フラーレンを内外壁表面に有する超分子ナノチューブ
【課題】フラーレン分子を有する分子、この分子を用いたフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に、規則的に、かつ高密度で結合した自己集積体であるナノサイズ構造体、これを用いた新規な材料の提供。
【解決手段】次の一般式(1)
[式中、R1はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して次の一般式(2)、−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4(2)(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、4は水素原子、アルキル基又はフラーレンを有する基を表し、R2及びR3の少なくとも一方のR4はフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表される基を表す。]で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体、当該分子が自己組織化してなるナノサイズ構造体、及びそれを含有してなる電荷輸送材料。
【解決手段】次の一般式(1)
[式中、R1はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して次の一般式(2)、−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4(2)(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、4は水素原子、アルキル基又はフラーレンを有する基を表し、R2及びR3の少なくとも一方のR4はフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表される基を表す。]で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体、当該分子が自己組織化してなるナノサイズ構造体、及びそれを含有してなる電荷輸送材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を内包していてもよいフラーレンが結合したヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体、それからなる自己集積体、ナノサイズ構造体、それを用いた電荷輸送材料、及び電子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、金属的な性質から半導体までの多様で優れた電気的特性を有し、また、大きな表面積や機械強度特性などから、電気電子材料から高性能樹脂補強材などに至る各種の分野において、次世代先端材料として注目が集まり、世界的な規模で実用化研究が進行中である。
一方、フラーレンは1985年にSmalleyらにより発見された炭素材料であり、炭素系半導体材料等として注目されてきたが、電子受容性を有し、ドーパントとしてカーボンナノチューブの電気的特性を大きく改良する可能性があることから、近年、カーボンナノチューブと組み合わせた、電気電子材料としての応用が研究されている。フラーレンをカーボンナノチューブのドーパントとして用いる場合、フラーレンをカーボンナノチューブの外壁表面に付着させる方法と内壁表面に付着させる方法および内外壁に付着させる方法が知られている。外壁表面に付着させる方法として、たとえば日浦らはフラーレンをイオンビームとしてカーボンナノチューブの外壁上に堆積させて薄膜トランジスタ用の半導体薄膜とする方法を提案しているが(特許文献1)複雑な工程を必要とする上、フラーレンは単にカーボンナノチューブに付着しているだけなので、デバイスとしての安定性に問題があった。
【0003】
カーボンナノチューブの内壁表面にフラーレンを付着させる方法としては、ピーポッドとしてよく知られているように、カーボンナノチューブにフラーレンを内包させる方法があるが、フラーレンを気化させてカーボンナノチューブに内包させるのに400〜600℃の高温を必要とする上(非特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)、内包されたフラーレンを安定的にカーボンナノチューブの中に閉じこめておくにはカーボンナノチューブの孔径に制限があり、例えばフラーレンC60を用いる場合にはカーボンナノチューブの外径は1nm程度とする必要があった。また、飯島らはフラーレンのエタノール溶液中にカーボンナノチューブを浸積させて室温で放置してフラーレンを内包させる方法を提案しているが(特許文献4)、カーボンナノチューブの先端部を開口するのに高温を必要とし内包させるのに長時間を要する上、たかだか50〜70%のカーボンナノチューブがフラーレンを内包するに過ぎない等、信頼性に乏しく実用性にも問題があった。
内外壁に付着させる方法として竹延らはフラーレンを蒸着して外壁上に薄膜を形成させたカーボンナノチューブを半導体薄膜として用いた薄膜トランジスタを提案しているが(特許文献5参照)この方法にも上述の特許文献1と同様の問題があった。
【0004】
また、近年、ナノテクノロジーを支える機能性ナノマテリアル構築へのアプローチとして、自己集合プロセスによるボトムアップ型の手法が注目されている。これは、例えば溶液中において、会合性を有する低分子の自発的かつ階層的な集積化を利用するといった手法である。この手法により、ベシクル、ファイバー、リボン、チューブなどの構造体が得られることが知られている。しかしながら、従来、これらのナノ構造体を構成する分子しとして用いられてきたものは、脂質などの両親媒性化合物であり、電子的、光化学的特性等に乏しく、構造体が得られても特筆すべき性質を示さない。
これに対して本発明者等は、ナノ構造体構築の基本要素としてヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)に着目し、HBC骨格に親水性置換基と疎水性置換基を導入することにより、直径約20ナノメートル、アスペクト比5000以上の超分子ナノチューブが溶液プロセスにより簡便かつ定量的に得られることを報告している(非特許文献2、特許文献6、及び特許文献7参照)。このHBCナノチューブは、π−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に配列しており、化学ドーピングにより容易に電荷キャリア(ホール)を形成し導電性を示す(抵抗率10Ωcm)。本発明者等は、様々な置換基を有するHBC誘導体分子を精密設計し、その会合挙動と得られたHBCナノチューブの導電性に及ぼす親水性置換基の種類の影響を鋭意検討した結果、親水性置換基の先端部分に、2,4,5−トリニトロフルオレノン(TNF)を導入することにより光照射により導電性が大きく変化する、すなわち光伝導性を有するHBCナノチューブが得られることを見出し先に報告している(非特許文献3、特許文献8)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−190815号公報
【特許文献2】特開2002−97010号公報
【特許文献3】特開2003−160320号公報
【特許文献4】特開2005−41716号公報
【特許文献5】特開2005−150410号公報
【特許文献6】特許第4005571号公報
【特許文献7】特許第4018066号公報
【特許文献8】特開2007−238544号公報
【非特許文献1】B. W. Smith et al, Nature 1998, 396 323-324
【非特許文献2】J. P. Hill et al, Science 2004, 304, 1481-1483
【非特許文献3】Y. Yamamoto et al, Science 2006, 314, 1761-1764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子ドナー部位及び電子アクセプター部位としてのフラーレン分子を同一分子内に有する分子、この分子を用いたドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に、規則的に、かつ高密度で結合した自己集積体であるナノサイズ構造体、これを用いた新規な材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、様々な置換基を有するヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子を精密設計し、その会合挙動と得られたHBCナノチューブの導電性に及ぼす親水性置換基の種類の影響を鋭意検討した結果、親水性置換基の先端部分に、2,4,5−トリニトロフルオレノン(TNF)を導入することにより光照射により導電性が大きく変化する、すなわち光伝導性を有するHBCナノチューブが得られることを見出し先に報告している(非特許文献2、及び特許文献3参照)。さらに検討を続けた結果、親水性置換基の先端部分に電子受容性の強いフラーレンを導入したヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体が自己組織化して、内壁表面及び外壁表面に高密度でフラーレン部分を有するナノチューブを形成することを見いだし、本発明に到達した。
本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子は、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレン分子を同一分子内に有しており、この分子を溶液中で自己集合化により容易に形成される自己集積体である超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面の両面を覆うフラーレンにより構成される。ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料はまだ知られていない。
即ち、本発明は、次の一般式(1)
【0008】
【化3】
【0009】
[式中、R1はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して次の一般式(2)、
−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4 (2)
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、R4は水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよいがR2及びR3の少なくともどちらか一方のR4は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表される基を表す。]
で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体に関する。
また、本発明は、金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体、並びにそれを含有してなる電荷輸送材料、及びそれらを含有してなる電子部品に関する。
【0010】
本発明をより詳細に説明すれば、以下のとおりとなる。
(1)前記した一般式(1)で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(2)一般式(1)のR2及びR3におけるR5及びR6が、それぞれ独立してエチレン基(−CH2CH2−)である前記(1)に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(3)一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、エステル結合で結合している前記(1)又は(2)に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(4)一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、C60フラーレンである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(5)一般式(1)のR1が、それぞれ独立して炭素数10〜30のアルキル基である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(6)一般式(1)におけるR2及びR3の少なくとも一方が、次式
−C6H4−OCH2CH2−(OCH2CH2)n−OCO−CH−フラーレン
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、CH−フラーレンは一価又は二価で炭素原子がフラーレンに結合していることを表し、フラーレンは金属を内包していてもよいフラーレンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(7)一般式(1)で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、次の式(3)
【0011】
【化4】
【0012】
で表される化合物である前記(6)に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(8)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体。
(9)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(8)に記載のナノサイズ構造体。
(10)結合が、共有結合である前記(8)又は(9)に記載のナノサイズ構造体。
(11)ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(8)〜(10)のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
(12)ナノサイズ構造体が、ナノチューブである前記(8)〜(11)のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
(13)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズの構造体を含む電荷輸送材料。
(14)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(13)に記載の電荷輸送材料。
(15)ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(13)又は(14)に記載の電荷輸送材料。
(16)ナノサイズの構造体が、ナノチューブである前記(13)〜(15)のいずれかに記載の電荷輸送材料。
(17)前記(13)〜(16)のいずれかに記載の電荷輸送材料の少なくとも1種を含有してなる電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子は、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレンを同一分子内に有しており、この分子の溶液中での自己集合化により容易に形成される超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面を覆うフラーレンにより構成される。ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料はまだ知られていない。
本発明のナノチューブは、自己集合化により容易に形成される自己集積体であり簡便な方法で製造することができ、しかもナノチューブ壁の内面及び外面の両面に高密度のフラーレン層を有しており、Liの貯蔵体や水素貯蔵体としての分子貯蔵能がすぐれているだけでなく、優れた電荷輸送能を有しており、分子導線などナノデバイスへの応用、太陽電池材料、電界効果トランジスタ材料などの電子材料として、有用な性質を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、分子の自己集積体により形成される超分子ナノチューブであって、当該ナノチューブ壁の内面及び外面の両面がフラーレンにより構成されている超分子ナノチューブ及びそのための分子を初めて提供するものである。本発明の超分子ナノチューブは、ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面及び内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料を初めて提供するものである。
【0015】
本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子について説明する。
上記の一般式(1)において、R1で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜30、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましい具体例としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシルル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられ、これらは直鎖状、分枝状又は環状の何れであってもよい。また、炭素数が10以下のアルキル基の場合は、例えばt−ブチル基のような嵩高い基が好ましい。
【0016】
上記の一般式(1)において、R2及びR3は、一般式(2)、
−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4 (2)
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、R4は水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよいがR2及びR3の少なくともどちらか一方のR4は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である。一般式(2)におけるR4で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
また、上記一般式(2)におけるR4で表されるフラーレンを有する基としては、一般式(2)のポリエチレングリコール鎖の先端の水酸基に結合できる官能基を有するフラーレンにより当該水酸基と結合することができるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基を有するフラーレンが合成の容易さから好適である。フラーレンは一般にCmとして表されており、当該Cmにおけるmは、Cmが球殻状構造を形成し得る正の整数をとりうるが、30,60,70,76,78,80,82,84,86,88,90,92,94,96が好ましく、60が特に好ましい。フラーレンは、フラーレンにフッ素原子がいくつか付加したフッ化フラーレンのように置換基が置換又は付加したものであってもよいし、フラーレンかご構造内に金属原子がいくつか内包された金属内包フラーレンなどをも用いることができる。内包される金属種としては、例えば、Ca、La、Gdなどが挙げられる。
好ましいフラーレンを有する基としては、式(4)
【0017】
【化5】
【0018】
で表されるC60フラーレンの誘導体が挙げられる。このフラーレンには金属が内包されていてもよい。
一般式(2)におけるR5及びR6におけるアルキレン基としては、例えば、炭素数が2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5の直鎖状又は分枝状の2価のアルキレン基が挙げられ、具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。また、これらのアルキレン基は物性に影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
また、前記一般式(2)におけるフェニレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基などの2価のフェニレン基であればよいが、好ましいフェニレン基としてはp−フェニレン基が挙げられる。また、これらのフェニレン基は物性に影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
前記一般式(2)におけるnは、1以上の正の整数であるが、好ましくは2以上の整数、より好ましくは2〜20、2〜10、又は2〜5が挙げられる。
【0019】
一般式(1)におけるR2及びR3の好ましい具体例としては、例えば、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)nOH、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)nOCH3等が挙げられ、中でも、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)2OH、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)3OH、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)4OH、
−C6H6OCH6CH6(OCH2CH2)2OCH3、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)3OCH3、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)4OCH3、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)3OR7[R7は、前記式(4)で表されるメタノ[60]フラーレンカルボン酸の残基]等がより好ましい例として挙げられるが、勿論これに限定されるものではない。
一般式(1)におけるR2及びR3の少なくとも一方は、R4がフラーレンを有する基でなければならない。
上記一般式(1)で表される化合物の中で、最も好ましい化合物の例としては前記した一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
本発明のナノチューブの特長をより詳細に説明するために図1に本発明の代表的な化合物の分子構造と自己組織化により形成するナノチューブの模式的構造を示した。
図1の(a)は本発明の代表的な化合物の分子構造を示している。図1(b)の左側は当該化合物の分子構造を模式的に示したものである。中心部分の多角形状の部分(原図では青色)がコロネン骨格に相当する部分であり、HBCの記号で示されている。その上部に2本突き出しているのが一般式(1)におけるR2及びR3部分に相当するポリアルキレングリコール部分(原図では赤と白で示されている。)であり、TEGの記号で示されている。左側の上部に丸く球状に示されているのがフラーレン部分(原図では黄色で示されている。)であり、C60の記号で示されている。多角形状の部分(原図では青色)の下側にぶら下がっているのが、一般式(1)におけるR1のアルキル基部分(原図では白色で示されている。)であり、C12の記号で示されている。
本発明者らは、HBC骨格に親水性置換基と疎水性置換基を導入した分子が、直径約20ナノメートル、アスペクト比5000以上の超分子ナノチューブが溶液プロセスにより簡便かつ定量的に得られることを報告している(非特許文献2、特許文献6、及び特許文献7参照)が、これと同様にHBC骨格におけるπ−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に自己集積し、そして、疎水性のR1の存在によりこれらが規則的に2分子で対を形成して、図1の(b)に中央部に示される自己集積体を形成する。そして、疎水性のR1の部分が内部の集積し、親水性のポリアルキレングリコール部分が外側になるために、その結果として親水性のR2及び/又はR3の先端部分に結合しているフラーレン部分(原図では黄色で示されている。)が、膜状の構造の外側の両方に形成されることになる。このらせん構造により全体としてナノチューブを形成する場合には、フラーレン部分はナノチューブの内壁と外壁の両方に規則的にかつ高密度で形成されることになる(図1の(b)の右側参照)。
【0021】
カーボンナノチューブにフラーレンをドーパントとして用いる場合、フラーレンをカーボンナノチューブの外壁や内壁などの表面に付着させていたが、本発明のナノチューブにおいては、フラーレンがナノチューブの構造体に共有結合で結合しているために、機械的に強いだけでなく、規則的で、かつ高密度で、ナノチューブの両方の壁に均一にドーピングできていることになる。
本発明のナノサイズ構造体であるナノチューブは、自己集積体を形成するために製造方法が簡便であるだけでなく、高密度で電気的特性に優れ、また規則的にフラーレンが配置されるために、安定した性能を有する材料を提供することができる。
【0022】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、任意の公知の方法に準じて製造することができる。例えば、特許文献6又は特許文献7に記載の方法に準じて、基R2又はR3にフラーレンを有する基を有する中間体を製造し、これを特許文献6又は特許文献7に記載の方法に準じて閉環することにより製造することができる。
また、フラーレンを有する基も公知の各種の方法により製造することができる。例えば、前記した式(4)で示されるメタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)は、Y-P. Sunらの方法(Y-P. Sun, G. E. Lawson, W. Huang, A. D. Wright, D. K. Moton Macromolecules 1999, 32, 8747-8752)などにより製造することができる。
前記した式(3)で表される化合物も公知の方法に準じて製造することができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造法の例として、例えば、前記した式(3)で表される化合物の具体的の製造方法の例を次の反応経路で示しておく。
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
まず、トシル基(Ts)で保護された化合物1を製造し、これをブロモビフェニル化して化合物2とし、これをアセチル化して化合物3を製造する。化合物3とビフェニルアセチレン誘導体とを反応させてアセチレン誘導体(化合物4)を製造し、これとテトラフェニルシクロペンタジエノン誘導体とを反応させて、ヘキサフェニルベンゼン誘導体(化合物5)を製造する。得られたヘキサフェニルベンゼン誘導体5の末端のアセトキシ基を加水分解してヒドロキシ体(化合物6)とした後、ルイス酸の存在下に環化することにより、コロネン骨格を有する化合物7とする。
得られた化合物7とフラーレンのカルボン酸誘導体(化合物8)とを、DCCなどの縮合剤の存在下にエステル化、目的の式(3)で表される化合物9を製造することができる。
【0026】
このようにして製造される本発明の一般式(1)で表される化合物は、以前に本発明者らが報告してきた側鎖に疎水性の基と親水性の基を有するヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体(HBC誘導体)(特許文献6及び7参照)と同様な挙動をとることがわかった。
即ち、トルエンなどの溶媒中で図1に模式的に示されるような自己集積体を形成し、らせん状リボン構造やチューブ構造が形成される。
このようならせん状リボン構造やチューブの形成は、本発明の一般式(1)で表される化合物が有する両親媒性とπ−πスタッキング効果により、2層からなる幅〜20nmのリボン状集積体が形成され、次いで、このリボンは、らせん状にぐるぐる巻きになると考えられる。このときの巻きの強さは基R2及びR3の部分のポリエチレングリコール鎖の水和の程度によって調整されと考えられる。
【0027】
本発明の一般式(1)で表される化合物の例として、前記式(3)で表される化合物9について、溶媒中での自己組織化を試みたところ、黄色粉末の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体を得た(後述する実施例10参照)。
次に、本発明の一般式(1)で表される化合物により形成された超分子ナノチューブの特性について検討した。
例えば、酸化シリコン絶縁膜(200nm)で覆われたシリコン基板表面を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理し、疎水性単分子膜を形成した。その上にHBC−C60ナノチューブ薄膜を作製した。チャネル長50ミクロン、チャネル幅1ミリメートルの金電極を試料上部に真空蒸着により作製し、トップコンタクト、ボトムゲート型素子を作製し、その特性を調べた。
得られた素子に、ソース−ドレイン電圧を0〜−90Vまでスイープし、ゲート電圧を0Vから−90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜のFET特性(出力特性)を測定した結果、正および負のゲート電圧印加に対し、それぞれについてFET特性が観測された。つまりこのナノチューブは電子・ホールいずれも注入及び輸送可能な同時両極性の電荷輸送特性を有するといえる。両極性トランジスタである証拠として、出力特性においては、低ゲート電圧において超線形電流が観測され、ゲート電圧の増大に伴いそれがサプレスされると同時に、線形および飽和電流領域を含むFET特性が観測されている。また、伝達特性においても、両極性FETに特徴的なV字型のカーブを示している。構造や各部位のエネルギー準位から考えて、ホールはπ−スタックしたHBC中を、電子はナノチューブ表面に形成したC60層中に誘起され、伝導していると考えられる。伝達特性曲線より求められる各移動度はホール3.4x10−7、電子1.5x10−5cm2/Vsであった。
【0028】
このように、本発明の一般式(1)で表される化合物の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体は、超分子ナノチューブを形成することができるものである。そして、当該ナノチューブは、電荷輸送能を有する。これは、この超分子ナノチューブがπ−πスタック構造を有し、かつ両方の表面に規則的に高密度でフラーレンを有していることによるものと考えられる。
このように、本発明の材料は、超分子ナノチューブを形成するに必要な親水性部分などを有し、かつπ−πスタッキング効果を有する部分を有し、さらに表面に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を有するものであり、自己集合により形成された直径約20nm程度の独立した超分子ナノチューブであって、両側に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を併せ持つ材料は本発明により初めて提供されたのである。
したがって、本発明は、本発明の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体、好ましくは超分子ナノチューブからなる電荷輸送材料を提供するものであり、本発明の電荷輸送材料は、新規な電子材料や電子部品を提供するものであり、分子導線などナノデバイスへの応用、太陽電池材料、電界効果トランジスタ(FET)材料などとして多くの電子部品材料に適用されるものである。本発明の電子部品材料は、例えば、ナノデバイス、太陽電池材料、電界効果トランジスタ(FET)材料などへ応用可能なものである。
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下に示す実施例においては、試薬は特に断らない限り、市販品をそのまま使用した。ジクロロメタン(CH2Cl2)およびブロモベンゼンはアルゴン雰囲気下にカルシウムハイドライド(CaH2)で乾燥し、使用前に蒸留した。1Hおよび13CNMRはJEOL model NM-Excalibur500スペクトロメーターを用いて298°Kで、それぞれ500MHzおよび125MHzで測定した。MALDI−TOF質量分析はApplied Biosystems BioSpectrometryTM Workstation model Voyager-DETM STRスペクトロメーターを用いて、ジスラノールをマトリックスとして測定した。電子スペクトルは温度制御機構付きJASCO model V-560 UV/VISスペクトロメーターを用いて光路長1cmの石英セルで測定した。赤外吸収スペクトルはJASCO model FT/IR-660Plusフーリエ変換赤外スベクトロメーターを用いて25℃で測定した。X線回折パターンはRigaku model RINT-2500回折計を用いてCuKαを線源として室温で測定した。走査型電子顕微鏡写真(SEM)はJEOL model JSM-6700F FE-SEMを用いて5KVで撮影した。透過型電子顕微鏡写真はPhilips model Tecnai F20電子顕微鏡を用い、Gatan slow scan CCDカメラで低線量状態下に測定した。メタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)は、Y-P. Sunらの方法(Y-P. Sun, G. E. Lawson, W. Huang, A. D. Wright, D. K. Moton Macromolecules 1999, 32, 8747-8752)により製造した。
【実施例1】
【0030】
化合物1の合成
トリエチレングリコール(20.00g,133.18mmol)をテトラヒドロフラン(THF,50ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム(10ml,2.66M水溶液)を0℃で加え、30分攪拌した。この溶液に20mlのTHFに溶解させたp−トルエンスルフォニルクロライド(5.07g,26.62mmol)を滴下し一時間攪拌して室温まで昇温し、さらに9時間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、ジクロロメタン(CH2Cl2)で抽出し、有機層を水、次いで塩酸(0.5N)、更に水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール(MeOH))により精製し、化合物1を無色油状物として得た(6.67g,収率82.24%)。
【実施例2】
【0031】
化合物2の合成
アルゴン雰囲気下、実施例1で製造した化合物1(6.00g,19.71mmol)と4−ブロモ−4−ヒドロキシビフェニル(4.46g,17.92mmol)を乾燥THF(100ml)に溶解させ、水酸化カリウム(2.01g,35.84mmol)を加えた後、19時間加熱還留させた。反応混合物を室温まで降温させた後、水を加え、CH2Cl2で抽出し、有機層を水、次いで塩酸(0.5N)、更に水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)により精製し、化合物2を白色個体として得た(4.80g,収率70%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.504(d, J=8.5Hz, 2H), 7.453(d, J=8.5Hz, 2H),
7.386(d, J=8.5Hz, 2H), 6.970(d, J=8.5Hz, 2H),
4.161(t, J=5.0Hz, 2H), 3.872(t, J=5.0Hz, 2H),
3.700(m, 6H), 3.611(t, J=4.0Hz, 2H)
【実施例3】
【0032】
化合物3の合成
アルゴン雰囲気下、実施例2で製造した化合物2を乾燥CH2Cl2(35ml)に溶解させ、0℃まで冷却した。この溶液にピリジン(1.16ml,15.74mmol)を加え、無水酢酸(1.49ml,15.74mmol)を加えて一時間攪拌し、室温まで昇温し、さらに一晩攪拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で二回、ついで水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)により精製し、化合物3を白色個体として得た(3.37g,収率76%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.506(d, J=9.0Hz, 2H), 7.452(d, J=9.0Hz, 2H),
7.387(d, J=9.0Hz, 2H), 6.963(d, J=9.0Hz, 2H),
4.211(t, J=5.0Hz, 2H), 4.156(t, J=5.0Hz, 2H),
3.865(t, J=5.0Hz, 2H), 3.696(m, 6H), 2.052(s, 3H)
【実施例4】
【0033】
化合物4の合成
アルゴン雰囲気下、実施例3で製造した化合物3(3.24g,7.64mmol)とビス−トリフェニルフォスフォパラジウムジクロライド(0.27g,0.38mmol)、ヨウ化銅(0.14g,0.76mmol)を1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)(35ml)と、ベンゼン(25ml)に溶解し、ベンゼン(25ml)に溶解した4’−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−4−ビフェニリルエチン(2.06g,7.64mmol)を滴下し、60℃で一晩加熱攪拌した。室温まで降温後、反応混合物にCH2Cl2を加えて抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液にて洗浄、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥した。デカンテーションにて硫酸ナトリウムを除去し、CH2Cl2懸濁液から白色固体状の化合物4を濾取して得た(3.13g,収率60%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.567(d, J=8.0Hz, 4H), 7.526(m, 8H), 6.982(d, J=8.0Hz, 4H),
4.219(t, J=4.5Hz, 2H), 4.168(t, J=4.5Hz, 4H),
3.873(t, J=5.0Hz, 4H), 3.690(m, 13H), 3.539(t, J=5.0Hz, 2H),
3.366(s, 3H), 2.057(s, 3H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
C41H46O9として、 計算値:[M]+ 682.3;
実測値: 682.4.
【実施例5】
【0034】
化合物5の合成
アルゴン雰囲気下、実施例4で製造した化合物4(1.00g,1.46mmol)と2,5−ジフェニル−3,4−ビス(4−n−ドデシルフェニル)シクロペンタジエノン(1.06g,1.46mmol)をジフェニルエーテル(4ml)に溶解し、350℃で 二日間加熱攪拌した。反応混合物を室温まで降温しシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)、さらに中圧液体クロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)により精製し、化合物5を白色個体として得た(1.47g,収率73%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.320(d, J=8.0Hz, 4H), 7.047(d, J=8.0Hz, 4H), 6.830(m, 18H),
6.662(d, J=8.0Hz, 4H), 6.610(d, J=8.0Hz, 4H),
4.195(t, J=4.5Hz, 2H), 4.090(t, J=4.5Hz, 4H), 3.819(m, 4H),
3.678(m, 12H), 3.515(m, 2H), 3.342(s, 3H),
2.321(t, J=4.5Hz, 4H), 2.037(s, 3H), 1.369(m, 4H),
1.236(s, 32H), 1.073(b, 4H), 0.859(t, J=7.0Hz, 6H),
MALDI−TOF−MS:m/z:
C93H115O9として、 計算値:[M+H]+ 1375.8;
実測値: 1375.5.
【実施例6】
【0035】
化合物6の合成
実施例5で製造した化合物5(300mg,0.22mmol)をメタノール(20ml)とTHF(10ml)に溶解し、水酸化カリウム(002g,0.33mmol)を水(1ml)に溶解させた溶液を加え、室温で一時間攪拌した。溶媒を留去後、残渣にCH2Cl2を加え水で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去後し、化合物6を白色固体として得た(0.27g,収率93%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.320(m, 4H), 7.046(d, J=9.0Hz, 4H), 6.827(m, 18H),
6.663(d, J=8.0Hz, 4H), 6.611(d, J=8.0Hz, 4H), 4.194(m, 4H),
3.821(m, 4H), 3.647(m, 14H), 3.513(t, J=5.0Hz, 2H),3.342(s, 3H),
2.322(t, J=8.0Hz, 4H), 1.370(m, 4H), 1.236(m, 32H), 1.071(b, 4H),
0.860(t, J=7.0Hz, 6H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
C91H113O8として、 計算値:[M+H]+ 1333.8;
実測値: 1333.8.
【実施例7】
【0036】
化合物7の合成
実施例6で製造した化合物6(300mg,0.22mmol)を乾燥CH2Cl2(100ml)に溶解し、溶液に乾燥アルゴンを10分間バブリングした後、MeNO2(4ml)に溶解した塩化鉄(III)を徐々に加え、さらに25℃で1時間攪拌した。反応混合物を攪拌しながらメタノール(200ml)中に注ぎ込み、析出した固体を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2/hot THF)で精製した。さらにTHFから再結晶して化合物7を黄色粘脹固体として得た(140mg,収率62%)。
1H−NMR(500MHz,THF−d8,55℃)δ:
8.47(s, 2H), 8.38(s, 2H), 8.23-8.07(br, 8H), 7.73(br, 4H),
7.37(br, 2H), 7.14(br, 4H), 4.30(br, 4H), 3.98(br, 4H),
3.79-3.61(m, 16H), 3.35(s, 3H), 2.88(br, 4H), 1.89(br,4H),
1.58-1.28(br, 36H), 0.85(br, 6H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
C91H100O8として、 計算値:[M]+ 1320.74;
実測値: 1320.89.
【実施例8】
【0037】
化合物9の合成
アルゴン雰囲気下、実施例7で製造した化合物7(107mg,0.081mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(62mg,0.30mmol)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)(37mg,0.30mmol)を室温で乾燥CH2Cl2−ブロモベンゼン混合溶媒(8ml)(V/V,3/1)に溶解し、メタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)(94mg,0.12mmol)を加えて生成した懸濁液を還流下に24時間反応させた。反応液を濾過して沈殿物を除去した後、濾液を塩酸(0.1N)、NaHCO3飽和水溶液およびBrainで洗浄した。有機層を分離して、MgSO4で乾燥した後、溶媒を減圧下に留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH,100/1,v/v)で精製し、更に、CHCl3/THFから3回再沈殿で精製して化合物9を茶色固体として得た(100mg,収率59%)。
MALDI−TOF−MS:m/z:
C153H100O9として、 計算値:[M]+ 2080.74;
実測値: 2080.88.
紫外可視吸収スペクトルの測定結果のチャートを図2に示す。図2の横軸は波長(nm)を示し、縦軸はモル吸光係数(105M−1cm−1)を示す。この結果、365nm、及び395nmにヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)に基づく吸収が観測された(図2)。
【実施例9】
【0038】
化合物9(HBC−C60)の矩形波ボルタンメトリー
化合物9のジクロロメタン溶液(0.1mM)に電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF6,0.1M)を加え、作用・対極電極を白金、参照電極を標準カロメル電極として矩形波ボルタンメトリーを行い、図3に示す結果を得た。図3の横軸は電位vs.SCE(V)を示し、縦軸は電流(10−5A)を示す。+0.56、+0.84,+1.14VにHBCの酸化に起因するピークが観測され、−0.66,−1.0Vにフラーレン(C60)の還元に起因するピークが観測された。酸化還元電位と吸収スペクトルより各部位のエネルギー準位は
HBC: 最高占有準位(HOMO);−5.3eV,
最低非占有準位(LUMO);−2.5eV
C60: 最高占有準位(HOMO);−6.0eV,
最低非占有準位(LUMO);−3.7eV
と見積もられる(真空準位に対する各エネルギー準位)。
【実施例10】
【0039】
化合物9(HBC−C60)の自己組織化
得られた化合物9(HBC−C60)1mgを5mlのトルエンに溶解させ、加熱還流した後、室温にて一夜静置すると、黄色懸濁液となった。吸引濾過により、黄色粉末を得た。この粉末のトルエン懸濁液の紫外可視吸収スペクトルの測定結果のチャートを図4に示す。図4の横軸は波長(nm)を示し、縦軸は吸光度を示す。この結果、ナノチューブに特徴的なπ−スタックしたHBCに起因する吸収が425nm、及び458nmに観測された(図4参照)。
また、KBrペレット法で測定したこの粉末の赤外吸収スペクトルの結果を図5に示す。図5の横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度を示す。この結果、インターディジテーションしたドデシル鎖のパッキングによる吸収が2917,2848cm−1に観測された(図5参照)。
さらに、上記の黄色沈殿物の電子顕微鏡像を図6および図7に示す。図6及び図7から、化合物9(HBC−C60)の自己組織化により、均一な、直径22nm、壁厚3nmのナノチューブおよびナノコイルが生成していることが分かる。また、TEM像で、壁の内側と外側が黒く見えていることから、壁の内側と外側はフラーレンで覆われていることがわかる。
【実施例11】
【0040】
HBC−C60自己組織化物の粉末X線回折分析
実施例10のHBC−C60自己組織化物(HBC−C60ナノチューブ)の粉末X線回折分析を行い、図8に示す結果を得た。図8の横軸は2θ(度)を示し、縦軸は回折強度を示す。この結果、π−スタックしたHBCに起因する回折ピークが25.7°(d=3.47オングストローム)に観測された。
【実施例12】
【0041】
化合物9(HBC−C60)の自己組織化物の加水分解
水酸化カリウムのメタノール溶液(0.4mol/L,20mL)に、HBC−C60自己組織化物(HBC−C60ナノチューブ)のトルエン懸濁液(0.2mg/mL,2mL)を加え、室温で緩やかに撹拌した。48時間後にこの溶液を25℃で遠心分離し、固形分を捕集した。この固形物を2mlのメタノールに再分散し遠心分離する洗浄操作を4回繰り返して得た固形物を2mlのメタノールに再分散すると黄色のほぼ透明な懸濁液となった。この固形物の質量分析(MALDI−TOF−MS)を行った結果を、図9に示す。図9の横軸はm/zを示し、縦軸は強度を示す。この結果、加水分解物にはフラーレンを失ったHBCのみのイオンピークが観測された。
図10に加水分解前後のTEM観察の結果を図面に写真で示す。図10の左側は加水分解前のものであり、右側は加水分解後のものである。加水分解生成物のTEM観察の結果、加水分解生成物は、ナノチューブ構造の維持していることが示され、その壁厚は図10に示したように、フラーレンを含まないナノチューブのものと同程度にまで減少していた。
また、加水分解後のナノチューブは水(MeOH)に完全に分散した。これらの観察結果および実施例10の観察結果から、化合物9の自己組織化で生成するHBC−C60ナノチューブのフラーレン部分は、図11の模式図に示すように、チューブの内外表面に位置していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレンを同一分子内に有する分子からなる自己集合化により容易に形成される超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面の両面を覆うフラーレンにより構成されるものであり、ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面及び内表面に共有結合を介して強固に結合し、規則的、高密度で、かつ均一に結合したものであり、電荷輸送材料などとして極めて優れた電気特性を有するだけでなく、安定で均質な材料として提供することができるものである。
したがって、本発明の材料は、Liの貯蔵体、水素貯蔵体などの貯蔵材料としてでなく、さらに、分子導線などナノデバイスへの応用、太陽電池材料、電界効果トランジスタ(FET)材料などとして多くの電子部品の材料として適用されるものであり、半導体産業などに有用なものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の一般式(1)で表される化合物の代表例、及びその自己集積体からなるナノチューブ構造を模式的に示したものである。
【図2】図2は、本発明の化合物9(HBC−C60)の紫外可視吸収スペクトルのチャートである。
【図3】図3は、本発明の化合物9(HBC−C60)の矩形波ボルタンメトリーの測定結果を示すチャートである。
【図4】図4は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の紫外可視吸収スペクトルのチャートである。
【図5】図5は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の赤外吸収スペクトルのチャートである。
【図6】図6は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体のSEM像(50000倍)を示す、図面に代わる写真である。
【図7】図7は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体のTEM像を示す、図面に代わる写真である。
【図8】図8は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の粉末X線回折のチャートである。
【図9】図9は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後における質量分析(MALDI−TOF−MS)を行った結果を示すチャートである。
【図10】図10は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後におけるTEM像を示す、図面に代わる写真である。
【図11】図11は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後におけるナノチューブの構造を模式的に示したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を内包していてもよいフラーレンが結合したヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体、それからなる自己集積体、ナノサイズ構造体、それを用いた電荷輸送材料、及び電子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、金属的な性質から半導体までの多様で優れた電気的特性を有し、また、大きな表面積や機械強度特性などから、電気電子材料から高性能樹脂補強材などに至る各種の分野において、次世代先端材料として注目が集まり、世界的な規模で実用化研究が進行中である。
一方、フラーレンは1985年にSmalleyらにより発見された炭素材料であり、炭素系半導体材料等として注目されてきたが、電子受容性を有し、ドーパントとしてカーボンナノチューブの電気的特性を大きく改良する可能性があることから、近年、カーボンナノチューブと組み合わせた、電気電子材料としての応用が研究されている。フラーレンをカーボンナノチューブのドーパントとして用いる場合、フラーレンをカーボンナノチューブの外壁表面に付着させる方法と内壁表面に付着させる方法および内外壁に付着させる方法が知られている。外壁表面に付着させる方法として、たとえば日浦らはフラーレンをイオンビームとしてカーボンナノチューブの外壁上に堆積させて薄膜トランジスタ用の半導体薄膜とする方法を提案しているが(特許文献1)複雑な工程を必要とする上、フラーレンは単にカーボンナノチューブに付着しているだけなので、デバイスとしての安定性に問題があった。
【0003】
カーボンナノチューブの内壁表面にフラーレンを付着させる方法としては、ピーポッドとしてよく知られているように、カーボンナノチューブにフラーレンを内包させる方法があるが、フラーレンを気化させてカーボンナノチューブに内包させるのに400〜600℃の高温を必要とする上(非特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)、内包されたフラーレンを安定的にカーボンナノチューブの中に閉じこめておくにはカーボンナノチューブの孔径に制限があり、例えばフラーレンC60を用いる場合にはカーボンナノチューブの外径は1nm程度とする必要があった。また、飯島らはフラーレンのエタノール溶液中にカーボンナノチューブを浸積させて室温で放置してフラーレンを内包させる方法を提案しているが(特許文献4)、カーボンナノチューブの先端部を開口するのに高温を必要とし内包させるのに長時間を要する上、たかだか50〜70%のカーボンナノチューブがフラーレンを内包するに過ぎない等、信頼性に乏しく実用性にも問題があった。
内外壁に付着させる方法として竹延らはフラーレンを蒸着して外壁上に薄膜を形成させたカーボンナノチューブを半導体薄膜として用いた薄膜トランジスタを提案しているが(特許文献5参照)この方法にも上述の特許文献1と同様の問題があった。
【0004】
また、近年、ナノテクノロジーを支える機能性ナノマテリアル構築へのアプローチとして、自己集合プロセスによるボトムアップ型の手法が注目されている。これは、例えば溶液中において、会合性を有する低分子の自発的かつ階層的な集積化を利用するといった手法である。この手法により、ベシクル、ファイバー、リボン、チューブなどの構造体が得られることが知られている。しかしながら、従来、これらのナノ構造体を構成する分子しとして用いられてきたものは、脂質などの両親媒性化合物であり、電子的、光化学的特性等に乏しく、構造体が得られても特筆すべき性質を示さない。
これに対して本発明者等は、ナノ構造体構築の基本要素としてヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)に着目し、HBC骨格に親水性置換基と疎水性置換基を導入することにより、直径約20ナノメートル、アスペクト比5000以上の超分子ナノチューブが溶液プロセスにより簡便かつ定量的に得られることを報告している(非特許文献2、特許文献6、及び特許文献7参照)。このHBCナノチューブは、π−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に配列しており、化学ドーピングにより容易に電荷キャリア(ホール)を形成し導電性を示す(抵抗率10Ωcm)。本発明者等は、様々な置換基を有するHBC誘導体分子を精密設計し、その会合挙動と得られたHBCナノチューブの導電性に及ぼす親水性置換基の種類の影響を鋭意検討した結果、親水性置換基の先端部分に、2,4,5−トリニトロフルオレノン(TNF)を導入することにより光照射により導電性が大きく変化する、すなわち光伝導性を有するHBCナノチューブが得られることを見出し先に報告している(非特許文献3、特許文献8)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−190815号公報
【特許文献2】特開2002−97010号公報
【特許文献3】特開2003−160320号公報
【特許文献4】特開2005−41716号公報
【特許文献5】特開2005−150410号公報
【特許文献6】特許第4005571号公報
【特許文献7】特許第4018066号公報
【特許文献8】特開2007−238544号公報
【非特許文献1】B. W. Smith et al, Nature 1998, 396 323-324
【非特許文献2】J. P. Hill et al, Science 2004, 304, 1481-1483
【非特許文献3】Y. Yamamoto et al, Science 2006, 314, 1761-1764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子ドナー部位及び電子アクセプター部位としてのフラーレン分子を同一分子内に有する分子、この分子を用いたドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に、規則的に、かつ高密度で結合した自己集積体であるナノサイズ構造体、これを用いた新規な材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、様々な置換基を有するヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子を精密設計し、その会合挙動と得られたHBCナノチューブの導電性に及ぼす親水性置換基の種類の影響を鋭意検討した結果、親水性置換基の先端部分に、2,4,5−トリニトロフルオレノン(TNF)を導入することにより光照射により導電性が大きく変化する、すなわち光伝導性を有するHBCナノチューブが得られることを見出し先に報告している(非特許文献2、及び特許文献3参照)。さらに検討を続けた結果、親水性置換基の先端部分に電子受容性の強いフラーレンを導入したヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体が自己組織化して、内壁表面及び外壁表面に高密度でフラーレン部分を有するナノチューブを形成することを見いだし、本発明に到達した。
本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子は、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレン分子を同一分子内に有しており、この分子を溶液中で自己集合化により容易に形成される自己集積体である超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面の両面を覆うフラーレンにより構成される。ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料はまだ知られていない。
即ち、本発明は、次の一般式(1)
【0008】
【化3】
【0009】
[式中、R1はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して次の一般式(2)、
−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4 (2)
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、R4は水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよいがR2及びR3の少なくともどちらか一方のR4は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表される基を表す。]
で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体に関する。
また、本発明は、金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体、並びにそれを含有してなる電荷輸送材料、及びそれらを含有してなる電子部品に関する。
【0010】
本発明をより詳細に説明すれば、以下のとおりとなる。
(1)前記した一般式(1)で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(2)一般式(1)のR2及びR3におけるR5及びR6が、それぞれ独立してエチレン基(−CH2CH2−)である前記(1)に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(3)一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、エステル結合で結合している前記(1)又は(2)に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(4)一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、C60フラーレンである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(5)一般式(1)のR1が、それぞれ独立して炭素数10〜30のアルキル基である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(6)一般式(1)におけるR2及びR3の少なくとも一方が、次式
−C6H4−OCH2CH2−(OCH2CH2)n−OCO−CH−フラーレン
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、CH−フラーレンは一価又は二価で炭素原子がフラーレンに結合していることを表し、フラーレンは金属を内包していてもよいフラーレンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(7)一般式(1)で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、次の式(3)
【0011】
【化4】
【0012】
で表される化合物である前記(6)に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
(8)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体。
(9)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(8)に記載のナノサイズ構造体。
(10)結合が、共有結合である前記(8)又は(9)に記載のナノサイズ構造体。
(11)ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(8)〜(10)のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
(12)ナノサイズ構造体が、ナノチューブである前記(8)〜(11)のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
(13)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズの構造体を含む電荷輸送材料。
(14)金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(13)に記載の電荷輸送材料。
(15)ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(13)又は(14)に記載の電荷輸送材料。
(16)ナノサイズの構造体が、ナノチューブである前記(13)〜(15)のいずれかに記載の電荷輸送材料。
(17)前記(13)〜(16)のいずれかに記載の電荷輸送材料の少なくとも1種を含有してなる電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子は、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレンを同一分子内に有しており、この分子の溶液中での自己集合化により容易に形成される超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面を覆うフラーレンにより構成される。ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料はまだ知られていない。
本発明のナノチューブは、自己集合化により容易に形成される自己集積体であり簡便な方法で製造することができ、しかもナノチューブ壁の内面及び外面の両面に高密度のフラーレン層を有しており、Liの貯蔵体や水素貯蔵体としての分子貯蔵能がすぐれているだけでなく、優れた電荷輸送能を有しており、分子導線などナノデバイスへの応用、太陽電池材料、電界効果トランジスタ材料などの電子材料として、有用な性質を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、分子の自己集積体により形成される超分子ナノチューブであって、当該ナノチューブ壁の内面及び外面の両面がフラーレンにより構成されている超分子ナノチューブ及びそのための分子を初めて提供するものである。本発明の超分子ナノチューブは、ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面及び内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料を初めて提供するものである。
【0015】
本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子について説明する。
上記の一般式(1)において、R1で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜30、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましい具体例としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシルル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられ、これらは直鎖状、分枝状又は環状の何れであってもよい。また、炭素数が10以下のアルキル基の場合は、例えばt−ブチル基のような嵩高い基が好ましい。
【0016】
上記の一般式(1)において、R2及びR3は、一般式(2)、
−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4 (2)
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、R4は水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよいがR2及びR3の少なくともどちらか一方のR4は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である。一般式(2)におけるR4で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
また、上記一般式(2)におけるR4で表されるフラーレンを有する基としては、一般式(2)のポリエチレングリコール鎖の先端の水酸基に結合できる官能基を有するフラーレンにより当該水酸基と結合することができるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基を有するフラーレンが合成の容易さから好適である。フラーレンは一般にCmとして表されており、当該Cmにおけるmは、Cmが球殻状構造を形成し得る正の整数をとりうるが、30,60,70,76,78,80,82,84,86,88,90,92,94,96が好ましく、60が特に好ましい。フラーレンは、フラーレンにフッ素原子がいくつか付加したフッ化フラーレンのように置換基が置換又は付加したものであってもよいし、フラーレンかご構造内に金属原子がいくつか内包された金属内包フラーレンなどをも用いることができる。内包される金属種としては、例えば、Ca、La、Gdなどが挙げられる。
好ましいフラーレンを有する基としては、式(4)
【0017】
【化5】
【0018】
で表されるC60フラーレンの誘導体が挙げられる。このフラーレンには金属が内包されていてもよい。
一般式(2)におけるR5及びR6におけるアルキレン基としては、例えば、炭素数が2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5の直鎖状又は分枝状の2価のアルキレン基が挙げられ、具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。また、これらのアルキレン基は物性に影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
また、前記一般式(2)におけるフェニレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基などの2価のフェニレン基であればよいが、好ましいフェニレン基としてはp−フェニレン基が挙げられる。また、これらのフェニレン基は物性に影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
前記一般式(2)におけるnは、1以上の正の整数であるが、好ましくは2以上の整数、より好ましくは2〜20、2〜10、又は2〜5が挙げられる。
【0019】
一般式(1)におけるR2及びR3の好ましい具体例としては、例えば、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)nOH、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)nOCH3等が挙げられ、中でも、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)2OH、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)3OH、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)4OH、
−C6H6OCH6CH6(OCH2CH2)2OCH3、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)3OCH3、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)4OCH3、
−C6H4OCH2CH2(OCH2CH2)3OR7[R7は、前記式(4)で表されるメタノ[60]フラーレンカルボン酸の残基]等がより好ましい例として挙げられるが、勿論これに限定されるものではない。
一般式(1)におけるR2及びR3の少なくとも一方は、R4がフラーレンを有する基でなければならない。
上記一般式(1)で表される化合物の中で、最も好ましい化合物の例としては前記した一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
本発明のナノチューブの特長をより詳細に説明するために図1に本発明の代表的な化合物の分子構造と自己組織化により形成するナノチューブの模式的構造を示した。
図1の(a)は本発明の代表的な化合物の分子構造を示している。図1(b)の左側は当該化合物の分子構造を模式的に示したものである。中心部分の多角形状の部分(原図では青色)がコロネン骨格に相当する部分であり、HBCの記号で示されている。その上部に2本突き出しているのが一般式(1)におけるR2及びR3部分に相当するポリアルキレングリコール部分(原図では赤と白で示されている。)であり、TEGの記号で示されている。左側の上部に丸く球状に示されているのがフラーレン部分(原図では黄色で示されている。)であり、C60の記号で示されている。多角形状の部分(原図では青色)の下側にぶら下がっているのが、一般式(1)におけるR1のアルキル基部分(原図では白色で示されている。)であり、C12の記号で示されている。
本発明者らは、HBC骨格に親水性置換基と疎水性置換基を導入した分子が、直径約20ナノメートル、アスペクト比5000以上の超分子ナノチューブが溶液プロセスにより簡便かつ定量的に得られることを報告している(非特許文献2、特許文献6、及び特許文献7参照)が、これと同様にHBC骨格におけるπ−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に自己集積し、そして、疎水性のR1の存在によりこれらが規則的に2分子で対を形成して、図1の(b)に中央部に示される自己集積体を形成する。そして、疎水性のR1の部分が内部の集積し、親水性のポリアルキレングリコール部分が外側になるために、その結果として親水性のR2及び/又はR3の先端部分に結合しているフラーレン部分(原図では黄色で示されている。)が、膜状の構造の外側の両方に形成されることになる。このらせん構造により全体としてナノチューブを形成する場合には、フラーレン部分はナノチューブの内壁と外壁の両方に規則的にかつ高密度で形成されることになる(図1の(b)の右側参照)。
【0021】
カーボンナノチューブにフラーレンをドーパントとして用いる場合、フラーレンをカーボンナノチューブの外壁や内壁などの表面に付着させていたが、本発明のナノチューブにおいては、フラーレンがナノチューブの構造体に共有結合で結合しているために、機械的に強いだけでなく、規則的で、かつ高密度で、ナノチューブの両方の壁に均一にドーピングできていることになる。
本発明のナノサイズ構造体であるナノチューブは、自己集積体を形成するために製造方法が簡便であるだけでなく、高密度で電気的特性に優れ、また規則的にフラーレンが配置されるために、安定した性能を有する材料を提供することができる。
【0022】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、任意の公知の方法に準じて製造することができる。例えば、特許文献6又は特許文献7に記載の方法に準じて、基R2又はR3にフラーレンを有する基を有する中間体を製造し、これを特許文献6又は特許文献7に記載の方法に準じて閉環することにより製造することができる。
また、フラーレンを有する基も公知の各種の方法により製造することができる。例えば、前記した式(4)で示されるメタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)は、Y-P. Sunらの方法(Y-P. Sun, G. E. Lawson, W. Huang, A. D. Wright, D. K. Moton Macromolecules 1999, 32, 8747-8752)などにより製造することができる。
前記した式(3)で表される化合物も公知の方法に準じて製造することができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造法の例として、例えば、前記した式(3)で表される化合物の具体的の製造方法の例を次の反応経路で示しておく。
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
まず、トシル基(Ts)で保護された化合物1を製造し、これをブロモビフェニル化して化合物2とし、これをアセチル化して化合物3を製造する。化合物3とビフェニルアセチレン誘導体とを反応させてアセチレン誘導体(化合物4)を製造し、これとテトラフェニルシクロペンタジエノン誘導体とを反応させて、ヘキサフェニルベンゼン誘導体(化合物5)を製造する。得られたヘキサフェニルベンゼン誘導体5の末端のアセトキシ基を加水分解してヒドロキシ体(化合物6)とした後、ルイス酸の存在下に環化することにより、コロネン骨格を有する化合物7とする。
得られた化合物7とフラーレンのカルボン酸誘導体(化合物8)とを、DCCなどの縮合剤の存在下にエステル化、目的の式(3)で表される化合物9を製造することができる。
【0026】
このようにして製造される本発明の一般式(1)で表される化合物は、以前に本発明者らが報告してきた側鎖に疎水性の基と親水性の基を有するヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体(HBC誘導体)(特許文献6及び7参照)と同様な挙動をとることがわかった。
即ち、トルエンなどの溶媒中で図1に模式的に示されるような自己集積体を形成し、らせん状リボン構造やチューブ構造が形成される。
このようならせん状リボン構造やチューブの形成は、本発明の一般式(1)で表される化合物が有する両親媒性とπ−πスタッキング効果により、2層からなる幅〜20nmのリボン状集積体が形成され、次いで、このリボンは、らせん状にぐるぐる巻きになると考えられる。このときの巻きの強さは基R2及びR3の部分のポリエチレングリコール鎖の水和の程度によって調整されと考えられる。
【0027】
本発明の一般式(1)で表される化合物の例として、前記式(3)で表される化合物9について、溶媒中での自己組織化を試みたところ、黄色粉末の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体を得た(後述する実施例10参照)。
次に、本発明の一般式(1)で表される化合物により形成された超分子ナノチューブの特性について検討した。
例えば、酸化シリコン絶縁膜(200nm)で覆われたシリコン基板表面を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理し、疎水性単分子膜を形成した。その上にHBC−C60ナノチューブ薄膜を作製した。チャネル長50ミクロン、チャネル幅1ミリメートルの金電極を試料上部に真空蒸着により作製し、トップコンタクト、ボトムゲート型素子を作製し、その特性を調べた。
得られた素子に、ソース−ドレイン電圧を0〜−90Vまでスイープし、ゲート電圧を0Vから−90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜のFET特性(出力特性)を測定した結果、正および負のゲート電圧印加に対し、それぞれについてFET特性が観測された。つまりこのナノチューブは電子・ホールいずれも注入及び輸送可能な同時両極性の電荷輸送特性を有するといえる。両極性トランジスタである証拠として、出力特性においては、低ゲート電圧において超線形電流が観測され、ゲート電圧の増大に伴いそれがサプレスされると同時に、線形および飽和電流領域を含むFET特性が観測されている。また、伝達特性においても、両極性FETに特徴的なV字型のカーブを示している。構造や各部位のエネルギー準位から考えて、ホールはπ−スタックしたHBC中を、電子はナノチューブ表面に形成したC60層中に誘起され、伝導していると考えられる。伝達特性曲線より求められる各移動度はホール3.4x10−7、電子1.5x10−5cm2/Vsであった。
【0028】
このように、本発明の一般式(1)で表される化合物の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体は、超分子ナノチューブを形成することができるものである。そして、当該ナノチューブは、電荷輸送能を有する。これは、この超分子ナノチューブがπ−πスタック構造を有し、かつ両方の表面に規則的に高密度でフラーレンを有していることによるものと考えられる。
このように、本発明の材料は、超分子ナノチューブを形成するに必要な親水性部分などを有し、かつπ−πスタッキング効果を有する部分を有し、さらに表面に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を有するものであり、自己集合により形成された直径約20nm程度の独立した超分子ナノチューブであって、両側に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を併せ持つ材料は本発明により初めて提供されたのである。
したがって、本発明は、本発明の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体、好ましくは超分子ナノチューブからなる電荷輸送材料を提供するものであり、本発明の電荷輸送材料は、新規な電子材料や電子部品を提供するものであり、分子導線などナノデバイスへの応用、太陽電池材料、電界効果トランジスタ(FET)材料などとして多くの電子部品材料に適用されるものである。本発明の電子部品材料は、例えば、ナノデバイス、太陽電池材料、電界効果トランジスタ(FET)材料などへ応用可能なものである。
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下に示す実施例においては、試薬は特に断らない限り、市販品をそのまま使用した。ジクロロメタン(CH2Cl2)およびブロモベンゼンはアルゴン雰囲気下にカルシウムハイドライド(CaH2)で乾燥し、使用前に蒸留した。1Hおよび13CNMRはJEOL model NM-Excalibur500スペクトロメーターを用いて298°Kで、それぞれ500MHzおよび125MHzで測定した。MALDI−TOF質量分析はApplied Biosystems BioSpectrometryTM Workstation model Voyager-DETM STRスペクトロメーターを用いて、ジスラノールをマトリックスとして測定した。電子スペクトルは温度制御機構付きJASCO model V-560 UV/VISスペクトロメーターを用いて光路長1cmの石英セルで測定した。赤外吸収スペクトルはJASCO model FT/IR-660Plusフーリエ変換赤外スベクトロメーターを用いて25℃で測定した。X線回折パターンはRigaku model RINT-2500回折計を用いてCuKαを線源として室温で測定した。走査型電子顕微鏡写真(SEM)はJEOL model JSM-6700F FE-SEMを用いて5KVで撮影した。透過型電子顕微鏡写真はPhilips model Tecnai F20電子顕微鏡を用い、Gatan slow scan CCDカメラで低線量状態下に測定した。メタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)は、Y-P. Sunらの方法(Y-P. Sun, G. E. Lawson, W. Huang, A. D. Wright, D. K. Moton Macromolecules 1999, 32, 8747-8752)により製造した。
【実施例1】
【0030】
化合物1の合成
トリエチレングリコール(20.00g,133.18mmol)をテトラヒドロフラン(THF,50ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム(10ml,2.66M水溶液)を0℃で加え、30分攪拌した。この溶液に20mlのTHFに溶解させたp−トルエンスルフォニルクロライド(5.07g,26.62mmol)を滴下し一時間攪拌して室温まで昇温し、さらに9時間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、ジクロロメタン(CH2Cl2)で抽出し、有機層を水、次いで塩酸(0.5N)、更に水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール(MeOH))により精製し、化合物1を無色油状物として得た(6.67g,収率82.24%)。
【実施例2】
【0031】
化合物2の合成
アルゴン雰囲気下、実施例1で製造した化合物1(6.00g,19.71mmol)と4−ブロモ−4−ヒドロキシビフェニル(4.46g,17.92mmol)を乾燥THF(100ml)に溶解させ、水酸化カリウム(2.01g,35.84mmol)を加えた後、19時間加熱還留させた。反応混合物を室温まで降温させた後、水を加え、CH2Cl2で抽出し、有機層を水、次いで塩酸(0.5N)、更に水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)により精製し、化合物2を白色個体として得た(4.80g,収率70%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.504(d, J=8.5Hz, 2H), 7.453(d, J=8.5Hz, 2H),
7.386(d, J=8.5Hz, 2H), 6.970(d, J=8.5Hz, 2H),
4.161(t, J=5.0Hz, 2H), 3.872(t, J=5.0Hz, 2H),
3.700(m, 6H), 3.611(t, J=4.0Hz, 2H)
【実施例3】
【0032】
化合物3の合成
アルゴン雰囲気下、実施例2で製造した化合物2を乾燥CH2Cl2(35ml)に溶解させ、0℃まで冷却した。この溶液にピリジン(1.16ml,15.74mmol)を加え、無水酢酸(1.49ml,15.74mmol)を加えて一時間攪拌し、室温まで昇温し、さらに一晩攪拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で二回、ついで水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)により精製し、化合物3を白色個体として得た(3.37g,収率76%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.506(d, J=9.0Hz, 2H), 7.452(d, J=9.0Hz, 2H),
7.387(d, J=9.0Hz, 2H), 6.963(d, J=9.0Hz, 2H),
4.211(t, J=5.0Hz, 2H), 4.156(t, J=5.0Hz, 2H),
3.865(t, J=5.0Hz, 2H), 3.696(m, 6H), 2.052(s, 3H)
【実施例4】
【0033】
化合物4の合成
アルゴン雰囲気下、実施例3で製造した化合物3(3.24g,7.64mmol)とビス−トリフェニルフォスフォパラジウムジクロライド(0.27g,0.38mmol)、ヨウ化銅(0.14g,0.76mmol)を1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)(35ml)と、ベンゼン(25ml)に溶解し、ベンゼン(25ml)に溶解した4’−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−4−ビフェニリルエチン(2.06g,7.64mmol)を滴下し、60℃で一晩加熱攪拌した。室温まで降温後、反応混合物にCH2Cl2を加えて抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液にて洗浄、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥した。デカンテーションにて硫酸ナトリウムを除去し、CH2Cl2懸濁液から白色固体状の化合物4を濾取して得た(3.13g,収率60%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.567(d, J=8.0Hz, 4H), 7.526(m, 8H), 6.982(d, J=8.0Hz, 4H),
4.219(t, J=4.5Hz, 2H), 4.168(t, J=4.5Hz, 4H),
3.873(t, J=5.0Hz, 4H), 3.690(m, 13H), 3.539(t, J=5.0Hz, 2H),
3.366(s, 3H), 2.057(s, 3H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
C41H46O9として、 計算値:[M]+ 682.3;
実測値: 682.4.
【実施例5】
【0034】
化合物5の合成
アルゴン雰囲気下、実施例4で製造した化合物4(1.00g,1.46mmol)と2,5−ジフェニル−3,4−ビス(4−n−ドデシルフェニル)シクロペンタジエノン(1.06g,1.46mmol)をジフェニルエーテル(4ml)に溶解し、350℃で 二日間加熱攪拌した。反応混合物を室温まで降温しシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)、さらに中圧液体クロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン)により精製し、化合物5を白色個体として得た(1.47g,収率73%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.320(d, J=8.0Hz, 4H), 7.047(d, J=8.0Hz, 4H), 6.830(m, 18H),
6.662(d, J=8.0Hz, 4H), 6.610(d, J=8.0Hz, 4H),
4.195(t, J=4.5Hz, 2H), 4.090(t, J=4.5Hz, 4H), 3.819(m, 4H),
3.678(m, 12H), 3.515(m, 2H), 3.342(s, 3H),
2.321(t, J=4.5Hz, 4H), 2.037(s, 3H), 1.369(m, 4H),
1.236(s, 32H), 1.073(b, 4H), 0.859(t, J=7.0Hz, 6H),
MALDI−TOF−MS:m/z:
C93H115O9として、 計算値:[M+H]+ 1375.8;
実測値: 1375.5.
【実施例6】
【0035】
化合物6の合成
実施例5で製造した化合物5(300mg,0.22mmol)をメタノール(20ml)とTHF(10ml)に溶解し、水酸化カリウム(002g,0.33mmol)を水(1ml)に溶解させた溶液を加え、室温で一時間攪拌した。溶媒を留去後、残渣にCH2Cl2を加え水で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去後し、化合物6を白色固体として得た(0.27g,収率93%)。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ:
7.320(m, 4H), 7.046(d, J=9.0Hz, 4H), 6.827(m, 18H),
6.663(d, J=8.0Hz, 4H), 6.611(d, J=8.0Hz, 4H), 4.194(m, 4H),
3.821(m, 4H), 3.647(m, 14H), 3.513(t, J=5.0Hz, 2H),3.342(s, 3H),
2.322(t, J=8.0Hz, 4H), 1.370(m, 4H), 1.236(m, 32H), 1.071(b, 4H),
0.860(t, J=7.0Hz, 6H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
C91H113O8として、 計算値:[M+H]+ 1333.8;
実測値: 1333.8.
【実施例7】
【0036】
化合物7の合成
実施例6で製造した化合物6(300mg,0.22mmol)を乾燥CH2Cl2(100ml)に溶解し、溶液に乾燥アルゴンを10分間バブリングした後、MeNO2(4ml)に溶解した塩化鉄(III)を徐々に加え、さらに25℃で1時間攪拌した。反応混合物を攪拌しながらメタノール(200ml)中に注ぎ込み、析出した固体を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2/hot THF)で精製した。さらにTHFから再結晶して化合物7を黄色粘脹固体として得た(140mg,収率62%)。
1H−NMR(500MHz,THF−d8,55℃)δ:
8.47(s, 2H), 8.38(s, 2H), 8.23-8.07(br, 8H), 7.73(br, 4H),
7.37(br, 2H), 7.14(br, 4H), 4.30(br, 4H), 3.98(br, 4H),
3.79-3.61(m, 16H), 3.35(s, 3H), 2.88(br, 4H), 1.89(br,4H),
1.58-1.28(br, 36H), 0.85(br, 6H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
C91H100O8として、 計算値:[M]+ 1320.74;
実測値: 1320.89.
【実施例8】
【0037】
化合物9の合成
アルゴン雰囲気下、実施例7で製造した化合物7(107mg,0.081mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(62mg,0.30mmol)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)(37mg,0.30mmol)を室温で乾燥CH2Cl2−ブロモベンゼン混合溶媒(8ml)(V/V,3/1)に溶解し、メタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)(94mg,0.12mmol)を加えて生成した懸濁液を還流下に24時間反応させた。反応液を濾過して沈殿物を除去した後、濾液を塩酸(0.1N)、NaHCO3飽和水溶液およびBrainで洗浄した。有機層を分離して、MgSO4で乾燥した後、溶媒を減圧下に留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH,100/1,v/v)で精製し、更に、CHCl3/THFから3回再沈殿で精製して化合物9を茶色固体として得た(100mg,収率59%)。
MALDI−TOF−MS:m/z:
C153H100O9として、 計算値:[M]+ 2080.74;
実測値: 2080.88.
紫外可視吸収スペクトルの測定結果のチャートを図2に示す。図2の横軸は波長(nm)を示し、縦軸はモル吸光係数(105M−1cm−1)を示す。この結果、365nm、及び395nmにヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)に基づく吸収が観測された(図2)。
【実施例9】
【0038】
化合物9(HBC−C60)の矩形波ボルタンメトリー
化合物9のジクロロメタン溶液(0.1mM)に電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF6,0.1M)を加え、作用・対極電極を白金、参照電極を標準カロメル電極として矩形波ボルタンメトリーを行い、図3に示す結果を得た。図3の横軸は電位vs.SCE(V)を示し、縦軸は電流(10−5A)を示す。+0.56、+0.84,+1.14VにHBCの酸化に起因するピークが観測され、−0.66,−1.0Vにフラーレン(C60)の還元に起因するピークが観測された。酸化還元電位と吸収スペクトルより各部位のエネルギー準位は
HBC: 最高占有準位(HOMO);−5.3eV,
最低非占有準位(LUMO);−2.5eV
C60: 最高占有準位(HOMO);−6.0eV,
最低非占有準位(LUMO);−3.7eV
と見積もられる(真空準位に対する各エネルギー準位)。
【実施例10】
【0039】
化合物9(HBC−C60)の自己組織化
得られた化合物9(HBC−C60)1mgを5mlのトルエンに溶解させ、加熱還流した後、室温にて一夜静置すると、黄色懸濁液となった。吸引濾過により、黄色粉末を得た。この粉末のトルエン懸濁液の紫外可視吸収スペクトルの測定結果のチャートを図4に示す。図4の横軸は波長(nm)を示し、縦軸は吸光度を示す。この結果、ナノチューブに特徴的なπ−スタックしたHBCに起因する吸収が425nm、及び458nmに観測された(図4参照)。
また、KBrペレット法で測定したこの粉末の赤外吸収スペクトルの結果を図5に示す。図5の横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度を示す。この結果、インターディジテーションしたドデシル鎖のパッキングによる吸収が2917,2848cm−1に観測された(図5参照)。
さらに、上記の黄色沈殿物の電子顕微鏡像を図6および図7に示す。図6及び図7から、化合物9(HBC−C60)の自己組織化により、均一な、直径22nm、壁厚3nmのナノチューブおよびナノコイルが生成していることが分かる。また、TEM像で、壁の内側と外側が黒く見えていることから、壁の内側と外側はフラーレンで覆われていることがわかる。
【実施例11】
【0040】
HBC−C60自己組織化物の粉末X線回折分析
実施例10のHBC−C60自己組織化物(HBC−C60ナノチューブ)の粉末X線回折分析を行い、図8に示す結果を得た。図8の横軸は2θ(度)を示し、縦軸は回折強度を示す。この結果、π−スタックしたHBCに起因する回折ピークが25.7°(d=3.47オングストローム)に観測された。
【実施例12】
【0041】
化合物9(HBC−C60)の自己組織化物の加水分解
水酸化カリウムのメタノール溶液(0.4mol/L,20mL)に、HBC−C60自己組織化物(HBC−C60ナノチューブ)のトルエン懸濁液(0.2mg/mL,2mL)を加え、室温で緩やかに撹拌した。48時間後にこの溶液を25℃で遠心分離し、固形分を捕集した。この固形物を2mlのメタノールに再分散し遠心分離する洗浄操作を4回繰り返して得た固形物を2mlのメタノールに再分散すると黄色のほぼ透明な懸濁液となった。この固形物の質量分析(MALDI−TOF−MS)を行った結果を、図9に示す。図9の横軸はm/zを示し、縦軸は強度を示す。この結果、加水分解物にはフラーレンを失ったHBCのみのイオンピークが観測された。
図10に加水分解前後のTEM観察の結果を図面に写真で示す。図10の左側は加水分解前のものであり、右側は加水分解後のものである。加水分解生成物のTEM観察の結果、加水分解生成物は、ナノチューブ構造の維持していることが示され、その壁厚は図10に示したように、フラーレンを含まないナノチューブのものと同程度にまで減少していた。
また、加水分解後のナノチューブは水(MeOH)に完全に分散した。これらの観察結果および実施例10の観察結果から、化合物9の自己組織化で生成するHBC−C60ナノチューブのフラーレン部分は、図11の模式図に示すように、チューブの内外表面に位置していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレンを同一分子内に有する分子からなる自己集合化により容易に形成される超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面の両面を覆うフラーレンにより構成されるものであり、ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面及び内表面に共有結合を介して強固に結合し、規則的、高密度で、かつ均一に結合したものであり、電荷輸送材料などとして極めて優れた電気特性を有するだけでなく、安定で均質な材料として提供することができるものである。
したがって、本発明の材料は、Liの貯蔵体、水素貯蔵体などの貯蔵材料としてでなく、さらに、分子導線などナノデバイスへの応用、太陽電池材料、電界効果トランジスタ(FET)材料などとして多くの電子部品の材料として適用されるものであり、半導体産業などに有用なものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の一般式(1)で表される化合物の代表例、及びその自己集積体からなるナノチューブ構造を模式的に示したものである。
【図2】図2は、本発明の化合物9(HBC−C60)の紫外可視吸収スペクトルのチャートである。
【図3】図3は、本発明の化合物9(HBC−C60)の矩形波ボルタンメトリーの測定結果を示すチャートである。
【図4】図4は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の紫外可視吸収スペクトルのチャートである。
【図5】図5は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の赤外吸収スペクトルのチャートである。
【図6】図6は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体のSEM像(50000倍)を示す、図面に代わる写真である。
【図7】図7は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体のTEM像を示す、図面に代わる写真である。
【図8】図8は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の粉末X線回折のチャートである。
【図9】図9は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後における質量分析(MALDI−TOF−MS)を行った結果を示すチャートである。
【図10】図10は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後におけるTEM像を示す、図面に代わる写真である。
【図11】図11は、本発明の化合物9(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後におけるナノチューブの構造を模式的に示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】
[式中、R1はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して次の一般式(2)
−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4 (2)
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、R4は水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよいがR2及びR3の少なくともどちらか一方のR4は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基を表す。]
で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項2】
一般式(1)のR2及びR3におけるR5及びR6が、それぞれ独立してエチレン基(−CH2CH2−)である請求項1に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項3】
一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、エステル結合で結合している請求項1又は2に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項4】
一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、C60フラーレンである請求項1〜3のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項5】
一般式(1)のR1が、それぞれ独立して炭素数10〜30のアルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項6】
一般式(1)におけるR2及びR3の少なくとも一方が、次式
−C6H4−OCH2CH2−(OCH2CH2)n−OCO−CH−フラーレン
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、CH−フラーレンは一価又は二価で炭素原子がフラーレンに結合していることを表し、フラーレンは金属を内包していてもよいフラーレンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である請求項1〜5のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項7】
一般式(1)で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、次の式(3)
【化2】
で表される化合物である請求項6に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項8】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体。
【請求項9】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項8に記載のナノサイズ構造体。
【請求項10】
結合が、共有結合である請求項8又は9に記載のナノサイズ構造体。
【請求項11】
ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、請求項1〜7のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項8〜10のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
【請求項12】
ナノサイズ構造体が、ナノチューブである請求項8〜11のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
【請求項13】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズの構造体を含む電荷輸送材料。
【請求項14】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項13に記載の電荷輸送材料。
【請求項15】
ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、請求項1〜7のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項13又は14に記載の電荷輸送材料。
【請求項16】
ナノサイズの構造体が、ナノチューブである請求項13〜15のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載の電荷輸送材料の少なくとも1種を含有してなる電子部品。
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】
[式中、R1はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して次の一般式(2)
−C6H4−O−R5−(O−R6)n−OR4 (2)
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、R4は水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよいがR2及びR3の少なくともどちらか一方のR4は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基を表す。]
で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項2】
一般式(1)のR2及びR3におけるR5及びR6が、それぞれ独立してエチレン基(−CH2CH2−)である請求項1に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項3】
一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、エステル結合で結合している請求項1又は2に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項4】
一般式(1)のR2及びR3におけるR4の金属を内包していてもよいフラーレンが、C60フラーレンである請求項1〜3のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項5】
一般式(1)のR1が、それぞれ独立して炭素数10〜30のアルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項6】
一般式(1)におけるR2及びR3の少なくとも一方が、次式
−C6H4−OCH2CH2−(OCH2CH2)n−OCO−CH−フラーレン
(式中、−C6H4−はフェニレン基を表し、CH−フラーレンは一価又は二価で炭素原子がフラーレンに結合していることを表し、フラーレンは金属を内包していてもよいフラーレンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である請求項1〜5のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項7】
一般式(1)で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、次の式(3)
【化2】
で表される化合物である請求項6に記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体。
【請求項8】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体。
【請求項9】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項8に記載のナノサイズ構造体。
【請求項10】
結合が、共有結合である請求項8又は9に記載のナノサイズ構造体。
【請求項11】
ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、請求項1〜7のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項8〜10のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
【請求項12】
ナノサイズ構造体が、ナノチューブである請求項8〜11のいずれかに記載のナノサイズ構造体。
【請求項13】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、自己組織化して、内壁表面及び外壁表面の両面に分子に結合した金属を内包していてもよいフラーレンからなる層を有するナノサイズの構造体を含む電荷輸送材料。
【請求項14】
金属を内包していてもよいフラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項13に記載の電荷輸送材料。
【請求項15】
ヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体が、請求項1〜7のいずれかに記載のヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項13又は14に記載の電荷輸送材料。
【請求項16】
ナノサイズの構造体が、ナノチューブである請求項13〜15のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載の電荷輸送材料の少なくとも1種を含有してなる電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−209067(P2009−209067A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52565(P2008−52565)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日付け 社団法人応用物理学会発行の「2007年(平成19年)秋季第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊」
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日付け 社団法人応用物理学会発行の「2007年(平成19年)秋季第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊」
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]