説明

フラットケーブル

【課題】導体が複数本の撚線を同一平面上に並行に集めてなる撚線層1層以上で構成される場合において、捻回する際に必要な捻回力の捻回する方向の違いによる差を小さくすることにより最大捻回力を低減できるフラットケーブルを提供すること。
【解決手段】複数本の撚線16を同一平面上に並行に集めてなる撚線層1層以上で構成される導体12が、撚りの方向が右撚りである右撚線16aと撚りの方向が左撚りである左撚線16bとを含んでいる。導体12中に含まれる右撚線16aと左撚線16bの本数の差は1本以下であることが好ましい。右撚線16aと左撚線16bとは撚線層内において交互に配置されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルに関し、さらに詳しくは、自動車などの車両に好適に用いられるフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線の省スペース化などの要求から、フラットケーブルが広く用いられている。フラットケーブルは、例えば、導体と導体の外周を被覆する絶縁体とにより構成されており、全体として扁平状の外観を有する。
【0003】
フラットケーブルの導体としては、平角導体が良く用いられているが、以下の構成のものも知られている。すなわち、図9に示すように、複数本の素線38を撚り合わせて構成される撚線36を多数本横一列に配列してなる導体32が知られている(特許文献1)。導体32の外周には、ゴムやプラスチックなどの絶縁体34が被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平02−15253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のフラットケーブル30においては、複数本の撚線36の撚りの方向は全て同じ方向(一方向)であった。フラットケーブル30を撚りの方向とは反対の方向に捻るときには、撚りを戻す方向であるため捻りやすいが、撚りの方向に捻るときには、さらに撚る方向であるため捻りにくい。そのため、撚りの方向に捻るときには、捻回するのに必要な力(捻回力)が大きい。この撚りの方向に捻回する際の捻回力が最大捻回力となる。
【0006】
フラットケーブル30を撚りの方向に捻ったときには、捻りを戻そうとする力が強い。特に、導体32の太さが太いものほど、その力は大きくなる。そうすると、例えば、図10(a)に示すように、フラットケーブル30の端末に端子40を接続し、その端子40を端子台42等に接続する際には、配索の都合上、フラットケーブル30が撚りの方向に捻られることがあると、捻りを戻そうとする力が強いため、捻りを戻そうとする方向に端子40が回されるおそれがある。これにより、図10(b)に示すように、端子40の一方の端(左端)が回転によって端子台42等から浮上がって端子40と端子台42等との接触面積が小さくなり、そのまま接続した場合には接触抵抗が大きくなるおそれがあった。したがって、このような構成のフラットケーブルの最大捻回力を低減させる対策が望まれている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数本の撚線で構成される導体を有する場合において、最大捻回力を低減できるフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラットケーブルは、複数本の撚線が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層よりなる、あるいは前記撚線層が2層以上積層されてなる導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁体とを備え、前記導体は、撚りの方向が右撚りである右撚線と撚りの方向が左撚りである左撚線とを含んでいることを要旨とするものである。
【0009】
本発明に係るフラットケーブルにおいて、導体が偶数本の撚線よりなる場合には、右撚線の本数と左撚線の本数とが同数であることが好ましい。また、導体が奇数本の撚線よりなる場合には、右撚線の本数と左撚線の本数との差が1本であることが好ましい。右撚線と左撚線とは、撚線層内において交互に配置されていると良い。あるいは、撚線層内の対称位置に配置されていると良い。導体の断面積は3mm以上であることが好ましい。撚線の撚りピッチは50mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るフラットケーブルによれば、撚りの方向が右撚りである右撚線と撚りの方向が左撚りである左撚線とを含む導体とし、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とを平均化させるようにしたため、従来比較的捻回しやすかった方向における捻回力は高くなるものの、比較的捻回しにくくかった方向における捻回力を従来よりも低減することができる。この従来比較的捻回しにくくかった方向における捻回力がそのフラットケーブルの最大捻回力であるため、これにより最大捻回力を低減できる。
【0011】
特に、導体が偶数本の撚線よりなり、右撚線の本数と左撚線の本数とが同数である場合には、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とがほぼ平均化される。そのため、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0012】
また、導体が奇数本の撚線よりなり、右撚線の本数と左撚線の本数との差が1本である場合には、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とがほぼ平均化される。そのため、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0013】
また、右撚線と左撚線16bとが撚線層内において交互に配置されている場合には、撚り方向の異なる撚線が全体的にバランス良く配置される。そうすると、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とが平均化されやすいといえる。したがって、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0014】
さらに、右撚線16aと左撚線16bとが撚線層内の対称位置に配置されている場合にも、撚り方向の異なる撚線が全体的にバランス良く配置される。そうすると、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とが平均化されやすいといえる。したがって、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0015】
導体断面積が3mm以上である場合には、比較的太いフラットケーブルであるため、特に最大捻回力および捻回する方向の違いによる捻回力の差が大きくなりやすい。そのため、最大捻回力の低減効果が高い。また、撚線の撚りピッチが50mm以下である場合には、比較的撚りピッチが小さいため、特に撚りの方向に捻る際の捻回力が大きくなりやすい。そのため、最大捻回力の低減効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図2】撚線の撚りの方向を説明する模式図である。
【図3】撚線の撚りピッチを説明する模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図7】本発明の第五実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図8】本発明の第六実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図9】従来のフラットケーブルを表す横断面図である。
【図10】フラットケーブルの端末に接続された端子への影響を説明する模式図10(a)および図10(a)のA方向から見た図10(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るフラットケーブル10は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層よりなる導体12と、導体12の外周を覆う絶縁体14とを備えている。
【0019】
複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められたとは、撚線16同士が間隔をあけないで並行に配列されていることをいう。この際、複数本の撚線16は、隣り合う撚線16同士が互いに接触する部分を有している。隣り合う撚線16同士の接触する部分は、長手方向において、全長にわたっていても良いし、一部分であっても良い。隣り合う撚線16同士が接触していることにより、撚線層全体が一つの導体として機能するものである。撚線層全体が一つの導体として機能していれば良いため、隣り合う撚線16同士は、長手方向において接触していない部分が生じていても良い。
【0020】
撚線16は、複数本の素線18が束ねられ、撚り合わされて構成されるものである。したがって、各々の撚線16は、所定の撚りの方向で撚り合わされている。ここで、第一実施形態に係るフラットケーブル10は、導体12を構成する複数本の撚線16が、その撚りの方向が異なるものを含んでいる。すなわち、複数本の撚線16のうちの一部は撚りの方向が右撚りである右撚線16aよりなり、その他は撚りの方向が左撚りである左撚線16bよりなる。導体12は右撚線16aと左撚線16bとを含んでいる。なお、図中に示す矢印は、撚りの方向を示している。
【0021】
図2は、導体12を構成する撚線16を示したものである。図2は、撚線16の周面を示した図であり、図中の下側端部が図1に示す断面側である。図2(a)に示すように、複数本の素線18は、右下がりの方向に沿って螺旋状になるように撚り合わされている。この撚線16の断面を下側端部の方向から見たときには、複数本の素線18は右方向(時計回りの方向)に撚られており、撚りの方向は右撚りである。一方、図2(b)に示すように、複数本の素線18は、左下がりの方向に沿って螺旋状になるように撚り合わされている。この撚線16の断面を下側端部の方向から見たときには、複数本の素線18は左方向(反時計回りの方向)に撚られており、撚りの方向は左撚りである。
【0022】
フラットケーブル10の導体12は偶数本の撚線16よりなる。具体的には8本の撚線16よりなるが、本数は特に限定されるものではない。偶数本の撚線16の半数は撚りの方向が右撚りである右撚線16aよりなり、半数は撚りの方向が左撚りである左撚線16bよりなる。すなわち、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数である。
【0023】
また、撚線層内において、左撚線16bは右撚線16aと右撚線16aとの間に配置されている。隣接する撚線16同士の撚りの方向が異なっており、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されている。さらに、撚線層内の左側には、左端から順に右撚線16a・左撚線16b・右撚線16a・左撚線16bが配置され、撚線層内の右側には、右端から順に左撚線16b・右撚線16a・左撚線16b・右撚線16aが配置されている。右撚線16aの位置の対称位置には左撚線16bが配置され、左撚線16bの位置の対称位置には右撚線16aが配置されている。すなわち、右撚線16aと左撚線16bとは、撚線層内の対称位置に配置されている。
【0024】
以上の構成のフラットケーブル10によれば、導体12が、撚りの方向が右撚りである右撚線16aと撚りの方向が左撚りである左撚線16bとを含んでいるため、例えば導体を構成する複数本の撚線の撚りの方向が右撚りの一方向である従来のフラットケーブルと比較して、フラットケーブル10を右撚りの方向(時計回り)に捻る際の捻回力を小さくできる。一方、従来のフラットケーブルと比較して、フラットケーブル10を左撚りの方向(反時計回り)に捻る際の捻回力は大きくなるが、フラットケーブル10はすべての撚線16の撚りの方向が左撚りであるわけではないので、フラットケーブル10を左撚りの方向に捻る際の捻回力は従来のフラットケーブルを右撚りの方向に捻る際の捻回力よりも大きくなることはない。したがって、フラットケーブル10によれば、従来よりも最大捻回力を低減できる。
【0025】
すなわち、導体12が右撚線16aと左撚線16bとを含むようにしたことにより、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とは平均化される方向に変わる。このように、フラットケーブル10は、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とを平均化させることによって、従来よりも最大捻回力を低減させるようにしたものである。
【0026】
そうすると、フラットケーブル10であれば、例えばフラットケーブル10の端末に端子を接続し、この端子を端子台等の相手方に接続しようとした際に、配索の都合上、フラットケーブル10が時計回りあるいは反時計回りに捻られたとしても、従来よりも最大捻回力が低減されているため、捻りを戻そうとする力は低減される。したがって、捻りを戻そうとする方向に端子が回されるおそれが低減され、接続部における接触面積が小さくされるおそれは低減できるため、接続信頼性に優れた接続を提供できる。なお、捻回力とは所定の方向に捻る際に必要な力である。
【0027】
特に、フラットケーブル10は、導体12が偶数本の撚線16よりなり、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とが同数であるため、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とがほぼ平均化される。そのため、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0028】
また、フラットケーブル10は、右撚線16aと左撚線16bとが撚線層内において交互に配置されている。そのため、撚りの方向の異なる撚線が全体的にバランス良く配置された形となっている。そうすると、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とが平均化されやすいといえる。したがって、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0029】
さらに、フラットケーブル10は、右撚線16aと左撚線16bとが撚線層内の対称位置に配置されている。そのため、撚りの方向の異なる撚線が全体的にバランス良く配置された形となっている。そうすると、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とが平均化されやすいといえる。したがって、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0030】
フラットケーブル10の導体断面積としては、好ましくは3mm以上である。導体断面積が3mm以上である場合には、比較的太いフラットケーブルであり、特に最大捻回力および捻回する方向の違いによる捻回力の差が大きくなりやすい。そのため、最大捻回力の低減効果が高い。
【0031】
フラットケーブル10の撚線16の撚りピッチとしては、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。撚りピッチが50m以下である場合には、比較的撚りピッチが小さいため、特に撚りの方向に捻る際の捻回力が大きくなりやすい。そのため、最大捻回力の低減効果が高い。一方、フラットケーブル10の撚線16の撚りピッチとしては、屈曲性を十分に確保するなどの観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上である。撚線16の撚りピッチとは、図3に示すように、撚線16の素線18が螺旋状に1周された時の長手方向の長さPをいう。
【0032】
素線18の外径は特に限定されるものではない。また、素線18の本数は特に限定されるものではない。素線18の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを例示することができる。素線18は、軟質のものでも良いし、硬質のものでも良い。素線18には、スズやニッケルなどの金属めっきが施されていても良い。撚線16は円形等の各種形状に圧縮加工されていても良い。
【0033】
導体12の外周を覆う絶縁体14の形状は特に限定されるものではない。絶縁体14の形状は、横断面が角を有する方形状であっても良いし、横断面が角を有しない楕円形状などであっても良い。絶縁体14は、例えばポリオレフィン系樹脂や塩化ビニル樹脂等の絶縁性の材料により形成されていれば良い。
【0034】
次に、本発明の第二実施形態に係るフラットケーブル110について説明する。
【0035】
図4に示すように、本発明の第二実施形態に係るフラットケーブル110は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層よりなる導体112と、導体112の外周を覆う絶縁体14とを備えている。導体112は右撚線16aと左撚線16bとを含んでいる。
【0036】
第二実施形態に係るフラットケーブル110は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と比較して、右撚線16aと左撚線16bとの配置が異なっているのみであり、それ以外の構成については第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
第二実施形態に係るフラットケーブル110の導体112は偶数本の撚線16よりなる。具体的には8本の撚線16よりなるが、本数は特に限定されるものではない。偶数本の撚線16の半数は撚りの方向が右撚りである右撚線16aよりなり、半数は撚りの方向が左撚りである左撚線16bよりなっている。すなわち、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数になっている。
【0038】
複数本の右撚線16aが撚線層内の左側にまとまって配置されているとともに、右撚線16aと同数本の左撚線16bが撚線層内の右側にまとまって配置されている。撚線層内において、右撚線16aの位置の対称位置には左撚線16bが配置され、左撚線16bの位置の対称位置には右撚線16aが配置されており、右撚線16aと左撚線16bとは撚線層内の対称位置に配置されている。なお、右撚線16aと左撚線16bとは、撚線層内において交互には配置されてはいない。
【0039】
次に、本発明の第三実施形態に係るフラットケーブル210について説明する。
【0040】
図5に示すように、本発明の第三実施形態に係るフラットケーブル210は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層よりなる導体212と、導体212の外周を覆う絶縁体14とを備えている。導体212は右撚線16aと左撚線16bとを含んでいる。
【0041】
第三実施形態に係るフラットケーブル210は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と比較して、撚線層を構成する撚線16の本数が異なるのみであり、それ以外の構成については第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
すなわち、第三実施形態に係るフラットケーブル210の導体212は奇数本の撚線16よりなる。具体的には7本の撚線16よりなるが、本数は特に限定されるものではない。撚線層内において、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されており、右撚線16aが左撚線16bよりも1本多い。撚線層内の両側端には右撚線16aが配置されており、右撚線16aの位置の対称位置には右撚線16aが配置されているため、右撚線16aと左撚線16bとは撚線層内の対称位置には配置されていない。
【0043】
フラットケーブル210は、導体12が奇数本の撚線16よりなり、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数との差が1本であるため、一方の方向に捻る際の捻回力と他方の方向に捻る際の捻回力とがほぼ平均化される。そのため、特に最大捻回力の低減効果に優れる。
【0044】
次に、本発明の第四実施形態に係るフラットケーブル310について説明する。
【0045】
図6に示すように、本発明の第四実施形態に係るフラットケーブル310は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層が2層積層されてなる導体312と、導体312の外周を覆う絶縁体14とを備えている。導体312は右撚線16aと左撚線16bとを含んでいる。
【0046】
第四実施形態に係るフラットケーブル310は、第一実施形態に係るフラットケーブル10と比較して、導体312が、撚線層が2層積層されたもので構成されている点が異なるのみであり、それ以外の構成については第一実施形態に係るフラットケーブル10と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
すなわち、第四実施形態に係るフラットケーブル310の導体312は、偶数本の撚線16よりなる第一の撚線層12aと、偶数本の撚線16よりなる第二の撚線層12bとを備えており、第一の撚線層12aと第二の撚線層12bとが積層されている。
【0048】
第一の撚線層12aおよび第二の撚線層12bのいずれの撚線層においても、撚線層全体が一つの導体として機能する程度に、隣り合う撚線16同士が互いに接触する部分を有している。さらに、第一の撚線層12aと第二の撚線層12bとが導通するように、第一の撚線層12aと第二の撚線層12bとの間においても、隣り合う撚線16同士が互いに接触する部分を有している。第一の撚線層12aと第二の撚線層12bとの間で隣り合う撚線16同士の接触する部分は、長手方向において、全長にわたっていても良いし、一部分であっても良い。
【0049】
2つの撚線層は、撚線16の中心位置が異なるように積層されている。すなわち、第一の撚線層12aの撚線16の中心位置と、第二の撚線層12bの撚線16の中心位置とは、厚み方向で見たときに一致していない。いいかえれば、第一の撚線層12aの隣り合う撚線16と撚線16とにより形成された凹部に、第二の撚線層12bの撚線16が配置されており、導体312全体として、撚線16が細密充填されている。これにより、導体厚を薄くできるため、配索性が向上する。
【0050】
第一の撚線層12aは偶数本の撚線16よりなり、第二の撚線層12bは偶数本の撚線16よりなるため、導体312全体は偶数本の撚線16よりなる。第一の撚線層12aにおいて、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数であり、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されている。また、右撚線16aと左撚線16bとは、第一の撚線層12a内の対称位置に配置されている。同様に、第二の撚線層12bにおいて、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数であり、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されている。また、右撚線16aと左撚線16bとは、第二の撚線層12b内の対称位置に配置されている。導体312全体で見ても、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数である。
【0051】
次に、本発明の第五実施形態に係るフラットケーブル410について説明する。
【0052】
図7に示すように、本発明の第五実施形態に係るフラットケーブル410は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層が2層積層されてなる導体412と、導体412の外周を覆う絶縁体14とを備えている。導体412は右撚線16aと左撚線16bとを含んでいる。
【0053】
第五実施形態に係るフラットケーブル410は、第四実施形態に係るフラットケーブル310と比較して、各撚線層の撚線16の本数が異なるのみであり、それ以外の構成については第四実施形態に係るフラットケーブル310と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
すなわち、第五実施形態に係るフラットケーブル410の導体412は、奇数本の撚線16よりなる第一の撚線層12aと、奇数本の撚線16よりなる第二の撚線層12bとを備えており、第一の撚線層12aと第二の撚線層12bとが積層されている。2つの撚線層は、撚線16の中心位置が異なるように積層されている。
【0055】
第一の撚線層12aは奇数本の撚線16よりなり、第二の撚線層12bは奇数本の撚線16よりなるため、導体412全体は偶数本の撚線16よりなる。第一の撚線層12aにおいては、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されており、右撚線16aが左撚線16bよりも1本多い。第一の撚線層12a内の両側端には右撚線16aが配置されており、右撚線16aと左撚線16bとは第一の撚線層12a内の対称位置には配置されていない。これに対し、第二の撚線層12bにおいては、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されており、左撚線16bが右撚線16aよりも1本多い。第二の撚線層12b内の両側端には左撚線16bが配置されており、右撚線16aと左撚線16bとは第二の撚線層12b内の対称位置には配置されていない。導体412全体で見ると、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数である。
【0056】
次に、本発明の第六実施形態に係るフラットケーブル510について説明する。
【0057】
図8に示すように、本発明の第六実施形態に係るフラットケーブル510は、複数本の撚線16が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層が2層積層されてなる導体512と、導体512の外周を覆う絶縁体14とを備えている。導体512は右撚線16aと左撚線16bとを含んでいる。
【0058】
第六実施形態に係るフラットケーブル510は、第五実施形態に係るフラットケーブル410と比較して、第二の撚線層12bの撚線16の本数が異なるのみであり、それ以外の構成については第五実施形態に係るフラットケーブル410と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
すなわち、第六実施形態に係るフラットケーブル510の導体512は、奇数本の撚線16よりなる第一の撚線層12aと、偶数本の撚線16よりなる第二の撚線層12bとを備えており、第一の撚線層12aと第二の撚線層12bとが積層されている。2つの撚線層は、隣り合う撚線層の撚線16の中心位置が異なるように積層されている。第一の撚線層12aの撚線16の本数と第二の撚線層12bの撚線16の本数とは異なっている。
【0060】
第一の撚線層12aは奇数本の撚線16よりなり、第二の撚線層12bは偶数本の撚線16よりなるため、導体512全体は奇数本の撚線16よりなる。第一の撚線層12aにおいては、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されており、右撚線16aが左撚線16bよりも1本多い。第一の撚線層12a内の両側端には右撚線16aが配置されており、右撚線16aと左撚線16bとは第一の撚線層12a内の対称位置には配置されていない。これに対し、第二の撚線層12bにおいては、右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されており、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とは同数である。右撚線16aと左撚線16bとは第二の撚線層12b内の対称位置に配置されている。したがって、導体512全体で見ると、右撚線16aが左撚線16bよりも1本多い。
【0061】
本発明に係るフラットケーブルは、例えば、複数本の撚線を幅方向あるいは厚み方向に複数本配置して撚線の束よりなる導体を形成し、導体の外周を覆うように絶縁体を形成することにより製造することができる。絶縁体は、導体の外周に絶縁材料を押出成形することにより形成することができるし、導体を一対の絶縁性フィルム間に挟み込むことにより形成することもできる。要するに、導体を所定形状に維持した状態で外部からの絶縁保護を図ることができる構成であれば良い。
【0062】
本発明においては、右撚線16aの本数と左撚線16bの本数とが同数であること、あるいは、その差が1本であることに限定されるものではなく、その差が2本差以上であっても良い。少なくとも右撚線16aと左撚線16bとを含んでいれば、捻回する方向の違いによる捻回力の差を小さくできる。また、撚線層内における右撚線16aと左撚線16bの配置は特に限定されるものではない。撚線層内において右撚線16aと左撚線16bとは交互に配置されていなくても良いし、右撚線16aと左撚線16bとは撚線層内の対称位置に配置されていなくても良い。導体12が、撚線層が2層積層されたもので構成されている場合においては、隣り合う撚線層の撚線16の中心位置が同じになるように積層されていても良い。すなわち、第一の撚線層12aの撚線16の中心位置と第二の撚線層12bの撚線16の中心位置とが同軸上にあるように2つの撚線層が積層されていても良い。また、導体12は、撚線層が3層以上積層されたもので構成されていても良い。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
撚りの方向が右撚り(時計回り)の右撚線(断面積2mm)と、撚りの方向が左撚り(反時計回り)の左撚線(断面積2mm)とを交互に同一平面上に並行に並べ、撚線6本(右撚線3本、左撚線3本)よりなる撚線層を1層形成した。この撚線層の上に、右撚線(断面積2mm)と、左撚線(断面積2mm)とを交互に同一平面上に並行に並べ、撚線5本(右撚線3本、左撚線2本)よりなる撚線層をさらに1層形成した。これにより、撚線層が2層積層されてなる導体を得た(導体断面積22mm)。この導体の外周にポリオレフィン系樹脂を押出被覆して、厚さ0.7mmの絶縁体を形成した。以上により、実施例1に係るフラットケーブルを作製した。
【0065】
(実施例2)
右撚線(断面積2mm)と左撚線(断面積2mm)とを交互に同一平面上に並行に並べ、撚線7本(右撚線4本、左撚線3本)よりなる撚線層を1層形成した。これにより、1層の撚線層よりなる導体を得た(導体断面積14mm)。この導体の外周にポリオレフィン系樹脂を押出被覆して、厚さ0.7mmの絶縁体を形成した。以上により、実施例2に係るフラットケーブルを作製した。
【0066】
(実施例3)
右撚線(断面積2mm)と左撚線(断面積2mm)とを交互に同一平面上に並行に並べ、撚線5本(右撚線3本、左撚線2本)よりなる撚線層を1層形成した。これにより、1層の撚線層よりなる導体を得た(導体断面積10mm)。この導体の外周にポリオレフィン系樹脂を押出被覆して、厚さ0.7mmの絶縁体を形成した。以上により、実施例3に係るフラットケーブルを作製した。
【0067】
(比較例1〜3)
右撚線のみを用い、導体中の全ての撚線の撚りの方向を一方向とした点以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして、比較例1〜3に係るフラットケーブルを作製した。
【0068】
作製した各フラットケーブルの捻回力を測定した。具体的には、フラットケーブルを時計回りに捻るときと反時計回りに捻るときのそれぞれの捻回力を測定した。捻回力の測定は以下の測定方法に従って行なった。測定結果を表1に示した。
【0069】
(捻回力の測定方法)
300mmの長さの試験片の一端を固定し、他端を回転装置によって所定の方向に捻り、この際の回転トルクを計測した。この回転トルクを捻回力とした。
【0070】
【表1】

【0071】
表1より、右撚線のみを配列した比較例に係るフラットケーブルでは、いずれの導体断面積のものにおいても、全ての撚線の撚りの方向と同じ方向である時計回りに捻回するときの捻回力が、反時計回りに捻回するときの捻回力よりも大きいことが確認された。これに対し、右撚線と左撚線とを交互に配列した実施例に係るフラットケーブルでは、いずれの導体断面積のものにおいても、時計回りに捻回するときの捻回力と、反時計回りに捻回するときの捻回力との間にはほとんど差がないことが確認できた。また、導体断面積が同一のもので比較したときに、実施例に係るフラットケーブルの最大捻回力は、比較例に係るフラットケーブルの最大捻回力よりも小さいことが確認できた。さらに、比較例2と比較例3とを比較したときに、導体断面積が大きくなるにつれて、最大捻回力および捻回力の差が大きくなる傾向があることが確認できた。したがって、導体断面積が大きいものほど、最大捻回力の低減効果があることが確認できた。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 フラットケーブル
12 導体
14 絶縁体
16 撚線
16a 右撚線
16b 左撚線
18 素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の撚線が同一平面上に並行に集められて構成された撚線層よりなる、あるいは前記撚線層が2層以上積層されてなる導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁体とを備え、
前記導体は、撚りの方向が右撚りである右撚線と撚りの方向が左撚りである左撚線とを含んでいることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記導体は偶数本の撚線よりなり、前記右撚線の本数と前記左撚線の本数とが同数であることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記導体は奇数本の撚線よりなり、前記右撚線の本数と前記左撚線の本数との差が1本であることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記右撚線と前記左撚線とは、前記撚線層内において交互に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項5】
前記右撚線と前記左撚線とは、前記撚線層内の対称位置に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項6】
前記導体の断面積は3mm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項7】
前記撚線の撚りピッチは50mm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14449(P2011−14449A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158904(P2009−158904)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】