説明

フライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法

【課題】フライアッシュ中の未燃カーボン含有率に応じて捕集剤の添加量を調整することで、その捕集剤の供給過剰を防止することのできる未燃カーボンの除去方法を提供する。
【解決手段】フライアッシュf1に水wを加えて生成したスラリーf2に捕集剤kを添加して剪断翼4aの回転による剪断力を付与し、更にそのスラリーf4に起泡剤bを添加すると共に空気airを供給して気泡を発生し、この気泡にフライアッシュ中の未燃カーボンc1を付着させて浮上させ、フライアッシュf6と未燃カーボンc1とを分離するフライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法において、水wが加えられてスラリーf2を生成するフライアッシュf1中の未燃カーボン量を測定し、捕集剤kの添加量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュ中の未燃カーボンを分離して除去する処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所で石炭を燃焼させた際に発生する焼却廃ガスに含まれるフライアッシュは集塵機で捕集・回収され、この回収されたフライアッシュはコンクリート混和材やフライアッシュセメント等に利用されている。
【0003】
このようなコンクリート混和材やフライアッシュセメントに用いられるフライアッシュは、フライアッシュ中の未燃カーボンがAE減水剤等を吸収して浮き上がり、コンクリートの打継部に黒色部が発生するなどの弊害があり、また、人工軽量骨材の品質が低下するという理由から、未燃カーボンの少ないものが利用されている。
【0004】
その未燃カーボンの除去方法として、水を添加されたスラリー状のフライアッシュに捕集剤を添加すると共に剪断力を付与し、これに空気を吹き込んで発生させた気泡に未燃カーボンを付着させて浮上させ、フライアッシュから未燃カーボンを除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3613347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記フライアッシュに含まれる未燃カーボン含有率は0.2〜5wt%の範囲で変動するので、捕集剤が不足した場合に、未燃カーボンが除去しきれずにフライアッシュに残留してしまうことがある。そこで、捕集剤の添加量を、未燃カーボン含有率が高いときの添加量で固定し、常にその添加量で供給し続けることが行われている。
【0006】
従って、未燃カーボン含有率が低下したときには捕集剤が過剰供給となり、その過剰供給による運転コストが問題となっていた。特に、その捕集剤には灯油や軽油が使用されているので、これらの高騰により運転コストが増加している。
【0007】
本発明は、上述の問題点に着目し、フライアッシュ中の未燃カーボン含有率に応じて捕集剤の添加量を調整することで、その捕集剤の供給過剰を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボン除去方法は、上記目的を達成するため、次のように構成されている。
【0009】
1. フライアッシュに水を加えて生成したスラリーに捕集剤を添加して剪断翼の回転による剪断力を付与し、更にそのスラリーに起泡剤を添加すると共に空気を供給して気泡を発生し、この気泡にフライアッシュ中の未燃カーボンを付着させて浮上させ、フライアッシュと未燃カーボンとを分離するフライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法において、水が加えられてスラリーを生成するフライアッシュ中の未燃カーボン量を測定し、捕集剤の添加量を調整することを特徴としている。
【0010】
2. 前記フライアッシュの一部を所定の振動が与えられたフィルタに捕集し、そのフィルタの振動数の減衰の変化量より未燃カーボン量を算出することを特徴としている。
【0011】
3. 前記フライアッシュの一部を秤量し、この秤量したフライアッシュを燃焼させて発生した二酸化炭素を測定し、前記秤量したフライアッシュの重量と発生した二酸化炭素量から未燃カーボン量を算出することを特徴としている。
【0012】
更に、本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボン除去装置は、次のように構成されている。
4. フライアッシュを貯留するフライアッシュタンクと、このフライアッシュタンクから供給されたフライアッシュに水を加えてスラリーを生成するスラリータンクと、生成されたスラリーに捕集剤を添加して剪断翼を回転させて剪断力を付与する攪拌タンクと、剪断力が付与されたスラリーに起泡剤を添加して空気を供給して気泡を発生させてこの気泡に未燃カーボンを付着させて浮上させる分離装置とを備え、前記フライアッシュタンクとスラリータンクとに連通するフライアッシュ供給管に、この供給管よりフライアッシュの一部を吸引する吸引管と、この吸引管より吸引されたフライアッシュ中の未燃カーボンを測定する測定装置とを設け、この測定装置により測定された未燃カーボン量に基づいて前記捕集剤添加量を調整する制御装置を設けたことを特徴としている。
【0013】
5. 前記吸引管は、供給管の略中心部を流通するフライアッシュを抜き出せるように伸縮自在に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボンの除去方法は、スラリー調整槽に投入されるフライアッシュ中の未燃カーボン量をインライン計測するようにしたので、表面改質装置に供給されるスラリーを構成するフライアッシュ中の未燃カーボン量が事前に把握することができ、その未燃カーボン量に適した捕集剤の添加量とすることができる。
【0015】
結果、捕集剤の過剰添加が防止され、その過剰添加分のコストを削減することができる。
【0016】
そして、コンクリート混和材やフライアッシュセメントとして使用されるフライアッシュ中の未燃カーボン含有率のバラツキが抑制されるので、高品質のフライアッシュが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明について説明する。
図1は、本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボンを除去する処理工程の概略を示している。
【0018】
その処理工程は、フライアッシュf1を受け入れるフライアッシュタンク1と、フライアッシュf1に水を加えてスラリーf2を形成するスラリー調整槽2と、捕集剤kを添加されたスラリーf3に剪断力を付与して未燃カーボンの表面を改質する表面改質機4と、改質されたスラリーf4に起泡剤を加えて気泡を発生させ、この気泡にフライアッシュ中の未燃カーボンを付着させて浮上させて分離する浮選機7と、この浮選機7からのテーリングf6を脱水するフィルタープレス8と、浮選機7からのフロスc1を脱水して未燃カーボンc2を得るためのフィルタープレス9等を備えている。
【0019】
前記スラリー調整槽2は、フライアッシュf1と水wとでスラリーf2を生成するために備えられ、スラリーf2を攪拌する攪拌羽根が内部に設けられている。調整されるスラリーf2のフライアッシュ濃度は3〜50重量%の範囲となっている。スラリー調整槽2の前段には、フライアッシュタンク1と水供給設備が設けられ、スラリー調整槽2の後段
には、スラリーf2を表面改質機4へ移送するためのポンプp1が備えられている。
【0020】
前記表面改質機4は、円筒状本体と、この本体を複数の小部屋に仕切る複数の仕切壁と、回転軸に放射状に固定された複数の攪拌羽根とを備えている。また、表面改質機4の前段には、捕集剤を貯蔵する捕集剤タンクと、捕集剤を表面改質機4に供給するためのポンプp2が設けられている。捕集剤としては、灯油、軽油、重油等が使用されており、その添加量はフライアッシュ中の未燃カーボン量の5〜10重量%の範囲に調整されている。
【0021】
調整槽5は、捕集剤kが添加され表面改質機4で剪断力を付与されたスラリーf4に、起泡剤タンク6からポンプp3を介して供給された起泡剤bを添加してこれらを混合するための攪拌羽根を備えている。調整槽5の後段には、調整されたスラリーf5を浮選機7に移送するポンプp4が設けられている。起泡剤としては、メチルイソブチルカルビノールを用いることができる。
【0022】
浮選機7は、気泡にフライアッシュの未燃カーボンを付着させて浮上させ、未燃カーボンc1と、未燃カーボンが除去されたフライアッシュf6とに分離するものであり、浮選機7の上方には、泡を発生させるための空気供給設備が設けられている。浮選機7の後段には、テーリングをフィルタープレス8に移送するポンプp4が設けられている。
【0023】
フィルタープレス8は、浮選機7からのフライアッシュf6を固液分離して脱水するために備えられ、脱水されたフライアッシュf7が回収されるようになっている。また、フィルタープレス8から排出された水は、ポンプp6を介してスラリー調整槽2に循環水w2として戻され、再利用されている。
【0024】
フィルタープレス9は、浮選機7からの未燃カーボンc1を含むフロスを固液分離するために備えられ、分離されたケーキに含まれる未燃カーボンc2を燃料として利用することができる。また、フィルタープレス9から排出された水は、ポンプp7を介してスラリー調整槽2に循環水w2として戻され、再利用されている。
【0025】
次に、本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボンを除去する方法について、詳細を説明する。
図2に示すように、本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボン除去方法におけるインライン計測装置11は、フライアッシュタンク1から定量供給装置16へ供給する供給管10aに設けた吸引管10bを介してフライアッシュをサンプリングするようになっている。また、計測装置11は、測定した未燃カーボン量に応じて捕集剤供給ポンプp2に制御信号s1を送信して供給量が制御されるようになっている。
【0026】
詳しくは、前記計測装置11は、図3に示すように、未燃カーボン量と、その未燃カーボン量に適した捕集剤添加量との関係が予め入力されており、その入力された値に基づいて自動的に捕集剤の添加量を調整するようになっている。捕集剤の添加量が多めに設定されていれば未燃カーボンの除去性能の著しい低下を防ぐことができるので、図3に示されている添加量は、最少添加量が示されている。従って、捕集剤の添加量は図3のおよそ2倍程度の範囲内となるように調整されている。
【0027】
更に、吸引管10bを介して計測装置11に導入されたフライアッシュは、所定の振動が与えられたフィルタに捕集されるようになっており、フライアッシュが捕集されたフィルタの振動数の減衰の変化量から未燃カーボン量を算出するようになっている(フィルタ振動法)。
【0028】
また、計測装置11に導入されたフライアッシュの一部は、その重量が秤量され、高温
炉により燃焼される。この燃焼により発生した二酸化炭素量を測定し、そのフライアッシュ中の未燃カーボン量が算出される(強熱減量法)。
【0029】
前記フィルタ振動法と強熱減量法とは、それぞれ連続測定が可能であり、スラリータンクに供給されるフライアッシュ中の未燃カーボン量がインラインで連続的に測定されている。また、フィルタ振動法と強熱減量法とにより未燃カーボン量を計測するようにしているので、測定精度を高めることができる。また一方の測定手段が停止したりしても他方の測定手段が測定し続けることができる。
【0030】
本発明により、スラリータンクに供給されるフライアッシュ中の未燃カーボン量を自動計測するようにしたので、スラリー中の未燃カーボン量が把握されるようになり、その未燃カーボン量に適した捕集剤を添加するようにしたので、フライアッシュに最適な処理条件を適時に提供することができる。
【0031】
結果、捕集剤の過剰添加が防止され、その過剰添加分のコストを削減することができる。
【0032】
そして、コンクリート混和材やフライアッシュセメントとして使用されるフライアッシュ中の未燃カーボン含有率のバラツキが抑制されるので、高品質のフライアッシュが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るフライアッシュ中の未燃カーボン除去方法の概略工程図である。
【図2】フライアッシュタンクからスラリータンクへ供給されるフライアッシュ中の未燃カーボン量を計測する装置の概略説明図である。
【図3】フライアッシュ中の未燃カーボン量と捕集剤の添加量とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 フライアッシュタンク
2 スラリー調整槽
3 捕集剤タンク
4 表面改質機(攪拌槽)
4a 剪断翼
5 調整槽
6 起泡剤タンク
7 浮選機
8,9 フィルタープレス
10a 供給管
10b 吸引管
11 計測装置
s1 制御信号
w 水
w2 循環水
k 捕集剤
b 起泡剤
c1 浮選機で分離された未燃カーボン
c2 脱水された未燃カーボン
f1 フライアッシュ
f2 フライアッシュスラリー
f3 捕集剤の添加されたフライアッシュスラリー
f4 剪断力の付与され表面改質されたフライアッシュスラリー
f5 起泡剤の添加されたフライアッシュスラリー
f6 浮選機で未燃カーボンが除去されたフライアッシュスラリー
f7 脱水されたフライアッシュスラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュに水を加えて生成したスラリーに捕集剤を添加して剪断翼の回転による剪断力を付与し、更にそのスラリーに起泡剤を添加すると共に空気を供給して気泡を発生し、この気泡にフライアッシュ中の未燃カーボンを付着させて浮上させ、フライアッシュと未燃カーボンとを分離するフライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法において、
水が加えられてスラリーを生成するフライアッシュ中の未燃カーボン量を測定し、捕集剤の添加量を調整することを特徴とするフライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法。
【請求項2】
前記フライアッシュの一部を所定の振動が与えられたフィルタに捕集し、そのフィルタの振動数の減衰の変化量より未燃カーボン量を算出することを特徴とする請求項1記載のフライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法。
【請求項3】
前記フライアッシュの一部を秤量し、この秤量したフライアッシュを燃焼させて発生した二酸化炭素を測定し、前記秤量したフライアッシュの重量と発生した二酸化炭素量から未燃カーボン量を算出することを特徴とする請求項1又は2記載のフライアッシュ中の未燃カーボンの分離方法。
【請求項4】
フライアッシュを貯留するフライアッシュタンクと、このフライアッシュタンクから供給されたフライアッシュに水を加えてスラリーを生成するスラリータンクと、生成されたスラリーに捕集剤を添加して剪断翼を回転させて剪断力を付与する攪拌タンクと、剪断力が付与されたスラリーに起泡剤を添加して空気を供給して気泡を発生させてこの気泡に未燃カーボンを付着させて浮上させる分離装置とを備え、
前記フライアッシュタンクとスラリータンクとに連通するフライアッシュ供給管に、この供給管よりフライアッシュの一部を吸引する吸引管と、この吸引管より吸引されたフライアッシュ中の未燃カーボンを測定する測定装置とを設け、この測定装置により測定された未燃カーボン量に基づいて前記捕集剤添加量を調整する制御装置を設けたことを特徴とするフライアッシュ中の未燃カーボンの分離装置。
【請求項5】
前記吸引管は、供給管の略中心部を流通するフライアッシュを抜き出せるように伸縮自在に形成されていることを特徴とする請求項4記載のフライアッシュ中の未燃カーボンの分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−17619(P2010−17619A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178394(P2008−178394)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(591288355)財団法人国際環境技術移転研究センター (53)
【Fターム(参考)】