説明

フルオロポリエーテル化合物、これを含有する潤滑剤ならびに磁気ディスク

【課題】 ヘッドと接触しても分解しない安定した化合物で、かつヘッドとディスクのスペーシングを低減できる化合物およびこれを用いた潤滑剤ならびに磁気ディスクを提供する。
【解決手段】 式(1)で表される化合物、この化合物を含有する潤滑剤及び磁気ディスク
−(O−Z−R−X) (1)
式中Zは−CHCHO−又は−CHCH(OH)CHO−、
Rは、−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−であり、nは0〜20の実数、Xは−OH、−O(CH)mOH、−
OCHCH(OH)CHOH、−OCHCH(OH)CHO−C、−OC
CH(OH)CHO−C−OCH、mは1〜6の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族基と水酸基を有するフルオロポリエーテル化合物、これを含有する潤滑剤、ならびにこれを用いた磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの記録密度の増大に伴い、記録媒体である磁気ディスクと情報の記録・再生を行うヘッドとの距離は殆ど接触するまで狭くなっている。磁気ディスク表面にはヘッドとの接触・摺動の際の摩耗抑制や、ディスク表面の汚染防止等の目的で、炭素保護膜や潤滑剤被膜が設けられている。
【0003】
炭素保護膜は、一般にスパッタ法やCVD法で製膜される。ディスクの表面保護は、炭素保護膜と、この上層に位置する潤滑剤被膜の両者で担うことになる。
【0004】
潤滑剤としては一般に官能基を有するフルオロポリエーテルが用いられている。官能基としては、水酸基やアミノ基、さらにはシクロホスファゼン基などがある。具体的には、分子末端に水酸基を有する潤滑剤としてSolvay Solexis製のFomblin ZTETRAOL、さらには分子の一方の末端に水酸基、他方の末端にシクロホスファゼン基を有する株式会社MORESCO製のPHOSFAROL A20Hなどがある。さらに、分子末端に加えて分子鎖中にも水酸基を有する潤滑剤も提案されている(特許文献1)。
【0005】
Fomblin ZTETRAOLは、分子両末端に位置する水酸基によりディスクへの良好な吸着性を示し、ディスクが高速回転しても飛散せず、潤滑剤被膜を維持することができる。さらに、特許文献1では、ヘッドとディスクのスペーシングに対する潤滑剤の膜厚の影響について記されている。スペーシングを低減するには潤滑剤一分子分の膜厚を低減することが有効であり、分子末端に加えて分子鎖中にも水酸基を有する潤滑剤が、潤滑剤一分子あたりの膜厚を低減できると提案されている。この技術により潤滑剤一分子分の膜厚を低くすることが可能となる。
【0006】
しかし、これらのフルオロポリエーテル化合物は、ルイス酸への耐久性が低く、ヘッドの部材中のAlと反応して、主鎖の切断が起こる(例えば非特許文献1参照)。この切断が進行すると化合物は低分子化し、最終的には磁気ディスク上から揮発・消失してしまうため、ヘッドとディスクの接触・摺動をともなう系では潤滑剤被膜を維持できなくなる。
ところで、潤滑剤の保護層への付着特性を向上させ、近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量のもとで、厳しい環境耐性を有する磁気ディスクに用いられる潤滑剤として、パーフルオロポリエーテル主鎖を有し且つ末端にヒドロキシル基を有するパーフルオロポリエーテル基同士が、構造中にヒドロキシル基を有する連結基を介して結合している化合物を含有する潤滑剤が提案されている(特許文献2)。しかし、特許文献2には実質的な実施例が記載されていず、前記例示のジエポキシ化合物を塩基条件下で反応させることにより、前記の例示潤滑剤化合物を製造したとあるだけで、どのジエポキシ化合物を用いたのかも不明で、生成物を特定するNMR等のデータなども全く無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−70173
【特許文献2】特開2010−86598
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Macromolecules、1992年、25巻、p6791−6799
【非特許文献2】Journal of Tribology,October 2004,Vol.126,p751
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ヘッドと接触しても分解しない安定した化合物で、かつヘッドとディスクのスペーシングを低減できる化合物およびこれを用いた潤滑剤ならびに磁気ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の発明に係る。
1.式(1)で表される化合物
−(O−Z−R−X) (1)
式中Zは−CHCHO−又は−CHCH(OH)CHO−、
Rは、−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−であり、nは0〜20の実数、Xは−OH、−O(CH)mOH、−
OCHCH(OH)CHOH、−OCHCH(OH)CHO−C、−OC
CH(OH)CHO−C−OCH、mは1〜6の整数である。
【0011】
2.式(1)の化合物を含有する潤滑剤。
3.支持体上に少なくとも記録層、保護層を形成し、その表面に潤滑層を有する磁気ディスクにおいて、該潤滑層が式(1)で表される化合物を含有する磁気ディスク。
【発明の効果】
【0012】
本発明の芳香族基と水酸基を有するフルオロポリエーテル化合物は、一分子あたりの膜厚低減と耐分解性という2つの課題を同時に解決する潤滑剤である。また、本発明の化合物を潤滑剤として用いた磁気ディスクは、ヘッドとディスクのスペーシングを低減でき、かつヘッドとディスクの接触摺動においても優れた耐久性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
潤滑剤の合成方法
式(1)で表される本発明の潤滑剤は、例えば片方の末端に水酸基を有しており、かつ他方の末端にエステル基またはシリル基またはアルコキシ基を有する直鎖フルオロポリエーテル(a)と、化合物(b1)、(c1)若しくは(d1)のような2つ以上のエポキシ基を有するフェノキシ化合物又は化合物(b2)、(c2)若しくは(d2)のような2つ以上のハロエチル基を有するフェノキシ化合物[以下、これらフェノキシ化合物を化合物(B)ということがある]を反応させることにより得られる。具体的には以下の方法により合成される。具体的には以下の方法により合成される。
【0014】
(1)片方の末端に水酸基を有しており、かつ他方の末端にエステル基またはシリル基またはアルコキシ基を有する直鎖フルオロポリエーテル(a)の合成
両末端に水酸基を有する直鎖フルオロポリエーテル(e)と、水酸基と反応してエステル基またはシリル基またはアルコキシ基を形成する化合物(f)を反応させる。反応温度は10〜60℃、好ましくは20〜40℃である。反応時間は、2〜20時間、好ましくは10〜15時間である。化合物(f)の使用量は、フルオロポリエーテル(e)に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。反応促進剤を使用しても良い。その後、例えばカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、片方の末端に水酸基を有し、かつ他方の末端にエステル基またはシリル基またはアルコキシ基を有する直鎖フルオロポリエーテル(a)を得る。反応は溶剤中で行ってもよい。溶剤としてジメチルホルムアルデヒド、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。反応促進剤としてイミダゾール、ピリジン、水素化ナトリウムなどを例示することができる。
【0015】
両末端に水酸基を有するフルオロポリエーテル(e)としては、例えばHOCHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCHOHで示
される化合物を例示できる。このフルオロポリエーテルの数平均分子量は300〜2000、好ましくは400〜1200、より好ましくは500〜800である。ここで数平均分子量は日本電子製JNM−ECX400による19F−NMRによって測定された値である。NMRの測定において、試料を溶媒へは希釈せず、試料そのものを測定に使用した。ケミカルシフトの基準は、フルオロポリエーテルの骨格構造の一部である既知のピークをもって代用した。
nは0〜20の実数であり、好ましくは0〜10の実数であり、さらに好ましくは0〜4の実数であり、特に好ましくは1〜3の実数であり、最も好ましくは1〜2の実数である。
【0016】
上記フルオロポリエーテル(e)は、分子量分布を有する化合物であり、重量平均分子量/数平均分子量で示される分子量分布(PD)として、1.0〜1.5であり、好ましくは1.0〜1.3であり、より好ましくは1.0〜1.1である。なお、当該分子量分布は、東ソー製HPLC−8220GPCを用いて、ポリマーラボラトリー製のカラム(PLgel Mixed E)、溶離液はHCFC系代替フロン、基準物資としては、無官能のパーフルオロポリエーテルを使用して得られる特性値である。
【0017】
水酸基と反応してエステル基またはシリル基またはアルコキシ基を形成する化合物(f)としては、例えば酸無水物、シリルハライド、アルキルハライドなどを挙げることができる。
酸無水物としては無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、ROR(R及びRは同一又は異なって、CHCO、PhCO、CHSO、PhSO、CF
CHCO、CHSO、Phはフェニルを示す)で表される化合物を例示で
きる。RORで表される化合物の具体例としては無水トリフルオロメチル酢酸、無水安息香酸、p−トルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、無水酢酸、酢酸安息香酸無水物、メタンスルホン酸無水物、ベンゼンスルホン酸無水物などを例示できる。
【0018】
シリルハライドとしては(RSiY、R(RSiY、RSi
Y(Rは炭素数1〜4のアルキル又はPh、Rは炭素数1〜18のアルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、Ph、PhCH、ペンタフルオロフェニル、シアノプロピル、ビニル、Rは炭素数1〜2のアルキル又はPh、Rはフェニル基の置換した炭素数1〜4のアルキルを示す)で表される化合物を例示できる。具体的にはトリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、t−ブチルジフェニルシリルクロリド、(3−シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、ベンジルクロロジメチルシラン、ブチルジメチルクロロシラン、クロロ(デシル)ジメチルシラン、クロロ(ドデシル)ジメチルシラン、クロロジメチル(3−フェニルプロピル)シラン、クロロジメチルフェニルシラン、クロロジメチルプロピルシラン、クロロジメチルビニルシラン、ジエチルイソプロピルシリルクロリド、ジメチル−n−オクチルクロロシラン、ジメチルエチルシリルクロリド、ジメチルイソプロピルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、メチルオクタデシル(3−フェニルプロピル)クロロシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、t−ブトキシジフェニルクロロシラン、t−ブチルジフェニルクロロシラン、トリフェニルクロロシランなどを例示できる。
【0019】
アルキルハライドとしてはAY(Aは炭素数1〜5のアルキル、Yは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを示す)で表される化合物を例示できる。具体的にはクロロメタン、ブロモメタン、ヨードメタン、クロロエタン、ブロモエタン、ヨードエタン、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1−ヨードプロパン、2−ヨードプロパン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、2−ブロモブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、1−ヨードブタン、2−ヨード−2−メチルプロパン、2−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルブタン、1−ヨード−3−メチルブタン、1−ブロモ−3−メチルブタン、1−ブロモペンタン、2−ブロモ−2−メチルブタン、3−ブロモペンタンなどを挙げることができる。
【0020】
例えば、化合物(e)としてHOCHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCHOHを用い、化合物(f)として無水酢酸を用いた場合、両者の反応により、CHCOOCHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCHOHと、CHCOOHが生成し、この前者の化合物が化合物(a)である。
また化合物(f)としてトリメチルシリルクロリドを用いた場合、化合物(a)として(CHSiOCHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCHOHが生成する。
【0021】
(2)本発明の潤滑剤の合成
上記で得られるフルオロポリエーテル(a)と、エポキシ基又はハロエチル基を2つ以上有するフェノキシ化合物(B)を触媒またはアルカリ金属の存在下、反応させる。ハロエチル基としてはクロロエチル基、ブロモエチル基、ヨードエチル基を例示することができる。反応温度は50〜100℃、好ましくは70〜90℃である。反応時間は、20〜100時間、好ましくは50〜80時間である。上記化合物(a)に対して、化合物(B)を0.2〜1.0当量、触媒を0.05〜0.1当量またはアルカリ金属を1.0〜2.0当量使用するのが好ましい。触媒としてt−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウム、水素化ナトリウムなどのアルカリ化合物、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムなどを用いることができる。反応は溶剤中で行ってもよい。溶剤としてt−ブタノール、トルエン、キシレンなどを用いることができる。その後、例えば水洗、脱水する。その後、パーフルオロポリエーテルの片方の末端に残存しているエステル基またはシリル基またはアルコキシ基などの保護基を加水分解などにより脱保護する。これによりX=−OHの本発明の化合物(1)が得られる。テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムのような脱保護促進剤を用いても良い。
化合物(B)の具体例を以下に示す。化合物(b1)は1,3−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼンである。1,2−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼンも使用できる。化合物(b2)は1,4−ビス(2−ブロモエトキシ)ベンゼンである。1,2−異性体、1,3−異性体も使用できる。
化合物(c1)はビス(4-グリシジルオキシフェニル)メタンである。化合物(c2)はビス(4-ブロモエトキシフェニル)メタンである。
化合物(d1)はトリス(4-グリシジルオキシフェニル)メタンである。化合物(d2)はトリス(4−ブロモエトキシフェニル)メタンである。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
このX=−OHの化合物にアルカリ金属、Y(CH)mOH(Yは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを示す、mは1〜6の整数である。)で表わされるハロアルコールを反応させることによりX=−O(CH)mOHの本発明の化合物(1)が得られる。mは1〜4が好ましく、2〜4が更に好ましい。アルカリ金属としてナトリウム、カリウムなどを用いることができる。
このX=−OHの化合物にグリシドールを触媒の存在下、反応させることによりX=−OCHCH(OH)CHOHの本発明の化合物(1)が得られる。
このX=−OHの化合物にグリシジルフェニルエーテルを触媒の存在下、反応させることによりX=−OCHCH(OH)CHO−Cの本発明の化合物(1)が得られる。
このX=−OHの化合物にグリシジル4−メトキシフェニルエーテルを触媒の存在下、反応させることによりX=−OCHCH(OH)CHO−C−OCHの本発明の化合物(1)が得られる。
【0029】
これらの反応において、反応温度は50〜100℃、好ましくは70〜90℃である。反応時間は、20〜100時間、好ましくは50〜80時間である。反応は溶剤中で行ってもよい。X=−OHの本発明の化合物(1)の水酸基に対して、アルカリ金属を1.0〜2.0当量または触媒を0.05〜0.1当量、Y(CH)mOH、グリシドール、グリシジルフェニルエーテルまたはグリシジル4−メトキシフェニルエーテルを1.0〜2.0当量使用するのが好ましい。その後、例えば水洗、脱水し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする化合物がフラクションとして得られる。
【0030】
本発明の化合物を磁気ディスク表面に塗布するには、化合物を溶剤に希釈して塗布する方法が好ましい。溶剤としては、例えば3M製PF−5060、PF−5080、HFE−7100,HFE−7200、DuPont製Vertrel−XF等が挙げられる。希釈後の化合物の濃度は1wt%以下、好ましくは0.001〜0.1wt%である。
本発明の化合物を単独使用する以外にも、例えばSolvay Solexis製のFomblin ZdolやZtetraol、Zdol TX、AM、ダイキン工業製のDemnum、Dupont製のKrytoxなどと任意の比率で混合して使用することもできる。
【0031】
本発明の化合物は、磁気ディスク装置内の磁気ディスクとヘッドの低スペーシング化を実現し、さらに摺動耐久性を向上させるための潤滑剤としての用途が挙げられる。また、本発明の化合物は、分子末端の水酸基による炭素保護膜に存在する極性部位との相互作用、加えて分子鎖中の芳香族基による炭素保護膜に存在する炭素の不飽和結合との相互作用を形成することを特徴とする。従って、磁気ディスク以外にも炭素保護膜を有する磁気ヘッドや、光磁気記録装置、磁気テープ等や、プラスチックなどの有機材料の表面保護膜、さらにはガラス、金属などの無機材料の表面保護膜としても応用できる。
【0032】
図1に本発明の磁気ディスク断面の模式図を示す。本発明の磁気ディスクは、まず支持体1上に少なくとも1層以上の記録層2、その上に保護層3、更にその上に本発明の化合物を含有する潤滑層4を最外層として有する構成である。支持体としてはアルミニウム合金、ガラス等のセラミックス、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0033】
磁気ディスクの記録層である磁性層の構成材料としては鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体を形成可能な元素を中心として、これにクロム、白金、タンタル等を加えた合金、又はそれらの酸化物が挙げられる。これらはメッキ法、或いはスパッタ法等で形成される。保護層の材料はカーボン、SiC、SiO等が挙げられる。これらはスパッタ法、或いはCVD法で形成される。
【0034】
現在、流通している潤滑層の厚さは30Å以下であるため、粘性が20℃で100mPa・s程度以上の潤滑剤をそのまま塗布したのでは膜厚が大きくなりすぎる恐れがある。そこで塗布の際は溶剤に溶解したものを用いる。本発明の化合物を潤滑剤として単独で使用する場合も、他の潤滑剤と混合して使用する場合も、溶剤に溶解した方が必要な膜厚に制御しやすい。但し、濃度は塗布方法・条件、混合割合等により異なる。本発明の潤滑剤の膜厚は、5〜15Åが好ましい。
【0035】
下地層に対する潤滑剤の吸着を促進させるために、熱処理や紫外線処理を行うことができる。熱処理温度は、60〜150℃、好ましくは80〜150℃である。紫外線処理では、185nmと254nmの波長を主波長とする紫外線を用いるのが好ましい。
【0036】
本発明の磁気ディスクは、ディスクを格納し、情報の記録・再生・消去を行うためのヘッドやディスクを回転するためのモーター等が装備されている磁気ディスクドライブとそのドライブを制御するための制御系からなる磁気ディスク装置に応用できる。
本発明の磁気ディスク、およびそれを応用した磁気ディスク装置の用途としては電子計算機、ワードプロセッサー等の外部メモリーが挙げられる。またナビゲーションシステム、ゲーム、携帯電話、PHS等の各種機器、及びビルの防犯、発電所等の管理・制御システムの内部・外部記録装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の磁気ディスクの構成を示す断面模式図である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、19F−NMRは溶媒;なし、基準物質:生成物中のOCF2CF2CF2CF2Oを−125.8ppmとして、H−NMRは溶媒:なし、基準物質:DOの条件で測定した。
【0039】
実施例1
HO−R−OCHCH(OH)CH−O−C−O−CHCH(OH)CH−O−R−OH(化合物1)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアルデヒド(50g)、HOCHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCHOHで表わされるフルオロポリエーテル(n=1.5、数平均分子量700、分子量分布1.15)100g、トリイソプロピルシリルクロリド(25g)およびイミダゾール(11g)を30℃で12時間攪拌した。その後、水洗、脱水、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、一方の末端に一つの水酸基を有し、もう一方の末端にトリイソプロピルシリル基を有した化合物(a1)を56g得た。この化合物(a1)(56g)をt−ブタノール(28g)に溶解させ、式(b1)で表される化合物(7g)とt−ブトキシカリウム(0.4g)を加えて、70℃で80時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、テトラブチルアンモニウムフルオリドの1Mテトラヒドロフラン溶液(52ml)を混合させた後、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物1を41g得た。
化合物1は、無色透明液体であり、20℃での密度は、1.75g/cmであった。NMRを用いて行った化合物1の同定結果を示す。
【0040】
19F−NMR(溶媒;なし、基準物質:生成物中のOCF2CF2CF2CF2Oを−125.8ppmとする。)
δ=−83.5ppm
〔18F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−123.3ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=−120.3ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OH〕,
δ=−125.8ppm
〔10F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.1ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OH〕,
δ=−127.6ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−C−〕,
n=1.3
【0041】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.8ppm
〔22H,HOCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=6.1ppm、6.7ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−C−〕
【0042】
実施例2
HOCHCH(OH)CHO−R−OCHCH(OH)CH−O−C−O−CHCH(OH)CHO−R−OCHCH(OH)CHOH(化合物2)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
実施例1で得られた化合物1(10g)をt−ブタノール(5g)に溶解させ、グリシドール(1.2g)とt−ブトキシカリウム(0.1g)を加えて、70℃で80時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物2を6g得た。
化合物2は、無色透明液体であり、20℃での密度は、1.69g/cmであった。NMRを用いて行った化合物2の同定結果を示す。
【0043】
19F−NMR
δ=−83.5ppm
〔19F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−120.3ppm
〔8F,HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=−125.8ppm
〔11F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.6ppm
〔8F,HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
n=1.4
【0044】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.8ppm
〔34H,HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−C−〕,
δ=6.1ppm、6.7ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕
【0045】
実施例3
HOCHCHO−R−OCHCH(OH)CH−O−C−O−CHCH(OH)CHO−R−OCHCHOH(化合物3)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
実施例1で得られた化合物1(10g)をDuPont製Vertrel−XF(40g)に溶解させ、金属ナトリウム(0.3g)を加えて70℃で20時間加熱攪拌した後、2−ブロモエタノール(1.9g)を加えて、70℃で60時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物3を5g得た。
化合物3は、無色透明液体であり、20℃での密度は、1.72g/cmであった。NMRを用いて行った化合物3の同定結果を示す。
【0046】
19F−NMR
δ=−83.5ppm
〔19F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−120.3ppm
〔8F,HOCH2CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=−125.8ppm
〔11F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.6ppm
〔8F,HOCH2CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
n=1.4
【0047】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.8ppm
〔30H,HOCH2CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=6.1ppm、6.7ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕
【0048】
実施例4
CO−C−OCHCH(OH)CHO−R−OCHCH(OH)CH−O−C−O−CHCH(OH)CHO−R−OCHCH(OH)CHO−C−OCH(化合物4)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
実施例1で得られた化合物1(10g)をt−ブタノール(5g)に溶解させ、グリシジル4−メトキシフェニルエーテル(2.7g)とt−ブトキシカリウム(0.1g)を加えて、70℃で80時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物4を8g得た。
化合物4は、無色透明液体であり、20℃での密度は、1.67g/cmであった。NMRを用いて行った化合物4の同定結果を示す。
【0049】
19F−NMR
δ=−83.5ppm
〔18F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−120.3ppm
〔8F,HCOCOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=−125.8ppm
〔10F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.6ppm
〔8F,HCOCOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
n=1.3
【0050】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.1〜3.8ppm
〔38H,HCOCOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕,
δ=6.1〜6.7ppm
〔12H,HCOCOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕
【0051】
実施例5
HO−R−OCHCH−O−C−O−CHCH−O−R−OH(化合物5)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
実施例1において、化合物(b1)(7g)の代わりに化合物(b2)(10g)、t−ブトキシカリウム(0.4g)の代わりに水素化ナトリウム(2.4g)を用いた以外は実施例1と同様にして化合物5を31g得た。
化合物5は、白色固体であった。NMRを用いて行った化合物5の同定結果を示す。
【0052】
19F−NMR(溶媒;なし、基準物質:生成物中のOCF2CF2CF2CF2Oを−125.8ppmとする。)
δ=−83.5ppm
〔18F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−123.3ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=−120.3ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OH〕,
δ=−125.8ppm
〔10F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.1ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OH〕,
δ=−127.6ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
n=1.3
【0053】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.8ppm
〔18H,HOCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=6.8ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕
【0054】
実施例6
HOCHCH(OH)CHO−R−OCHCH−O−C−O−CHCHO−R−OCHCH(OH)CHOH(化合物6)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
実施例5で得られた化合物5(10g)をt−ブタノール(5g)に溶解させ、グリシドール(1.1g)とt−ブトキシカリウム(0.1g)を加えて、70℃で80時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物6を6g得た。
化合物6は、白色固体であった。NMRを用いて行った化合物6の同定結果を示す。
【0055】
19F−NMR
δ=−83.5ppm
〔18F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−120.3ppm
〔8F,HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=−125.8ppm
〔10F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.6ppm
〔8F,HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
n=1.3
【0056】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.8ppm
〔30H,HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−C−〕,
δ=6.8ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2−O−C−〕
【0057】
実施例7
HOCHCHO−R−OCHCH−O−C−O−CHCHO−R−OCHCHOH(化合物7)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
実施例5で得られた化合物5(10g)をDuPont製Vertrel−XF(40g)に溶解させ、金属ナトリウム(0.3g)を加えて70℃で20時間加熱攪拌した後、2−ブロモエタノール(1.8g)を加えて、70℃で60時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物7を4g得た。
化合物7は白色固体であった。NMRを用いて行った化合物7の同定結果を示す。
【0058】
19F−NMR
δ=−83.5ppm
〔18F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−120.3ppm
〔8F,HOCH2CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=−125.8ppm
〔10F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.6ppm
〔8F,HOCH2CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
n=1.3
【0059】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.7ppm
〔26H,HOCH2CH2OCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=6.8ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕
【0060】
実施例8
HO−R−OCHCH−O−C−O−CHCH−O−R−OH(化合物8)の合成
Rは−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−である。
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアルデヒド(50g)、HOCHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCHOHで表わされるフルオロポリエーテル(n=8.5、数平均分子量2203、分子量分布1.30)100g、トリイソプロピルシリルクロリド(8g)およびイミダゾール(4g)を30℃で12時間攪拌した。その後、水洗、脱水、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、一方の末端に一つの水酸基を有し、もう一方の末端にトリイソプロピルシリル基を有した化合物(a2)を51g得た。この化合物(a2)(51g)をt−ブタノール(26g)に溶解させ、式(b2)で表される化合物(3g)と水素化ナトリウム(1g)を加えて、70℃で80時間攪拌した。その後、水洗浄を行い、テトラブチルアンモニウムフルオリドの1Mテトラヒドロフラン溶液(17ml)を混合させた後、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物8を39g得た。
化合物8は、白色固体であった。NMRを用いて行った化合物8の同定結果を示す。
【0061】
19F−NMR(溶媒;なし、基準物質:生成物中のOCF2CF2CF2CF2Oを−125.8ppmとする。)
δ=−83.5ppm
〔76F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−123.3ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=−120.3ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OH〕,
δ=−125.8ppm
〔68F,−OCF2CF2CF2CF2O−〕,
δ=−127.1ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OH〕,
δ=−127.6ppm
〔4F,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
n=8.5
【0062】
H−NMR(溶媒:なし、基準物質:DO)
δ=3.2〜3.8ppm
〔18H,HOCH2CF2CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕,
δ=6.8ppm
〔4H,−OCF2CF2CF2CH2OCH2CH2−O−C−〕
【0063】
実施例9
酸化アルミニウムに対する耐分解性の評価
化合物1〜8のそれぞれに、20重量%のAlを入れ、強く振とうしたのち超音波でさらに良く混合することにより、耐分解性評価用の試料を調製する。耐分解性の評価は、熱分析装置(TG/TDA)を用いて、250℃で100分間加熱した後の潤滑剤の重量減少率を測定することにより行なった。試料は20mg、測定は窒素雰囲気下で行なった。また比較のため、Alを添加せず、潤滑剤そのものを20mg使用し、同様の熱分析を行った。
【0064】
実施例10
単分子膜厚の測定
磁気ディスク上に塗布された潤滑剤の単分子膜厚(一分子あたりの膜厚)は、非特許文献2にも記載されているように、ディスク上での潤滑剤の拡散挙動をエリプソメーターで観察する際に確認される。単分子膜厚は、潤滑剤被膜のテラス部位の膜厚として得られる。
【0065】
〔非特許文献2〕 Journal of Tribology,October 2004,Vol.126,p751
【0066】
具体的には、実施例で合成した化合物1〜8を、それぞれDuPont製Vertrel−XFに溶解する。この溶液の化合物1〜8の濃度はいずれも0.1重量%である。直径2.5インチの磁気ディスクの一部分(約1/4)をこの溶液に浸漬し、速度4mm/sで引き上げることにより、潤滑層として化合物1〜8が塗布された部分と塗布されていない部分からなるディスクを作製した。塗布された部分の平均膜厚は、32Åであった。
上記のディスクを作製後すぐに、エリプソメーターに装着し、50℃の温度条件下にて一定時間毎に塗布部と非塗布部の境界付近における膜厚の変化を測定し、形成するテラス部位の膜厚として潤滑剤の単分子膜厚を得た。
【0067】
比較のために、分子末端のみに水酸基を有する化合物9と、分子鎖中と分子末端に水酸基を有する化合物10を使用した。
【0068】
(化合物9)
HOCHCH(OH)CHOCH2CF2O(CF2CF2O)x(CF2O)yCF2CH2OCHCH(OH)CHOH
ここでxは10.1、yは10.9である。
【0069】
(化合物10)
HO−(CH−R−CHO−E−O)−CH−R−CH−OH
Eは−CH−CH(OH)−CH−で表される基である。Rは、−CF2O(CF2CF2O)x(CF2O)yCF2−である。
ここでpは2、xは9.9、yは8.9である。
【0070】
耐分解性の評価及び単分子膜厚の測定の結果を表1に記す。これらの結果から、本発明の芳香族基と水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、分子末端のみに水酸基を有する化合物9や分子中と分子末端に水酸基を有する化合物10に比べて、優れた耐分解性を有しており、かつ低い単分子膜厚を示すことが確認された。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例11
磁気ディスクの作製
実施例で得られた化合物1〜8をDuPont製Vertrel−XFに溶解する。この溶液の化合物1〜8の濃度は0.1重量%である。直径2.5インチの磁気ディスクをこの溶液に1分間浸漬し、速度2mm/sで引き上げた。その後150℃で10分間乾燥し、塗布された化合物の膜厚をFT−IRで測定した。
【0073】
結果を表2に示す。これらの結果から、耐分解性を有し、かつ一分子あたりの膜厚を低減できる本発明の化合物を有する磁気ディスクを作製できることが確認された。
【0074】
【表2】

【符号の説明】
【0075】
1 支持体
2 記録層
3 保護層
4 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物
−(O−Z−R−X) (1)
式中Zは−CHCHO−又は−CHCH(OH)CHO−、
Rは、−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−であり、nは0〜20の実数、Xは−OH、−O(CH)mOH、−
OCHCH(OH)CHOH、−OCHCH(OH)CHO−C、−OC
CH(OH)CHO−C−OCH、mは1〜6の整数である。
【請求項2】
nは0〜4の実数、mは1〜4の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)の化合物を含有する潤滑剤
−(O−Z−R−X) (1)
式中Zは−CHCHO−又は−CHCH(OH)CHO−、
Rは、−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−であり、nは0〜20の実数、Xは−OH、−O(CH)mOH、−
OCHCH(OH)CHOH、−OCHCH(OH)CHO−C、−OC
CH(OH)CHO−C−OCH、mは1〜6の整数である。
【請求項4】
nは0〜4の実数、mは1〜4の整数である請求項3に記載の潤滑剤。
【請求項5】
支持体上に少なくとも記録層、保護層を形成し、その表面に潤滑層を有する磁気ディスクにおいて、該潤滑層が下記式(1)で表される化合物を含有する磁気ディスク
−(O−Z−R−X) (1)
式中Zは−CHCHO−又は−CHCH(OH)CHO−、
Rは、−CHCFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCFCH−であり、nは0〜20の実数、Xは−OH、−O(CH)mOH、−
OCHCH(OH)CHOH、−OCHCH(OH)CHO−C、−OC
CH(OH)CHO−C−OCH、mは1〜6の整数である。
【請求項6】
nは0〜4の実数、mは1〜4の整数である請求項5に記載の磁気ディスク。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−18961(P2013−18961A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102551(P2012−102551)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(000146180)株式会社MORESCO (20)
【Fターム(参考)】