説明

フラットケーブル

【課題】同一平面上に、互いに離間して複数の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、複数の導体を効果的に冷却することを目的とする。
【解決手段】同一平面上に、互いに離間して並列配置される少なくとも3本以上の導体2を絶縁体4で一括被覆するフラットケーブルにおいて、隣接する導体2間に、導体2の長手方向に沿って、導体2を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路3を設け、第1冷媒通路3は、導体2と隣接する側面3a,3bが導体2の一部に沿う円弧状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイルモータへの給電用配線等に用いられるフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から冷却機能付きケーブルは、数多く発明されている(特許文献1〜3)。
【0003】
そんな中、近年、インホイルモータ(車輪のホイルの中に収容されるモータ)への給電用配線に関する技術開発が盛んである。
【0004】
そこで、本発明者らは、インホイルモータに接続される給電用配線に、冷却機能を付加しようと考えた。具体的には、給電用配線に、複数の導体が並列配置されるフラットケーブルを採用し、そのフラットケーブルに冷却機能を付加しようと考えた。
【0005】
インホイルモータに接続される給電用配線に冷却機能を付加することで、各ケーブルで発生する熱を冷却するのみならず、インホイルモータの冷却及びインホイルモータで発生し各ケーブルに伝熱した熱も冷却できるようになり、インホイルモータで発生する熱を効率よく放熱することが可能となり、メリットが大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−133058号公報
【特許文献2】特開2001−202837号公報
【特許文献3】実開平5−23737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術としては、特許文献3に開示されるような技術があるが、ケーブル防護体を別途、後から取り付ける構成であるため、作業性が悪いという問題点があった。
【0008】
また、ケーブル防護体に形成されている冷却用通路4が冷却対象の導体(ケーブル)に対して、形状的にも、配置的にも、冷却する上で、効果的とは言えない構成であるという問題点もあった。
【0009】
なお、当該問題点は、そもそも、特許文献3は、ケーブル防護体を後から取り付けるために、ケーブル本体部1とカバー2との二分割構成としているが、例えば、ケーブル本体部1とカバー2との境目には、冷却用通路4が形成できないように、当該問題点は、この二分割構成が故の問題点である。
【0010】
そこで、本発明者らは、作業性のことを考慮に入れ、複数の導体を絶縁体で一括被覆する構成を採用し、その構成を採用したときに、冷媒通路(冷却用通路)をより効果的に形成できるスペースがあることに着眼し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、同一平面上に、互いに離間して複数の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、複数の導体を効果的に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、同一平面上に、互いに離間して並列配置される少なくとも3本以上の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、隣接する前記導体間に、前記導体の長手方向に沿って、前記導体を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路を設け、該第1冷媒通路は、前記導体と隣接する側面が前記導体の一部に沿う円弧状に形成されているフラットケーブルである。
【0013】
前記導体は、複数の素線を撚り合わせた撚線からなってもよい。
【0014】
前記導体の中心部に、前記導体の長手方向に沿って、冷媒を通す第2冷媒通路をさらに設けてもよい。
【0015】
3本の前記導体を有し、前記第1冷媒通路は、その中央に配置された前記導体に隣接する一方の側面が、他方の側面よりも長い円弧長に形成されていてもよい。
【0016】
3本の前記導体を有し、前記第1冷媒通路は、その中央に配置された前記導体に隣接する一方の側面が、他方の側面よりも小さい曲率半径に形成されていてもよい。
【0017】
また、本発明は、同一平面上に、互いに離間して並列配置される3本の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、隣接する前記導体間に、前記導体の長手方向に沿って、前記導体を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路を複数設け、該複数の第1冷媒通路は、その断面が円状又は楕円状に形成され、かつ、中央に配置された前記導体を囲むように配置されるフラットケーブルである。
【0018】
前記導体は、複数の素線を撚り合わせた撚線からなり、前記導体の中心部に、前記導体の長手方向に沿って、冷媒を通す第2冷媒通路をさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、同一平面上に、互いに離間して複数の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、複数の導体を効果的に冷却することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフラットケーブルの横断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るフラットケーブルの横断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係るフラットケーブルの横断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るフラットケーブルの横断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るフラットケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るフラットケーブルの横断面図である。
【0023】
図1に示すように、フラットケーブル1は、同じ外径寸法であり少なくとも3本以上の導体2と、導体2を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路3と、を備えている。フラットケーブル1は、例えば、車輪のホイル内に内蔵されたインホイルモータに電力を供給する給電用のケーブル(給電用配線)である。
【0024】
ここでは、3本の導体2を備える場合を説明するが、導体2の本数はこれに限定されない。3本の導体2は、同一平面上に、互いに離間して並列配置される。3本の導体2は、その中心(断面視における中心)同士を結ぶ線が一直線となるように、一定の間隔で配置される。図1では省略して示しているが、導体2としては、複数の素線を撚り合わせた撚線からなるものを用いる。
【0025】
隣接する2本の導体2間には、導体2の長手方向に沿って、導体2を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路3が設けられる。フラットケーブル1では、3本の導体2を並列配置しているため、隣接する2本の導体2間に1つずつ、合計2つの第1冷媒通路3が設けられることになる。
【0026】
本実施の形態では、3本の導体2の周囲には、3本の導体2を一括被覆する絶縁体4が設けられており、第1冷媒通路3は、その絶縁体4に長手方向に沿って形成された中空部からなる。
【0027】
第1冷媒通路3は、導体2と隣接する側面3a,3bが導体2の一部に沿う円弧状に形成されている。本実施の形態では、第1冷媒通路3は、その中央に配置された導体2に隣接する一方の側面3aと、他方の側面3bとは、同じ円弧長で、かつ同じ曲率半径に形成されている。第1冷媒通路3の高さ(導体2の配列方向と垂直方向の長さ、図1における上下方向の長さ)は、導体2の外径と同程度とされ、断面視において、第1冷媒通路3が導体2の上方あるいは下方に突出しないようにされる。
【0028】
第1冷媒通路3を各導体2の一部に沿う形状とすることで、第1冷媒通路3に冷媒を通したときに、冷媒と各導体2とが対向する面積(すなわち冷媒と導体2との間で熱交換が行われる面積)が増加し、冷却効率を向上させることが可能である。また、本実施の形態では、導体2として撚線からなるものを用いているので、導体2の周方向の一部を冷却する構成であっても、当該周方向の一部を長手方向にわたって冷却すれば、導体2を偏りなく冷却できることになる。
【0029】
冷媒としては、特に限定するものではないが、例えば冷却水を用いることができる。絶縁体4としては、熱伝導性が高く、かつ可撓性を有する材料からなるものを用いることが望ましく、耐熱性や冷媒に用いる材料に対する化学的な安定性等を考慮し、適宜決定するとよい。絶縁体4の両側端部(図1における左右の端部)は、両側(外側)に配置された導体2に沿った円弧状に形成され、絶縁体4は、断面視で長円形状(平行な2本の直線の一端部同士および他端部同士を円弧により接続した形状)に形成される。
【0030】
また、フラットケーブル1では、図示していないが、2つの第1冷媒通路3を端部(フラットケーブル1の端部)にて連結して、2つの第1冷媒通路3に共通の冷媒を通すようにし、共通の冷媒を往復させるように構成している。つまり、フラットケーブル1では、一方の第1冷媒通路3を往路、他方の第1冷媒通路3を復路として用いている。
【0031】
本実施の形態の作用を説明する。
【0032】
本実施の形態に係るフラットケーブル1では、少なくとも3本以上の導体2を用い、隣接する導体2間に、導体2の長手方向に沿って、導体2を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路3を設け、該第1冷媒通路3の導体2と隣接する側面3a,3bを、導体2の一部に沿う円弧状に形成している。
【0033】
これにより、少なくとも2つ以上の第1冷媒通路3が設けられることになるので、一部の第1冷媒通路3を往路に、残りを復路に用いて、共通の冷媒を循環させることが可能となる。その結果、往路だけでなく復路も利用して導体2の冷却を行うことができ、導体2の温度上昇をより抑制することが可能となる。また、冷媒を循環させる手段(冷媒のタンクや、冷媒を冷却する冷却装置、循環ポンプ等)をフラットケーブル1の一方の端部にまとめて配置することが可能となり、システムを簡略化できる。
【0034】
さらに、フラットケーブル1では、隣接する導体2間に第1冷媒通路3を設けているため、フラットケーブル1の外形形状を断面視で長円形状に形成することが可能となる。つまり、フラットケーブル1は、特許文献1、2のようにケーブルの外周部に冷媒通路を別途形成する場合と比較して非常にコンパクトである。また、フラットケーブル1では、特許文献1のように冷媒を通すチューブが外部に突出しておらず、さらに特許文献3のようにケーブル防護体を別途取り付ける必要がないため、配索性・作業性に優れている。このように、本発明によれば、冷却機能を付加しても、その全体がコンパクトであり、配索性・作業性に優れたフラットケーブル1を実現できる。
【0035】
また、フラットケーブル1では、導体2と隣接する第1冷媒通路3の側面3a,3bを、導体2の一部に沿う円弧状に形成しているため、第1冷媒通路3を通る冷媒と隣接する導体2との間で熱交換が行われる面積を増加させ、熱の移動を行い易くし、冷却効率を向上させることできる。すなわち、フラットケーブル1の複数の導体2を効果的に冷却することができる。さらに、フラットケーブル1全体でみれば、ちょうど、導体2が隣接する第1冷媒通路3の側面3a,3bの円弧状に嵌る格好となるため、幅方向(図1における左右方向)において、第1冷媒通路3を形成したにもかかわらず、より小さく構成することが可能になるという顕著で有効な効果がある。
【0036】
また、第1冷媒通路3の側面3a,3bを円弧状とすることにより、第1冷媒通路3の上部と下部(図1における上部と下部)の幅(図1における左右方向の幅)が広くなり、フラットケーブル1を屈曲した際などに、第1冷媒通路3が完全に閉塞してしまうことを抑制できる。
【0037】
さらに、フラットケーブル1では、各導体2として撚線からなるものを用いているので、長手方向にわたって全体的にみると、第1冷媒通路3によって冷却される導体2の部分が変化するため、導体2を偏りなく冷却できる。
【0038】
本発明の他の実施の形態を説明する。
【0039】
図2に示すフラットケーブル21は、図1のフラットケーブル1において、各導体2の中心部(断面視における中心部)に、導体2の長手方向に沿って、冷媒を通す第2冷媒通路5をさらに設けたものである。
【0040】
第2冷媒通路5は、チューブ(例えばゴムチューブ)6の中空部からなる。導体2は、その素線2aをチューブ6の外周に螺旋状に巻き付けて配置される。なお、チューブ6として、アルミ管などの金属管を用いることも可能である。
【0041】
フラットケーブル21では、各導体2の中心部に、各導体2の長手方向に沿って第2冷媒通路5を形成しているため、各導体2に対する冷却効果をさらに向上できる。さらに、第2冷媒通路5を形成することにより、第1冷媒通路3と第2冷媒通路5を端部にて連結して、例えば、第1冷媒通路3を往路、第2冷媒通路5を復路として冷媒を往復させることが可能となり、フラットケーブルに対して冷却機能を付加する際に、冷媒通路の設計がし易くなる。
【0042】
図3に示すフラットケーブル31は、図2のフラットケーブル21において、中央に配置された導体2に隣接する一方の側面3aが、他方の側面3bよりも長い円弧長となるように、第1冷媒通路3を形成したものである。
【0043】
両側(外側)に配置された導体2は、外気との熱の移動が可能であり冷却し易い状況にあるが、中央に配置された導体2は、両側に配置された導体2と比較して冷却し難い状況にある。フラットケーブル31では、中央に配置された導体2に隣接する一方の側面3aを、他方の側面3bよりも長い円弧長とすることで、第1冷媒通路3を通る冷媒と中央に配置された導体2との間で熱交換が行われ易くし、中央に配置された導体2の冷却効率を高めることで、3本の導体2を均一に冷却することが可能となる。
【0044】
図4に示すフラットケーブル41は、図2のフラットケーブル21において、中央に配置された導体2に隣接する一方の側面3aが、他方の側面3bよりも小さい曲率半径となるように、第1冷媒通路3を形成したものである。つまり、フラットケーブル41では、一方の側面3aを中央に配置された導体2に沿う曲率半径とし、他方の側面3bの曲率半径を一方の側面3aの曲率半径よりも大きくして、両側に配置された導体2から第1冷媒通路3までの距離を大きくしている。
【0045】
このように構成しても、上述のフラットケーブル31と同様に、中央に配置された導体2の冷却効率を高めて、3本の導体2を均一に冷却することが可能となる。
【0046】
図5に示すフラットケーブル51は、図2のフラットケーブル21において、隣接する導体2間に、第1冷媒通路3を複数(図5では3つずつ)設け、それら複数(図5では合計6つ)の第1冷媒通路3を、中央に配置された導体2を囲むように形成したものである。ここでは、第1冷媒通路3を断面視で楕円形状としているが、第1冷媒通路3の断面形状はこれに限定されるものではない。
【0047】
このように構成しても、上述のフラットケーブル31,41と同様に、中央に配置された導体2の冷却効率を高めて、3本の導体2を均一に冷却することが可能となる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、上記実施の形態では、第1冷媒通路3を絶縁体4に形成された中空部としたが、これに限らず、例えば、ゴムチューブなどのチューブを隣接する2本の導体2で挟み込んで変形させ、その変形したチューブの中空部を第1冷媒通路3としてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、1本のフラットケーブルに形成された冷媒通路(第1冷媒通路3や第2冷媒通路5)のみで往路と復路の両方を実現する場合について説明したが、例えば、フラットケーブルを2本用いるような場合には、一方のフラットケーブルの冷媒通路(第1冷媒通路3や第2冷媒通路5)を往路、他方のフラットケーブルの冷媒通路(第1冷媒通路3や第2冷媒通路5)を復路として用いることも可能である。
【0051】
さらに、上記実施の形態では、インホイルモータに電力を供給する給電用配線として用いる場合を説明したが、本発明の用途はこれに限定されるものではない。
【0052】
また、上記実施の形態では、フラットケーブルの絶縁体4の外側には、何も設けられていない場合について説明したが、いわゆる、シールド編組(シールド層)を絶縁体4の外側に設ける場合であってもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、絶縁体4は、複数の導体を直接的に一括被覆する場合について説明したが、各導体の外側に絶縁体4とは別の絶縁体(さらに、シールド層を設けた場合も含む)を設け、いわゆる、ケーブルとした場合であってもよい。なお、この場合、絶縁体4は、複数の導体を間接的に一括被覆する場合である。
【符号の説明】
【0054】
1 フラットケーブル
2 導体
3 第1冷媒通路
4 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上に、互いに離間して並列配置される少なくとも3本以上の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、
隣接する前記導体間に、前記導体の長手方向に沿って、前記導体を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路を設け、
該第1冷媒通路は、前記導体と隣接する側面が前記導体の一部に沿う円弧状に形成されている
ことを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記導体は、複数の素線を撚り合わせた撚線からなる請求項1記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記導体の中心部に、前記導体の長手方向に沿って、冷媒を通す第2冷媒通路をさらに設けた
請求項1または2記載のフラットケーブル。
【請求項4】
3本の前記導体を有し、
前記第1冷媒通路は、その中央に配置された前記導体に隣接する一方の側面が、他方の側面よりも長い円弧長に形成されている
請求項1〜3いずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項5】
3本の前記導体を有し、
前記第1冷媒通路は、その中央に配置された前記導体に隣接する一方の側面が、他方の側面よりも小さい曲率半径に形成されている
請求項1〜3いずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項6】
同一平面上に、互いに離間して並列配置される3本の導体を絶縁体で一括被覆するフラットケーブルにおいて、
隣接する前記導体間に、前記導体の長手方向に沿って、前記導体を冷却する冷媒を通す第1冷媒通路を複数設け、
該複数の第1冷媒通路は、その断面が円状又は楕円状に形成され、かつ、中央に配置された前記導体を囲むように配置される
ことを特徴とするフラットケーブル。
【請求項7】
前記導体は、複数の素線を撚り合わせた撚線からなり、
前記導体の中心部に、前記導体の長手方向に沿って、冷媒を通す第2冷媒通路をさらに設けた
請求項6記載のフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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