説明

フラットケーブルおよびその製造方法

【課題】樹脂を除去しても、残渣の発生を防止することが可能なフラットケーブルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フラットケーブルは、樹脂を含む第一部材としての透明PET13および第二部材としての黒色PET12で導板11を挟む工程と、透明PET13および黒色PET12が直接接触している部分に透明PET13を通過させるようにレーザを照射して加熱することにより透明PET13および黒色PET12を溶着させて接着する工程とにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルおよびその製造方法に関し、より特定的には、レーザを用いたフラットケーブの製造方法およびその方法で製造したフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザを用いた溶着方法は、たとえば、特開2001−310391号公報(特許文献1)、特開2005−310603号公報(特許文献2)および特開2004−146206号公報(特許文献3)に開示されている。
【0003】
これらの文献における溶着方法では、樹脂を並べてレーザ照射により溶着しているため、レーザの位置合わせが困難であるという問題があった。
【0004】
特開2008−188661号公報(特許文献4)では、フラットケーブル樹脂の表面にレーザ吸収の良い材料を塗布して吸収熱を増やす技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、難燃性材料については残渣が残る可能性がある。
特開2008−251486号公報(特許文献5)では、レーザにより樹脂を除去する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、樹脂接着層として難燃材が使用されていると、難燃材が残渣として残る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−310391号公報
【特許文献2】特開2005−310603号公報
【特許文献3】特開2004−146206号公報
【特許文献4】特開2008−188661号公報
【特許文献5】特開2008−251486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法で製造したフラットケーブルでは、フラットケーブルを構成する樹脂をレーザにより除去した場合には残渣が発生し易いという問題があった。
【0009】
そこで、この発明は上述の問題を解決するためになされたものであり、樹脂を除去しても、残渣の発生を防止することが可能なフラットケーブルおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従ったフラットケーブルの製造方法は、樹脂を含む第一部材および第二部材で導電部材を挟む工程と、第一および第二部材が直接接触している部分に第一部材を通過させるようにレーザを照射して加熱することにより第一および第二部材を溶着させて接着する工程とを備える。
【0011】
このように構成されたフラットケーブルの製造方法においては、レーザ照射により第一および第二部材を接着するため、接着剤を用いる必要がない。その結果、第一および第二部材をレーザにより除去した場合にも難燃材からなる残渣の発生を抑制することができる。
【0012】
好ましくは、樹脂はPET(ポリエチレンテレフタラート)を含む。
好ましくは、樹脂は有色である。
【0013】
この発明に従ったフラットケーブルは、上記のいずれかの方法で製造される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】フラットケーブルの写真である。
【図2】比較例に従ったフラットケーブの写真である。
【図3】実施例に従ったフラットケーブルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態について説明する。
図1は、フラットケーブルの写真である。従来、フラットケーブル1を製造する場合には、導線に対し接着剤付き樹脂シートで接着していた。接着剤に難燃性樹脂等を用いているため、一部絶縁樹脂をファイバレーザ(波長1.06μm)またはCO2レーザ(波長10.6μm)除去する際に接着層が残渣となりレーザ除去した部分に導線半田接続する際に導通不良の原因となった。
【0016】
図2は、比較例に従ったフラットケーブの写真である。フラットケーブル1の一部の絶縁樹脂をファイバレーザ(波長1.06μm)またはCO2レーザ(波長10.6μm)で除去して除去部3を形成すると、接着層が残渣2となる。これにより除去部3において、フラットケーブルを構成する導線と、半田とを接続する際に導通不良の原因となる。
【0017】
そこでフラットケーブルの製作方法として接着剤を使わずに銅線を貼り合わせる方法を考えた。
【0018】
図3は、実施例に従ったフラットケーブルの写真である。図3を参照して、フラットケーブルは、樹脂を含む第一部材としての透明PET13および第二部材としての黒色PET12で導板11を挟む工程と、透明PET13および黒色PET12が直接接触している部分に透明PET13を通過させるようにレーザを照射して加熱することにより透明PET13および黒色PET12を溶着させて接着する工程とにより製造される。
【0019】
レーザ照射により透明PET13および黒色PET12を接着するため、接着剤を用いる必要がない。
【0020】
黒色PET12(1mmt)上に銅線(導板11)(1mm幅、0.1mmt)2本を設置し、上面から透明PET13(約0.3mmt)で挟み、上部からファイバレーザマーカ(SUNX製LP‐Z250、波長1.06μm、ワーキングディスタンス190mm)を用い、出力40%、パルス幅200ns、周波数100KHz、スキャン速度50mm/s、ハッチング間隔50μmで1回照射した。透明PET側よりファイバレーザ照射すると透明PETは吸収おこらず、黒色PET側で吸収加熱され黒色PET/透明PET境界で溶着が発生してレーザ溶着部14により接着する。以上のことから、接着材を使わずレーザ溶着によりフラットケーブル製作可能であることがわかった。
【0021】
このフラットケーブルの一部にCO2レーザ(波長9.3μm、20W)及びYAGレーザ(波長1.06μm、10W)で銅線上の透明PET側より照射し、透明PETを除去したところ、樹脂残渣無く除去できた。別の銅線と半田接続することが可能となった。
【0022】
なお、透明PET13および黒色PET12に変えて、他の樹脂材料(塩化ビニル、ポリエチレン等)を用いることができる。
【0023】
さらに、導板11として、銅だけでなく、銀、スズ、ニッケル等を用いることができる。
【0024】
また、溶着のためのレーザとして、半導体レーザ、YAGまたはYVO4レーザを用いることができる。
【0025】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、フラットケーブルの分野において用いられる。
【符号の説明】
【0027】
1 フラットケーブル、2 残渣、3 除去部、11 銅板、12 黒色PET、13 透明PET、14 レーザ溶着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む第一部材および第二部材で導電部材を挟む工程と、
前記第一部材および前記第二部材が直接接触している部分に前記第一部材側からレーザを照射して加熱することにより前記第一部材および前記第二部材を溶着させる工程とを備えた、フラットケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂はPET(ポリエチレンテレフタラート)を含む、請求項1に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂は有色である、請求項1または2に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項4】
樹脂を含む第一部材および第二部材と、それらに挟まれる導電部材とを備え、
前記第一部材および前記第二部材が直接接触している部分にレーザが照射されてそれらが溶着している、フラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−89310(P2013−89310A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225933(P2011−225933)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】