説明

フラワーペーストとその製造方法

【課題】天然由来の未変性馬鈴薯澱粉を用いて、加工澱粉と同等の品質を有するフラワーペーストを製造する。
【解決手段】フラワーペーストを調製する際に、小粒子径の未変性馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを原材料に加え製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未変性馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを含有する事を特徴とするフラワーペーストと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パン・菓子などのフィリング材などに使用されるフラワーペーストは、小麦粉や澱粉類を主要原料とし、これに糖類、油脂、乳製品、卵類などを加えて、一般的には掻き取り式熱交換器等で加熱することによって得られるものである。そして、主要原材料である小麦粉、澱粉などが加熱により糊化、膨潤することで、フラワーペーストにおける独特なボディーが形成される。
【0003】
加熱中のフラワーペーストは、主要原料である小麦粉、澱粉類の糊化、膨潤により、フラワーペーストの粘度が上昇し、掻き取り式熱交換器の回転羽根における掻き取り能力を超えてしまうことや製品が掻き取られず伝熱面や回転羽根などに付着し焦げが発生する、加熱やシェアーにより澱粉粒の崩壊が進んで最終製品において好ましくない食感を呈するなどの欠点を持っている。
【0004】
そこで、それらを改善する為に、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチやタピオカ澱粉等に架橋処理をした加工澱粉や湿熱処理をした物理処理澱粉、更にはワキシーコーンスターチ、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等にアセチル化やヒドロキシプロピル化した後に架橋処理した加工澱粉等、天然由来の澱粉に何らかの処理を行った澱粉が開発・利用されている。
【0005】
さらに、フラワーペースト等澱粉を含有する食品の利便性を向上するために、上記のような加工澱粉の開発以外にも、様々な技術が開示されている。例えば、基本成分に微結晶セルロース、水溶性高分子ガムからなる分散剤と低粘性糖類からなる崩壊剤を用いたペースト状食用組成物(特許文献1)、油脂分、天然高分子物質および小麦粉、澱粉、糖類、水、香味料等からなるフラワーペーストを用いた菓子パン(特許文献2)、糊化澱粉またはその含有物に、必要に応じて副原料(砂糖等)及び固形食品(果肉、ナッツ等)を添加し高圧処理したペースト状食品(特許文献3)、膨潤調節澱粉と低温易増粘性澱粉とを特定割合で澱粉質原料として使用したフラワーペースト(特許文献4)、粒径が150μm以下に微粉砕アルファー化された、膨潤度が2.0〜5.0、エーテル化の置換度が0.05以上、エステル化の置換度が0.03以上である架橋エーテル化澱粉および架橋エステル化澱粉のうち、少なくとも1種以上からなる食品用変性澱粉(特許文献5)、ペースト状食品用原料に架橋型ヒドロキシプロピルリン酸デンプン(ヒドロキシプロピル・ジ・スターチホスフェイト)及び/又は酢酸デンプンを配合してなることを特徴とするペースト状食品類(特許文献6)、少なくとも親油性澱粉および油脂、並びにその他の原料を、混合・加熱・糊化することにより調製され、かつ、品温5℃から10℃の保存温度において、レオ値(dyn/cm)で表現される硬度が、7週間目において55以下であることを特徴とするチルドフラワーペースト(特許文献7)、(A)ワキシースターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉及びそれらの加工澱粉のうち膨潤抑制処理されないものから選ばれた少なくとも一種と、(B)架橋澱粉及び湿熱処理澱粉から選ばれた少なくとも一種とを併用するペースト状食品(特許文献8)、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉またはタピオカ澱粉を、減圧下に置いた後、蒸気導入による加圧加熱を行い、あるいはこの操作を繰り返した後、冷却し、粉砕して得られた湿熱処理澱粉を、原料として用いるフィリング(特許文献9)、澱粉もしくは澱粉を含有した材料を使用して調理食品を製造するに際し、豆類由来のヘミセルロースを添加使用することを特徴とする、澱粉調理食品の製造法(特許文献10)等が提示されている。さらに本願出願人は、水溶性ヘミセルロースを添加することを特徴とするフラワーペースト(特許文献11)を開示し、係る問題点の解決を図っている。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−55163号公報
【特許文献2】特開昭63−192341号公報
【特許文献3】特開平7−115925号公報
【特許文献4】特開平10−84874号公報
【特許文献5】特許第3448402号公報
【特許文献6】特公昭63−8741号公報
【特許文献7】特許第3421293号公報
【特許文献8】特開平11−18681号公報
【特許文献9】特開平6−7088号公報
【特許文献10】特開平9−289880号公報
【特許文献11】特開2005−65512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、消費者の天然嗜好の高まりから、加工澱粉を使用しなくても未加工(未変性)澱粉を使用することにより、加工澱粉と同等のものが簡便に提供できる技術が求められる傾向にある。しかし、上述の通り天然由来の未加工(未変性)澱粉の性状から、加工食品に利用する場合には注意が必要であったため、未変性澱粉を容易に利用できる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意研究を行い、その結果、澱粉及び/または澱粉を含有する食材を使用したフラワーペーストを調製する際に、未変性馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを添加することで、簡便に天然由来の未変性澱粉を利用できるとの知見を得た。即ち、澱粉及び/又は澱粉を含有する食材を使用してフラワーペーストを調製する際に、未変性馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを材料として添加し製造することで、未変性澱粉を加工澱粉と同様に食品製造に利用できるフラワーペーストとその製造方法を得るに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフラワーペーストとその製造方法、即ち澱粉及び/又は澱粉を含有する食材を使用してフラワーペーストを調製する際に、未変性馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを材料として添加し製造することで、特に製造時に留意することなく加工澱粉と同等のフラワーペーストを製造することが可能となる。具体的には、フラワーペーストの加熱時のピーク粘度を抑え、かつ調製後温度が低下しても粘度の上昇を抑えることにより流動性を保ったままであるため、製造設備への付着を防ぐことにより焦げ付きを生じず、食感、つやにも優れたフラワーペーストを、天然由来の未変性馬鈴薯澱粉を利用して提供することが可能となった。
【0010】
尚、特許文献10では、澱粉もしくは澱粉を含有した材料を使用して調理食品を製造するに際し、豆類由来のヘミセルロースを添加使用することを特徴とする、澱粉調理食品の製造法が開示されているが、本発明で使用するような特定の澱粉、即ち未変性馬鈴薯澱粉により顕著な効果が得られるとの記載も示唆もされていない。また、本願出願人が先に出願した特許文献11においても、「澱粉及び/または澱粉を含有する食材を使用したフラワーペーストを調製する際に、大豆由来の水溶性ヘミセルロースを添加すること(段落0009)」との記載があるが、本願発明は係る技術を更に検討し、天然由来の未変性澱粉を使用して、加工澱粉を使用した場合と同様のフラワーペーストを簡便に得ることができるとの知見に基づくものである。係る点については、特許文献11にも記載されておらず、示唆もされていない技術である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるフラワーペーストとは、小麦粉、澱粉、ナッツ類若しくはその加工品、ココア、チョコレート、コーヒー、果肉又は果汁を主原料とし、これに砂糖、油脂、粉乳、卵、小麦粉、等を加え加熱してペースト状とし、パン又は菓子に充填又は塗布して食用に供するものをいい、さつまいも、じゃがいも等のいも類、小豆等の豆類及びかぼちゃ、にんじん等の野菜類を主要原料としたものも含まれる。また、フラワーペーストをシート状に伸展したフラワーシートも本概念に含まれる。
【0012】
フラワーペーストの粘度は、調製する加工食品により適宜変更されるので特に限定されず、製造する食品に応じて水溶性ヘミセルロースの添加量もしくは未変性馬鈴薯澱粉の添加量を調製して任意の粘度にすればよい。また、フラワーシートの調製も、常法により行うことができる。
【0013】
本発明で使用する未変性馬鈴薯澱粉は、加熱等による変性が生じていない澱粉であり、一般に流通しているものを利用することができるが、本発明では、大粒子径の澱粉を取り除いた粒子径が40μm以下の粒子を80体積%以上含有する分級未変性馬鈴薯澱粉を利用することが好ましい。粒子径が40μm以下の粒子を80体積%以上含有する未変性馬鈴薯澱粉を利用することにより、澱粉を利用してフラワーペーストを調製した際に、馬鈴薯澱粉が膨潤してザラついた食感になるという問題点も回避することができる。
【0014】
未変性馬鈴薯澱粉は、その原料となる馬鈴薯の種類や製造条件等により、粒子の大きさの分布もある程度異なるが、粒子径が40μm以下である粒子を50−60体積%程度含有することが知られている。本発明で使用する分級された未変性馬鈴薯澱粉の小粒子区分は、馬鈴薯澱粉に存在する大粒子と小粒子の内、小粒子区分を集めたものを称し、好ましくは粒子径が40μm以下の粒子を80体積%以上含有する分級未変性馬鈴薯澱粉である。その製造方法は特に限定されず、粒子径が上述の範囲になるように分級されたものであれば良い。一例を挙げれば、馬鈴薯澱粉の製造過程でハイドロサイクロンを用いて大粒子と小粒子の重さの違いを利用して分級する方法、或は市販されている馬鈴薯澱粉を、例えば日清エンジニアリング(株)製の空気分級機「TC−60N」等の空気分級機を用いて空気分級する方法等が挙げられる。分級馬鈴薯澱粉の小粒子区分を製造する際の原料としては、市販の馬鈴薯澱粉の製造過程のもの、又は市販の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を用いることができる。特に、本発明では未変性の馬鈴薯澱粉を利用することが特徴であるため、一般に加工澱粉といわれる油脂加工澱粉、次亜塩素酸塩処理澱粉、酸処理澱粉、α化澱粉、湿熱処理澱粉、架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化架橋澱粉、エーテル化架橋澱粉、アセチル化処理澱粉、リン酸処理澱粉、ヒドロキシプロピル化処理澱粉、オクテニル琥珀酸化澱粉等は含まれない。
【0015】
本発明で使用する水溶性ヘミセルロースは、大豆由来のラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、ウロン酸の1種もしくは2種以上を含むものであればよいが、大豆のなかでも子葉由来のものが好ましい。本発明の水溶性ヘミセルロース は、その分子量がどの様な物でも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜数百万、具体的には5千〜100万であるのが好ましい。なお、この水溶性ヘミセルロース の平均分子量は標準プルラン(昭和電工株式会社)を標準物質として0.1MのNaNO溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。かかる大豆多糖類 は商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のSM−1200、SM−900を挙げることができる。
【0016】
フラワーペーストへの未変性馬鈴薯澱粉の添加量は、フラワーペースト100重量%に対し1〜10重量%の範囲内、好ましくは2〜6重量%の範囲内、水溶性ヘミセルロースの添加量は0.2〜2重量%の範囲内、好ましくは0.5〜1.5重量%が例示できる。係る配合割合内であれば、適宜調整してフラワーペーストへ添加することができる。水溶性ヘミセルロースの添加量が0.2質量%より少ない場合、フラワーペーストの粘度が高くなり製造装置への付着を防ぐことができない。また、添加量が2質量%より多い場合はフラワーペーストがゾル化し、粘度は低くなるものの食品に添加した際に流れ出たり、パン等の食品部に水分が移るといった事態が生じ、食品の商品価値が失われるため好ましくない。
【0017】
本発明に係るフラワーペーストの製造方法も、従来の処方に未変性馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを適量加えるだけで良く、製造時に添加する時期も他の原材料と同時に混合し調製すればよく、常法に従うことができる。従って、本発明を実施するに際し新たな製造装置は必要とされないため、工業的にも有利である。また、天然由来の未加工(未変性)澱粉を用いることによっても、加工澱粉と同等の製品を簡便に製造することが可能となる。
【0018】
本発明に係るフラワーペーストには、前述に加えて、本発明の効果を損なわない限度において必要に応じて、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリームなどの乳成分、卵黄、卵白等の卵加工品、酸味料、調味料、色素、香料、果汁、ピューレ、ココア粉末、チョコレート、保存料、エキス、糊料、pH調整剤、洋酒、その他ミネラル類等を任意に添加することができる。
【0019】
糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)などを挙げることができる。
【0020】
また、従来公知若しくは将来知られうる甘味成分も糖類の代わりに用いることができる。具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末などの甘味成分を用いても良い。
【0021】
澱粉としては食感や物性を改良する為に本発明の特徴である未変性馬鈴薯澱粉以外にも、本発明の効果を妨げない範囲において、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉等の澱粉を任意に添加することが出来る。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。尚、処方例において「※」で記すものは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であり、「*」で記すものは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品である。
【0023】
以下の配合例、製法を用いてフラワーペーストを調製した。
(配合例)
配合割合(%)
水飴 20
砂糖 15
脱脂粉乳 5
マーガリン 5
澱粉 各実施・比較例参照
薄力小麦粉 1
水溶性ヘミセルロース(SM-1200*) 各実施・比較例参照
増粘剤(ゲルアップ※FLP*) 0.2
香料(ワニラフレーバーNo93-I*) 0.1
着色料(カロチンベースNo9400-SV*) 0.1
水にて合計 100
【0024】
(製法)
香料、着色料以外の上記混合物を攪拌混合した後、沸騰後3分間加熱した。その後、香料、着色料を添加し水分補正を行った後、容器に充填し冷水中で冷却後、冷蔵庫で保存した。
【0025】
(実施例1)
澱粉として小粒子(粒子径が40μm以下の粒子を80体積%以上含有。以下同じ。)の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を4%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し配合例に従いフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が良く、口溶けが良く、滑らかなフラワーペーストができた。
【0026】
(実施例2)
澱粉として未変性馬鈴薯澱粉(松谷化学工業 精製乾燥殺菌馬澱)を4%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、実用に値するフラワーペーストであり、実施例1と同等の伸展性、口溶けであるが、実施例1と比べてややザラついたフラワーペーストができた。
【0027】
(実施例3)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を4%、水溶性ヘミセルロースを0.2%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、実用に値するフラワーペーストであるが、実施例1に比べて伸展性がやや悪く、口溶けのやや良くない、ややザラついたフラワーペーストができた。
【0028】
(実施例4)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を4%、水溶性ヘミセルロースを2%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、実用に値するフラワーペーストであり、実施例1と同等の伸展性、口溶けであるが、実施例1と比較して保形性がやや悪く、滑らかさにやや欠けたフラワーペーストができた。
【0029】
(実施例5)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を1.5%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、実用に値するフラワーペーストであり、実施例1と同等の伸展性、口溶け、滑らかさであるが、実施例1と比べてやや保形性の悪いフラワーペーストができた。
【0030】
(実施例6)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を7%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、実用に値するフラワーペーストであるが、実施例1と比べて伸展性、口溶けがやや悪く、滑らかさにやや欠けたフラワーペーストができた。
【0031】
(比較例1)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を4%、水溶性ヘミセルロースを添加せずに配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が悪く、口溶けの良くない、ザラついたフラワーペーストができた。
【0032】
(比較例2)
澱粉として未変性馬鈴薯澱粉(松谷化学工業 精製乾燥殺菌馬澱)を4%、水溶性ヘミセルロースを添加せずに配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が悪く、口溶けの良くない、ザラついたフラワーペーストができた。
【0033】
(比較例3)
澱粉として未変性ワキシーコーンスターチ(三和澱粉工業 ワキシースターチW)を4%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が悪く、口溶けの良くない、滑らかだが弾力のあるフラワーペーストができた。
【0034】
(比較例4)
澱粉として未変性ワキシーコーンスターチ(三和澱粉工業 ワキシースターチW)を4%、水溶性ヘミセルロースを添加せずに配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が悪く、口溶けの良くない、滑らかだが弾力のあるフラワーペーストができた。
【0035】
(比較例5)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を4%、水溶性ヘミセルロースを0.1%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が悪く、口溶けの良くない、ザラついたフラワーペーストができた。
【0036】
(比較例6)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を4%、水溶性ヘミセルロースを3%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が良く、口溶けが良いが、保形性がやや悪く滑らかさに欠けたフラワーペーストができた。
【0037】
(比較例7)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を0.5%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が良く、口溶けが良く、滑らかだが保形性の悪いフラワーペーストができた。
【0038】
(比較例8)
澱粉として小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(JA斜里町 中斜里澱粉工場 分級SH下)を13%、水溶性ヘミセルロースを1%使用し、配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が悪く、口溶けが悪く、滑らかさに欠けるラワーペーストができた。
【0039】
(参考例)
澱粉として加工澱粉(松谷化学工業 ファリネックスVA70C)を4%、水溶性ヘミセルロースを添加せずに配合例に従ってフラワーペーストを調製した。
(結果)
翌日評価したところ、伸展性が良く、口溶けが良く、滑らかなフラワーペーストができた。
【0040】
<評価1>
使用する澱粉の違いと水溶性ヘミセルロースの有無による効果を示すために、実施例1・2、比較例1〜4の結果を表1に示す。また、水溶性ヘミセルロースが含まれていない加工澱粉によるフラワーペーストを調製し、これを参考例として表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示したように、フラワーペーストに小粒子の未変性馬鈴薯澱粉(実施例1、実施例2)と水溶性ヘミセルロースを使用することにより、加工澱粉を使用したもの(参考例)と同程度の口溶けが良く、滑らかなフラワーペーストが得られることが明らかとなった。
【0043】
<評価2>
水溶性ヘミセルロースの添加量の差により、得られたフラワーペーストの物性にどのような差が生じたかを評価するため、小粒子の未変性馬鈴薯澱粉の添加量4%において水溶性ヘミセルロースの添加量を変化させた実施例1・3・4及び比較例5・6の結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示したように、水溶性ヘミセルロースの添加量が0.1%(比較例5)では伸展性、口どけ、滑らかさを欠いたフラワーペーストとなり、3%(比較例6)では滑らかさを欠いたフラワーペーストになることが明らかとなった。この結果から、水溶性ヘミセルロースの添加量は0.2%〜2%が好適と判断できる。
【0046】
<評価3>
小粒子の未変性馬鈴薯澱粉の添加量の差により、得られたフラワーペーストの物性にどのような差が生じたかを評価するため、水溶性ヘミセルロース1%において小粒子の未変性馬鈴薯澱粉の添加量を変化させた実施例1・5・6、比較例7・8の結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示すように、未変性の馬鈴薯澱粉の添加量が0.5%(比較例7)では伸展性、口溶け、滑らかさは良好であるが、保形成が悪いフラワーペーストができ、13%(比較例8)では伸展性、口溶け、滑らかさに欠けたフラワーペーストとなっていた。この結果から、小粒子の未変性馬鈴薯澱粉の添加量は1%〜10%の範囲が好適と判断できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料として、未変性馬鈴薯澱粉を1〜10重量%と水溶性ヘミセルロースを0.2〜2重量%含有することを特徴とするフラワーペースト。
【請求項2】
未変性馬鈴薯澱粉が、粒子径が40μm以下の粒子を80体積%以上含有するものである請求項1記載のフラワーペースト。
【請求項3】
原材料として、未変性馬鈴薯澱粉を1〜10重量%と水溶性ヘミセルロースを0.2〜2重量%含有することを特徴とするフラワーペーストの製造方法。
【請求項4】
未変性馬鈴薯澱粉が、粒子径が40μm以下の粒子を80体積%以上含有するものである請求項3記載のフラワーペーストの製造方法。

【公開番号】特開2008−245590(P2008−245590A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92195(P2007−92195)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】