説明

フライ食品用ミックス

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フライ食品用ミックスに関する。本発明に係るフライ食品用ミックスをフライ食品のコロモに用いることにより、コロモがサクサクとして軟らかな食感となるフライ食品を得ることが出来、得られたフライ食品は、そのまま長時間保存しても、チルド流通させても、また冷凍後室温やオーブン、電子レンジ等で解凍しても、コロモのサクサクとして軟らかな食感を保ち得る。
【0002】
【従来の技術】天ぷらや唐揚げ等のフライ食品は、揚げ種を小麦粉等からなるバッターに付け、それを高温に熱した油の中に投入し、食品を加熱処理すると同時にコロモの水分含量を一定量以下にする調理法により、パリッとし、かつ、サクサクとした食感を特徴とした食品である。
【0003】近年、スーパーや惣菜店で販売される天ぷらや唐揚げ等のフライ食品は、大量生産し流通させるため、専門店のように揚げたてを供することはできない。したがって、こうしたフライ食品は、揚げた後消費者の手にわたるまでに長時間経過しているのが通常であり、そのため揚げたてのパリッとしたサクサク感がうしなわれ、食感の劣化が避けられない。
【0004】また食生活が多様化し、個食化や、できあいの惣菜を購入して家庭で食べるいわゆる「中食」も一般的になってきたことに伴い、簡便に利用できる冷凍食品の消費が大きく伸びており、各家庭で電子レンジ等で、冷めたフライ食品を再加熱したり、市販の調理済み冷凍食品を加熱調理したりして食事に供する事が多くなってきている。それに伴い、冷凍フライ食品に対しても、よりよい食感の要請が高まっており、現在市場に流通している冷凍フライ食品の食感をさらに向上させることが求められている。
【0005】こうしたニーズを背景として、従来、フライ食品用ミックスの改良のための種々の提案がなされている。しかしながら、長時間の放置や電子レンジでの再加熱によってもサクサク感を十分に保持しうる解決策はまだ開発途上にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑み、保存・流通・解凍によってもサクサク感を保持しうる天ぷら、唐揚げ等のフライ食品とできるフライ食品用ミックスを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来、フライ食品には使用されていなかったネイティブジェランガムに特に着目し、種々の検討を加え、ネイティブジェランガムをフライ食品用ミックスに配合することにより本発明の課題が解決されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明は、ネイティブジェランガムを配合してなるフライ食品用ミックスに関する。また、本発明は、ネイティブジェランガムに加え、さらにカゼイン、低HLB界面活性剤、焼成カルシウムから選ばれる1種または2種以上を配合してなるフライ食品用ミックスに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明でいう、フライ食品とは、油で揚げた食品のうち、食品素材そのままを油で揚げた、いわゆる素揚げを除いたものをいう。より具体的には、唐揚げ、空揚げ、天ぷら、精進揚げ、フリッター、パン粉揚げ等が挙げられる。
【0010】本発明に係るフライ食品用ミックスは、一般のフライ食品用ミックスにネイティブジェランガム、または、ネイティブジェランガムにカゼイン、低HLB界面活性剤、焼成カルシウムから選ばれる1種または2種以上を配合をすればよい。本発明で使用される、一般のフライ食品用ミックスには特に制限はない。
【0011】また、本発明に係るフライ食品用ミックスを用いてフライ食品を製造する方法も、一般のフライ食品用ミックスを用いてフライ食品を製造する方法、すなわち常法に従えばよく、特に制限はない。
【0012】ミックス中に含む粉類には、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉等から選ばれる1種または2種以上を使用することができ、またその一部または全部を米粉、とうもろこし粉、大豆粉等から選ばれる1種または2種以上で置き換えてもよい点も、常法の範囲内であり、特に制限はない。
【0013】本発明で用いられるネイティブジェランガムは、グルコース2分子、グルクロン酸1分子及びラムノース1分子を構成単位とする多糖類(分子量約60〜70万)であるジェランガム(特開昭55−79397号)の脱アシル処理前の前駆体として得られる微生物起源の高分子多糖類(融点及び固化点:65〜70℃)である。当該ネイティブジェランガムは、一般に微生物の培養によって生産される。具体的には、シュードモナス・エロデア(Pseudomonas elodea:ATCC31461)又はその同等の菌株を、例えばグルコース3%、KH4NO3 0.05%、MgSO4・7H2O 0.01%、NH4NO3 0.09%及び窒素源として有機成分を少量含む液体培地に接種し、これを好気的条件下で30℃程度、約50時間培養して得られる培養物から菌体表面に生産された粘質物を、脱アシル処理することなくそのまま単離・回収することによって製造する方法が例示される(特開昭55−79397号公報)。
【0014】ネイティブジェランガムは天然に起源を有するものであるため、用いる産生微生物や精製条件によっては、その構造も微妙に変わりうる。従って、本発明で用いられるネイティブジェランガムは、特定の構造式(Sanderson,G.R., FOOD GELS, ed. Peter Harris, Elsevier Science Publishers LTD., England, 1990, p.204)に基づいて一義的に限定されることなく、上記方法に従って微生物(ATCC31461)により産生されるネイティブジェランガムの性質を有するものであればよい。
【0015】ただし、従来知られているジェランガムは生産菌は同じであるが、性質が異なり、本発明の効果は奏しない。本発明において、ネイティブジェランガムの配合量は、フライ食品用ミックス100重量部あたり、0.1〜5重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましく、0.5〜1.5重量部がさらに好ましい。しかし、求めるミックスやバッターの性状に応じ、上記範囲を目安として、当業者が任意に調節しうるものであり、この点から、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。
【0016】本発明にいうカゼインはカゼインのほか、カゼインの金属塩も含み、味やフライ食品の製造工程上の便宜などからカゼインナトリウムが好適に使用される。本発明において、カゼインを配合することにより、フライ食品のサクサク感が向上するほかに、カゼインの配合による粘度の上昇で揚げ種にバッターがよくつき、また、揚げたときに表面で泡が油をはじくように生じ、揚げ種の中への油の浸入がより抑えられるという利点がある。本発明において、カゼインの配合量は、フライ食品用ミックス100重量部あたり、2〜30重量部が好ましく、5〜25重量部がより好ましい。しかし、求めるミックスやバッターの性状に応じ、上記範囲を目安として、当業者が任意に調節しうるものであり、この点から、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。
【0017】本発明にいう低HLB界面活性剤とは、HLBが10以下の界面活性剤をいい、界面活性剤の種類には特に制限はない。好適にはHLBが10以下のショ糖脂肪酸エステルが使用される。本発明において、低HLB界面活性剤を配合することにより、フライ食品のサクサク感が向上するほかに、サクサク感の耐冷凍性がより向上するという利点がある。
【0018】本発明において、低HLB界面活性剤の配合量は、フライ食品用ミックス100重量部あたり、0.1〜5重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましく、0.5〜1.5重量部がさらに好ましい。しかし、求めるミックスやバッターの性状に応じ、上記範囲を目安として、当業者が任意に調節しうるものであり、この点から、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。
【0019】本発明に用いられる焼成カルシウムは骨粉や貝殻や卵殻などを原料とするものが好ましい。本発明において、焼成カルシウムを配合することにより、フライ食品のサクサク感がより乾いた感じで向上するという点で利点がある。また、フライ食品用ミックスと水とを混ぜる際により混ぜやすくなるという利点もある。本発明において、焼成カルシウムの配合量は、フライ食品用ミックス100重量部あたり、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、1〜5重量部がさらに好ましい。しかし、求めるミックスやバッターの性状に応じ、上記範囲を目安として、当業者が任意に調節しうるものであり、この点から、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。
【0020】本発明において、ネイティブジェランガムに加え、さらにカゼイン、低HLB界面活性剤、焼成カルシウムから選ばれる1種または2種以上を配合する場合にも、カゼイン、低HLB界面活性剤、焼成カルシウムの好適な配合量の範囲は変わらない。
【0021】一般的なフライ食品の製法を以下に示す。すなわち、粉類(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉等の麦粉、米粉、とうもろこし粉、大豆粉、パン粉等から選ばれる1種または2種以上。本発明ではネイティブジェランガム、またはネイティブジェランガムとカゼイン、低HLB界面活性剤、焼成カルシウムから選ばれる1種または2種以上とが粉類に含まれる。)を水で溶き、必要に応じ卵等を加えて混ぜ、それに畜肉や小魚、豆腐、野菜等の揚げ種を浸してまぶし、150〜200℃程度に熱した油の中に投入し、揚がった頃合いを見計らってひきあげればよい。本発明に係るフライ食品用ミックスも上記製法と同様にして使用できる。
【0022】
【発明の効果】本発明のフライ食品用ミックスを使用して製造した天ぷら等のフライ食品は、コロモの食感がパリッとしているだけでなく、ソフトでかつサクサクとした歯ごたえを有し、常温で長時間保存してもそうした食感の劣化が少なく、良好な品質を保持しうる。また、本発明のフライ食品用ミックスを使用して製造した天ぷら等のフライ食品は、一旦冷凍し、その後電子レンジで解凍した場合にも、解凍の際の水分蒸散にもかかわらず、サクサクとした歯ごたえが失われておらず、食感が揚げたてとほとんど変わらない。
【0023】
【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0024】実施例1、比較例1唐揚げ用ミックスベース(小麦粉:50重量部、澱粉:48.5重量部、唐揚げ用調味料<三栄源エフエフアイ株式会社製>:1.5重量部、計100重量部を混合したもの。いずれも粉体。)に表1に示す多糖類をそれぞれ配合して唐揚げ用ミックスを調製し、唐揚げ用ミックス:水=1:1で溶いた中に鶏肉を浸してコロモとし、160〜180℃の油で揚げ、試食して評価した。評価方法は、10名のパネラーにより、唐揚げのコロモのサクサク感につき5点満点で評価することにより行った。表1には、その平均点を示す。なお、多糖類は、すべて三栄源エフエフアイ株式会社製のものを使用した。表1より明らかなように、ネイティブジェランガムを配合した本発明に係るフライ食品用ミックスを用いた唐揚げは、他のミックスを用いたものと比べ、顕著に食感(サクサク感)が向上していることがわかった。
【0025】
【表1】


【0026】実施例2、比較例2唐揚げ用ミックスベース(小麦粉:25重量部、澱粉:73重量部、唐揚げ用調味料<三栄源エフエフアイ株式会社製>:1.5重量部、ネイティブジェランガム:0.5重量部、計100重量部を混合したもの。いずれも粉体。)に、表2に示す蛋白質をそれぞれ配合して唐揚げ用ミックスを調製し、唐揚げ用ミックス:水=1:1で溶いた中に鶏肉を浸し、160〜180℃の油で揚げ、室温まで放冷後、−30℃のフリーザー中に2週間保存し、それを電子レンジで解凍したものを試食して、評価した。その結果を表2に示す。評価方法は実施例1、比較例1と同様である。なお、蛋白質は、すべて三栄源エフエフアイ株式会社製のものを使用した。表2より明らかなように、ネイティブジェランガムにさらにカゼインナトリウムを配合した本発明に係るフライ食品用ミックスを用いた唐揚げは、他のミックスを用いたものと比べ、顕著に食感(サクサク感)が向上していることがわかった。
【0027】
【表2】


【0028】実施例3(麦粉+ネイティブジェランガム系での界面活性剤の効果)
天ぷらコロモ用ミックスベース(小麦粉:99.9重量部、ネイティブジェランガム:0.1重量部、計100重量部を混合したもの。いずれも粉体。)に表3に示す界面活性剤を配合し、天ぷらコロモ用ミックス:水=1:1.5で溶いた中にエビを浸し、さらに天ぷら粉をまぶし、160〜180℃の油で揚げたものを室温で放冷後、−30℃で2週間保存し、電子レンジで解凍して試食し評価した。その結果を表3に示す。評価方法は実施例1、比較例1と同様である。なお、界面活性剤は、すべて三栄源エフエフアイ株式会社製のものを使用した。表3より明らかなように、ネイティブジェランガムにさらに低HLB界面活性剤を配合した本発明に係るフライ食品用ミックスを用いた唐揚げは、高HLB界面活性剤を配合したものと比べ、顕著に食感(サクサク感)が向上していることがわかった。
【0029】
【表3】


【0030】実施例4(麦粉+ネイティブジェランガム系での焼成カルシウムの効果)
フライ食品用ミックスベース(小麦粉:75重量部、澱粉:23.5重量部、唐揚げ用調味料<三栄源エフエフアイ株式会社製>:1重量部、ネイティブジェランガム:0.5重量部、計100重量部を混合したもの。いずれも粉体。)に表4に示す焼成カルシウムを混合してフライ食品用ミックスを調製し、フライ食品用ミックス:水=1:1で溶いた中にアジを浸し、160〜180℃の油で揚げ、試食して評価した。その結果を表4に示す。評価方法は実施例1、比較例1と同様である。なお、焼成カルシウムは、すべて三栄源エフエフアイ株式会社製のものを使用した。表4より明らかなように、ネイティブジェランガムにさらに焼成カルシウム(牛骨、貝殻、卵殻)を配合したフライ食品用ミックスを用いた唐揚げは、さらに食感(サクサク感)が向上していることがわかった。
【0031】
【表4】


【0032】実施例5(組み合わせの効果)
唐揚げ用ミックスベース(小麦粉:25重量部、澱粉:73重量部、唐揚げ用調味料<三栄源エフエフアイ株式会社製>:1.5重量部、ネイティブジェランガム:0.5重量部、計100重量部を混合したもの。いずれも粉体。)に、表5に示す成分をそれぞれ混合して唐揚げ用ミックスを調製し、唐揚げ用ミックス:水=1:1で溶いた中に鶏肉を浸し、160〜180℃の油で揚げたものを室温で放冷後、−30℃で2週間保存し、電子レンジで解凍して試食し評価した。その結果を表5に示す。評価方法は実施例1、比較例1と同様である。なお、表5に示す成分は、すべて三栄源エフエフアイ株式会社製のものを使用した。表5より明らかなように、ネイティブジェランガムにさらにカゼインナトリウムを配合したフライ食品用ミックスを用いた唐揚げは、さらに食感(サクサク感)が向上していることがわかった。また、カゼインナトリウムのほかに低HLB界面活性剤や焼成カルシウムを併用しても、顕著な効果が認められた。
【0033】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】ネイティブジェランガムを配合してなるフライ食品用ミックス。
【請求項2】さらにカゼイン、低HLB界面活性剤、焼成カルシウムから選ばれる1種または2種以上を配合してなる請求項1記載のフライ食品用ミックス。

【特許番号】特許第3359294号(P3359294)
【登録日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【発行日】平成14年12月24日(2002.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−374139
【出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【公開番号】特開2000−189090(P2000−189090A)
【公開日】平成12年7月11日(2000.7.11)
【審査請求日】平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【参考文献】
【文献】特開 平8−182472(JP,A)
【文献】特開 平6−237708(JP,A)
【文献】特開 昭63−240780(JP,A)