説明

フラットケーブル

【課題】 軟らかく、可撓性に優れ、極めて狭い貫通孔を通すことができ、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持し、複雑で面倒な接続を容易且つ確実に行うことができるフラットケーブルを提供することにある。
【解決手段】 フラットケーブル101、102は、同軸ケーブル10の外径が0.15〜0.35mmで、同軸ケーブル10の外周の少なくとも一部が、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)からなるラミネートシート50に固定され、内径2.0〜5.5mmの貫通孔を通過可能に構成されたことを特徴とする。これにより、フラットケーブル101、102は、EPTFEからなるラミネートシート50に複数本の同軸ケーブル10が固定されているので、柔軟性及び可撓性に優れ、フラットケーブルを長尺方向に折り曲げ又は丸めることにより、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、極めて小さな貫通孔でも通すことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速伝送用の極細同軸ケーブルを平行に配設してなるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
中心導体を誘電体により覆い、この誘電体の外周を導体からなるシールド層により覆い、更に、このシールド層の外周を外被(ジャケット)により覆って構成される同軸ケーブルは、一般的に知られ、高周波用の伝送線として広く使用されている。近年、該同軸ケーブルの細径化が進み、例えば、中心導体の直径が0.1mm以下で、同軸ケーブルの外周径が約0.35mm程度の極めて細い同軸ケーブルが、小型のノート型パソコンや携帯用電話機等の電子機器に使用されるようになっている。
【0003】
これらの電子機器では、例えば、ノート型パソコンの液晶表示部と本体部とを細い径を有するヒンジを介して電気的に接続する為に複数本の同軸ケーブルが使用され、これらの配線・接続が複雑なものとなっている。このように複雑な接続を容易且つ確実に行う手段として、複数本の同軸ケーブルを同一平面上で平行に保持して構成されるフラットケーブルがあり、例えば、特許文献1に、このフラットケーブルの一例が記載されている。しかし、この特許文献1のものでは、細い径のヒンジをフラットケーブルが通った後、ケーブルの端末処理を行う際に、フラットケーブルの同軸ケーブル間に形成されるピッチ間隔の正確な保持が困難となり、端末処理が煩わしくなるという問題がある。
【0004】
また、複数本の同軸ケーブルを用いて製織化した製織ケーブルが、例えば、携帯用電話機等において、液晶表示部と本体部との電気的接続に使用される場合があるが、上記したと同様に、細い径のヒンジを製織ケーブルが通った後、ケーブルの端末処理を行う際に、ケーブル間に形成されるピッチ間隔の正確な保持が困難となり、端末処理が煩わしくなるという問題がある。
【特許文献1】特開2004−273333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯用電話機(以下、「端末機」という)では、端末機の小型化、軽量化、高機能化が進み、端末機の内部では、限られた狭いスペースにも関わらず複雑な配線・接続が求められている。また、端末機の形態として、液晶表示部が形成された可動部が本体部に対して回動して開閉するいわゆる折り畳み式以外に、可動部が折り畳みに加え回転可能に本体部に取り付けられているような新しい形態の端末機が近年登場している。
【0006】
上記の折り畳み式、回転式の端末機では、可動部と本体部とを上記したような細い径を有する円筒状のヒンジを介して結合しており、液晶表示部と本体部とを上記したフラットケーブル或いは製織ケーブルを当該ヒンジのヒンジ孔に通して電気的接続を行っている。このように、端末機において、フラットケーブル或いは製織ケーブルが使用されてきたが、上記特許文献1に記載されたフラットケーブル或いは製織ケーブルを、細い径を有する円筒状のヒンジを介して、液晶表示部と本体部とを電気的に結合する際には、ヒンジを通す前にフラットケーブル或いは製織ケーブルにおける同軸ケーブルのピッチ間隔を一定に正確に保持するケーブル端末加工、例えば、各同軸ケーブルをコネクタの端子或いはFPC(Flexible Printed Circuit)に接続する端末処理を施しておかなければ、ケーブルのヒンジ挿通後、ピッチ間隔の正確な維持が困難となり、また、ピッチ間隔の正確な維持の為にヒンジを通す前に端末処理を施せば、端末処理部の径が大きくなり、ヒンジを通すことが不可能となるという問題が生じる。しかし、今後、端末機の形態が様々なものへ更に多様化することが予想され、その一方、端末機の小型化、軽量化、高機能化も更に進むことを考慮すれば、複雑で面倒な電気的接続を容易且つ確実に行うことが可能なフラットケーブル、及び、同軸ケーブル同士の均一なピッチを確保できるフラットケーブルの出現が望まれている。
【0007】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、軟らかく、可撓性に優れ、極めて狭い貫通孔を通すことができ、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持し、複雑で面倒な接続を容易且つ確実に行うことができるフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、請求項1に記載のフラットケーブルは、複数本の同軸ケーブルが平行に並べられて構成されたフラットケーブルにおいて、前記同軸ケーブルの外径が0.15〜0.35mmで、前記同軸ケーブルの外周の少なくとも一部が、融着層を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなるラミネートシートに固定され、内径2.0〜5.5mmの貫通孔を通過可能に構成されたことを特徴としている。
【0009】
これにより、請求項1に記載のフラットケーブルは、融着層を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなるラミネートシートに複数本の同軸ケーブルが固定されているので、柔軟性及び可撓性に優れ、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、フラットケーブルを長尺方向に折り曲げ又は丸めることにより、極めて小さな貫通孔でも通すことが可能で、複雑で面倒な電気的な接続を容易且つ確実に行うことができる。この結果、携帯用電話機のヒンジ孔に本発明のフラットケーブルを通すことが可能となり、携帯用電話機の接続に使用することが可能である。
【0010】
また、請求項2に記載のフラットケーブルは、上記に加え、前記同軸ケーブルが少なくとも20本含まれることを特徴としている。これにより、請求項2に記載のフラットケーブルは、折り曲げ又は丸めることにより、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、極めて小さな貫通孔を通すことができ、より高度且つ複雑な配線・接続が必要な電子機器であっても対応することが可能である。
【0011】
また、請求項3に記載のフラットケーブルは、上記に加え、前記ラミネートシートの厚さが30〜150μmであることを特徴としている。これにより、請求項3に記載のフラットケーブルは、柔軟性及び可撓性に優れると共に、耐久性においても良好なものとすることが可能である。
【0012】
また、請求項4に記載のフラットケーブルは、更に、前記融着層がテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなることを特徴としている。これにより、請求項4に記載のフラットケーブルは、熱融着により、前記同軸ケーブルを前記ラミネートシートに固定することが可能で、更に、融着固定後に前記ラミネートシートの一部にレーザー加工を施し、その部分を剥離することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るフラットケーブルの実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
初めに、本発明の代表的な実施形態について、図1〜3を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るフラットケーブルを構成する同軸ケーブル10及びラミネートシート50をそれぞれ示す図である。図2は、本発明に係るフラットケーブル101、102を示す断面図である。図3は、フラットケーブルを折り曲げた状態及び丸めた状態をそれぞれ示す断面図である。
【0015】
本発明に係るフラットケーブル101、102は、図2(A)及び(B)に示すように、平行に且つ等間隔に並べた複数本の極細の同軸ケーブル10をラミネートシート50で固定することにより構成される。先ず、本発明に係るフラットケーブル101、102を構成する同軸ケーブル10及びラミネートシート50について図1を参照して説明する。
【0016】
図1(A)は、同軸ケーブル10の横断面(同軸ケーブル10が延びる方向を軸方向とし、該軸方向と直交する面で切断)を示す断面図である。同軸ケーブル10は、複数本(例えば、7本)の導体(例えば、直径20μm程度)を撚り合わせて作られた中心導体11の周囲に絶縁材料からなる誘電体層12を形成し、この誘電体層12の外周に複数本の導体を横巻きに設けてシールド層13を形成し、更にシールド層13の外周に絶縁材料からなる外被14を形成して構成されている。この同軸ケーブル10は、前述した携帯用電話機の液晶表示部と本体部との接続に使用可能なケーブルで、例えば、同軸ケーブル10の外径が0.15〜0.3mm程度と極めて細い径となっている。なお、本実施形態においては、誘電体層12及び外被14の材料として、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」という)が用いられている。
【0017】
図1(B)はラミネートシート50を示す斜視図で、図1(C)はその断面図(図1(B)におけるX−X線矢視図)である。ラミネートシート50は、図1(C)に示すように、ベース層51と融着層52との二層構造となっている。ベース層51は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下、「EPTFE」という)を厚さ30〜100μmの帯状に加工した極薄のシートである。EPTFEは、原材料のポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)を延伸加工することにより得ることができ、微細な連続多孔質構造を有するフッ素樹脂である。EPTFEは、耐熱性、耐薬品性、耐候性等に優れた特性を有し、厚さ30〜100μmの極薄シートに加工しても耐久性に優れると共に、柔軟性に富み、可撓性が極めて良好である。
【0018】
融着層52は、ベース層51の同軸ケーブル10を固定する側に形成され、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、「FEP」という)からなる厚さ約10〜50μmの融着層である。FEPからなる融着層52は、熱融着により、PFAからなる外被14(同軸ケーブル10)と、EPTFEからなるベース層51(ラミネートシート50)とを容易に融着し固定することが可能である。また、熱融着による固定により、融着固定後にラミネートシート50の一部にレーザー加工を施し、その部分を剥離することができる。
【0019】
図2(A)に示す本発明に係るフラットケーブル101は、上述した同軸ケーブル10を平行に、且つ、同軸ケーブル10同士の間隔(以下、「ケーブルピッチ」という)が、例えば、0.4mmになるように複数本並べ、その上からラミネートシート50を融着層52が同軸ケーブル10側になるように同軸ケーブル10、、、10の上部に配置して同軸ケーブル10、、、10を融着固定したフラットケーブルである。
【0020】
図2(B)に示すフラットケーブル102は、上記フラットケーブル101を、同軸ケーブル10、、、10の下側からも同様にラミネートシート50で融着固定したフラットケーブルである。すなわち、フラットケーブル102は、同軸ケーブル10、、、10を2枚のラミネートシート50、50で挟み込むようにした両面ラミネート構造(これに対し、フラットケーブル101の構造を「片面ラミネート構造」という)を有する。
【0021】
このように、本発明に係るフラットケーブルは、複数本の同軸ケーブル10を両側から挟持する両面ラミネート構造、又は、片側にのみ設ける片面ラミネート構造の何れとしても良く、フラットケーブルの用途等を勘案し、任意に選択が可能である。
【0022】
なお、本実施形態に係るフラットケーブル101、102において、ラミネートシート50によって固定される同軸ケーブル10の本数は、特に制限はない。例えば、携帯用電話機では20〜50本程度の同軸ケーブルからなるフラットケーブルが使用されているが、500〜600本程度であっても良い。また、ケーブルピッチも、例えば、0.4mmに制限されるのではなく、フラットケーブルの用途等を勘案し、好ましいケーブルピッチに設定することが可能である。
前述したように、本実施形態に係るフラットケーブル101、102では、外径が0.2〜0.3mm程度の極細同軸ケーブル10が同一平面状に平行に並べられ、EPTFEからなるラミネートシート50に熱融着により固定されているので、フラットケーブル101、102は、良好な可撓性が保持されつつ、各同軸ケーブル10が乱れることなく、所定のケーブルピッチが維持されている。特に、片面ラミネート構造を有するフラットケーブル101では、その形態性における自由度が高く、図3(A)に示すように、フラットケーブル101を軸方向に折り曲げること、又は、図3(B)に示すように、フラットケーブル101を軸方向に丸めることが容易である。なお、図3(A)、(B)に示すフラットケーブル101では、固定された複数本の同軸ケーブル10を保護し、各同軸ケーブル10がばらばらになることを防止する為に、ラミネートシート50が複数本の同軸ケーブル10を包み込むような状態としている。このように、折り曲げられたフラットケーブル101、丸められたフラットケーブル101は、例えば、ヒンジ80に形成されたヒンジ孔80a(貫通孔)(図6(A)参照)を通過することが可能である。
【0023】
一方、前述した折り畳み式や回転式の携帯用電話機では、内径3.0〜5.5mm、深さ5〜20mm程度のヒンジ孔(貫通孔)が形成されたヒンジが使用されており、特に最近では、内径3.0〜4.0mm、深さ5〜20mm程度のヒンジ孔が形成されたヒンジが使用され、更に、内径が2.0〜3.0mm程度に小さくなることが予想される。このように小さなヒンジ孔に従来のフラットケーブルを通すことは、前述したように、種々の問題を生じ、困難であった。しかし、本発明によれば、極細の同軸ケーブル10を平行に並べ、EPTFEからなるラミネートシート50により融着固定することで、良好な可撓性を保持しつつその形態を容易に変化させることが可能なフラットケーブルを提供することが可能となった。これにより、回転式の携帯用電話機等に用いられるヒンジに形成された非常に小さな貫通孔であっても、本発明に係るフラットケーブルを通すことができるので、回転式の携帯用電話機等においても本発明に係るフラットケーブルを使用することが可能となった。
【0024】
次に、本実施形態に係るフラットケーブル101の端末構造について説明する。図4及び図5は、フラットケーブル101の一端の端末構造の例を示す平面図である。図4(A)は、端末加工がされていないフラットケーブル101をラミネートシート50側から見た平面図である。図4に示すラミネートシート50の裏側に複数本の同軸ケーブル10が平行に融着固定されている。
【0025】
図4(B)に示すフラットケーブル101bは、中央のラミネートシート50aと端部のラミネートシート50bとを残すようにラミネートシート50の一部をレーザー加工により剥し、ラミネートシート50a、50bにより固定された複数本の同軸ケーブル10の外被14をレーザー加工により除去したものである。外被14を除去された同軸ケーブル10は、図4(B)に示すように、シールド層13が露出している。
【0026】
図4(C)に示すフラットケーブル101cは、上記フラットケーブル101bに、シールド層13の一部を除去して同軸ケーブル10の誘電体層12を露出させる処理(以下、「シールドカット」という)を加えたものである。
【0027】
このように、本実施形態に係るフラットケーブル101に様々な端末加工を行いその用途・機能を向上させることが可能である。特に、フラットケーブル101b、101cは端部のラミネートシート50bが同軸ケーブル10を固定しているので、ヒンジ等に通した場合に同軸ケーブル10先端のピッチ精度を良好に保持することが可能である。なお、図5は、端末構造の例を示したもので、本発明に係るフラットケーブルの端末構造は、これらに限定されない。
【0028】
次に、本実施形態に係るフラットケーブル101の使用形態について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、フラットケーブル101cの使用形態の例を示す平面図である。図6は、フラットケーブル101c1をヒンジ80に通した状態を示す平面図である。
【0029】
図5(A)に示すように、フラットケーブル101cの中央に残されたラミネートシート50aの任意の位置にレーザー加工により切れ目を形成し、切れ目に沿ってラミネートシート50aの一部を剥がして使用することが可能である(図5(B)参照)。この際、図5(C)に示すように、帯状のラミネートシート50fを任意の位置に残しても良い。
【0030】
図6(A)は、フラットケーブル101c1の一端を、折り曲げ又は丸めた状態でヒンジ80に形成された貫通孔80aを通した状態を示す。上述したように、ラミネートシート50はEPTFEで形成されており、柔軟性、可撓性に優れているので、フラットケーブル101c1の先端を折り曲げ又は丸めることで、端末機のヒンジ等に形成された小さな貫通孔80aであっても、フラットケーブルの先端を通すことが可能である。フラットケーブル101c1の先端をヒンジ80に通した後は、その先端を、図6(B)に示すように、再度広げるようにしても良い。上述したように、フラットケーブル101c1の端部はラミネートシート50bにより同軸ケーブル10が固定されているので、フラットケーブル101c1の接続が容易且つ確実になり、更に、同軸ケーブル10同士のピッチ精度を良好に保持することが可能である。
【0031】
次に、本発明の実施例について説明する。以下に記す実施例1〜5のフラットケーブル105、106、107、108、109を用いて、ヒンジ通過試験を行った。
【0032】
[実施例1]フラットケーブル105
直径25μmの導体を7本撚った中心導体の外周に約40μm厚のPFAからなる誘電体層を設け、この誘電体層の外周に径が30μmの導体素線を巻回して外部導体層としての横巻シールド層を形成し、この外部導体層の外周に約30μm厚の外被を設け、外径0.28mmとした極細同軸ケーブルを40本、ケーブルピッチ0.4mmとなるように、EPTFEで形成された厚さ80μmのラミネートシートで片面のみ固定させてフラットケーブル105を作成した。
【0033】
[実施例2]フラットケーブル106
直径20μmの導体を7本撚った中心導体の外周に約35μm厚のPFAからなる誘電体層を設け、この誘電体層の外周に径が30μmの導体素線を巻回して外部導体層としての横巻シールド層を形成し、この外部導体層の外周に約25μm厚の外被を設け、外径0.24mmとした極細同軸ケーブルを40本、ケーブルピッチ0.3mmとなるように、EPTFEで形成された厚さ80μmのラミネートシートで片面のみ固定させてフラットケーブル106を作成した。
【0034】
[実施例3]フラットケーブル107
直径16μmの導体を7本撚った中心導体の外周に約30μm厚のPFAからなる誘電体層を設け、この誘電体層の外周に径が20μmの導体素線を巻回して外部導体層としての横巻シールド層を形成し、この外部導体層の外周に約20μm厚の外被を設け、外径0.19mmとした極細同軸ケーブルを40本、ケーブルピッチ0.3mmとなるように、EPTFEで形成された厚さ80μmのラミネートシートで片面のみ固定させてフラットケーブル107を作成した。
【0035】
上記したフラットケーブル105、106、107のいずれも、内径3.0mm、深さ20mmの貫通孔を有するヒンジを、フラットケーブルの同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、これらのフラットケーブルに損傷を与えることなく、通過させることができた。
【0036】
[実施例4]フラットケーブル108
直径25μmの導体(単線)からなる中心導体の外周に約25μm厚のPFAからなる誘電体層を設け、この誘電体層の外周に径が20μmの導体素線を巻回して外部導体層としての横巻シールド層を形成し、この外部導体層の外周に約20μm厚の外被を設け、外径0.155mmとした極細同軸ケーブルを620本、ケーブルピッチ0.2mmとなるように、EPTFEで形成された厚さ35μmのラミネートシートで片面のみ固定させてフラットケーブル108を作成した。
【0037】
このフラットケーブル108を、内径5.5mm、深さ20mmの貫通孔を有するヒンジに、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、フラットケーブル108に損傷を与えることなく、通過させることができた。
【0038】
[実施例5]フラットケーブル109
直径20μmの導体を7本撚った中心導体の外周に約52.5μm厚のPFAからなる誘電体層を設け、この誘電体層の外周に径が30μmの導体素線を巻回して外部導体層としての横巻シールド層を形成し、この外部導体層の外周に約35μm厚の外被を設け、外径0.31mmとした極細同軸ケーブルを20本、ケーブルピッチ0.4mmとなるように、EPTFEで形成された厚さ35μmのラミネートシートで片面のみ固定させてフラットケーブル109を作成した。
【0039】
このフラットケーブル109を、内径2.0mm、深さ20mmの貫通孔を有するヒンジに、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、フラットケーブル109に損傷を与えることなく、通過させることができた。
【0040】
以上、本発明の実施形態と実施例について説明したが、本発明に係るフラットケーブル101、102は、複数本の同軸ケーブル10が平行に並べられて構成されたフラットケーブルにおいて、同軸ケーブル10の外径が0.15〜0.35mmで、同軸ケーブル10の外周(外被14)の少なくとも一部が、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)からなるラミネートシート50に固定され、内径2.0〜5.5mmの貫通孔を通過可能に構成されたことを特徴としている。
【0041】
これにより、フラットケーブル101、102は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)からなるラミネートシート50に複数本の同軸ケーブル10が固定されているので、柔軟性及び可撓性に優れ、フラットケーブル101、102を長尺方向(軸方向)に折り曲げ又は丸めることにより、極めて小さな貫通孔でも通すことが可能である。この結果、携帯用電話機のヒンジ孔にフラットケーブル101、102を通すことが可能となり、携帯用電話機の接続に使用することが可能である。更に、同軸ケーブル10間のピッチ精度を良好に保持し、複雑で面倒な電気的な接続を容易且つ確実に行うことが可能である。
【0042】
また、本発明に係るフラットケーブル101、102は、少なくとも20本の同軸ケーブル10が含まれることを特徴としている。これにより、フラットケーブル101、102は、折り曲げ又は丸めることにより、同軸ケーブル間のピッチ精度を良好に保持しつつ、極めて小さな貫通孔を通すことができ、より高度且つ複雑な配線・接続が必要な電子機器であっても対応することが可能である。
【0043】
また、本発明に係るフラットケーブル101、102は、ラミネートシート50の厚さが30〜150μmであることを特徴としている。これにより、フラットケーブル101、102は、柔軟性及び可撓性に優れると共に、耐久性においても良好なものとすることが可能である。
【0044】
また、本発明に係るフラットケーブル101、102は、融着層52がテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなることを特徴としている。これにより、フラットケーブル101、102は、熱融着により、同軸ケーブル10(外被14)をラミネートシート50に固定することが可能で、更に、融着固定後にラミネートシート50の一部にレーザー加工を施し、その部分を剥離することも可能である。
【0045】
なお、本発明の範囲は上述した実施形態や実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に反しない限り、他の様々な実施形態に適用可能である。また、本発明に係るフラットケーブルに端末加工を行って、フラットケーブルの用途・機能を更に向上させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るフラットケーブルは、携帯電話機やパソコン等の電子機器で使用される他、自動車等の分野においても適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るフラットケーブルを構成する同軸ケーブル10及びラミネートシート50をそれぞれ示す図である。
【図2】本発明に係るフラットケーブル101、102を示す断面図である。
【図3】フラットケーブルを折り曲げた状態及び丸めた状態をそれぞれ示す断面図である。
【図4】フラットケーブル101の一端の端末構造の例を示す平面図である。
【図5】フラットケーブル101cの使用形態の例を示す平面図である。
【図6】フラットケーブル101c1をヒンジ80に通した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 同軸ケーブル、11 中心導体、12 誘電体層、13 シールド層、14 外被、50 ラミネートシート、51 ベース層、52 融着層、101、102 フラットケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の同軸ケーブルが平行に並べられて構成されたフラットケーブルにおいて、
前記同軸ケーブルの外径が0.15〜0.35mmで、
前記同軸ケーブルの外周の少なくとも一部が、融着層を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなるラミネートシートに固定され、
内径2.0〜5.5mmの貫通孔を通過可能に構成されたことを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記同軸ケーブルが少なくとも20本含まれることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記ラミネートシートの厚さが30〜150μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記融着層は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−222059(P2006−222059A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101774(P2005−101774)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000145530)株式会社潤工社 (71)
【Fターム(参考)】