説明

フランジ継手構造

【課題】 フランジ継手構造において、耐熱性のガスケットによりフランジ接合面のシール性を維持し、かつ、フランジ間の電気絶縁性を確保することにある。
【解決手段】 一対のフランジ3a、bの接合面に絶縁性と耐熱性を有する板状のガスケット61を装着し、フランジ3a、bを絶縁ボルト5とナット9で締結するフランジ継手構造であって、絶縁ボルト5とナット9の間に絶縁ワッシャ13を挟設し、絶縁ワッシャ13とフランジ3a、bの間を水密性を有するパッキン67で止水し、フランジ3a、bの接合面の外周を絶縁性を有する止水テープ65で止水したフランジ継手構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ継手構造に係り、特に、一対のフランジ同士の間に絶縁性と耐熱性を有するガスケットを装着するフランジ継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ガス配管などのフランジ継手構造として、一対のフランジ同士の間に絶縁ガスケットを装着し、胴部が絶縁被覆された絶縁ボルト及びナットにより締め付け、フランジと絶縁ボルト及びナットの座面との間に絶縁ワッシャを挟設し、一対のフランジ間を電気絶縁して接合することが提案されている。また、耐熱性のある絶縁膜を有する絶縁ワッシャを使用し、高温環境下、例えば、180℃で絶縁ワッシャが経時的に薄くなるクリープ現象を抑制している。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の技術は、180℃を超える温度でフランジの接合面からガスが漏出するおそれがあることについては配慮されていない。
【0004】
この点、特許文献2には、耐熱性を有する絶縁ガスケットとして、無機質鉱物と無機質繊維に有機結合材を添加してシート状に形成した絶縁ガスケットが提案されている。また、有機結合材の配合量を2〜6wt%と少量にすることで、高温域で有機結合材が炭化して電気絶縁性が劣化することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−268121号公報
【特許文献2】特開平7―11236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、無機質鉱物と無機質繊維を少量の有機結合材でシート状の絶縁ガスケットに形成することから、絶縁ガスケットが多孔質となり、大気中などの水分が絶縁ガスケットに染みこむと、フランジ間の電気絶縁性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、フランジ継手構造において、耐熱性のガスケットによりフランジ接合面のシール性を維持し、かつ、フランジ間の電気絶縁性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明のフランジ継手構造は、一対のフランジ同士の接合面に絶縁性と耐熱性を有する板状のガスケットを装着し、フランジ同士をボルト及びナットで締結してなるフランジ継手構造であって、ボルトの少なくとも一方の端部にねじ部が形成され、ボルトの胴部には絶縁性の被膜が形成され、ボルト及びナット間に絶縁ワッシャが挟設され、絶縁ワッシャとフランジの間に水密性を有するリング状の弾性部材を有してなり、接合面の外周に絶縁性を有する止水テープが貼着したことを特徴とする。
【0009】
これによれば、フランジ接合面のシール性を耐熱性を有するガスケットで確保できることから、例えば、火災などの熱がガスケットに加わる状況においても、フランジ接合面のシール性を維持できる。さらに、フランジ同士の電気絶縁性を確保できることから、フランジ間に迷走電流などが流れることを抑制できる。また、フランジ同士の接合面とボルト孔の目地部の水密性を弾性部材で確保し、フランジ接合面の外周の水密性を止水テープで確保できることから、耐熱性のガスケットへの水の染み込みを抑制でき、フランジ間の絶縁性を一層確保できる。
【0010】
この場合において、弾性部材に、ボルトに接触する接触面と、フランジ側から絶縁ワッシャ側にかけて傾斜した傾斜面を形成し、絶縁ワッシャのフランジ側の内周に、傾斜面の形状に応じて面取部を形成することができる。これによれば、絶縁ボルトのねじ山から侵入する水分を、弾性部材に形成した傾斜面に沿ってボルト孔の目地部の外側に導くことができ、ボルト孔の目地部から水分が侵入し難い構造にできることから、フランジ間の絶縁性をより一層確保できる。
【0011】
また、ガスケットと止水テープの間の接合面に充填材を充填することができる。また、ガスケットをフランジのボルト孔の内側の接合面に配置し、ガスケットの外周と前記ボルト孔の間のフランジ接合面に、絶縁性と水密性を有するOリングが装着することができる。
【0012】
これによれば、止水テープによる水密性が維持できない場合、例えば、貼着後の時間経過により止水テープの粘着性が低下するおそれがある場合であっても、充填材やOリングにより接合面の水密性が維持でき、フランジ間の絶縁性をより一層確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フランジ継手構造において、耐熱性のガスケットによりフランジ接合面のシール性を維持でき、かつ、フランジ間の電気絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1のフランジ継手構造の部分断面図である。
【図2】実施形態1の変形例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2のフランジ継手構造の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、ガス配管を例として説明するが、本発明のフランジ継手構造はこれに限定されず、他の流体が通流する配管に使用できる。
【0016】
(実施形態1)
図1に実施形態1のフランジ継手構造の部分断面図を示す。図示のとおり、実施形態1のフランジ継手構造は、結合対象である一対の金属製の配管1a、1bの一端に形成された一対のフランジ3(a、b)同士の間に、板状のガスケット61が装着されるようになっている。配管1a、1bは、例えば、地中に埋設された配管からの地上への立ち上がり部に設けられるものである。配管1aは、例えば、差し込み溶接式フランジのフランジ3aに配管1aを差し込み、溶接位置2aで溶接されている。配管1bは、例えば、突き合わせ溶接式フランジのフランジ3bの首部に配管1bを突き合わせ、溶接位置2bで溶接されている。フランジ3a、bは金属製の板状部材によりリング状に形成されている。フランジ3a、bの外周側には、絶縁ボルト5が挿入されるボルト孔7が複数形成されている。なお、ボルト孔7の数はフランジの寸法などに応じて適宜選択できる。
【0017】
ガスケット61は板状に形成され、絶縁性と耐熱性を有している。ガスケット61はアスベストを含有しないガスケットが好ましく、例えば、無機繊維と有機繊維に充填材を加えゴム状のバインダで形成したものや、特殊耐熱繊維に充填材を加え、アクロニトリル系合成ゴムや耐油性膨潤系合成ゴムなどのバインダで形成した耐火性を有するガスケットを使用できる。ガスケット61には、図示していないボルト孔が形成され、絶縁ボルト5を挿入できるようになっている。
【0018】
絶縁ボルト5は、例えば、両ねじボルトであり、絶縁ボルト5の両端にねじ部が形成されている。絶縁ボルト5両端のねじ部の間の非ねじ部(胴部)には、ナイロン製などの絶縁被膜11が形成されている。絶縁ボルト5の両端には、それぞれナット9が螺合されている。これにより、フランジ3a、bは締結されている。それぞれのナット9の座面とフランジ3a、bの締付面の間には、耐熱性と絶縁性を有する絶縁ワッシャ13が挟設されている。絶縁ワッシャ13は、例えば、耐熱性セラミックスに強化剤としてガラス繊維を加え、ホウ酸系やリン酸系のバインダで結合して形成されている。絶縁ワッシャ13とそれぞれのナット9の座面の間には、平座金14が装着されている。なお、絶縁ボルト5に使用するボルトは両ねじボルトに限定されず、一方の端部にねじ部を形成し、頭部を有する六角ボルトなどを用いることができる。
【0019】
フランジ3の接合面の隙間には充填材63が充填されている。充填材63は、例えば、シリコン製などの充填材であり、水密性を有し、フランジ3の接合面の凹部を埋めるようになっている。フランジ3の外周面には、フランジ3接合面にそって止水テープ65が一連に貼着されている。止水テープ65は、例えば、ポリエチレンの基材と合成ゴム系の粘着材などにより形成されている。
【0020】
絶縁ワッシャ13とフランジ3の接触面の間には、水密性と弾性を有するリング状のパッキン67が挟み込まれている。パッキン67は、例えば、シリコンで形成されている。パッキン67は、断面が略三角形に形成され、一面が絶縁ボルト5と接触するようになっている。パッキン67の他の面は、フランジ3側から絶縁ワッシャ13側にかけて傾斜するようになっている。絶縁ワッシャ13のパッキン67と接触する面は、パッキン67の傾斜に応じて面取部69が形成されている。なお、絶縁ワッシャ13やパッキン67の形状は本実施形態に限定されるものではなく、例えば、絶縁ワッシャ13やパッキン67を面取部69や傾斜面のないOリングなど適宜選択できる。
【0021】
このように構成される実施形態1の作用を説明する。一対のフランジ3の接合面に絶縁性と耐熱性を有するガスケット61を装着し、フランジ3a、b間の絶縁性と耐熱性を確保する。また、充填材63及び止水テープ65でフランジ接合面をシールし、大気中の水分などが一対のフランジ3の接合面から侵入することを抑制する。さらに、フランジ3接合面に水分が溜まり、フランジ3間の絶縁性が低下することを防止する。また、それぞれのナット9で絶縁ワッシャ13を押圧し、面取部69でボルト孔7側へパッキン67を押圧する。これにより、ボルト孔7と絶縁ボルト5の隙間を、パッキン67で塞ぎ、ボルト孔7から水分が侵入し難い構造にできる。
【0022】
これによれば、フランジ3接合面のシール性を耐熱性を有するガスケット61で確保できることから、火災などの800℃程度の高温雰囲気でも、フランジ3接合面のシール性を維持できる。さらに、フランジ3a、b間の抵抗値を、例えば、1MΩ以上に維持して、フランジ3同士の電気絶縁性を確保できることから、フランジ3a、b間に迷走電流などが流れることを抑制できる。また、フランジ3同士の接合面とボルト孔7の目地部の水密性をパッキン67で確保し、フランジ3接合面の外周の水密性を止水テープ65で確保できることから、耐熱性のガスケット61への水の染み込みを抑制でき、フランジ3間の絶縁性を一層確保できる。さらに、絶縁ボルト5のねじ山から侵入する水分は、パッキン67に形成された傾斜面に沿ってボルト孔7の目地部の外側に導き、ボルト孔7の目地部から水分が侵入し難い構造にできることから、フランジ3間の絶縁性をより一層確保できる。
【0023】
なお、フランジは本実施形態に限定されるものではなく、一対のフランジ3a同士又は一対のフランジ3b同士、さらには、一体フランジや遊合形フランジ(ラップジョイントフランジ)など適宜選択できる。また、フランジ座も平面座(レイズドフェイス/RF)など適宜選択できる。
【0024】
また、充填材63及び止水テープ65は電気絶縁性と水密性を確保できればよく、本実施形態の材質などに限定されるものではない。例えば、止水テープ65の基材を塩化ビニル、ポリエステルにペトロラタムや乾性油を加えたもの、ガラスクロスにシリコーン樹脂を加えたものとし、粘着材を合成ゴム系のものなどで形成できる。
【0025】
また、止水テープ65で水の侵入を抑制できる場合は充填材63を省略できる。しかし、止水テープ65の粘着力が経時的に低下するおそれがある場合は、充填材63を充填することが好ましい。
【0026】
なお、絶縁ワッシャ13を面取りすると、フランジ3a、bと絶縁ワッシャ13の接触面積が減少して、それぞれのナット9の締付力に耐えられず、絶縁ワッシャ13が破損するおそれがある。この場合、図2に示すとおり、フランジ3と絶縁ワッシャ13の間に座金71を挟設し、この座金71に面取部を形成することができる。なお、図2は、絶縁ボルト5がフランジ3a、bに接触しても、絶縁被膜11により絶縁性が維持されることを示すため、フランジ接合面を境として絶縁ボルト5の位置を変えて示したものである。
【0027】
(実施形態2)
図3に、本発明の実施形態2のフランジ継手構造の部分断面図を示す。実施形態2が実施形態1と相違する点は、ガスケット61をボルト孔7の位置の内側に装着し、ガスケット61と絶縁ボルト5の間に絶縁性と水密性を有するOリング73を配置している点である。その他の構成は実施形態1と同じであるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
これによれば、Oリング73がガスケット61の外周側を止水できるので、例えば、止水テープ65が剥がれた場合であっても、Oリング73がガスケット61への水分の染み込みを抑制できる。
【0029】
なお、止水テープ65の剥がれなどにより、フランジ3の接合面に水分が侵入する場合、一時的にフランジ3は導通状態になるおそれがある。しかし、Oリング73によりガスケット61の水密性を維持していることから、侵入した水分がガスケット61に染み込むことが抑制される。そのため、多孔質のガスケット61に染み込む場合に比べ水分が蒸発しやすく、短時間で絶縁状態を回復できる。また、Oリング73は絶縁性と水密性を有する周知のOリングを使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
3a フランジ
3b フランジ
5 絶縁ボルト
9 ナット
13 絶縁ワッシャ
61 ガスケット
65 止水テープ
67 パッキン
73 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジ同士の接合面に絶縁性と耐熱性を有する板状のガスケットを装着し、前記フランジ同士をボルト及びナットで締結してなるフランジ継手構造であって、
前記ボルトの少なくとも一方の端部にねじ部が形成され、前記ボルトの胴部には絶縁性の被膜が形成され、前記ボルト及び前記ナット間に絶縁ワッシャが挟設され、該絶縁ワッシャと前記フランジの間に水密性を有するリング状の弾性部材を有してなり、
前記接合面の外周に絶縁性を有する止水テープが貼着されてなるフランジ継手構造。
【請求項2】
請求項1に記載のフランジ継手構造において、
該弾性部材には、前記ボルトに接触する接触面と前記フランジ側から前記絶縁ワッシャ側にかけて傾斜した傾斜面が形成され、前記絶縁ワッシャの前記フランジ側の内周には、前記傾斜面の形状に応じて面取部が形成されていることを特徴とするフランジ継手構造。
【請求項3】
請求項2に記載のフランジ継手構造において、
前記絶縁ワッシャと前記フランジの間であって、前記弾性部材の外周に座金が挟設され、前記面取部は前記座金の前記弾性部材との接触面に形成されていることを特徴とするフランジ継手構造。
【請求項4】
請求項1に記載のフランジ継手構造において、
前記ガスケットと前記止水テープの間の前記接合面に充填材が充填されていることを特徴とするフランジ継手構造。
【請求項5】
請求項1に記載のフランジ継手構造において、
前記ガスケットは前記フランジのボルト孔の内側の前記接合面に配置され、前記ガスケットの外周と前記ボルト孔の間の前記接合面に、絶縁性と水密性を有するOリングが装着されていることを特徴とするフランジ継手構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−249268(P2010−249268A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100930(P2009−100930)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(391034156)大明金属工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】