説明

フラットケーブル

【課題】電線保護材内に収容して用いたときに、側端部の耐摩耗特性を向上できるフラットケーブルを提供すること。
【解決手段】フラットケーブル10の幅方向において、導体12が存在する領域Aにある中央部14aと、中央部14aより外側に延出された側端部14bとにより構成された絶縁体14の側端部14bの延出長さ(a)を中央部14aの厚さ(b)よりも大きくする。この際、中央部14aの厚さ(b)に対する側端部14bの延出長さ(a)の比(a/b)は1.3以上が好ましい。また、さらに側端部14bを中央部14aの表面よりも厚さ方向に膨出させると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルに関し、さらに詳しくは、自動車などの車両に好適に用いられるフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線の省スペース化などの要求から、フラットケーブルが広く用いられている。フラットケーブルは、例えば、導体と導体の外周を被覆する絶縁体とにより構成されており、全体として扁平状の外観を有する(例えば特許文献1)。
【0003】
絶縁体の厚みは、絶縁破壊、機械的強度、電気特性等の観点から定められるものであるが、これらの特性安定化を図るなどの理由で、通常は導体の全周にわたって均一にされている。図4に示すように、導体32と、導体32の外周を覆う絶縁体34とを備えたフラットケーブル30の場合には、フラットな面34aにおける絶縁体34の厚み(b)と側端部34bにおけるマージン幅(b)も、通常は同じ長さにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平02−15253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車等の車両に配索されるフラットケーブルなどの電線は、車載部品等の外部干渉から保護するために、配索時にはコルゲートチューブなどの電線保護材に収容されている。フラットケーブルは、全体として扁平状の外観をしているため、その側端部がコルゲートチューブなどの電線保護材の内周面に当たりやすい。自動車等の車両の走行中には振動が生じるため、その振動によりフラットケーブルの側端部が電線保護材の内周面と擦れて摩耗されやすいという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電線保護材内に収容して用いたときに、側端部の耐摩耗特性を向上できるフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフラットケーブルは、導体と、前記導体の外周を覆う絶縁体とを備えたフラットケーブルであって、前記絶縁体は、幅方向において、前記導体が存在する領域にある中央部と、前記中央部より外側に延出された側端部とにより構成され、前記側端部の延出長さ(a)が前記中央部の厚さ(b)よりも大きいことを要旨とするものである。
【0008】
この際、前記中央部の厚さ(b)に対する前記側端部の延出長さ(a)の比(a/b)は1.3以上であることが好ましい。そして、さらに、前記側端部は、前記中央部の表面よりも厚さ方向に膨出していることが好ましい。また、さらに、前記側端部の体積は、前記中央部の体積よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフラットケーブルによれば、導体の外周を覆う絶縁体の、導体が存在する領域にある中央部の厚さ(b)よりも、中央部より外側に延出された側端部の延出長さ(a)が大きいため、従来よりも延出長さ(a)が長くなっている。そのため、電線保護材内に収容されたときに、従来よりもその側端部が摩耗されにくい。
【0010】
この際、中央部の厚さ(b)に対する側端部の延出長さ(a)の比(a/b)が1.3以上であると、側端部の延出長さが十分に確保されるため、特に側端部の耐摩耗特性に優れる。そして、側端部が中央部の表面よりも厚さ方向に膨出していると、それだけ側端部の摩耗を遅くできるため、より一層、側端部の耐摩耗特性に優れる。また、側端部の体積が中央部の体積よりも大きいと、側端部の摩耗を遅くできるため、より一層、側端部の耐摩耗特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図4】従来のフラットケーブルを表す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルの長手方向と直交する方向における断面を表わした横断面図である。図1に示すように、第一実施形態に係るフラットケーブル10は、導体12と、導体12の外周を覆っている絶縁体14とを備えている。フラットケーブル10は、導体12が扁平状に形成されており、全体として扁平状の外観をしている。
【0014】
導体12は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められたものから構成されている。複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められたとは、撚線16同士が間隔をあけないで並行に配列されていることをいう。この際、複数本の撚線16は、隣り合う撚線16同士が互いに接触する部分を有している。隣り合う撚線16同士の接触する部分は、長手方向において、全長にわたっていても良いし、一部分であっても良い。隣り合う撚線16同士が接触していることにより、複数本の撚線16が一つの導体として機能していれば良いため、隣り合う撚線16同士は、長手方向において接触していない部分が生じていても良い。
【0015】
撚線16は、複数本の素線18が束ねられ、撚り合わされて構成されたものである。素線18の本数は特に限定されるものではない。また、素線18の外径は特に限定されるものではない。素線18の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを例示することができる。
【0016】
絶縁体14は、フラットケーブル10の幅方向において導体12が存在する領域Aにある中央部14aと、この中央部14aより幅方向の外側に延出された側端部14bとにより構成されている。中央部14aは、導体12を挟んで厚さ方向の両外側に所定の厚み(b)で形成されており、中央部14a内には導体12が存在している。中央部14aは、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成される導体12の側面以外の表面を覆っている。中央部14aの表面はフラットケーブル10のフラットな表面を構成している。
【0017】
側端部14bは、導体12よりも幅方向の外側に所定の延出長さ(a)で形成されており、側端部14b内には、導体12が存在していない。側端部14bは、導体12の側面を覆っている。側端部14bの延出長さ(a)は、中央部14aの厚み(b)よりも大きくされており、側面から導体12までの距離が中央部14aの表面から導体12までの距離よりも長くされている。
【0018】
一般に、フラットケーブルは、自動車等の車両に配索される場合、車載部品等の外部干渉から保護するために、配索時にはコルゲートチューブなどの電線保護材に収容されている。フラットケーブルは、全体として扁平状の外観をしているため、その側端部がコルゲートチューブなどの電線保護材の内周面に当たりやすい。自動車等の車両の走行中には振動が生じるため、その振動によりフラットケーブルの側端部が電線保護材の内周面と擦れて摩耗されやすい。フラットケーブル10によれば、側面から導体12までの距離が中央部14aの表面から導体12までの距離よりも長くされているため、従来よりも側端部14bが摩耗されにくい。したがって、側端部14bの耐摩耗特性に優れる。
【0019】
側端部14bが摩耗されにくいなどの観点から、中央部14aの厚み(b)に対する側端部14bの延出長さ(a)の比(a/b)は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上である。延出長さ(a)が上記範囲内であれば、側端部14bの延出長さは十分に確保されるため、側端部14bの耐摩耗特性に優れる。
【0020】
側端部14bは、中央部14aにおけるフラットケーブル10の厚さよりも大きい直径を有する円柱体の周面を軸芯に平行な面で切り取った形状をしており、中央部14aの表面よりも厚さ方向に長さ(c)で膨出している。膨出部分は、側端部14bの体積を大きくしている部分であり、側端部14bの摩耗を遅くして摩耗されにくくする。また、側端部14bの表面は曲面であるため、角を有する形状と比較して摩擦抵抗が小さい。したがって、これによっても、側端部14bの摩耗を低減する効果がある。
【0021】
側端部14bが摩耗されにくいなどの観点から、側端部14bの体積は、中央部14aの体積よりも大きいことが好ましい。側端部14bの体積としては、好ましくは中央部14aの体積の1.5倍以上であり、より好ましくは中央部14aの体積の2倍以上である。一方、配索性の低下を防止するなどの観点から、側端部14bの体積としては、好ましくは中央部14aの体積の5倍以下であり、より好ましくは中央部14aの体積の3倍以下である。側端部14bの体積が上記範囲内であれば、側端部の摩耗を遅くできるため、より一層、側端部の耐摩耗特性に優れる。
【0022】
絶縁体14の材料としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル樹脂などを好適に用いることができる。
【0023】
次に、第二実施形態に係るフラットケーブルについて説明する。
【0024】
図2に示すように、第二実施形態に係るフラットケーブル110は、導体12と、導体12の外周を覆っている絶縁体114とを備えている。フラットケーブル110は、導体12が扁平状に形成されており、全体として扁平状の外観をしている。
【0025】
第二実施形態に係るフラットケーブル110は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と比較して、絶縁体114の形状が異なっているのみであり、その他の構成については第一実施形態に係るフラットケーブル10と同じであるため、説明を省略する。
【0026】
絶縁体114は、フラットケーブル110の幅方向において導体12が存在する領域Aにある中央部114aと、この中央部114aより幅方向の外側に延出された側端部114bとにより構成されている。中央部114aは、導体12を挟んで厚さ方向の両外側に所定の厚み(b)で形成されており、側端部114bは、導体12よりも幅方向の外側に所定の延出長さ(a)で形成されている。側端部114bの延出長さ(a)は、中央部114aの厚み(b)よりも大きくされており、側面から導体12までの距離が中央部114aの表面から導体12までの距離よりも長くされている。
【0027】
側端部114bは、角柱体の形状をしており、中央部114aの表面よりも厚さ方向に長さ(c)で膨出している。膨出部分は、側端部114bの体積を大きくしている部分であり、側端部114bの摩耗を遅くして摩耗されにくくする。また、側端部114bは、複数の角部114cを有する角柱体の形状をしていることから、角部114cに丸みが設けられた形状よりも側端部114bの体積を大きくできる。そのため、側端部114bの摩耗を遅くして摩耗されにくくできる。複数の角部114cのうち、幅方向の外側にある角部114cに丸みを設け、側端部114bの断面形状がいわゆるキノコの傘の形状となるようにすると、側端部114bの体積を大きくしつつ、角部114cの削れやすさも低減できる。
【0028】
中央部114aの厚み(b)に対する側端部114bの延出長さ(a)の比(a/b)は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様の範囲内にすることが好ましい。また、側端部114bの体積は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様の範囲内にすることが好ましい。
【0029】
次に、第三実施形態に係るフラットケーブルについて説明する。
【0030】
図3に示すように、第三実施形態に係るフラットケーブル210は、導体12と、導体12の外周を覆っている絶縁体214とを備えている。フラットケーブル210は、導体12が扁平状に形成されており、全体として扁平状の外観をしている。
【0031】
第三実施形態に係るフラットケーブル210は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と比較して、絶縁体214の形状が異なっているのみであり、その他の構成については第一実施形態に係るフラットケーブル10と同じであるため、説明を省略する。
【0032】
絶縁体214は、フラットケーブル210の幅方向において導体12が存在する領域Aにある中央部214aと、この中央部214aより幅方向の外側に延出された側端部214bとにより構成されている。中央部214aは、導体12を挟んで厚さ方向の両外側に所定の厚み(b)で形成されており、側端部214bは、導体12よりも幅方向の外側に所定の延出長さ(a)で形成されている。側端部214bの延出長さ(a)は、中央部214aの厚み(b)よりも大きくされており、側面から導体12までの距離が中央部214aの表面から導体12までの距離よりも長くされている。
【0033】
側端部214bにおけるフラットケーブル210の厚みは中央部214aにおけるフラットケーブル210の厚みと同一にされており、中央部214aの表面よりも厚さ方向には膨出していない。側端部214bの幅方向外側には丸みが設けられており、フラットケーブル210の横断面は楕円形になっている。側端部214bの表面は曲面にされているため、これによっても、側端部214bの摩耗を抑える効果がある。
【0034】
中央部214aの厚み(b)に対する側端部214bの延出長さ(a)の比(a/b)は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様の範囲内にすることが好ましい。また、側端部214bの体積は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様の範囲内にすることが好ましい。
【0035】
本発明にかかるフラットケーブルにおいては、導体12としては、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められたものに特段限定されるものではなく、例えば平角導体であっても良いし、複数本の丸素線が同一平面上に並行に集められたものであっても良い。また、同一平面上に並行に集められた複数本の撚線16よりなる層が2層以上積層されてなる構成のものであっても良い。また、同一平面上に並行に集められた複数本の丸素線よりなる層が2層以上積層されてなる構成のものであっても良い。絶縁体14の内部には、互いに接触していない独立した導体12を2以上有していても良い。
【0036】
第三実施形態に係るフラットケーブル210においては、側端部214bの幅方向外側に角部が設けられ、フラットケーブル210の横断面が方形であっても良い。この場合には、側端部214bが角柱体の形状となるため、角部に丸みが設けられた形状よりも側端部214bの体積を大きくできる。これにより、側端部214bの摩耗を遅くして摩耗されにくくできる。
【0037】
本発明にかかるフラットケーブルは、例えば、複数本の撚線16を幅方向および厚み方向に複数本配置して撚線16の束よりなる導体12を形成し、導体12の外周を覆うように絶縁体を形成することにより製造することができる。絶縁体は、例えば、導体12の外周に絶縁材料を押出成形することにより形成することができる。絶縁体の側端部の特殊な形状は、ダイスの形状を所定の形状に加工することにより得ることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 フラットケーブル
12 導体
14 絶縁体
14a 中央部
14b 側端部
16 撚線
18 素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁体とを備えたフラットケーブルであって、
前記絶縁体は、幅方向において、前記導体が存在する領域にある中央部と、前記中央部より外側に延出された側端部とにより構成され、
前記側端部の延出長さ(a)が前記中央部の厚さ(b)よりも大きいことを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記中央部の厚さ(b)に対する前記側端部の延出長さ(a)の比(a/b)は1.3以上であることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記側端部は、前記中央部の表面よりも厚さ方向に膨出していることを特徴とする請求項1または2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記側端部の体積は、前記中央部の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−14448(P2011−14448A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158903(P2009−158903)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】