フリーサイズオーバーシューズ
【課題】 様々なサイズの靴にぴったりとフィットし且つ容易に脱着できるとともに、滑り難く安全で防水性・防汚性にも優れたフリーサイズオーバーシューズを提供する。
【解決手段】 上面で靴Sの底を受けるソール部2と、その周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部3とが、弾性変形容易なゴム素材で一体に形成され、且つ、靴包囲部3は、その上端部分の周方向の伸長が伸縮抑制リブ(伸縮抑制部)5によって抑制されている。また、ソール部2底面のコルゲーション(易伸縮部)4を間に挟んだつま先側と踵側には、下面が平坦な複数の凸部からなるトレッドパターンが形成され、これらのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部の下面には歩行面の油分を吸収して滑り難くするフェルト材9が固着されている。
【解決手段】 上面で靴Sの底を受けるソール部2と、その周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部3とが、弾性変形容易なゴム素材で一体に形成され、且つ、靴包囲部3は、その上端部分の周方向の伸長が伸縮抑制リブ(伸縮抑制部)5によって抑制されている。また、ソール部2底面のコルゲーション(易伸縮部)4を間に挟んだつま先側と踵側には、下面が平坦な複数の凸部からなるトレッドパターンが形成され、これらのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部の下面には歩行面の油分を吸収して滑り難くするフェルト材9が固着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なサイズの靴に装着可能で、且つ滑り止め機能を高めたソール構造を有するオーバーシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船室の内装作業や、新築や改築時の居室内の内装作業等を行う際に、靴底を覆って床面の汚れを防いだり、あるいは、雨天や降雪の際に靴を濡らさないように保護するために用いられているオーバーシューズは、例えば、特許文献1に記載されているような、布製やビニール製のものが一般的である。
【0003】
図11は、従来用いられている布製のオーバーシューズの1例を示す斜視図であって、同図に示すように、オーバーシューズA1は、全体が布A2で袋状に形成されており、ゴム入りの伸縮自在の開口部A3から靴を挿入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した図11に示すような布製のオーバーシューズは、布を袋状に縫製して作られているために、装着する靴に多少大小のサイズの差があっても装着することができるが、靴を差し込む開口部が常時ゴムの弾力で狭められているため、開口部から靴先をオーバーシューズの奥まで入れることが困難であった。
【0006】
また、オーバーシューズを靴に装着したときには、襞状になった布が靴の周囲にだぶついて、靴底の幅よりもオーバーシューズの幅が広くなるので歩きにくく、また、小さいサイズの靴に装着して歩行すると、オーバーシューズのだぶついた部分を床面近くに配置されている器具類に引っ掛けて損傷したり、自分の足で踏んでつまずく虞があった。
【0007】
また、船室の内装作業で用いる場合には、下方の船室の床面には、鉄錆等の汚水溜まりが存在し、特に、布製のオーバーシューズでは、このような汚水に浸かると濡れて汚れがしみ込んでしまい、内装済みの船室内に入る際に、汚れ除去用マットの上で擦ってもオーバーシューズに付着した汚れを除去することが困難であるため床面を汚してしまう問題があった。
【0008】
さらに、油分が付着している床面上を歩行する場合や、凍結した雪面や路面を歩行する場合には、滑りやすく転倒事故を起こす虞もあった。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来のオーバーシューズの問題点を解消し、様々なサイズの靴にぴったりとフィットし且つ容易に脱着できるとともに、滑り難く安全で防水性・防汚性にも優れたフリーサイズオーバーシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的のために提供される本発明のフリーサイズオーバーシューズは、上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されている。
【0011】
そして、前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成されている。
【0012】
また、前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着するようになっている。
【0013】
そして、請求項1に記載されたフリーサイズオーバーシューズにおいては、これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部の下面には、歩行面の油分を吸収するフェルト材が固着されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載されたフリーサイズオーバーシューズにおいては、これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部には、下面が歩行面に接地して荷重を受けたときに、当該凸部が圧縮変形して下面から尖端部が突出する滑り止め用鋲体が埋設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項2に記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズによれば、靴底を受けるソール部と靴の周囲を覆う靴包囲部が弾性伸縮変形容易なゴム素材によって一体に形成されているため、防水性と耐久性に優れ、様々なサイズの靴に対応することができる。また、汚れが付着しにくく、汚れが付着した場合にも、靴に装着したしたままで簡単に落とすことができる。
【0016】
また、靴に装着する際ソール部が引き伸ばされると、主に易伸縮部が伸長変形するため、その前後に形成されている滑り止め用のトレッドパターンは、形状がほとんど変形することなく靴底に適正に対応する位置に収まるため、滑り止め効果を有効に保つことができる。
【0017】
また、靴包囲部がソール部の周縁部から略垂直に立ち上がった筒状に形成されているため、靴の出し入れを容易に行うことができるとともに、ソール部ならびに靴包囲部を装着する靴のサイズに合わせて前後方向に伸長させて靴包囲部内に靴を収容したときに、靴包囲部が内側に傾倒変位して靴の周囲に密着するため、様々なサイズの靴にぴったりとフィットし、従来の布製のオーバーシューズのように余った靴の周囲に襞状にはみ出した部分を床面近くに配置されている器具類に引っ掛けたり、自分の足で踏んでつまづく虞がない。
【0018】
そして、特に、請求項1記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズにおいては、床面等の歩行面に油分が付着して滑り易くなっている場合にも、フェルト材が歩行面の油分を吸収することで滑り難くなる効果が得られ、安全性を高めることができる。
【0019】
また、請求項2記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズにおいては、靴に装着して凍結した雪面や路面を歩行する場合に、凸部下面から滑り止め用鋲体の尖端部が突出して凍結面に食い込むことで滑り止め効果が得られ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態を示す底面図である。
【図4】図3のA−A位置の部分縦断面図である。
【図5】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態における靴への装着方法を説明する縦断面図である。
【図6】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態における靴への装着を完了した状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態における靴へ装着した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るオーバーシューズの別の実施形態における底面図である。
【図9】図8のB−B位置の部分縦断面図である。
【図10】体重が作用して滑り止め用鋲体の尖端部が底面から突出した状態を示す、図8のB−B位置の部分縦断面図である。
【図11】従来用いられている布製のオーバーシューズの1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明のオーバーシューズの1実施形態を示す斜視図、図2はその縦断面図、図3はその底面図であって、これらの図に示すように、本発明のオーバーシューズ1は、上面で靴底を受けるソール部2と、このソール部2の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部2と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部3から構成されている。また、これらのソール部2と靴包囲部3とは、弾性変形容易なゴム素材によって一体に成形されている。
【0022】
本実施形態のオーバーシューズ1は、種々の靴の大きさに適合可能なフリーサイズになっており、靴に装着していない状態におけるソール部2の前後方向の長さは、対応可能な靴のサイズの最小長さのものより短く製作されていて、その前後方向途中位置には、靴に装着する際に、前後方向に大きく伸縮変形できるように、易伸縮部としての波状のコルゲーション4が形成されている。
【0023】
また、本実施形態のものにおいては、図1に示すように、筒状になっている靴包囲部3の内側のコルゲーション4の上方両側部分に、薄肉凹部3Aを形成してソール部2に追従して容易に伸縮できるようにしてある。
一方、靴包囲部3の上端近傍部分は、その略全周に亘って、他の部分よりも厚みを増加させて形成した、伸縮抑制部としての伸縮抑制リブ5が設けられている。
【0024】
前記伸縮抑制リブ5を設けたことによって、オーバーシューズ1を前後方向に引っ張ってソール部2とともに筒状の靴包囲部3を前後方向に引き伸ばしたときに、靴包囲部3の上端近傍部分の伸び量が他の部分よりも少なく制限されるため、靴包囲部3の上部が内側に倒れ込むように変位する。
【0025】
靴包囲部3の後部上端には、オーバーシューズ1を靴に着脱する際、指でつまんで引っ張るためのタブ6が伸縮抑制リブ5に連続して一体に形成されている。また、ソール部2の底面側には、図3に示すように、コルゲーション4を間に挟んで、つま先側と踵側にはそれぞれ多数の凸部7A、7B、8A、8Bからなる滑り止め用のトレッドパターンが形成されている。
【0026】
この実施形態のものにおいては、これらの凸部7A、7B、8A、8Bのうち、つま先側の周縁に沿って形成されている凸部7Aの内側に縦横に配列されている複数の凸部7B及び、踵側の周縁に沿って形成されている凸部8Aの内側に縦横に配列されている凸部8Bにはフェルト材9が固着されている。
【0027】
図4に示すように、これらのフェルト材9は、ソール部2の底面から突出する凸部7B平坦な下面に、接着剤または加硫接着によって固着されている。また、図示しないが、踵側の凸部8Bについても、凸部7Bと同様な構造でフェルト材9が固着されている。
【0028】
なお、ここで用いているフェルト材9という用語には、不織布や、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート)発泡樹脂材料等の、床面に付着した油分を吸収して滑り止めの機能を有する、本来のフェルト材と同等な性能を有する材料も含むものとする。
【0029】
また、本実施形態のオーバーシューズ1においては、凸部7A、7B、8A、8Bの位置におけるソール部2の厚みは約3mmであり、フェルト材9には、厚さ約4mmのものを用いているが、フェルト材9の厚さは、オーバーシューズ1の用途や使用場所の状態に応じて適宜変えてよい。
【0030】
なお、フェルト材9は、全ての凸部7A、7B、8A、8Bに固着してもよいが、つま先側周縁と踵側周縁の凸部7A、8Aは、歩行面にある段差等に衝突するとフェルト材9が剥離する可能性があるため、これらの凸部7A、8Aには固着せず、これらの内周側に配置された凸部7B、8Bにのみ固着しておく方が望ましい。
【0031】
また、凸部7A、7B、8A、8Bの周縁は、垂直に切り立ったエッジになっていると汚れが付着して落ちにくいので、鈍角の斜面に形成してあることが望ましい。また、凸部7B、8Bにそれぞれ固着されているフェルト材9の周縁についても、これらの凸部7B、8Bの周縁と同角度で連続するような斜面で形成してあることが望ましい。
【0032】
また、これらの凸部7A、7B、8A、8Bによって構成されるトレッドパターンは、本実施形態のものに限らず、オーバーシューズの使用場所等に応じて様々に異なるパターンで製作することが可能である。
【0033】
次に、前述したように構成されているオーバーシューズ1を靴に装着する場合には、先ず、図5に示すように、オーバーシューズ1の靴包囲部3内に、靴Sのつま先側をソール部2の上面に突き当たるまで斜めに差し込む。
【0034】
この際、靴包囲部3は筒状になっているため、容易に靴Sの前側をオーバーシューズ1内に挿入することができる。この状態で、一方の手でオーバーシューズ1の前寄りの部分のソール部2下面と靴包囲部3の両側面とを包むようにつかんで保持し、タブ6を後方に引っ張る。
【0035】
そうすると、図6に示すように、オーバーシューズ1は、そのゴム素材の弾力性によって前後方向に伸長するので、引っ張った状態で靴Sの踵側をソール部2の上面に当接するまで靴包囲部3内に挿入する。
【0036】
この際、図3における、ソール部2底面のつま先側の凸部7A、7Bと、踵側の凸部8A、8Bによってそれぞれ構成されている滑り止め用のトレッドパターンは、ソール部2が前後に引っ張られたときに、コルゲーション4部分が主に伸長変形するため、形状がほとんど変形することなく、靴Sの底に適正に対応する位置に収まり、且つ、凸部7B、8Bの上に固着されている各フェルト材9の変形も最小限に抑えられる。
【0037】
また、ソール部2の伸長に伴って、これと連続している靴包囲部3も前後方向に伸びるが、その際、靴包囲部3の両側面内側に形成されている薄肉凹部3A(図1参照)によって、柔軟に伸長変形することができる。一方、靴包囲部3の上端近傍部分は、伸縮抑制リブ5が設けられているため、伸長量が他の部分より少なく抑えられる。
【0038】
そして、図7に示すように、靴Sにオーバーシューズ1を完全に装着した状態では、靴包囲部3が靴Sを包み込むように内側に傾倒変位して、靴Sの周囲にぴったりと密着するため、室内の内装作業等の際に、従来の布製のオーバーシューズのように、靴の周囲にだぶついた部分を床面付近に配置されている器具類に引っ掛けたり、自分の足で踏んでつまづくような虞はなく、また、使用中にオーバーシューズ1が靴Sから不用意に脱落してしまうこともない。
【0039】
さらに、内装作業等において油が付着した床面を歩く際には、ソール部2の底面に固着されているフェルト材9によって、床面の油分を吸収して取り除くことができるため、床面が滑り難くなる効果が得られ、安全性を高めることができる。
【0040】
なお、本実施形態のオーバーシューズ1のゴム素材の組成は、下記の通りである。
天然ゴム : 100.0
加硫剤 :イオウ 1.5
加硫助剤 :酸化亜鉛 5.0
加硫助剤 :ステアリン酸 1.0
加硫促進剤:ジフェニール・グアニジン 1.5
老化防止剤:パラフィンワックス 1.0
粘着剤 :クマロンインデン樹脂 1.5
白色補強剤:シリカ 50.0
軟化剤 :プロセスオイル 15.0
顔料 適 量
合 計 176.5
(ここで各数値は、重量比による配合比率を表している。)
【0041】
上記組成のゴム素材を使用している本実施形態におけるオーバーシューズ1は、23cmから32cmまでのサイズの靴に対応できる伸縮性を有している。また、シリカからなる白色補強剤を用いているため、使用中に補強剤が色落ちして床面等を汚す虞はない。
【0042】
しかしながら、本発明のオーバーシューズに用いられるゴム素材の組成はこれに限定するものではなく、また、天然ゴムに配合する各添加剤の配合比率や種類についても、本発明のオーバーシューズの本来の機能を損なわない範囲において適宜変更可能であり、例えば、使用する目的に応じて、添加剤を選択して電気絶縁性や耐薬品性等を高めるようにしてもよい。
【0043】
また、前述した実施形態のものにおいては、靴包囲部3の上端近傍部分の伸縮変形を抑制するための伸縮抑制部を、他の部分よりも厚みを増加させて形成した伸縮抑制リブ5で構成しているが、伸縮抑制部はこのような構造のみに限定するものではない。
【0044】
例えば、ゴム素材で形成されている靴包囲部の上端近傍部分の中に、周方向に当該ゴム素材より弾性伸縮し難い合成樹脂の糸や金属のワイヤ等を埋設したり、靴包囲部の上端近傍部分のみ弾性伸縮し難いゴム素材を用いて伸縮抑制部を構成してもよい。
【0045】
また、前述した実施形態のものにおいては、製作が容易で且つ柔軟な伸縮性が得られることから、ソール部2に形成した波状のコルゲーション4によって易伸縮部を構成しているが、易伸縮部は本実施形態に限定するものではなく、例えば、コルゲーションに変えて、ゴム素材の肉厚の厚い部分と薄い部分で網目状構造にして柔軟に伸縮できる構造としてもよく、また、易伸縮部を他の部分よりの柔軟に伸縮する別のゴム素材を用いて構成して隣接するゴム素材と一体に成形してもよい。
【0046】
さらに、ソール部のゴム素材の肉厚を一部薄くし、柔軟に伸縮変形できるようにして易伸縮部を構成したり、ソール部の途中部分を前後方向に伸縮し易くするために、ソール部底面の幅方向両側から中央に向けて円弧状に括れさせて易伸縮部を構成してもよい。
【0047】
また、本実施形態のものにおいては、図1に示すように、靴包囲部3の内側のコルゲーション4の上方両側部分に薄肉凹部3Aを形成しているが、ゴム素材の柔軟性が大きい場合には、薄肉凹部3Aは省略してもよい。
【0048】
次に、図8は、本発明に係るオーバーシューズの別の実施形態における底面図、図9は、図8におけるB−B位置の部分縦断面図であって、本実施形態のオーバーシューズ1Aは、靴の上に装着して凍結した雪面や路面を歩行する場合に、滑って転倒する事故を防止する目的で使用されるものである。
【0049】
本実施形態のオーバーシューズ1Aは、前述したオーバーシューズ1と同様なゴム素材からなり、ソール部2の底部構造のみが異なっている。
【0050】
すなわち、本実施形態におけるオーバーシューズ1Aにおいては、ソール部2の底面側に縦横に配列されている凸部7B、8Bの一部を除き、これらの内部には、図9に示すような円板状の基部10Aと尖端部10Bからなる滑り止め用鋲体10が、それぞれ尖端部10B側を下方に向けた姿勢で埋め込まれている。
【0051】
同図に示すように、これらの滑り止め用鋲体10は、凸部7Bに垂直方向から荷重が作用していない状態では、全体が凸部7Bの中に埋没している。なお、図示は省略しているが、ソール部2の踵側に設けられている滑り止め用鋲体10が埋め込まれた凸部8Bについても同様である。
【0052】
次に、図10は、路面(歩行面)Rの上で、靴(図示せず)に装着したオーバーシューズ1Aに体重Wを乗せたときの状態を示す、図8におけるB−B位置の部分縦断面図であって、同図に示すように、ソール部2の底面に形成されている凸部7Bは、体重Wによって上下方向に圧縮変形される。
【0053】
その結果、滑り止め用鋲体10の尖端部10Bは、凸部7Aの底面から下方に突出して、凍結した路面Rに食い込み、滑り止めの機能を発揮する。なお、図示していないが、踵側の凸部8Bに設けられている滑り止め用鋲体10についても同様である。
【0054】
また、ソール部2から体重Wが除かれると、これらの凸部7B、8Bは、ゴム素材の弾性復元力によってもとの厚みに戻り、これにともなって、下方に突出していた尖端部10Bはそれぞれ凸部7B、8B内に再び没入する。
【0055】
なお、オーバーシューズ1Aを凍結雪面等の歩行に使用する場合には、尖端部10Bの摩耗を防止するために、硬質の金属材料やセラミックス材料で製作することが望ましいが、歩行面を滑り止め用鋲体10の尖端部10Bで傷つけたくない場合には、滑り止め用鋲体10を硬質ゴム材料等の歩行面より軟質な材料で製作してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフリーサイズオーバーシューズは、船舶の内装作業に特に好適に用いることができる他、住居の新築や改築の際の内装作業や、クリーンルーム、放射線設備における様々な作業、さらには、雨天や降雪の際に靴に装着して靴を濡らさないように保護する用途等、幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 オーバーシューズ
2 ソール部
3 靴包囲部
3A 薄肉凹部3A
4 コルゲーション(易伸縮部)
5 伸縮抑制リブ(伸縮抑制部)
6 タブ
7A、7B、8A、8B凸部
9 フェルト材
10 滑り止め用鋲体
10A 基部
10B 尖端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なサイズの靴に装着可能で、且つ滑り止め機能を高めたソール構造を有するオーバーシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船室の内装作業や、新築や改築時の居室内の内装作業等を行う際に、靴底を覆って床面の汚れを防いだり、あるいは、雨天や降雪の際に靴を濡らさないように保護するために用いられているオーバーシューズは、例えば、特許文献1に記載されているような、布製やビニール製のものが一般的である。
【0003】
図11は、従来用いられている布製のオーバーシューズの1例を示す斜視図であって、同図に示すように、オーバーシューズA1は、全体が布A2で袋状に形成されており、ゴム入りの伸縮自在の開口部A3から靴を挿入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した図11に示すような布製のオーバーシューズは、布を袋状に縫製して作られているために、装着する靴に多少大小のサイズの差があっても装着することができるが、靴を差し込む開口部が常時ゴムの弾力で狭められているため、開口部から靴先をオーバーシューズの奥まで入れることが困難であった。
【0006】
また、オーバーシューズを靴に装着したときには、襞状になった布が靴の周囲にだぶついて、靴底の幅よりもオーバーシューズの幅が広くなるので歩きにくく、また、小さいサイズの靴に装着して歩行すると、オーバーシューズのだぶついた部分を床面近くに配置されている器具類に引っ掛けて損傷したり、自分の足で踏んでつまずく虞があった。
【0007】
また、船室の内装作業で用いる場合には、下方の船室の床面には、鉄錆等の汚水溜まりが存在し、特に、布製のオーバーシューズでは、このような汚水に浸かると濡れて汚れがしみ込んでしまい、内装済みの船室内に入る際に、汚れ除去用マットの上で擦ってもオーバーシューズに付着した汚れを除去することが困難であるため床面を汚してしまう問題があった。
【0008】
さらに、油分が付着している床面上を歩行する場合や、凍結した雪面や路面を歩行する場合には、滑りやすく転倒事故を起こす虞もあった。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来のオーバーシューズの問題点を解消し、様々なサイズの靴にぴったりとフィットし且つ容易に脱着できるとともに、滑り難く安全で防水性・防汚性にも優れたフリーサイズオーバーシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的のために提供される本発明のフリーサイズオーバーシューズは、上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されている。
【0011】
そして、前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成されている。
【0012】
また、前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着するようになっている。
【0013】
そして、請求項1に記載されたフリーサイズオーバーシューズにおいては、これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部の下面には、歩行面の油分を吸収するフェルト材が固着されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載されたフリーサイズオーバーシューズにおいては、これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部には、下面が歩行面に接地して荷重を受けたときに、当該凸部が圧縮変形して下面から尖端部が突出する滑り止め用鋲体が埋設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項2に記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズによれば、靴底を受けるソール部と靴の周囲を覆う靴包囲部が弾性伸縮変形容易なゴム素材によって一体に形成されているため、防水性と耐久性に優れ、様々なサイズの靴に対応することができる。また、汚れが付着しにくく、汚れが付着した場合にも、靴に装着したしたままで簡単に落とすことができる。
【0016】
また、靴に装着する際ソール部が引き伸ばされると、主に易伸縮部が伸長変形するため、その前後に形成されている滑り止め用のトレッドパターンは、形状がほとんど変形することなく靴底に適正に対応する位置に収まるため、滑り止め効果を有効に保つことができる。
【0017】
また、靴包囲部がソール部の周縁部から略垂直に立ち上がった筒状に形成されているため、靴の出し入れを容易に行うことができるとともに、ソール部ならびに靴包囲部を装着する靴のサイズに合わせて前後方向に伸長させて靴包囲部内に靴を収容したときに、靴包囲部が内側に傾倒変位して靴の周囲に密着するため、様々なサイズの靴にぴったりとフィットし、従来の布製のオーバーシューズのように余った靴の周囲に襞状にはみ出した部分を床面近くに配置されている器具類に引っ掛けたり、自分の足で踏んでつまづく虞がない。
【0018】
そして、特に、請求項1記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズにおいては、床面等の歩行面に油分が付着して滑り易くなっている場合にも、フェルト材が歩行面の油分を吸収することで滑り難くなる効果が得られ、安全性を高めることができる。
【0019】
また、請求項2記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズにおいては、靴に装着して凍結した雪面や路面を歩行する場合に、凸部下面から滑り止め用鋲体の尖端部が突出して凍結面に食い込むことで滑り止め効果が得られ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態を示す底面図である。
【図4】図3のA−A位置の部分縦断面図である。
【図5】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態における靴への装着方法を説明する縦断面図である。
【図6】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態における靴への装着を完了した状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係るオーバーシューズの1実施形態における靴へ装着した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るオーバーシューズの別の実施形態における底面図である。
【図9】図8のB−B位置の部分縦断面図である。
【図10】体重が作用して滑り止め用鋲体の尖端部が底面から突出した状態を示す、図8のB−B位置の部分縦断面図である。
【図11】従来用いられている布製のオーバーシューズの1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明のオーバーシューズの1実施形態を示す斜視図、図2はその縦断面図、図3はその底面図であって、これらの図に示すように、本発明のオーバーシューズ1は、上面で靴底を受けるソール部2と、このソール部2の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部2と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部3から構成されている。また、これらのソール部2と靴包囲部3とは、弾性変形容易なゴム素材によって一体に成形されている。
【0022】
本実施形態のオーバーシューズ1は、種々の靴の大きさに適合可能なフリーサイズになっており、靴に装着していない状態におけるソール部2の前後方向の長さは、対応可能な靴のサイズの最小長さのものより短く製作されていて、その前後方向途中位置には、靴に装着する際に、前後方向に大きく伸縮変形できるように、易伸縮部としての波状のコルゲーション4が形成されている。
【0023】
また、本実施形態のものにおいては、図1に示すように、筒状になっている靴包囲部3の内側のコルゲーション4の上方両側部分に、薄肉凹部3Aを形成してソール部2に追従して容易に伸縮できるようにしてある。
一方、靴包囲部3の上端近傍部分は、その略全周に亘って、他の部分よりも厚みを増加させて形成した、伸縮抑制部としての伸縮抑制リブ5が設けられている。
【0024】
前記伸縮抑制リブ5を設けたことによって、オーバーシューズ1を前後方向に引っ張ってソール部2とともに筒状の靴包囲部3を前後方向に引き伸ばしたときに、靴包囲部3の上端近傍部分の伸び量が他の部分よりも少なく制限されるため、靴包囲部3の上部が内側に倒れ込むように変位する。
【0025】
靴包囲部3の後部上端には、オーバーシューズ1を靴に着脱する際、指でつまんで引っ張るためのタブ6が伸縮抑制リブ5に連続して一体に形成されている。また、ソール部2の底面側には、図3に示すように、コルゲーション4を間に挟んで、つま先側と踵側にはそれぞれ多数の凸部7A、7B、8A、8Bからなる滑り止め用のトレッドパターンが形成されている。
【0026】
この実施形態のものにおいては、これらの凸部7A、7B、8A、8Bのうち、つま先側の周縁に沿って形成されている凸部7Aの内側に縦横に配列されている複数の凸部7B及び、踵側の周縁に沿って形成されている凸部8Aの内側に縦横に配列されている凸部8Bにはフェルト材9が固着されている。
【0027】
図4に示すように、これらのフェルト材9は、ソール部2の底面から突出する凸部7B平坦な下面に、接着剤または加硫接着によって固着されている。また、図示しないが、踵側の凸部8Bについても、凸部7Bと同様な構造でフェルト材9が固着されている。
【0028】
なお、ここで用いているフェルト材9という用語には、不織布や、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート)発泡樹脂材料等の、床面に付着した油分を吸収して滑り止めの機能を有する、本来のフェルト材と同等な性能を有する材料も含むものとする。
【0029】
また、本実施形態のオーバーシューズ1においては、凸部7A、7B、8A、8Bの位置におけるソール部2の厚みは約3mmであり、フェルト材9には、厚さ約4mmのものを用いているが、フェルト材9の厚さは、オーバーシューズ1の用途や使用場所の状態に応じて適宜変えてよい。
【0030】
なお、フェルト材9は、全ての凸部7A、7B、8A、8Bに固着してもよいが、つま先側周縁と踵側周縁の凸部7A、8Aは、歩行面にある段差等に衝突するとフェルト材9が剥離する可能性があるため、これらの凸部7A、8Aには固着せず、これらの内周側に配置された凸部7B、8Bにのみ固着しておく方が望ましい。
【0031】
また、凸部7A、7B、8A、8Bの周縁は、垂直に切り立ったエッジになっていると汚れが付着して落ちにくいので、鈍角の斜面に形成してあることが望ましい。また、凸部7B、8Bにそれぞれ固着されているフェルト材9の周縁についても、これらの凸部7B、8Bの周縁と同角度で連続するような斜面で形成してあることが望ましい。
【0032】
また、これらの凸部7A、7B、8A、8Bによって構成されるトレッドパターンは、本実施形態のものに限らず、オーバーシューズの使用場所等に応じて様々に異なるパターンで製作することが可能である。
【0033】
次に、前述したように構成されているオーバーシューズ1を靴に装着する場合には、先ず、図5に示すように、オーバーシューズ1の靴包囲部3内に、靴Sのつま先側をソール部2の上面に突き当たるまで斜めに差し込む。
【0034】
この際、靴包囲部3は筒状になっているため、容易に靴Sの前側をオーバーシューズ1内に挿入することができる。この状態で、一方の手でオーバーシューズ1の前寄りの部分のソール部2下面と靴包囲部3の両側面とを包むようにつかんで保持し、タブ6を後方に引っ張る。
【0035】
そうすると、図6に示すように、オーバーシューズ1は、そのゴム素材の弾力性によって前後方向に伸長するので、引っ張った状態で靴Sの踵側をソール部2の上面に当接するまで靴包囲部3内に挿入する。
【0036】
この際、図3における、ソール部2底面のつま先側の凸部7A、7Bと、踵側の凸部8A、8Bによってそれぞれ構成されている滑り止め用のトレッドパターンは、ソール部2が前後に引っ張られたときに、コルゲーション4部分が主に伸長変形するため、形状がほとんど変形することなく、靴Sの底に適正に対応する位置に収まり、且つ、凸部7B、8Bの上に固着されている各フェルト材9の変形も最小限に抑えられる。
【0037】
また、ソール部2の伸長に伴って、これと連続している靴包囲部3も前後方向に伸びるが、その際、靴包囲部3の両側面内側に形成されている薄肉凹部3A(図1参照)によって、柔軟に伸長変形することができる。一方、靴包囲部3の上端近傍部分は、伸縮抑制リブ5が設けられているため、伸長量が他の部分より少なく抑えられる。
【0038】
そして、図7に示すように、靴Sにオーバーシューズ1を完全に装着した状態では、靴包囲部3が靴Sを包み込むように内側に傾倒変位して、靴Sの周囲にぴったりと密着するため、室内の内装作業等の際に、従来の布製のオーバーシューズのように、靴の周囲にだぶついた部分を床面付近に配置されている器具類に引っ掛けたり、自分の足で踏んでつまづくような虞はなく、また、使用中にオーバーシューズ1が靴Sから不用意に脱落してしまうこともない。
【0039】
さらに、内装作業等において油が付着した床面を歩く際には、ソール部2の底面に固着されているフェルト材9によって、床面の油分を吸収して取り除くことができるため、床面が滑り難くなる効果が得られ、安全性を高めることができる。
【0040】
なお、本実施形態のオーバーシューズ1のゴム素材の組成は、下記の通りである。
天然ゴム : 100.0
加硫剤 :イオウ 1.5
加硫助剤 :酸化亜鉛 5.0
加硫助剤 :ステアリン酸 1.0
加硫促進剤:ジフェニール・グアニジン 1.5
老化防止剤:パラフィンワックス 1.0
粘着剤 :クマロンインデン樹脂 1.5
白色補強剤:シリカ 50.0
軟化剤 :プロセスオイル 15.0
顔料 適 量
合 計 176.5
(ここで各数値は、重量比による配合比率を表している。)
【0041】
上記組成のゴム素材を使用している本実施形態におけるオーバーシューズ1は、23cmから32cmまでのサイズの靴に対応できる伸縮性を有している。また、シリカからなる白色補強剤を用いているため、使用中に補強剤が色落ちして床面等を汚す虞はない。
【0042】
しかしながら、本発明のオーバーシューズに用いられるゴム素材の組成はこれに限定するものではなく、また、天然ゴムに配合する各添加剤の配合比率や種類についても、本発明のオーバーシューズの本来の機能を損なわない範囲において適宜変更可能であり、例えば、使用する目的に応じて、添加剤を選択して電気絶縁性や耐薬品性等を高めるようにしてもよい。
【0043】
また、前述した実施形態のものにおいては、靴包囲部3の上端近傍部分の伸縮変形を抑制するための伸縮抑制部を、他の部分よりも厚みを増加させて形成した伸縮抑制リブ5で構成しているが、伸縮抑制部はこのような構造のみに限定するものではない。
【0044】
例えば、ゴム素材で形成されている靴包囲部の上端近傍部分の中に、周方向に当該ゴム素材より弾性伸縮し難い合成樹脂の糸や金属のワイヤ等を埋設したり、靴包囲部の上端近傍部分のみ弾性伸縮し難いゴム素材を用いて伸縮抑制部を構成してもよい。
【0045】
また、前述した実施形態のものにおいては、製作が容易で且つ柔軟な伸縮性が得られることから、ソール部2に形成した波状のコルゲーション4によって易伸縮部を構成しているが、易伸縮部は本実施形態に限定するものではなく、例えば、コルゲーションに変えて、ゴム素材の肉厚の厚い部分と薄い部分で網目状構造にして柔軟に伸縮できる構造としてもよく、また、易伸縮部を他の部分よりの柔軟に伸縮する別のゴム素材を用いて構成して隣接するゴム素材と一体に成形してもよい。
【0046】
さらに、ソール部のゴム素材の肉厚を一部薄くし、柔軟に伸縮変形できるようにして易伸縮部を構成したり、ソール部の途中部分を前後方向に伸縮し易くするために、ソール部底面の幅方向両側から中央に向けて円弧状に括れさせて易伸縮部を構成してもよい。
【0047】
また、本実施形態のものにおいては、図1に示すように、靴包囲部3の内側のコルゲーション4の上方両側部分に薄肉凹部3Aを形成しているが、ゴム素材の柔軟性が大きい場合には、薄肉凹部3Aは省略してもよい。
【0048】
次に、図8は、本発明に係るオーバーシューズの別の実施形態における底面図、図9は、図8におけるB−B位置の部分縦断面図であって、本実施形態のオーバーシューズ1Aは、靴の上に装着して凍結した雪面や路面を歩行する場合に、滑って転倒する事故を防止する目的で使用されるものである。
【0049】
本実施形態のオーバーシューズ1Aは、前述したオーバーシューズ1と同様なゴム素材からなり、ソール部2の底部構造のみが異なっている。
【0050】
すなわち、本実施形態におけるオーバーシューズ1Aにおいては、ソール部2の底面側に縦横に配列されている凸部7B、8Bの一部を除き、これらの内部には、図9に示すような円板状の基部10Aと尖端部10Bからなる滑り止め用鋲体10が、それぞれ尖端部10B側を下方に向けた姿勢で埋め込まれている。
【0051】
同図に示すように、これらの滑り止め用鋲体10は、凸部7Bに垂直方向から荷重が作用していない状態では、全体が凸部7Bの中に埋没している。なお、図示は省略しているが、ソール部2の踵側に設けられている滑り止め用鋲体10が埋め込まれた凸部8Bについても同様である。
【0052】
次に、図10は、路面(歩行面)Rの上で、靴(図示せず)に装着したオーバーシューズ1Aに体重Wを乗せたときの状態を示す、図8におけるB−B位置の部分縦断面図であって、同図に示すように、ソール部2の底面に形成されている凸部7Bは、体重Wによって上下方向に圧縮変形される。
【0053】
その結果、滑り止め用鋲体10の尖端部10Bは、凸部7Aの底面から下方に突出して、凍結した路面Rに食い込み、滑り止めの機能を発揮する。なお、図示していないが、踵側の凸部8Bに設けられている滑り止め用鋲体10についても同様である。
【0054】
また、ソール部2から体重Wが除かれると、これらの凸部7B、8Bは、ゴム素材の弾性復元力によってもとの厚みに戻り、これにともなって、下方に突出していた尖端部10Bはそれぞれ凸部7B、8B内に再び没入する。
【0055】
なお、オーバーシューズ1Aを凍結雪面等の歩行に使用する場合には、尖端部10Bの摩耗を防止するために、硬質の金属材料やセラミックス材料で製作することが望ましいが、歩行面を滑り止め用鋲体10の尖端部10Bで傷つけたくない場合には、滑り止め用鋲体10を硬質ゴム材料等の歩行面より軟質な材料で製作してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフリーサイズオーバーシューズは、船舶の内装作業に特に好適に用いることができる他、住居の新築や改築の際の内装作業や、クリーンルーム、放射線設備における様々な作業、さらには、雨天や降雪の際に靴に装着して靴を濡らさないように保護する用途等、幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 オーバーシューズ
2 ソール部
3 靴包囲部
3A 薄肉凹部3A
4 コルゲーション(易伸縮部)
5 伸縮抑制リブ(伸縮抑制部)
6 タブ
7A、7B、8A、8B凸部
9 フェルト材
10 滑り止め用鋲体
10A 基部
10B 尖端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されてなり、
前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成され、
これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部の下面には、歩行面の油分を吸収するフェルト材が固着され、
前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、
ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着することを特徴とするフリーサイズオーバーシューズ。
【請求項2】
上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されてなり、
前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成され、
これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部には、下面が歩行面に接地して荷重を受けたときに、当該凸部が圧縮変形して下面から尖端部が突出する滑り止め用鋲体が埋設され、
前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、
ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着することを特徴とするフリーサイズオーバーシューズ。
【請求項1】
上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されてなり、
前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成され、
これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部の下面には、歩行面の油分を吸収するフェルト材が固着され、
前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、
ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着することを特徴とするフリーサイズオーバーシューズ。
【請求項2】
上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されてなり、
前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成され、
これらのトレッドパターンは、平坦な下面を有する複数の凸部から構成されているとともに、それぞれのトレッドパターンを構成する凸部の少なくとも一部には、下面が歩行面に接地して荷重を受けたときに、当該凸部が圧縮変形して下面から尖端部が突出する滑り止め用鋲体が埋設され、
前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、
ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着することを特徴とするフリーサイズオーバーシューズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−275(P2012−275A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138124(P2010−138124)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(595042896)スタ−コックス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(595042896)スタ−コックス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]