説明

フラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネス

【課題】限られた配線スペースに配線することができるフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供する。
【解決手段】並列に配置された複数本の電線11と、電線11の並列方向に沿って複数本の電線11間を縫うように織り込まれた繊維部材12と、を有するフラットケーブル10において、繊維部材12は、ポリウレタン弾性繊維からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末や携帯通信端末など、近年、更なる小型・薄型化が求められている小型電子機器内の限られた配線スペースに配線されるフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屈曲性や可撓性を必要とする部分に配線される配線材には、複数本の細径化された同軸ケーブルをフラット状に並べ、このフラット状に並べられた複数本の同軸ケーブルの長手方向に対して略直交するようにポリエステル製の横糸を、複数本の同軸ケーブル間を縫うように織り込んだフラットケーブルがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−101934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近の小型電子機器は、更なる小型・薄型化が急速に求められており、これらの小型電子機器の内部に配線材を配線する際、配線スペースが今まで以上に制限される傾向にある。例えば、小型電子機器の小型・薄型化に伴い、配線スペースの所定箇所において、配線スペースの幅や配線形状が一様ではないなどの制限がある。そのため、配線材として、このような限られた配線スペースに配線することができるフラットケーブルが強く求められている。しかし、上述した従来のフラットケーブルの構造では、しなやかで、且つ溶剤に可溶な横糸を選定する必要があり、上述したような限られた配線スペースに配線することが可能な構造に設計するうえでの制約事項となっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、限られた配線スペースに配線することができるフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために創案された本発明は、並列に配置された複数本の電線と、前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれた繊維部材と、を有するフラットケーブルにおいて、前記繊維部材は、ポリウレタン弾性繊維からなるフラットケーブルである。
【0007】
前記繊維部材は、前記電線間に織り込まれた状態で伸長すると良い。
【0008】
前記繊維部材は、モノフィラメントからなると良い。
【0009】
前記電線は、外径が0.23mm以下であり、配線ピッチが0.25mm以下であると良い。
【0010】
厚さが0.25mm以下であると良い。
【0011】
また本発明は、前記フラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末部分に接続されたコネクタと、を有するケーブルハーネスである。
【0012】
前記フラットケーブルは、前記フラットケーブルの幅方向に伸縮すると良い。
【0013】
前記フラットケーブルは、その長手方向の一部又は全部が折り畳まれていると良い。
【0014】
前記フラットケーブルは、その長手方向において一様でない幅を有すると良い。
【0015】
前記コネクタは、基板の両端に端子を有するパドルカードからなると良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、限られた配線スペースに配線することができるフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るフラットケーブルを用いたケーブルハーネスを示す平面図である。
【図2】図1のフラットケーブルの端末部分を拡大した図である。
【図3】本発明の変形例に係るケーブルハーネスを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るフラットケーブルを用いたケーブルハーネスを示す平面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るフラットケーブル10は、並列に配置された複数本の電線11と、電線11の並列方向(電線11の長手方向に対して略直交する方向)に沿って複数本の電線11間を縫うように織り込まれた繊維部材12と、を有する。
【0021】
電線11は、複数本の銅線を撚り合わせて形成された内部導体と、内部導体の外周に設けられた絶縁体と、を少なくとも有する絶縁電線からなる。絶縁体は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて形成される。
【0022】
また、電線11は、絶縁体の外周に複数本の金属導体をスパイラル状に横巻きして形成された外部導体と、この外部導体の外周に設けられたジャケットと、を有する同軸ケーブルであっても良い。この場合、外部導体は、軟銅線などの金属線(表面がめっき処理されているものを含む)からなる導体(単線又は撚線)を用いて形成される。
【0023】
電線11の外径は、近年、更なる小型・薄型化が求められている小型電子機器内の限られた配線スペースに配線されることを考慮すると、0.23mm以下であることが好ましい。
【0024】
繊維部材12は、複数本の電線11間をフラットケーブル10の長手方向の一端から他端(図示左側から右側)まで幅方向の一側から他側(図示下側から上側)へジグザグに往復しながら、複数本の電線11を長手方向でフラット状に固定するように織り込まれる。
【0025】
このとき、繊維部材12は、フラットケーブル10の幅方向(電線11の並列方向)の中央部において、1本の電線11を1ユニットとして縫うように織り込まれると良い。なお、フラットケーブル10の幅方向の中央部とは、フラットケーブル10の中心軸上に限られず、その近傍も含まれる。
【0026】
このような構成とすることにより、フラットケーブル10の全ての電線11が繊維部材12に縛られ、複数本の電線11が互いに寄せ合うことで均一な配線ピッチで配置され、フラットケーブル10の幅を小さくすることができる。
【0027】
繊維部材12は、フラットケーブル10の全長に亘って織り込まれるが、機器側と接続するためのコネクタ13の取り付けを容易にするために、フラットケーブル10の長手方向の両端部の繊維部材12は除去される。なお、繊維部材12は、その先端部を引っ張ることのみで電線11から分離することができる。このため、繊維部材12を溶剤に溶解させるなどの作業をすることなしに除去することができ、コネクタの取り付けなどを手間をかけずに行うことができる。
【0028】
このフラットケーブル10は、複数本の電線11を並列に配置し、複数本の電線11間に繊維部材12を縫うように織り込んで製造されるが、繊維部材12として、ポリウレタン弾性繊維(例えば、旭化成せんい株式会社製のロイカ(登録商標))を用いる点が特徴の1つである。
【0029】
このポリウレタン弾性繊維は、伸度が500%以上900%以下、300%伸長時の伸長回復率が90%以上、300%伸長するための初期モジュラスが5cN/dtex以上30cN/dtex以下であり、伸度が非常に高く初期モジュラスが低い繊維であることが好ましい。また、フラットケーブル10自体の強度向上や小型・薄型化の点から、繊維部材12はモノフィラメントからなることが好ましい。
【0030】
このような繊維部材12にポリウレタン弾性繊維を用いることにより、電線11間に繊維部材12を織り込む際、繊度が非常に細い(例えば、17〜45dtex程度)繊維を用い、当該繊維を伸長(例えば、300%程度に伸長)させた状態(このときの繊維部材12の外径は0.04mm以下程度)で複数本の電線11間を縫うように織り込むことが可能になる。また、繊維部材12を電線11間に織り込んだ後に、繊維の伸長が回復する(元に戻る)ときの力(伸長回復力)が複数本の電線11を互いに寄り合わせるように作用する。このとき、電線11の外径が小さくても、伸長回復力によって電線11に小曲りなどが発生するようなストレスを与えることなく電線11同士を互いに寄り合わせることができる。これにより、隣接する電線11間の距離(配列ピッチ)を電線11にストレスを与えることなく狭めることができ、フラットケーブル10の幅を従来よりも小さくすることができる。そのため、電線11にうねりや断線を発生させることなく繊維部材12を織り込むことが可能になる。
【0031】
更に、ポリウレタン弾性繊維からなる繊維部材12は、織り込まれた後も電線11の並列方向へ織り込まれた状態で伸長させることができるため、フラットケーブル10をその幅方向に伸縮させる機能を付与することができる。これにより、図2に示すように、フラットケーブル10の幅を一様でない幅に変化させることや、図3に示すように、フラットケーブル10をその長手方向に沿って簡単に2重又はそれ以上に重ねるように折り畳むことが可能となり、フラットケーブル10を限られた配線スペースに合わせた形状に適宜変形させて配線することができる。なお、フラットケーブル10は、長手方向の所望の部分のみ、または長手方向の全部を折り畳むことが可能である。また、フラットケーブル10の所望の部分を、所望の角度(例えば、0°より大きく180°以下)に折り曲げることも可能である。これらの変形は、フラットケーブル10の1箇所のみならず複数箇所で行うことが可能であり、また折り畳みや折り曲げなどの変形を1箇所で同時に行うことも可能である。
【0032】
なお、繊維部材12を300%伸長するための初期モジュラスが5cN/dtex以上30cN/dtex以下と低いことで、繊維部材12を織り込むときに電線11へ負荷をかけることなく織り込むことができる。
【0033】
初期モジュラスが5cN/dtex未満であると、繊維部材12を織り込むときの電線11を締め付ける力が弱くなり、綺麗な形状のフラットケーブル10を製造することができなくなってしまい、繊維部材12を織り込んだ後に繊維部材12の形状を綺麗に整えるための工程を別途設ける必要が生じ、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0034】
また、初期モジュラスが30cN/dtexを超えると、繊維部材12を織り込むときの電線11を締め付ける力が強くなり、繊維部材12を織り込む際に電線11がうねるように変形したり断線したりしてしまい、電線11の電気特性の低下を招いてしまう虞がある。
【0035】
このような理由から、繊維部材12を300%伸長するための初期モジュラスが5cN/dtex以上30cN/dtex以下と低いことが好ましい。
【0036】
以上要するに、並列に配置された複数本の電線と、電線の並列方向に沿って複数本の電線間を縫うように織り込まれた繊維部材と、を有し、繊維部材は、ポリウレタン弾性繊維からなるフラットケーブルとすることにより、限られた配線スペースに配線することができ、また従来に比べて更なる小型・薄型化を図ることができる。
【0037】
以下に、本実施の形態の効果について詳述する。
【0038】
本実施の形態に係るフラットケーブル10では、繊維部材12にポリウレタン弾性繊維を用いたことにより、伸長されて外径が0.04mm以下程度と非常に細くなった状態の繊維部材12を織り込むことができるため、電線11の外径を極端に小さくすることなく、電線11の配線ピッチを0.25mm以下、フラットケーブル10の厚さを0.25mm以下にするなどの更なる薄型化・小幅化を実現することが可能である。
【0039】
なお、従来のフラットケーブルは、更なる薄型化・小幅化を実現するために電線の外径を極端に小さくする必要があった。しかし、電線の外径を極端に小さくすると、繊維部材を織り込む際の引っ張りによって電線にうねりや断線が発生し、電線の電気特性が劣化してしまう虞があった。
【0040】
また、フラットケーブル10の繊維部材12は織り込まれた後もなお伸長しろがあり、フラットケーブル10の幅方向に伸縮機能を持たせることができる。伸縮機能を持たせることにより、フラットケーブル10を簡単に且つ電線11の電気特性を大きく劣化させることなく折り畳むことが可能になる。つまり、フラットケーブル10を折り畳んだときに電線11に加わる応力を、幅方向の伸縮機能によって効果的に逃がすことができ、電線自体に変形が及びにくいため、フラットケーブル10を折り畳んだことに起因する電線11の電気特性に与える影響を少なくすることができる。
【0041】
そのため、本実施の形態に係るフラットケーブル10では、フラットケーブル10を長手方向に沿って折り畳むことで配線時の幅を小さくする配線方法を採用することが可能になる。従来のフラットケーブルでこの配線方法を採用しようとしても、電線に織り込まれた後の繊維部材が伸長しないため、折り畳むことは困難であった。つまり、フラットケーブル10を長手方向に沿って折り畳んで配線する配線方法は、本実施の形態に係るフラットケーブル10の提供によって初めて可能になるものである。
【0042】
なお、これまで述べた効果の他に、繊維部材12を用いることにより、フラットケーブル10の幅方向に伸縮性を付与することができるため、極僅かな高さの配線スペースにおいてフラットケーブル10を屈曲させてスライドさせたときに加えられる応力を、フラットケーブル10の幅方向に効果的に逃がすことができるという効果も得られる。その結果、フラットケーブル10を屈曲させてスライドさせたときに電線11がフラットケーブル10の幅方向に移動することができるので、極僅かな高さの配線スペースにおいて屈曲やスライドを行っても、電線11にかかる応力が緩和され、電線11の断線などを防止することができる。つまり、本実施の形態に係るフラットケーブル10は、スライドを伴う可動部に配線されたとしても断線や電気特性の劣化が起こりにくいという効果も有する。
【0043】
また、フラットケーブル10の端末部分にコネクタ13を接続することで、小型電子機器内の限られた配線スペースに配線が可能な図1に示したようなケーブルハーネス100が得られる。
【0044】
本実施の形態に係るケーブルハーネス100では、図2に示すように、フラットケーブル10が幅方向に伸縮機能を持つため、フラットケーブル10の端末部分における複数本の電線11の配線ピッチを、繊維部材12を織り込んだ状態でコネクタ13の端子ピッチに合わせて自由に変更することができる。そのため、コネクタ13の形状が規格などにより制限される場合であっても、フラットケーブル10を小幅化しつつ規格などに対応することが可能である。
【0045】
このように、本実施の形態に係るケーブルハーネス100では、フラットケーブル10の端末部分にコネクタ13を接続してフラットケーブル10をハーネス化する場合など、所定箇所の配線ピッチのみを自由に変更することができる(例えば、ハーネス化する場合には、フラットケーブル10の端末部分における配線ピッチをコネクタ13の端子ピッチに合わせて変更することができる)。なお、従来のフラットケーブルでは織り込まれた後の繊維部材に伸長しろがないため、このように繊維部材を織り込んだ状態で配線ピッチを自由に変更することはできなかった。
【0046】
また、図3に示すように、コネクタ13として基板の両面に端子14を有するパドルカード15を用い、フラットケーブル10の幅方向の伸縮機能を利用してフラットケーブル10を長手方向に沿って折り畳み、この折り畳まれた部分を境にしてパドルカード15の表面の端子14と裏面の端子14にそれぞれ接続することで、更なる小幅化を図ったケーブルハーネス200を得ることができる。
【0047】
このケーブルハーネス200によれば、小幅化を図ることができるのは勿論のこと、基板の両面に端子14を有するパドルカード15を使用することができるため、2枚の基板を使用する場合に比べて部品点数を削減することができ、コスト削減に貢献することが可能となる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 フラットケーブル
11 電線
12 繊維部材
13 コネクタ
14 端子
15 パドルカード
100,200 ケーブルハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数本の電線と、前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれた繊維部材と、を有するフラットケーブルにおいて、
前記繊維部材は、ポリウレタン弾性繊維からなることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記繊維部材は、前記電線間に織り込まれた状態で伸長する請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記繊維部材は、モノフィラメントからなる請求項1又は2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記電線は、外径が0.23mm以下であり、配線ピッチが0.25mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末部分に接続されたコネクタと、を有することを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項6】
前記フラットケーブルは、前記フラットケーブルの幅方向に伸縮する請求項5に記載のケーブルハーネス。
【請求項7】
前記フラットケーブルは、その長手方向の一部又は全部が折り畳まれている請求項5又は6に記載のケーブルハーネス。
【請求項8】
前記フラットケーブルは、その長手方向において一様でない幅を有する請求項5〜7のいずれかに記載のケーブルハーネス。
【請求項9】
前記コネクタは、基板の両端に端子を有するパドルカードからなる請求項5〜8のいずれかに記載のケーブルハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−54991(P2013−54991A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193772(P2011−193772)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】