説明

フラット電線の曲げ形状維持方法

【課題】ワイヤハーネスとして配索されるフラット電線の配索経路上におけるプロテクタやクランプと云った電線とは別個の部品の使用量を削減して、ワイヤハーネスの軽量化やコスト低減を実現することができるフラット電線の曲げ形状維持方法を提供すること。
【解決手段】所定の離間間隔で平面状に配列される複数の導体2が絶縁性樹脂被覆層3で被覆されて帯板状又はテープ状の外観形状に仕上げられたフラット電線1を配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状Fに維持するフラット電線1の曲げ形状F維持方法であって、フラット電線1を曲げ箇所Mで折り重ねることによって、曲がり部の形状に合致する曲げ形状Fを形成すると共に、折り重なるフラット電線1の絶縁性樹脂被覆層3同士を熱融着させることで、曲げ形状Fを維持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等においてワイヤハーネスとして配索されるフラット電線の曲げ形状維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1〜3には、車両等においてワイヤハーネスとしての電線束を配索する際に、電線束を配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状に維持する方法として、硬質樹脂等によって電線束を挿通させる筒状に形成されたプロテクタを使用する方法、或いはクランプを使用する方法が開示されている。
【0003】
一方、最近のワイヤハーネスでは、電線束における可撓性の確保や、占有スペースの低減を目的として、電線束にフラット電線を使用することが増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−208212号公報
【特許文献2】特開平9−42541号公報
【特許文献3】実開昭61−141925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電線束の曲げ形状の維持にプロテクタやクランプといった電線とは別個の部品を使用する従来の方法は、ワイヤハーネスの重量化や肥大化を招き、更に、使用する部品点数の増加によってコストが高額化するという問題を招いた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ワイヤハーネスとして配索されるフラット電線の配索経路上におけるプロテクタやクランプと云った電線とは別個の部品の使用量を削減して、ワイヤハーネスの軽量化やコスト低減を実現することができるフラット電線の曲げ形状維持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)所定の離間間隔で平面状に配列される複数の導体が絶縁性樹脂被覆層で被覆されて帯板状又はテープ状の外観形状に仕上げられたフラット電線を配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状に維持するフラット電線の曲げ形状維持方法であって、
前記フラット電線を曲げ箇所で折り重ねることによって、前記曲がり部の形状に合致する曲げ形状を形成すると共に、折り重なるフラット電線の前記絶縁性樹脂被覆層同士を熱融着させることで、前記曲げ形状を維持させることを特徴とするフラット電線の曲げ形状維持方法。
【0008】
(2)前記フラット電線は、外表面上で電線の幅方向に離間した少なくとも2箇所に、電線の長手方向に沿って帯状に延在する熱融着用樹脂部を備え、前記フラット電線を折り重ねた際に互いに重なる前記熱融着用樹脂部同士を熱融着させることを特徴とする上記(1)に記載のフラット電線の曲げ形状維持方法。
【0009】
(3)前記フラット電線には、少なくとも一方の外表面上における両側縁に、前記熱融着用樹脂部が装備されていることを特徴とする上記(2)に記載のフラット電線の曲げ形状維持方法。
【0010】
上記(1)の構成によれば、曲げ箇所で折り重ねることによって配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状を形成したフラット電線は、プロテクタやクランプといった電線とは別個の部品を用いずに、折り重なるフラット電線の絶縁性樹脂被覆層同士を熱融着させることで、曲げ形状を維持させる。
【0011】
そのため、ワイヤハーネスとして配索されるフラット電線の配索経路上におけるプロテクタやクランプといった電線とは別個の部品の使用量を削減して、ワイヤハーネスの軽量化やコスト低減を実現することができる。
【0012】
上記(2)の構成によれば、フラット電線を曲げ箇所で折り重ねたときに、熱融着用樹脂部同士が重なり合う部分が、必ず、1つ以上形成される。そのため、重なり合う融着用樹脂部同士を熱融着させることで、簡単にフラット電線の重なり合った部分同士を結合状態にすることができ、フラット電線の曲げ形状を維持するための操作を容易にすることができる。
【0013】
また、熱融着させるための専用の領域として熱融着用樹脂部を装備したため、熱融着作業を実施する際に、熱融着用樹脂部同士が重なり合う位置の検知(識別)が容易になる。そのため、作業者によって熱融着位置にバラツキが生じることを抑止することができる。
【0014】
上記(3)の構成によれば、フラット電線を曲げ箇所で折り重ねたときに、折り重なる範囲内で折り曲げ箇所から一番離れた位置に、熱融着用樹脂部同士が重なり合う位置を形成することができる。そのため、熱融着用樹脂部同士の重なり合う位置がフラット電線の折り曲げ箇所の付近に位置する場合と比較すると、折り重ねたフラット電線の捲り上がりを抑止する効果が高まり、曲げ形状を維持する性能を安定させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるフラット電線の曲げ形状維持方法によれば、曲げ箇所で折り重ねることによって配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状を形成したフラット電線は、プロテクタやクランプといった電線とは別個の部品を用いずに、折り重なるフラット電線の絶縁性樹脂被覆層同士を熱融着させることで、曲げ形状を維持させる。
【0016】
そのため、ワイヤハーネスとして配索されるフラット電線の配索経路上におけるプロテクタやクランプといった電線とは別個の部品の使用量を削減して、ワイヤハーネスの軽量化やコスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るフラット電線の曲げ形状維持方法の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るフラット電線の曲げ形状維持方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るフラット電線の曲げ形状維持方法の一実施形態の斜視図である。
【0019】
この一実施形態のフラット電線の曲げ形状維持方法で使用するフラット電線1は、図1に示すように、所定の離間間隔Sで平面状に配列される複数の導体2が絶縁性樹脂被覆層3で被覆されて、外形となる幅寸法がWの帯板状又はテープ状のフラットな外観形状に仕上げられた配線材である。導体2は、図1に示すように、電線の長さ方向に沿って延在する幅dの帯状導体である。
【0020】
このフラット電線1は、具体的には、複数の被覆電線をリボン状に接続一体化したリボン電線、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリントサーキット(FPC)、フレキシブルワイヤーサーキット(FWC)等が該当する。
【0021】
本実施形態のフラット電線1の場合、外表面上で電線の幅方向に離間した2箇所である両側縁に、熱融着用樹脂部31,32が備えられている。両側縁の熱融着用樹脂部31,32は、絶縁性樹脂被覆層3の一部である。熱融着用樹脂部31,32は、隣接する導体2間の離間間隔Sよりも大きな幅寸法Pで電線の長手方向に沿って帯状に延在している。
【0022】
本実施形態のフラット電線の曲げ形状維持方法は、フラット電線1を車両等における配索経路(不図示)の曲がり部の形状に合致する曲げ形状に維持する方法である。
【0023】
本実施形態のフラット電線の曲げ形状維持方法は、具体的には、図1に矢印R1で示すようにフラット電線1を曲げ箇所(折り曲げ線)Mで折り重ねることによって、配索経路上の曲がり部の形状に合致する曲げ形状Fを形成する。更に、曲げ形状Fによる折り重ね部において熱融着用樹脂部31と熱融着用樹脂部32とが互いに重なる位置T1において、重なり合っている熱融着用樹脂部31と熱融着用樹脂部32とを熱融着させることで、曲げ形状を維持させる。
【0024】
また、本実施形態の場合、フラット電線1の両側縁の熱融着用樹脂部31,32は、車体等の構造物に結合可能なファスナー部材5を取り付け可能で、ファスナー部材5によって車体等に固定可能にされている。
【0025】
以上に説明した本実施形態のフラット電線の曲げ形状維持方法では、曲げ箇所Mで折り重ねることによって配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状Fを形成したフラット電線1は、プロテクタやクランプといった電線とは別個の部品を用いずに、折り重なるフラット電線1の熱融着用樹脂部31と熱融着用樹脂部32とを熱融着させることで、曲げ形状Fを維持させる。
【0026】
そのため、ワイヤハーネスとして配索されるフラット電線1の配索経路上におけるプロテクタやクランプといった電線とは別個の部品の使用量を削減して、ワイヤハーネスの軽量化やコスト低減を実現することができる。
【0027】
また、本実施形態のフラット電線の曲げ形状維持方法の場合、2つの熱融着用樹脂部31,32が電線の幅方向に離間して配置されているため、フラット電線1を曲げ箇所Mで折り重ねたときに、熱融着用樹脂部31,32同士が重なり合う部分が、必ず、1つ形成される。そのため、重なり合う熱融着用樹脂部31と熱融着用樹脂部32とを熱融着させることで、簡単にフラット電線1の重なり合った部分同士を結合状態にすることができ、フラット電線1の曲げ形状Fを維持するための操作を容易にすることができる。
【0028】
更に、熱融着させるための専用の領域として導体2相互間の離間距離よりも幅寸法の大きな熱融着用樹脂部31,32を装備したため、熱融着作業を実施する際に、熱融着用樹脂部31,32同士が重なり合う位置T1の検知(識別)が容易になる。そのため、作業者によって熱融着位置にバラツキが生じることを抑止することができる。
【0029】
更に、本実施形態のフラット電線の曲げ形状維持方法の場合、2つの熱融着用樹脂部31,32の装備位置がフラット電線1の両側縁部のため、フラット電線1を曲げ箇所Mで折り重ねたときに、熱融着用樹脂部31と熱融着用樹脂部32とが重なる位置T1は、図1に示すように、折り曲げ箇所Mから距離L1だけ離れた位置であり、折り重なる範囲内で折り曲げ箇所Mから一番離れた位置となる。
【0030】
そのため、例えば、2つの熱融着用樹脂部が電線の両側縁よりも内側に配置されていて熱融着用樹脂部同士の重なり合う位置がフラット電線1の折り曲げ箇所Mの付近に位置する場合と比較すると、折り重ねたフラット電線1の捲り上がりを抑止する効果が高まり、曲げ形状Fを維持する性能を安定させることができる。
【0031】
なお、本発明に係るフラット電線の曲げ形状維持方法では、熱融着用樹脂部は、電線の幅方向に離間する3箇所以上に装備するようにしても良い。言い換えると、熱融着用樹脂部は、電線の幅方向に離間する少なくとも2箇所に装備するようにしても良い。
【0032】
熱融着用樹脂部を3箇所以上に装備することで、フラット電線1を折り重ねたときに、熱融着用樹脂部同士が重なり合う箇所を2箇所以上形成することが可能になり、熱融着させる箇所が増えることで、曲がり形状を維持する性能を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、専用の熱融着用樹脂部を装備したが、隣接する導体2相互間の離間間隔Sが、熱融着処理が可能な寸法である場合には、導体2相互間の絶縁性樹脂被覆層3を熱融着用樹脂部として活用するようにしても良い。
即ち、フラット電線1には、必ずしも専用の熱融着用樹脂部を設ける必要がない。
【符号の説明】
【0034】
1 フラット電線
2 導体
3 絶縁性樹脂被覆層
31,32 熱融着用樹脂部
F 曲げ形状
M 曲げ箇所(折り曲げ線)
T1 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の離間間隔で平面状に配列される複数の導体が絶縁性樹脂被覆層で被覆されて帯板状又はテープ状の外観形状に仕上げられたフラット電線を配索経路の曲がり部の形状に合致する曲げ形状に維持するフラット電線の曲げ形状維持方法であって、
前記フラット電線を曲げ箇所で折り重ねることによって、前記曲がり部の形状に合致する曲げ形状を形成すると共に、折り重なるフラット電線の前記絶縁性樹脂被覆層同士を熱融着させることで、前記曲げ形状を維持させることを特徴とするフラット電線の曲げ形状維持方法。
【請求項2】
前記フラット電線は、外表面上で電線の幅方向に離間した少なくとも2箇所に、電線の長手方向に沿って帯状に延在する熱融着用樹脂部を備え、前記フラット電線を折り重ねた際に互いに重なる前記熱融着用樹脂部同士を熱融着させることを特徴とする請求項1に記載のフラット電線の曲げ形状維持方法。
【請求項3】
前記フラット電線には、少なくとも一方の外表面上における両側縁に、前記熱融着用樹脂部が装備されていることを特徴とする請求項2に記載のフラット電線の曲げ形状維持方法。

【図1】
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