説明

フランジ接合部補強装置、フランジ接合部補強装置を備えた油入電気機器および油入電気機器のフランジ接合部補強方法

【課題】2分割以上に分割されたタンクのフランジ接合部の溶接の作業性を考慮しつつ、フランジ接合部の溶接強度を向上させることにより、安全性を向上させること。
【解決手段】対向する一対の管またはタンク8、9の端部に設けたフランジ6、7同士を突き合わせ、そのフランジの突き合わせ部外周部A1を溶接するとともに、フランジ6、7を外側から挟持するようにしたフランジ部の補強材であって、その補強材は、一方の管またはタンク8の側面およびフランジ6側面にそれぞれ溶接固着され、かつ、前記フランジの突き合わせ部外周部A1よりも寸法の小さい第1の補強材2aと、他方の管またはタンク9の側面およびフランジ7にそれぞれ溶接固着され、かつ、フランジの突き合わせ部外周部A1よりも寸法の大きい第2の補強材2bと、これら2aおよび2bに溶接固着され両者を連結する第3の補強材2cとから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管または変圧器タンク等のフランジ接合部補強装置、そのフランジ接合部補強装置を備えた油入電気機器および油入電気機器のフランジ接合部補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油入変圧器は、鉄心とコイルとを密閉した変圧器タンク(以下、タンクと称する)内部で絶縁油中に浸した状態で収容しているので、絶縁物の経年変化により劣化が進行している状態で外雷や内雷等の異常電圧によって事故が発生した場合、この事故により生じたアークにより絶縁油が加熱され、そのとき発生する分解ガスによってタンク内圧が急激に上昇することがある。
【0003】
タンクが分割されている場合、タンク内圧が急激に上昇するとタンク分割面を溶接により接合しているフランジ接合部は、タンクの他の部分に比べて機械的強度が相対的に弱いので、このフランジ接合部に亀裂が発生し、その亀裂が進展開口すると前述した高温の分解ガスや絶縁油を噴出するおそれがある。更に噴出した高温の分解ガスや絶縁油は、周辺の機器を損傷させるだけでなく、大気中の酸素に触れて着火し、火災事故等の二次的災害に発展する虞もある。
【0004】
このため、油入電気機器にとっては前述のフランジ接合部を補強してタンク破壊強度を向上させることが必要であり、その対策の一つとして、フランジ接合部の外側全周を一定間隔で複数個のC字形補強材で挟時し補強するようにしたフランジ部補強方法が一般的に知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
図6は、非特許文献1に記載のフランジ部補強材を改良した従来のフランジ部補強方法を示す図であり、C字形補強材を上部補強材1aおよび下部補強材1bに二分割構成とし、このうち一方の上部補強材1aを上部タンクフランジ6と上部タンク側板8にそれぞれ溶接し、他方の下部補強材1bを下部タンクフランジ7と下部タンク側板9にそれぞれ溶接した後、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7間のフランジ接合部A1をタンクの全周に亘って溶接するようにしている。
更に、一方の上部補強材1aと他方の下部補強材1bの接合部A2を溶接することによって一体のC字形補強材1とし、タンクのフランジ接合部の強度を向上させている。
【0006】
なお、分割タンクのフランジ接合部の補強材とは異なるが、対向配置された配にそれぞれ設けたフランジ同士を接合する場合は、フランジ接合部の外側面に配置した挟持部材を1本の通しボルトを用いて締め付けるようにしたフランジ補強材(例えば、特許文献1)とか、フランジ接合部を跨ぐように形成された門型形状の補強材を配置したフランジ補強材(例えば、特許文献2参照)等もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−316767号公報
【特許文献2】特開2006−329340号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「電気協同研究」第30巻第6号、昭和50年8月、電気協同研究会発行、第70頁、第2−1−2図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、タンクの分割面に設けた上部タンク接合フランジ6と下部のタンク接合フランジ7とのフランジ接合部A1の溶接作業は、鉄心やコイル、接続リード等から成る電器本体をタンク内に収納した後に実施される。一方、上部補強材1a、下部補強材1bの上部タンク側板8、下部タンク側板9への溶接は、各々、上部タンク、下部タンク製作時、即ち、フランジ接合部A1の溶接作業前に実施される。
【0010】
このため、図6のように非特許文献1に記載の2分割されたC字形補強材では、上部補強材1a自体が溶接機のトーチまたは電極が溶接動線に沿って移動するのを阻害することとなって連続的に溶接ができず、上部補強材1a部近傍で一旦溶接を中断し、上部補強材1a部分をかわして止端部を重ね合わせて、再度溶接していくことになる。
一般に、止端部の溶接はビードの溶け込みが不充分となり、内部事故発生時の必要強度が得られないのみならず、内部の絶縁油が外部に漏れ出す可能性がある。
【0011】
また、タンクを据付面の上下方向(タンクの上下方向)に3分割ないしは、それ以上に分割した油入変圧器の場合、従来のC字形補強材による補強方法では、下部のフランジ接合部から油漏れが発生した場合、漏油量が非常に大きくなり、二次災害につながる可能性が高く、かつ、漏れた油の処理にも多大な労力を要することになる。
【0012】
また、特許文献1、2に記載のフランジ補強治具をタンクのフランジ接合部に用いた場合も、通しボルトや門型形状の補強材がフランジ接合部A1を跨ぐために、非特許文献1の場合と同様に連続的に溶接する場合の障害となる欠点がある。
【0013】
そこで本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたもので、対向して配置された管または二分割以上に分割されたタンクのフランジ接合部の溶接の作業性を考慮しつつフランジ接合部の溶接強度を向上させることにより安全性を向上させた、管またはタンクのフランジ接合部補強装置フランジ接合部補強装置、フランジ接合部補強装置を備えた油入電気機器および油入電気機器のフランジ接合部補強方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、対向配置された一対の管またはタンクの端部にそれぞれ設けたフランジ同士を突き合わせ、そのフランジ突き合わせ部を溶接するとともに、前記フランジ突き合わせ部を外側から挟持して補強するようにしたフランジ接合部補強装置であって、前記フランジ接合部補強装置は、一方の管またはタンクの側面およびフランジ側面にそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定された第1の補強材と、他方の管またはタンクの側面およびフランジにそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも大きい寸法に選定された第2の補強材と、これら第1の補強材および第2の補強材にそれぞれ溶接固着され両者を連結する第3の補強材とから構成されたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、対向配置された一対の管またはタンクの端部にそれぞれ設けたフランジ同士を突き合わせ、そのフランジ突き合わせ部を溶接するとともに、前記フランジ突き合わせ部を外側から挟持して補強するようにしたフランジ接合部補強装置であって、前記フランジ接合部補強装置は、一方の管またはタンクの側面およびフランジ側面にそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定された第1の補強材と、他方の管またはタンクの側面およびフランジにそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定された第2の補強材と、これら第1の補強材および第2の補強材にそれぞれ溶接固着され両者を連結する第3の補強材とから構成されたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る発明は、対向配置された一対の管またはタンクの端部にそれぞれ設けたフランジ同士を突き合わせ、そのフランジ突き合わせ部を溶接するとともに、前記フランジ突き合わせ部を外側から挟持して補強するようにしたフランジ接合部補強装置であって、前記フランジ接合部補強装置は、一方の管またはタンクの側面およびフランジ側面にそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定されたほぼ三角形の第1の補強材と、一端を前記第1の補強材に溶接固着され、他端を前記他方の管またはタンクの側面に固定された補強ビームのフランジ側の面に溶接固着された第2の補強材と、から構成されたことを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項4に係る発明は、据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部をフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器において、前記フランジ接合部補強装置を、前記上下方向に少なくとも分割されたタンクのうち、上部に位置するタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形状されるとともに、当該上部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第1の補強材と、前記上部のタンクに隣接する下部のタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出るように形成されるとともに、当該下部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第2の補強材と、前記第1の補強材との接触面および前記第2の補強材との接触面にそれぞれ溶接されることにより前記第1の補強材と第2の補強材とを連結する第3の補強材と、により構成したことを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項5に係る発明は、据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部をフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器において、前記フランジ接合部補強装置を、前記上下方向に少なくとも分割されたタンクのうち、上部に位置するタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形状されるとともに、当該上部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第1の補強材と、前記上部のタンクに隣接する下部のタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形成されるとともに、当該下部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第2の補強材と、前記第1の補強材との接触面および前記第2の補強材との接触面にそれぞれ溶接されることにより前記第1の補強材と第2の補強材とを連結する第3の補強材と、により構成したことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項6に係る発明は、据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部をフランジ接合部補強装置により補強し、さらに、下部タンク側板に前記フランジ接合部と近接してタンク補強ビームを設けた油入電気機器において、前記フランジ接合部補強装置を、前記上下方向に少なくとも分割されたタンクの端部に設けられた上部タンクフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形状されるとともに、当該上部タンクフランジおよび上部タンク側板にそれぞれ溶接によって接合される第1の補強材と、一端を前記第1の補強材との接触面に溶接によって接合されるとともに、他端を前記タンク補強ビームの上面に溶接によって接合される第2の補強材と、により構成したことを特徴とする。
【0020】
またさらに、請求項9に係る発明は、据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部を第1の補強材、第2の補強材および第3の補強材とに3分割構成としたフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器のフランジ接合部補強方法において、前記第1の補強材を、前記タンク接合部フランジよりも外側に突き出ないように形状して上部タンクフランジとの接触面および上部タンク側板との接触面にそれぞれ溶接によって接合し、前記第2の補強材を、前記タンク接合部フランジよりも外側に突き出るように形成して下部タンクフランジとの接触面および下部タンク側板との接触面をそれぞれ溶接によって接合し、これら第1の補強材および第2の補強材の溶接固着後に、前記タンク接合部のフランジ外周を溶接し、さらにその後、前記第3の補強材と前記第1の補強材との接触面、前記第3の補強材と前記第2の補強材との接触面をそれぞれ溶接によって接合することを特徴とする。
【0021】
またさらに、請求項10に係る発明は、据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、下部に位置するタンクの側面に前記フランジ接合部と近接してタンク補強ビームを設け、さらに、当該タンクのフランジ接合部を、第1の補強材および第2の補強材とに二分割構成としたフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器のフランジ接合部補強方法において、前記第1の補強材を、前記タンク接合部フランジよりも外側に突き出ないように形状して上部タンクフランジとの接触面および上部タンク側板との接触面にそれぞれ溶接によって接合し、その後前記タンク接合部のフランジ外周を溶接し、さらにその後、前記第2の補強材の一端を前記第1の補強材に溶接し、前記第2の補強材の他端を前記タンク補強ビームに溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フランジ接合部の溶接作業動線をさえぎる補強材が存在しないので、溶接箇所の中断がなくなり、その結果フランジ接合部でのビードの溶け込みが良好な溶接となって、フランジ接合部の強度が向上し、管またはタンク等のタンクの内部圧力の上昇によるフランジ接合部の亀裂を防ぐことができる、フランジ接合部補強装置、フランジ接合部補強装置を備えた油入電気機器および油入電気機器のフランジ接合部補強方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の本実施形態1で採用した3分割構成のC字形補強材をフランジ接合部に固着した様子を示す要部拡大断面図。
【図2】本発明の本実施形態2で採用した3分割構成のC字形補強材をフランジ接合部に固着した様子を示す要部拡大断面図。
【図3】本発明の本実施形態3で採用した2分割構成のC字形補強材をフランジ接合部に固着した様子を示す要部拡大断面図。
【図4】本発明の本実施形態4によりタンクフランジ接合部にC字形補強材を固着した様子を示すタンク側面図。
【図5】本発明の本実施形態5によりタンクフランジ接合部にC字形補強材を固着した様子を示すタンク側面図。
【図6】従来のC字形補強材の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。なお、各図を通して共通する構成部品には同一符号を付け、重複する説明は適宜省略するものとする。
【0025】
[実施形態1]
図1は油入変圧器のフランジ接合部に本実施形態1で採用した3分割構成のC字形補強材を固着した様子を示す要部拡大断面図である。
【0026】
図1において、本実施形態1で採用するC字形補強材2は、上部補強材2a、下部補強材2bおよび両補強材2a、2b間を固着する連結補強材2cからなる3分割構成の補強材である。なお、連結補強材2cは上部補強材2aに接合する端部2cと、下部補強材2b接合する端部2cとを有するほぼL字形に形成されている。これら上部補強材2aを第1の補強材2a、下部補強材2bを第2の補強材2b、そして、連結補強材2cを第3の補強材2cと呼称する場合がある。
【0027】
これら3つの補強材うち、上部補強材2aの幅は、上部タンクフランジ6の外周部6sよりも外側に突き出ないように形成されており、逆に、下部補強材2bの幅は、下部タンクフランジ7の外周部7sよりも外側に突き出るように形成されている。
【0028】
本実施形態1では、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接作業に先立って、上部補強材2aの上部タンクフランジ6との接触面w1および上部タンク側板8との接触面w2をそれぞれ溶接によって接合し、下部補強材2bの下部タンクフランジ7との接触面w3および下部タンク側板9との接触面w4をそれぞれ溶接によって接合する。
【0029】
このように上部補強材2aと下部補強材2bとを各々上部タンクフランジ6および上部タンク側板8、下部タンクフランジ7および下部タンク側板9に前もって溶接した後に、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1をタンク全周に亘って連続して溶接する。
【0030】
フランジ接合部A1の溶接の際、連結補強材2cは未だ取付けられていないので、タンク全周に亘ってフランジ接合部A1の溶接作業の動線をさえぎる障害物はなく、溶接作業中に中断は起こらずに連続して溶接作業を行うことができる。この結果、フランジ接合部A1でのビードの溶け込みが良好な溶接となり、フランジ接合部の強度が向上し、タンク内部圧力の上昇によるフランジ接合部の亀裂を防ぐことができる。
【0031】
上述のフランジ接合部A1の溶接作業が終わった後に、ほぼL字形の連結補強材2cを用いてその端部2cと上部補強材2aとの接触面w5、端部2cと下部タンクフランジ7の外周部7sよりも外側に突き出ている下部補強材2bとの接触面w6をそれぞれ溶接によって接合する。
併せて、上部補強材2a、下部補強材2bおよび連結補強材2cの3者の補強材が一体的に固着するので、フランジ接合部の強度を向上させることができる。
【0032】
以上述べたように、本実施形態1によれば、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接に先立って、上部補強材2aの上部タンクフランジ6との接触面w1および上部タンク側板8との接触面w2、下部補強材2bの下部タンクフランジ7との接触面w3および下部タンク側板9との接触面w4をそれぞれ溶接によって接合した後に、連結補強材2cを用いて端部2cと上部補強材2aとの接触面w5、端部2cと下部補強材2bとの接触面w6をそれぞれ溶接によって接合するようにしたので、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接作業の際に溶接作業の動線をさえぎる障害物はなく、溶接作業中に中断は起こらずに連続して溶接作業を行うことができる。
【0033】
この結果、フランジ接合部A1でのビードの溶け込みが良好な溶接となり、フランジ接合部の強度が向上し、タンク内部圧力の上昇によるフランジ接合部の亀裂を防ぐことができる油入変圧器を提供することができる。
【0034】
[実施形態2]
図2は油入変圧器のフランジ接合部に本実施形態2で採用した3分割構成のC字形補強材を固着した様子を示す要部拡大断面図である。
【0035】
図2において、本実施形態2で採用するC字形補強材3は、上部補強材3a、下部補強材3bおよびほぼ面一の接合面を2面有するC字形の連結補強材3cからなる3分割構成の補強材である。
【0036】
これら3つの補強材うち、上部補強材3aの幅は、上部タンクフランジ6の外周部6sよりも外側に突き出ないように形成されており、同様に、下部補強材3bの幅も下部タンクフランジ7の外周部7sよりも外側に突き出ないように形成されている。下部補強材3bが下部タンクフランジ7よりも外側に突き出ない形状のために、連結補強材3cはほぼ同一面に形成された端部3c、3cを有している。
【0037】
本実施形態2の場合も、前記実施形態1同様に、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接に先立って、上部補強材3aの上部タンクフランジ6との接触面w1および上部タンク側板8との接触面w2をそれぞれ溶接によって接合し、下部補強材3bの下部タンクフランジ7との接触面w3および下部タンク側板9との接触面w4をそれぞれ溶接によって接合する。
【0038】
このように上部補強材3aと下部補強材3bとを各々上部タンクフランジ6および上部タンク側板8、下部タンクフランジ7および下部タンク側板9に前もって溶接した後に、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1をタンク全周に亘って連続して溶接する。
【0039】
この溶接の際、連結補強材3cは未だ取付けられていないので、タンク全周に亘って接合部A1の溶接動線をさえぎる障害物はなく、溶接作業中に中断は起こらずに連続して溶接作業を行うことができる。この結果、接合部A1でのビードの溶け込みが良好な溶接となり、フランジ接合部の強度が向上し、タンク内部圧力の上昇によるフランジ接合部の亀裂を防ぐことができる。
【0040】
そして、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接作業が終わった後に、C字形の連結補強材3cを用いてその端部3cと上部補強材3aとの接触面w5、端部3cと下部補強材3bとの接触面w6をそれぞれ溶接によって接合する。
併せて、上部補強材3a、下部補強材3bおよび連結補強材3cの3者の補強材を一体的に固着するので、フランジ接合部の強度を向上させることができる。
【0041】
以上述べたように本実施形態2によれば、実施形態1の効果と同様に、C字形補強材3がフランジ接合部A1の溶接作業の動線をさえぎることがないので、フランジ接合部A1を連続して溶接をすることが可能となり、接合部A1でのビードの溶け込みが良好な溶接となり、フランジ接合部の強度が向上し、タンク内部圧力の上昇によるフランジ接合部の亀裂を防ぐことができる。更に、実施形態1では下部補強材2bが下部タンクフランジ7よりも突き出ているために、タンク輸送の際に輸送制限を超過してしまう可能性があったが、本実施形態2では下部補強材3bを下部タンクフランジ7よりも突き出ないように形状したので輸送制限超過を防止することができる。
【0042】
[実施形態3]
図3は油入変圧器のフランジ接合部に本実施形態3で採用した2分割構成のC字形補強材を固着した様子を示す要部拡大断面図である。
【0043】
本実施形態3は、油入変圧器タンク外板9に取付けた下部タンク補強ビーム5が、下部タンクフランジ7と近接している場合に採用されるものである。
本実施形態3で採用するC字形補強材4は、図3で示すように、ほぼ三角形に形成された上部補強材4aと、ほぼJ字形に形成された下部補強材4bとから構成されている。
【0044】
本実施形態3のC字形補強材4は、上部補強材4aが上部タンク側板8と上部タンクフランジ6とにより形成された隅部に納まるように、上部タンクフランジ6の外周部6sの外側に突き出ない形状になっている。
【0045】
一方、J字形に形成された下部補強材4bは、その上端部4bが上部補強材4aの斜辺部に接触し、下端部4bが下部タンク補強ビーム5のコーナー部5Rよりも上側の面において当該下部タンク補強ビーム5と接触する形状になっている。
【0046】
本実施形態3の場合も、前記実施形態1および2と同様に、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接に先立って、上部補強材4aの上部タンクフランジ6との接触面w1および上部タンク側板8との接触面w2をそれぞれ溶接によって接合する。
その後、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1をタンク全周に亘って連続して溶接する。
【0047】
この接合部A1の溶接の際、下部補強材4bは未だ取付けられていないので、タンク全周に亘って接合部A1をさえぎる障害物はなく、溶接作業中に中断は起こらずに連続して溶接作業を行うことができる。この結果、接合部A1でのビードの溶け込みが良好な溶接となり、フランジ接合部の強度が向上し、タンク内部圧力の上昇によるフランジ接合部の亀裂を防ぐことができる。
【0048】
そして、上部タンクフランジ6および下部タンクフランジ7の接合部A1の溶接作業が終わった後に、J字形の下部補強材4bを用いてその上端部4bと上部補強材4aの斜辺部との接触面w5、下端部4bと下部タンク補強ビーム5のコーナー部5Rよりも上側の面との接触面w6をそれぞれ溶接によって接合する。
これによって、上部補強材4aおよび下部補強材4bの2者の補強材を一体的に固着するので、フランジ接合部の強度を向上させることができる。
【0049】
以上述べたように、本実施形態3によれば、J字形の下部補強材4bの下端部4bを下部タンク補強ビーム5のコーナー部5Rよりも上側の面で溶接できる形状にしたので、下から見上げる向きの溶接箇所(例えば、図1、図2のw3)が無くなり、その分溶接の作業性及び品質が向上する。
【0050】
また、J字形の下部補強材4bの下端部4bを図3のように、下部タンク側板9に向かって伸ばしてJ字形の下部補強材4bと下部タンク補強ビーム5の上面との接触面w6を十分に長く確保することによって、J字形の下部補強材4bを補強ビームのコーナー部5Rより上側に取付けても必要強度を持たせることができる。
【0051】
[実施形態4]
図4は本実施形態4による油入変圧器にC字形補強材を固着した様子を示すタンク側面図である。
【0052】
本実施形態4の油入変圧器は、図4で示すように、据付面の上下方向に上部タンク12、中タンク13及び下部タンク14に3分割された構成のタンクを有しており、上部タンク12および中タンク13を接合する上部フランジ接合部15の全周を「取付け間隔L1」で按分してC字形補強材2、3あるいは4と同様に構成されたフランジ接合部補強装置10を複数個取付ける。また、中タンク13および下部タンク14を接合する下部フランジ接合部16の全周を「取付け間隔L2」で按分してC字形補強材2、3あるいは4と同様に構成されたフランジ接合部補強装置10を複数個取付ける。この場合、上部のC字形補強材10と下部のC字形補強材10とは同一種類の補強材であり、ほぼ同一の強度を有するように製作されているものとする。
【0053】
本実施形態4は、上部の「取付け間隔L1」に対して下部の「取付け間隔L2」を狭くすることによって、上部フランジ接合部15よりも下部フランジ接合部16の方の強度を高く選定するものである。
【0054】
このように構成された本実施形態4においては、上部フランジ接合部15に対して下部フランジ接合部16の強度が高くなっているので、内部事故発生によりタンク内圧が上昇し、万一油漏れが発生するときは上部フランジ接合部15から先に油漏れが発生する。このため、下部フランジ接合部16から油漏れが発生するよりも漏油量を低減させることができる。つまり万一の事故の際、二次災害が発生する可能性を抑えると共に、漏れた油の回収作業等の時間やコストを低減させることができる。
【0055】
[実施形態5]
図5は本実施形態5による油入変圧器にC字形補強材を固着した様子を示すタンク側面図である。
【0056】
前述した実施形態4では下部フランジ接合部16のフランジ接合部補強装置10の「取付け間隔L2」を上部フランジ接合部15のフランジ接合部補強装置10の「取付け間隔L1」よりも狭くすることにより、下部フランジ接合部16の強度を上部フランジ接合部15に対して高くしたが、本実施形態5では、上部フランジ接合部15に取付けるフランジ接合部補強装置10に対して、下部フランジ接合部16に取付けるフランジ接合部補強装置11の1個あたりの体格を大きくすることによって強度を強くし、下部フランジ接合部16としての全体の強度を上部フランジ接合部15の全体の強度よりも高めるようにしたものである。
【0057】
このように構成された本実施形態5においては、実施形態4の効果と同様に、内部事故発生による漏油量を低減できるので二次災害が発生する可能性を抑えると共に、漏れた油の回収作業の時間やコストを低減させることができる。さらに、下部フランジ接合部16に取付けるフランジ接合部補強装置11の個数は、実施形態4の下部フランジ接合部に取付けるフランジ接合部補強装置10より少なくて済むので、前述した実施形態4に比べて取付け作業時間を短縮することができる。
【0058】
[変形例]
なお、以上述べた実施形態1ないし5では油入電気機器として油入変圧器に適用した例で説明したが、本発明は油入変圧器以外の電気機器、例えば油入リアクトル等の油入電気機器に適用してもよく、また、電気機器タンクのフランジ接続に替えて対向する管同士のフランジ接続に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
2,3,4…C字形補強材、2a,3a,4a…第1の補強材(上部補強材)、2b,3b,4b…第2の補強材(下部補強材)、2c,3c……第3の補強材(連結補強材)、2c…第3の補強材(連結補強材)の上端部、2c…第3の補強材(連結補強材)の下端部、3c…第3の補強材(連結補強材)の上端部、3c…第3の補強材(連結補強材)の下端部、4b…第2の補強材(下部補強材)の上端部、4b…第2の補強材(下部補強材)の下端部、5…下部タンク補強ビーム、5R…補強ビームのコーナー部、6…上部タンクフランジ(または、一方の管のフランジ)、6s…フランジ外周部、7…下部タンクフランジ(または、他方の管のフランジ)、7s…フランジ外周部、8…上部タンク側板、9…下部タンク側板、10,10…「フランジ接合部補強装置」(C字形補強材)、11…「フランジ接合部補強装置」(C字形補強材)、12…上部タンク、13…中タンク、14…下部タンク15…上部のタンク分割接合部、16…下部のタンク分割接合部、A1…フランジ接合部、L1…取付け間隔、L2…取付け間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の管またはタンクの端部にそれぞれ設けたフランジ同士を突き合わせ、そのフランジ突き合わせ部を溶接するとともに、前記フランジ突き合わせ部を外側から挟持して補強するようにしたフランジ接合部補強装置であって、
前記フランジ接合部補強装置は、一方の管またはタンクの側面およびフランジ側面にそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定された第1の補強材と、他方の管またはタンクの側面およびフランジにそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも大きい寸法に選定された第2の補強材と、これら第1の補強材および第2の補強材にそれぞれ溶接固着され両者を連結する第3の補強材とから構成されたことを特徴とするフランジ接合部補強装置。
【請求項2】
対向配置された一対の管またはタンクの端部にそれぞれ設けたフランジ同士を突き合わせ、そのフランジ突き合わせ部を溶接するとともに、前記フランジ突き合わせ部を外側から挟持して補強するようにしたフランジ接合部補強装置であって、
前記フランジ接合部補強装置は、一方の管またはタンクの側面およびフランジ側面にそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定された第1の補強材と、他方の管またはタンクの側面およびフランジにそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定された第2の補強材と、これら第1の補強材および第2の補強材にそれぞれ溶接固着され両者を連結する第3の補強材とから構成されたことを特徴とするフランジ接合部補強装置。
【請求項3】
対向配置された一対の管またはタンクの端部にそれぞれ設けたフランジ同士を突き合わせ、そのフランジ突き合わせ部を溶接するとともに、前記フランジ突き合わせ部を外側から挟持して補強するようにしたフランジ接合部補強装置であって、
前記フランジ接合部補強装置は、一方の管またはタンクの側面およびフランジ側面にそれぞれ溶接固着されるとともに、当該管またはタンクの側面からフランジ突き合わせ部の外周部までの寸法よりも小さい寸法に選定されたほぼ三角形の第1の補強材と、一端を前記第1の補強材に溶接固着され、他端を前記他方の管またはタンクの側面に固定された補強ビームのフランジ側の面に溶接固着された第2の補強材と、から構成されたことを特徴とするフランジ接合部補強装置。
【請求項4】
据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部をフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器において、
前記フランジ接合部補強装置を、
前記上下方向に少なくとも分割されたタンクのうち、上部に位置するタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形状されるとともに、当該上部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第1の補強材と、前記上部のタンクに隣接する下部のタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出るように形成されるとともに、当該下部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第2の補強材と、前記第1の補強材との接触面および前記第2の補強材との接触面にそれぞれ溶接されることにより前記第1の補強材と第2の補強材とを連結する第3の補強材と、により構成したことを特徴とする油入電気機器。
【請求項5】
据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部をフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器において、
前記フランジ接合部補強装置を、
前記上下方向に少なくとも分割されたタンクのうち、上部に位置するタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形状されるとともに、当該上部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第1の補強材と、前記上部のタンクに隣接する下部のタンクのフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形成されるとともに、当該下部のタンクのフランジおよび側板にそれぞれ溶接によって接合される第2の補強材と、前記第1の補強材との接触面および前記第2の補強材との接触面にそれぞれ溶接されることにより前記第1の補強材と第2の補強材とを連結する第3の補強材と、により構成したことを特徴とする油入電気機器。
【請求項6】
据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部をフランジ接合部補強装置により補強し、さらに、下部タンク側板に前記フランジ接合部と近接してタンク補強ビームを設けた油入電気機器において、
前記フランジ接合部補強装置を、
前記上下方向に少なくとも分割されたタンクの端部に設けられた上部タンクフランジ接合部よりも外側に突き出ないように形状されるとともに、当該上部タンクフランジおよび上部タンク側板にそれぞれ溶接によって接合される第1の補強材と、一端を前記第1の補強材との接触面に溶接によって接合されるとともに、他端を前記タンク補強ビームの上面に溶接によって接合される第2の補強材と、により構成したことを特徴とする油入電気機器。
【請求項7】
前記油入電気機器のタンクを据付面の上下方向に3分割以上に分割した場合、上部のタンク分割接合部に取付けられたフランジ接合部補強装置と、下部のタンク分割接合部に取付けられたフランジ接合部補強装置とをほぼ同じ強度とし、かつ、下部のタンク分割接合部に取付けられた補強材の取付け間隔を上部のタンク分割接合部に取付けられた補強材の間隔よりも狭くすることにより下部のタンク分割接合部の強度を高めたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の油入電気機器。
油入電気機器。
【請求項8】
前記油入電気機器タンクを据付面の上下方向に3分割以上に分割した場合、上部のタンク分割接合部に取付けられた1個あたりのフランジ接合部補強装置の強度よりも、下部のタンク接合部に取付けられた1個あたりのフランジ接合部補強装置の強度を強くすることにより、上部のタンク分割接合部の強度よりも下部のタンク分割接合部の強度を高めたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の油入電気機器。
【請求項9】
据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、当該タンクのフランジ接合部を第1の補強材、第2の補強材および第3の補強材とに3分割構成としたフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器のフランジ接合部補強方法において、
前記第1の補強材を、前記タンク接合部フランジよりも外側に突き出ないように形状して上部タンクフランジとの接触面および上部タンク側板との接触面にそれぞれ溶接によって接合し、前記第2の補強材を、前記タンク接合部フランジよりも外側に突き出るように形成して下部タンクフランジとの接触面および下部タンク側板との接触面をそれぞれ溶接によって接合し、これら第1の補強材および第2の補強材の溶接固着後に、前記タンク接合部のフランジ外周を溶接し、さらにその後、前記第3の補強材と前記第1の補強材との接触面、前記第3の補強材と前記第2の補強材との接触面をそれぞれ溶接によって接合することを特徴とする油入電気機器のフランジ接合部補強方法。
【請求項10】
据付面の上下方向に少なくとも2分割されたタンクの内部に電器本体および絶縁油を収納するとともに、下部に位置するタンクの側面に前記フランジ接合部と近接してタンク補強ビームを設け、さらに、当該タンクのフランジ接合部を、第1の補強材および第2の補強材とに二分割構成としたフランジ接合部補強装置により補強するようにした油入電気機器のフランジ接合部補強方法において、
前記第1の補強材を、前記タンク接合部フランジよりも外側に突き出ないように形状して上部タンクフランジとの接触面および上部タンク側板との接触面にそれぞれ溶接によって接合し、その後前記タンク接合部のフランジ外周を溶接し、さらにその後、前記第2の補強材の一端を前記第1の補強材に溶接し、前記第2の補強材の他端を前記タンク補強ビームに溶接することを特徴とする油入電気機器のフランジ接合部補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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