官能性トリグリセリド、ビスエポキシドと不飽和脂肪酸とをベースとする酸化乾燥するアルキド樹脂又はこれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項6】
成分(A2)として、500〜3000ダルトンの分子量を有する、線状もしくは二官能性の(疎水性に変性された)ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール及び/又はポリカプロラクトンポリオール及び/又はポリカーボネートポリオール及び/又はα,ω−ポリメタクリラートジオールを使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項7】
成分(A3)(i)及び(A3)(ii)として1,4−ブタンジオール及び/又は2−メチル−1,3−プロパンジオール及び/又は2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項8】
成分(B)(i)及び/又は(B)(ii)及び/又は(B)(iii)として、二官能性ポリイソシアナート誘導体もしくは少なくとも三官能性の脂肪族又は芳香族ポリイソシアナートと、場合により一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12及びR=1〜100個のC原子及び0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有する任意の有機基)の場合によりフッ素変性されたアミノ官能性の多面体のオリゴマーポリシルセスキオキサン(POSS)との反応生成物を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項9】
成分(C)(i)が、一般式(RSiO1.5(式中、R=アミノプロピル及び/又はイソシアナトプロピル及び場合によりCHCHCFCFCFCFCFCF及び/又はH及び/又はC〜C25−アルキル及び/又はC〜C25−シクロアルキル及び/又はC〜C30−アリール及び/又は(CH(OCHCHOMe及び/又はエポキシプロピル及び/又はジメトキシシリルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシプロピル及び/又はトリエトキシシリルプロピル)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項10】
成分(C)(i)として、一般式
(RSiO1.5
[式中、a=0又は1、
b=0又は1、
a+b=1、
m=4、6、8、10、12、
並びに
R=水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基又はポリマー単位(これはそれぞれ置換されているか又は非置換である)又はポリマー単位又は架橋単位を介して結合されている他の官能化された多面体のオリゴマーのケイ素−酸素クラスター単位、
X=オキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シロキシ基、アルキルシロキシ基、アルコキシシロキシ基、シリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、ハロゲン基、エポキシ基、エステル基、フルオロアルキル基、イソシアナート基、ブロックトイソシアナート基、アクリラート基、メタクリラート基、ニトリル基、アミノ基、ホスフィン基、ポリエーテル基又はタイプXのような基を少なくとも1つ有するタイプRの置換基を表し、
タイプRの置換基並びにタイプXの置換基は同じ又は異なる]の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)を使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項11】
低分子量のポリアミン成分(E)として、(環式)脂肪族及び/又は芳香族ポリアミン及び/又はアミノアルコールを使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項12】
低分子量のポリアミン成分(E)として、アルジミン及び/又はケチミン及び/又はエナミンをベースとする潜在的硬化剤を使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項13】
調製成分(F)(i)及び(F)(ii)として消泡剤、脱気剤、潤滑剤、レベリング剤、分散剤、基材湿潤剤、疎水化剤、流動性付与剤、凝集助剤、艶消し剤、定着剤、凍結防止剤、酸化防止剤、UV安定剤、殺菌剤、殺真菌剤、他のポリマー並びに充填剤、顔料、ナノ粒子又はこれらの適当な組合せを使用することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項14】
工程a)において成分(A1)、(A2)、(A3)(i)及び(B)(i)のNCO/OH当量比を0.5〜10.0、有利に1.5〜6.0の値に調節することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項15】
工程c)において成分(A4)及び(B)(ii)のNCO/OH当量比を1.9〜2.1に調節し、工程c)において工程c)からの前付加物中の成分及び(C)(ii)のNCO/OH+NH当量比を0.95〜1.05に調節することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項16】
工程b)において結合剤及び硬化剤のNCO/OH当量比を1.0〜2.0、有利に1.0〜1.5の値に調節することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項17】
反応工程a)、b)及びc)を、成分(A)及び(B)に対して、ポリイソシアナートの重付加反応のために通常の触媒0.01〜1質量%の存在で実施することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項18】
工程a)において、成分(A1)、(A2)、(A3)(i)、(B)(i)及び(C)(i)からなるフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物の固体含有量を、成分(A1)、(A2)、(A3)(i)、(B)(i)、場合により(C)(i)、(F)(i)、場合により(L)(i)及び場合により(L)(iii)からなる結合剤の全体の量に対して、25〜100質量%、有利に50〜75質量%に調節することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項19】
工程b)において、成分(B)(iii)もしくは(B)(iii)又は(A3)(ii)及び/又は(E)からなる架橋剤成分の固体含有量を、成分(B)(iii)又は(A3)(ii)及び/又は(E)、(F)(ii)及び場合により(L)(iii)からなる硬化剤(D)の全体の量に対して25〜100質量%、有利に50〜75質量%に調節することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項20】
成分(A)、(B)、(C)及び(E)からなるポリウレタンプレポリマーは10000〜100000ダルトンの平均分子量(数平均)を有することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂。
【請求項21】
a) フッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を、
) 成分(A1)、(A2)及び(A3)(i)を成分(B)(i)と、場合により溶剤成分(L)(i)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させ、その際、成分(A1)、(A2)、(A3)(i)のヒドロキシル基は部分的に又は完全に成分(B)(i)のイソシアナート基と反応させるか、又は場合により溶剤成分(L)(i)の存在で及び場合により触媒の存在で混合し、
) 場合により工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物をなお場合によりフッ素変性された官能化成分(C)(i)と反応させ、
) 工程a)又はa)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物に調製成分(F)(i)を添加し、その際、この調製成分を単独で又は一緒に、個々の成分の反応又は混合の前、その間又はその後で添加することにより製造し、
b) フッ素変性されたポリウレタン樹脂を、1成分適用の場合には、工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマーを空気湿度と、又は2成分適用の場合には、工程a)からのフッ素変性されたポリウレタンプレポリマー又はポリオール混合物(結合剤)を架橋剤成分(D)(硬化剤)、調製成分(F)(ii)及び場合により溶剤成分(L)(iii)と、場合により触媒の存在で反応させ、その際、架橋剤成分(D)として、ポリオール混合物の場合に、ポリイソシアナート成分(B)(iii)を使用し、ポリウレタンプレポリマーの場合にポリイソシアナート成分(B)(iii)又は低分子量のポリオール成分(A3)(ii)及び/又は低分子量のポリアミン成分(E)を使用し、前記調節成分を単独で又は一緒に、個々の成分の混合の前、その間又はその後で添加することにより製造する
ことを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項22】
) フルオロアルコール成分(A4)をポリイソシアナート成分(B)(ii)と場合により溶剤成分(L)(ii)の存在で及び場合により触媒の存在で反応させ、その際、成分(A4)と(B)(ii)との反応条件及び選択性を、成分(B)(ii)のイソシアナート基の1つだけが成分(A4)と反応するように選択し、引き続き
) 場合により工程c)からの前付加物を官能化成分(C)(ii)と完全に反応させ、その際、成分(C)(ii)の反応条件及び選択性を、成分(C)(ii)の反応性の基の1つだけが前付加物の1つ又は複数の有利イソシアナート基と反応するように選択する
ことによりフッ素変性されたマクロモノマー(A1)を製造することを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
反応工程a)及びa)を40〜120℃、有利に50〜110℃の温度で実施することを特徴とする、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
反応工程a)及びb)を10〜60℃、有利に20〜50℃の温度で実施することを特徴とする、請求項20から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
反応工程c)及びc)を−20〜50℃、有利に0〜30℃の温度で実施することを特徴とする、請求項20から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
建築分野又は工業分野において、鉱物性及び非鉱物性の下地、例えば
・ 無機表面、
例えば、全ての種類の多孔性、吸収性、粗面及び研磨された建築資材及び建築材料(例えば、コンクリート、漆喰、ケイ酸及びケイ酸塩、人工石、天然石(例えば、花崗岩、大理石、砂岩、粘板岩、蛇紋岩)、粘土、セメント、レンガ)並びにエナメル、充填剤及び顔料、ガラス、セラミック、金属及び金属合金、
・ 有機表面、
例えば、木及び木材、ベニア、ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、プラスチック、皮革、天然繊維、全ての種類の極性有機ポリマー、複合材料
の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、請求項1から20までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂の使用。
【請求項27】
建築分野、例えば
・ 落書き防止/防汚コーティング
・ イージークリーンコーティング
・ 全ての種類の他の被覆(例えばバルコニー被覆、屋根(瓦)被覆、焼き付け塗料、ペイント及び塗料、ファッサードペイント、床用被覆、軽量、中量及び重量負荷可能な工業用床、公園地盤被覆、スポーツ用床)
・ シーリング
・ コンクリート完成部品
・ コンクリート成形品
・ タイル及び目地
・ 接着剤及び封止剤
・ 防音壁
・ 防食
・ 漆喰及び装飾漆喰
・ 断熱複合材料系(WDVS)及び断熱系(WDS)
において、持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、請求項1から20までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂の使用。
【請求項28】
・ 自動車工業
・ コイルコーティング
・ 焼き付け塗料
・ ガラス繊維及びガラス表面
・ セラミック及び衛生用セラミック
・ 皮革仕上げ
・ 表面変性された充填剤及び顔料
・ 紙被覆
・ 風力装置のロータ
・ 船舶用塗料
の分野における、請求項1から19までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂の使用。
【請求項29】
建築分野又は工業分野において、コンクリート、例えば
・ コンクリート完成部品
・ コンクリート成形品
・ 現場打ちコンクリート
・ ショットクリート
・ レディーミックスコンクリート
の材料疎水化/疎油化のための、請求項1から19までのいずれか1項記載のフッ素変性されたポリウレタン樹脂の使用。

【公表番号】特表2009−513748(P2009−513748A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519819(P2006−519819)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007391
【国際公開番号】WO2005/007722
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】