説明

フラッシュバルブ及びフラッシュバルブ装置

【課題】主弁をコンパクトに構成することができ、且つ主弁の開弁速度を従来に増して速くすることのできるフラッシュバルブを提供する。
【解決手段】給水路42を開閉する主弁46と、圧力室50と、給水路42の水を圧力室50に導入して圧力上昇させる小孔からなる導水孔と、水抜路56と、起動弁58とを設けて成るフラッシュバルブ32において、それぞれが圧力室50で開口する導水孔としての第1導水孔70及び第2導水孔72と、第2導水孔72を開閉する副弁74と、副弁74を閉弁方向に付勢し且つ主弁46の閉弁状態の下で副弁74を閉弁状態に保持するばね82と、副弁74に当接し又は離間して副弁を開閉させるストッパ96とを設け、副弁74の開弁状態の下では第1導水孔70と第2導水孔72との両方を通じて、また副弁74の閉弁状態の下では一方の第1導水孔70のみを通じて給水路42の水を圧力室50に導入させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は所定量の水を便器洗浄水として給水した後、自動給水停止するフラッシュバルブ及びフラッシュバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定量の水を便器洗浄水として給水した後、自動給水停止するフラッシュバルブとして図9に示すものが公知である。
同図において200は給水路で、202は給水路200を開閉するピストン式の主弁であり、この主弁202が主弁座204から離間することで即ち開弁することで、給水路200における上流側の1次側水路200aと下流側の2次側水路200aとが連通し、給水が行われる。
また主弁202が弁座204に着座することで即ち閉弁することで、それら上流側の1次側水路200aと下流側の2次側水路200aとが遮断され、給水が停止する。
【0003】
主弁202の背後(図中上側)には圧力室208が形成されており、主弁202は通常時はこの圧力室208内の水の圧力により図9に示す閉弁状態に維持される。
この圧力室208からは、圧力室208内の水を給水路200における2次側水路200bに抜き出すための水抜路210が延び出しており、その水抜路210上に水抜弁としての起動弁212が配設されている。
【0004】
214は、主弁202を貫通し、給水路200における1次側水路200aと圧力室208とを連通させて、1次側水路200aの水を圧力室208に導入させる小孔からなる第1導水孔で、主弁202の開弁後において1次側水路200aの水がこの第1導水孔214を通じ圧力室208内に導入されることで、圧力室208内の水の圧力が上昇せしめられる。
尚この第1導水孔214は、後述の第2導水孔218とともに全体の導水孔を構成している。
【0005】
216は操作棒で、この操作棒216の操作により起動弁212が傾動せしめられる(図10参照)。
このフラッシュバルブでは、操作棒216を操作して起動弁212を傾動させると、水抜路210が開放状態となって圧力室208の水が給水路200における2次側水路200bに抜き出され、圧力室208内の水の圧力が消失する。
ここにおいて主弁202が給水路200における1次側水路200aの圧力により上昇して開弁し、給水路200が開放状態となって給水が行われる。
【0006】
圧力室208内には、主弁202の開弁後において給水路200における1次側水路200aの水が第1導水孔214を通じて導入され、次第に圧力上昇する。
そしてその圧力が所定圧力に達することによって、主弁202がその押圧作用で主弁座204に着座し閉弁する。ここにおいて給水路200が遮断状態となって給水が停止する。
【0007】
このフラッシュバルブにはまた、第1導水孔214に加えて同じく小孔からなる第2導水孔218が、主弁202を貫通し、1次側水路200aと圧力室208とを連通させる状態で設けられており、そしてその第2導水孔218を開閉する副弁220が主弁202に設けられている。
ここで副弁220は、副弁座222への着座によって第2導水孔218を閉状態とし、また副弁座222から離間することでこれを開状態とする。
【0008】
副弁220は、主弁202の閉弁状態の下では自重により図中下向きに沈み込んだ状態(下がった状態)にあり、そしてその副弁220の図中下側には、給水路の水を副弁220の下側に導いて圧力を副弁220に対し上向きに作用させるための水室219が形成されている。
224は副弁220に当接してこれを開弁させるストッパで、ねじ226を有しており、図中上下方向の位置即ち副弁220への当接位置が上下に調節可能とされている。
【0009】
このフラッシュバルブは全体として次のように動作する。
即ち、図10に示しているように操作棒216を操作して起動弁212を傾動させると、圧力室208内の水が水抜路210を通じて給水路200における2次側水路200aに抜き出され、ここにおいて主弁202が図12に示しているように給水路200における1次側水路200aの圧力にて開弁動作する。
この状態で給水路200が開放状態となって給水が行われる。
【0010】
図11に示しているように主弁202が一杯まで開弁した状態では、第2導水孔218上の副弁220はストッパ224により図中下向きに相対的に押し下げられた状態にあって開弁した状態にあり、従ってこの状態の下で圧力室208内には第1導水孔214と第2導水孔218との2つの導水孔を通じて1次側水路200aの水が導入される。
従って圧力室208の圧力は第1導水孔214のみの場合に比べて速やかに圧力上昇し、その後の主弁202の閉弁動作の開始時期が早められる。
【0011】
そして図12に示しているように主弁202が閉弁動作を始めて所定ストローク図中下向きに下降したところで、詳しくは主弁202が閉弁直前に到ったところで副弁220がストッパ224から離間するのと併せて閉弁状態となり(給水路200における1次側水路200aの圧力により)第2導水孔218を閉鎖する。
その後は第1導水孔214を通じてのみ1次側水路200aの水が圧力室208へと流入し、主弁202の閉弁速度はそれまでに比べて鈍化する。
そして圧力室208の圧力が所定圧力となることによって主弁202が閉弁状態となり、ここにおいて給水路200が遮断状態となって給水が停止する。
【0012】
このフラッシュバルブでは、主弁202が主弁座204に着座する際にはゆっくりと着座即ち閉弁するが、これは急激な閉弁を防止してウォータハンマが発生するのを回避するためである。
【0013】
以上のように第2導水孔218,副弁220及びストッパ224を備えたフラッシュバルブの場合、これらを備えていないものに比べて主弁202の開弁後における閉弁動作を速めることができ、従って最大瞬間流量を維持しつつその後余分に消費される水の量を節約することができ、節水を果すことができる。
【0014】
このような第2導水孔218,副弁220及びストッパ224を備えた副弁機構を有するフラッシュバルブは、例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3等に開示されている。
【0015】
しかしながらこの図9〜図12に示す従来のフラッシュバルブでは、主弁の開弁開始時に開状態にある副弁220を給水圧で閉弁させるものであることから、副弁220の図中下側(副弁220の閉弁方向と反対側)に水室219及び1次側水路200aの水を回り込ませるための水路を設けておくことが必要であり、このため主弁202の軸方向(進退方向)に、副弁220を設けるための大きなスペースを確保しておかなければならず、主弁202が軸方向に大型化してしまう問題を生ずる。
【0016】
またこのフラッシュバルブでは、副弁220が主弁202の閉弁状態のときに全開した状態にあって、主弁202の開弁開始時に給水路200の水が第2導水孔218を通じて圧力室208の側に漏出してしまうとともに、副弁220が閉弁するまでに時間がロスタイムとなって、主弁202の開弁動作に遅れを生ぜしめてしまう。
【0017】
また図9〜図12に示すフラッシュバルブの場合、主弁202がピストン弁からなっているため、シール用のパッキン(図ではUパッキン)234を主弁202と一体に圧力室208の内周壁面に沿って摺動させることが必要であるが、このパッキン234は摺動を繰り返すうちに摩耗を生じ、その摩耗に起因した不具合を発生する問題がある。
また水質によってはパッキン234が動き辛くなるといった問題も内在している。
【0018】
ところで便器(大便器)の洗浄方式として、先ず便器の上端の周縁部に沿って設けられたリムから洗浄水を便鉢に射水するリム洗浄を行い、次にジェット孔から便器の排水トラップ部に向けて洗浄水を噴射し、排水トラップ部の内部を満水化してサイホン作用で便鉢内部の汚水を排出するジェット洗浄を行った後、続いて更に再びリム洗浄に切り替えて便器洗浄する方式があり、便器の洗浄方式として広く採用されている。
図13(A)は同洗浄方式におけるリム洗浄A-1,ジェット洗浄B,リム洗浄A-2の際の給水の波形を示している。
ここで横軸は時間を、縦軸はリム洗浄A-1,ジェット洗浄B,リム洗浄A-2の際の給水の流量を表している。
【0019】
便器洗浄に際しては、リム洗浄A-1,ジェット洗浄B,リム洗浄A-2における各波形の立上り,立下りをできるだけ急峻とすること、更にリム洗浄A-1,ジェット洗浄B,リム洗浄A-2のそれぞれにおいて最大瞬間流量をできるだけ多くすることが、便器洗浄の際の洗浄能力を高くする上で有効である。
【0020】
但しリム洗浄A-1,ジェット洗浄B,リム洗浄A-2それぞれにおいて主弁を急閉止させるとウォータハンマを発生させてしまうので、閉弁間際には主弁をゆっくりと閉弁させることが必要である。
この場合において、リム洗浄A-1,A-2及びジェット洗浄Bを行うために、図9〜図12に示す上記のフラッシュバルブをそれぞれ用いることが考えられる。
【0021】
図9〜図12に示すフラッシュバルブの場合、主弁202がピストン弁であって移動ストロークを大きく取ることが可能であり、また副弁機構即ちウォータハンマ防止機構を備えていることから、リム洗浄A-1,A-2及びジェット洗浄Bを行うに際して給水の流量を多く確保することが可能であり、また閉弁の際の主弁の急閉止を回避してウォータハンマの発生を防止することが可能である。
【0022】
しかしながらこのフラッシュバルブの場合、主弁202が自閉式(圧力室208の圧力で自動的に閉じる方式)の弁であるため、更にはピストン弁から成る主弁202が全開状態から全閉状態まで移動する際のストロークが大きいことから、図13(B)に示しているように閉弁開始から閉弁終了までに長い時間を要してしまい、その間に図中斜線で示しているように多量の水を無駄に消費してしまう。
【0023】
また上記の便器の洗浄方式の場合、リム洗浄A-1からジェット洗浄B、更にジェット洗浄Bからリム洗浄A-2への切替えのタイミングは洗浄能力そのものを大きく左右するが、図9〜図12に示したフラッシュバルブをこの洗浄方式の便器洗浄用として用いた場合、リム洗浄A-1からジェット洗浄Bへの切替えに要する時間、更にジェット洗浄Bからリム洗浄A-2への切替えのために長い時間を要してしまい、このことが洗浄能力を低下させてしまう。
一方リム洗浄A-1において主弁202が完全閉弁するまでの間にジェット洗浄Bを開始してしまうと、ジェット洗浄Bのための給水圧が不足してしまい、これもまた洗浄能力を低下させてしまう原因となる。
【0024】
そのためウォータハンマを防止しつつ洗浄水を大流量で流して洗浄能力を高く確保する必要がある場合には、このような自閉式のフラッシュバルブを用いずに、図14に示すようにピストン式の主弁202を、ばね228で閉弁方向に付勢し、そしてモータによりカム230及び押棒232を介して主弁202を閉弁状態から強制開弁させる形式のフラッシュバルブ(便器洗浄装置)が従来用いられていた。
【0025】
このようなフラッシュバルブ(便器洗浄装置)によれば、モータの回転によりピストン弁から成る主弁202を大きなストロークで且つ急速開弁及び急速閉弁させることが可能であり、給水の流量を大流量とすることができるとともに、図13(A)のリム洗浄A-1,ジェット洗浄B,リム洗浄A-2のそれぞれの波形の立上り,立下りを急峻とし得て、高い洗浄能力を確保することができる。
またカム230の形状を適宜設定することで、主弁202の閉弁間際の速度をゆっくりとした速度とすることができ、ウォータハンマの発生も防止することができる。
【0026】
しかしながらこのフラッシュバルブでは駆動源としてモータが必要となるとともに、モータからの力を主弁202に伝えるためのカム230や押棒232その他の動力伝達機構が必要で、これらによりフラッシュバルブの構造が複雑化してしまう。
更にこのフラッシュバルブにおいても主弁202がピストン弁からなっているため、パッキン234の摩耗及びこれによる不具合発生の問題も内在している。
【0027】
これらの問題を解決する手段として、フラッシュバルブにおける主弁をダイヤフラム弁で構成し、そしてそのダイヤフラム弁に図9〜図12に示す副弁機構を組み込むといったことが考えられる。
主弁をダイヤフラム弁として構成した場合、開弁及び閉弁の速度を速くすることが可能であり(少ないストロークで全開から全閉及び全閉から全開とすることができる)、一方でシート径(主弁座の径)を大きくすることで、更には開閉の移動ストロークをある程度大きくすることで、便器洗浄の際の必要な流量を確保することが可能である。
しかしながら、上記したように図9〜図12に示す副弁機構を設けるためには軸方向に大きな取付スペースを必要とする問題があり、小型でコンパクトなダイヤフラム弁を主弁とするフラッシュバルブへの適用が難しいといった問題があった。
【0028】
またフラッシュバルブの主弁をダイヤフラム弁にて構成した場合においても、図9〜図12に示す副弁機構の下では起動弁を開操作してから副弁が閉じるまでの時間がロスタイムとなって、主弁の開弁動作に遅れを生じてしまう問題が依然として残る。
【0029】
尚、本発明に対する他の先行技術文献として下記特許文献4,特許文献5に記載されたものがある。
このうち特許文献4に記載のものは副弁及び主弁閉弁状態の下で副弁を閉弁状態に保持するばねは備えておらず、本発明と異なっている。
また特許文献5に記載のものは導水孔が単一であって、第1導水孔に加えて第2導水孔を備えた本発明とは異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開昭54−7624号公報
【特許文献2】実開平3−27106号公報
【特許文献3】特開昭53−4336号公報
【特許文献4】特開平2−113187号公報
【特許文献5】特開平4−68131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は以上のような事情を背景とし、主弁をコンパクトに構成することができ、且つ主弁が開弁遅れを生じることなく速やかに開弁できるフラッシュバルブ及びフラッシュバルブ装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
而して請求項1はフラッシュバルブに関するもので、(a)給水路と、(b)該給水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる圧力室と、(d)該主弁を貫通して前記給水路における該主弁の上流側の1次側水路と該圧力室とを連通させ、該給水路の水を該圧力室に導入する小孔からなる導水孔と、(e)該圧力室の水を前記給水路における前記主弁の下流側の2次側水路に抜き出す水抜路と、(f)該水抜路を開放して該主弁の開弁動作を起させる起動弁と、を設けて成るフラッシュバルブであって、(イ)それぞれが前記圧力室で開口する前記導水孔としての第1導水孔及び第2導水孔と、(ロ)前記主弁に組み付けられて該第2導水孔を開閉する副弁と、(ハ)該主弁に組み付けられて該副弁を閉弁方向に付勢し且つ該主弁の閉弁状態の下で該副弁を閉弁状態に保持するばねと、(ニ)前記主弁の開弁動作途中で前記副弁に当接し、該主弁の更なる開弁動作に伴って該副弁を前記ばねの付勢力に抗して開弁させる一方、該主弁の閉弁動作途中で該副弁から離間し、該副弁を前記ばねの付勢力で閉弁させるストッパと、を備え、前記副弁の開弁状態の下では前記第1導水孔と第2導水孔との両方を通じて、該副弁の閉弁状態の下では一方の該第1導水孔を通じて前記給水路の水を前記圧力室に導入するようになしてあることを特徴とする。
【0033】
請求項2のものは、請求項1において、前記主弁が、弾性材で構成されたダイヤフラム膜と、該ダイヤフラム膜を保持する硬質の保持部材とを有するダイヤフラム弁であることを特徴とする。
【0034】
請求項3のものは、請求項2において、前記主弁をなすダイヤフラム弁は、前記保持部材が板状をなす第1部材と第2部材とを有していて、それら第1部材と第2部材とが該ダイヤフラム弁の進退方向である軸方向に嵌合組付けされていることを特徴とする。
【0035】
請求項4のものは、請求項3において、前記第1部材と第2部材との間には、前記ばねを収容するばね室と、前記副弁における弁部を収容する弁収容室とを構成する空間が形成されていることを特徴とする。
【0036】
請求項5のものは、請求項4において、前記ばね室及び弁収容室は、前記ダイヤフラム弁を着座させる主弁座の径方向内側の位置に形成されていることを特徴とする。
【0037】
請求項6のものは、請求項5において、前記副弁は、前記ダイヤフラム弁の径方向中央部に該ダイヤフラム弁と同軸に設けられていることを特徴とする。
【0038】
請求項7のものは、請求項2〜6の何れかにおいて、前記保持部材には、前記圧力室の内周壁面に沿って摺動し、前記ダイヤフラム弁を開閉ガイドするガイド部が設けてあることを特徴とする。
【0039】
請求項8はフラッシュバルブ装置に関するもので、請求項2〜7の何れかに記載のフラッシュバルブを、便器のリム洗浄用のフラッシュバルブと、ジェット洗浄用のフラッシュバルブとして夫々備えており、それらリム洗浄用のフラッシュバルブとジェット洗浄用のフラッシュバルブの作動切替えによって、便器のリム洗浄とジェット洗浄とを行うようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0040】
以上のように本発明のフラッシュバルブは、導水孔としての第1導水孔及び第2導水孔と、第2導水孔を開閉する副弁と、副弁を閉弁方向に付勢し且つ主弁の閉弁状態の下で副弁を閉弁状態に保持するばねと、主弁の開弁動作途中で副弁に当接し、主弁の更なる開弁動作に伴って副弁をばねの付勢力に抗して開弁させる一方、主弁の閉弁動作途中で副弁から離間し、副弁をばねの付勢力で閉弁させるストッパとを設け、副弁の開弁状態の下では第1導水孔と第2導水孔との両方を通じて給水路の水を圧力室に導入させる一方、副弁の閉弁状態の下では一方の第1導水孔だけを通じて給水路の水を圧力室に導入させるようになしたものである。
【0041】
本発明のフラッシュバルブでは、主弁が閉弁状態にあるときには副弁がばねの付勢力で閉弁状態に保持されているため、図9〜図12に示す従来のフラッシュバルブ、即ち主弁が閉弁状態のときに副弁が開弁状態にあって、主弁が開弁開始するときに給水圧で副弁を閉じるものと異なって、副弁の閉弁方向と反対側に副弁を閉じるための給水圧を導くための水室や水路といったものを設ける必要はなく(副弁がばねの付勢力で閉弁保持されるため)、従って本発明のフラッシュバルブによれば、副弁取付のための所要スペースを小スペースとなすことができる。
これにより副弁取付部分の構造をコンパクトとなし得、またこれに伴って主弁をコンパクトに構成することが可能となる。
【0042】
また本発明のフラッシュバルブでは、主弁が閉弁状態にあるとき、副弁もまたばねの付勢力で閉弁状態に保持されているため、図9〜図12に示す従来のフラッシュバルブと異なって、主弁を開弁させるに際して開弁状態の副弁を閉弁させるまでの間がロスタイムとなって、主弁の開弁動作が遅れるといった問題を生じず、起動弁の開弁後に主弁を直ちに且つ瞬間的に開弁動作させることができ、洗浄水の水量が最大流量に達するまでの時間を可及的に短くし得て洗浄能力を高めることができる。
【0043】
尚本発明では、バルブボデーの壁をもって、上記副弁に当接してこれを開弁させるストッパとなすことができる。
この場合において、副弁に圧力室側に突出する弁軸を設けて、この弁軸に対してストッパを当接させるようになすこともできるし、或いは副弁を弁軸を有しない形状で構成する一方、バルブボデーからストッパを軸状に突出させて、この軸状の突出したストッパを副弁の弁部に当接させることで、副弁を開弁させるようになすことも可能である。
【0044】
本発明は、主弁がピストン弁から成るものに対しても適用可能で、この場合においてもピストン弁をコンパクト化することができる効果を奏する。
但しピストン弁の場合には副弁を設けるためのスペースをある程度大きく確保することが可能であるが、ダイヤフラム弁からなる主弁の場合、そのようなスペースを大きく取ることが難しく、従って本発明は主弁がダイヤフラム弁から成るものに適用して特に効果が大である(請求項2)。
【0045】
また主弁をダイヤフラム弁で構成した場合、開閉の移動ストロークを短くすることが可能で、そのことによって開弁開始から全開までの時間、更に全開状態から閉弁に到るまでの時間を短くすることができ、便器洗浄の際の流量特性の立上り及び立下りを急峻となし得て洗浄能力を高めることができる。
【0046】
更に加えてこのダイヤフラム弁からなる主弁の場合、開弁及び閉弁に際して、これと一体にパッキンを摺動させるといったことが必要でなく、パッキンが摩耗してその摩耗が各種不具合を発生させる原因になるといった問題を解消できる利点が得られる。
【0047】
この場合において、主弁を成すダイヤフラム弁の硬質の保持部材を板状の第1部材と第2部材とを有するものとなし、それら第1部材と第2部材とを主弁(ダイヤフラム弁)の進退方向である軸方向に嵌合組付けしておくことができる(請求項3)。
【0048】
また第1部材と第2部材との間には、ばねを収容するばね室と、副弁における弁部を収容する弁収容室とを構成する空間を形成しておくことができる(請求項4)。
【0049】
このようにしておけば、ダイヤフラム弁からなる主弁に対してばねと副弁との組込み空間を容易に形成でき、またダイヤフラム弁に対して副弁及びこれを付勢するばねを簡単に組み込むことができる。更にその組付構造を簡単な構造となすことができる。
【0050】
請求項5は、上記第1部材と第2部材との間に形成されるばね室と弁収容室とを、ダイヤフラム弁からなる主弁を着座させる主弁座の径方向内側の位置に形成したものである。
【0051】
これらばね室及び弁収容室を、主弁座に対して径方向に重なる位置に配置しておくと、主弁座と重なる位置においてダイヤフラム弁からなる主弁の軸方向厚みが厚くなり、その分主弁の移動可能なストロークが小さく制限されてしまう。
【0052】
しかるにこれらばね及び副弁の弁部の収容室を主弁座の径方向内側の空間に配置しておくことで、ダイヤフラム弁からなる主弁における主弁座の径方向内側のスペースを有効に活用でき、そこに副弁及びばね等を含む副弁機構を組み込むことができる。
【0053】
この場合において、副弁はダイヤフラム弁の径方向中央部にダイヤフラム弁と同軸に設けておくことができる(請求項6)。
このようにすることで、副弁を安定して開閉動作させることができ、副弁の動きのばらつきを防止することができる。
【0054】
次に請求項7は、保持部材に且つ圧力室の側に、圧力室の内周壁面に沿って摺動し、ダイヤフラム弁を開閉ガイドするガイド部を設けたものである。
ダイヤフラム弁からなる主弁には開閉移動の際のガイド部が設けられ、このガイド部は通例、保持部材に且つ主弁座を先端部に有する円筒部の内部、即ち給水路における主弁よりも下流部(2次側流路)に嵌入する状態で設けられる。
ところがこのようにすると、ダイヤフラム弁(主弁)を開弁させたときに、主弁座の上流部から下流部に向かって流れる水の流れに対してそのガイド部が障害物となり、水の流れに対する妨げとなってしまう。
【0055】
そこでこの請求項7では、ダイヤフラム弁を開閉ガイドするガイド部を圧力室側に且つ圧力室の内周壁面に沿って摺動する形態で設けたもので、この請求項7によれば、ダイヤフラム弁を開閉ガイドするガイド部が流れの妨げとなる問題を解消し、便器の洗浄水となる水を円滑に上流部から下流部に向けて流動させることができ、ひいては便器洗浄に対する洗浄能率をより一層高めることが可能となる。
【0056】
次に請求項8は、フラッシュバルブ装置に関するもので、このフラッシュバルブ装置は、請求項2〜7の何れかに記載のフラッシュバルブを、便器のリム洗浄用のフラッシュバルブと、ジェット洗浄用のフラッシュバルブとしてそれぞれ備え、そしてそれらリム洗浄用のフラッシュバルブとジェット洗浄用のフラッシュバルブとの作動切替によって、便器のリム洗浄とジェット洗浄とを行うようになしたものである。
【0057】
このフラッシュバルブ装置では、リム洗浄からジェット洗浄、或いはまたジェット洗浄からリム洗浄への切替えを短時間で行うことができる。
詳しくは、リム洗浄における最大流量時から次のジェット洗浄を開始するまでの時間、或いはジェット洗浄時の最大流量時からリム洗浄への切替えのための時間を可及的に短くすることが可能となる。
【0058】
従ってこの請求項8のフラッシュバルブ装置を用いれば、主弁の急閉止によるウォータハンマの発生を防ぎつつ、リム洗浄からジェット洗浄に、更にはジェット洗浄からリム洗浄へと切り替えて便器洗浄を行う際の洗浄能力を効果的に高めることができる。
【0059】
更にこのフラッシュバルブ装置によれば、駆動源としてのモータ,更にカムや押棒等の動力伝達機構を特に必要とせず、便器洗浄のための装置を安価に且つコンパクトに構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態のフラッシュバルブ装置を便器とともに示した図である。
【図2】図1のフラッシュバルブ装置の断面図である。
【図3】図2のリム洗浄用のフラッシュバルブの要部の断面図である。
【図4】図3の更に要部を示した図である。
【図5】同実施形態のフラッシュバルブの作用説明図である。
【図6】図5に続く作用説明図である。
【図7】図6に続く作用説明図である。
【図8】図7に続く作用説明図である。
【図9】従来のフラッシュバルブの一例を示した図である。
【図10】図9のフラッシュバルブの作用説明図である。
【図11】図10に続く作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】便器洗浄の際の給水の波形を示した図である。
【図14】従来のフラッシュバルブの他の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は便器(洋風大便器)で、12は便鉢、14は便器上端の周縁部に沿って設けられたリムである。
リム14の内部にはリム通水路16が形成されており、更にリム14の下面にはリム通水路16に連通した多数の射水孔18が周方向に所定ピッチで形成されており、リム通水路16内の洗浄水が、それら射水孔18から便鉢12内部に射水されるようになっている。
【0062】
20は、便器10を洗浄するための洗浄水(水道水)を供給する供給管で、この供給管20を通じて供給された洗浄水が、リム給水管22にてリム通水路16へと給水され、或いはジェット給水管24を通じてジェット孔26へと給水される。
ジェット孔26に給水された洗浄水は、このジェット孔26から便器10の排水トラップ部28に向け噴射されて排水トラップ部28内部を満水化させ、サイフォン作用を助勢する。
【0063】
供給管20を通じて供給される洗浄水の流路上には、本実施形態の便器洗浄装置としてのフラッシュバルブ装置30が配設されている。
フラッシュバルブ装置30は、便器洗浄に際して先ずリム給水管22を通じて給水を行い、リム通水路16に連通した射水孔18から洗浄水を便鉢12内部に射水してリム洗浄を行う。
そしてリム洗浄を終えたところでジェット給水管24側に給水を切り替え、これによりジェット孔26から洗浄水を噴射させてジェット洗浄を行う。
その後引続いて再びリム給水管22側に洗浄水を切り替えてリム洗浄を行い、便器洗浄を終了する。
【0064】
図2に、フラッシュバルブ装置30の構成が具体的に示してある。
図2に示しているようにこのフラッシュバルブ装置30は、リム洗浄用のフラッシュバルブ32と、ジェット洗浄用のフラッシュバルブ34とを一体に有している。
【0065】
この実施形態において、流入口36から流入した水(洗浄水)は、バルブボデー38の内部に形成された共通の給水路40を上向きに流通し、そして図中右側に分岐したリム洗浄用の給水路42に、又は図中左側に分岐したジェット洗浄用の給水路44へと流れる。
尚、共通の給水路40には逆止弁39が設けられており、流入口36から流入した水は、この逆止弁39を図中上向きに押し上げ、開弁させてリム洗浄用の給水路42又はジェット洗浄用の給水路44へと流れる。
またリム洗浄用の給水路42と、ジェット洗浄用の給水路44とには、それぞれ流量を定流量化する定流量弁48が設けられている。
【0066】
リム洗浄用の給水路42に導かれた水は、その給水路42上に設けられたダイヤフラム弁からなる主弁46の開弁により、上流側の1次側水路42aから下流側の2次側水路42bへと流通して、図1の便器10のリム洗浄用に供される。
またジェット洗浄用の給水路44に導かれた水は、同じくダイヤフラム弁からなる主弁46の開弁により、上流側の1次側水路44aから下流側の2次側水路44bへと流通し、便器10のジェット洗浄用に供される。
【0067】
図3に、リム洗浄用のフラッシュバルブ32の要部が詳しく示してある。
同図において、50は主弁46の図中左側に形成された圧力室で、この圧力室50は、内部の圧力を主弁46に対して図中右方向の閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁46は、通常時はこの圧力室50の圧力によって閉弁状態に保持される。即ちバルブボデー38の円筒部52の先端部にて構成された主弁座54に対して着座状態に保持される。
【0068】
この圧力室50からは、内部の水を給水路42における2次側水路42bへと抜き出すための水抜路56が延び出しており、その水抜路56上に、電磁弁からなる起動弁58が設けられている。
起動弁58はプランジャ弁60と、ばね(コイルばね)62と、電磁コイル64とを有しており、通常時はコイルばね62の図中下向きの付勢力によってプランジャ弁60が閉弁状態に保持される。その状態で電磁コイル64が通電されると、プランジャ弁60が図中上向きに引き上げられて開弁する。
【0069】
プランジャ弁60が開弁すると、圧力室50内部の水が水抜路56を通じて2次側水路42bへと抜き出され、ここにおいて圧力室50の圧力が消失して、ダイヤフラム弁からなる主弁46が、給水路42における1次側水路42aの給水圧によって図中左側に押され、開弁する。
そしてこの主弁46の開弁によって、1次側水路42aの水が2次側水路42bへと流れ込んで、更にその下流側の便器10へと給水され、便器10のリム洗浄が行われる。
【0070】
図4に、ダイヤフラム弁からなる主弁46の更に詳細な構成が具体的に示してある。
図に示しているようにこの主弁46は、弾性材から成るダイヤフラム膜66と、これを保持する樹脂製の硬質の保持部材68とからなっており、そのダイヤフラム膜66の外周部が全周に亘りバルブボデー38に固定され、中央部が図4中上下方向(図3中左右方向)に所定ストロークで進退移動せしめられる。
従来のピストン弁からなる主弁の場合、その全移動ストロークは約8mm程度であるが、ここではダイヤフラム弁からなる主弁46の全移動ストロークは4mm程度とされている。
【0071】
この主弁46には、給水路42における1次側水路42aの水を圧力室50内に導入する、小孔からなる第1導水孔70と第2導水孔72とが、圧力室50に開口する形態で且つ主弁46を貫通する形態で設けられている。
これら導水孔のうちの一方の第1導水孔70は常時開放状態とされ、他方第2導水孔72には副弁74が設けられていて、この副弁74の開弁及び閉弁動作によって第2導水孔72が開放及び遮断されるようになっている。
【0072】
副弁74は、主弁46の軸方向と直角方向に延びる板状の弁部76と、その中央部から図中上向きに突出する弁軸78とを有している。
この副弁74の弁部76には、ばね収容室80内部に収容されたばね(コイルばね)82の一端(図4中上端)が当接させられており、ばね82の付勢力が副弁74に対して図中上向きに及ぼされている。
【0073】
副弁74は、そのばね82の付勢力に基づいて通常時、即ち主弁46の閉弁時において閉弁状態に保持される。
詳しくは、弁部76をシール部材83を介して保持部材68の第2導水孔72周りに形成された副弁座に着座させる状態に保持される。
尚弁部76はばね収容室80に連続して形成された弁収容室84に収容され、開閉動作の際には弁部76がこの弁収容室84内で図4中上下方向に保持部材68即ち主弁46に対して相対移動せしめられる。
尚副弁74は、閉弁状態において弁軸78が第2導水孔72から圧力室50側に突出した状態にある。
【0074】
この実施形態において、第1導水孔70と第2導水孔72とは、1次側水路42aの水の入口86側の水路が共通の水路とされ、そして圧力室50側の出側の水路が途中で分岐した専用の水路を成している。
詳しくは、入口86に続いてダイヤフラム膜66を膜厚方向に貫通する水路、更にばね収容室80周りの環状の水路88が共通の水路とされ、これに続く圧力室50側の水路が互いに分岐した専用の水路をなしている。
【0075】
上記硬質の樹脂からなる保持部材68は、それぞれが円形の板状をなす第1部材68-1と第2部材68-2とで構成されている。
第1部材68-1には雄嵌合面90が、また第2部材68-2には雌嵌合面92がそれぞれ形成されており、第1部材68-1と第2部材68-2とが、それら雄嵌合面90と雌嵌合面92とにおいて互いに嵌合状態に組み付けられている。
【0076】
尚、第1部材68-1には図4(C)に示しているように係止爪94が、径方向外方に突出する状態で設けられており、この係止爪94の係止作用によって、第1部材68-1が第2部材68-2から抜け防止されている。
これら第1部材68-1と第2部材68-2とは径方向の中央部、詳しくは上記の主弁座54の径方向内側において空間を形成しており、その空間によって、互いに連続した上記のばね収容室80と弁収容室84とが構成されている。
【0077】
また上記の副弁74は、主弁46の径方向中央に配置され、その中央において弁軸78が圧力室50側に突出せしめられている。
尚、図3において96は、この弁軸78に対して主弁46の軸方向に対向するストッパで、このストッパ96はバルブボデー38の壁にて構成されている。
【0078】
主弁46における第2部材68-2は、圧力室50側の端部に径方向外方に全周に亘って突出したフランジ部を有しており、このフランジ部が、圧力室50の内周壁面98に沿って摺動し、主弁46の開閉ガイドをなすガイド部100とされている。
また第2部材68-2の中央部且つ図4中下面側には、主弁座54の径方向内側位置において、主弁46の閉弁方向と反対方向に突出する概略逆円錐台形状をなす突出部102が一体に形成されている。
【0079】
尚、ジェット洗浄用のフラッシュバルブ34も基本的にリム洗浄用のフラッシュバルブ32と同様の構成であり、ここではジェット洗浄用のフラッシュバルブ34については符号のみを示して、詳しい説明は省略する。
【0080】
次に本実施形態のフラッシュバルブ装置30の作用を以下に説明する。
この実施形態において、フラッシュバルブ装置30は通常時は図2及び図3に示しているようにリム洗浄用のフラッシュバルブ32,ジェット洗浄用のフラッシュバルブ34ともに主弁46が閉弁した状態にある。
また主弁46に組み込まれた副弁74も、ばね82の付勢力によって閉弁状態に保持されている。
【0081】
この状態で図示を省略する操作部を操作すると、図5に示しているように先ずリム洗浄用のフラッシュバルブ32の起動弁58が開弁する。
起動弁58が開弁すると圧力室50に連通した水抜路56が開放され、圧力室50内部の水が水抜路56を通じて2次側水路42bへと流出する。ここにおいて圧力室50の圧力が消失するため、主弁46が給水路42における1次側水路42aの給水圧によって開弁開始する(尚起動弁58は圧力消失後に閉弁する)。
このとき、この実施形態では副弁74が閉弁状態にあって、1次側水路42aの水が第2導水孔72を通じて圧力室50側に漏出することがないため、主弁46は開弁遅れを生ずることなく速やかに開弁動作する。
【0082】
而して開弁初期に主弁46が図3において図中左側に一定量後退移動すると、副弁74の弁軸78に対してバルブボデー38の壁部にて構成されたストッパ96が弁軸78に当接し、図6に示しているように主弁46の更なる開弁方向の後退移動に伴って、副弁74がばね82の付勢力に抗してストッパ96により開弁させられ、第2導水孔72が開放される。
尚主弁46は開弁動作中、圧力室50の内周壁面98に沿って摺動するガイド部100によって移動ガイドされ、円滑に開弁動作する。
主弁46は、その後図6に示すように1次側水路42aの給水圧によって全開状態までストローク一杯開弁し、給水路42を大きく開いて、リム洗浄用の水を多量に便器10側に給水し、リム洗浄を行う。
この主弁46の全開状態において、副弁74は最大開弁状態となる。
本発明では、その最大開弁状態において副弁74をばね収容室80の底部に当接状態とすることが可能であるが、この実施形態では副弁74の最大開弁状態において図6に示しているように副弁74とばね収容室80の底部との間に安全のために若干の隙間が確保してある。
【0083】
この実施形態では、副弁74が開弁した時点で、それまで第1導水孔70を通じてのみ圧力室50へと導入されていた1次側水路42aの水が、第2導水孔72を通じても圧力室50へと導入されるに到り、ここにおいて圧力室50への水の導入量が急激に増大せしめられる。
そして図7に示しているように主弁46が最大開弁位置に到った後、圧力室50に導入された水の圧力により、主弁46が開弁完了後、起動弁58の閉弁後に速やかに閉弁動作を開始し、また閉弁動作の速度そのものも、第1導水孔70と第2導水孔72を通じての圧力室50への水の導入により速められる。
【0084】
そして主弁46が主弁座54の直近まで閉弁動作したところで即ち主弁46の閉弁間際で、図8に示しているように副弁74の弁軸78がストッパ96から離れるに到り、ここにおいて再び副弁74がばね82の付勢力によって閉弁せしめられる。
副弁74が閉弁し、第2導水孔72が閉鎖された後においては、1次側水路42aの水は第1導水孔70を通じてのみ圧力室50へと導入される状態となり、ここにおいて圧力室50への導水の速度は鈍化する。
即ち主弁46は、副弁74の閉弁後においてはゆっくりと閉弁動作し、最終的に主弁座54に着座して図3に示す完全閉弁状態となる。
【0085】
以上のようにしてリム洗浄用のフラッシュバルブ32の主弁46が完全閉弁状態に到ると、続いてジェット洗浄用のフラッシュバルブ34の起動弁58が自動的に開弁し、これによりジェット洗浄用のフラッシュバルブ34の主弁46が開弁動作して、便器10に対しジェット洗浄用の水が給水される。
その際の作用は、リム洗浄用のフラッシュバルブ32における上記作用と同様である。
【0086】
而してジェット洗浄用のフラッシュバルブ34の主弁46が閉弁に到ると、更に続いてリム洗浄用のフラッシュバルブ32の起動弁58の開弁、更にこれに続く主弁46の開弁が行われ、再び便器のリム洗浄が実行される。
そして2度目のリム洗浄が終了したところで、フラッシュバルブ装置30は最終的に作動を終了する。
【0087】
以上のような本実施形態のフラッシュバルブ32,34では、主弁46が閉弁状態にあるときには副弁74がばね82の付勢力で閉弁状態に保持されているため、図9〜図12に示す従来のフラッシュバルブ、即ち主弁が閉弁状態のときに副弁が開弁状態にあって、主弁が開弁開始するときに給水圧で副弁を閉じるものと異なって、副弁74の閉弁方向と反対側に副弁74を閉じるための給水圧を導くための水室や水路といったものを設ける必要はなく、従って本実施形態のフラッシュバルブ32によれば、副弁74取付のための所要スペースを小スペースとなすことができる。
これにより副弁74取付部分の構造をコンパクトとなし得、またこれに伴ってダイヤフラム弁からなる主弁46をコンパクトに構成することができる。
【0088】
また本実施形態のフラッシュバルブ32,34では、主弁46が閉弁状態にあるとき、副弁74もまたばね82の付勢力で閉弁状態に保持されているため、図9〜図12に示す従来のフラッシュバルブと異なって、主弁46を開弁させるに際して開弁状態の副弁を閉弁させるまでの間がロスタイムとなって、主弁46の開弁動作が遅れるといった問題を生じず、起動弁58の開弁後に主弁46を直ちに且つ瞬間的に開弁動作させることができ、洗浄水の水量が最大流量に達するまでの時間を可及的に短くし得て、洗浄能力を高めることができる。
【0089】
本実施形態では、主弁46がダイヤフラム弁で構成してあるため、主弁46の開閉の移動ストロークを短くでき、そのことによって開弁開始から全開までの時間、更に全開状態から閉弁に到るまでの時間を短くすることができ、便器10洗浄の際の流量特性の立上り及び立下りを急峻となし得て洗浄能力を高めることができる。
【0090】
更に加えてこのダイヤフラム弁からなる主弁46の場合、開弁及び閉弁に際して、これと一体にパッキンを摺動させるといったことが必要でなく、パッキンが摩耗してその摩耗が各種不具合を発生させる原因になるといった問題を解消することができる。
【0091】
またこの実施形態では、主弁46を成すダイヤフラム弁の硬質の保持部材68を板状の第1部材68-1と第2部材68-2とで構成して、それら第1部材68-1と第2部材68-2とを主弁46(ダイヤフラム弁)の進退方向である軸方向に嵌合組付けするとともに、第1部材68-1と第2部材68-2との間に、ばね収容室80と弁収容室84とを構成する空間を形成しており、このようにすることでダイヤフラム弁からなる主弁46に対してばね82と副弁74との組込み空間を容易に形成でき、また主弁46に対して副弁74及びこれを付勢するばね82を簡単に組み込むことができる。
更にその組付構造を簡単な構造となすことができる。
【0092】
また第1部材68-1と第2部材68-2との間に形成されるばね収容室80と弁収容室84とは、主弁46を着座させる主弁座54の径方向内側の位置に形成してあることから、ダイヤフラム弁からなる主弁46における主弁座54の径方向内側のスペースを有効に活用でき、そこに副弁74及びばね82等を含む副弁機構を組み込むことができる。
【0093】
更に副弁74は主弁46の径方向中央部に主弁46と同軸に設けてあるため、副弁74を安定して開閉動作させることができ、副弁74の動きのばらつきを防止することができる。
【0094】
ところで、ダイヤフラム弁を主弁とするものにおいては、主弁の開閉移動の際のガイド部100が通例、保持部材68に且つ主弁座54を先端部に有する円筒部52の内部に嵌入する状態で設けられる。
ところがこのようにすると、ダイヤフラム弁(主弁)を開弁させたときに、主弁座54の上流部から下流部に向かって流れる水の流れに対してそのガイド部が障害物となり、水の流れに対する妨げとなってしまう。
【0095】
しかるにこの実施形態ではガイド部100が圧力室50側に且つ圧力室50の内周壁面98に沿って摺動する形態で設けてあるため、ガイド部100が流れの妨げとなることはなく、便器10の洗浄水となる水を円滑に上流部から下流部に向けて流動させ得、便器10洗浄の洗浄能率をより一層高めることができる。
【0096】
更に本実施形態のフラッシュバルブ装置30では、リム洗浄における最大流量時から次のジェット洗浄を開始するまでの時間、或いはジェット洗浄時の最大流量時からリム洗浄への切替えのための時間を可及的に短くすることができ、主弁46の急閉止によるウォータハンマの発生を防ぎつつ、リム洗浄からジェット洗浄に、更にはジェット洗浄からリム洗浄へと切り替えて便器洗浄を行う際の洗浄能力を効果的に高めることができる。
【0097】
またこのフラッシュバルブ装置30によれば、駆動源としてのモータ,更にカムや押棒等の動力伝達機構を特に必要とせず、便器洗浄のための装置を安価に且つコンパクトに構成することができる。
【0098】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0099】
22 リム給水路
24 ジェット給水路
30 フラッシュバルブ装置
32 リム洗浄用のフラッシュバルブ
34 ジェット洗浄用のフラッシュバルブ
38 バルブボデー
42 リム洗浄用の給水路
42a,44a 1次側水路
42b,44b 2次側水路
44 ジェット洗浄用の給水路
46 主弁
54 主弁座
56 水抜路
58 起動弁
66 ダイヤフラム膜
68 保持部材
68-1 第1部材
68-2 第2部材
70 第1導水孔
72 第2導水孔
74 副弁
76 弁部
80 ばね収容室
82 ばね(コイルばね)
84 弁収容室
96 ストッパ
98 内周壁面
100 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)給水路と、(b)該給水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる圧力室と、(d)該主弁を貫通して前記給水路における該主弁の上流側の1次側水路と該圧力室とを連通させ、該給水路の水を該圧力室に導入する小孔からなる導水孔と、(e)該圧力室の水を前記給水路における前記主弁の下流側の2次側水路に抜き出す水抜路と、(f)該水抜路を開放して該主弁の開弁動作を起させる起動弁と、を設けて成るフラッシュバルブであって、
(イ)それぞれが前記圧力室で開口する前記導水孔としての第1導水孔及び第2導水孔と、
(ロ)前記主弁に組み付けられて該第2導水孔を開閉する副弁と、
(ハ)該主弁に組み付けられて該副弁を閉弁方向に付勢し且つ該主弁の閉弁状態の下で該副弁を閉弁状態に保持するばねと、
(ニ)前記主弁の開弁動作途中で前記副弁に当接し、該主弁の更なる開弁動作に伴って該副弁を前記ばねの付勢力に抗して開弁させる一方、該主弁の閉弁動作途中で該副弁から離間し、該副弁を前記ばねの付勢力で閉弁させるストッパと、
を備え、前記副弁の開弁状態の下では前記第1導水孔と第2導水孔との両方を通じて、該副弁の閉弁状態の下では一方の該第1導水孔を通じて前記給水路の水を前記圧力室に導入するようになしてあることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記主弁が、弾性材で構成されたダイヤフラム膜と、該ダイヤフラム膜を保持する硬質の保持部材とを有するダイヤフラム弁であることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項3】
請求項2において、前記主弁をなすダイヤフラム弁は、前記保持部材が板状をなす第1部材と第2部材とを有していて、それら第1部材と第2部材とが該ダイヤフラム弁の進退方向である軸方向に嵌合組付けされていることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項4】
請求項3において、前記第1部材と第2部材との間には、前記ばねを収容するばね室と、前記副弁における弁部を収容する弁収容室とを構成する空間が形成されていることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項5】
請求項4において、前記ばね室及び弁収容室は、前記ダイヤフラム弁を着座させる主弁座の径方向内側の位置に形成されていることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項6】
請求項5において、前記副弁は、前記ダイヤフラム弁の径方向中央部に該ダイヤフラム弁と同軸に設けられていることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項7】
請求項2〜6の何れかにおいて、前記保持部材には、前記圧力室の内周壁面に沿って摺動し、前記ダイヤフラム弁を開閉ガイドするガイド部が設けてあることを特徴とするフラッシュバルブ。
【請求項8】
請求項2〜7の何れかに記載のフラッシュバルブを、便器のリム洗浄用のフラッシュバルブと、ジェット洗浄用のフラッシュバルブとして夫々備えており、それらリム洗浄用のフラッシュバルブとジェット洗浄用のフラッシュバルブの作動切替えによって、便器のリム洗浄とジェット洗浄とを行うようになしてあることを特徴とするフラッシュバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−203081(P2010−203081A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47321(P2009−47321)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】