説明

フランジ継手の修理工法及び修理用治具

【課題】漏洩が検知されたか或いは漏洩の懸念があるフランジ継手に対して、速やかに漏洩を抑止するか、或いは漏洩のリスクを排除すること。
【解決手段】帯状の封止材1の両端を接合してリング状にする工程と、リング状にした封止材1をフランジ外周F1に被せる工程と、締め付けバンド2を封止材1の外側に巻回して止め具3を介してリング状にし、締め付けバンド2を締め付けた後、止め具3を固定する工程と、修理対象のフランジ継手Fのボルト・ナットF3における漏洩を確認する工程と、漏洩が確認された箇所のボルト・ナットF3を取り外し、ボルト・ナットF3のボルト孔に修理用治具10を挿入する工程と、修理用治具10を介してボルト孔に樹脂シール材を充填する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ継手の漏洩を修理するための工法及びそれに用いられる修理用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体輸送を行う既設配管の漏洩原因の一つに継手部の気密性低下を挙げることができる。特に、フランジ継手の場合は、継手部に介在するパッキン材の老朽化や継手部を接合するボルト・ナットの経時的な緩みなどによって気密性が低下して漏洩が生じる。
【0003】
フランジ継手の漏洩修理工法としては、フランジ外周を環状のリング部材によって囲繞してシール補強する工法(下記特許文献1参照)、或いは、フランジ継手を囲むカバー枠内に樹脂などのシール材を充填させる工法(下記特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−15188号公報
【特許文献2】特開昭57−116992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フランジ継手の漏洩を修理するに際して、従来技術のような工法を採用するためには、既設配管の個々のフランジ継手に対してリング部材やカバー枠といった個別資材を用意する必要がある。フランジ継手には複数の規格があるため、漏洩が検知されたか或いは漏洩の懸念がある個々のフランジ継手に対して、現場で寸法を確認してから、その寸法に応じたリンク部材やカバー枠を製作することになり、その製作に時間を要し、その間漏洩や漏洩のリスクが継続し続ける問題があった。また、フランジ継手の漏洩を修理するに際して、バルブピット内などの狭隘部や他の配管などの既設構造物との離間距離が確保できない現場があり、このような現場においては従来工法では施工ができない場合があった。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、漏洩が検知されたか或いは漏洩の懸念があるフランジ継手に対して、速やかに漏洩を抑止するか、或いは漏洩のリスクを排除することができること、狭隘部や既設構造物との離間距離が確保できない現場であっても円滑に修理作業を施工することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明によるフランジ継手の修理工法は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0008】
帯状の封止材の両端を接合してリング状にする工程と、リング状にした前記封止材をフランジ外周に被せる工程と、締め付けバンドを前記封止材の外側に巻回して止め具を介してリング状にし、該締め付けバンドを締め付けた後、前記止め具を固定する工程と、修理対象のフランジ継手のボルト・ナットにおける漏洩を確認する工程と、漏洩が確認された箇所のボルト・ナットを取り外し、該ボルト・ナットのボルト孔に修理用治具を挿入する工程と、前記修理用治具を介して前記ボルト孔に樹脂シール材を充填する工程とを有し、前記修理用治具は、前記ボルト孔に挿入されるねじ軸部と、前記ねじ軸部の一端側に固定又は螺合される第1ナット部と、前記ねじ軸部の他端側に螺合される第2ナット部とを備え、前記ねじ軸部には前記ボルト孔に樹脂を充填させる樹脂注入溝が軸方向に沿って設けられ、前記第2ナット部には前記樹脂注入溝に直接又は前記ねじ軸部のねじ溝を介して連通する接続孔が複数設けられ、複数の前記接続孔の一つに樹脂シール材注入器を接続すると共に、前記接続孔の残りの全てを栓で塞ぐことを特徴とするフランジ継手の修理工法。
【0009】
また、本発明によるフランジ継手の修理用治具は、以下の構成を具備している。
【0010】
フランジ継手のボルト孔に樹脂シール材を充填させるための修理用治具であって、前記ボルト孔に挿入されるねじ軸部と、前記ねじ軸部の一端側に固定又は螺合される第1ナット部と、前記ねじ軸部の他端側に螺合される第2ナット部とを備え、前記ねじ軸部には前記ボルト孔に樹脂を充填させる樹脂注入溝が軸方向に沿って設けられ、前記第2ナット部には前記樹脂注入溝に直接又は前記ねじ軸部のねじ溝を介して連通する接続孔が複数設けられ、複数の前記接続孔の一つに樹脂シール材注入器が接続されると共に、前記接続孔の残りの全てが栓で塞がれることを特徴とする修理用治具。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明は、様々な寸法を有するフランジ継手に対して、帯状の封止材の両端を接合してリング状にし、その外側を締め付けバンドで締め付けて固定するので、現場での対応で速やかにフランジ継手の漏洩を抑止することができる。そして、ボルト孔に漏洩が移行した場合は、ボルト・ナットを修理用治具に差し替えてボルト孔に樹脂シール材を充填させることができるのでフランジ継手の漏洩を抑止することができる。
【0012】
また、修理用治具には、第2ナット部に接続孔が複数設けられているので、第2ナット部を締め付けた場合に複数の接続孔のうち接続し易いものに樹脂シール材注入器を接続して、他の接続孔を栓で塞ぐことができ、樹脂シール材注入時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る修理用治具の構造及びフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1〜6は、本発明の一実施形態に係るフランジ継手の修理工法における一工程を示した説明図である。フランジ継手Fは、互いに突き合わされた一対のフランジF2がボルト・ナットF3で接合されている。既設の配管Pのフランジ継手Fにおいて漏洩が確認された場合には、図1に示すように、先ず第1の工程として、帯状の封止材1の両端を接合してリング状にする。封止材1としては、例えば、弾性があり比較的伸びの少ないゴム製の帯状板材を用いることができる。封止材1の接合に際しては接着剤を用い、接着剤が硬化するまで所定時間(5分程度)養生を行う。更に、接合箇所にシリコン樹脂を10mm〜20mm塗布して所定時間(10分程度)養生することで、接合箇所からの漏洩を抑止することが可能になる。
【0015】
次の工程では、図2に示すように、リング状にした封止材1をフランジ外周F1に被せる。この際、フランジ外周F1に検漏液を塗って漏洩箇所を特定し、封止材1の接合箇所1Aを特定した漏洩箇所から90°回した位置に合わせることが好ましい。また、シリコン樹脂を接合箇所1Aに塗布した場合には、シリコン樹脂の塗布面をフランジ外周側に裏返して被せることが好ましい。
【0016】
次の工程では、図3に示すように、締め付けバンド2を封止材1の外側に巻回して止め具3を介してリング状にし、締め付けバンド2を締め付けた後、止め具3を固定する。締め付けバンド2としては、金属製の帯状薄板部材を用いることができる。止め具3は、金属製の扁平な筒状部材で構成することができる。止め具3内に一方側から締め付けバンド2の一端を挿入して通過させた後に先端を折り曲げ、締め付けバンド2の他端を止め具3内に他方側から挿入して締め付けバンド2をリング状にする。締め付けバンド2の他端側を図示の矢印のように引っ張ることで封止材1に締め付け力を付加する。十分な締め付け力が付加された状態で止め具3を固定する。止め具3には止めねじ3Aをねじ込むねじ孔が設けられており、この止めねじ3Aをねじ込むことで締め付けベルト2を締め付け状態で固定することができる。
【0017】
図示の例では、封止材1の接合箇所1Aの上にフランジ外周F1の曲率に合わせて湾曲させた金属板4を貼り付け、金属板4の上に止め具3を配置している。また、図示の例では、止め具3を2個連続して設けている。止め具3を2個設けることで、締め付け力に対しての締め付けバンド2の緩みを抑止することができる。また、金属板4を止め具3の下に敷くことで、封止材1を傷付けること無く、フランジ全周を均一に締め付けることができる。
【0018】
次の工程では、修理対象のフランジ継手Fのボルト・ナットF3における漏洩を確認する。フランジ外周F1からの漏洩を封止材1と締め付けバンド2によって抑制した場合に、ボルト孔に漏洩が移行することが考えられるので、フランジ外周F1に封止材1を被せて締め付けバンド2で締め付けた後、ボルト・ナットF3の周囲に検漏液を塗り、ボルト孔で漏洩が生じているか否かを確認する。
【0019】
漏洩が確認され、漏洩箇所が特定できた場合には、図4に示すように、漏洩が確認された箇所のボルト・ナットF3を取り外し、ボルト・ナットF3のボルト孔に修理用治具10を挿入する。
【0020】
図5は、本発明の実施形態における修理用治具10の具体的な構成を示した説明図である(同図(a)が修理用治具10の側面図、同図(b)が修理用治具10の正面図を示している)。修理用治具10は、ボルト・ナットF3と同様に一対のフランジF2を締結する締結具の構成を有しており、ボルト孔に挿入されるねじ軸部11と、ねじ軸部11の一端側に固定又は螺合される第1ナット部12と、ねじ軸部12の他端側に螺合される第2ナット部13とを備えている。ねじ軸部11は全長に亘ってねじ溝11Aが設けられていると共に、ボルト孔に樹脂を充填させる樹脂注入溝11Bが軸方向に沿って設けられている。第2ナット部13には樹脂注入溝11Bに直接又はねじ軸部11のねじ溝11Aを介して連通する接続孔13Aが複数設けられている。そして、複数の接続孔13Aの一つに樹脂シール材注入器が接続され、接続孔13Aの残りの全ては栓14で塞がれている。
【0021】
図6は、修理用治具10を介してボルト孔に樹脂シール材を充填されている状態を示している。修理用治具10を漏洩が確認された箇所のねじ孔に装着し、第1ナット部12と第2ナット部13とを適度に締め付けた状態で、第2ナット部13の一つの接続孔13Aに樹脂シール材注入器20を接続する。樹脂シール材注入器20は、例えば、ホース21、第1バルブユニット22、圧力計ユニット23、第2バルブユニット24を介して接続することができる。
【0022】
接続孔13Aの一つに樹脂シール材注入器20を接続して、他の接続孔13Aを栓14で塞いだ後に、樹脂シール材注入器20を操作して樹脂シール材の注入を開始する。この際、圧力計ユニット23の圧力計で注入圧力を確認しながら、第1ナット部12側から樹脂シール材が滲み出てきたら、第2バルブユニット24のバルブを閉めて、第1ナット部12と第2ナット部13を増締めする。そして、その後第2バルブユニット24を再度開き、樹脂シール材注入器20を操作して所定の充填圧力まで加圧注入を行う。樹脂シール材注入器20は、圧力計ユニット23での圧力が1.0mmPaを超えない範囲で使用するのが好ましい。充填圧力は、配管Pの輸送圧力に応じて0.3〜1.0MPaに設定することができる。
【0023】
このような特徴を有する本発明の実施形態に係るフランジ継手の修理工法によると、様々な寸法を有するフランジ継手Fに対して、帯状の封止材1の両端を接合してリング状にし、その外側を締め付けバンド2で締め付けて固定するので、現場での対応で速やかにフランジ継手Fの漏洩を抑止することができる。そして、ボルト孔に漏洩が移行した場合は、ボルト・ナットF3を修理用治具10に差し替えてボルト孔に樹脂シール材を充填させることができるのでフランジ継手Fの漏洩を抑止することができる。また、バルブピット内などの狭隘部や他の配管などの既設構造物との離間距離が確保できない現場であっても円滑に施工を行うことが可能である。
【0024】
更に、修理用治具10には、第2ナット部13に接続孔13Aが複数設けられているので、第2ナット部13を締め付けた場合に複数の接続孔13Aのうち接続し易いものに樹脂シール材注入器20を接続して、他の接続孔を栓14で塞ぐことができ、樹脂シール材注入時の作業性を向上させることができる。
【0025】
なお、前述した説明では、フランジ継手において既に漏洩が発生している場合を例にして説明したが、これに限らず、未だ漏洩が発生していないが漏洩のリスクがある場合の修理にも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:封止材,1A:接合箇所,
2:締め付けバンド,3:止め具,3A:止めねじ,4:金属板,
10:修理用治具,
11:ねじ軸部,11A:ねじ溝,11B:樹脂注入溝,
12:第1ナット部,13:第2ナット部,13A:接続孔,14:栓,
20:樹脂シール材注入器20,21:ホース,22:第1バルブユニット,23:圧力計ユニット,24:第2バルブユニット,
F:フランジ継手,F1:フランジ外周,F2:フランジ,F3:ボルト・ナット,P:配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の封止材の両端を接合してリング状にする工程と、
リング状にした前記封止材をフランジ外周に被せる工程と、
締め付けバンドを前記封止材の外側に巻回して止め具を介してリング状にし、該締め付けバンドを締め付けた後、前記止め具を固定する工程と、
修理対象のフランジ継手のボルト・ナットにおける漏洩を確認する工程と、
漏洩が確認された箇所のボルト・ナットを取り外し、該ボルト・ナットのボルト孔に修理用治具を挿入する工程と、
前記修理用治具を介して前記ボルト孔に樹脂シール材を充填する工程とを有し、
前記修理用治具は、前記ボルト孔に挿入されるねじ軸部と、前記ねじ軸部の一端側に固定又は螺合される第1ナット部と、前記ねじ軸部の他端側に螺合される第2ナット部とを備え、前記ねじ軸部には前記ボルト孔に樹脂を充填させる樹脂注入溝が軸方向に沿って設けられ、前記第2ナット部には前記樹脂注入溝に直接又は前記ねじ軸部のねじ溝を介して連通する接続孔が複数設けられ、複数の前記接続孔の一つに樹脂シール材注入器を接続すると共に、前記接続孔の残りの全てを栓で塞ぐことを特徴とするフランジ継手の修理工法。
【請求項2】
前記封止材の接合箇所の上にフランジ外周の曲率に合わせて湾曲させた金属板を貼り付け、該金属板の上に前記止め具を配置したことを特徴とする請求項1記載のフランジ継手の修理工法。
【請求項3】
フランジ継手のボルト孔に樹脂シール材を充填させるための修理用治具であって、
前記ボルト孔に挿入されるねじ軸部と、
前記ねじ軸部の一端側に固定又は螺合される第1ナット部と、
前記ねじ軸部の他端側に螺合される第2ナット部とを備え、
前記ねじ軸部には前記ボルト孔に樹脂を充填させる樹脂注入溝が軸方向に沿って設けられ、前記第2ナット部には前記樹脂注入溝に直接又は前記ねじ軸部のねじ溝を介して連通する接続孔が複数設けられ、
複数の前記接続孔の一つに樹脂シール材注入器が接続されると共に、前記接続孔の残りの全てが栓で塞がれることを特徴とする修理用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32802(P2013−32802A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168773(P2011−168773)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(593080294)株式会社カンドー (20)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】