説明

フラットケーブル裁断方法及びその裁断装置

【課題】この発明は、複数の切断刃の間隔を無段階に一括して微調節することができるフラットケーブル裁断方法及びその裁断装置の提供を目的とする。
【解決手段】可動部9に取り付けられた複数のカム部8のカム面8aを、該カム部8の下方に配置された複数の刃支持部7の斜面7bに押し当てたまま垂直方向に下降させ、カム部8の押し当て力により刃支持部7を移送方向Aと直交して同一方向に向けて水平移動させる。刃支持部7のアーム部7aが押し当てられた隣のカム部8を同一方向に向けて水平移動させ、そのカム部8が押し当てられた下方の刃支持部7を同一方向へ水平移動させる。これにより、隣り合う切断刃6の間隔Waを移送方向Aと直交する幅方向Yに対し無断開に一括して拡縮調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両内に搭載される各種電装品の配線、或いは、電気機器内の配線等に用いられるフラットケーブルを短冊状に裁断するフラットケーブル裁断方法及びその裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記フラットケーブルを切断する方法及び装置として、例えば図7に示すように、既に提案済みの切断用スリッタ60がある(特許文献1参照)。この切断用スリッタ60は、幅広のフラットケーブル51を製造する製造装置50の下流側で、該フラットケーブル51を移送する移送路B上に設定された裁断区間Cに配置している。
【0003】
つまり、製造装置50により複数本の平角導体52が挟み込まれた絶縁フィルム53,53を上下一対の熱ロール54,54で加熱・溶着してフラットケーブル51を製造しながら、切断用スリッタ60により製造されるフラットケーブル51を移送方向Aと平行して短冊状に連続して裁断する。
【0004】
切断用スリッタ60は、図8に示すように、薄板状の切断刃61が取り付けられた刃支持部63を支持する支持軸62と、切断刃61を挿入する溝部65が形成されたドラム67を支持する支持軸66とで構成している。
【0005】
切断刃61は、フラットケーブル51を短冊状に裁断する裁断幅と対応する間隔を隔てて、支持軸62上に取り付けられた刃支持部63の下端部に垂設されている。また、溝部65は、上記切断刃61と対応する間隔を隔てて、支持軸66上に取り付けられたドラム67の対向面間に形成されている。
【0006】
前記切断刃61のピッチ間隔を微調節する場合、刃支持部63の間に配置されるスペーサ63aの厚みや個数を変更するか、或いは、刃支持部63とスペーサ63aとの間に挟み込まれるシム板63bの板厚や枚数を変更する等して、切断刃62の位置をフラットケーブル51の幅方向と平行する方向に微調節する。
【0007】
しかし、例えば近年の製造されるフラットケーブル51の小型化及び低コスト化を目的に、平角導体52を狭ピッチ化することが強く望まれているが、高い精度の調節が必要であるため、その変化に対応した厚みのスペーサ63aやシム板63bを予め用意しておくことが困難である。その結果、切断用スリッタ60により裁断されるフラットケーブル51の裁断幅に誤差が生じることになる。
【0008】
また、支持軸62上には、フラットケーブル51を短冊状に裁断する裁断本数に対応して、複数枚の切断刃61が取り付けられているが、フラットケーブル51の裁断幅を調節する場合、全切断刃61のピッチ間隔を1枚ずつ調節しなければならず、裁断幅の調節作業に手間及び時間が掛かる。また、スペーサ63aの厚みや個数を変更したり、シム板63bの板厚や枚数を変更する等の作業にも手間及び時間が掛かるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2871770号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、複数の切断刃の間隔を無段階に一括して微調節することができるフラットケーブル裁断方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆してなるフラットケーブルを、該フラットケーブルの移送方向と平行して複数の切断刃により短冊状に裁断するフラットケーブル裁断方法であって、前記フラットケーブルの移送路上方に、前記移送方向と直交して前記切断刃が下端側に取り付けられた刃支持部と、該刃支持部の上端側に押し当てられたカム部とを複数配置し、前記カム部の下端側に形成されたカム面を、前記刃支持部の上端側に形成された斜面に対し前記移送方向と直交する方向に向けて押し当て、前記刃支持部の上端側を前記移送方向と直交する方向に向けて斜め上方に延長してなるアーム部を、該アーム部の延長側に配置された隣りの前記カム部の側面に押し当て、前記各カム部のカム面を前記各刃支持部の斜面に押し当てたまま、該各カム部の全体を垂直方向に上下移動させて、前記各カム部を上下移動に対応して、該各カム部の押し当て力により前記各刃支持部を前記移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させ、前記各刃支持部のアーム部が押し当てられた前記各カム部を前記移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させ、前記各刃支持部の個々の移動量を、該刃支持部の隣りに配置された刃支持部の移動量として順次加算し、前記各刃支持部に取り付けられた各切断刃の間隔を前記移送方向と直交する方向に拡縮調節するフラットケーブル裁断方法であることを特徴とする。
つまり、各カム部のカム面を各刃支持部の斜面に押し当てたまま、各カム部の全体を垂直方向に上下移動させて、各カム部の上下移動に対応して、各カム部の押し当て力により各刃支持部を移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させる。また、各刃支持部のアーム部が押し当てられた各カム部を移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させる。
【0012】
例えば右隣の刃支持部の移動量を、その左隣の刃支持部の移動量に加算し、さらにその左隣の刃支持部の移動量に加算し、以下同様に、隣りに配置された各刃支持部の移動量に順次加算して、各刃支持部に取り付けられた各切断刃の間隔を前記移送方向と直交する方向に拡縮調節する。
これにより、フラットケーブルの横幅に応じて、隣り合う各切断刃の間隔を移送方向と直交する方向に対し無段階に一括して微調節することができる。
この結果、フラットケーブルを所望する裁断幅に裁断することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記各刃支持部の斜面に押し当てたまま前記各カム部をカム部移動手段により一括して上下移動することができる。
つまり、カム部移動手段により各カム部を上下移動することで、各カム部が押し当てられた各刃支持部を同一方向に向けて一括して水平移動することができる。
これにより、各切断刃の間隔を同時に拡縮調節することができる。
【0014】
また、この発明の態様として、前記フラットケーブルを、前記移送方向と直交する方向に対し所定の間隔を隔てて前記刃支持部の下端側に取り付けられた一対の切断刃により裁断することができる。
つまり、刃支持部に取り付けられた一対の切断刃の間隔が常時一定しているので、該各切断刃により裁断されるフラットケーブルの裁断幅が変わることがなく、常時一定の裁断幅で裁断することができる。
これにより、裁断幅が常時一定したフラットケーブルを製造することができる。
【0015】
また、この発明は、移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆してなるフラットケーブルを、該フラットケーブルの移送方向と平行して短冊状に裁断するフラットケーブル裁断装置であって、前記フラットケーブルの移送路上方に、前記切断刃が下端側に取り付けられた刃支持部と、該刃支持部の上端側に押し当てられたカム部とを前記移送方向と直交する方向に対し水平移動自在に複数配置し、前記刃支持部の上端側に、該刃支持部の上端側を前記移送方向と直交する方向に向けて斜め上方に延長してなるアーム部を形成し、前記アーム部を、該アーム部の延長側に配置された隣りの前記カム部の側面に対し押し当てられる長さに形成し、前記刃支持部の上端側に形成された斜面と、前記カム部の下端側に形成されたカム面とを、前記アーム部に沿って前記移送方向と直交する方向に向けて互いに押し当てられる角度に傾斜し、前記刃支持部と前記カム部とを、該刃支持部の斜面に対し前記カム部のカム面が押し当てられ、該刃支持部のアーム部が隣りの前記カム部の側面に押し当てられる方向に付勢し、前記各カム部の上下移動と対応して、前記各刃支持部に取り付けられた各切断刃の間隔を前記移送方向と直交する方向に対し拡縮調節自在に設けたフラットケーブル裁断装置であることを特徴とする。
つまり、各カム部のカム面を各刃支持部の斜面に押し当てたまま、各カム部の全体を垂直方向に上下移動させて、各カム部の上下移動に対応して、各カム部の押し当て力により各刃支持部を移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させる。また、各刃支持部のアーム部が押し当てられた各カム部を移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させる。
【0016】
例えば右隣の刃支持部の移動量を、その左隣の刃支持部の移動量に加算し、さらにその左隣の刃支持部の移動量に加算し、以下同様に、隣りに配置された各刃支持部の移動量に順次加算して、各刃支持部に取り付けられた各切断刃の間隔を前記移送方向と直交する方向に拡縮調節する。
これにより、フラットケーブルの横幅に応じて、隣り合う各切断刃の間隔を移送方向と直交する方向に対し無段階に一括して微調節することができる。
この結果、フラットケーブルを所望する裁断幅に裁断することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記各刃支持部の斜面に押し当てたまま前記各カム部を一括して上下移動するカム部移動手段を備えることができる。
つまり、カム部移動手段により各カム部を上下移動することで、各カム部が押し当てられた各刃支持部を同一方向に向けて一括して水平移動することができる。
これにより、各切断刃の間隔を同時に拡縮調節することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記刃支持部の下端側に、前記移送方向と直交する方向に対し所定の間隔を隔てて一対の切断刃を取り付けることができる。
つまり、刃支持部に取り付けられた一対の切断刃の間隔が常時一定しているので、該各切断刃により裁断されるフラットケーブルの裁断幅が変わることがなく、常時一定の裁断幅で裁断することができる。
これにより、裁断幅が常時一定したフラットケーブルを製造することができる。
【0019】
前記フラットケーブルは、例えば並列に配置された複数本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆したもので構成することができる。
また、導体は、例えば平角導体、丸形導体等の導電性を有する金属箔で構成することができる。また、絶縁フィルムは、可撓性及び絶縁性を有する肉厚の薄い合成樹脂製のフィルムで構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、複数の切断刃の間隔を無段階に一括して微調節することができるフラットケーブル裁断方法及びその製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のフラットケーブル裁断装置を示す正面図。
【図2】切断刃の取付け構造を示す部分拡大正面図。
【図3】切断刃の裁断幅拡縮動作を示す部分拡大正面図。
【図4】切断刃でフラットケーブルを裁断した例を示す平面図
【図5】切断刃の他の取付け構造を示す部分拡大正面図。
【図6】一対の切断刃でフラットケーブルを裁断した例を示す平面図。
【図7】従来のフラットケーブルを裁断する切断用スリッタを示す側面図。
【図8】図7の切断用スリッタを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1は本実施形態のフラットケーブル裁断装置2を示す正面図、図2は切断刃6の取付け構造を示す部分拡大正面図、図3は切断刃6の拡縮動作を示す説明図、図4は切断刃6で幅広フラットケーブル1を短冊状に裁断した例を示す平面図である。
【0023】
実施形態のフラットケーブル裁断装置2は、幅広フラットケーブル1を製造する図示しない製造装置の下流側で、該フラットケーブル1を移送方向Aに移送する移送路B上に設定された裁断区間Cに配置している(図7参照)。
【0024】
なお、製造装置により製造されるフラットケーブル1は、移送方向Aと平行して並列に配置された図示しない複数本の平角導体を一対の絶縁フィルムの間に挟み込んで一体的に被覆したものである。
【0025】
前記フラットケーブル裁断装置2は、裁断区間C内の移送路B下方に配置されたケーブル支持部3と、該裁断区間C内の移送路B上方に配置されたケーブル裁断部4とで構成している。
【0026】
ケーブル支持部3は、裁断区間Cの移送路B下方に移送方向Aと直交して軸架された支持軸3aと、該支持軸3aの外周に嵌合された複数のドラム3bとで構成している。
支持軸3aの外周に嵌合されたドラム3bの間には、前記切断刃6の挿入が許容される幅の溝部3cが形成されている。
【0027】
具体的には、同径に形成されたドラム3bを中心部よりも外周部の幅が薄くなるように形成しておき、支持軸3aの外周に対し複数のドラム3bを隣り合わせに近接して嵌合することにより、隣り合うドラム3bの外周部の対向面間に、前記切断刃6の厚みより幅広の溝部3cが形成される。
【0028】
なお、溝部3cの位置は、例えばドラム3bの厚みや個数を変更するか、或いは、ドラム3bの間に挟み込まれる図示しないシム板の板厚や枚数を変更する等して、幅広フラットケーブル1の裁断幅に対応して微調節する。
【0029】
前記ケーブル裁断部4は、裁断区間C内の上方に架設された取付け枠5と、該取付け枠5に取り付けられた薄板状の切断刃6と、刃支持部7と、カム部8と、可動部9とで構成している。
【0030】
取付け枠5は、移送方向Aから見て門形状に形成され、移送路Bを跨ぐようにして移送方向Aと直交する幅方向Yに配置している。また、取付け枠5の両側部に垂設された取付け部5a,5aの下端側対向壁面には、2本のガイド軸5b,5bが移送方向Aと直交して平行に架設されている。
【0031】
切断刃6は、カミソリの刃のような薄い金属刃で構成され、ガイド軸5b,5b間に取り付けられた刃支持部7の下端部に対し垂直に固定している。
実施形態では、図示しない製造装置により製造される幅広の幅広フラットケーブル1を移送方向Aと平行して短冊状に裁断するので、8枚の切断刃6を幅広フラットケーブル1の幅方向に設定された8箇所の裁断位置と対応して並列に配置している。
刃支持部7は、切断刃8の枚数と対応して、ガイド軸5b,5b間に対し8個並列に取り付けられており、該ガイド軸5b,5bに沿って移送方向Aと直交する幅方向Yに対し水平移動自在に設けられている。
【0032】
なお、刃支持部7は、図示しないコイルスプリングの復元力により可動部9の右端に向けて集合される方向に牽引付勢されている。
【0033】
また、刃支持部7の上端側には、該刃支持部7の上端側を移送方向Aと直交して左側斜め上方に向けて延長してなるアーム部7aが形成されている。
アーム部7aは、該アーム部7aの延長側に配置された左隣りのカム部8の側面に対し押し当てられる長さに形成されている。
アーム部7aの上面側傾斜部分には、該刃支持部7の上方に配置されたカム部8が押し当てられる斜面7bが移送方向Aと直交する幅方向Yに向けて形成されている。その斜面7bは、アーム部7aに沿って同一方向に向けて傾斜されている。
【0034】
なお、アーム部7aは、移送方向Aの上流側(図1の手前側)から見て同一の方向(図中左斜め上方)に向けて同一の角度(例えば45度)に傾斜されている。
【0035】
アーム部7aの傾斜側、すなわち、アーム部7aの延長側上端には、左隣の刃支持部7の上方に配置されたカム部8の右側面に対し押し当てられる当接片7cが形成されている。なお、当接片7cは、アーム部7aの延長側で左側上方に配置されたカム部8の右側面に対し常時押し当てられている。
【0036】
カム部8は、刃支持部7の個数と対応して、取付け部5a,5aの対向壁面に架設された可動部9の下面側に対し8個並列に取り付けられており、該可動部9の下面に沿って移送方向Aと直交する幅方向Yに対し水平移動自在に設けられている。
【0037】
また、カム部8の下端側、すなわち、カム部8の移送方向Aから見て左側角隅部には、該カム部8の下方に配置された刃支持部7の斜面7bに対し押し当てられる角度に傾斜されたカム面8aが形成されている。
なお、カム部8のカム面8aは、該カム部8の下方に配置された刃支持部7の斜面7bに対し常時押し当てられている。
【0038】
また、可動部9の右端に取り付けられたカム部8は定位置に固定され、右端のカム部8を除いた残りのカム部8は、移送方向Aと直交する幅方向Yに対し水平移動自在に設けられている。
【0039】
可動部9は、幅広フラットケーブル1の横幅より長尺に形成され、取付け部5a,5aの対向壁面に対し移送方向Aと直交して平行に架設されている。
また、可動部9の両端部は、取付け部5a,5aの対向壁面に沿って垂直に架設されたガイドレール5c,5cに対し上下移動自在に係合されている。該可動部9の上面には、取付け枠5の上面側中央部に対し水平回動自在に取り付けられた調節ボルト10が係合されている。
【0040】
つまり、調節ボルト10を、図示しない回動操作具により図中矢印で示す正方向へ回動操作すれば、その回動量に応じて可動部9の全体が垂直方向に下降される(図3のa参照)。また、調節ボルト10を、図示しない回動操作具により図中矢印で示す逆方向へ回動操作すると、その回動量に応じて可動部9の全体が垂直上昇される(図3のb参照)。
【0041】
前記フラットケーブル裁断装置2により幅広フラットケーブル1を短冊状に裁断する裁断方法を説明する。
【0042】
先ず、図1、図2に示すように、幅広フラットケーブル1の裁断幅が広くなるように切断刃6の間隔Wa(図3のa参照)を微調節する場合、調節ボルト10を、図示しない回動操作具により図中矢印で示す正方向へ回動操作して、カム部8が取り付けられた可動部9を垂直方向に下降させる。
【0043】
カム部8のカム面8aは、刃支持部7の斜面7bに対し常時押し当てられているので、可動部9を垂直方向に下降すれば、その下降動作に対応して、カム部8が刃支持部7の斜面7bに押し当てられたまま徐々に下降し、カム部8のカム面8aが刃支持部7の斜面7bに沿って左上斜面から右下斜面へ移動する。
【0044】
上述のカム部8の押し当て力により、刃支持部7が、図示しないコイルスプリングに抗して可動部9の左端に向けて水平移動される。
この刃支持部7の移動により、左隣のカム部8も左隣の刃支持部7と一緒に左側へ水平移動される。
その左隣の刃支持部7と一緒に左側へ水平移動した左隣のカム部8も、カム部8の押し当て力により、さらに左隣の刃支持部7を左側へ水平移動させる。
【0045】
このように、カム部8の下降動作により、左右の隣り合う刃支持部7の間隔Waが同程度に広げられる。また、カム部8のカム面8aが刃支持部7を押し下げるとともに、左隣のカム部8を左側へ水平移動させるため、各刃支持部7の水平移動量は位置固定された右端の刃支持部7から順に移動量が大きくなる。
これにより、隣り合う切断刃6の間隔Waが徐々に広くなるので、切断刃6による裁断幅が広くなるように微調節することができる(図3のa参照)。
【0046】
次に、幅広フラットケーブル1の裁断幅が狭くなるように切断刃6の間隔Wb(図3のb参照)を微調節する場合、調節ボルト10を、図示しない回動操作具により図中矢印で示す逆方向へ回動操作して、カム部8が取り付けられた可動部9を垂直上昇させる。
カム部8のカム面8aは、刃支持部7の斜面7bに対し常時押し当てられているので、可動部9を垂直上昇すれば、その上昇動作に対応して、カム部8が刃支持部7の斜面7bに押し当てられたまま徐々に上昇し、カム部8のカム面8aが刃支持部7の斜面7bに沿って右下斜面から左上斜面へ移動する。
【0047】
刃支持部7は、図示しないコイルスプリングの復元力により可動部9の右端に向けて集合される方向に牽引付勢されているので、カム部8の上昇動作により、刃支持部7が互いに集合されながら可動部9の右端に向けて水平移動される。
これにより、隣り合う切断刃6の間隔Wbが徐々に狭くなるので、切断刃6による裁断幅が狭くなるように微調節することができる(図3のb参照)。
【0048】
この結果、移送路B上の裁断区間Cに移送される一つの幅広フラットケーブル1を、実施形態のフラットケーブル裁断装置2により複数本の短冊フラットケーブル1aに移送方向Aと平行して裁断することができる(図4参照)。
【0049】
上述の刃支持部7及びカム部8の関係を、図1を参照して正面から見て可動部9の右端から左端に向けて第1〜第8の順に番号設定して詳述する。
第1〜第8カム部8のカム面8aは、その下方に配置された第1〜第8刃支持部7の斜面7bに対し常時押し当てられており、かつ、第1〜第7刃支持部7のアーム部7aは、その左隣に配置された第2〜第8カム部8の側面に押し当てられている。
【0050】
第1カム部8を押し当てた第1刃支持部7が左方向へ水平移動すれば、第2カム部8が同一移動量だけ左方向へ水平移動される。かつ、第2カム部8を押し当てた第2刃支持部7が同一移動量だけ左方向へ水平移動される。
【0051】
第2刃支持部7は、第1刃支持部7の移動量に、第2刃支持部7の移動量を加算した2倍の移動量だけ水平移動される。
【0052】
第3刃支持部7は、第1及び第2刃支持部7の移動量に、第3刃支持部7の移動量を加算した3倍の移動量だけ水平移動される。
【0053】
第4刃支持部7は、第1〜第3刃支持部7の移動量に、第4刃支持部7の移動量を加算した4倍の移動量だけ水平移動される。
【0054】
第5刃支持部7は、第1〜第4刃支持部7の移動量に、第5刃支持部7の移動量を加算した5倍の移動量だけ水平移動される。
【0055】
第6刃支持部7は、第1〜第5刃支持部7の移動量に、第5刃支持部7の移動量を加算した6倍の移動量だけ水平移動される。
【0056】
第7刃支持部7は、第1〜第6刃支持部7の移動量に、第7刃支持部7の移動量を加算した7倍の移動量だけ水平移動される。
【0057】
第8刃支持部7は、第1〜第7刃支持部7の移動量に、第7刃支持部7の移動量を加算した8倍の移動量だけ水平移動される。
【0058】
以下、第1〜第8のカム部8の押し当て力により、第1〜第8の刃支持部7を同一方向(図1中の左方向)に向けて水平移動させ、刃支持部7の個々の移動量を、その隣りに配置された刃支持部7の移動量として順次加算するので、刃支持部7に取り付けられた切断刃6の間隔を拡縮調節することができる。また、幅広フラットケーブル1の両側縁部の切残り部分も同一幅に裁断することができる。
【0059】
以上のように、カム部8の押し当て力により各刃支持部7を同一方向に向けて水平移動させ、刃支持部7の個々の移動量を隣りに配置された刃支持部7の移動量として順次加算し、刃支持部7に取り付けられた切断刃6の間隔を拡縮調節する。
これにより、幅広フラットケーブル1の横幅に応じて、隣り合う切断刃6の間隔を移送方向Aと直交する幅方向Yに対し無段階に一括して微調節することができ、切断刃6の間隔調節に要する作業時間を大幅に短縮することができる。また、隣り合う切断刃6の間隔が等間隔に拡縮調節されるため、幅広フラットケーブル1を所望する裁断幅に裁断する作業が正確に行え、裁断時の寸法精度向上を図ることができる。
【0060】
図5は、切断刃6の他の取付け構造を示す部分拡大正面図、図6は一対の切断刃6で幅広フラットケーブル1を裁断した例を示す平面図である。
上記取付け構造は、一対の切断刃6を、刃支持部7の下端部に固定された取付け板7dの下面側両端部に垂直固定するとともに、移送方向Aと直交する幅方向Yに対し所定の間隔を隔てて配置した構造である。また、一対の切断刃6は、2枚の切断刃6を一組として移送方向Aと平行して並列に複数組配置している。
【0061】
つまり、刃支持部7に取り付けられた一対の切断刃6の間隔が一定しているので、一対の切断刃6が取り付けられた刃支持部7を移送方向Aと直交する幅方向Yへ水平移動させて、一対の切断刃6による裁断位置と、該切断刃6により裁断される短冊フラットケーブル1bの間の裁断間隔とを設定する。
【0062】
図示しない製造装置により製造される幅広フラットケーブル1を、複数組配置された一対の切断刃6により移送方向Aと平行して同一幅に裁断し、複数本の短冊フラットケーブル1bに裁断する(図6参照)。
【0063】
つまり、刃支持部7に取り付けられた一対の切断刃6の間隔が常時一定しているので、一対の切断刃6により裁断される短冊フラットケーブル1bの裁断幅が変わることがなく、裁断開始から裁断終了に至るまで常時一定の裁断幅で裁断することができる。また、隣り合う短冊フラットケーブル1bの間の切残り部分は廃棄処分する。
【0064】
これにより、裁断幅が常時一定した短冊フラットケーブル1bを複数本連続して製造することができるとともに、前記実施形態と同様に、裁断幅の調節に要する作業時間を大幅に短縮することができ、幅広フラットケーブル1を同一の裁断幅に裁断する際の寸法精度向上を図ることができる。
なお、一対の切断刃6の間隔を拡縮調節すれば、該切断刃6により裁断される短冊フラットケーブル1bの裁断幅も変更することができる。
【0065】
また、本実施形態のフラットケーブル裁断装置2を、上下一対の熱ロール54,54と、該熱ロール54,54の下流側に配置した上下一対のロール(図示省略)との間に配置してもよい。
つまり、熱ロール54,54と上下一対のロールとで移送方向Aに向けてテンションが掛けられたフラットケーブル1を、本実施形態のフラットケーブル裁断装置2により短冊状に裁断する。
これにより、ケーブル支持部3を移送路B下方に配置する必要がなく、また、ドラム3bの間に形成された溝部3cの間隔調節が不要となる。この結果、装置全体の構成及び構造を簡素化することができるとともに、製造性の向上を図ることができる。
【0066】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の導体は、実施形態の平角導体2に対応し、
以下同様に、
カム部移動手段は、調節ボルト10に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0067】
本実施形態の切断刃6の枚数を、例えば8枚以下或いは8枚以下の所望する枚数に変更してもよい。
【符号の説明】
【0068】
A…移送方向
B…移送路
Wa,Wb…間隔
1…幅広フラットケーブル
1a,1b…短冊フラットケーブル
2…フラットケーブル裁断装置
3…ケーブル裁断部
4…ケーブル支持部
5…取付け枠
6…切断刃
7…刃支持部
7a…アーム部
7b…斜面
8…カム部
8a…カム面
9…可動部
10…調節ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆してなるフラットケーブルを、該フラットケーブルの移送方向と平行して複数の切断刃により短冊状に裁断するフラットケーブル裁断方法であって、
前記フラットケーブルの移送路上方に、前記切断刃が下端側に取り付けられた刃支持部と、該刃支持部の上端側に押し当てられたカム部とを前記移送方向と直交する方向に複数配置し、
前記カム部の下端側に形成されたカム面を、前記刃支持部の上端側に形成された斜面に対し前記移送方向と直交する方向に向けて押し当て、
前記刃支持部の上端側を前記移送方向と直交する方向に向けて斜め上方に延長してなるアーム部を、該アーム部の延長側に配置された隣りの前記カム部の側面に押し当て、
前記各カム部のカム面を前記各刃支持部の斜面に押し当てたまま、該各カム部の全体を垂直方向に上下移動させて、
前記各カム部を上下移動に対応して、該各カム部の押し当て力により前記各刃支持部を前記移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させ、
前記各刃支持部のアーム部が押し当てられた前記各カム部を前記移送方向と直交して同一方向に向けて水平移動させ、
前記各刃支持部の個々の移動量を、該刃支持部の隣りに配置された刃支持部の移動量として順次加算し、
前記各刃支持部に取り付けられた各切断刃の間隔を前記移送方向と直交する方向に拡縮調節する
フラットケーブル裁断方法。
【請求項2】
前記各刃支持部の斜面に押し当てたまま前記各カム部をカム部移動手段により一括して上下移動する
請求項1に記載のフラットケーブル裁断方法。
【請求項3】
前記フラットケーブルを、前記移送方向と直交する方向に対し所定の間隔を隔てて前記刃支持部の下端側に取り付けられた一対の切断刃により裁断する
請求項1又は2に記載のフラットケーブル裁断方法。
【請求項4】
移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆してなるフラットケーブルを、該フラットケーブルの移送方向と平行して短冊状に裁断するフラットケーブル裁断装置であって、
前記フラットケーブルの移送路上方に、前記切断刃が下端側に取り付けられた刃支持部と、該刃支持部の上端側に押し当てられたカム部とを前記移送方向と直交する方向に対し水平移動自在に複数配置し、
前記刃支持部の上端側に、該刃支持部の上端側を前記移送方向と直交する方向に向けて斜め上方に延長してなるアーム部を形成し、
前記アーム部を、該アーム部の延長側に配置された隣りの前記カム部の側面に対し押し当てられる長さに形成し、
前記刃支持部の上端側に形成された斜面と、前記カム部の下端側に形成されたカム面とを、前記アーム部に沿って前記移送方向と直交する方向に向けて互いに押し当てられる角度に傾斜し、
前記刃支持部と前記カム部とを、該刃支持部の斜面に対し前記カム部のカム面が押し当てられ、該刃支持部のアーム部が隣りの前記カム部の側面に押し当てられる方向に付勢し、
前記各カム部の上下移動と対応して、前記各刃支持部に取り付けられた各切断刃の間隔を前記移送方向と直交する方向に対し拡縮調節自在に設けた
フラットケーブル裁断装置。
【請求項5】
前記各刃支持部の斜面に押し当てたまま前記各カム部を一括して上下移動するカム部移動手段を備えた
請求項4に記載のフラットケーブル裁断装置。
【請求項6】
前記刃支持部の下端側に、前記移送方向と直交する方向に対し所定の間隔を隔てて一対の切断刃を取り付けた
請求項4又は5に記載のフラットケーブル裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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